(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018333
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ブッシング
(51)【国際特許分類】
H02G 15/02 20060101AFI20240201BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G1/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121606
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光地 芳
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】新井 敦宏
(72)【発明者】
【氏名】瀬間 信幸
【テーマコード(参考)】
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355BA08
5G355CA06
5G355CA23
5G375AA02
5G375BA21
5G375BB44
5G375BB46
5G375CA03
5G375CA13
5G375CA19
5G375CB04
5G375CB05
5G375CB06
5G375CB34
5G375CB36
5G375CB38
5G375DA04
5G375DA19
5G375DA20
5G375DA32
5G375DB04
5G375DB05
(57)【要約】
【課題】サージ電流による遮へい層の損傷を防止することができるブッシングを提供する。
【解決手段】ブッシングは、電力用機器に電力ケーブルを接続するための機器直結型終端接続部用のブッシングであって、内部導体と、内部導体の外周に配置される絶縁筒と、絶縁筒の外周面に塗布された導電性塗料からなる遮へい層と、金属カバーと、を備える。金属カバーは、遮へい層よりも小さい抵抗を有し、遮へい層の一方の端である電力用機器と接続する側の接地側端と、遮へい層の他方の端である電力用機器から離間した非接地側端とを電気的に接続する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用機器に電力ケーブルを接続するための機器直結型終端接続部用のブッシングであって、
内部導体と、
前記内部導体の外周に配置される絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周面に塗布された導電性塗料からなる遮へい層と、
前記遮へい層よりも小さい抵抗を有し、前記遮へい層の一方の端である前記電力用機器と接続する側の接地側端と、前記遮へい層の他方の端である前記電力用機器から離間した側の非接地側端とを電気的に接続する金属カバーと、
を備えるブッシング。
【請求項2】
第1端部及び第2端部を有し、第1方向に延在する第1ブッシング部と、
前記第1ブッシング部にT字型又はL字型に接続される第2ブッシング部と、を備え、
前記遮へい層の前記接地側端は、前記第1ブッシング部の前記第1端部に配置され、
前記遮へい層の前記非接地側端は、前記第1ブッシング部の前記第2端部に配置され、
前記遮へい層が分岐した前記非接地側端以外の非接地側端は、前記第2ブッシング部に配置される、
請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記遮へい層の前記第2ブッシング部における前記非接地側端と、前記第2ブッシング部においてケーブル側固定フランジを取り付ける端部との間に縁切り部が形成されており、
前記金属カバーは、前記非接地側端と前記縁切り部の境界を覆うように配置される、
請求項2に記載のブッシング。
【請求項4】
前記第1ブッシング部の前記第1端部に配置され、前記遮へい層の前記接地側端が電気的に接続される機器側固定フランジと、
前記第1ブッシング部の前記第2端部に配置され、前記遮へい層の前記非接地側端が電気的に接続される課電側固定フランジと、を備え、
前記金属カバーは、前記機器側固定フランジ及び前記課電側固定フランジに、機械的かつ電気的に接続されている、
請求項3に記載のブッシング。
【請求項5】
前記金属カバーは、前記第1ブッシング部の周面を覆う第1カバー部と、
前記第2ブッシング部の周面に配置されるリング状の第2カバー部と、
前記第1カバー部と前記第2カバー部とを連結する連結部と、を有する、
請求項2から4のいずれか一項に記載のブッシング。
【請求項6】
前記連結部は、断面積が30mm2以上である、
請求項5に記載のブッシング。
【請求項7】
