(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018317
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】印刷装置、測色方法および測色プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20240201BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240201BHJP
G01J 3/52 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H04N1/60 300
H04N1/60 160
B41J2/525
G01J3/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121575
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
【テーマコード(参考)】
2C262
2G020
5C079
【Fターム(参考)】
2C262AA02
2C262AA03
2C262AA04
2C262AB11
2C262BA18
2C262BC19
2C262EA08
2C262FA13
2C262FA14
2G020AA08
2G020DA13
2G020DA34
2G020DA43
5C079HB01
5C079HB03
5C079HB08
5C079HB11
5C079LA02
5C079LA31
5C079MA04
5C079MA10
5C079NA29
5C079PA03
(57)【要約】
【課題】測色の精度を向上し得る印刷装置、測色方法、および測色プログラムを提供する。
【解決手段】印刷装置は、被印刷媒体にパッチチャートを印刷する印刷部と、被印刷媒体に印刷されたパッチチャートにおける複数のパッチを測色する複数の測色部と、制御装置とを備え、パッチは、パッチチャートにおける第1領域に配置され、予め定められた複数の色に対応する複数のパッチである第1パッチと、パッチチャートにおける第1領域とは異なる第2領域に配置され、ユーザにより指定された色についてのパッチである1又は複数の第2パッチとを含み、制御装置は、第1パッチおよび第2パッチのうち少なくとも第2パッチに対して複数の測色部の各々に測色させる処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体にパッチチャートを印刷する印刷部と、
前記被印刷媒体に印刷された前記パッチチャートにおける複数のパッチを測色する複数の測色部と、
制御装置と、を備え、
前記パッチは、前記パッチチャートにおける第1領域に配置され、予め定められた複数の色に対応する複数のパッチである第1パッチと、前記パッチチャートにおける前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、ユーザにより指定された色についてのパッチである1又は複数の第2パッチとを含み、
前記制御装置は、
前記第1パッチおよび前記第2パッチのうち少なくとも前記第2パッチに対して前記複数の測色部の各々に測色させる処理を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記複数の測色部による測色結果の平均値を算出する処理と、
前記平均値を前記第2パッチにおける測色値として、画素の色値と前記測色値を対応付けたテーブルを生成する処理と、を実行する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記測色部による色値の測定精度を校正する処理をさらに実行させ、
前記校正の直後に前記第2パッチに対して前記複数の測色部に測色させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記測色部による色値の測定精度を校正する処理をさらに実行させ、
前記測色させる処理において、前記校正のあと前記第1パッチ又はダミーパッチを所定回数測色した後に前記第2パッチに対して前記複数の測色部に測色させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記印刷部に前記パッチチャートを前記被印刷媒体に印刷させている間に前記第2パッチに対して前記複数の測色部に測色させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記被印刷媒体を搬送する搬送部をさらに備え、
前記測色部は、前記搬送部が前記被印刷媒体を搬送する搬送方向と交差する交差方向に複数並べられており、
前記制御装置は、
複数の同色の前記第2パッチを前記被印刷媒体に印刷させる処理と、
前記複数の同色の前記第2パッチに対して前記複数の測色部に測色させる処理と、
前記複数の同色の第2パッチについての前記複数の測色部による測色結果の平均値を算出する処理と、を実行する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記平均値は、前記複数の測色部による測色結果のうち最大値および最小値を除いて算出される、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記複数の測色部のうち少なくとも一の測色部による測色回数が所定回数以上になった際に、前記一の測色部による色値の測定精度を校正する処理をさらに実行させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記複数の測色部に共通して設けられ、前記複数の測色部による各色値の測定精度を校正するための白色基準をさらに備える、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
被印刷媒体に印刷されたパッチチャートにおける第1領域に配置され、予め定められた複数の色に対応する複数のパッチである第1パッチと、前記パッチチャートにおける前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、ユーザにより指定された色についてのパッチである1又は複数の第2パッチとの測色方法であって、
前記第1パッチおよび前記第2パッチのうち少なくとも前記第2パッチに対して複数の測色部の各々により測色する、測色方法。
【請求項11】
被印刷媒体に印刷されたパッチチャートにおける第1領域に配置され、予め定められた複数の色に対応する複数のパッチである第1パッチと、前記パッチチャートにおける前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、ユーザにより指定された色についてのパッチである1又は複数の第2パッチとを測色する複数の測色部と、前記複数の測色部を制御する制御装置とを備える印刷装置におけるコンピュータに実行させる測色プログラムであって、
