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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018331
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240201BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/73
A61K31/352
A61P43/00 121
A61P17/00
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/49 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121604
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】高原 佑輔
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD222
4C083AD282
4C083AD492
4C083AD572
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC52
4C086ZC75
4C088AB51
4C088AC03
4C088CA02
4C088CA05
4C088CA11
4C088CA12
4C088MA02
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】
本発明は特定の成分を併用することにより、相乗的な抗老化効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤。
(A)セイヨウナツユキソウエキス
(B)イソフラボン
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤。
(A)セイヨウナツユキソウエキス
(B)イソフラボン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分を含有した抗老化効果を発揮する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シワ、タルミ、皮膚の弾性低下、皮膚表面形態の乱れなどの皮膚症状の悪化の要因としては、例えば加齢や紫外線による真皮線維芽細胞の機能低下に伴うコラーゲン等の真皮マトリックスの減少や変性が挙げられる。一般的に、機能が低下した細胞は老化細胞と呼ばれており、加齢等により生体内において増加することが知られている。そのため老化細胞の増加が皮膚の老化現象にも密接に関与すると考えられている。
【0003】
近年では老化細胞がSASP(Senescent associated secretory phenotype)という現象を介して、炎症性物質やプロテアーゼなどを分泌し、周囲の細胞機能に影響を与えることが明らかになり、老化細胞が生体の老化を促進する可能性が示唆されている(非特許文献1)。さらに、老化細胞を特異的に除去することで抗老化効果が得られることも分かってきている(非特許文献2、3)。
【0004】
より高い効果を発揮する皮膚外用剤を提供するために、様々な成分を単独で、あるいは併用することは数多く検討されている。しかしながら、特に併用する場合は単に併用すれば効果が相乗的に向上するものではなく、相加的に効果が向上するもの、効果を相殺するものなど、その併用による効果は予測不可能な効果である。より少量で、より高い効果の得られる成分の併用に関するニーズは非常に高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Byun HO et al. BMB Rep. 549-558(2015)
【非特許文献2】Baker DJ et al. Nature. 479(7372):232-6(2011)
【非特許文献3】Megan Scudellari. Nature. 2017 Oct 24;550(7677):448-450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は特定の成分を併用することにより、相乗的な抗老化効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決する手段は、下記(A)および(B)を含有する皮膚外用剤を提供することである。
(A)セイヨウナツユキソウエキス
(B)イソフラボン
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚外用剤は特定の成分を併用することにより、相乗的な抗老化効果を発揮する。
【0009】
本発明の皮膚外用剤は特定の成分を併用することにより、相乗的に老化細胞の蓄積を抑制する効果を発揮する。
【0010】
本発明の皮膚外用剤は特定の成分を併用することにより、相乗的な老化細胞細胞死誘導効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
TP53は、tumor protein p53の略であり、細胞増殖サイクルを制御する機能をもつ。老化した細胞で活性化することが知られている。
【0013】
[セイヨウナツユキソウ]
本発明で使用するセイヨウナツユキソウエキスに用いられるセイヨウナツユキソウ(Filipendula ulmaria (L.) Maxim.またはSpiraea ulmaria Linne)はバラ科シモツケソウ属(Filipendula)またはバラ科シモツケ属(Spiraea)に分類される双子葉植物である。
【0014】
本発明で使用するセイヨウナツユキソウエキスは、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。植物から直接抽出したものを用いても、市販のセイヨウナツユキソウエキスを用いてもよい。市販のセイヨウナツユキソウエキスとしては、ファルコレックス シモツケソウB(一丸ファルコス株式会社)等が挙げられる。本発明においては北海道増毛町湯ノ沢で有機栽培したセイヨウナツユキソウから得られる抽出物を用いることが好ましい。
