(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001833
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】炎検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/12 20060101AFI20231227BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G08B17/12 A
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161062
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2022100356
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝治
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA13
5C085AB05
5C085AC03
5C085BA36
5C085CA20
5G405AA01
5G405AB05
5G405AD04
5G405CA27
(57)【要約】
【課題】従来技術よりも炎の誤検知の少ない炎検知システムを提供する。
【解決手段】炎検知システムは、光を感知する素子である光感知素子303と、旋回方向及び俯仰方向における光感知素子303の姿勢を変更する旋回駆動部及び俯仰駆動部と、光感知素子303に向かう光を透過する孔351を有し、光感知素子303に対する光の入射範囲を制限する部材である視野制限部材305と、光感知素子303による光の感知の結果に基づき炎の有無を判定する判定手段とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を感知する素子である光感知素子と、
旋回方向及び俯仰方向における前記光感知素子の姿勢を変更する姿勢変更機構と、
前記光感知素子に向かう光を透過する透過部を有し、前記光感知素子に対する光の入射範囲を制限する部材である視野制限部材と、
前記光感知素子による光の感知の結果に基づき炎の有無を判定する判定手段と
を備える炎検知システム。
【請求項2】
前記透過部は光が通過する孔を有し、前記孔を形成する壁面は、前記光感知素子の光軸の方向における所定範囲において、前記光軸に垂直な断面における前記孔の面積が前記光感知素子に近づく程狭くなるように、前記光軸に対し傾斜している
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項3】
前記所定範囲を第1の所定範囲とするとき、前記孔を形成する壁面は、前記光感知素子の前記光軸の方向における前記第1の所定範囲よりも前記光感知素子に近い第2の所定範囲において、前記光軸に垂直な断面における前記孔の面積が前記光感知素子に近づく程広くなるように、前記光軸に対し傾斜している
請求項2に記載の炎検知システム。
【請求項4】
基板と、
前記基板に取り付けられた前記光感知素子を覆うように配置され、前記光感知素子に向かう光を透過する透過部を有するシールドケースと
を備え、
前記シールドケースは、前記基板と前記視野制限部材との間に配置される
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項5】
前記シールドケースは、前記基板に対し固定される前記視野制限部材によって前記基板に対し押圧される
請求項4に記載の炎検知システム。
【請求項6】
前記視野制限部材が有する前記透過部は光が通過する孔を有し、
前記孔の前記光感知素子に近い側の開口は、前記シールドケースが有する前記透過部よりも狭い
請求項4に記載の炎検知システム。
【請求項7】
前記視野制限部材が有する前記透過部は光が通過する孔を有し、
前記孔を形成する壁面は光吸収素材を含む
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項8】
前記透過部は光が通過する孔を有し、前記孔を形成する壁面は、断面形状が略L字型の形状である
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項9】
前記光感知素子は、第1波長域の光を感知する複数の第1光感知素子と、前記第1波長域とは異なる第2波長域の光を感知する第2光感知素子とを含み、
前記判定手段は、前記複数の第1光感知素子の出力の平均と前記第2光感知素子の出力との比率に基づき前記炎の有無を判定する
請求項1に記載の炎検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサの視野を制限する技術が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-224629号公報
