(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018326
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】基板作業装置、基板作業ライン、基板生産システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H05K13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121590
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
(72)【発明者】
【氏名】村上 直也
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC04
5E353EE02
5E353GG01
5E353HH11
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK11
5E353QQ01
(57)【要約】
【課題】基板上のマークを認識する際のリトライ動作を減らし、タクトロスを削減する。
【解決手段】基板作業装置11Bは、基板Pに設けられたマークMを撮像する撮像部33と、撮像部33が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部55と、制御部52と、を備え、制御部52は、上流に配置された基板作業装置11AがマークMの認識に成功したときの、マークMの撮像の認識成功条件XSを、上流に配置された基板作業装置11Aから受信すると共に、その認識成功条件XSを適用して、撮像部33に対しマークMを撮像させる制御を行う、又は、上流に配置された基板作業装置11AがマークMの認識に成功したときの、マークMの画像処理の認識成功条件XSを、上流に配置された基板作業装置11Aから受信すると共に、その認識成功条件XSを適用して、画像処理部55に対しマークMの画像処理をさせる制御を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に向かって搬送される基板に作業する基板作業ラインの一部を構成する基板作業装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの撮像の認識成功条件を、前記上流に配置された基板作業装置から受信すると共に、その認識成功条件を適用して、前記撮像部に対し前記マークを撮像させる制御を行う、又は、
前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの画像処理の認識成功条件を、前記上流に配置された基板作業装置から受信すると共に、その認識成功条件を適用して、前記画像処理部に対し前記マークの画像処理をさせる制御を行う、基板作業装置。
【請求項2】
上流から下流に向かって搬送される基板に作業する基板作業ラインの一部を構成する基板作業装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記マークの認識に成功したときの、前記マークの撮像の認識成功条件を、前記撮像部より下流に配置された基板作業装置に送信する制御を行う、又は、
前記マークの認識に成功したときの、前記マークの画像処理の認識成功条件を、前記撮像部より下流に配置された基板作業装置に送信する制御を行う、基板作業装置。
【請求項3】
上流から下流に向かって搬送される基板に作業し、データ管理部を有する基板作業ラインの一部を構成する基板作業装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの撮像の認識成功条件を、前記基板作業装置のデータを管理する前記データ管理部から受信すると共に、その認識成功条件を適用して、前記撮像部に対し前記マークを撮像させる制御を行う、又は、
前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの画像処理の認識成功条件を、前記基板作業装置のデータを管理する前記データ管理部から受信すると共に、その認識成功条件を適用して、前記画像処理部に対し前記マークの画像処理をさせる制御を行う、基板作業装置。
【請求項4】
上流から下流に向かって搬送される基板に作業し、データ管理部を有する基板作業ラインの一部を構成する基板作業装置であって、
前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの撮像の認識成功条件を、前記データ管理部に送信する制御を行う、又は、
前記基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの画像処理の認識成功条件を、前記データ管理部に送信する制御を行う、基板作業装置。
