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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018353
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240201BHJP
   C09K 3/10 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/10 X
C09K3/10 M
C09K3/10 Z
C09K3/10 F
C09K3/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121643
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 尊
(72)【発明者】
【氏名】柳口 富彦
【テーマコード(参考)】
3J040
4H017
【Fターム(参考)】
3J040BA05
3J040EA01
3J040EA16
3J040FA06
3J040HA09
3J040HA15
3J040HA30
4H017AA04
4H017AB12
4H017AB13
4H017AB14
4H017AB17
4H017AD03
4H017AE05
(57)【要約】
【課題】圧縮してその後解放したときに、初期の寸法に対しての寸法変化が小さく、復元力に優れるガスケットを提供する
【解決手段】圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを用いたガスケット部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを用いたことを特徴とするガスケット部材。
【請求項2】
略長方形の各辺に溝を有するようなX字状断面形状を有する環状形状である請求項1記載のガスケット部材。
【請求項3】
略長方形の各辺に溝を有するような断面形状を有する環状ガスケットであって、
断面上のある一辺の長さL1に対する溝幅長さL2の比L2/L1を溝幅比Bとし、
断面上の別の一辺に対する垂直方向の長さL3に対する溝深さL4の比 L4/L3を溝深比Cとしたとき、
溝幅比Bが50%以上、且つ、溝深比Cが25%以上の溝寸法比率である略溝形状を有する請求項1又は2記載のガスケット部材。
【請求項4】
請求項1又は2のガスケット部材を有することを特徴とする二次電池。
【請求項5】
リチウムイオン電池である請求項4記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、静的封止部材として公知のものであり、主に、ゴムからなるものが一般的に知られている。ゴム素材からなり、X型形状を有するガスケットについても、多くのものが知られている。(特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1999-336908
【特許文献2】特開2007-2285
【特許文献3】特開2017-89788
【特許文献4】特開2009-287659
【特許文献5】実開平2-105665号
【特許文献6】特開昭63-174381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、圧縮してその後解放したときに、初期の寸法に対しての寸法変化が小さく、復元力に優れるガスケットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを用いたことを特徴とするガスケット部材である。
上記ガスケット部材は、略長方形の各辺に溝を有するX字状断面形状を有する環状形状であることが好ましい。
【0006】
上記ガスケット部材は、略長方形の各辺に溝を有するような断面形状を有する環状ガスケットであって、
断面上のある一辺の長さL1に対する溝幅長さL2の比L2/L1を溝幅比Bとし、
断面上の別の一辺に対する垂直方向の長さL3に対する溝深さL4の比 L4/L3を溝深比Cとしたとき、
溝幅比Bが50%以上、且つ、溝深比Cが25%以上の溝寸法比率である略溝形状を有することが好ましい。
【0007】
本開示は、上述したいずれかのガスケット部材を有することを特徴とする二次電池でもある。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガスケットは、初期の寸法に対しての寸法変化が小さく、復元力に優れるという優れた性能を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のガスケットの形状の一例を示す図である。
図2】本開示のガスケットの復元率の測定方法を示す概略図である。
図3】各樹脂素材の復元率を示す図である。
図4】25%圧縮除荷を行ったときの、圧縮歪と圧縮応力の関係について、実測値とシミュレーションの結果とを比較する図である。
図5】50%圧縮除荷を行ったときの、圧縮歪と圧縮応力の関係について、実測値とシミュレーションの結果とを比較する図である。
図6】本開示のガスケットの断面形状におけるL1~L4を示す説明するための模式図である。
図7】幅/厚み比が0.5の場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図8】幅/厚み比が1.0の場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図9】幅/厚み比が2.0の場合のシミュレーションの結果を示す図である。
