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特開2024-18325配信環境提示システム及び配信環境提示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018325
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】配信環境提示システム及び配信環境提示方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240201BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121588
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】建設現場内の無線通信端末から映像を配信する際の配信環境を効率よく把握すること
【解決手段】配信環境提示システム(150)は、配信サーバ(6、42)を介して第1のエリアから第2のエリアに映像を配信する際の、第1のエリアの複数位置における配信環境と、位置及び第1のエリアの環境情報とが関連付けされた配信環境のセットを記憶する記憶装置(402、403、410)と、第1のエリアで映像の配信を伴う遠隔臨場が行われるときの環境情報と配信環境のセットとに基づいて、遠隔臨場が行われるときの第1のエリア内の配信環境を導出するプロセッサ(401)と、導出した第1のエリア内の配信環境を表示する表示装置(405)と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信サーバを介して第1のエリアから第2のエリアに映像を配信する際の、前記第1のエリアの複数位置における配信環境と、前記位置及び前記第1のエリアの環境情報とが関連付けされた配信環境のセットを記憶する記憶装置と、
前記第1のエリアで映像の配信を伴う遠隔臨場が行われるときの環境情報と前記配信環境のセットとに基づいて、前記遠隔臨場が行われるときの前記第1のエリア内の配信環境を導出するプロセッサと、
導出した前記第1のエリア内の配信環境を表示する表示装置と、
を含むことを特徴とする配信環境提示システム。
【請求項2】
前記記憶装置には、前記第1のエリアからの映像の配信に利用する無線通信の種別と映像の配信に利用するアプリケーションとの組み合わせが異なる、複数の前記配信環境のセットが記憶される、ことを特徴とする請求項1に記載の配信環境提示システム。
【請求項3】
前記遠隔臨場が行われるときの前記環境情報は、前記遠隔臨場が行われる日、時間、及び天候のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の配信環境提示システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1のエリア内の状況に応じて、導出した前記第1のエリア内の配信環境を補正する、ことを特徴とする請求項1に記載の配信環境提示システム。
【請求項5】
前記第1のエリア内の状況は、前記第1のエリア内に配置される建機の位置、構造物の位置及び高さ、並びに前記第1のエリア内の地形のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の配信環境提示システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1のエリアの周辺の構造物の状況に応じて、導出した前記第1のエリア内の配信環境を補正する、ことを特徴とする請求項4に記載の配信環境提示システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記遠隔臨場のための前記映像とは異なる映像を前記第1のエリアから配信したときの、配信した前記映像の撮影位置、撮影した時刻、及び配信環境と、前記第1のエリア内で前記映像の配信を伴う前記遠隔臨場が行われる時間帯とに基づいて、前記第1のエリア内の配信環境を補正する、ことを特徴とする請求項4に記載の配信環境提示システム。
【請求項8】
追跡対象の人物の位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記追跡対象の人物に前記配信環境が変化したことを報知する報知装置と、を更に含み、
前記プロセッサは、取得した前記位置情報と、前記第1のエリア内の配信環境とに基づいて、前記追跡対象の人物がいる位置の配信環境が変化したと判定した場合に、前記報知装置に報知を指示する信号を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配信環境提示システム。
【請求項9】
コンピュータが、
配信サーバを介して第1のエリアから第2のエリアに映像を配信する際の、前記第1のエリアの複数位置における配信環境と、前記位置及び前記第1のエリアの環境情報とが関連付けされた配信環境のセットを取得し、
前記第1のエリアで映像の配信を伴う遠隔臨場が行われるときの環境情報と前記配信環境のセットとに基づいて、前記遠隔臨場が行われるときの前記第1のエリア内の配信環境を導出し、
導出した前記第1のエリア内の配信環境を表示装置に表示させる、
処理を行うことを特徴とする配信環境提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配信環境提示システム及び配信環境提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における段階確認、材料確認、立会等を効率よく実施する方法として、近年、これら各種確認行為を非接触・リモートで行う遠隔臨場と呼ばれる方法が適用されている。遠隔臨場では、Web会議システムを利用して、建設現場の映像(画像を含む)及び音声を第三者が利用する端末にリアルタイムで配信(送信)するとともに、建設現場の状況を遠隔で第三者に伝えたり、報告したりする。遠隔臨場を適用することにより、第三者が建設現場に臨場することなく段階確認、材料確認、立会等を実施することができ、例えば、一人の監督職員が複数の建設現場に対する立会を効率よく実施することができる。
【0003】
遠隔臨場では、例えば、カメラ及びマイクを備えた(又はそれらが接続された)無線通信端末を建設現場の周辺に提供されている通信キャリアの基地局またはWi-Fi(登録商標)と無線接続する。このため、遠隔臨場では、第三者が利用する端末に配信される映像や音声が途切れたり、無線通信端末と基地局との無線接続が切断したりすることがないよう、建設現場内における無線通信環境を把握しておく必要があった。
【0004】
無線通信環境の把握に関連した技術として、例えば、Wi-Fi(登録商標)の電波強度を測定して可視化する処理をスマートフォンやパーソナルコンピュータ等に実行させるアプリケーション(ソフトウェア)がある。また、屋外で無線LAN(Local Area Network)を利用する場合の無線通信環境を気象情報と関連付けて可視化する方法等も周知であり、かつ種々の方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔臨場が実施される建設現場では、例えば、地形や重機の位置等の建設現場内の状況が日々変化しており、建設現場内の状況に応じて現場内の無線通信環境も変化する。一方、無線通信環境を把握することが可能な上述したような周知技術は、一般に、リアルタイムで測定時点の測定結果を可視化するものである。したがって、建設現場の無線通信環境を把握することに上述したような周知技術を適用する場合、現場内の状況の変化に応じて都度測定をすることとなり、効率的ではない。また、周知技術を用いても、予定されている遠隔の現場確認日時における無線通信環境を予測することは難しかった。
【0006】
1つの側面において、本発明は、建設現場内の無線通信端末から映像を配信する際の配信環境を効率よく把握することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様に係る配信環境提示システムは、配信サーバを介して第1のエリアから第2のエリアに映像を配信する際の、前記第1のエリアの複数位置における配信環境と、前記位置及び前記第1のエリアの環境情報とが関連付けされた配信環境のセットを記憶する記憶装置と、前記第1のエリアで映像の配信を伴う遠隔臨場が行われるときの環境情報と前記配信環境のセットとに基づいて、前記遠隔臨場が行われるときの前記第1のエリア内の配信環境を導出するプロセッサと、導出した前記第1のエリア内の配信環境を表示する表示装置と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様によれば、建設現場内の無線通信端末から映像を配信する際の配信環境を効率よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る遠隔臨場のための配信システムの構成例を説明する図である。