前記遮へい層と前記金属カバーとの間に、所定厚さの空気層が介在する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端接続部に用いられるブッシングに関し、特に、機器直結型の終端接続部の用途に好適なブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス中終端接続部、油中終端接続部、気中終端接続部などのケーブル終端接続部が知られている。一般的には、ケーブル終端接続部は、内部導体及び内部導体の外周に配置される硬質の絶縁体を有する本体材料(以下、「ブッシング」と称する)に、接続材料が取り付けられたケーブル端末部を接続することで形成される。特に、開閉装置等の電力用機器との接続に使用される機器直結型の終端接続部は、機器接続部、課電部及びケーブル接続部を有するT字型(又はL字型)のブッシングを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ブッシングの外周面には、電界の遮へい及び電界緩和のために、ほぼ全面にわたって導電性塗料からなる遮へい層が形成されている。この遮へい層は、例えば、電力用機器の機器ケースと電気的に接続されることにより接地される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ケーブル終端接続部において、開閉サージや雷サージなどの様々なサージが発生し、ブッシングの内部導体に侵入した場合、導電性塗料からなる遮へい層の電力用機器側から離間した側の端部である非接地側端(例えば、課電部の固定フランジとの接続端部)に電圧が誘起され、当該遮へい層の電力用機器側の端部である接地側端との間にサージ電流が流れる。高圧ケーブル(例えば、154kV級以上)用の終端接続部では、遮へい層の形成領域が大きく、抵抗も大きくなるため、サージ電流によって遮へい層が損傷する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、サージ電流による遮へい層の損傷を防止できる機器直結型終端接続部用のブッシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブッシングは、
電力用機器に電力ケーブルを接続するための機器直結型終端接続部用のブッシングであって、
内部導体と、
前記内部導体の外周に配置される絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周面に塗布された導電性塗料からなる遮へい層と、
前記遮へい層よりも小さい抵抗を有し、前記遮へい層の一方の端である前記電力用機器と接続する側の接地側端と、前記遮へい層の他方の端である前記電力用機器から離間した側の非接地側端とを電気的に接続する金属カバーと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サージ電流による遮へい層の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るブッシングを適用したケーブル終端接続部の内部構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係るブッシングを適用したケーブル終端接続部の分解図である。
【
図3A】
図3Aは、ブッシングに設けられる金属カバーを示す図である。
【
図3B】
図3Bは、金属カバーを設けた状態のブッシングの表面の遮へい層の形成領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係るブッシング10を適用したケーブル終端接続部1の内部構造を示す断面図である。
図2は、実施の形態に係るブッシングを適用したケーブル終端接続部の分解図である。ケーブル終端接続部1は、例えば、開閉装置や変圧器等の気密性を要求される電力用機器用の機器直結型終端接続部である。以下の説明において、第1ブッシング部10Aにおいては、図面中、左側を「先端側」、右側を「後端側」と称し、第2ブッシング部10Bにおいては、図面中、上方を「先端側」、下方を「後端側」と称する。すなわち、部材を取り付ける方向の側を「先端側」、その反対側を「後端側」と称する。また、先端側の端面を「先端面」、後端側の端面を「後端面」と称することがある。また、ブッシング10においては、図面中、ブッシング10の上方にある外周面を「上面」と呼ぶことがある。
【0012】
図1に示すように、ケーブル終端接続部1は、ブッシング10にケーブル端末部20が装着されることにより構成される。
【0013】
ブッシング10は、第1方向(例えば、水平方向(
図1における左右方向))に延在する第1ブッシング部10Aと、第1方向に直交する第2方向(例えば、垂直方向(