前記コンピュータを、前記第1パッチおよび前記第2パッチのうち少なくとも前記第2パッチに対して前記複数の測色部の各々に測色させる測色制御手段として機能させる、測色プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタ等の印刷装置、測色方法、および印刷装置におけるコンピュータに実行させる測色プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷物の測色システムとして、例えば、特許文献1の情報処理装置が知られている。この情報処理装置は、印刷対象データにより表現される色を全て抽出し、各色について印刷領域内における占有率を取得する。情報処理装置は、この占有率に基づいて校正用パッチ画像のデータを生成し、校正用パッチ画像をプリンタによって印刷する。そして、情報処理装置は、印刷された校正用パッチ画像を測色機により測色して、この測色データに基づいて印刷対象の画像データの校正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記情報処理装置は印刷された校正用パッチ画像を測色機で一律に測定し、この測色データに基づいて印刷対象の画像データを校正している。しかしながら、校正用パッチ画像を測色機で一律に測色する方法では測色の精度が低下する恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、測色の精度を向上し得る印刷装置、測色方法、および測色プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、被印刷媒体にパッチチャートを印刷する印刷部と、前記被印刷媒体に印刷された前記パッチチャートにおける複数のパッチを測色する複数の測色部と、制御装置と、を備え、前記パッチは、前記パッチチャートにおける第1領域に配置され、予め定められた複数の色に対応する複数のパッチである第1パッチと、前記パッチチャートにおける前記第1領域とは異なる第2領域に配置され、ユーザにより指定された色についてのパッチである1又は複数の第2パッチとを含み、前記制御装置は、前記第1パッチおよび前記第2パッチのうち少なくとも前記第2パッチに対して前記複数の測色部の各々に測色させる処理を実行するものである。
【0007】
本発明に従えば、第1パッチおよび第2パッチのうち少なくとも第2パッチに対する測色が複数の測色部の各々により実行される。これによって、ユーザが色校正を望む第2パッチにおける測色値の偏りを抑制することができ、もって測色の精度が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測色の精度を向上し得る印刷装置、測色方法、および測色プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る印刷装置を示す平面図である。
【
図2】
図1の印刷装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図3】表示装置に表示された画像データに係るプレビュー画像においてユーザにより指定された指定画像の一例を示す図である。
【
図4】
図1の印刷装置により被印刷媒体に印刷されたパッチチャートの一例を示す図である。
【
図5】パッチ列情報を格納するパッチ列テーブルを示す図である。
【
図6】パッチの色値と測色値とが対応付けられたテーブルを示す図である。
【
図7】測色回とキャリブレーションとの関係の一例を示す図である。
【
図8】
図7における測色値波形の生データを示す図である。
【
図9】測色回とキャリブレーションとの関係の別例を示す図である。
【
図10】制御装置による測色方法を示すフローチャートである。
【
図12】複数の同色の第2パッチに対して複数の測色部に測色させる処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る印刷装置1を示す平面図である。
図1において、相互に直交する方向を、第1方向Ds、第2方向Dfおよび第3方向とする。本実施形態では、例えば、第1方向Dsは後述のキャリッジ41の移動方向であり、第2方向Dfは後述の被印刷媒体Wの搬送方向であり、第3方向は上下方向である。以下の説明では、Dsを移動方向と呼び、Dfを搬送方向と呼び、第3方向を上下方向と呼ぶ。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、例えばシリアルヘッド方式のインクジェットプリンタであって、複数の吐出ヘッド20、プラテン11、複数のタンク12、搬送装置30および走査装置40を備える。この場合、印刷装置1は走査装置40を備えず、吐出ヘッド20は移動せずに移動方向Dsにおいて被印刷媒体Wの印刷領域の長さよりも長い寸法を有する。
【0013】
吐出ヘッド20は、後述の基本色のインクにより画像データに基づいて被印刷媒体Wに画像を印刷する。画像データは色値を含む。色値は、例えば、デバイス依存の色空間における色座標としてのRGB色空間におけるRGB値で表される。RGB値は、0~255のレッドの色値、0~255のグリーンの色値、および0~255のブルーの色値の組み合わせにより1つの色として表される。
【0014】
吐出ヘッド20は被印刷媒体Wに後で詳述するパッチチャートPT(
図4)を印刷する。吐出ヘッド20が印刷部に相当する。吐出ヘッド20は、例えば2つの第1吐出ヘッド21および2つの第2吐出ヘッド22を含む。プラテン11は、平坦な上面を有し、その上面上に配置された被印刷媒体Wと、これに対向して設けられる吐出ヘッド20の下面との間の距離を規定する。タンク12は、インクを貯留する容器であって、その数はインクの種類と同数以上である。例えば、タンク12は、4種類の基本色のインクをそれぞれ貯留する4種類の第1タンク12a、および、特色のインクを貯留する1又は複数の第2タンク12bを有する。
【0015】
基本色のインクとしては、シアンのインク、イエローのインク、マゼンタのインク、ブラックのインクが例示される。一方、特色のインクは、基本色のインクとは異なる色のインクであって、レッドのインク、グリーンのインクおよびブルーのインクなどが例示される。
【0016】
第1タンク12aは、基本色のインクを貯留し、第1流路13aにより第1吐出ヘッド21に連通されている。基本色のインクは、第1タンク12aから第1流路13aを介して第1吐出ヘッド21に供給される。第2タンク12bは、第2流路13bにより第2吐出ヘッド22に連通されている。第2タンク12bに特色のインクが貯留されると、特色のインクは第2タンク12bから第2流路13bに流入して充填され、吐出ヘッド20に供給される。この第2タンク12bに特色のインクが貯留される前には、特色のインクとは異なる保存液が満たされている。第1流路13aおよび第2流路13bは、例えばゴムチューブ又はプラスチックチューブであり、屈曲に強いものが好ましい。
【0017】
搬送装置30は、例えば、3組の搬送ローラ31、および搬送モータ32(