【0015】
抽出に使用し得るセイヨウナツユキソウの構成部位としては、例えば、葉、茎、花、蕾、地上全草等が挙げられるが、好ましくは花である。
【0016】
本発明の皮膚外用剤へのセイヨウナツユキソウエキスの配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%~5質量%が好ましく、0.00001質量%~1質量%がさらに好ましい。
【0017】
次にセイヨウナツユキソウの栽培方法の好ましい例を示す。
【0018】
[北海道増毛町湯ノ沢]
北海道の北西部、留萌振興局管内南部にあり、標高1492mの暑寒別岳を含む地域である。本発明においては、増毛町の中でも湯の沢地区で栽培することが好ましい。
【0019】
[圃場準備]
定植前に圃場の土壌改質を目的として、有機肥料の施肥を行う。具体的には、有機肥料として、醗酵鶏糞、油粕、醗酵油粕、骨粉、魚粉、米糠、醗酵米糠、腐葉土、バーク堆肥、苦土石灰、消石灰、ヨウ成リン肥、炭酸カルシウム、グアノから選択される1種又は2種以上を併用して用いる。
【0020】
醗酵鶏糞、油粕、醗酵油粕、骨粉、魚粉、米糠、醗酵米糠、腐葉土、バーク堆肥、ヨウ成リン肥、グアノは、おもに三大栄養素である窒素、リン酸、カリを補給するために使用する。これらは、1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。これらの肥料の施肥量は、元の土壌の状態によって増減できる。
【0021】
施肥は、定植前7日以上前に行うことが好ましい。定植前6日以内に行うと、肥料による土壌改善効果が十分ではなく、肥料焼けや、初期の生育不良の原因となる。有機肥料は溝施肥でも、全面施肥でも問題ないが、作業効率の点から全面施肥が好ましい。
【0022】
[定植]
3~5月頃、又は8~11月頃に、株分けし、成長に合わせて間引きを行うことが好ましい。定植は畝間90~100cmとすることが栽培効率の点から好ましい。
【0023】
[育成]
適宜追肥を行うことにより、より成長が見込まれる。適宜雑草を除去し、乾燥状態に応じ潅水を行う。
【0024】
[収穫]
開花期に合わせて花序の収穫を行う。保存する場合は、乾燥した条件下で保存する。また、熱乾燥して保存することも可能である。
【0025】
[抽出]
抽出物を調製する際には、乾燥させて用いる。
抽出溶媒としては、水、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。
上記溶媒による抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、抽出物を酸、アルカリ、酵素などを用いて加水分解したものを用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~30倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0026】
[イソフラボン]
イソフラボンは、マメ科(Fabaceae)植物に多く含まれるイソフラボン類に分類されるフラボノイドの一種である。本発明で使用するイソフラボンは、通常皮膚外用剤に配合されるものを用いることができる。イソフラボンとしては、プエラリン、ダイジン、ゲニスチン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン、プラテンセイン、シュードバプチゲニン、イリロン、フォルモノネチン、バイオカニンA、プルネチン等が挙げられる。これらの中から1種を単独で又は2種以上を用いても良い。中でもゲニステインを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の皮膚外用剤に用いるイソフラボンを含む植物としては、マメ科ダイズ属(Glycine)の植物が好ましい。抽出に使用可能な部位としては、全草、葉、花、茎、根又は種子が挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤に用いるイソフラボンを含む植物抽出物の調製は、抽出対象物である植物を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、これをそのままもしくは乾燥し、さらに必要ならば細切或いは粉砕した上、浸漬法、向流抽出法、水蒸気蒸留法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることによって行うことができる。また、本発明において、超臨界抽出法を採用してもよい。
【0029】
抽出物処理に使用する抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n-ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独でもしくは2種以上混合して用いられる。
【0030】
抽出物の調製に当たって、抽出液のpHに特に制限はないが、一般にはpH3~9の範囲とすることが好ましい。pHの調整は、前記した抽出溶媒中に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤や、クエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤等を配合することによって行うことができる。
【0031】
抽出温度、時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpH、或いは植物素材の大きさ等によっても異なるが、例えばメタノール又はエタノール、或いは水と低級アルコール又は多価アルコールとの混合溶媒を抽出溶媒とする浸漬法の場合であれば、抽出温度は0~80℃の範囲である。抽出時間は、4℃の冷温抽出の場合で1時間~7日間の範囲とするのがよく、また、40℃付近の中温抽出では、1時間~3日間の範囲とするのがよく、70~80℃の高温抽出の場合は、1時間~24時間の範囲とするのがよい。浸漬法の場合、浴比は重量比で、植物素材に対して溶媒が一般に1~200倍量、好ましくは1~100倍量の範囲となるようにするのがよい。