図2】作業エリア及びその周辺の地図情報の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る配信環境提示システムの構成例を示す図である。
図4】配信環境の導出に利用する通信情報のセットの一例を説明する図である。
図5】第1の実施形態に係るマップ作成処理の一例を説明するフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係るマップ表示処理の一例を説明するフローチャートである。
図7】マップ表示処理により表示される配信環境マップの一例を示す図である。
図8】作業エリア内に重機及び監視カメラを配置した第1の例を説明する図である。
図9】作業エリア内に地面の凹凸がある状態と配信環境との関係の第2の例を説明する図である。
図10】第2の実施形態に係るマップ補正処理の一例を説明するフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係る配信環境マップの一例を説明する図である。
図12】第2の実施形態における配信環境の補正の具体例を説明する図である。
図13】第3の実施形態に係るウェアラブル装置の構成例を説明する図である。
図14】第3の実施形態に係る追跡処理の一例を説明するフローチャートである。
図15】無線通信環境の低下を報知するための装置構成の別の例を説明する図である。
図16】コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る配信環境提示システム及び配信環境提示方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明を適用可能な遠隔臨場に関する周知の構成、機能、及び動作等に関する詳細な説明を省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る遠隔臨場のための配信システムの構成例を説明する図である。図1に例示した配信システム100は、画像(映像を含む)や音声を取得可能なウェアラブル装置2と、画像や音声を出力可能な情報処理装置4と、ウェアラブル装置2と情報処理装置4との間の通信を中継するインターネット(クラウド)5上の配信サーバ6とを含む。図1に例示した配信システム100は、Web会議システムを指す。図1において、「現場側」は、例えば、建設現場内の立会が必要な作業が行われる場所に該当し、「立会側」は、例えば、ウェアラブル装置2で取得した画像または音声を、配信システム100を利用して確認できる場所に該当する。したがって、「立会側」は、「現場側」とは物理的(地理的)に離れた場所(例えば、建設現場から離れた場所)であってもよいし、「現場側」に近接した場所(例えば、建設現場内)であってもよい。
【0012】
ウェアラブル装置2は、建設現場の状況を報告する作業員1が装着するものであり、カメラ、マイク、及びレシーバ(例えば、イヤフォン)、並びに基地局7Aと無線通信する通信装置を含む。カメラは、建設現場内の映像(画像を含む)を撮影することに利用する。マイクは、作業員1の発話(例えば、状況の報告等)を収音することに利用する。レシーバは、立会側の立会者3からの指示等の音声を放音することに利用する。基地局7Aは、例えば、建設現場近傍に設置された、第1の通信キャリア(キャリアA)が提供するものであり、ウェアラブル装置2の通信装置は、第1の通信キャリアが提供する通信サービスを利用して基地局7Aと無線通信し、基地局7Aを介してインターネット5上の配信サーバ6等と通信する。ウェアラブル装置2は、基地局との無線通信を介して、建設現場内で撮影した映像及び収音した音声をサーバ装置に送信する記録装置の一例である。本明細書では、ウェアラブル装置2として説明するが、ウェアラブル装置2に含まれる複数のハードウェア要素は、ウェアラブルな用途を意図したものに限定されない。現場側の作業員1が映像の撮影や音声の録音に利用する記録装置は、例えば、カメラ及びマイク付きのタブレット端末、スマートフォン等であっても良い。また、ウェアラブル装置2等の記録装置と基地局7Aとの無線通信は、特定の通信方法に限定されない。記録装置と基地局7Aとの無線通信は、例えば、携帯電話回線を利用するものであってもよいし、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN技術若しくはその他の近距離無線通信技術を利用するもの、又はその他の周知の無線通信技術を利用するものであってもよい。
【0013】
基地局7Aは、建設現場内のウェアラブル装置2の通信装置に限らず、建設現場外に位置する通信端末12と無線通信し、通信端末12とインターネット5との接続を中継することが可能である。通信端末12は、建設現場内での作業に関わっていない者(すなわち部外者)が使用するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の、任意の種類、任意の数の無線通信可能な情報処理装置であり得る。
【0014】
情報処理装置4は、表示装置、レシーバ(例えば、スピーカ)、及びマイク、並びに基地局7Bと無線通信する通信装置を含む。表示装置は、ウェアラブル装置2のカメラで撮影した映像を表示することに利用する。レシーバは、ウェアラブル装置2のマイクで収音した音声を放音することに利用する。マイクは、立会者3の発話(例えば、作業員1に対する指示等)を収音することに利用する。基地局7Bは、例えば、立会者3が立会を行う場所(以下「立会エリア」と記載する)の近傍に設置された、第1の通信キャリア又は他の通信キャリアが提供するものであり、情報処理装置4の通信装置は、通信キャリアが提供する通信サービスを利用して基地局7Bと無線通信し、基地局7Bを介してインターネット5上の配信サーバ6等と通信する。基地局7Bは、基地局7Aと同様、部外者が使用するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の、任意の種類、任意の数の情報処理装置と無線通信可能であり得る。立会時に情報処理装置4が接続される基地局は、ウェアラブル装置2が接続される基地局7Aとは別の基地局7Bに限定されない。立会エリアは、建設現場とは物理的に離れた場所であってもよいし、建設現場内であってもよい。このため、立会者3が建設現場内又は建設現場に近接した場所で立会を行う場合、情報処理装置4は、ウェアラブル装置2が接続される基地局7Aに接続されてもよい。また、情報処理装置4とインターネット5(配信サーバ6)との間の通信経路は、基地局を介さない(無線通信区間を含まない)経路であってもよい。
【0015】
配信サーバ6は、配信システム100としてのWeb会議システムにおけるWeb会議用のアプリケーションを提供するサーバ装置である。配信サーバ6は、ウェアラブル装置2からの映像及び音声を情報処理装置4へ配信するとともに、情報処理装置4からの音声をウェアラブル装置2に配信する処理を行う。
【0016】
なお、本実施形態の配信システム100は、現場側に複数の記録装置(例えば、上述したウェアラブル装置2、タブレット端末、スマートフォン等)を含み、各記録装置からの映像及び音声を立会者3が利用する情報処理装置4の表示装置に表示するように構成されてもよい。本実施形態の配信システム100において、立会者3が利用する情報処理装置4は、上述のように、基地局7Aとは別個に設置された基地局7Bに限らず、基地局7Aと無線通信をしてもよい。また、立会エリアは、建設現場等の立会者3による立会を受けるエリア(以下「作業エリア」と記載する)外のエリアに限らず、例えば、作業エリア内にあってもよい。また、単一の建設現場内に作業エリアと立会エリアとが含まれてもよい。つまり、本明細書における用語「作業エリア」は、現場の映像を撮影するエリアであり、用語「立合エリア」は、作業エリアの映像または音声を配信サーバ6を介して確認できるエリアである。
【0017】
また、配信システム100は、図1に例示したような配信サーバ6を経由してウェアラブル装置2から情報処理装置4に映像や音声が配信される構成に限らず、例えば、ピアツーピア(P2P)により、ウェアラブル装置2から情報処理装置4に配信サーバ6を介さずに映像や音声が配信される構成であってもよい。
【0018】
図2は、作業エリア及びその周辺の地図情報の一例を示す図である。図2に例示した地図情報20では、点線で囲まれた領域が作業エリア10(建設現場)を示している。作業エリア10の周囲には既設の道路及び建物があり、例えば、第1の通信キャリア(キャリアA)が設置した複数の基地局7が点在している。複数の基地局7の各々は、例えば、作業エリア10の周囲で生活する人等が利用するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を、携帯電話回線を利用して図1のインターネット5に接続するものであり得る。