図2)を有する。3組のうち2組の搬送ローラ31は、搬送方向Df(前後方向)において互いの間にプラテン11を挟んで配置されている。3組のうち1組の搬送ローラ31は、後述の2組の一対のガイドレール60よりも搬送方向Dfにおいて下流側に配置されている。搬送ローラ31は移動方向Dsに延びる軸を有する。各組の搬送ローラ31は、互いの間に被印刷媒体Wを挟むように上下方向に並んでいる。各組の搬送ローラ31のうちの一方の搬送ローラ31は、搬送モータ32に連結されている。搬送ローラ31は、搬送モータ32の駆動によって軸を中心に回転し、被印刷媒体Wをプラテン11上において搬送方向Dfに搬送する。
【0018】
走査装置40は、キャリッジ41、一対のガイドレール42、走査モータ43、および、無端ベルト44を有する。一対のガイドレール42は搬送方向Dfにおいて吐出ヘッド20を互いの間に挟むようにプラテン11の上方において移動方向Dsに延びている。キャリッジ41は、吐出ヘッド20を保持し、移動方向Dsに移動可能に一対のガイドレール42に支持されている。無端ベルト44は、移動方向Dsに延びて、キャリッジ41に取り付けられ、走査モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。走査モータ43が駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って移動方向Dsに往復移動する。これにより、キャリッジ41は移動方向Dsに吐出ヘッド20を移動させる。
【0019】
印刷装置1は、さらに、2組の一対のガイドレール60を備えると共に、各組の一対のガイドレール60に対応した、走査モータ61を有する走査装置65(
図2)と、無端ベルト62と、プーリー63と、測色機70A,70Bとを備える。測色機70Aは測色機70Bよりも搬送方向Dfの下流側に配置されている。
【0020】
測色機70A,70Bは、それぞれ、基台202、回転ジョイント203、アーム206、測色部208、直動ジョイント209、および、モータ等で構成される回転アクチュエータ91(
図2)を有する。また、印刷装置1は、各測色部208に共通して設けられ、各測色部208による各色値の測定精度を校正するための白色基準210を有する。
【0021】
測色機70Bに対応する一対のガイドレール60は搬送方向Dfにおいてキャリッジ41よりも下流側に配置される。また、測色機70Aに対応する一対のガイドレール60は搬送方向Dfにおいて測色機70Bに対応する一対のガイドレール60よりも下流側に配置される。一対のガイドレール60は移動方向Dsに延在する。無端ベルト62は、移動方向Dsに延びて、基台202に取り付けられ、走査モータ61にプーリー63を介して取り付けられている。走査モータ61が駆動すると、無端ベルト62が走行し、基台202はガイドレール60に沿って移動方向Dsに往復移動する。これにより、基台202は測色部208を移動方向Dsに移動させる。
【0022】
白色基準210は、各測色部208による色値の測定精度を校正する処理(以下、キャリブレーションと呼ぶ場合がある)のためのものである。白色基準210は、各測色部208により測色可能な範囲に配置されている。白色基準210は、移動方向Dsにおいて各測色部208がアーム206により移動可能な範囲であって、上下方向において測色部208に対向可能な範囲に配置されている。白色基準210は、例えば、搬送方向Dfにおいて測色機70B用のガイドレール60と測色機70A用のガイドレール60との間で且つ移動方向Dsにおいて各ガイドレール60の一方端(右端)よりも一方側(右側)に配置されている。白色基準210は、例えば、Lab値等のデバイス非依存の色空間における色座標である色値で表される所定の色値を有している。キャリブレーションにおいては、測色部208により白色基準210を測色し、その測色値を取得する。そして、予め定まった白色基準210の色値を記憶部53(
図2)から取得し、当該色値、測色値および測色条件に基づいて測色部208の測定精度が校正される。
【0023】
アーム206の基端は、例えば、回転ジョイント203により基台202に接続されている。回転ジョイント203は、モータなどのアクチュエータを有しており、上下方向に沿った中心軸まわりに基台202に対してアーム206を回動させる。また、アーム206の先端は、例えば、直動ジョイント209により測色部208に接続されている。直動ジョイント209は、モータおよびソレノイドなどの直動アクチュエータを有しており、アーム206に対して測色部208を上下方向に移動させる。このようにして、測色部208はアーム206によって3次元的に移動する。
【0024】
測色部208は、例えば分光光度計および色彩計などであって、発光素子211(
図2)および受光素子212(
図2)を有している。発光素子211は、例えば、イルミナントD65、C、Aなどの光源であって、光を被印刷媒体W上のパッチP(
図4)に照射する。受光素子212は、発光素子211から発光されて、パッチPにより反射された光を受光する。これにより、測色部208は受光素子212により受光した光に基づいてパッチPの色を測色する。この測色値は、デバイス非依存の色空間における色座標である色値、例えば、L*a*b*色空間におけるLab値、および、XYZ色空間におけるXYZ値などで表される。
【0025】
図2は
図1の印刷装置1の制御系統の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、吐出ヘッド20は複数の駆動素子25を有する。駆動素子25は、圧電素子、発熱素子および静電式アクチュエータ等であって、吐出ヘッド20のノズル27に対応して設けられ、当該ノズル27からインク滴を吐出する圧力を当該インクに付与する。
【0026】
印刷装置1は、さらに、表示装置14、入力装置15および制御装置50を備える。制御装置50はインターフェース51、演算部52および記憶部53を有する。インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイおよびプリンタ等の外部装置200から画像データなどの各種データを受信する。画像データは、被印刷媒体Wに印刷される画像を示すラスタデータなどであり、当該被印刷媒体Wの種などを含む印刷条件の情報が含まれる。なお、制御装置50は、単独の装置により構成されていてもよく、或いは複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置1の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0027】
記憶部53は後述のパッチチャートPTを記憶する。記憶部53は、演算部52からアクセス可能なメモリであって、RAMおよびROMを有する。RAMは、画像データなどの外部装置200から受信したデータおよび演算部52により変換されたデータなどの各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うための印刷プログラム、測色プログラムおよび所定のデータなどを記憶する。なお、印刷プログラムおよび測色プログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えばCD-ROMなどに記憶されていてもよい。
【0028】