【0032】
以上のようにして調製される植物抽出物は、さらに、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、合成吸着剤、シリカゲル、及び再結晶処理のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて、環状アデノシンモノリン酸を高濃度に含む抽出物に調製することが好ましい。活性炭としては、松等の木、竹、椰子殻、胡桃殻等の植物質のほか、石炭質、石油質等を原材料として、それらの原材料に水蒸気や二酸化炭素、空気等のガスを使う高温炭化法等の物理的な方法や塩化亜鉛等の化学薬品を使って処理した上で加熱し、多孔質にする化学的な方法による活性化処理を施して得られる活性炭等何れを用いても良い。また、イオン交換樹脂としては、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性インイオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。また、合成吸着剤としては、キレート樹脂、強酸性陽イオン吸着樹脂、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸エステル重合体等の非イオン性樹脂が挙げられる。
【0033】
以上のように抽出処理されて得られる抽出物に含まれるイソフラボン量は0.002質量%以上が好ましく、より好ましくは0.003質量%以上であり、さらに好ましくは0.008質量%以上である。
【0034】
本発明の皮膚外用剤へのイソフラボンの配合量は、皮膚外用剤全量に対し、0.0000001質量%~0.001質量%が好ましく、0.000001質量%~0.0005質量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明の皮膚外用剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0038】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【0039】
本発明の皮膚外用剤は、老化細胞の蓄積を抑制することができる。
本明細書において、「老化細胞」とは細胞老化が誘導された細胞で、生存可能な状態を維持し、かつ代謝的活性を有しながらも、増殖能力を失った状態の細胞を意味する。
本明細書において、老化細胞の蓄積抑制とは、老化細胞を特異的にアポトーシスさせることを含む。すなわち、老化細胞の蓄積抑制とは、すでに老化細胞となった細胞にアポトーシスを誘導し、減少させることで、その蓄積を抑制するものである。本発明の皮膚外用剤が有する老化細胞に対するアポトーシス誘導作用は、通常、細胞老化が誘導されていない増殖中の正常細胞に対しては障害しない。本明細書において「正常細胞」とは、生存可能な状態を維持し、かつ代謝的活性及び増殖能力を有する細胞を意味する。
【0040】
本発明の皮膚外用剤は、老化細胞をアポトーシスさせることで、老化細胞がSASPを分泌することを介して周囲の細胞を老化させることを抑制することができる。すなわち、老化細胞の蓄積抑制とは、正常細胞が老化細胞へと変化することを抑制することにより、老化細胞を増やさないことで、その蓄積を抑制するものでもある。さらに、本発明の皮膚外用剤は前述のとおり老化細胞の蓄積を抑制することによって、抗老化効果を発揮する。
【0041】
本発明の皮膚外用剤は、その老化細胞の蓄積抑制作用により、細胞老化や老化細胞から分泌されるSASPに関連又は起因する疾患又は症状の改善又は予防することが期待される。かかる疾患や症状としては、早老症、白内障、脱毛症、心肥大、脂肪肝、間質性肺炎、COPD、腎糸球体硬化、動脈硬化、関節炎、椎間板変性、サルコペニア、炎症性腸疾患、糖尿病、メタボリックシンドローム、がん、肉腫、リンパ腫、認知症、下垂体腫瘍、神経変性疾患等が挙げられる。また、本発明の老化細胞細胞死誘導剤により、骨量減少の緩和、脂肪組織萎縮、心機能の向上、呼吸機能の回復、筋増強、運動機能の改善、健康寿命の延伸、寿命延伸効果などの効果も期待される。
【実施例0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0043】
まず、試料に用いた抽出物の調製方法を示す。
【0044】
(1)栽培から収穫
北海道増毛町湯の沢の有機JAS認定圃場にて、セイヨウナツユキソウの栽培を行った。9月中旬、定植の1週間前に、有機栽培用鶏糞、有機栽培用米糠、有機栽培用石灰、有機栽培用熔燐、油粕、バーク堆肥、グアノを施肥し、圃場を整備した。定植は株分けした株を株間30cm、畝間90cmとなるように行った。5月上旬に、有機栽培用鶏糞、有機栽培用米糠を追肥した。また、適宜雑草を除去した。6月中旬の開花期に花序を収穫し、水洗し、屋外で風乾した。ある程度乾燥したところで、熱乾燥を行い、水分を除去した状態で保管した。
(2)セイヨウナツユキソウエキス1の調製
(1)で得られた有機栽培セイヨウナツユキソウの花序を乾燥させて粉砕し、20質量倍量の精製水を加えてオートクレーブにて20分間、121℃に加温して抽出した。温度の高い状態を保って吸引濾過により不溶物を取り除いた後、凍結乾燥を行って抽出物を得た。得られた乾燥物を50容量%のエタノール水溶液にエキス純分として1質量%となるように溶解後、再度ろ過することにより、セイヨウナツユキソウエキス1を調製した。
【0045】
(3)セイヨウナツユキソウエキス2の調製
(1)で得られた有機栽培セイヨウナツユキソウの花序を乾燥させて粉砕し、20質量倍量の精製水を加えてオートクレーブにて20分間、121℃に加温して抽出した。温度の高い状態を保って吸引濾過により不溶物を取り除いた後、凍結乾燥を行って抽出物を得た。得られた乾燥物を50容量%の1,3-ブチレングリコールにエキス純分として1質量%となるように溶解後、再度ろ過することにより、セイヨウナツユキソウエキス2を調製した。
【0046】
[イソフラボン]