【0019】
一方、作業エリア10として図2に示されている建設現場内は、例えば、住宅や商業施設の建設が行われる区域であり、情報処理装置を日常的にインターネット5に接続する人がいないので、基地局7が設置されていない。したがって、作業エリア10内で行われる作業に対して配信システム100を利用した遠隔臨場を適用する場合、ウェアラブル装置2は、作業エリア10外の部外者も利用可能な基地局7と無線通信を行う。この場合、作業エリア10内のうちの、近くに複数の基地局7のいずれかがある位置ではウェアラブル装置2と基地局7との無線通信環境が良好であり得る。しかしながら、ウェアラブル装置2の近くに基地局7がある場合でも、その基地局7と無線通信をしている通信端末の数が多い場合や、作業エリア10外で基地局7を介して通信負荷の高い通信を行っている通信端末がある場合には、無線通信環境が劣化し得る。また、作業エリア10が広い場合や作業エリア10内に重機等の電波を遮る物体がある場合には、ウェアラブル装置2と基地局7との無線通信環境が劣化し得る。本明細書における用語「無線通信環境」は、無線通信の快適性の指標となるものであり、例えば、基地局7からの電波の強度、基地局7を介した無線通信の通信速度等と関連付けられる。無線通信環境が良好であるか否かは、例えば、後述するRSRP(Reference Signal Received Power)、パケット損失、スループット、遅延等の情報を利用して評価することができる。
【0020】
ウェアラブル装置2と基地局7との無線通信環境が劣化すると、ウェアラブル装置2からの映像及び音声をリアルタイムで情報処理装置4に配信することができず、遠隔臨場による段階確認、材料確認、立会等を適切に実施することができない。また、上述したような周知技術を用いて、作業エリア10内の電波強度の分布を測定して可視化する方法は、測定時の分布をリアルタイムに可視化(表示)するものである。そのため、遠隔臨場がなされる時点での電波強度の分布を、遠隔臨場を行う前の日時において予測するのは難しく、また、電波強度の分布に影響し得る作業エリア10内の地形や重機の位置が変更されるたびに、都度電波強度の分布を測定するのは非効率的である。
【0021】
図3は、第1の実施形態に係る配信環境提示システムの構成例を示す図である。図3に例示した配信環境提示システム150は、配信システム100を利用した遠隔臨場を実施する作業エリア10内の各位置と、当該各位置における映像及び音声の配信環境との関係を可視化するシステムであり得る。
【0022】
配信環境提示システム150は、情報収集装置30と、配信サーバ42と、情報処理装置44とを含む。情報収集装置30は、作業エリア10内の無線通信環境の評価に利用可能な情報を収集する。配信サーバ42及び情報処理装置44は、情報収集装置30による情報収集のための映像や音声の配信に利用するものである。情報収集装置30と配信サーバ42とは基地局41を介して接続され、配信サーバ42と情報処理装置44とは基地局43を介して接続される。基地局41、配信サーバ42、基地局43、及び情報処理装置44は、それぞれ、図1を参照して上述した基地局7A、配信サーバ6、基地局7B、及び情報処理装置4であってもよい。また、配信サーバ42と情報処理装置44とは、基地局43の代わりに基地局41を介して接続されてもよい。
【0023】
情報収集装置30は、通信端末31と、測定装置32とを含む。通信端末31は、図1を参照して上述したウェアラブル装置2と対応する通信装置であり、カメラ33、マイク34、レシーバ35、及び送受信部36を含む。通信端末31は、例えば、スマートフォン又はタブレット型コンピュータ等であり得る。
【0024】
測定装置32は、通信端末31をウェアラブル装置2として使用した配信システムにおける配信環境(無線通信環境)と通信端末31の位置とを測定するものであり、測定部37、ルータ39、及び記憶部40を含む。ルータ39は基地局7Aと無線通信する。通信端末31とルータ39との通信は、無線及び有線のどちらでもよい。測定部37は、例えば、遠隔臨場(Web会議)を模した通信端末31、情報処理装置44、及び配信サーバ42による映像及び音声の配信(送受信)を行ったときにルータ39を通過するパケットに基づいて、配信環境の導出に利用する通信情報を測定する。測定する通信情報は、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power)、パケット損失、スループット、遅延等を含む。また、測定部37は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ38で受信したGNSS信号に基づいて、測定装置32の位置情報を取得する。測定部37により測定した通信情報及び取得した位置情報は、測定時の条件とともに、記憶部40に格納される。記憶部40は、例えば、カード型又はUSB端子を備えた可搬型記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。
【0025】
作業エリア内全体の配信環境を導出するために、配信環境提示システム150を利用して、遠隔臨場(Web会議)を模した映像及び音声の配信(送受信)を作業エリア内の複数の位置で行って通信情報を取得する。これにより、図4に例示したような、配信環境を導出するための通信情報のセット45が得られる。作業エリア内の複数の位置で通信情報を取得する作業は、例えば、通信端末31を持った人物が徒歩で作業エリア内を移動して行ってもよいし、車両等の移動手段を利用して作業エリア内を移動して行ってもよい。
【0026】
図4は、配信環境の導出に利用する通信情報のセットの一例を説明する図である。図4の通信情報のセット45は、ある通信手段とWeb会議用アプリケーションの組み合わせで測定して得られた通信情報のセットを示している。通信手段は、例えば、図3のルータ39と無線通信する基地局41を提供する通信キャリアを識別する情報である。通信手段は、無線通信の種別、例えば、ルータ39と基地局41との無線通信が携帯電話回線を利用した通信、Wi-Fi等の近距離無線通信を利用した通信、又はその他の無線通信技術を利用した通信のいずれであるかを示す情報等を含んでもよい。通信アプリは、通信端末31、情報処理装置44、及び配信サーバ42による映像及び音声の配信(送受信)に利用したWeb会議用アプリケーションを識別する情報である。
【0027】
通信情報のセット45における測定時情報1は、通信情報を測定したときの日時及び天候を示す情報を含む。測定時情報1に続いて、測定時情報1で特定される日時に測定された通信情報が、測定した位置毎に記録される。測定時情報1で特定される日時とは異なる日時にも測定を行った場合、通信情報を測定したときの日時及び天候を示す測定時情報2と、それに続く位置毎の通信情報が記録される。通信情報のセット45は、例えば、1回の測定で得られた通信情報のみを記録したものであってもよいし、曜日や時間帯(例えば、午前と午後)の組み合わせが異なる複数回の測定で得られた通信情報を測定回毎に識別可能な状態で記録したものであってもよい。測定時情報1は、例えば、測定時の映像の画質、フレームレート等を示す情報を含んでもよい。
【0028】
また、配信システム100で利用可能な基地局7としてのキャリアが複数ある場合や、利用可能なWeb会議用アプリケーションが複数ある場合には、通信手段と通信アプリの組み合わせが異なる通信情報のセットを生成してもよい。
【0029】
通信情報のセット45は、例えば、図3の測定装置32の測定部37により生成され、記憶部40に格納される。測定終了後、記憶部40に格納された通信情報のセット45を利用して作業エリア内の各位置における配信環境を導出し、導出した配信環境を示す情報を作業エリア10の地図情報20と合成して配信環境マップを作成する。配信環境マップの作成には、例えば、図3の情報処理装置44、図1の情報処理装置4、又はその他のコンピュータ等の情報処理装置を利用することができる。測定装置32の記憶部40に格納された通信情報のセット45は、周知のデータ転送方法のいずれかにより情報処理装置44等へ転送する。通信情報のセット45は、例えば、測定装置32と情報処理装置とを無線又は有線で接続して転送してもよいし、上述した可搬型記憶装置を情報処理装置に接続して転送してもよい。配信環境マップの作成は、例えば、図3の測定装置32若しくは通信端末31、又はインターネット5上の別の情報処理装置で行われてもよい。
【0030】