【請求項5】
基板作業ラインであって、
上流に配置された請求項2に記載の基板作業装置と、
下流に配置された請求項1に記載の基板作業装置と、を含み、
請求項2に記載の前記基板作業装置は、
前記認識成功条件を請求項1に記載の前記基板作業装置に送信し、
請求項1に記載の前記基板作業装置は、
前記認識成功条件を請求項2に記載の前記基板作業装置から受信する、基板作業ライン。
【請求項6】
基板生産システムは、
基板作業ラインと、データ管理部と、を含み、
前記基板作業ラインは、
上流に配置された請求項4に記載の基板作業装置と、
下流に配置された請求項3に記載の基板作業装置と、を含み、
請求項4に記載の前記基板作業装置は、
前記認識成功条件を前記データ管理部に送信し、
請求項3に記載の前記基板作業装置は、
前記認識成功条件を前記データ管理部から受信する、基板生産システム。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の基板作業装置であって、
前記認識成功条件は、前記マークごとに、前記基板の基板IDに紐づけられた情報として、送信又は受信される、基板作業装置。
【請求項8】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の基板作業装置であって、
前記認識成功条件は、前記マークごとに、基板作業装置に搬入された搬入順に紐づけられた情報として、送信又は受信される、基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板作業装置、基板作業ライン、および基板生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板作業装置は、搬入された基板に形成されたマークをカメラで認識して、生産する基板の情報(位置情報や品種情報など)を取得する。下記特許文献1には、基板上の位置特徴点(マーク)をカメラで認識して基板の位置認識を行う実装機(基板作業装置)および電子部品実装システム(基板生産システム)が開示されている。
【0003】
マークがかすれていたり、マークに汚れが付着していたりすると、マークの認識に失敗することがある。マークの認識に失敗して基板作業装置が停止すると、タクトロスが発生して生産効率が低下する。そこで、基板作業装置がマークの認識に失敗した場合に、自動で認識条件(画像処理の閾値や、マークに向けた照明装置の照明レベル)を変更してマーク認識のリトライ動作を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の基板作業装置を含む基板作業ラインでは、1枚の基板が上流側の基板作業装置から下流側の基板作業装置に順次搬送される。上流の基板作業装置においてリトライ動作を経て認識に成功した基板上のマークは、下流側の基板作業装置でもリトライ動作が必要になる可能性が高い。基板作業装置ごとにリトライ動作が行われると、タクトロスにより生産効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、基板作業ラインを構成する基板作業装置において、マークを認識する際のリトライ動作を減らし、リトライ動作によるタクトロスを削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上流から下流に向かって搬送される基板に作業する基板作業ラインの一部を構成する基板作業装置は、前記基板に設けられたマークを撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像に画像処理を行う画像処理部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの撮像の認識成功条件を、前記上流に配置された基板作業装置から受信すると共に、その認識成功条件を適用して、前記撮像部に対し前記マークを撮像させる制御を行う、又は、前記撮像部より上流に配置された基板作業装置が前記マークの認識に成功したときの、前記マークの画像処理の認識成功条件を、前記上流に配置された基板作業装置から受信すると共に、その受信した前記認識成功条件を適用して、前記画像処理部に対し前記マークの画像処理をさせる制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リトライ動作を減らしてタクトロスを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】基板作業装置間における認識成功条件の送受信を示す図
【
図7】認識処理および認識成功条件の送受信のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
1.基板作業ライン10の全体構成