富士フイルム和光純薬株式会社製のゲニステインを用いた。
【0047】
[ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞を用いた試験]
ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞を10cmディッシュで24回継代を重ね細胞老化を誘導した。継代数の少ない(継代数6)正常ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞(以下、正常細胞という)と継代数を重ねた(継代数24)細胞老化誘導ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞(以下、老化細胞という)を5×10個/ウェルとなるように24ウェルプレートに播種し、5%のFBSを含有するDMEM培地にて一晩培養した。各成分を任意の濃度で溶解した5%のFBSを含有するDMEM培地に交換し、37°C、5%COインキュベーター内で72時間培養し水溶性テトラゾリウム塩WST-8を発色試薬として用いて各ウェル中の生細胞数を計測した(CellCountingKit-8;株式会社同仁化学研究所)。結果を表1に示す。
【0048】
さらに、採取した老化細胞群から、市販のRNA抽出キット(QuickGeneRNACulturedCellHCKitS)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。内部標準としてGAPDHを使用した。mRNA発現量は、各成分無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。結果を表3に示す。
【0049】
使用したプライマー配列を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示したとおり、試料1、試料2と比較して有効成分量が半量である試料3を添加した老化細胞群の生存率が相乗的に減少した。一方、正常細胞群においては試料1~3いずれも生存率に有意な差は見られなかった。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示したとおり、試料1、試料2と比較して有効成分量が半量である試料3を添加した老化細胞群では老化細胞で活性化するTP53が相乗的に減少した。すなわち、試料3において老化細胞数が相乗的に減少したといえる。
【0055】
以上の結果より、セイヨウナツユキソウエキスとイソフラボンを併用することにより相乗的に老化細胞の細胞死が誘導され、老化細胞数が減少した。従って、本願発明の皮膚外用剤は相乗的な老化細胞細胞死誘導効果を発揮する。また、本願発明の皮膚外用剤は、相乗的に老化細胞の細胞死を誘導することにより、老化細胞がSASPを介して周囲の細胞を老化させることを抑制することで、相乗的な老化細胞蓄積抑制効果を発揮する。さらに、本願発明の皮膚外用剤は、相乗的に老化細胞の蓄積を抑制することにより、相乗的な抗老化効果を発揮する。
【0056】
[実施例1]乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)セイヨウナツユキソウエキス1 0.0001
(13)ゲニステイン 0.00001
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)~(13)を順次加え、均一に混合する。
【0057】
[実施例2]化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残部
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)セイヨウナツユキソウエキス2 0.002
(10)ゲニステイン 0.000001
製法:(1)に(2)および(3)を溶解する。さらに(4)~(10)を順次添加した後、十分に攪拌し、均一に混合する。
【0058】
[実施例3]クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)セイヨウナツユキソウエキス2 0.1
(13)ダイゼイン 0.0001
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(11)を添加して攪拌後、冷却し40℃にて(12)、(13)を加え、均一に混合する。
【0059】
[実施例4]美容液
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル-2-オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3-ブチレングリコール 10.0
(15)L-アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)セイヨウナツユキソウエキス2 0.0003
(17)ゲニステイン 0.001
製法:(1)~(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)~(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後50℃にて(15)を、40℃にて(16)、(17)を加え、均一に混合する。
【0060】
[実施例5]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)グリセリン 10.0
(5)1,3-ブチレングリコール 10.0
(6)エタノール 10.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)香料 0.1
(9)セイヨウナツユキソウエキス1 0.1
(10)ダイゼイン 0.00001
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)~(10)を加え、均一に攪拌混合する。
【配列表】
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