図5は、第1の実施形態に係る配信環境マップ作成処理の一例を説明するフローチャートである。図5に例示した配信環境マップ作成処理は、通信情報のセット45に基づいて作業エリア10内の各位置における配信環境を示す配信環境マップを作成する処理の一例であり得る。本実施形態に係る配信環境マップ作成処理を、図3の情報処理装置44が行うものとして以下に説明するが、図5に例示した配信環境マップ作成処理は、例えば、立会者3が利用する情報処理装置4(図1を参照)、又はその他の情報処理装置が行ってもよい。
【0031】
情報処理装置44は、まず、作業エリア10の位置情報及びマップの表示形式を特定する(ステップS101)。作業エリア10の位置情報は、例えば、地図情報20における作業エリア10の範囲を示す緯度と経度の情報に基づいて特定する。マップの表示形式を特定することは、例えば、作業エリア10を複数のブロックに分割して各ブロックの配信環境を色で示す表示形式を含む1つまたは複数の表示形式のなかから、マップ作成者(情報処理装置44の利用者)が選択して特定することを含み得る。また、マップの表示形式を特定することは、例えば、作業エリア10を複数のブロックに分割する場合の一つのブロックの寸法を特定することを含み得る。マップの表示形式は、例えば、作業エリア10内に設定されるブロック毎に導出した配信環境を示す情報をブロック単位で表示する形式に加え、配信環境をコンター図として表示する形式を含んでもよい。
【0032】
次に、情報処理装置44は、特定した位置情報及び表示形式に基づいて、配信環境を導出するブロックのセットを設定する(ステップS102)。配信環境を導出するブロックのセットにおける各ブロックは、ステップS101で特定した位置情報及び表示形式に従って作業エリア10及びその周囲を含む地図上の範囲を分割して得られる複数のブロックの中から選択される。選択条件は、全体が作業エリア10内に含まれるブロックのみであってもよいし、一部分が作業エリア10内にあり残りの部分が作業エリア10外にあるようなブロックを含んでもよい。
【0033】
次に、情報処理装置44は、通信手段(キャリア)及び通信アプリを特定する(ステップS103)。通信手段及び通信アプリを特定することは、複数の組み合わせの中からマップ作成者が選択して特定することを含み得る。なお、ステップS103の処理は、例えば、ステップS101よりも前に行われてもよいし、ステップS101と並列に行われてもよい。また、通信手段と通信アプリの組み合わせが一通りに限定されている場合、ステップS103は省略することができる。
【0034】
ステップS101~S103の後、情報処理装置44は、ステップS102で設定したブロックのセットにおける各ブロックの配信環境を導出する配信環境セット導出ループを実施する(ステップS104s~S104e)。配信環境セット導出ループは、図4に例示した通信情報のセット45における測定時情報毎に繰り返し行う。
【0035】
配信環境セット導出ループは、ブロックのセットに含まれるブロック毎に配信環境を導出する配信環境導出ループ(ステップS105s~S105e)と、導出した配信環境のセットを、特定した位置情報、表示形式、通信手段、通信アプリ、及び処理の対象になっている測定時情報の組と関連付けて保持する処理(ステップS109)とを含む。
【0036】
配信環境導出ループにおいて、情報処理装置44は、通信情報のセット45における位置情報を検索し、処理の対象になっているブロック内の位置の測定データがあるか否かを判定する(ステップS106)。測定データがある場合(ステップS106;YES)、情報処理装置44は、該当する測定データに基づいて処理の対象になっているブロックの配信環境を導出する(ステップS107)。該当する測定データが1つの場合、情報処理装置44は、その1つの測定データに基づいて配信環境を導出する。該当する測定データが複数の場合、情報処理装置44は、例えば、その複数の測定データを利用した統計処理の結果に基づいて配信環境を導出する。例えば、情報処理装置44は、複数の測定データにおける平均値、標準偏差等に基づいて配信環境を導出する。なお、配信環境の導出方法は、特定の方法に限定されない。
【0037】
一方、処理の対象になっているブロック内の位置の測定データがない場合(ステップS106;NO)、情報処理装置44は、所定の補完規則に基づいて配信環境を導出する(ステップS108)。所定の補完規則は、特定の規則に限定されない。ステップS108において、情報処理装置44は、例えば、処理の対象になっているブロックと隣接する他のブロックの配信環境に基づいて、処理の対象になっているブロックの配信環境を補完する。
【0038】
情報処理装置44は、ステップS106の判定結果に応じてステップS107又はS108を実施する配信環境導出ループをブロックのセットに含まれる全てのブロックに対して実施する。ブロックのセットに含まれる全てのブロックに対して実施すると、情報処理装置44は、配信環境導出ループを終了する。そして、情報処理装置44は、導出した配信環境のセットを、特定した位置情報、表示形式、通信手段、通信アプリ、及び処理の対象になっている測定時情報の組と関連付けて保持する(ステップS109)。情報処理装置44は、配信環境導出ループ(S105s~S105e)とその後のステップS109の処理を、通信情報のセット45内において測定時情報と関連付けられた情報の組毎に実施する。全ての情報の組に対して実施すると、情報処理装置44は、配信環境セット導出ループを終了し、マップ作成処理を終了する。
【0039】
なお、図5を参照して上述したマップ作成処理は、図3の情報処理装置44に限らず、他の情報処理装置上で実行されてもよい。マップ作成処理により作成され、情報処理装置44が保持している配信環境のセット等の情報は、例えば、立会者3が立会時に利用する図1の情報処理装置4(図3の情報処理装置44と同一の装置であってもよい)に提供される。配信環境のセット等の情報は、例えば、図6を参照して後述するマップ表示処理を情報処理装置4に実行させるアプリケーションと関連付けられ、上述した可搬型記憶装置を利用して、又はインターネット5等の通信ネットワークを介して情報処理装置4に転送される。
【0040】
本実施形態の配信システム100を利用した遠隔臨場により段階確認、材料確認、立会等を実施する場合、上述したマップ作成処理により作成した配信環境セットと、遠隔臨場実施時の情報(例えば、日時及び天候等)とに基づいて、遠隔臨場実施時の作業エリア10内の配信環境を生成して表示または予測表示する。
【0041】
図6は、第1の実施形態に係るマップ表示処理の一例を説明するフローチャートである。図6に例示したマップ表示処理は、通信情報のセット45に基づいて作成した配信環境マップを利用して遠隔臨場実施時の作業エリア10内の配信環境を表示する処理の一例であり得る。図6に例示したマップ表示処理は、例えば、図3の情報処理装置44、立会者3が利用する図1の情報処理装置4、又はその他の情報処理装置が行う。
【0042】
情報処理装置44は、まず、作業エリア10の位置情報及びマップの表示形式を特定する(ステップS201)。ステップS201の処理は、マップ作成処理のステップS101と同じ処理であってよい。
【0043】
次に、情報処理装置44は、特定した位置情報に基づいて作業エリア10のマップを表示する(ステップS202)。ステップS202において、情報処理装置44は、作業エリア10の地図情報20(図2参照)を表示する。表示する作業エリア10のマップは、特定の形式に限定されるものではなく、例えば、航空写真等であってもよい。
【0044】
次に、情報処理装置44は、通信手段(キャリア)、通信アプリ、遠隔臨場を実施する日時、及び天候を含む、配信環境の表示条件を特定する(ステップS203)。通信手段及び通信アプリを特定することは、複数の組み合わせの中から情報処理装置44の利用者が選択して特定することを含み得る。遠隔臨場を実施する日時を特定することは、例えば、具体的な日付を選択又は入力して特定すること、実施日が平日(祝日を除く月曜日から金曜日までのいずれか)と、休日(土曜日、日曜日、及び祝日のいずれか)とのどちらであるかを選択して特定することを含み得る。また、遠隔臨場を実施する時間は、開始時刻から終了時刻までの時間範囲を選択して特定することを含み得る。遠隔臨場実施時の天候は、例えば、晴れ等の電波強度への影響がない天気と雨や雪等の電波強度への影響がある天気のどちらであるかを選択して特定することを含み得る。なお、遠隔臨場を実施する日時、及び天候は、遠隔臨場が行われるときの環境情報の例に過ぎない。遠隔臨場が行われるときの環境情報は、他の情報、例えば、遠隔臨場で配信(送受信)する映像の画質やフレームレート等を選択(特定)する情報を含んでもよい。
【0045】
