(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018342
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240201BHJP
G21K 4/00 20060101ALI20240201BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20240201BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G21K4/00 A
H01L27/144 K
H01L27/146 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121622
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑太
(72)【発明者】
【氏名】堀内 弘
【テーマコード(参考)】
2G083
2G188
4M118
【Fターム(参考)】
2G083AA02
2G083DD02
2G083DD11
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC09
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD09
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD13
2G188DD36
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD47
2G188EE07
2G188FF07
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA08
4M118CB11
4M118CB14
4M118FB03
4M118FB09
4M118FB13
4M118FB16
4M118FB24
4M118GA08
4M118HA11
4M118HA25
4M118HA26
4M118HA30
(57)【要約】
【課題】 長期にわたって画像の質の劣化を抑制できる放射線検出器を提供する。
【解決手段】 放射線検出器は、検出領域及び検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、前記光電変換基板の上に設けられ少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、前記シンチレータ層を加熱するためのヒータ61と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記シンチレータ層を加熱するためのヒータと、を備える、
放射線検出器。
【請求項2】
前記シンチレータ層は、アルカリ金属であるLi、Na、K、Rb、及びCsの少なくとも1種類の元素と、ハロゲンであるF、Cl、Br、及びIの少なくとも1種類の元素と、を含む化合物に、陽イオンであるTl+、Cu+、Ag+、Au+、Ce3+、Tb3+、Sn2+、Mn2+、Eu3+、Bi3+、In+、及びPb2+の少なくとも1種類のイオンがドーピングされた材料で形成されている、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記ヒータの温度を制御するヒータ制御部をさらに備え、
前記ヒータ制御部は、前記ヒータの温度を50乃至200℃の範囲内に設定する、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記非検出領域に位置し、前記シンチレータ層を囲み、前記光電変換基板に接着された枠状の封止部と、
前記シンチレータ層の上方に設けられ、前記検出領域及び前記非検出領域に位置し、前記封止部に接着され、前記光電変換基板及び前記封止部とともに前記シンチレータ層を覆った防湿カバーと、をさらに備える、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記ヒータは、前記検出領域の全体と対向している、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記光電変換基板に電気的に接続され、前記光電変換基板に間隔を空けて位置した回路基板をさらに備え、
前記ヒータは、前記光電変換基板と前記回路基板との間に位置している、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記光電変換基板、前記シンチレータ層、及び前記ヒータを収容した筐体をさらに備える、
請求項1に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器として、例えばX線検出器(X線平面検出器)が知られている。
放射線検出器は、放射線を電気信号へ変換する方式により、直接変換方式の放射線検出器と、間接変換方式の放射線検出器と、に分類される。直接変換方式の放射線検出器は、放射線から与えられたエネルギにより半導体内に生成された電荷を半導体端部に設けられた電極から収集することで、電気信号へ変換する。間接変換方式の放射線検出器は、入射される放射線をシンチレータ層により光に変換し、シンチレータ層からの光を半導体内で電荷に変換する。
【0003】
間接変換方式の放射線検出器は、例えば、光を信号電荷に変換する光電変換部と信号電荷の蓄積及び放出のスイッチングを行う薄膜トランジスタとを有する光電変換基板と、光電変換基板の上に設けられ放射線を蛍光に変換するシンチレータ層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001-507466号公報