演算部52は、例えばCPUなどのプロセッサおよびASICなどの集積回路などの少なくとも1つの回路を含む。演算部52は、測色プログラムを実行することにより各部を制御し、印刷動作などの各種動作を実行する。本実施形態において、演算部52がコンピュータおよび測色制御手段に相当する。
【0029】
表示装置14は、例えばディスプレイなどであって、制御装置50の指示に従って画像データに係る画像などを表示する。入力装置15は、例えばボタンなどであって、ユーザにより操作される。また、入力装置15は表示装置14と一体化されたタッチパネルであってもよい。
【0030】
制御装置50は、搬送駆動回路33を介して搬送装置30の搬送モータ32に電気的に接続され、搬送モータ32の駆動を制御する。これにより、搬送装置30の搬送ローラ31による被印刷媒体Wの搬送が制御される。また、制御装置50は、走査駆動回路46を介して走査装置40の走査モータ43に電気的に接続され、走査モータ43の駆動を制御する。これにより、走査装置40のキャリッジ41による吐出ヘッド20の移動が制御される。さらに、制御装置50は、吐出ヘッド駆動回路26を介して駆動素子25に電気的に接続されている。制御装置50は、駆動素子25の制御信号を吐出ヘッド駆動回路26に出力し、ヘッド駆動回路26が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子25に出力する。駆動素子25は駆動信号に応じて駆動し、これによりノズル27からインク滴が吐出される。
【0031】
また、制御装置50は、制御装置50は走査駆動回路64を介して走査モータ61に電気的に接続され、走査モータ61の駆動を制御する。これにより、基台202による測色部208の移動方向Dsにおける移動が制御される。また、制御装置50は回転駆動回路90を介して回転アクチュエータ91に接続されている。これにより、上述の回転ジョイント203によるアーム206の回転移動が制御される。
【0032】
さらに、測色機70A,70Bは、測色部208を上下方向に移動させるべく、直動駆動回路80、上述の直動ジョイント209に備わり例えばモータ等を含む直動アクチュエータ81、および直動センサ82を備える。直動アクチュエータ81は測色部208を上下動させることにより被印刷媒体Wに接触させたり、被印刷媒体Wから離間させる。制御装置50は直動駆動回路80を介して直動アクチュエータ81に接続されると共に、直動センサ82に接続されている。直動センサ82は例えばエンコーダ等であり、直動アクチュエータ81の移動量を検出する。制御装置50は直動センサ82による検出結果に基づき直動アクチュエータ81の動作を制御する。これにより、測色部208の上下動が直動センサ82の検出結果に基づき制御される。
【0033】
このように印刷装置1は、被印刷媒体Wと測色部208とを相対的に移動させる手段として、被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送する搬送装置30、測色部208を移動方向Dsに沿って移動させる基台202、測色部208を移動方向Dsおよび搬送方向Dfに移動させる回転アクチュエータ91、および、測色部208を上下方向に移動させる直動アクチュエータ81を有している。
【0034】
以上の構成を有する印刷装置1において、制御装置50はパッチチャートPT等の画像に係る画像データを取得し、当該画像データに基づいて印刷動作を実行する。この場合、制御装置50は、印刷パスにおいて吐出ヘッド20を移動方向Dsに移動させながら、吐出ヘッド20からインクを被印刷媒体Wに吐出させる。そして、制御装置50は被印刷媒体Wを搬送方向Dfの前方へ搬送させる。このように、印刷装置1は印刷パスと搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、画像データに係るパッチチャートPT等の画像が被印刷媒体Wに印刷される。
【0035】
図3は表示装置14に表示された画像データに係るプレビュー画像PIにおいてユーザにより指定された指定画像の一例を示す図である。
【0036】
制御装置50は、記憶部53に記憶された画像データに係るプレビュー画像PIを表示装置14に表示させる。プレビュー画像PIは、例えばりんごプレビュー画像PI1およびパプリカプレビュー画像PI2を含む。ユーザは、表示装置14にプレビュー画像PIが表示されると、パッチP(後述の第2パッチPs)を作成したい色に係る画像(画素)を指定する。
図3では、表示装置14においてユーザにより指定された、例えばりんごプレビュー画像PI1がポインタ14aにより指し示される。ユーザにより指定された画像に係る情報は表示装置14を介して制御装置50に送信される。
【0037】
図4は
図1の印刷装置1により被印刷媒体Wに印刷されたパッチチャートPTの一例を示す図である。なお、
図4において移動方向Dsの一方側(左側)から他方側(右側)に向かう方向に平行な方向が測色方向Dmである。
【0038】
図4に示すように、パッチチャートPTは複数のパッチPが前後方向および左右方向に碁盤目状に配置されたものである。したがって、パッチチャートPTにおけるパッチPの位置は列および行にて規定することができる。この場合、パッチPについては、パッチチャートPTにおける左右方向の位置が行により規定され、前後方向の位置が列により規定される。パッチチャートPTは、パッチPとしての第1パッチPbが配置される第1領域R1と、第1領域R1とは異なり且つ搬送方向Dfにおいて当該第1領域R1に隣接する余白領域であってパッチPとしての第2パッチPsが配置される第2領域R2と、を含む。第2領域R2は搬送方向Dfにおいて第1領域R1よりも上流側に配置される。第1領域R1および第2領域R2は平面視で例えば矩形状に形成される。パッチチャートPTは、パッチPが搬送方向Dfに沿って直線状に複数並ぶパッチ列PRが複数並列されて構成されている。第1パッチPbは第1領域R1においてパッチ列PRを成して配置され、第2パッチPsは第2領域R2においてパッチ列PRを成して配置される。
【0039】
第1パッチPbおよび第2パッチPsは、例えば、第1領域R1又は第2領域R2において搬送方向Dfの下流側かつ移動方向Dsの一方側(右側)から順に配置される。このような配置が搬送方向Dfの上流側に向かってパッチ列PRごとに実施される。
【0040】
第1パッチPbとは、画像データにおける複数の基本色の各々に対応して予め定められたパッチチャートPT上の位置に配置されたパッチPである。これに対して、第2パッチPsとは、上述のプレビュー画像PIにおいてユーザにより指定された色について制御装置50により生成されたパッチPである。上述した
図3に示すプレビュー画像PIにおいてユーザにより指定された画像に係る色のパッチPは第2パッチPsとしてパッチチャートPTにおける第2領域R2に配置される。制御装置50は第2パッチPsを生成する際に、当該第2パッチPsに係るパッチPを形成するためのインクの色、液滴サイズおよびインク滴の吐出順(配置)を含むラスタデータを生成する。なお、第1パッチPbとは基本パッチと呼ばれ、第2パッチPsは重要パッチと呼ばれることがある。
【0041】