図1は、基板作業ライン10の構成を示す図である。基板作業ライン10は、4台の同一機種の実装装置11A~11Dを有している。以降の説明において、4台の実装装置11A~11Dを区別して説明する必要がない場合は、単に実装装置11と表記する。実装装置11は、「基板作業装置」の一例である。
【0011】
実装装置11はコンベアで接続されており、上流側(
図1の左側)の装置から下流側(
図1の右側)の装置に向かって、作業を終えた基板Pが順々に搬送される。以降の説明において、「上流に配置された(上流側の)実装装置11A」、「下流に配置された(下流側の)実装装置11B」のように実装装置11を表記することがあるが、上流か下流かというのは、基板Pを撮像する撮像部33から見た実装装置11の相対的な位置関係である。例えば、実装装置11Aの撮像部33で基板Pを撮像する場合、実装装置11Bは「下流側の実装装置11B」と表記される。一方、実装装置11Cの撮像部33で基板Pを撮像する場合、実装装置11Bは「上流側の実装装置11B」と表記される。
【0012】
実装装置11は、有線又は無線の通信ネットワーク15を介して相互に通信可能に接続されており、実装装置11間で相互にデータを送受信できる。
【0013】
2.実装装置の構成
図2は実装装置11を模式的に示す平面図であり、
図3は実装装置11の電気的構成を示すブロック図である。
図2は、Z軸方向を鉛直方向とし、X軸方向およびY軸方向のそれぞれを水平方向とする直交座標系の図である。
【0014】
図3に示すように、実装装置11は、制御部52、モータ制御部53、記憶部54、画像処理部55、外部入出力部56、フィーダ通信部57、通信部65、を有する制御ユニット50を備える。制御部52は、CPUおよびRAM等で構成されたプロセッサである。制御部52は、記憶部54に記憶されたプログラムやデータに基づき、モータ制御部53、画像処理部55、フィーダ通信部57、通信部65を制御して、後述する各動作を行わせる。
【0015】
操作部51は、キーボードやマウス等のユーザインターフェースである。制御部52は、ユーザインターフェースの入力に応じて制御を実行する。フィーダ通信部57は、フィーダ37に接続されており、フィーダ37を統括して制御する。通信部65は、基板作業ライン10を構成する他の実装装置11との間で必要なデータの授受を行う。
【0016】
実装装置11は、
図2に示すように、基台40、4つの部品供給装置41、コンベア42、ヘッドユニット43、Xビーム46、Yビーム47、ヘッド移動部44、撮像部33、2つの部品カメラ30等を備えている。
【0017】
基板Pは、コンベア42により上流側(
図2の左側)から搬送され、作業位置48で停止する。基板Pの上面には、四隅のそれぞれにマークM(M1~M4)が形成されている。撮像部33は、マークMを撮像し、マークMの画像71を制御ユニット50に送信する。制御ユニット50は、マークMの画像71と、撮像時における撮像部33の位置とに基づき、基板Pの詳細な位置情報を取得する。この位置情報に基づき、ヘッドユニット43が基板Pの所定の位置に部品Wの装着を行う。作業位置48において、部品Wの装着が完了すると、基板Pは下流側(
図2の右側)に搬送される。撮像部33によるマークMの撮像、および制御ユニット50におけるマークMの認識については後述する。
【0018】
基板Pの上面には、個々の基板Pに固有の基板IDを記録した、基板ID記録部70が設けられている。基板ID記録部70は、基板P上に印刷されたバーコード、二次元コード等のコードでもよいし、基板Pに取り付けられたICチップや磁気テープ等でもよい。本実施形態では、基板ID記録部70には二次元コードで基板IDが記録されている。基板Pが実装装置11に搬入されると、撮像部33の基板カメラ34が基板ID記録部70を撮像して基板IDを読み取る。
【0019】
部品供給装置41には、複数のフィーダ49が取り付けられている。各フィーダ49は、基板Pに装着する部品Wを供給する。
【0020】
X軸方向に並ぶ2個の部品供給装置41の間には、部品カメラ30が上方を向いて基台40に取り付けられている。部品カメラ30は、実装ヘッド45によって吸着された状態で部品カメラ30の上方を通過する部品Wを撮像して、画像71を画像処理部55に送信する。
【0021】
ヘッドユニット43は、いわゆるインライン型であり、5つの実装ヘッド45がX軸方向に並んで設けられている。ヘッドユニット43にはこれらの実装ヘッド45を個別に昇降させるZ軸リニアモータ60、および、これらの実装ヘッド45を軸周りに回転させるR軸サーボモータ61が設けられている。
【0022】
Xビーム46は、ヘッドユニット43をX軸方向に往復移動可能に支持する。Yビーム47は、Xビーム46をY軸方向に往復移動可能に支持する。
【0023】