【特許文献2】特開2002-275465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、長期にわたって画像の質の劣化を抑制できる放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る放射線検出器は、
検出領域及び前記検出領域の外側の非検出領域を有する光電変換基板と、
前記光電変換基板の上に設けられ、少なくとも前記検出領域に位置したシンチレータ層と、
前記シンチレータ層を加熱するためのヒータと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記X線検出器の支持基板、X線検出パネル、回路基板、及び複数のFPCを示す斜視図であり、画像伝送部を併せて示す図である。
【
図3】
図3は、上記X線検出器のX線検出モジュールの一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、上記X線検出モジュールを示す平面図である。
【
図5】
図5は、上記X線検出モジュールの一部を線V-Vに沿って示す断面図である。
【
図6】
図6は、上記X線検出器のX線検出パネル及びヒータを示す平面図であり、ヒータ制御部を併せて示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るヒータの温度に対するシンチレータ層の感度回復速度の変化をグラフで示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態係るX線検出器のX線検出パネル及び複数のヒータを示す平面図であり、複数のヒータ制御部を併せて示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係るX線検出器を示す断面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るX線検出器の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。X線検出器1は、X線画像検出器であり、X線検出パネルを利用するX線平面検出器である。
【0009】
図1に示すように、X線検出器1は、X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、スペーサ9a,9b,9c,9d、筐体51、FPC(フレキシブルプリント基板)2e1、入射窓52等を備えている。X線検出モジュール10は、X線検出パネルPNLを備えている。X線検出パネルPNLは、支持基板12と入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLは、入射窓52と対向した防湿カバー7を備えている。
【0010】
入射窓52は、筐体51の開口に取付けられている。入射窓52はX線を透過させる。そのため、X線は入射窓52を透過してX線検出モジュール10に入射される。入射窓52は、板状に形成され、筐体51内部を保護する機能を有している。入射窓52は、X線吸収率の低い材料で薄く形成することが望ましい。これにより、入射窓52で生じる、X線の散乱と、X線量の減衰とを低減することができる。そして、薄くて軽いX線検出器1を実現することができる。本実施形態において、入射窓52は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)で形成されている。
X線検出モジュール10、支持基板12、回路基板11、FPC2e1等は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0011】
X線検出モジュール10は、薄い部材を積層して構成されているため、軽く機械的強度の低いものである。このため、X線検出パネルPNL(X線検出モジュール10)は、粘着シートを介して支持基板12の平坦な一面に固定されている。支持基板12は、例えばアルミニウム合金で板状に形成され、X線検出パネルPNLを安定して保持するために必要な強度を有している。これにより、X線検出器1に外部から振動や衝撃が加わった際におけるX線検出パネルPNLの破損を抑制することができる。
【0012】
支持基板12の他面には、スペーサ9a,9bを介して回路基板11が固定されている。回路基板11は、X線検出パネルPNL(後述する光電変換基板2)に間隔を空けて位置している。スペーサ9a,9bを使用することで、主に金属から構成される支持基板12から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。
筐体51の内面には、スペーサ9c,9dを介して回路基板11が固定されている。スペーサ9c,9dを使用することで、主に金属から構成される筐体51から回路基板11までの電気的絶縁距離を保持することができる。筐体51は、回路基板11及びスペーサ9a,9b,9c,9dを介して支持基板12等を支持している。
【0013】
回路基板11にはFPC2e1に対応するコネクタが実装され、FPC2e1はコネクタを介して回路基板11に電気的に接続されている。FPC2e1とX線検出パネルPNLとの接続には、ACF(異方性導電フィルム)を利用した熱圧着法が用いられる。この方法により、X線検出パネルPNLの複数の微細なパッドと、FPC2e1の複数の微細なパッドとの電気的接続が確保される。なお、X線検出パネルPNLのパッドに関しては後述する。
【0014】
上記のように、回路基板11は、上記コネクタ、FPC2e1等を介してX線検出パネルPNL(光電変換基板2)に電気的に接続されている。回路基板11は、X線検出パネルPNL(光電変換基板2)を電気的に駆動し、かつ、X線検出パネルPNL(光電変換基板2)からの出力信号を電気的に処理するものである。
【0015】