次に、情報処理装置44は、特定した通信手段及び通信アプリと関連付けられた配信環境のセットのうちの、特定した日時及び天候と対応する配信環境のセットを検索する(ステップS204)。ステップS204において、情報処理装置44は、例えば、配信環境のセットと関連付けられた測定時情報の日付及び天候と、ステップS203で特定した日時及び天候との類似度が最も高い配信環境のセットを検索する。例えば、ステップS203で特定した実施日が平日である場合、日付が平日である測定時情報と関連付けられた配信環境のセットを検索する。また、配信環境のセットが曜日毎に作成されている場合、例えば、ステップS203で特定した実施日と同じ曜日の測定時情報と関連付けられた配信環境のセットを検索する。
【0046】
次に、情報処理装置44は、ステップS203で特定した日時及び天候と対応する配信環境のセットがあるか否かを判定する(ステップS205)。なお、ステップS205における判定基準は、特定の判定基準に限定されない。例えば、ステップS205では、ステップS203で特定した日時及び天候の両方が対応するセットがある場合にのみ対応するセットがあると判定してもよいし、日時及び天候のいずれか一方のみが対応するセットがある場合に対応するセットがあると判定してもよい。また、ステップS205では、例えば、特定した日時及び天候である場合の各ブロックの配信環境の予測に利用可能な配信環境のセットがあった場合に、対応する配信環境のセットがあると判定してもよい。
【0047】
対応するセットがある場合(ステップS205;YES)、情報処理装置44は、対応する配信環境のセットに含まれる各配信環境を作業エリア10のマップと関連付けて表示し(ステップS206)、マップ表示処理を終了する。ステップS206は、例えば、対応する配信環境のセットに基づいて遠隔臨場を実施するときの配信環境を予測する処理、対応する配信環境のセットに基づいてコンター図を生成する処理を含んでもよい。対応するセットがない場合(ステップS205;NO)、情報処理装置44は、対応する配信環境がないことを示すエラー表示をし(ステップS207)、マップ表示処理を終了する。
【0048】
図7は、マップ表示処理により表示される配信環境マップの一例を示す図である。図7に例示した配信環境マップ50は、マップ表示部51、配信環境インジケータ52、通信手段選択部53、通信アプリ選択部54、画質選択部55、フレームレート選択部56、実施日選択部57、時間帯選択部58、及び天候選択部59を含む。
【0049】
マップ表示部51には、作業エリア10を含む地図情報20に、配信環境を示すマップ60が重ねて表示される。配信環境を示すマップ60は、図5を参照して上述したように、作業エリア10を複数のブロックに分割して各ブロック内の配信環境を示すものである。各ブロック内の配信環境は、マップ表示部51の左側に配置された配信環境インジケータ52に従って可視化される。図7に例示した配信環境マップ50では、配信環境を「良好」から「不良」までの4段階に分けており、マス内のドットパターンが濃くなるほど配信環境が悪くなっていることを示している。なお、配信環境インジケータ52は、配信環境を5段階以上に分けたものであってもよい。また、配信環境インジケータ52は、図7に例示したようなドットパターンの濃さに限らず、色によって配信環境を示すものであってもよい。マップ60の表示形式は、特定の形式に限定されない。例えば、マップ60は、上述したようにコンター図として(すなわち、作業エリア10をブロックに分割せずに、色別の等値線を用いて)配信環境を示す形式であっても良い。言い換えると、マップ60は、例えば、図7に示したブロックのうちの、配信環境が同じ段階であり隣接して連続する複数のブロックを1つの領域とし、その1つの領域に含まれるブロック同士の境界を非表示にしてもよい。
【0050】
また、マップ60は、例えば、作業エリア10内の特定の位置やその周囲の配信環境を表示するようにしてもよい。具体的には、建設現場の全体を示す作業エリア10のうちの図1の「現場側」に該当する、立会のための画像(映像)及び音声を取得する作業が行われる部分領域の配信環境を選択的に表示してもよい。配信環境を表示する部分領域は、例えば、情報処理装置44等で実行されるアプリケーションにより管理される作業工程に基づいて選択(指定)することができる。また、配信環境を表示する部分領域は、例えば、利用者が情報処理装置4を操作して選択(指定)することができるようにしてもよい。
【0051】
通信手段選択部53は、ウェアラブル装置2との通信に利用可能な基地局7の通信キャリアを選択可能なプルダウンメニューであり得る。通信アプリ選択部54は、配信システム100において映像及び音声の配信(送受信)に利用可能なWeb会議用のアプリケーションを選択可能なプルダウンメニューであり得る。画質選択部55及びフレームレート選択部56は、それぞれ、配信システム100において配信(送受信)する映像の画質及びフレームを選択可能なプルダウンメニューであり得る。
【0052】
実施日選択部57は、例えば、遠隔臨場の実施日が平日(祝日を除く月曜日~金曜日)、休日(土曜日、日曜日、及び祝日)のいずれであるかを選択可能なプルダウンメニューであり得る。実施日選択部57は、例えば、実施日の曜日を選択可能なプルダウンメニューであってもよい。時間帯選択部58は、例えば、遠隔臨場を実施する時間帯を選択可能なプルダウンメニューであり得る。時間帯選択部58における選択の単位となる時間範囲は、図7に例示した2時間に限らず、他の時間範囲であってもよい。天候選択部59は、遠隔臨場実施日時の天候を選択可能なプルダウンメニューであり得る。
【0053】
このように、本実施形態の配信環境提示システム150は、作業エリア10内の複数の位置で遠隔臨場(Web会議)を模した映像及び音声の配信(送受信)を行って各位置における通信情報を測定し、通信情報のセット45を作成することで、各位置の配信環境を導出することに利用される。導出した各位置の配信環境は、配信サーバを介して第1のエリアから第2のエリアに映像を配信する際の、第1のエリアの複数位置における配信環境のセットとして、配信環境マップを表示するマップ表示処理を実施する情報処理装置がアクセス可能な所定の記憶装置に格納(記憶)される。また、配信環境提示システム150は、遠隔臨場を実施する日時及び天候を含む配信環境の表示条件に基づいて、導出した配信環境のセットのうちの表示条件に最も適した配信環境のセットに含まれる配信環境、又は配信環境のセットから予測した配信環境を作業エリアのマップに重ねて表示する。このため、配信システム100における基地局7Aを介したウェアラブル装置2と配信サーバ6との無線通信環境(配信環境)の良否が、日時や天候等に応じて変化する場合であっても、遠隔臨場の実施直前又は実施中に測定することなく、作業エリア10内の配信環境を予測することで把握することができる。
【0054】
また、本実施形態の配信環境提示システム150は、複数の通信キャリアのそれぞれが設置しており作業エリア10内のウェアラブル装置2と無線通信可能な基地局7Aがある場合に、通信キャリア毎に通信情報のセット45(図4を参照)を取得して配信環境セットを導出しておくことができる。このため、遠隔臨場を実施する日時の各通信キャリアの配信環境を比較することにより、配信環境が最も良好な通信キャリアを選択して遠隔臨場を実施することができる。
【0055】
また、本実施形態の配信環境提示システム150は、例えば、遠隔臨場を実施する際に利用可能な複数種類のWeb会議用アプリケーションのそれぞれで通信情報のセット45を取得して配信環境セットを導出しておくことができる。このため、遠隔臨場を実施する日時の各Web会議用アプリケーションの配信環境を比較することにより、配信環境が最も良好なアプリケーションを選択して遠隔臨場を実施することができる。
【0056】
更に、本実施形態の配信環境提示システム150を利用することにより、遠隔臨場を実施する日時における作業エリア10内の、配信環境(無線通信環境)が遠隔臨場を実施するための要件を満たしていない位置の有無、どの位置で要件を満たしていないかを、実施する前に把握することができる。このため、例えば、遠隔臨場を実施するための要件を満たしていない位置で立会等が必要な作業が行われる場合には建設現場に出向いて立会等を行うようにする等、立会者3の立会方法を事前に計画することができる。したがって、遠隔臨場の実施中に映像や音声が途切れて立会に失敗することを防げる。
【0057】
[第2の実施形態]
本実施形態では、第1の実施形態で説明した配信環境提示システム150により配信環境マップ50を表示(提示)する際に、作業エリア10内の状態を考慮する方法を説明する。作業エリア10内の状態は、例えば、作業エリア10内における重機の配置、作業エリア10内の地形(地面の凹凸)、作業エリア10内にある構造物(例えば、建設中のビル等)の外形等である。
【0058】
図8は、作業エリア内に重機及び監視カメラを設置した第1の例を説明する図である。図9は、作業エリア内に地面の凹凸がある状態と配信環境との関係の第2の例を説明する図である。