【特許文献2】特許第3876368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の技術のように光感知素子を旋回方向だけに回転させる構成を採用した場合、炎検知センサの俯仰方向における視野を広角にする必要がある。そのため、光感知素子が炎から発せられる光以外の外光を感知し、炎の誤検知を生じやすい、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記の従来技術よりも炎の誤検知の少ない炎検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光を感知する素子である光感知素子と、旋回方向及び俯仰方向における前記光感知素子の姿勢を変更する姿勢変更機構と、前記光感知素子に向かう光を透過する透過部を有し、前記光感知素子に対する光の入射範囲を制限する部材である視野制限部材と、前記光感知素子による光の感知の結果に基づき炎の有無を判定する判定手段とを備える炎検知システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来技術よりも炎の誤検知の少ない炎検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る炎検知システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】炎検知部を
図4中の矢視A-A方向から見た断面図である。
【
図8】炎検知部を
図4中の矢視A-A方向から見た断面図である。
【
図9】変形例に係る視野制限部材の孔の断面形状の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る炎検知システム1の構成の一例を示す図である。炎検知システム1は、監視領域で火災が発生すると炎を検知し、火源に向けて放水する。炎検知システム1は、火災検知器10と、火災受信機15と、中央制御盤20と、現地制御盤25と、放水装置30とを備える。火災受信機15には、信号線を介して火災検知器10が接続されている。火災受信機15と中央制御盤20とは、信号線を介して接続されている。中央制御盤20と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。同様に、現地制御盤25と放水装置30とは、信号線を介してループ接続されている。なお、
図1では、火災検知器10、火災受信機15、現地制御盤25、及び放水装置30がそれぞれ一つずつ示されているが、これらの装置がそれぞれ複数設けられてもよい。
【0010】
火災検知器10は、監視領域で発生する火災を検知する。火災検知器10の例としては、煙を検知する煙感知器が挙げられる。火災検知器10は、火災を検知すると火災信号を火災受信機15に送信する。火災受信機15は、火災検知器10から火災信号を受信すると、火災移報信号を中央制御盤20に送信する。なお、火災受信機15に発信機が接続されている場合、発信機の押し釦の押下に応じて火災受信機15から中央制御盤20に火災移報信号が送信されてもよい。中央制御盤20は、炎検知システム1に含まれる各装置を制御する。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30を起動して火源を探索させる。また、中央制御盤20は、現地制御盤25に命令して火源に最も近い放水ノズル34から放水を行わせる。放水装置30は、中央制御盤20からの制御に従って火源を探査して火源位置を確定し、放水ノズル34を火源位置の方に向ける。現地制御盤25は、中央制御盤20からの命令に従って、該当する放水ノズル34から火源位置に向けて放水を行わせる。
【0011】
図2は、放水装置30の構成の一例を示す図である。放水装置30は、制御部31と、通信部32と、火源探査部33と、放水ノズル34と、旋回駆動部35と、俯仰駆動部36とを備える。放水装置30の各部は、バスにより接続されている。
【0012】
制御部31は、放水装置30の各部を制御する。制御部31は、メモリとプロセッサとにより構成される。メモリは、例えばRAMとEEPROMとを含み、放水装置30の機能を実現するためのプログラムを記憶する。プロセッサは、例えば一又は複数のCPUを含み、メモリに記憶されたプログラムを実行する。通信部32は、中央制御盤20及び現地制御盤25と各種の信号の送受信を行う。
【0013】
火源探査部33は、旋回方向及び俯仰方向に回動し、火源を探査して火源位置を確定するための動作を行う。旋回方向とは、監視領域の底面に平行な一の方向に沿って放水装置30の動作の対象となる範囲を移動させる方向をいう。旋回方向は左右方向ともいい、略水平方向である。一方、俯仰方向とは、監視領域の底面に平行な他の方向であって一の方向と直交する他の方向に沿って放水装置30の動作の対象となる範囲を移動させる方向をいう。俯仰方向は上下方向ともいい、略垂直方向である。旋回方向と俯仰方向とは、互いに直交する。火源探査部33は、熱源探査部331と、炎検知部332とを有する。
【0014】
熱源探査部331は、旋回方向及び俯仰方向に回動しながら熱源を探査する。熱源探査部331は、例えば赤外線カメラを含む。赤外線カメラにより撮影された監視領域の赤外線画像において高温となる部分が熱源位置として特定される。