ここで、パッチPの測色を実行する前に、各パッチ列PRに関する位置情報を取得する処理が行われる。制御装置50は、吐出ヘッド20によりパッチチャートPTが印刷された被印刷媒体Wを搬送装置30によって測色機70A,70Bの方へ搬送させる。そして、制御装置50は被印刷媒体WのパッチチャートPTにおける所定の目印画像に測色部208を対向させるべく、回転アクチュエータ91を制御して測色機70A又は測色機70Bのアーム206を回動させると共に、直動アクチュエータ81を制御して直動ジョイント209を介して測色部208を上下動させて位置付ける。この際に制御装置50は上記の目印画像に対応する目印位置情報を取得する。パッチチャートPTの面積、各パッチ列PRの面積および各パッチPの面積が既知であることから、上記の目印位置情報を取得すれば、計算により各パッチP(第1パッチPbおよび第2パッチPs)の位置情報を取得することができる。
【0042】
図5はパッチ列情報を格納するパッチ列テーブルTpを示す図である。
図5のパッチ列テーブルTpは、記憶部53に記憶され、各パッチ列PRにおける第2パッチPsの存在の有無、およびパッチPの配置個数等がパッチ列PRごとに示されたテーブルである。制御装置50は、パッチPの測色の際に記憶部53からパッチ列テーブルTpを読み出し、各パッチ列PRに第2パッチPsが含まれるか否かについての判別を行う。なお、詳細は後述する。
【0043】
次いで、パッチチャートPTにおけるパッチPの測色について説明する。制御装置50は、第1パッチPbおよび第2パッチPsのうち少なくとも第2パッチPsに対して測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々に測色させる処理を実行する。本実施形態においては、第2パッチPsのみに対して測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々に測色させることができる。
【0044】
この場合、制御装置50は、まず搬送方向Dfの上流側に配置された測色機70Bの測色部208に第2パッチPsの測色を実行させるべく、必要に応じて被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送させつつ、測色機70Bの基台202を移動方向Dsに移動させると共にアーム206を回動させる。これにより、測色機70Bの測色部208が第2パッチPsの上方に配置される。そして、制御装置50は測色部208が被印刷媒体Wに近付くように直動アクチュエータ81の動作を制御する。測色機70Bの測色部208はこの状態で第2パッチPsに対する測色を行う。
【0045】
次に、測色機70Bの測色部208による測色が終了した第2パッチPsに対する2度目の測色を行うべく、制御装置50は、必要に応じて被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送させつつ、測色機70Aの基台202を移動方向Dsに移動させると共にアーム206を回動させる。これにより、測色機70Aの測色部208が第2パッチPsの上方に配置される。そして、制御装置50は測色部208が被印刷媒体Wに近付くように直動アクチュエータ81の動作を制御する。測色機70Aの測色部208はこの状態で第2パッチPsに対する測色を行う。
【0046】
以上の工程を経ることで、一つの第2パッチPsに対して、測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々による測色が実行される。なお、第2パッチPsにおいて、測色機70Aの測色部208による測色位置と測色機70Bの測色部208による測色位置とは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0047】
図6はパッチPの色値と測色値とが対応付けられたテーブルTaを示す図である。制御装置50は測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208から測色結果をそれぞれ受信する。制御装置50は受信した複数の測色結果の平均値を算出する。具体的には、制御装置50は測色機70Aの測色部208の測色結果と測色機70Bの測色部208の測色結果の合計を、2で除算することにより、平均値を算出する。これにより、測色値の偏りを抑制することができる。
【0048】
テーブルTaにおいては、パッチPが第1パッチPbであるか第2パッチPsであるかについての種類、位置、色値および測色値がパッチPごとに対応付けられている。テーブルTaは記憶部53に記憶される。制御装置50は上記の通り算出した複数の測色値の平均値を一つの第2パッチPsにおける測色値としてテーブルTaに格納する。これにより、各第2パッチPsの色値に対して、複数の測色値の平均値が対応付けられる。ここで、第2パッチPsとは、上述のプレビュー画像PIにおいてユーザにより指定された色について制御装置50により生成されたパッチPである。テーブルTaを言い換えると、テーブルTaはプレビュー画像PIの色値と複数の測色値の平均値を対応付けている。
【0049】
図7は測色部208の測色回とキャリブレーションとの関係の一例を示す図である。
図8は
図7における一つの測色値波形WFのプロットデータを示す図である。
図8に示すように、測色値はプロットデータとして表されるものであるが、
図7では簡略化のため当該プロットデータを波形曲線で表している。
【0050】
図7に示すように、測色部208によるパッチPに対する測色を連続して続けると、測色値の明るさが低下する。そこで、印刷装置1においては、パッチPに対する測色を所定回数行った後に測色部208のキャリブレーションを行う。
図7におけるN1は第1パッチPbに対する測色が所定回数終了した後に行われる1回目のキャリブレーションの実施時期を示し、N2は1回目のキャリブレーションのあと第1パッチPbに対する測色が所定回数終了した後に行われる2回目のキャリブレーションの実施時期を示している。
【0051】
一方、2回目のキャリブレーションのあと第1パッチPbに対する測色をまだ連続して行うことが可能であっても、第2パッチPsに対する測色(つまり、特に重要なパッチPに対する測色)を行う前には、キャリブレーションを行うことが望ましい。そのため、第2パッチPsに対する測色を行う際の3回目のキャリブレーションは、1回目および2回目のキャリブレーションの実施基準としての各測色回数よりも少ない測色が終了した時期N3で行われる。すなわち、第1パッチPbを連続して測色する間は測色を第1規定回数行うごとに測色部208のキャリブレーションを行い、第2パッチPsを連続して測色する間は測色を上記第1規定回数よりも少ない第2規定回数行うごとに測色部208のキャリブレーションを行う。これにより、第2パッチPsに対する測色についてのキャリブレーションの頻度は、第1パッチPbに対する測色についてのキャリブレーションの頻度よりも高い。なお、
図7においては、例えば730個目以降のパッチPが第2パッチPsになるため、上記の時期N3は例えば729個目の第1パッチPbに対する測色が終了した時点に相当する。
【0052】
一方、