X線検出器1は、X線検出パネルPNLのシンチレータ層(後述するシンチレータ層5)を加熱(アニール)するためのヒータ61と、ヒータ61の温度を制御するヒータ制御部62と、をさらに備えている。筐体51は、ヒータ61を収容している。本実施形態において、筐体51は、ヒータ制御部62をさらに収容している。詳しくは、ヒータ61及びヒータ制御部62は、筐体51及び入射窓52で囲まれた空間の内部に収容されている。
【0016】
ヒータ制御部62は、ヒータ61に電気的に接続され、ヒータ61の温度を制御することができればよい。そのため、ヒータ制御部62は、筐体51の外側に位置してもよい。ヒータ61は、X線検出パネルPNLと入射窓52との間に位置している。X線検出パネルPNLに入射するX線は、入射窓52だけではなくヒータ61も透過する。但し、ヒータ61をX線吸収率の低い材料で形成することで、ヒータ61の複数の領域にてX線透過率を均一にすることができ、X線検出パネルPNLは入射するX線を良好に検出することができる。
【0017】
仮に、ヒータ61の複数の領域にてX線透過率のばらつきが生じた場合、上記ばらついたX線透過率の分、回路基板11や、画像伝送部(後述する画像伝送部4)にて、画像データ信号(後述する画像データ信号S2)を補正することができる。これにより、X線検出器1は、ヒータ61を備えていても、良好なX線画像を生成することができる。
【0018】
図2は、本第1の実施形態のX線検出器1の支持基板12、X線検出パネルPNL、回路基板11、及び複数のFPC2e1,2e2を示す斜視図であり、画像伝送部4を併せて示す図である。なお、
図2には、X線検出器1の全ての部材を示していない。後述する封止部等、X線検出器1のいくつかの部材の図示は、
図2において省略している。
【0019】
図2に示すように、X線検出パネルPNLは、光電変換基板2、シンチレータ層5等を備えている。光電変換基板2は、基板2a、光電変換部2b、複数の制御ライン(又はゲートライン)2c1、複数のデータライン(又はシグナルライン)2c2等を有している。なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、及びデータライン2c2の数、配置等は
図2の例に限定されるものではない。
【0020】
複数の制御ライン2c1は、行方向Xに延在し、列方向Yに所定の間隔を空けて並べられている。複数のデータライン2c2は、列方向Yに延在し、複数の制御ライン2c1と交差し、行方向Xに所定の間隔を空けて並べられている。
【0021】
複数の光電変換部2bは、基板2aの一方の主面側に設けられている。光電変換部2bは、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより区画された四角形状の領域に設けられている。1つの光電変換部2bは、X線画像の1つの画素に対応する。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。上記のことから、光電変換部2bは、アレイ基板である。
【0022】
各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、スイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)2b2と、を有している。TFT2b2は、対応する一の制御ライン2c1と、対応する一のデータライン2c2とに接続されている。光電変換素子2b1はTFT2b2に電気的に接続されている。
【0023】
制御ライン2c1は、FPC2e1を介して回路基板11に電気的に接続されている。回路基板11は、FPC2e1を介して複数の制御ライン2c1に制御信号S1を与える。データライン2c2は、FPC2e2を介して回路基板11に電気的に接続されている。光電変換素子2b1によって変換された画像データ信号S2(光電変換部2bに蓄積された電荷)は、TFT2b2、データライン2c2、及びFPC2e2を介して回路基板11に伝送される。
【0024】
X線検出器1は、画像伝送部4をさらに備えている。画像伝送部4は、配線4aを介して回路基板11に接続されている。なお、画像伝送部4は、回路基板11に組込まれてもよい。画像伝送部4は、図示しない複数のアナログ-デジタル変換器によりデジタル信号に変換された画像データの信号に基づいて、X線画像を生成する。生成されたX線画像のデータは、画像伝送部4から外部の機器に向けて出力される。
【0025】
図3は、本第1の実施形態に係るX線検出器1のX線検出モジュール10の一部を示す拡大断面図である。
図3に示すように、光電変換基板2は、基板2a、複数の光電変換部2b、及び絶縁層21,22,23,24,25を有している。複数の光電変換部2bは、検出領域DAに位置している。各々の光電変換部2bは、光電変換素子2b1と、TFT2b2と、を備えている。検出領域DAは、シンチレータ層5にX線が入射し蛍光を発した場合に光電変換部2bへ蛍光が到達し得る領域である。
【0026】
TFT2b2は、ゲート電極GE、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEを有している。光電変換素子2b1は、フォトダイオードで構成されている。なお、光電変換素子2b1は、CCD(Charge Coupled Device)等で構成されてもよく、光を電荷に変換するように構成されていればよい。
【0027】
基板2aは、板状の形状を有し、絶縁材料で形成されている。上記絶縁材料としては、無アルカリガラスなどのガラスを挙げることができる。基板2aの平面形状は、例えば四角形である。基板2aの厚みは、例えば0.7mmである。絶縁層21は、基板2aの上に設けられている。
【0028】
絶縁層21の上に、ゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEは、上記制御ライン2c1に電気的に接続されている。絶縁層22は、絶縁層21及びゲート電極GEの上に設けられている。半導体層SCは、絶縁層22の上に設けられ、ゲート電極GEに対向している。半導体層SCは、非晶質半導体としての非晶質シリコン、多結晶半導体としての多結晶シリコン、酸化物半導体としての酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の半導体材料で形成されている。