【0015】
炎検知部332は、熱源探査部331により特定された熱源位置から炎を検知する。炎検知部332は、例えば光感知素子303を含み、光感知素子303を用いて炎から発せられる光を感知することにより炎を検知する。
【0016】
放水ノズル34は、火源探査部33により火源位置が確定されると旋回方向に回動して火源位置の方向を向く。そして、放水ノズル34は、現地制御盤25の制御に従って火源位置に向けて放水する。
【0017】
旋回駆動部35は、火源探査部33及び放水ノズル34を軸を中心に旋回方向に回転させる。旋回駆動部35は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、火源探査部33及び放水ノズル34を旋回方向に回転させる。一例として、火源探査部33と放水ノズル34とは連結されており、一体となって旋回方向に回動する。モータドライバは、モータを制御する。エンコーダは、旋回角を検出する。
【0018】
俯仰駆動部36は、火源探査部33を軸を中心に俯仰方向に回転させる。俯仰駆動部36は、例えばモータと、モータドライバと、エンコーダとを含む。モータは、火源探査部33を俯仰方向に回転させる。モータドライバは、モータを制御する。エンコーダは、俯仰角を検出する。旋回駆動部35及び俯仰駆動部36は、旋回方向及び俯仰方向における炎検知部332の姿勢を変更する姿勢変更機構の一例である。
【0019】
制御部31は、判定手段311として機能する。この機能は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行して、プロセッサが演算を行い又は放水装置30の各部を制御することにより実現される。
【0020】
判定手段311は、熱源探査部331を用いて熱源位置を特定する。熱源探査部331が赤外線カメラを含む場合、判定手段311は、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像を解析して熱源位置を特定する。熱源位置が特定された場合、判定手段311は、炎検知部332による光の感知の結果に基づき炎の有無を判定する。炎検知部332により炎から発せられる光が感知され炎が検知された場合、判定手段311は炎が有ると判定する。一方、炎検知部332により炎から発せられる光が感知されず炎が検知されなかった場合、判定手段311は炎が無いと判定する。
【0021】
通信部32は、判定手段311による判定結果に応じた情報を中央制御盤20に送信する。例えば判定手段311により炎が有ると判定された場合、通信部32は、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する。
【0022】
図3は、火源探査部33の動作の一例を示す図である。中央制御盤20は、火災受信機15から火災移報信号を受信すると、放水装置30に起動信号を送信する。中央制御盤20から起動信号を受信すると、制御部31は火源探査部33を用いて火源の探査を開始する(スキャン開始)。
【0023】
火源の探査が開始されると、まず制御部31は旋回駆動部35により火源探査部33を旋回方向に回転させ、熱源探査部331を用いておおよその熱源位置を特定する(プレスキャン)。具体的には、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、火源探査部33を旋回方向に所定角度ずつ回転させる。このとき、火源探査部33の俯仰角は、監視領域の底面全体を撮影し得る角度に固定される。熱源探査部331は、旋回方向に回動し、制御部31の制御に従って所定の角度毎に監視領域の赤外線画像を撮影する。判定手段311は、熱源探査部331により撮影された赤外線画像を解析し、赤外線画像において高温となる部分をおおよその熱源位置として特定する。例えば熱源探査部331は、制御部31の制御に従って、まず
図3に示される監視領域の範囲R1の赤外線画像を撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、火源探査部33を旋回方向に所定の角度だけ回転させる。熱源探査部331は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R2の赤外線画像を撮影する。続いて、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、火源探査部33を旋回方向に所定の角度だけ回転させる。熱源探査部331は、制御部31の制御に従って、監視領域の範囲R3の赤外線画像を撮影する。判定手段311は、熱源探査部331により撮影された監視領域の範囲R1~R3の赤外線画像を解析する。
図3に示される例では、範囲R2に火源が含まれるため、範囲R2の赤外線画像には高温の部分が含まれる。そのため、判定手段311は、範囲R2の赤外線画像において高温の部分をおおよその熱源位置として特定する。
【0024】