ヘッド移動部44は、ヘッドユニット43をXビーム46に対してX軸方向に移動させるX軸サーボモータ58、Xビーム46をYビーム47に対してY軸方向に移動させるY軸サーボモータ59を含む。
【0024】
実装ヘッド45は、下端に吸着ノズルを有している。空気供給装置から吸着ノズルに負圧又は正圧が供給され、部品Wの吸着および解放が可能である。
【0025】
実装装置11は、以下のような動作で部品Wを基板Pに実装する。
【0026】
モータ制御部53は、X軸サーボモータ58およびY軸サーボモータ59によって、実装ヘッド45の吸着ノズルをフィーダ37が供給する部品Wに上方から対向させる。次に、モータ制御部53は、Z軸リニアモータ60によって実装ヘッド45を下降させて、部品Wにノズルを接触させる。
【0027】
続いて、モータ制御部53は、部品Wを吸着した実装ヘッド45を上昇させる。こうして実装ヘッド45が部品Wのピックアップを完了すると、モータ制御部53は、X軸サーボモータ58およびY軸サーボモータ59によって実装ヘッド45を基板Pの上方に移動させ、実装ヘッド45は、部品Wの吸着を解除することで、基板Pに部品Wを実装する。
【0028】
3.撮像部について
撮像部33は、ヘッドユニット43に取り付けられており、ヘッドユニット43に伴って、X軸方向およびY軸方向に移動可能である。撮像部33は、カメラおよび照明を有するカメラユニットであり、基板カメラ34と、照明装置35と、を有している。基板カメラ34は、イメージセンサ等を有する光学カメラであり、光軸が下方を向くように設けられている。基板カメラ34は、基板P上に形成されているマークMを上方から撮像して、画像71を画像処理部55に送信する。
【0029】
図4に示すように、照明装置35の側面35Aには、LED等の発光素子からなる発光部36が設けられている。発光部36から水平方向に照射された光は、基板カメラ34の光軸上に位置する傾斜したハーフミラーによって下方に反射して基板Pを照らす。
【0030】
発光部36は、同軸照明36A、内輪照明36B、外輪照明36Cの3つの照明を有している。照明装置35はこれら3つの照明36A~36Cの照明レベル(明るさ)を個別に変更できる。各照明36A~36Cの照明レベルをそれぞれ同軸照明レベルA、内輪照明レベルB、外輪照明レベルCとする。各照明レベルA~Cは、例えばレベル0(消灯)からレベル9(最大)まで10段階に変更可能である。以降の説明において、各照明36A~36Cについて個別に設定した照明レベルA~Cの組合わせを、照明条件Lと表記する。
【0031】
各照明36A~36Cの照明レベルを個別に変化させると、マークMへの光の当たり方が変わり、基板カメラ34で撮像する画像71においてマークMの見え方が変化する。撮像部33は、照明条件Lを変更し、照明レベルA~Cの強弱を個別に調整することで、後述するマークMの認識に適した画像71を撮像する。撮像部33は、撮像した画像71を画像処理部55に送信する。
【0032】
4.画像の二値化処理について
画像処理部55は、受信した画像71に対して二値化処理を実行する。二値化処理は「画像処理」の一例である。基板カメラ34が撮像したマークMの画像71を
図5(a)に示す。画像処理部55が画像71を二値化処理した後の二値化画像72を
図5(b)に示す。二値化処理前の画像71は256階調のモノクロ画像であり、画像71を構成する個々の画素は、画素値が0である黒から、画素値が255である白までのいずれかの色に対応している。
【0033】
二値化処理において、画像処理部55は、画像71を構成する画素のそれぞれについて、画素値が閾値T以上であるか否かを判定する。閾値Tは0~255の任意の整数である。判定後、画像処理部55は、画素値が閾値T以上の画素を白く彩色し、閾値T未満であった画素を黒く彩色して、白または黒のいずれかの画素のみからなる二値化画像72を生成する。二値化画像72は制御部52に送信され、制御部52は二値化画像72に含まれるマークMを認識する。制御部52によるマークMの認識を成功させるためには、二値化画像72中のマークMの輪郭が明瞭になるように、閾値Tを適切に設定する必要がある。
【0034】
5.認識条件、認識成功条件について
認識条件Xは、照明条件Lと閾値Tの2つのパラメータを含む。照明条件Lは、マークMの撮像の認識条件である。閾値Tは、マークMの画像処理の認識条件である。実装装置11の記憶部54には、照明条件Lの初期条件L0と、閾値Tの初期値T0を含む認識条件X0が、初期条件として記憶されている。
【0035】
実装装置11に基板Pが搬入されると、撮像部33は、初期条件の認識条件X0に含まれる照明条件L0を適用してマークMを撮像し、画像71を取得する。画像処理部55は、認識条件X0に含まれる閾値T0を適用して二値化処理を行い、画像71から二値化画像72を生成する。次に、制御部52は、二値化画像72からマークMを認識する認識処理を実行する。