図1における上下方向))に延在する第2ブッシング部10Bを有する。ブッシング10は、第1ブッシング部10Aの軸方向中央部に第2ブッシング部10Bが分岐接続されている、いわゆるT字型ブッシングである。なお、ブッシング10は、第1ブッシング部10Aの軸方向端部に第2ブッシング部10Bが接続されている、いわゆるL字型ブッシングであってもよい。この場合、後述の内部導体11がL字型となり、後述する課電部102、第1の受容口121、当該受容口に取り付けるゴム絶縁栓40が無い構造となる。
【0014】
第1ブッシング部10Aは、一方(
図1における左側)の端部に、電力用機器が接続される機器接続部101を有し、他方(
図1における右側)の端部に、耐圧試験時に課電用ケーブルが接続される課電部102を有する。第2ブッシング部10Bは、開放端部に、ケーブル端末部20が接続されるケーブル接続部103を有する。なお、課電部102は、通常使用時には絶縁栓40で閉塞される。
【0015】
ブッシング10は、内部導体11、絶縁筒12、遮へい層13、機器側固定フランジ14及び課電側固定フランジ15を備える。
【0016】
内部導体11及び絶縁筒12は、例えば、モールド成形により一体的に形成される。遮へい層13は、絶縁筒12の外周面に塗布された導電性塗料によって形成される。機器側固定フランジ14は、第1ブッシング10Aの機器接続部101を除いた部分の機器側(
図1においては左側)の端面に配置され、かつ、機器接続部101の後端部の外周に配置される。課電側固定フランジ15は、課電部102における絶縁筒12の端部、具体的には、第1ブッシング10Aにおける機器と反対側(
図1においては右側)の端部に配置される。
【0017】
遮へい層13は、外部への漏電を防止する遮へい部及びブッシング10内の電界を緩和する電界緩和部として機能する。遮へい層13は、第1ブッシング部10Aにおいて、機器側固定フランジ14から課電側固定フランジ15にわたって絶縁筒12の外周面全体に形成される。また、遮へい層13は、第2ブッシング部10Bにおいて、絶縁筒12の外周面のケーブル接続部103側の端部を除く部分に形成される。第2ブッシング部10Bの遮へい層13が形成されていない部分(
図1における遮へい層13の端部とケーブル側固定フランジ26の間の部分)は、機器側の接地構造と、電力ケーブル50の接地構造を絶縁する縁切り部17となる。
【0018】
遮へい層13は、機器側固定フランジ14及び課電側固定フランジ15と、機械的かつ電気的に接続される。遮へい層13は、機器側固定フランジ14を介して電力用機器の機器ケース60と電気的に接続され、接地される。つまり、機器接続部101に連設する部分の絶縁筒12の外周面における遮へい層13の電力用機器側(機器接続部101側)の端部131が接地側端であり、課電部102及びケーブル接続部103における遮へい層13の端部132、133は非接地側端である(以下、「接地側端131」、「非接地側端132、133」と称する)。機器側接続部101の接地側端131と課電部102の非接地側端132とを結ぶ導体経路における遮へい層13の抵抗は、例えば、10Ω以下である。
【0019】
内部導体11は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体11は、課電部102に挿入される課電用のケーブル導体(図示略)と接続する第1導体接続部111と、ケーブル接続部103に挿入された電力ケーブル50のケーブル導体51と接続する第2導体接続部112を有する(
図2参照)。なお、
図1の実施の形態においては、通常使用時を示すため、課電部102には、ゴム絶縁栓40が取り付けられており、内部導体11の第1導体接続部111には、ゴム絶縁栓40の先端側の導体が電気的に接続されている。
【0020】
絶縁筒12は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。絶縁筒12は、課電部102側の端部に、課電用ケーブル(図示略)を受け入れる第1受容口121を有し、ケーブル接続部103側の端部に、ケーブル端末部20を受け入れる第2受容口122を有する。第1受容口121は、内部導体11の第1導体接続部111と連通し、第2受容口122は、内部導体11の第2導体接続部112と連通する。
【0021】
機器側固定フランジ14の外径は、機器ケース60に設けられた固定用開口(符号略)の口径より大きい。機器ケース60の固定用開口に、ブッシング10の機器接続部101を挿入し、Oリング等のシール部材(符号略)を介して機器側固定フランジ14を機器ケース60にボルト締結することにより、ブッシング10は、機器ケース60に気密に固定される。
【0022】