プレスキャンが完了すると、制御部31は俯仰駆動部36により火源探査部33を俯仰方向に回転させ、熱源探査部331を用いて俯仰方向における熱源位置を特定する(俯仰角詳細スキャン)。具体的には、俯仰駆動部36は、制御部31の制御に従って、火源探査部33が熱源位置の近傍を向く俯仰角の範囲において、火源探査部33を俯仰方向に所定角度ずつ回転させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。このとき、火源探査部33の旋回角は、制御部31の制御に従って、熱源位置周辺の方向を向く角度に固定される。熱源探査部331は、俯仰方向に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。判定手段311は、熱源探査部331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から俯仰方向における熱源位置を特定する。この俯仰角詳細スキャンで特定される俯仰方向における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0025】
続いて、制御部31は旋回駆動部35により火源探査部33を旋回方向に回転させ、熱源探査部331を用いて旋回方向におけるより詳細な熱源位置を特定する(旋回角詳細スキャン)。具体的には、旋回駆動部35は、制御部31の制御に従って、火源探査部33が熱源位置の近傍を向く旋回角の範囲において、火源探査部33を旋回方向に所定角度ずつ回転させる。この所定角度は、プレスキャンで用いられる所定角度より小さい。つまり、旋回角詳細スキャンでは、上述したプレスキャンによりも熱源位置が細かく探査される。このとき、火源探査部33の俯仰角は、俯仰角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向く角度に固定される。熱源探査部331は、旋回方向に回動し、制御部31の制御に従って所定角度毎に赤外線画像を撮影する。判定手段311は、熱源探査部331により撮影された赤外線画像を解析し、その赤外線画像の解析結果から旋回方向における熱源位置を特定する。この旋回角詳細スキャンで特定される旋回方向における熱源位置は、上述したプレスキャンにより特定される熱源位置よりも精度が高い。
【0026】
俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンが完了すると、制御部31は、炎検知部332の正面が俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて特定された熱源位置の方向を向くように、旋回駆動部35及び俯仰駆動部36により火源探査部33を旋回方向及び俯仰方向に回転させる。炎検知部332は、正面の熱源位置から炎の検知を行う。判定手段311は、炎検知部332の検知結果に基づいて炎の有無を判定する(炎有無判定)。例えば炎検知部332により炎から発せられる光が感知され炎が検知された場合、判定手段311は炎が有ると判定する。
【0027】
判定手段311により炎が有ると判定されると、通信部32は、火源の位置情報を中央制御盤20に送信する(位置情報送信)。この位置情報としては、俯仰角詳細スキャン及び旋回角詳細スキャンにおいて熱源探査部331により特定された熱源位置の旋回角及び俯仰角が用いられる。また、制御部31は、旋回駆動部35によりこの火源位置の方向を向くように放水ノズル34を旋回方向に回転させる。
【0028】
放水装置30から火源の位置情報を受信すると、中央制御盤20は、この位置情報により示される火源位置に最も近い放水ノズル34を制御する現地制御盤25に、その放水ノズル34から火源位置に向けた放水を指示する指示信号を送信する。このとき、中央制御盤20は、放水装置30を介して現地制御盤25に指示信号を送信する。現地制御盤25は、指示信号を受信すると、該当する放水ノズル34の弁を制御し、火源位置に向けて放水を開始させる。
【0029】
仮に火源探査部33が俯仰方向に回動せず、旋回方向のみに回動する構成を採用した場合には、炎検知部332は旋回方向の角度のみを指定して炎を検知するために、俯仰方向に広角の視野角が必要となる。しかし、本実施形態では、火源探査部33が旋回方向及び俯仰方向の両方向に回動するため、炎検知部332の正面に熱源がある状態で炎を検知することができる。従って、本実施形態では、火源探査部33が俯仰方向に回動せず、旋回方向のみに回動する構成を採用した場合に比べて、炎検知部332の視野を狭めることができる。
【0030】
図4は、炎検知部332の一例を示す平面図である。
図5は、炎検知部332の一例を示す側面図である。
図6は、炎検知部332の一例を示す分解斜視図である。
図4~6に示されるように、炎検知部332は、基板301と、素子ホルダ302と、光感知素子303と、シールドケース304と、視野制限部材305とを備える。
【0031】
基板301は、電子部品を組み込むプリント基板である。基板301には、素子ホルダ302が取り付けられる。素子ホルダ302の取り付け方法としては、例えば素子ホルダ302の底部に設けられた突起を基板301に形成された孔に挿入するという方法であってもよい。