【0029】
絶縁層22及び半導体層SCの上に、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ゲート電極GE、ソース電極SE、ドレイン電極DE、上記制御ライン2c1、及び上記データライン2c2は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成されている。
【0030】
ソース電極SEは、半導体層SCのソース領域に電気的に接続されている。また、ソース電極SEは、上記データライン2c2に電気的に接続されている。ドレイン電極DEは、半導体層SCのドレイン領域に電気的に接続されている。
【0031】
絶縁層23は、絶縁層22、半導体層SC、ソース電極SE、及びドレイン電極DEの上に設けられている。光電変換素子2b1は、ドレイン電極DEに電気的に接続されている。絶縁層24は、絶縁層23及び光電変換素子2b1の上に設けられている。バイアス線BLは、絶縁層24の上に設けられ、絶縁層24に形成されたコンタクトホールを通り光電変換素子2b1に接続されている。絶縁層25は、絶縁層24及びバイアス線BLの上に設けられている。
【0032】
絶縁層21,22,23,24,25は、無機絶縁材料、有機絶縁材料等の絶縁材料で形成されている。無機絶縁材料としては、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、及び酸窒化物絶縁材料を挙げることができる。有機絶縁材料としては樹脂を挙げることができる。
【0033】
シンチレータ層5は、光電変換基板2(複数の光電変換部2b)の上に設けられている。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置し、複数の光電変換部2bの上方を覆っている。シンチレータ層5は、入射されるX線を光(可視光、蛍光)に変換するように構成されている。
【0034】
なお、光電変換素子2b1は、シンチレータ層5から入射される光を電荷に変換する。変換された電荷は光電変換素子2b1に蓄積される。TFT2b2は、光電変換素子2b1への蓄電及び光電変換素子2b1からの放電を切替えることができる。なお、光電変換素子2b1の自己容量が不十分である場合、光電変換基板2はコンデンサ(蓄積キャパシタ)をさらに有し、光電変換素子2b1で変換された電荷をコンデンサに蓄積してもよい。
【0035】
シンチレータ層5は、アルカリ金属の少なくとも1種類の元素と、ハロゲンの少なくとも1種類の元素と、を含む化合物に、陽イオンの少なくとも1種類のイオンがドーピングされた材料で形成されている。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、及びCsを挙げることができる。ハロゲンとしては、F、Cl、Br、及びIを挙げることができる。陽イオンとしては、Tl+、Cu+、Ag+、Au+、Ce3+、Tb3+、Sn2+、Mn2+、Eu3+、Bi3+、In+、及びPb2+を挙げることができる。このようなイオンは賦活剤と呼ばれている。
【0036】
本第1の実施形態において、シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)で形成されている。真空蒸着法を用いてシンチレータ層5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ層5が得られる。シンチレータ層5の厚みは、実質的に200乃至1000μmである。シンチレータ層5の最表面において、シンチレータ層5の柱状結晶の太さは、3乃至10μmである。
【0037】
シンチレータ層5を形成する材料は、CsI:Tlに限定されるものではない。シンチレータ層5は、タリウム賦活ヨウ化ナトリウム(NaI:Tl)、ユーロピウム賦活臭化セシウム(CsBr:Eu)等で形成されてもよい。
【0038】
フィルム状のカバーとしての防湿カバー(防湿フィルム)7は、シンチレータ層5の上方に設けられ、シンチレータ層5を覆っている。なお、シンチレータ層5は吸湿性を有している。防湿カバー7は、大気中に含まれる水分により、シンチレータ層5の特性の劣化を抑制するために設けられている。防湿カバー7は、シンチレータ層5の露出部分を完全に覆っている。
【0039】
防湿カバー7は、金属を含むシートで形成されている。上記金属としては、アルミニウムを含む金属、銅を含む金属、マグネシウムを含む金属、タングステンを含む金属、ステンレス、コバール等を挙げることができる。防湿カバー7が金属を含んでいる場合、防湿カバー7は、水分の透過を、防止したり、大幅に抑制したりすることができる。
【0040】
また、防湿カバー7は、樹脂層と金属層とが積層された積層シートで形成されてもよい。この場合、樹脂層は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テフロン(登録商標)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、弾性ゴム等の材対とロック料で形成することができる。金属層は、例えば、前述した金属を含むものとすることができる。金属層は、スパッタリング法、ラミネート法等を用いて形成することができる。
【0041】
この場合、樹脂層より金属層をシンチレータ層5側に設けた方が好ましい。樹脂層により金属層を覆うことができるので、外力などにより金属層が受け得る損傷を抑制することができる。また、金属層が樹脂層よりもシンチレータ層5側に設けられていれば、樹脂層を介した透湿によるシンチレータ層5の特性の劣化を抑制することができる。
【0042】