図2に示すように、ケーブル終端接続部1において、ケーブル端末部20は、電力ケーブル50の先端部に、導体接続端子21、ストレスコーン22、圧縮装置23、保護金具24、及び防食層(図示略)等の接続材料が取り付けられて構成される。
【0023】
電力ケーブル50は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された154kV級の電力ケーブルである。電力ケーブル50は、中心から順に、ケーブル導体51、ケーブル絶縁体52、ケーブル外部半導電層53、ケーブル遮へい層54及びケーブルシース(図示略)等を有する。ケーブル端末部20において、電力ケーブル50の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0024】
なお、電力ケーブル50がフリーストリッピングタイプ(フリストタイプとも呼ばれる)の場合は、ケーブル外部半導電層53の先端部とケーブル絶縁体52との段差部分を埋めるために、ケーブル外部半導電層53の先端側に外部半導電処理部25を設けるのが好ましい。外部半導電処理部25は、ケーブル外部半導電層53の段剥ぎされた先端側に、導電性塗料を塗布する、またはポリエチレンなどの半導電性テープを巻き付けてモールド処理することで形成される。
【0025】
ケーブル導体51には、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性の導体接続端子21が圧縮により接続される。これにより、ケーブル導体51と導体接続端子21とが電気的かつ機械的に接続される。ケーブル絶縁体52から外部半導電処理部25の先端部にわたる外周にストレスコーン22が装着される。また、ストレスコーン22の後端側には、圧縮装置23及び保護金具24が装着される。
【0026】
ストレスコーン22は、先端側の絶縁部(符号略)と後端側の半導電部(符号略)が、モールド成型により一体的に形成され、全体として紡錘形状を有するプレモールド絶縁筒である。絶縁部は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の絶縁性ゴム材料で形成され、半導電部は、例えば、半導電性のエチレンプロピレンゴム(EPゴム)又はシリコーンゴム等の半導電性ゴム材料で形成されている。
【0027】
ストレスコーン22の後端部(半導電部)は、電力ケーブル50のケーブル外部半導電層53に電気的に接続される。本実施の形態では、ストレスコーン22の後端部(半導電部)は、外部半導電処理部25に接続されており、外部半導電処理部25を介してケーブル外部半導電層53に電気的に接続されている。ケーブル外部半導電層53がボンドタイプの場合は、ケーブル外部半導電層53の端部をスロープ状に形成して、ストレスコーン22の後端部(半導電部)に直接接続されるようにしてもよい。ストレスコーン22の先端側(絶縁部)の外周面は、ブッシング10の絶縁筒12の第2受容口122に対応する形状を有し、ストレスコーン22が圧縮装置23により押圧されることで絶縁筒12の第2受容口122に圧接される。
【0028】
圧縮装置23は、押し金具、押し金具フランジ、スプリング、及び座金等を有する(符号略)。押し金具フランジは、ケーブル端末部20をブッシング10に固定するための固定部材である。本実施の形態においては、ケーブル側固定フランジ26が押し金具フランジにて形成されている。すなわち、本実施の形態において、ケーブル側固定フランジ26は、圧縮装置23の一部を形成しているが、押し金具フランジや圧縮装置23の一部で形成することに限定されない。例えば、ケーブル端末部20の構造によっては、保護金具24でケーブル側固定フランジ26を形成するなど、ケーブル端末部20を形成する金具であれば、特に構造は限定されない。
【0029】
電力ケーブル50の先端部を段剥ぎした後、保護金具24、圧縮装置23、ストレスコーン22を電力ケーブル50に装着し、ケーブル導体51に導体接続端子21を取り付けることにより、ケーブル端末部20が組み立てられる。ブッシング10に対してケーブル側固定フランジ26である押し金具フランジをボルト締結により固定することにより、ストレスコーン22の先端側の絶縁部の外周面が絶縁筒12の第2受容口122の内壁面に押し付けられ、導体接続端子21は内部導体11と電気的に接続される。
【0030】
さらに、本実施の形態に係るブッシング10には、サージ対策として、金属カバー30が設けられている。
図3A、
図3Bは、ブッシング10に設けられる金属カバー30を示す図である。
図3Aでは、金属カバー30を網掛けのハッチングで示している。
図3Bでは、遮へい層13の形成領域を斜線のハッチングで示し、遮へい層13と金属カバー30との位置関係を明確化している。