【0059】
作業エリア10が上述した建設現場である場合、作業エリア10内には、図8に例示したように、クレーン65や油圧ショベル66等の重機や図示しない発電機等の建機が配置される。クレーン65や油圧ショベル66の配置は、作業エリア10内の作業の進捗に応じて変化し得る。そして、クレーン65や油圧ショベル66等の重機が遠隔臨場に使用するウェアラブル装置2と基地局7Aとの間に配置された場合、それら重機が障害物となり電波強度が低下するため、配信環境が劣化する。そのため、配信環境マップ50を表示する場合、作業エリア10内の重機の配置を考慮して配信環境を補正することが好ましい。重機の配置は、例えば、情報処理装置44に表示されるマップ表示部51上で指定することができる。
【0060】
図示しないが、図8の作業エリア10内に建設中の高層ビルがある場合もある。その場合であっても、日々、建設中の高層ビルの高さには変化がある。そのような高層ビルが遠隔臨場に使用するウェアラブル装置2と基地局7Aとの間に配置された場合、障害物となり電波強度が低下するため、配信環境が劣化する。したがって、工事実施状況または建設スケジュール等のBIM(Building Information Modeling)情報を取り込み、建設中の高層ビルの高さ及び位置を取得してもよい。加えて、建設現場の地形情報などもCIM(Construction Information Modeling)情報から取り込んで、地形情報を取得してもよい。
【0061】
また、作業エリア10が上述した建設現場である場合、作業エリア10内では、例えば、図9に例示したように、地面が平坦であれば配信環境(ウェアラブル装置2と基地局7との無線通信)が良好な範囲内であっても、地面70の凹凸により電波強度が低下し、配信環境が劣化することがある。配信環境マップ50を表示する場合、作業エリア10内の地形(地面70の凹凸の状態)を考慮して配信環境を補正することが好ましい。地形の情報を取得する方法は、特定の方法に限定されない。地形の情報は、例えば、情報処理装置44に表示されるマップ表示部51上で地図情報20を編集して取得してもよいし、図8を参照して後述する監視カメラ67の映像を利用した画像解析を行って地図情報20を自動的に変更して取得してもよいし、CIM(Construction Information Modeling)情報から取得してもよい。
【0062】
更に、作業エリア10内の配信環境は時間帯によって変化し得るが、配信環境提示システム150による測定を遠隔臨場が実施される時間帯毎に行って配信環境セットを導出することは、手間と時間がかかり効率的とは言えない。このため、配信環境マップ50を表示する場合、例えば、図8に示したような監視カメラ67で撮影した映像を監視サーバ等に配信するときの時刻と配信環境との関係に基づいて、配信環境を補正することが好ましい。この場合、例えば、図8に示したように、監視カメラ67の映像を、第1の実施形態で説明した測定装置32(図3を参照)を介してインターネット5上の監視サーバ等に送信することで、監視カメラ67が設置された位置と、当該位置の配信環境の時間変化とを容易に取得することができる。
【0063】
また、監視カメラ67で映像を撮影するときに、例えば、撮影画角の中心を所定の周期で変化させ映像内の情報を変化させることにより、映像を配信する際の通信負荷を変更することができ、より適切な配信環境を導出することができる。更に、監視カメラ67で撮影した映像を監視カメラ67自身又は測定装置32と、配信先の装置との両方で録画し、それらを比較することで、映像の劣化度を容易に知ることができる。
【0064】
図10は、第2の実施形態に係るマップ補正処理の一例を説明するフローチャートである。図10に例示したマップ補正処理は、例えば、図6を参照して上述したマップ表示処理におけるステップS206の処理の一部であり得る。図10に例示したマップ補正処理は、例えば、情報処理装置44が行う。
【0065】
情報処理装置44は、まず、補正用の付加情報があるか否かを確認する(ステップS301)。補正用の付加情報は、上述した重機の配置に関する情報、地形(地面70の凹凸等)の情報、構造物の位置及び外形等の情報、及び監視カメラ67の映像を配信する際の監視カメラ67の位置と時刻と配信環境との関係を示す情報のうちの1つ以上の情報を含み得る。補正用の付加情報は、例えば、メモリカード等の可搬型記憶装置を利用して情報処理装置44に提供されてもよいし、インターネット5等の通信ネットワーク上のサーバ等の装置から情報処理装置44に提供されてもよい。
【0066】
補正用の付加情報がある場合(ステップS301;YES)、情報処理装置4は、その付加情報に基づいて、配信環境セットに含まれる複数の配信環境の一部又は全部を補正する(ステップS302)。例えば、付加情報が重機の配置に関する情報の場合、情報処理装置44は、重機が配置された位置の周囲であって、基地局7からの距離が基地局から重機までの距離よりも長くなるブロックの配信環境の段階を不良側に低くする補正をする。例えば、付加情報が地形の情報である場合、谷部や丘陵部等が基地局7との間にあり基地局7からの電波が弱まるブロックの配信環境の段階を不良側に低くする補正をする。例えば、付加情報が構造物の位置及び外形の情報である場合、その構造物により基地局7からの電波が弱まるブロックの配信環境の段階を不良側に低くする補正をする。例えば、補正用の付加情報が監視カメラ67の映像を配信する際の監視カメラ67の位置と時刻と配信環境との関係を示す情報である場合、例えば、遠隔臨場を実施する時間帯が、監視カメラ67の映像の配信環境が相対的に低くなる時間帯である場合には配信環境セットに含まれる配信環境の段階を不良側に低くする。
【0067】
ステップS302の処理を終えると、情報処理装置44は、マップ補正処理を終了し、補正後の配信環境を配信環境マップ50のマップ表示部51に表示する。
【0068】
図11は、第2の実施形態に係る配信環境マップの一例を説明する図である。図12は、第2の実施形態における配信環境の補正の具体例を説明する図である。
【0069】
図11に例示した配信環境マップ50は、図7に例示した配信環境マップ50に補正用の付加情報を設定可能な付加情報設定部80を追加したものである。付加情報設定部80は、作業エリア10内に配置する建機(重機)を選択するボタン81、82、83と、地形情報を設定するボタン84を含む。
【0070】
例えば、ボタン81を押す操作をした後、作業エリア10内の位置を指定する操作を行うと、指定した位置にクレーンを表すオブジェクト(アイコン)85が表示される。また、例えば、ボタン82を押す操作をした後、作業エリア10内の位置を指定する操作を行うと、指定した位置に油圧ショベルを表すオブジェクト86が表示される。また、ボタン83は、例えば、その他の建機を選択可能なプルダウンメニューになっており、ボタン83を押すと、他の建機(例えば、破砕機等の環境リサイクル機械)を選択し、作業エリア10内にオブジェクトを配置することができる。
【0071】
作業エリア10内のうちの、例えば、図12に例示した位置P1の周囲にあるウェアラブル装置2は、通常、位置P1に最も近い基地局7と無線通信をする。このため、位置P1にクレーン(特に大型クレーン)が配置されると、情報処理装置44は、例えば、位置P1から見て位置P1に最も近い基地局7がある方向とは反対方向のブロックの配信環境の段階を不良側に低くする。同様に、作業エリア10内のうちの、例えば、図12に例示した位置P2の周囲にあるウェアラブル装置2は、通常、位置P2に最も近い基地局7(作業エリア10の下方にある不図示の基地局)と無線通信をする。このため、位置P2に油圧ショベル(特に大型油圧ショベル)が配置されると、情報処理装置4は、例えば、位置P2から見て位置P2に最も近い基地局がある方向とは反対方向のブロックの配信環境の段階を不良側に低くする。
【0072】
また、例えば、地形情報を設定するボタン84を押す操作を行うと、その時点における作業エリア10内の地形情報を取得することができる。地形情報は、例えば、配信環境マップ50を表示するアプリケーションを、作業エリア10内での作業工程を管理するアプリケーションと関連付けることにより取得することができる。また、地形情報は、例えば、ウェアラブル装置2を利用して情報処理装置44の利用者に作業エリア10内の状況を伝達することによって取得してもよい。
【0073】
また、作業エリア10内に設置された監視カメラ67から配信される映像を利用して配信環境の時間変化を取得している場合、例えば、時間帯選択部58における選択の単位となる時間範囲を、大まかな範囲(例えば、2時間等)から、より細かい範囲(例えば、30分毎等)に設定することができる。また、各曜日に監視カメラ67から配信される映像を利用して配信環境の時間変化を取得した場合、実施日選択部57を、実施日の曜日を選択可能なプルダウンメニューにすることができる。