【0036】
認識処理において、制御部52がマークMの認識に成功した場合、成功時の認識条件X0(照明条件L0、閾値T0)が、認識成功条件XSとして記憶部54に記憶される。照明条件L0は、マークMの撮像の認識成功条件の一例である。閾値T0は、マークMの画像処理の認識成功条件の一例である。制御部52がマークMの認識に失敗した場合は、制御部52は認識条件X0に含まれるパラメータ(照明条件L0、閾値T0)のうちの一方又は両方を変更する。制御部52は、変更後の認識条件X1(例えば照明条件L1、閾値T1)を撮像部33および画像処理部55に適用して、マークMの撮像および二値化画像72を生成させ、認識処理を行う。これが1回目のリトライ動作である。
【0037】
1回目のリトライ動作でマークMの認識に成功した場合、1回目のリトライ時の認識条件X1(照明条件L1、閾値T1)が、認識成功条件XSとして記憶部54に記憶される。この場合、照明条件L1は、マークMの撮像の認識成功条件である。閾値T1は、マークMの画像処理の認識成功条件である。
【0038】
1回目のリトライ動作でもマークMの認識に失敗した場合は、2回目のリトライ動作を行い、パラメータの変更、マークMの撮像、画像処理、認識処理を行う。n回のリトライ動作を行って、マークMの認識に成功すると、そのときの認識条件Xnが、認識成功条件XSになる。
【0039】
6.認識成功条件の送受信
図6を参照して、基板作業ライン10を構成する実装装置11A~11Dにおける、認識成功条件XSの送受信について説明する。実装装置11A~11Dの認識条件Xの初期条件を、認識条件X0とする。以下の説明においては、基板P上のマークM1~M4のうち、いずれか1つを認識する場合のみ説明し、他のマークMについての説明は省略する。
【0040】
実装装置11Aが認識条件X0(照明条件L0、閾値T0)でマークMの認識に失敗したときは、リトライ動作を行い、認識条件Xのパラメータを変更する。
図6ではリトライ動作を行った結果、撮像の認識成功条件である照明条件をL0からL1に変更し、画像処理の認識成功条件である閾値をT0からT1に変更している。
【0041】
リトライ動作を経て認識に成功すると、実装装置11Aは、リトライ動作を行った旨のリトライ実施情報16と、認識に成功したときの認識成功条件XS(照明条件L1、閾値T1)を、基板Pの基板ID17と紐づけて、下流側の実装装置11Bに送信する。マークMの認識に成功すると、実装装置11Aは基板Pに実装作業を行う。なお、リトライ実施情報16は、いずれかの実装装置11(11A)においてリトライ動作が行われると、リトライ動作を行った実装装置11(11A)よりも下流側の全ての実装装置11(11B~11D)に送信される。
【0042】
上流側の実装装置11Aにおいて実装作業が完了すると、基板Pは下流側の実装装置11Bに搬送される。実装装置11Bは、上流側の実装装置11Aで認識に成功した基板Pと同一の基板P上に形成された同一のマークMについて、上流側の実装装置11Aから受信した認識成功条件XSを適用して、マークMの撮像、画像処理、認識処理を実行する。同一の基板Pであるか否かは、各実装装置11において基板Pの搬入時に取得する基板IDと、認識成功条件XSに紐づけられている基板ID17と、に基づいて判断される。また、同一のマークMであるか否かは、マークMの形状や位置(座標)などにより判断してもよい。
【0043】
実装装置11Bにおいて、実装装置11Aの認識成功条件XSを適用してマークMの撮像、画像処理を行い、認識処理でマークMの認識に成功すると、実装装置11Bは、認識成功時に適用していた認識成功条件XSと、リトライ実施情報16と、基板ID17を、下流側の実装装置11Cに送信する。実装装置11B、11C間や、実装装置11C、11D間においても、上述した実装装置11A、11B間と同様に、一方を上流側、他方を下流側として、認識成功条件XS、リトライ実施情報16、基板ID17の送受信を行う。
【0044】
7.フローチャート
実装装置11におけるマークMの認識と、認識成功条件XSの送受信について、
図7のフローチャートを参照して説明する。以下の説明は、基板作業ライン10を構成する2台目の実装装置11Bが、基板P上のマークMの認識および認識成功条件XSの送受信を行うフローの例である。
【0045】
上流側の実装装置11Aで基板Pに対する実装作業が完了し、基板Pが下流側の実装装置11Bの作業位置48に搬入されると、実装装置11BによるマークMの認識が開始される。
【0046】