【0032】
素子ホルダ302は、光感知素子303を収容する。素子ホルダ302は、光感知素子303を収容する収容部321を有する。収容部321は、光感知素子303が入る大きさを有する窪みであり、天井部が開口する。なお、
図4~6に示される例では、収容部321は素子ホルダ302の右上の端部に位置しているが、収容部321は素子ホルダ302の中央部に位置してもよい。収容部321の開口は、平面視で略円形形状を有し、光感知素子303の視野を妨げない大きさを有する。収容部321の開口には、所定の波長帯域の光のみを透過する光学フィルタが設けられてもよい。光学フィルタの取り付け方法としては、例えば開口を塞ぐように接着剤を用いて接着するという方法であってもよい。
【0033】
光感知素子303は、炎から発せられる光を感知する。光感知素子303の例としては、焦電素子が挙げられる。光感知素子303は、素子ホルダ302の収容部321に収容され、基板301に取り付けられる。
【0034】
シールドケース304は、素子ホルダ302を覆うように配置され、光感知素子303に向かう電磁波を低減する。シールドケース304は、底面が開口する箱体の形状を有する。シールドケース304は、例えばアルミ、鋼、ブリキ、鉛等の金属、又は他の導電性材料で形成される。なお、
図4~6では、基板301の表側だけにシールドケース304が設けられているが、基板301の裏側にもシールドケースが設けられてもよい。
【0035】
シールドケース304には、光感知素子303に向かう光を通過させる孔341が形成される。孔341は、平面視において光感知素子303と重なる位置に形成される。孔341は、平面視で円形形状を有し、光感知素子303の視野を妨げない大きさを有する。孔341には、所定の波長帯域の光のみを透過する光学フィルタが設けられてもよい。光学フィルタの取り付け方法としては、例えばシールドケース304の内部に孔341を内側から塞ぐように接着剤を用いて接着するという方法であってもよい。孔341は、本光感知素子303に向かう光を透過するため、本発明に係る「透過部」の一例である。なお、ここでいう「透過」は、必ずしも物質の内部を通り抜けなくてもよく、光学フィルタが設けられていない孔341のように物質の内部を通さずに光を通過させるものも含む。
【0036】
また、シールドケース304には、視野制限部材305の固定に用いられる2つの孔342が形成される。2つの孔342は、それぞれ、平面視において視野制限部材305の2つの突起359と重なる位置に形成される。各孔342は、突起359が入る大きさ及び形状を有する。
【0037】
視野制限部材305は、光感知素子303に対する光の入射範囲を所定範囲に制限する。所定範囲は、正面の炎を検知するのに要求される視野を含み、この視野外からの光の入射が抑制される範囲に定められる。視野制限部材305の本体は、略円盤形状を有する。視野制限部材305には、光感知素子303に向かう光を通過させるとともに、光感知素子303に対する光の入射範囲を制限する孔351が形成される。孔351は、平面視において光感知素子303と重なる位置に形成される。孔351は、光感知素子303の視野を制限する大きさ及び形状を有する。孔351には、所定の波長帯域の光のみを透過する光学フィルタが設けられてもよい。光学フィルタの取り付け方法としては、例えば孔351を塞ぐように接着剤を用いて接着するという方法であってもよい。孔351は、本光感知素子303に向かう光を透過するため、本発明に係る「透過部」の一例である。なお、ここでいう「透過」は、必ずしも物質の内部を通り抜けなくてもよく、光学フィルタが設けられていない孔351のように物質の内部を通さずに光を通過させるものも含む。
【0038】
視野制限部材305はシールドケース304を貫通して基板301に固定される。視野制限部材305の底部には、2つの突起359が設けられる。2つの突起359は、それぞれ、シールドケース304の2つの孔342を貫通し、基板301に固定される。突起359の固定方法は、例えばねじを用いた方法であってもよいし、フックを用いた方法や接着テープを用いた方法であってもよい。シールドケース304は、基板301と視野制限部材305の間に配置されるため、視野制限部材305が基板301に対し固定されることにより、視野制限部材305によって基板301に対し押圧されて固定される。なお、シールドケース304は、さらにオンボードクリップを用いて基板301に固定されてもよい。
【0039】
図7及び8は、炎検知部332を
図4中の矢視A-A方向から見た断面図である。孔351の内部は、壁面352により形成される。壁面352の断面形状は表面が斜線形状である。孔351は、光軸355の方向において2つの開口353及び354を有する。開口354は、開口353よりも光感知素子303に近い。
【0040】
孔351の大きさ及び形状は、構造公差を考慮して、光感知素子303に対する光の入射範囲が所定範囲に制限されるように定められる。
図7に示されるように、孔351は、光軸355の方向における開口353側の所定範囲356において、徐々に窄んでいる。