防湿カバー7としては、金属層を含むシート、無機絶縁層を含むシート、樹脂層と金属層とが積層された積層シート、及び樹脂層と無機絶縁層とが積層された積層シートを挙げることができる。上記のことから、防湿カバー7の無機層は、金属層に限らず、無機絶縁層であってもよい。又は、防湿カバー7は、金属層及び無機絶縁層の両方を有してもよい。無機絶縁層は、酸化珪素、酸化アルミニウム等を含む層で形成することができる。無機絶縁層は、スパッタリング法等を用いて形成することができる。本実施形態において、防湿カバー7は、薄いアルミニウム箔で形成されている。
【0043】
X線検出器1は、光反射層6をさらに備えている。光反射層6は、シンチレータ層5のX線の入射側に設けられている。本実施形態において、光反射層6は、シンチレータ層5と防湿カバー7との間に位置している。光反射層6は、少なくとも検出領域DAに位置し、シンチレータ層5の上面を覆っている。光反射層6は、光(蛍光)の利用効率を高めて感度特性の向上を図るために設けられている。すなわち、光反射層6は、シンチレータ層5において生じた光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射して、光電変換部2bに向かうようにする。ただし、光反射層6は、必ずしも必要ではなく、X線検出パネルPNLに求められる感度特性などに応じて設ければよい。
【0044】
図4は、X線検出モジュール10を示す平面図である。
図4において、シンチレータ層5には右上がりの斜線を付し、封止部8には右下がりの斜線を付している。
図5は、X線検出モジュール10の一部を線V-Vに沿って示す断面図である。
【0045】
図4及び
図5に示すように、光電変換基板2は、検出領域DAと、検出領域DAの外側の非検出領域と、を有している。検出領域DAは、四角形の領域である。光電変換基板2の非検出領域は、検出領域DAの周囲に位置する枠状の第1非検出領域NDA1と、第1非検出領域NDA1の外側の第2非検出領域NDA2と、を有している。本実施形態において、第2非検出領域NDA2は枠状の形状を有している。
【0046】
シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。シンチレータ層5は、側面5a及び上面5bを有している。側面5aは、第1非検出領域NDA1に位置している。側面5aは、順テーパ面である。シンチレータ層5の上面5bは、防湿カバー7と対向している。
【0047】
光電変換基板2は、さらに複数のパッド2d1及び複数のパッド2d2を有している。パッド2d1及びパッド2d2は、第2非検出領域NDA2に位置している。本実施形態において、複数のパッド2d1は基板2aの左辺に沿って並べられ、複数のパッド2d2は基板2aの下辺に沿って並べられている。例えば、パッド2d1,2d2は、絶縁層23の上に設けられ、絶縁層24及び絶縁層25で覆われていない。
なお、
図4には複数のパッドを模式的に示しており、複数のパッドの個数、形状、サイズ、位置、及びピッチは、
図4に示す例に限定されるものではない。
【0048】
1つの制御ライン2c1は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つのデータライン2c2は、検出領域DA、第1非検出領域NDA1、及び第2非検出領域NDA2を延在し、複数のパッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。
1つのパッド2d1にはFPC2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続され、1つのパッド2d2にはFPC2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている(
図2)。
【0049】
X線検出モジュール10は、封止部8をさらに備えている。封止部8は、第1非検出領域NDA1に位置し、シンチレータ層5を囲んでいる。封止部8は、枠状の形状を有し、シンチレータ層5の周囲を連続的に延在している。封止部8は、光電変換基板2(例えば、上記絶縁層25)に接着されている。本実施形態において、封止部8は、シンチレータ層5の側面5aに接触している。
【0050】
封止部8の外面8aの形状が外側に突出する曲面となっていれば、光反射層6及び防湿カバー7の周縁近傍を封止部8の外面8aに倣わせ易くなる。そのため、光反射層6を封止部8に密着させるのが容易となる。また、光反射層6及び防湿カバー7をなだらかに変形させることができるので、防湿カバー7の厚みを薄くしても防湿カバー7への亀裂等の不良の発生を抑制することができる。
【0051】
光反射層6及び防湿カバー7は、検出領域DA及び第1非検出領域NDA1に位置している。光反射層6及び防湿カバー7は、
図4に示す平面図において、シンチレータ層5を完全に覆っている。
図5に示すように、シンチレータ層5のうち光電変換基板2及び封止部8で覆われていない部分は、防湿カバー7で完全に覆われている。言い換えると、防湿カバー7は、光電変換基板2及び封止部8とともにシンチレータ層5を覆っている。
【0052】
防湿カバー7は、封止部8の外面8aに光反射層6を介して間接に接着されている。防湿カバー7は、封止部8の少なくとも一部を覆っている。例えば、大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と封止部8とを接合すれば、光反射層6をシンチレータ層5の上面5b等に接触させることができる。
【0053】
また、一般的に、シンチレータ層5には、その体積の10乃至40%程度の空隙が存在する。そのため、空隙にガスが含まれていると、X線検出器1を航空機などで輸送した場合や、X線検出器1を高地で使用した場合にガスが膨張して防湿カバー7が破損する恐れがある。大気圧よりも減圧された環境において防湿カバー7と封止部8とを接合すれば、X線検出器1が航空機などで輸送された場合であっても防湿カバー7の破損を抑制することができる。上記のことから、光電変換基板2、封止部8及び防湿カバー7により画された空間の圧力は、大気圧よりも低くした方が好ましい。