【0074】
更に、図11には示していないが、本実施形態に係る配信環境マップ50は、例えば、作業エリア10内の構造物の位置及び高さに関する情報を入力又は取得して表示することが可能であってもよい。
【0075】
このように、本実施形態の配信環境提示システム150は、作業エリア10内の複数の位置で遠隔臨場(Web会議)を模した映像及び音声の配信(送受信)を行って導出した各位置の配信環境を、補正用の付加情報に基づいて補正して表示する。補正用の付加情報は、例えば、重機の配置、地形情報、構造物の位置及び高さ等の、配信環境に影響を与え得る情報を含む。また、補正用の付加情報は、例えば、配信環境を導出するための遠隔臨場(Web会議)を模した映像及び音声の配信(送受信)を実施した時間とは異なる時間帯に測定された通信情報を含む。異なる時間帯に測定された通信情報は、基地局と無線通信をする監視カメラ67により撮影された映像を基地局を介して配信したときの通信情報を含む。これらの付加情報のうちの1つ以上の付加情報に基づいて補正した配信環境を配信環境マップ50(マップ表示部51)に表示することにより、遠隔臨場を実施する日時の作業エリア10内の状況をよりよく反映した配信環境を表示することができる。
【0076】
なお、本実施形態の配信環境提示システム150における配信環境の補正方法は、上述したような方法に限定されない。配信環境の補正は、例えば、機械学習により構築した推論モデル(学習済みモデル)を利用して行ってもよい。機械学習の手法(アルゴリズム)は、特定の手法に限定されない。
【0077】
また、配信環境に影響を与え得る情報に基づく配信環境の補正は、上述した配信環境の段階を不良側に低くする補正に限定されない。例えば、作業エリア10内で切土や盛土が行われて凹凸のある地面が平坦化された場合、凹凸がなくなることにより基地局7からの電波強度が強くなる方向に変化する場所がある。このような基地局7からの電波強度が強くなる方向で配信環境に影響を与え得る付加情報がある場合には、図10のステップS302において、対応するブロックの配信環境の段階を良好側に高くする補正をする。
【0078】
更に配信環境に影響を与え得る情報は、上述した作業エリア10内の状態に関する情報に限らず、例えば、作業エリア10の周辺の構造物に関する情報等を含んでもよい。
【0079】
[第3の実施形態]
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る配信環境提示システム150の用途は、作業エリア10外にいる立会者3が遠隔臨場を実施する際に作業エリア10内の配信環境を確認することに限定されない。本実施形態では、作業エリア10内にいる作業員1や立会者3等による配信環境提示システム150の利用方法の例を説明する。
【0080】
図1の配信システム100において、ウェアラブル装置2を装着した作業員1は、作業中、作業エリア10内を移動することがあり、配信環境が悪いブロック内に入ることがある。配信環境が悪いブロック内に作業員1が入ってしまうと、ウェアラブル装置2と基地局7との無線通信が不安定になり、ウェアラブル装置2からの映像及び音声の情報処理装置4への配信が途切れてしまい、遠隔臨場による適切な立会に失敗してしまうことがある。また、配信環境が悪いブロック内に作業員1が入ってしまうと、例えば、立会者3から作業員1への指示等の音声の配信が途切れてしまうことがある。
【0081】
上述した配信環境の低下により映像及び音声の配信が途切れてしまうことを防ぐには、例えば、作業員1が無線通信環境(配信環境マップ50)を確認する必要がある。しかしながら、作業員1は、作業を行うために手に工具等を持っている場合もあるため、例えば、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等を用いて配信環境マップ50を確認するために通信端末を取り出して操作することが難しい。
【0082】
図13は、第3の実施形態に係るウェアラブル装置の構成例を説明する図である。図13に例示したウェアラブル装置2は、カメラ201、マイク202、レシーバ203、タブレット型コンピュータ204、及びスマートウォッチ205を含む。カメラ201は、作業場所の映像を撮影することに利用される。マイク202は、作業員1の発話(例えば、状況の説明等)を収音することに利用される。レシーバ203は、立会者3からの指示等の音声を放音することに利用される。タブレット型コンピュータ204及びスマートウォッチ205は、作業員1がいる位置の配信環境を作業員1に報知することに利用される。例えば、タブレット型コンピュータ204は、上述した作業エリア10内の位置と配信環境との対応関係を示す情報(配信環境マップ50)が記憶されており、スマートウォッチ205のGPS(Global Positioning System)機能を利用して導出した作業員1の位置に基づいて、作業員1がいる位置の配信環境を特定する。タブレット型コンピュータ204は、例えば、作業員1がいる位置の配信環境が低下する変化をした場合、スマートウォッチ205に配信環境が低下したことを示す情報を送信する。配信環境が低下したことを示す情報を受信したスマートウォッチ205は、例えば、バイブレーション機能を利用して作業員1に対して配信環境が低下したことを報知する。
【0083】
図13に例示したタブレット型コンピュータ204は、遠隔臨場を実施する際に基地局7と無線通信を行う通信装置として利用されてもよい。また、タブレット型コンピュータ204の代わりにスマートフォンを利用することもできる。
【0084】
図14は、第3の実施形態に係る追跡処理の一例を説明するフローチャートである。図14に示した追跡処理は、ウェアラブル装置2を装着した作業員1を追跡対象として追跡し、無線通信環境が低いブロック内に入った場合にそのことを通知する処理の一例でありうる。図14に例示した追跡処理は、例えば、ウェアラブル装置2に含まれるタブレット型コンピュータ204及びスマートウォッチ205により行われる。
【0085】
追跡処理は、単位時間毎に追跡対象の位置を特定し、配信環境が低下した場合に追跡対象に報知する追跡ループ(ステップS401s~S401e)を含む。
【0086】
追跡ループでは、まず、タブレット型コンピュータ204が、スマートウォッチ205からの位置情報を取得する(ステップS402)。次に、タブレット型コンピュータ204が、取得した位置情報と、作業エリア10内の位置と配信環境との対応関係を示す情報と、に基づいて、追跡対象の位置における配信環境を特定する(ステップS402)。ステップS402において利用する作業エリア10内の位置と配信環境との対応関係を示す情報は、例えば、図6を参照して上述したマップ表示処理、又は図10を参照して上述したマップ補正処理を含むマップ表示処理により配信環境マップ50に表示される各ブロックの配信環境であり得る。
【0087】
次に、タブレット型コンピュータ204が、特定した配信環境の段階が所定の段階以下に変化したか否かを判定する(ステップS404)。例えば、図7に例示した配信環境インジケータ52のように配信環境を4つの段階で表される場合、ステップS404において、タブレット型コンピュータ204は、特定した配信環境の段階が最も低い段階に変化したか否かを判定する。
【0088】
所定の段階以下に変化していない場合(ステップS404;NO)、タブレット型コンピュータ204は、後述するステップS405の処理をスキップして追跡ループにおける1回の処理を終了する。所定の段階以下に変化した場合(ステップS404;YES)、タブレット型コンピュータ204からスマートウォッチ205に配信環境が不良側に低下したことを示す情報を送信し、追跡対象に通信環境が低下したことを報知する(ステップS405)。
【0089】
このように、ウェアラブル装置2を装着した作業員1は、上述した配信環境提示システム150を利用することにより、タブレット型コンピュータ204を取り出すことなく、自身がいる位置の無線通信環境を把握することができる。
【0090】
また、立会者3が利用する情報処理装置4とスマートウォッチ205とを連携させて図14に例示した追跡処理を実行させることにより、立会者3も、情報処理装置4を取り出すことなく自身がいる位置の無線通信環境を把握することができる。
【0091】
なお、ウェアラブル装置2における無線通信環境の低下を報知するための装置構成は、上述したタブレット型コンピュータ204とスマートウォッチ205との組み合わせに限定されない。例えば、タブレット型コンピュータ204とスマートウォッチ205との組み合わせの代わりに、スマートフォン等の、GPS機能及びバイブレーション機能を有し、図14に例示したような追跡処理を実行可能な携帯型情報処理装置を利用することができる。また、例えば、図13を参照して上述したウェアラブル装置2の機能の全てをスマートフォンにより実現させてもよい。