孔351を形成する壁面352は、所定範囲356において光軸355に垂直な断面における孔351の面積が光感知素子303に近づく程狭くなるように、光軸355に対し傾斜している。
【0041】
一方、孔351は、光軸355の方向における開口354側の所定範囲357において徐々に広がっている。所定範囲357は、光軸355の方向において所定範囲356と隣り合っており、所定範囲356よりも光感知素子303に近い。孔351を形成する壁面352は、所定範囲357において光軸355に垂直な断面における孔351の面積が光感知素子303に近づく程広くなるように、光軸355に対し傾斜している。
【0042】
このように、壁面352は、所定範囲356においては孔351が窄まるような方向に傾斜しているが、所定範囲357においては孔351が広がるような方向に傾斜している。壁面352において傾斜の方向が変化する部分は、孔351において最も狭い最狭部358となる。最狭部358は、光感知素子303に対する光の入射範囲を制限する。最狭部358の光軸355に垂直な断面積は、光感知素子303に対する光の入射範囲を所定範囲に制限する大きさを有する。孔351の開口354及び最狭部358は、いずれも、シールドケース304が有する孔341よりも狭い。一方、孔351の開口353は、最狭部358より広く、光感知素子303に対する光の入射範囲を妨げない大きさを有する。
【0043】
ここで、
図7中の拡大図において実線で示されるように光感知素子303の位置ずれがない場合を想定する。上述したように孔351の壁面352は光軸355の方向に対して傾斜しているため、光感知素子303には、その端部からの視野L1の範囲内の光が入射する。視野L1の範囲外の光は、孔351の壁面352乃至最狭部358により光感知素子303への入射が妨げられる。従って、光感知素子303の位置ずれがない場合、光感知素子303の視野は視野L1の視野角以下に制限される。
【0044】
続いて、
図7中の拡大図において二点鎖線で示されるように光感知素子303の位置がずれた場合を想定する。上述したように孔351の壁面352は光軸355の方向に対して傾斜しているため、光感知素子303には、その端部からの視野L2の範囲内の光が入射する。視野L2の範囲外の光は、孔351の壁面352乃至最狭部358により光感知素子303への入射が妨げられる。従って、光感知素子303の位置がずれた場合、光感知素子303の視野は視野L2の視野角以下に制限される。
【0045】
光感知素子303の位置ずれがない場合、光感知素子303の視野は、視野L1の視野角以下となるが、光感知素子303の位置がずれた場合、光感知素子303の視野は視野L1より小さい視野L2の視野角以下となる。そのため、構造公差を考慮すると、光感知素子303に対する光の片側の入射範囲の制限は、光感知素子303の位置がずれた場合の視野L2であっても正面の炎を検知するのに要求される視野を含むように定められるのが好ましい。
【0046】
なお、ここでは、光感知素子303の位置ずれを考慮して光感知素子303に対する視野の制限を定める例を挙げて説明したが、視野制限部材305の位置ずれ、光感知素子303の傾きのずれ等の他の構造公差を考慮して、光感知素子303の視野の制限が定められてもよい。
【0047】
光感知素子303の視野を制限することにより、正面の炎を検知するのに要求される視野外からの光の入射が抑制される。その結果、光感知素子303が炎から発せられる光以外の外光を感知し、炎検知部332が炎を誤検知するのを低減することができる。
【0048】
また、光感知素子303の視野を視野L2に制限した場合であっても、点光源を考慮すると、視野L2の視野角より大きい入射角の光が孔351に入射して壁面352に当たることがある。例えば
図8中の拡大図に示されるように、視野L2の視野角より大きい入射角の光L3が孔351に入射して壁面352の所定範囲356に当たることがある。この光L3は、壁面352の所定範囲356の部分で反射されるが、この部分は光軸355の方向に対して傾斜しているため光感知素子303に向かう方向に反射されず、反射された光L3は光感知素子303に入射しない。同様に、視野L2の視野角より大きい入射角の光L4が孔351に入射して壁面352の最狭部358に当たることがある。この光L4は、壁面352の最狭部358で反射されるが、この最狭部358は角になっているため光感知素子303に向かう方向に反射されず、反射された光L4は光感知素子303に入射しない。このように、壁面352は、視野L2の視野角より大きい入射角の光が壁面352で反射されたときに光感知素子303に向かい難いように傾斜している。また、最狭部358は、視野L2の視野角より大きい入射角の光が壁面352で反射されたときに光感知素子303に向かい難いような大きさを有する。この壁面352の傾斜及び最狭部358の大きさにより、視野L2の視野角より大きい入射角を有する点光源等からの光が壁面352で1回反射されて光感知素子303へ入射するのが抑制される。
【0049】