【0054】
また、後述するように、光反射層6及び防湿カバー7の周縁近傍を加熱することで、光反射層6の周縁近傍と封止部8を接合する。この場合、光反射層6及び防湿カバー7の周縁近傍の温度と、封止部8の温度が低下すると、光反射層6及び防湿カバー7の周縁近傍と封止部8との間に熱応力が発生する。光反射層6及び防湿カバー7の周縁近傍と封止部8との間に熱応力が発生すると、光反射層6の周縁近傍と封止部8との間に剥離が生じる恐れがある。剥離が生じると防湿性能が著しく低下する恐れがある。
【0055】
本実施形態の防湿カバー7は、薄いアルミニウム箔で形成されているので、熱応力が発生した際に防湿カバー7が延び易くなる。そのため、熱応力を緩和させることができ、封止部8から光反射層6の周縁近傍の剥離を抑制することができる。
【0056】
封止部8は、熱可塑性樹脂を含む材料で形成されている。封止部8は、熱可塑性樹脂を主成分として含む材料で形成されている。封止部8は、100%熱可塑性樹脂で形成されてもよい。又は、封止部8は、熱可塑性樹脂に添加物が混在した材料で形成されてもよい。封止部8が熱可塑性樹脂を主成分として含んでいれば、封止部8は、加熱により、光電変換基板2と防湿カバー7とを接合することができる。
【0057】
熱可塑性樹脂は、ナイロン、PET(Polyethyleneterephthalate)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を利用することができる。この場合、ポリエチレンの水蒸気透過率は0.068g・mm/day・m2であり、ポリプロピレンの水蒸気透過率は0.04g・mm/day・m2である。これらの水蒸気透過率は低い。そのため、封止部8が、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも何れかを主成分として含んでいれば、封止部8の内部を透過してシンチレータ層5に到達する水分を大幅に少なくすることができる。
【0058】
本実施形態において、光電変換基板2、封止部8、及び防湿カバー7で囲まれている空間(空隙13)は、大気圧より減圧された空間である。なお、光反射層6及び防湿カバー7の外部からの加熱により封止部8を溶かすことで、光反射層6の表面に溶かした封止部8の樹脂を密着させており、その後に封止部8を冷却することで封止部8と光反射層6との接着が行われる。
【0059】
図6は、X線検出器1のX線検出パネルPNL及びヒータ61を示す平面図であり、ヒータ制御部62を併せて示す図である。
図6に示すように、ヒータ61は、検出領域DAの全体と対向している。そのため、少なくとも、検出領域DAに位置するシンチレータ層5を均一に加熱することができる。
本実施形態のX線検出器1は、上記のように構成されている。
【0060】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線検出器1によれば、シンチレータ層5を形成する材料に、例えばアルカリハライドが用いられている。アルカリハライドのようなイオン結晶は、放射線の照射により着色する性質を持っている。X線検出器1を長期間使用した場合、シンチレータ層5の蛍光が着色により自己吸収されてしまい、光電変換基板2(光電変換部2b)まで到達する光の量が低減することになり、検出感度の低下を招いてしまう。
【0061】
検出感度が低下する場合、十分な画像品質を得るため、より多くのX線(放射線)の照射量が必要となる。しかしながら、X線検出器1を医療診断用装置に用いる場合、患者の被曝量増加につながってしまう。又は、X線検出器1を非破壊検査用装置に用いる場合、スループットの低下を招き、生産能力の低下につながってしまう。そのため、間接変換方式のX線検出器1において、シンチレータ層5の着色による感度低下の改善が求められている。
【0062】
さらに、シンチレータ層5にX線が照射されると、シンチレータ層5に、長期残像、感度ゴースト等と呼ばれるX線の照射履歴により画像データ信号S2へ悪影響を及ぼす現象が発生する。この現象により、例えば、以前に検出したX線画像の成分が以降に検出されるX線画像に表出することとなる。そのため、間接変換方式のX線検出器1において、誤診、誤検知等へとつながるため、長期残像、感度ゴースト等を抑制することも求められている。上述したことから、長期間使用した場合でもシンチレータ層5の着色による検出感度の低下を抑制することができ、長期残像、感度ゴースト等を抑制することができるX線検出器1が求められている。
【0063】
ここで、着色のメカニズムを説明する。酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S)で形成されるシンチレータ層5にも着色の問題はあるが、以下、アルカリハライド系のシンチレータ層5のX線(放射線)による着色のメカニズムを説明する。
【0064】
(1)まず、X線によりシンチレータ層5の内部の電子が励起され、電子-ホール対が生成される。
(2)電子とホールはそれぞれシンチレータ層5の内部を拡散移動し、蛍光に寄与しなかった電子の一部はハロゲン空孔にトラップされF中心となり、ホールはハロゲン原子にトラップされVk中心を形成する。
(3)これらF中心とVk中心は、色中心と呼ばれ、それぞれシンチレータ層5の母体のイオン結晶のバンドギャップ内に準位を形成し、シンチレータ層5の母体の吸収帯よりもエネルギの低い光を吸収するようになる。
(4)X線照射により色中心が多数形成されていくに従い、光の吸収が大きくなり、着色も濃くなっていく。
【0065】