【0031】
図3に示すように、金属カバー30は、遮へい層13の接地側端131と、非接地側端132及び非接地側端133とを電気的に接続する。金属カバー30は、遮へい層13よりも抵抗が小さい。これにより、開閉サージや雷サージなどの様々なサージが発生したときのサージ電流は、遮へい層13ではなく、金属カバー30を流れることとなる。なお、「抵抗が小さい」とは、形成材料自体の抵抗率ではなく、同一電流経路における抵抗が小さいことを意味する。
【0032】
金属カバー30は、金属材料からなる板材で形成される。板材を用いることで、厚さ寸法を抑えつつ表面積を大きくとることができる。金属カバー30は、例えば、ステンレス、アルミニウム、または真鍮(黄銅)等の金属材料で形成される。金属カバー30は、錆びにくさ、加工のしやすさ、バネ性を有する観点から、ステンレス製で形成するのが好ましい。
【0033】
金属カバー30の板厚は、遮へい層13の膜厚の10倍以上であることが好ましい。なお、導電性塗料によって形成する遮へい層13の膜厚は、例えば、5μm~100μmである。金属カバー30において、接地側端131に対応する位置と非接地側端132に対応する位置とを結ぶ導体経路における抵抗は、遮へい層13における接地側端131と非接地側端132とを結ぶ導体経路における抵抗より小さい。金属カバー30の接地側端131と非接地側端132とを結ぶ導体経路における抵抗は、例えば1Ω以下である。これにより、金属カバー30の抵抗を、遮へい層13の抵抗よりも容易に小さくすることができる。
【0034】
具体的には、金属カバー30は、第1ブッシング部10Aの周面を覆う第1カバー部31、第2ブッシング部10Bの周面に配置される第2カバー部32、及び、第1カバー部31と第2カバー部32とを連結する連結部33を有する。第1カバー部31と連結部33、連結部33と第2カバー部32は、例えば、ボルトによって締結される。金属カバー30を複数の部材で構成することにより、ブッシング10への取り付け作業が容易になる。
【0035】
第1カバー部31は、第1ブッシング部10Aにおける絶縁筒12の外周面に沿う湾曲形状を有し、第1ブッシング部10Aの外周面の一部(本実施の形態では第1ブッシング部10Aの上面の一部)を覆うように配置される。第1カバー部31は、
図3Aに示すように、第1ブッシング部10Aにおける絶縁筒12の外周面の一部を覆ってもよいし、全体的に覆ってもよい。第1カバー部31の大きさ及び形状は、第1カバー部31に要求される特性に基づいて設定される。第1カバー部31に要求される特性とは、例えば抵抗などの電気的特性および耐振動性などの機械的特性である。
【0036】
具体的には、第1カバー部31は、機器接続部101側(
図3A、
図3Bにおける左側)の端部が機器側固定フランジ14の外周面(本実施の形態では
図1に示すように機器側固定フランジ14の後端側の外周面)にボルト締結によって取り付けられ、課電部102側(
図3A、
図3Bにおける右側)の端部が課電側固定フランジ15の外周面にボルト締結によって取り付けられている。
【0037】
また、第1カバー部31と遮へい層13との間には、空気層(隙間)が設けられている。機器側固定フランジ14及び課電側固定フランジ15の外径を、絶縁筒12の外径よりも大きくし、機器側固定フランジ14及び課電側固定フランジ15の外周面が絶縁筒12の外周面よりも張り出すようにすることで、第1カバー部31と遮へい層13との間に容易に所定厚さの空気層を形成することができる。第1カバー部31と遮へい層13との間に設けられる空気層の厚さは、例えば3mmである。
【0038】
第2カバー部32は、帯形状の板材を円弧状に湾曲させてリング状に形成した金属バンドであり、第2ブッシング部10Bの外周面を周方向に取り囲むように配置される。第2カバー部32は、例えば、半導電ゴム層を介して遮へい層13と密着する。これにより、第2カバー部32は遮へい層13と電気的に接続される。また例えば、第2カバー部32と遮へい層13との間に空気層が介在してもよい。
【0039】
第2カバー部32は、遮へい層13の非接地側端133と縁切り部17の境界を覆うように配置される。すなわち、遮へい層13の非接地側端133の端面は、第2カバー部32によって完全に覆われている。したがって、遮へい層13の非接地側端133は、確実に接地される。
【0040】
連結部33は、第1カバー部31と第2カバー部32とを連結する。連結部33の形状は、本実施の形態では、薄い板状に形成されるが特に限定されず、断面積は、30mm2以上であることが好ましい。これにより、遮へい層13の接地側端131とケーブル接続部103側の非接地側端133とを結ぶ経路における金属カバー30の抵抗が増大するのを防止できる。