さらに、壁面352で反射された光の光感知素子303への入射を抑制するために、孔351を形成する壁面352は光吸収素材を含んでもよい。例えば壁面352自体が光吸収素材で形成されてもよいし、光を吸収する黒色の塗料で壁面352が塗装されてもよい。このとき、必ずしも壁面352全体が光吸収素材を有さなくてもよく、壁面352の少なくとも一部が光吸収素材を有すればよい。光吸収素材により、孔351に入射した光が壁面352で反射しにくくなるため、壁面352で反射した光の光感知素子303への入射が抑制される。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、炎検知部332は旋回方向及び俯仰方向の両方に回動するため、炎検知部332が旋回方向にしか回動しない構成に比べて、光感知素子303に対する光の入射範囲を狭めることができる。また、正面の炎を検知するのに要求される視野外からの光の入射が視野制限部材305により抑制されるため、炎検知部332による炎の誤検知を低減することができる。さらに、壁面352は所定範囲356において光軸355に垂直な断面における孔351の面積が光感知素子303に近づく程狭くなるように光軸355に対し傾斜しているため、正面の炎を検知するのに要求される視野を確保できるとともに、視野L2の視野角より大きい入射角の光が壁面352で1回反射されて光の光感知素子303に入射するのが抑制される。さらに、壁面352は所定範囲357において光軸355に垂直な断面における孔351の面積が光感知素子303に近づく程広くなるように光軸355に対し傾斜しているため、この傾斜により形成される最狭部358により正面の炎を検知するのに要求される視野を確保できるとともに、視野L2の視野角より大きい入射角の光が壁面352で1回反射されて光感知素子303に入射するのが抑制される。さらに、孔351の壁面352は光吸収素材を有しているため、孔351に入射した光が壁面352で反射しにくくなり、壁面352で反射した光の光感知素子303への入射が抑制される。さらに、孔351の開口354及び最狭部358は、いずれも、シールドケース304が有する孔341よりも狭いため、孔341のエッジ面で反射した光が光感知素子303に入射するのを防ぐことができる。さらに、シールドケース304は、基板301と視野制限部材305の間に配置され、視野制限部材305が基板301に対し固定されることにより、視野制限部材305によって基板301に対し押圧されるため、基板301に密着する。その結果、シールドケース304により光感知素子303に向かう電磁波を低減する効果を高めることができる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。また、以下の変形例のうち二以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
上述した実施形態において、孔351の形状は、
図4~8に例示した形状に限定されない。壁面352の断面形状は表面が斜線形状に限定されず、曲線形状であってもよいし、階段形状であってもよい。この例では、孔351は、所定範囲356において非連続的に窄み、所定範囲357において非連続的に広がる。別の例として、孔351は、光軸355の方向における全範囲において徐々に窄んでもよい。この例では、孔351を形成する壁面352は、光軸355の方向における全範囲において光軸355に垂直な断面における孔351の面積が光感知素子303に近づく程狭くなるように、光軸355に対し傾斜する。
【0053】
上述した実施形態において、視野制限部材305の形状は、
図4~8に例示した形状に限定されない。視野制限部材305の本体の形状は略円盤形状に限定されず、直方体の形状や立方体の形状であってもよい。
【0054】
上述した実施形態において、光感知素子303の数は1つに限定されない。炎検知部332は複数の光感知素子303を有してもよい。例えば炎検知部332は、検知波長帯域が異なる2つの光感知素子303を含む2波長センサであってもよい。
【0055】
上述した実施形態において、放水装置30に代えて他の装置が判定手段311を有してもよい。例えば中央制御盤20が判定手段311を有し、放水装置30から送信された赤外線画像に基づき熱源位置を特定したり、放水装置30から送信された光の感知の結果に基づき炎の有無を判定したりしてもよい。
【0056】
上述した実施形態において、火源探査部33は、必ずしも放水装置30に含まれなくてもよく、火源探査装置として単体で提供されてもよい。
【0057】
上述した実施形態で、火災受信機15と中央制御盤20とは一体化されてもよい。この場合、中央制御盤20は、火災検知器10から火災信号を受信したことを契機に、放水装置30を起動して火源を探索させてもよい。
【0058】
図9は、変形例に係る視野制限部材305の孔361の断面形状の拡大図である。
図9では、