制御部52は、上流側の実装装置11Aから、リトライ動作を行った旨の情報(リトライ実施情報16)を受信しているか否かを判断する(S10)。リトライ実施情報16を受信していなければ(S10:NO)、上流側の実装装置11Aではリトライ動作は行われておらず、初期設定の認識条件X0でマークMの認識に成功している。この場合、下流側の実装装置11Bの制御部52は、初期設定の認識条件X0を適用して、撮像部33および画像処理部55にマークMの撮像および画像処理を行わせ(S15)、生成された二値化画像72を用いてマークMの認識を行う(S40)。
【0047】
リトライ実施情報16を受信していれば(S10:YES)、上流側の実装装置11Aではリトライ動作が行われ、初期設定の認識条件X0からパラメータが変更された認識成功条件XSでマークMの認識に成功している。この場合、上流側の実装装置11Aの認識成功条件XSを、実装装置11Aから受信する(S20)。制御部52は、実装装置11Bの認識条件Xとして、認識成功条件XSを適用し、撮像部33および画像処理部55にマークMの撮像および画像処理を行わせる(S30)。
【0048】
次に、制御部52は、画像処理部55で生成された二値化画像72を用いてマークMの認識を行う(S40)。マークMの認識に成功すると(S50:YES)、そのときの認識条件Xを、実装装置11Bの認識成功条件XSとして、下流側の実装装置11Cに送信して(S60)、認識処理を正常に終了する。
【0049】
マークMの認識に失敗すると(S50:NO)、認識条件Xに含まれるパラメータのうち、変更可能なパラメータがあるか否かを判断する(S70)。変更可能なパラメータがある場合は(S70:YES)、そのパラメータを変更し、新たな認識条件X1として適用する(S80)。そして、その認識条件X1で、再度マークMの認識を行う(S40)。S40、S50、S70、S80からなるループは、認識に成功するか、変更可能なパラメータがなくなるまで繰り返される。認識条件Xを変更しながらマークMの認識を行うこのループ(S40、S50、S70、S80)は、上述したリトライ動作に相当する。
【0050】
認識条件Xに含まれるパラメータに、変更可能なパラメータがなくなると(S70:NO)、認識処理はエラー終了する。
【0051】
なお、最も上流側に位置する実装装置11Aのさらに上流側には実装装置11が存在しないため、実装装置11Aは上流側からの情報を取得することはなく、S10は必ずNOと判断される。この場合、S40のマークM認識は、初期設定の認識条件X0で行われる。
【0052】
最も下流側に位置する実装装置11Dのさらに下流側には実装装置11が存在しないため、S60の処理は行われない。
【0053】
8.効果説明
本実施形態の構成では、上流側の実装装置11Aは、実装装置11AでマークMの認識に成功した実績のある認識成功条件XSを、下流側の実装装置11Bに送信する。下流側の実装装置11Bでは、上流の実装装置11Aから受信した認識成功条件XSを初めから適用して、マークMの撮像および画像処理を行うことができるため、その後の認識処理においてマークMの認識に成功しやすい。これにより、リトライ動作が減って、タクトロスを削減できる。
【0054】
本実施形態の構成では、認識成功条件XSは、基板Pの基板ID17に紐づけられている。実装装置11は、搬入された基板Pの基板ID17を参照して基板Pを特定し、特定した基板Pに紐づけられた認識成功条件XSを、マークMの認識に適用する。これにより、上流側の実装装置11Aにおいて基板PのマークMの認識に成功した実績のある認識成功条件XSを、下流側の実装装置11Bにおいて、同一基板Pの同一マークMを認識する際に、正確に適用できる。
【0055】
<実施形態2>
実施形態2の基板生産システムSは、
図8に示すように、実施形態1の基板作業ライン10に、実装装置11のデータを管理するデータベース(「データ管理部」の一例)12を付加したシステムである。
【0056】
データベース12は、有線又は無線の通信ネットワーク15を介して基板作業ライン10と接続されている。データベース12は、実装装置11A~11Dとの間で相互にデータの送受信が可能である。
【0057】
データベース12は、実装対象となる部品Wの部品データや生産プログラムに加えて、実装装置11A~11DでマークMの認識に成功した認識成功条件XSを格納する。
【0058】
実施形態2の構成では、上流側の実装装置11Aは、実装装置11AでマークMの認識に成功すると、成功時の認識成功条件XSを、データベース12に送信する。認識成功条件XSは、リトライ実施情報16、基板ID17と紐づけられ、データベース12内に格納される。
【0059】
下流側の実装装置11Bは、上流側の実装装置11Aで認識に成功したときの認識成功条件XSを送信するようにデータベース12に要求し、データベース12から認識成功条件XSを受信する。実装装置11Bは、受信した認識成功条件XSを適用して、同一基板P上の、同一マークMを認識する。
【0060】