【0092】
図15は、無線通信環境の低下を報知するための装置構成の別の例を説明する図である。図15に示した作業靴211は、作業員1が作業中に着用する(履く)ものであり、ソール内には、位置情報を取得するためのGPS装置212と、発光素子213と、発光素子の発光を制御する制御装置214とが内蔵されている。GPS装置212、発光素子213、及び制御装置214の組み合わせは、図13を参照して上述したスマートウォッチ205の代替構成であり得る。発光素子213は、LED(Light Emitting Diode)ライトであり得る。GPS装置212、発光素子213、及び制御装置214を動作させる電源は、例えば、ソール内等に配置されるバッテリであってもよいし、例えば、作業服の表面に配置されるソーラーパネルであってもよい。
【0093】
図15に例示したGPS装置212は、例えば、位置情報を図12に例示したタブレット型コンピュータ204に送信する。タブレット型コンピュータ204は、図14を参照して上述した追跡処理を実施し作業員1がいる位置の無線通信環境が所定の段階以下に変化した場合に、そのことを示す情報を制御装置214に送信する。無線通信環境が所定の段階以下に変化したことを示す情報を受信した制御装置214は、発光素子213(例えば、LEDライト)を発光させる。
【0094】
このように、ウェアラブル装置2を装着した作業員1がいる位置の無線通信環境が低下したことを作業靴211の発光素子213を発光させて報知することにより、作業靴211を履いている作業員1の周囲にいる他の作業員1も、自身が無線通信環境の低いブロックにいることを知ることができる。
【0095】
上述したマップ作成処理、マップ表示処理、及びマップ補正処理、並びに追跡処理は、それぞれ、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更可能である。上述したマップ作成処理、マップ表示処理、及びマップ補正処理は、例えば、情報処理装置44、立会者3が遠隔臨場を行う際に利用する情報処理装置4、又はその他の情報処理装置として利用可能なコンピュータに所定のプログラムを実行させることにより実現される。
【0096】
図16は、コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図16に例示したコンピュータ400は、ハードウェア要素として、プロセッサ401、メモリ402、補助記憶装置403、入力装置404、表示装置405、通信装置406、媒体アクセス装置407、入出力インタフェース408を含み、これらのハードウェア要素401~408は、バス409により相互に接続されている。
【0097】
プロセッサ401は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、メモリ402に記憶させたプログラムを実行することにより、コンピュータ全体の動作を制御する。メモリ402は、主記憶装置と呼ばれることもある記憶装置であり、ROM(Read Only Memory)及びRAMを含む。補助記憶装置403は、メモリ402と比べて記憶容量の大きい記憶装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であり得る。
【0098】
入力装置404及び表示装置405は、例えば、タブレット型コンピュータにおけるタッチパネルディスプレイに相当する。入力装置404は、例えば、キーボード等の文字の入力に利用可能な装置、マウス等のポインティング装置を含んでもよい。表示装置405は、例えば、LED表示器等を含んでもよい。
【0099】
通信装置406は、基地局7と無線通信してコンピュータ400をインターネット5に接続する装置である。
【0100】
媒体アクセス装置407は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体410の記憶領域にアクセスし、可搬型記録媒体410に記憶された情報の読み出しを行う装置であり得る。媒体アクセス装置407は、可搬型記録媒体410への情報への書き込みが可能な装置であってもよい。
【0101】
入出力インタフェース408は、スピーカ411及びマイク412等の周辺機器をバス409に接続するハードウェアインタフェースである。スピーカ411及びマイク412は、コンピュータ400の筐体に内蔵されたものであってもよいし、コンピュータ400に対して着脱自在に取り付けられるものであってもよい。コンピュータ400は、入出力インタフェース408により図示しないカメラが接続されていてもよい。
【0102】
コンピュータ400に実行させるプログラムは、例えば、メモリ402、補助記憶装置403、及び可搬型記録媒体410等の非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されている。コンピュータ可読媒体に記憶させるプログラムは、例えば、図5を参照して上述したマップ作成処理をコンピュータに実行させるプログラム、図6を参照して上述したマップ表示処理をコンピュータに実行させるプログラム、及び図10を参照して上述したマップ補正処理をコンピュータに実行させるプログラムを含む。これらのプログラムは、各図を参照して上述した通りの処理をコンピュータに行わせるものに限定されない。各プログラムがコンピュータ400に行わせる処理は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において処理の順序が変更されてもよく、2つ以上のブロックで示された処理が1つの処理に統合されてもよく、1つのブロックで示された処理が2つ以上の処理に分離されてもよい。また、各プログラムがコンピュータ400に行わせる処理は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの処理が省略されてもよく、他の処理が付加されてもよい。
【0103】
コンピュータ400は、第3の実施形態で説明したタブレット型コンピュータ204が実行する追跡処理を更に実行するものであってもよい。
【0104】
上述した情報処理装置4等として利用可能なコンピュータ400のハードウェア要素の組み合わせは、図16に例示した組み合わせに限定されない。コンピュータ400は、図16に例示したハードウェア要素のいくつか(例えば、媒体アクセス装置407等)が省略されたものであってもよい。また、図16において単一のブロックで示されているハードウェア要素は、複数のハードウェアを含んでもよい。例えば、単一のブロックで示されているプロセッサ401は、複数のプロセッサを含んでもよい。また、図16において複数のブロックで示されている複数のハードウェア要素が単一のハードウェアに組み込まれていてもよい。例えば、プロセッサ401とメモリ402とは単一のハードウェア内に設けられていてもよい。
【0105】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0106】
1 作業員
2 ウェアラブル装置
201,33 カメラ
202,34 マイク
203,35 レシーバ
204 タブレット型コンピュータ
205 スマートウォッチ
211 作業靴
212 GPS装置
213 発光素子
214 制御装置
3 立会者
4、44 情報処理装置
5 インターネット
6、42 配信サーバ
7、7A、7B、41、43 基地局
12 通信端末
20 地図情報
30 情報収集装置
31 通信端末
32 測定装置
36 送受信部
37 測定部
38 GNSSアンテナ
39 ルータ
40 記憶部
45 通信情報のセット
50 配信環境マップ
51 マップ表示部
52 配信環境インジケータ
53 通信手段選択部
54 通信アプリ選択部
55 画質選択部
56 フレームレート選択部
57 実施日選択部
58 時間帯選択部
59 天候選択部
60 マップ
65 クレーン
66 油圧ショベル
67 監視カメラ
70 地面
80 負荷情報設定部
81~84 ボタン
85、86 オブジェクト
100 配信システム
150 配信環境提示システム
400 コンピュータ
401 プロセッサ
402 メモリ
403 補助記憶装置
404 入力装置
405 表示装置
406 通信装置
407 媒体アクセス装置
408 入出力インタフェース
409 バス
410 可搬型記録媒体
411 スピーカ
412 マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12
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図16