図7において各キャリブレーションが終了した後、所定回数までは測色値の明るさは比較的高く出る傾向があるが、所定回数以降は測色値の明るさは比較的低くなる傾向がある。そこで、測色値の信頼性をより向上すべく、測色機70A,70Bの各測色部208による第2パッチPsに対する測色はキャリブレーションの直後に実行される。より詳細には、第2パッチPsに対する測色は各キャリブレーションの後から所定回数までの測色によって実行される。
図7では、第2パッチPsに対する測色は、時期N3で実施されるキャリブレーションと時期N4で実施されるキャリブレーションとの間における所定回数、および、時期N4で実施されるキャリブレーションと時期N5で実施されるキャリブレーションとの間における所定回数により実行される。なお、時期N5以降は同様とする。
【0053】
制御装置50は、
図7の時期N1~N8に拘わらず、測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208のうち少なくとも一の測色部208による測色回数が所定回数以上になった際に、一の測色部208についてキャリブレーションを実行してもよい。この場合、一の測色部208のキャリブレーションを実行している間、他の測色部208については、パッチPの測色を行ってもよいし、キャリブレーションを同時に行ってもよい。
【0054】
図9は測色部208の測色回とキャリブレーションとの関係の別例を示す図である。
図9に示すように、各キャリブレーションが終了した後、所定回数までは各測色値の明るさの最大値と最小値との差が比較的大きい傾向がある。すなわち、キャリブレーション後において所定回数までは測色値のばらつきが比較的大きい。そこで、測色値のばらつきが比較的小さい測色回において第2パッチPsに対する測色を行うべく、制御装置50は時期N3におけるキャリブレーションのあと第1パッチPb又はダミーパッチPdを所定回数測色し(
図9の測色区間KNにおける測色)、第1パッチPb又はダミーパッチPdを所定回数測色した後、時期N4において第2パッチPsに対して測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208に測色を実行させてもよい。これにより、第2パッチPsの測色値のばらつきを抑制することができる。
【0055】
上記のダミーパッチPdは、
図4に示すパッチチャートPTにおいては、例えば搬送方向Dfにおいて第1領域R1における第1パッチPbと第2領域R2における第2パッチPsとに挟まれる領域に設けられる所定色のパッチ又は画像である。なお、ダミーパッチPdの位置は、上記に限定されるものではなく、例えば、搬送方向Dfにおいて第1領域R1よりも下流側に設定してもよく、或いは搬送方向Dfにおいて第2領域R2よりも上流側に設定してもよい。
【0056】
図10は本実施形態に係る制御装置50による測色方法を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、例えば、テーブルTaの書き換えをユーザに指示されたことにより、制御装置50により実行される。なお、
図10のフローチャートにおける処理の前に、制御装置50は、パッチ作成条件を外部装置200又は入力装置15などから取得する。パッチ作成条件は、例えばパッチPを印刷するための被印刷媒体Wのサイズ又は種類、パッチPのサイズ等である。その後、制御装置50は上記パッチ作成条件に基づきパッチチャートPTにおいて第1パッチPbを形成すると共に、ユーザにより指定された位置に対応するプレビュー画像PIに関する情報(色情報)を画像データから取得してパッチチャートPTにおいて第2パッチPsを形成する。
【0057】
図10に示すように、制御装置50は最初にパッチチャートPTにおけるパッチPの個数、測色部208の発光素子211の種類、およびユーザの観察視野角度等を含む測色条件を外部装置や入力装置15等から取得する(ステップS1)。
【0058】
続いて、制御装置50は第2パッチPsについての位置情報を取得する(ステップS2)。この場合、制御装置50は外部装置や入力装置15等から第2パッチPsについての位置情報をパッチ列PRごとに取得する。
【0059】
次いで、制御装置50は各測色部208のキャリブレーションを実行する(ステップS3)。この場合、制御装置50はステップS1で取得した測色条件に基づきキャリブレーションを実行する。
【0060】
次に、制御装置50は上述したパッチ列テーブルTpに基づきパッチ列情報として各パッチ列PRに第2パッチPsが含まれるか否かについての情報をパッチ列PRごとに取得する(ステップS4)。そして、制御装置50は各パッチ列PRに第2パッチPsが含まれるか否かを判別する(ステップS5)。パッチ列PRに第2パッチPsが含まれる場合(ステップS5でYes)、制御装置50は測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々に一つの第2パッチPsに対する測色を実行させる(ステップS6)。
【0061】
次いで、制御装置50は測色機70Aの測色部208による測色値と測色機70Bの測色部208による測色値との差が所定値以上であるか否かを判別する(ステップS7)。前記差が所定値以上である場合(ステップS7でYes)、制御装置50は測色機70Aの測色部208による測色値と測色機70Bの測色部208のうち少なくとも一方の測色部208のキャリブレーションを実行させる(ステップS8)。制御装置50はステップS8の処理の後、上記ステップS6の処理に戻り以降の処理を繰り返す。
【0062】
一方、パッチ列PRに第2パッチPsが含まれない場合(すなわち、パッチチャートPTにおける第1列などに係るパッチ列PR:ステップS5でNo)、制御装置50は複数の第1パッチPbの各々に対する測色を、測色機70Aの測色部208と測色機70Bの測色部208とに分担させて実行させる(ステップS9)。なお、パッチ列PRに第2パッチPsが含まれない場合でも、一つの第1パッチPbに対する測色を測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々に実行させてもよい。
【0063】
ステップS9の処理の後、および、上述のステップS7の処理において前記差が所定値以上でない場合(ステップS7でNo)、制御装置50は測色値を記憶部53のテーブルTaに記憶させる(ステップS10)。そして、制御装置50はパッチチャートPTにおける全てのパッチ列PRについての測色を完了したか否かを判別する(ステップS11)。全てのパッチ列PRについての測色が完了した場合(ステップS11でYes)、制御装置50は処理を完了する。一方、全てのパッチ列PRについての測色が完了していない場合(ステップS11でNo)、制御装置50は上述のステップS4の処理に戻り以降の処理を繰り返す。
【0064】
(第2実施形態)
図11は第2実施形態に係る印刷装置1Aを示す平面図である。
図11に示すように、第2実施形態の印刷装置1Aが第1実施形態の印刷装置1と異なる点は、2組の一対のガイドレール60と、各組の一対のガイドレール60に対応した、走査モータ61を有する走査装置65と、無端ベルト62と、プーリー63と、測色機70A,70Bとを備える代わりに、移動方向Dsに延在する測色機220を備える点である。印刷装置1Aの他の構成は印刷装置1の構成と同じである。