本実施形態の構成では、下流側の実装装置11Bは、データベース12から認識成功条件XSを受信する。そして、その認識成功条件XSを適用して、マークMの撮像および画像処理を行い、マークMを認識する。
【0061】
認識成功条件XSは、実装装置11Aにおいて認識に成功した実績がある条件のため、実装装置11Bに認識成功条件XSを適用すると、認識に成功する可能性が高い。これにより、下流側の実装装置11Bにおける認識が成功してリトライ動作が行われにくくなり、その結果、タクトロスを削減できる。
【0062】
本実施形態の構成では、上流側の実装装置11Aは、マークMの認識に成功した認識成功条件XSを、データベース12に送信する。基板Pごと、マークMごとに多数生成される認識成功条件XSのデータが一箇所のデータベース12に蓄積されるため、認識成功条件XSのデータの管理が容易になる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)基板作業装置の一例として実装装置11を例示したが、基板作業装置としては、実装装置11の他、印刷装置、検査装置、ディスペンサなど、基板P上のマークMを認識する機能を有する様々な種類の装置を適用可能である。また、基板作業ライン10が異なる種類の基板作業装置から構成されていてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、基板作業ライン10として、同一機種の実装装置11が複数並ぶ場合を例示したが、基板作業ライン10の構成はこれに限られない。基板作業ライン10が異なる機種の実装装置により構成されていてもよい。
【0066】
(3)同軸照明レベルA、内輪照明レベルB、外輪照明レベルCの3つの照明の照明レベルを独立して変更可能な照明装置35を例示したが、照明装置35に含まれる照明の数は2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。また、複数の照明の照明レベルの変更は独立していなくてもよく、全ての照明レベルが連動して変更できるようになっていてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、撮像の認識成功条件の一例が照明条件である場合を例示した。撮像の認識成功条件は、照明条件に限らず、撮像時における他の条件であってもよい。例えば、照明条件のほか、撮像時の基板カメラ34の倍率や、基板カメラ34の光軸と基板Pの表面とがなす角度であってもよいし、これらの組み合わせでもよい。また、画像処理の認識成功条件は、二値化処理の閾値に限らず、他の条件であってもよいし、閾値と他の条件との組み合わせであってもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、認識成功条件XSを基板ID17に紐づけることにより、同一の基板Pについて同一の認識成功条件XSを適用する場合を例示した。認識成功条件XSは基板ID17と紐づけられていなくてもよい。また、認識成功条件XSと、上流の実装装置11Aに搬入された搬入順とが紐づけられていてもよい。
【0069】
複数の基板Pを順次上流側の実装装置11に搬入して、複数の基板Pに対して連続して部品Wの実装を行う場合、各実装装置11への搬入順が同じ基板Pは同一の基板である。例えば、実装装置11Aにn番目に搬入される基板Pと、実装装置11Bにn番目に搬入される基板Pは同一の基板である。そのため、基板Pごとの認識成功条件XSを、搬入順と紐づけることにより、同一の基板Pに対して同一の認識成功条件XSを適用できる。
【0070】
(6)上記実施形態では、データ管理部としてデータベース12を例示した。データ管理部としては、データベース12のほか、サーバや外部記憶装置など、データの保存、管理を行う機器を例示できる。
【0071】
(7)上記実施形態1では、上流側の実装装置11Aは、マークMの認識に成功したときの、撮像の認識成功条件(照明条件)と、画像処理の認識成功条件(閾値)の両方を、下流側の実装装置11Bに送信する基板作業ライン10を例示した。また、下流側の実装装置11Bは、撮像の認識成功条件と、画像処理の認識成功条件の両方を、上流側の実装装置11Aから受信する基板作業ライン10を例示した。送受信する認識成功条件は、撮像の認識成功条件と、画像処理の認識成功条件のうちの両方ではなく、いずれか一方であってもよい。同様に、上記実施形態2の基板生産システムSにおいて、実装装置11とデータベース12との間で送受信する認識成功条件は、撮像の認識成功条件と、画像処理の認識成功条件のうちのいずれか一方であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 基板作業ライン
11、11A~11D 実装装置(基板作業装置の一例)
33 撮像部
52 制御部
55 画像処理部
S 基板生産システム
M マーク
P 基板
XS 認識成功条件