長期残像及び感度ゴーストの発生メカニズムも、上記事項(1)及び(2)の過程でトラップされた電子とホールが原因である。以前のX線検出動作時にトラップされた電子とホールが、以降のX線検出動作時にデトラップされ、発光過程に寄与した場合に本来よりも大きな信号(画像データ信号S2)が出力されてしまうことで引き起こされる。なお、電子とホールがトラップされると、発光に寄与せず、着色等の悪影響を及ぼすものである。
【0066】
以上のようにアルカリハライド系のシンチレータ層5にて、着色、長期残像、及び感度ゴーストの発生は、電子とホールがトラップされ色中心を形成することが原因である。そのため、これらの現象を抑制する方策として、電子とホールがトラップされないようにする方法、またはトラップされた電子とホールをデトラップする方法が挙げられる。
【0067】
そこで、本実施形態のX線検出器1は、トラップされた電子とホールをデトラップすることで、上記現象を抑制するものであり、ヒータ61を備えている。ヒータ61を使用したアニールによる熱エネルギで、シンチレータ層5内のトラップされた電子とホールをデトラップすることができる。
【0068】
ヒータ61は、例えば薄フィルム型ヒータである。これにより、入射X線がヒータ61を透過する際の悪影響を小さくすることができる。さらに、薄フィルム型ヒータは、温度分布の面均一性がよい。そのため、シンチレータ層5を均一にアニールすることが容易となる。
【0069】
ヒータ制御部62は、ヒータ61の温度を50乃至200℃の範囲内に設定した方が望ましい。
図7は、本第1の実施形態に係るヒータ61の温度に対するシンチレータ層5の感度回復速度の変化をグラフで示す図である。シンチレータ層5は、CsI:Tlで形成されている。そして、
図7のグラフは、30Gyのエネルギをシンチレータ層5がX線から受けた後、シンチレータ層5を加温した状態に保持して行った実験から求めた近似曲線である。
【0070】
図7に示すように、ヒータ61の温度を50℃に保持した際、43.83時間でシンチレータ層5の感度が回復する結果が得られた。その他に、ヒータ61の温度を100℃に保持した際は3.94時間でシンチレータ層5の感度が回復する結果が得られた。実験結果は100℃までである。100℃を超える温度に関してはアレニウスプロットから求めた。ヒータ61の温度を150℃に保持した際は0.63時間で、ヒータ61の温度を200℃に保持した際は0.15時間で、それぞれシンチレータ層5の感度が回復することが予想される。上記のことから、ヒータ61の温度は50乃至200℃の範囲内が望ましい。
【0071】
なお、ヒータ61の温度を高くし過ぎるのは望ましくない。例えば、ヒータ61の温度を500℃以上にした場合、シンチレータ層5の特性及び光電変換基板2の特性に悪影響が及んでしまう。
【0072】
また、ヒータ制御部62は、ヒータ61を、常時、稼働させる必要はない。例えば、X線検出器1でX線検出を実施しない期間に、ヒータ61を稼働させてシンチレータ層5をアニールすることで、トラップされた電子とホールをデトラップしておくことができる。これにより、次回、X線検出を実施する際に、以前のX線照射の悪影響を抑制することが可能であり、かつ、熱による放射線検出動作への悪影響を最小限とすることができる。
【0073】
上述したことから、X線照射にてシンチレータ層5が着色し、X線検出器1の感度特性が低下しても、ヒータ61にてシンチレータ層5を加熱することで、X線検出器1の感度特性を回復することができる。間接変換方式のX線検出器1を長期にわたって使用した場合の検出感度の低下を抑制することができる。長期残像や感度ゴーストといったX線の照射履歴による画像の品質低下を抑制することができる。
【0074】
そのため、本第1の実施形態において、長期にわたって画像の質の劣化を抑制できるX線検出器1を得ることができる。X線検出器1の用途が医療用途である場合、患者の被曝量の低減を図ることができる。また、X線検出器1の用途が非破壊検査用途である場合、作業効率の改善を図ることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。X線検出器1は、本第2の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図8は、本第2の実施形態係るX線検出器1のX線検出パネルPNL及び複数のヒータ61a,61b,61c,61dを示す平面図であり、複数のヒータ制御部62a,62b,62c,62dを併せて示す図である。
【0076】
図8に示すように、X線検出器1は、複数のヒータを備えてもよい。言い換えると、上記ヒータ61は複数に分割されてもよい。本実施形態において、X線検出器1は、4個のヒータ61a,61b,61c,61dを備えている。平面視にて、ヒータ61a,61b,61c,61dは、互いに重なっておらず、少なくとも検出領域DAに位置している。
【0077】
ヒータ61a,61b,61c,61dは、検出領域DAの1/4以上の領域に重なっていた方が望ましい。ヒータ61a,61b,61c,61dは、検出領域DAの1/2以上の領域に重なっていた方がさらに望ましい。これにより、検出領域DAに位置するシンチレータ層5を均一に加熱することができる。例えば、ヒータ61a,61b,61c,61dが検出領域DAの1/4未満の領域に重なっている場合、シンチレータ層5を均一に加熱できない場合があり、シンチレータ層5の感度特性にムラが発生する恐れがある。
【0078】
X線検出器1は、ヒータ61a,61b,61c,61dの個数に合わせて複数のヒータ制御部を設けることができる。本実施形態において、X線検出器1は、4個のヒータ制御部62a,62b,62c,62dを備えている。ヒータ制御部62a,62b,62c,62dは、ヒータ61a,61b,61c,61dに一対一で電気的に接続されている。
但し、X線検出器1は、3個以下のヒータ制御部を備えてもよい。その場合、1個のヒータ制御部が2個以上のヒータに接続されてもよい。