【0065】
測色機220は複数の測色部221を有している。複数の測色部221は、測色機220において搬送方向Dfの上流側に移動方向Dsと平行な方向に互いに間隔を空けて配置された各測色部221と、測色機220において搬送方向Dfの下流側に移動方向Dsと平行な方向に互いに間隔を空けて配置された各測色部221とを含む。搬送方向Dfの上流側に配置された各測色部221と、搬送方向Dfの下流側に配置された各測色部221とは、移動方向Dsに平行な方向において互い違いにそれぞれ配置されている。
【0066】
移動方向Dsと平行な方向における一方端(例えば左端)に配置された測色部221と、移動方向Dsと平行な方向における他方端(例えば右端)に配置された測色部221との距離は、被印刷媒体Wの幅(移動方向Dsと平行な方向における長さ)よりも大きい。また、搬送方向Dfの下流側に配置された一の測色部221の、移動方向Dsと同じ方向における幅(つまり、発光の幅)は、搬送方向Dfの上流側に配置された一方の測色部221と他方の測色部221との距離よりも大きい。以上の構成によって、測色機220を移動方向Dsに走査させずとも、パッチチャートPTが印刷された被印刷媒体Wを搬送方向Dfに搬送するだけで当該パッチチャートPTにおける各パッチPに対する測色を各測色部221により行うことができる。
【0067】
図12は複数の同色の第2パッチPsに対して複数の測色部221に測色させる処理について説明するための図である。
【0068】
図12に示すように、制御装置50による吐出ヘッド20の制御によって、パッチチャートPTの第2領域R2に同色の第2パッチPsが複数印刷されることがある。この場合、制御装置50は複数の同色の第2パッチPsに対して複数の測色部221の各々に測色を実行させる。具体的には、パッチチャートPTの第2領域R2に移動方向Dsに互いに間隔を空けて3つの第2パッチPs(第2パッチPs1、第2パッチPs2、および、第2パッチPs3)が印刷されている。制御装置50は、移動方向Dsにおいて第2パッチPs1と同じ位置に配置された測色部221aに当該第2パッチPs1に対する測色を実行させる。また、制御装置50は、移動方向Dsにおいて第2パッチPs2と同じ位置に配置された測色部221bに当該第2パッチPs2に対する測色を実行させる。さらに、制御装置50は、移動方向Dsにおいて第2パッチPs3と同じ位置に配置された測色部221cに当該第2パッチPs3に対する測色を実行させる。その後、制御装置50は複数の同色の第2パッチPsについての複数の測色部221による測色結果の平均値を算出する。具体的には、制御装置50は、測色部221aによる第2パッチPs1の測色値、測色部221bによる第2パッチPs2の測色値、および測色部221cによる第2パッチPs3の測色値の平均値を算出する。そして、制御装置50は算出した複数の測色値の平均値を、第2パッチPs1,Ps2,Ps3の各測色値として
図6のテーブルTaに格納する。これにより、第2パッチPs1,Ps2,Ps3の各色値に対して上記平均値が対応付けられる。以上のように複数の第2パッチPsの各々に対応させて各測色部221にそれぞれ測色させる印刷装置1Aの制御装置50は、第1パッチおよび第2パッチのうち少なくとも第2パッチに対して複数の測色部の各々に測色させる処理を実行する制御装置に相当する。
【0069】
また、上記平均値は複数の測色部221(例えば4つ以上の測色部221)による測色結果のうち最大値および最小値を除いて算出されてもよい。この場合、例えば4つの第2パッチPsが印刷されている場合、4つの測色部221の各々により各第2パッチPsに対する測色がそれぞれ行われる。そして、4つの測色部221により得られた各測色値のうち最大値および最小値が除かれた2つの測色値の平均値が算出される。
【0070】
以上説明したように、第1実施形態の印刷装置1によれば、第1パッチPbおよび第2パッチPsのうち少なくとも第2パッチPsに対する測色が測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各々により実行される。これによって、一つの第2パッチPsについての測色値を複数取得することができる。そして、上記第2パッチPsの測色値として複数の測色値の平均値を採用すれば、ユーザが色校正を望む第2パッチPsにおける測色値の偏りを抑制することができる。これによって、測色の精度を向上することができる。
【0071】
また、上記各実施形態では、第2パッチPsに対する測色が、測色部208の校正後から所定回数までの測色によって実行される。これにより、測色値の明るさが比較的高い段階において第2パッチPsの測色を行うことができ、当該第2パッチPsの測色値についての信頼性が向上する。
【0072】
また、上記各実施形態では、制御装置50はキャリブレーションの後、第1パッチPb又はダミーパッチPdを所定回数測色した後に、第2パッチPsに対して、測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208に測色を実行させることができる。これにより、第2パッチPsの測色値のばらつきを抑制することができる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、制御装置50は複数の同色の第2パッチPsに対して複数の測色部221の各々に測色を実行させる。その後、制御装置50は複数の同色の第2パッチPsについての複数の測色部221による測色結果の平均値を算出する。そして、制御装置50は算出した複数の測色値の平均値を、第2パッチPsの各々の測色値としてテーブルTaに格納する。これにより、第2パッチPsの各々の測色値の偏りを抑制することができる。
【0074】
また、上記第2実施形態では、上記平均値は複数の測色部221(例えば4つ以上の測色部221)による測色結果のうち最大値および最小値を除いて算出されてもよい。これにより、第2パッチPsの各々の測色値の偏りをさらに抑制することができる。
【0075】
また、上記各実施形態では、制御装置50は測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208のうち少なくとも一の測色部208による測色回数が所定回数以上になった際に、一の測色部208についてキャリブレーションを実行してもよい。これによって、測色精度が低下することを抑制することができる。
【0076】
さらに、上記各実施形態では、白色基準210が測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208に共通して設けられる。これにより、測色機70A,70Bごとに白色基準210を設ける必要がなく構成を簡易化することができる。
【0077】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形例を採用することが可能である。例えば以下の通りである。
【0078】