図4中の矢視A-A方向から見た断面が示されている。孔361の内部は、壁面362により形成される。壁面362の断面形状は略L字型である。壁面362は、光軸355の方向に延びる第1部分362aと、光軸355の方向と直交する方向に延びる第2部分362bとを有する。この第1部分362aと第2部分362bとにより略L字型が形成される。第2部分362bは、最狭部358と開口353側の端部との間においては、上述した実施形態と同様に、孔361が窄まるような方向に傾斜している。また、第2部分362bは、最狭部358と開口354との間においては、上述した実施形態と同様に、孔361が広がるような方向に傾斜している。
【0059】
視野制限部材305の孔が他の形状である場合には、特定の入射角の光が壁面で反射されて光感知素子303に入射することにより、視野制限部材305が設けられていない場合に比べて、特定の入射角において光感知素子303の出力が増加する場合がある。特に炎検知部332が検出波長域の異なる複数の光感知素子303を有する場合には、特定の入射角において光感知素子303の出力が増加すると、複数の検出波長域同士の光感知素子303の出力比率が変化するため、炎検知部332が外光を炎と誤検知して誤報が行われるリスクや、火災が発生しているのに炎検知部332が炎を検知できない失報のリスクが増える。この変形例に係る孔361の形状によれば、壁面362で反射した光の光感知素子303への入射が抑制されるため、特定の入射角における光感知素子303の出力の増加が防止され、誤報や失報のリスクを減らすことができる。
【0060】
炎検知部332が検出波長域の異なる複数の光感知素子303を有する場合、炎検知部332は複数の光感知素子303の出力比率に基づいて炎を検知する。この出力とは、光の感知結果を示す値をいう。上述したように判定手段311は、炎検知部332による炎の検知に応じて炎の有無を判定する。そのため、判定手段311は、炎検知部332が複数の光感知素子303の出力比率に基づいて炎を検知する場合には、複数の光感知素子303の出力比率に基づいて炎の有無を判定することになる。なお、ここでは、複数の光感知素子303を用いて複数の波長域の光を感知する例を挙げて説明するが、一つの光感知素子303が複数の波長域の光を感知し得る場合には、複数の光感知素子303に代えてこの一つの光感知素子303が用いられてもよい。
【0061】
例えば炎検知部332が第1波長域の光を感知する光感知素子303Aと、第1波長域とは異なる第2波長域の光を感知する光感知素子303Bとを有する場合、この炎検知部332は2波長センサとも呼ばれ、光感知素子303Aの出力と光感知素子303Bの出力との比率に基づいて炎を検知する。例えばこの比率が所定の条件を満たす場合、炎検知部332は炎を検知する。判定手段311は、炎検知部332により炎が検知されると、炎が有ると判定する。
【0062】
例えば炎検知部332が第1波長域の光を感知する光感知素子303Aと、第1波長域とは異なる第2波長域の光を感知する光感知素子303Bと、第1波長域及び第2波長域とは異なる第3波長域の光を感知する光感知素子303Cとを有する場合、この炎検知部332は、光感知素子303Aの出力と光感知素子303Bの出力との比率、光感知素子303Aの出力と光感知素子303Cの出力との比率、及び光感知素子303Bの出力と光感知素子303Cの出力との比率に基づいて炎を検知する。例えばこれらの比率が所定の条件を満たす場合、炎検知部332は炎を検知する。判定手段311は、炎検知部332により炎が検知されると、炎が有ると判定する。
【0063】
例えば炎検知部332が第1波長域の光を感知する光感知素子303A、303B、及び303Cと、第1波長域とは異なる第2波長域の光を感知する光感知素子303Dとを有する場合、この炎検知部332は、光感知素子303A~303Cの出力の平均と光感知素子303Dの出力との比率に基づいて炎を検知する。例えばこの比率が所定の条件を満たす場合、炎検知部332は炎を検知する。判定手段311は、炎検知部332により炎が検知されると、炎が有ると判定する。炎検知部332がこれらの4つの光感知素子303を有する場合には、第1波長域において光感知素子303A、303B、及び303Cの出力が平均化されることにより、ノイズが低減される。その結果、炎の検知距離を長くしても十分なS/N(Signal / Noise)比を確保することができる。したがって、炎検知部332がこれらの4つの光感知素子303を有する場合には、2つの光感知素子303を有する場合に比べて、炎の検知距離を長くすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1:炎検知システム、10:火災検知器、15:火災受信機、20:中央制御盤、25:現地制御盤、30:放水装置、31:制御部、32:通信部、33:火源探査部、34:放水ノズル、35:旋回駆動部、36:俯仰駆動部、301:基板、302:素子ホルダ、303:光感知素子、304:シールドケース、305:視野制限部材、311:判定手段、321:収容部、331:熱源探査部、332:炎検知部、341:孔、342:孔、351:孔、352:壁面、353:開口、354:開口、355:光軸、356:所定範囲、357:所定範囲、358:最狭部、359:突起