上記のように構成された第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。X線検出器1は、本第3の実施形態で説明する構成以外、上記第1の実施形態と同様に構成されている。
図9は、本第3の実施形態に係るX線検出器1を示す断面図である。
図9において、ヒータ制御部62の図示を省略している。
【0080】
図9に示すように、ヒータ61は、光電変換基板2と回路基板11との間に位置してもよい。本実施形態において、ヒータ61は、支持基板12のうち回路基板11と対向する側の面に固定されている。シンチレータ層5へのX線の入射に悪影響を及ぼさないよう、ヒータ61は位置している。そのため、シンチレータ層5に入射するX線をヒータ61にて遮蔽したり、シンチレータ層5に入射するX線の量をヒータ61にて低減したり、する事態を回避することができる。
【0081】
上記のように構成された第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。ヒータ61はシンチレータ層5へのX線の入射に悪影響を及ぼさないため、X線の検出感度に悪影響を及ぼすこと無しに、X線検出器1はヒータ61を備えることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
例えば、シンチレータ層5は、単一の連続体として少なくとも検出領域DAに設けられている。但し、シンチレータ層5は、光電変換部2bの領域毎に分割して設けられてもよい。
シンチレータ層5は、上述した材料に限らず、ナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、酸硫化ガドリニウム(Gd2O2S)等で形成されてもよい。
【0084】
防湿層は、光電変換基板2とシンチレータ層5との間に設けられていない。但し、防湿層は、光電変換基板2とシンチレータ層5との間に設けられてもよい。又は、防湿カバー7は、光電変換基板2及びシンチレータ層5をまとめて被覆してもよい。
【0085】
回路基板11への不所望な熱入力を抑える目的で、X線検出器1は断熱材を備えてもよい。例えば、上記断熱材は、回路基板11とヒータ(ヒータ61)との間に位置している。さらに、X線検出器1は空冷システム又は水冷システムを備えてもよい。
【0086】
CFRP製の入射窓52は、導電性を持っている。そのため、ヒータ制御部を入射窓52に電気的に接続し、入射窓52をヒータとして機能させてもよい。その場合、X線検出器1は、ヒータ61無しに構成可能である。
【0087】
図10に示すように、変形例に係るX線検出器1において、シンチレータ層5は、光電変換基板2の上に直に形成されていなくともよい。X線検出器1は、支持基板12、光電変換基板2、シンチレータパネルSP等を備えている。シンチレータパネルSPは、基板15、光反射層16、シンチレータ層5、及び防湿体17を備えている。
【0088】
基板15は、検出領域DA及び非検出領域NDA(上述した第1非検出領域NDA1及び第2非検出領域NDA2)に位置し、CFRPで形成されている。CFRPは、高いX線透過率を有する材料である。
シンチレータ層5は、基板15と光電変換基板2との間に位置している。シンチレータ層5は、基板15に隙間を設けて対向している。シンチレータ層5は、少なくとも検出領域DAに位置している。本実施形態において、シンチレータ層5は、検出領域DA及び非検出領域NDAに位置している。
【0089】
光反射層16は、基板15とシンチレータ層5との間に設けられている。光反射層16は、検出領域DA及び非検出領域NDAに位置している。光反射層16は、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために設けられている。すなわち、光反射層16は、シンチレータ層5で変換された蛍光を反射する機能を有している。光反射層16は光電変換基板2側とは反対側に向かう光を反射するため、光が光電変換部2bに向かう量を向上できる。
【0090】
防湿体17は、基板15、光反射層16、及びシンチレータ層5を包み込んでいる。防湿体17は、光反射層16とともにシンチレータ層5を気密に閉塞している。防湿体17は、例えば、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いポリパラキシリレン(poly-para-xylylene)樹脂等の有機材料で形成されている。ポリパラキシリレン樹脂で形成された防湿体17を有機膜と称することができる。
【0091】
X線検出器1は、接着層ALをさらに備えている。接着層ALは、光電変換基板2と、シンチレータパネルSPと、の間に位置している。詳しくは、接着層ALは、光電変換基板2の絶縁層25と、シンチレータパネルSPの防湿体17と、にそれぞれ接着している。光電変換基板2及びシンチレータパネルSPは、接着層ALにより貼り合わせられている。
図10に示したシンチレータ層5においても、ヒータにより感度特性を改善することができる。
【0092】
上記実施形態及び上記変形例で説明した技術は、上記X線検出器1への適用に限定されるものではなく、他のX線検出器、各種の放射線検出器に適用することができる。放射線検出器は、X線検出パネルPNLの替わりに、放射線を検出する放射線検出パネルを備えていればよい。
【符号の説明】
【0093】
1…X線検出器、10…X線検出モジュール、PNL…X線検出パネル、
2…光電変換基板、2a…基板、2b…光電変換部、2b1…光電変換素子、
2b2…TFT、2c1…制御ライン、2c2…データライン、51…筐体、
52…入射窓、5…シンチレータ層、6…光反射層、7…防湿カバー、8…封止部、
11…回路基板、12…支持基板、61,61a,61b,61c,61d…ヒータ、
62,62a,62b,62c,62d…ヒータ制御部、DA…検出領域、
NDA1…第1非検出領域、NDA2…第2非検出領域、X…行方向、Y…列方向。