【0041】
このように、本実施の形態に係るブッシング10は、電力用機器に電力ケーブル50を接続するための機器直結型終端接続部用のブッシングであって、内部導体11と、内部導体11の外周に配置される絶縁筒12と、絶縁筒12の外周面に塗布された導電性塗料からなる遮へい層13と、遮へい層13よりも小さい抵抗を有し、遮へい層13の一方の端である電力用機器と接続する側の接地側端131と遮へい層13の他方の端である電力用機器から離間した側の非接地側端132、133とを電気的に接続する金属カバー30と、を備える。ブッシング10によれば、遮へい層13よりも抵抗の小さい金属カバー30にサージ電流が流れるので、サージ電流が流れることによって遮へい層13が損傷するのを防止できる。
【0042】
また、ブッシング10は、第1ブッシング部10Aの機器接続部101を除いた部分の機器接続部101側(図中左側)の端部(第1端部)及び課電部102側(図中右側)の端部(第2端部)を有し、第1方向(水平方向)に延在する第1ブッシング部10Aと、第1ブッシング部10AにT字型又はL字型に接続される第2ブッシング部10Bと、を備え、遮へい層13の接地側端131は、機器接続部101側の端部に配置され、遮へい層13の非接地側端132は、課電部102側の端部に配置される。また、ブッシング10が第1ブッシング部10Aから第2ブッシング部10Bに分岐していることにより、遮へい層13も分岐する。これにより、非接地側端132以外の非接地側端133は第2ブッシング部10Bに配置される。遮へい層13の非接地側端133は、本実施の形態では、第2ブッシング部10Bにおける縁切り部17の第1ブッシング部10A側(図中上側)の端部に配置される。言い換えれば、遮へい層13の非接地側端133は、縁切り部17との境界である。これにより、遮へい層13の形成領域が比較的大きく、サージ電流によって損傷を受けやすい大型のブッシングにおいても、サージ電流による遮へい層13の損傷を抑制することができる。
【0043】
また、ブッシング10において、遮へい層13の非接地側端133とケーブル側固定フランジ26を取り付ける端部との間に縁切り部17が形成されており、第2カバー部32は、非接地側端133と縁切り部17の境界を覆うように配置されている。これにより、ケーブル側固定フランジ26との間での放電は、遮へい層13の非接地側端133ではなく第2カバー部32との間で生じるので、遮へい層13の非接地側端133が損傷するのを防ぐことができ、信頼性が向上する。
【0044】
また、ブッシング10は、第1ブッシング部10Aの機器接続部101を除いた部分の機器接続部101側(図中左側)の端部(第1端部)に配置され、遮へい層13の接地側端131が接続される機器側固定フランジ14と、第1ブッシング部10Aの課電部102側(図中右側)の端部(第2端部)に配置され、遮へい層13の非接地側端132が接続される課電側固定フランジ15と、を備え、第1カバー部31は、機器側固定フランジ14及び課電側固定フランジ15に、機械的かつ電気的に接続されている。これにより、金属カバー30によって、遮へい層13の接地側端131と非接地側端132とを容易に電気的に接続することができる。
【0045】
また、ブッシング10において、金属カバー30は、第1ブッシング部10Aの外周面を覆う第1カバー部31と、第2ブッシング部10Bの外周面に配置されるリング状の第2カバー部32と、第1カバー部31と第2カバー部32とを連結する連結部33と、を有する。
これにより、ブッシング10の外周面に、金属カバー30を容易に取り付けることができる。
【0046】
また、ブッシング10において、連結部33は、断面積が30mm2以上である。これにより、遮へい層13の接地側端131とケーブル接続部103側の非接地側端133とを結ぶ経路における金属カバー30の抵抗が増大するのを防止でき、金属カバー30に確実にサージ電流を流すことができる。
【0047】
また、ブッシング10において、遮へい層13と金属カバー30との間に、所定厚さの空気層が介在する。これにより、遮へい層13と金属カバー30との間で生じうる放電を抑制することができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 ケーブル終端接続部
10 ブッシング
10A 第1ブッシング部
10B 第2ブッシング部
11 内部導体
12 絶縁筒
13 遮へい層
131 接地側端
132、133 非接地側端
14 機器側固定フランジ
15 課電側固定フランジ
17 縁切り部
20 ケーブル端末
26 ケーブル側固定フランジ(押し金具フランジ)
30 金属カバー
31 第1カバー部
32 第2カバー部
33 連結部
50 電力ケーブル