上記第1実施形態において、制御装置50は吐出ヘッド20にパッチチャートPTを被印刷媒体Wに印刷させている間に第2パッチPsに対して複数の測色部208に測色させてもよい。これは、
図4のパッチチャートPTにおいて第2パッチPsが配置される第2領域R2の搬送方向Dfにおける長さが吐出ヘッド20と測色機70Bのアーム206の可動範囲との距離よりも長い場合や、
図4の配置とは異なり第1領域R1が搬送方向Dfにおいて第2領域R2の上流側に配置されたパッチチャートPTを測色する場合等に適用できる。これによって、印刷時間と測色時間との合計時間を短時間化することができ、処理が効率的となる。
【0079】
また、上記第1実施形態では、複数の測色部208として、測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208を配置したが、これに限定されるものではなく、3つ以上の測色部208を配置してもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、一方の一対のガイドレール60に測色機70Aの基台202を支持させ、他方の一対のガイドレール60に測色機70Bの基台202を支持させる構成とした。しかし、これに限定されるものではなく、一つの一対のガイドレール60に測色機70Aの基台202および測色機70Bの基台202の双方を支持させる構成を採用してもよい。この場合、移動方向Dsにおいて測色機70Aの基台202と測色機70Bの基台202とは隣り合って配置される。
【0081】
また、上記各実施形態では、白色基準210を各測色部208共通で設けたが、これに限らず、測色部208ごとに設けてもよい。この場合、各白色基準210を各基台202上に設けることができる。
【0082】
また、上記各実施形態では、プレビュー画像PIを印刷装置1,1Aの表示装置14に表示させるようにしたが、これに限定されるものではなく、当該印刷装置1,1Aに対して有線又は無線により通信可能なパーソナルコンピュータなどのディスプレイにプレビュー画像PIを表示してもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、測色機70Aの測色部208および測色機70Bの測色部208の各測色結果の平均値を算出するようにした。しかし、これに限られるものではなく、測色機70Aの測色部208に複数回の測色をさせ、測色機70Bの測色部208に複数回の測色をさせてもよい。この場合、制御装置50は測色機70Aの測色部208による複数の測色結果および測色機70Bの測色部208による複数の測色結果の平均値を算出してもよい。
【0084】
さらに、上記各実施形態では、印刷装置1,1Aとしてインクジェットプリンタを例に挙げたが、これに限らず、印刷装置1,1Aはレーザープリンタやサーマルプリンタ等の他のプリンタであってもよい。レーザープリンタは印刷部を備える。レーザープリンタの印刷部は、感光ドラムや感光体ベルト等の像担持体と、像担持体を接触又は非接触で帯電させる帯電部と、レーザー半導体等を用いて帯電された像担持体に静電潜像を形成する(いわゆる露光)露光部と、静電潜像が形成された像担持体にトナーを供給するトナーカートリッジや現像カートリッジと、像担持体上で現像されたトナー像を直接被印刷媒体に転写する転写ローラや転写ベルト等の転写部と、被印刷媒体に転写されたトナーを熱定着させる定着ローラや定着ベルト等の定着部とを備える。上述のダイレクトタンデム方式のレーザープリンタに限らず、中間転写方式のレーザープリンタであってもよく、像担持体上で現像されたトナー像を中間転写ベルトに転写した後、転写部を用いて中間転写ベルトから被印刷媒体に転写する。また、サーマルプリンタは印刷部を備える。サーマルプリンタの印刷部は、サーマルヘッドと、インクリボンとを備える。サーマルヘッドは、インクリボンと接触しており、インクリボンのインクを被印刷媒体に転写させるときに、対応する発熱素子を発熱させることで、インクリボンのインクを被印刷媒体に転写させる。
【0085】
また、上記各実施形態では、印刷装置1,1Aをシリアルヘッド方式としたが、これに限定されるものではなく、ラインヘッド方式であってもよい。
【0086】
さらに、上記第1実施形態では、測色機70,70Aにアーム206を設けたが、当該アーム206を設けずに基台202上に直動ジョイント209のみを設ける構成にしてもよい。この場合、測色部208の移動方向Dsにおける移動は基台202のみにより行われ、当該測色部208の上下動は直動ジョイント209の直動アクチュエータ81により行われる。
【0087】
また、上記第1実施形態では、制御装置50は測色機70Aの測色部208の測色結果と測色機70Bの測色部208の測色結果の合計を、2で除算することにより、平均値を算出したが、これに限られない。測色機70Aが測色機70Bよりも測色の精度が高い等の理由がある場合、制御装置50は測色機70Aの測色部208の測色結果を測色機70Bの測色部208の測色結果よりも加重して、2で除算することにより、加重平均値を算出してもよい。
【0088】
また、上記第2実施形態では、パッチチャートPTの第2領域R2に移動方向Dsに互いに間隔を空けて3つの第2パッチPs(第2パッチPs1、第2パッチPs2、および、第2パッチPs3)が印刷され、制御装置50は測色部221aによる第2パッチPs1の測色値、測色部221bによる第2パッチPs2の測色値、および測色部221cによる第2パッチPs3の測色値の平均値を算出したが、これに限られない。測色部221aよりも測色部221bによる測色の精度が高く、測色部221bよりも測色部221cによる測色の精度が高い等の理由がある場合、制御装置50は測色部221aによる第2パッチPs1の測色値よりも測色部221bによる第2パッチPs2の測色値を加重し、測色部221bによる第2パッチPs2の測色値よりも測色部221cによる第2パッチPs3の測色値を加重して、3で除算することにより、加重平均値を算出してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、制御装置50は、
図10のフローチャートを、テーブルTaの書き換えをユーザに指示されたことにより、実行したが、これに限られない。制御装置50は、
図10のフローチャートを、印刷ジョブを受信することにより実行してもよい。そして、制御装置50は、
図10のフローチャートを、印刷ジョブを受信することにより実行する場合、全てのパッチ列PRについての測色が完了した場合(ステップS11でYes)、続いて、印刷ジョブに基づき被印刷媒体Wに印刷を開始する。被印刷媒体Wに印刷を終えると、
図10のフローチャートを終了するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1,1A 印刷装置
20 吐出ヘッド
30 搬送装置
31 搬送ローラ
50 制御装置
70A,70B 測色機
202 基台
208 測色部
210 白色基準
P パッチ
Pb 第1パッチ
Pd ダミーパッチ
Ps 第2パッチ
PT パッチチャート
R1 第1領域
R2 第2領域
Ta テーブル
W 被印刷媒体