図10】本開示のガスケットの断面形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示を詳細に説明する。
本開示は、圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを用いたことを特徴とするガスケット部材である。
【0011】
本開示のガスケットは、圧縮した状態でその復元力によって、部材間を隙間なく埋めることで、高い密封性を得るものである。このため、ガスケットとしての封止機能を維持するには、反発弾性が優れ、低圧縮永久歪み(高復元性)を有することが好ましい。
【0012】
従来、ガスケットの素材としては、反発弾性が優れるという観点でゴムを使用することが一般的であった。ガスケットは極めて多くの分野において、様々な異なる使用条件で使用されるものである。このため、用途によっては、ゴムを使用した場合には、必ずしも好適な性能が得られない場合もある。本発明者らの検討により、ゴムとは異なる圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを使用した場合、ゴムに比べると高強度、吸湿性が少ない、耐透過性や耐薬品性に優れるため、特に、これらの性能が求められるガスケットにおいては、ゴムにない優れたガスケットとしての性能を得ることができることが明らかになった。
【0013】
なお、本開示において、圧縮永久歪みは、ASTM D395に準拠し、小型試験片を用いて、圧縮率25%で、23℃における熱処理時間を72時間、とした条件で測定したものである。一般にゴムは上記圧縮永久歪みが40%未満となり、樹脂は上記圧縮永久歪みが40%以上となる。主なゴム及び樹脂について、以下に圧縮永久歪みの一般的な値を示す。
FKM(フッ素ゴム):16%
EPDM(エチレン・プロピレンゴム):10%
NBR(ニトリルゴム):8%
VMQ(シリコーンゴム):4%
PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂):45%
FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー):50%
PP(ポリプロピレン):80%程度
【0014】
上記圧縮永久歪みが40%以上の樹脂としては特に限定されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。より具体的には、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)等のフッ素樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート),PPS(ポリフェニレンサルファイド),PP(ポリプロピレン)等を挙げることができる。これらのなかでも、PFA,FEP,PBT,PPS、PPが特に好ましい。
【0015】
なお、本開示のガスケットは、上述した圧縮永久歪みが40%以上のポリマーに添加剤を加えた樹脂組成物からなるものであってもよい。
【0016】
高復元率については、樹脂を使用した場合のガスケットの形状も大きく関係する。本開示においては、使用する素材の種類や物理的性質ではなく、その形状と復元率との関係についても詳細なシミュレーションを行い、樹脂を使用したガスケットにおける最適な断面形状も明らかにした。
【0017】
本開示のガスケットは、環状構造を有するものであることが好ましい。すなわち、図1に示したような環状のものを意味する。このような形状はガスケットにおいて、一般的な形状であり、円形、略円形等の形状であることが好ましい。
【0018】
環状構造の大きさは用途によって相違するものであり、4~1600mmという非常に広い範囲のものが存在するが、本開示のガスケットはこれらの任意のサイズのものとすることができる。すなわち、4~60mmといった小型のものから、80~1600mmという大型のものまで任意のものとすることができる。これらのなかでも、環状の内径が6~50mmであるようなものに特に好適に使用することができる。このような内径のものは、二次電池用のガスケットとして好適に使用することができる。
【0019】
一方、圧縮した状態にある樹脂は、時間経過とともに圧縮永久歪みが大きくなり、これによって復元率が低下し、シール性能の低下を生じてしまう。したがって、高い復元率をできるだけ長く維持することで、シール性能を維持することがガスケットにおいて求められる。
【0020】
このような観点から、本開示のガスケットは、断面は、長方形の各辺上に溝を形成したようなX字断面であることが好ましい。なおここでの長方形は正方形も包含するものである。このような断面形状の例を図10に示した。
本開示のガスケットは、ガスケットとしての性能がその形状によって相違するものとなる。よって、本開示においては、好適な形状についての検討も行った。以下、上述した圧縮永久歪みが40%以上のポリマーを用いたガスケットにおける、好適な形状について、詳述する。
【0021】
上記長方形の断面の幅方向の長さ(すなわち、環状構造の上面、下面の幅)は、0.2~50mmであることが好ましい。上記長さの下限は、0.5mmであることがより好ましく、1mmであることが更に好ましい。上記長さの上限は、5mmであることがより好ましく、2mmであることが更に好ましい。
【0022】
上記長方形の断面の高さ方向の長さ(すなわち、環状構造の厚み)は、0.2~50mmであることが好ましい。上記長さの下限は、0.5mmであることがより好ましく、1mmであることが更に好ましい。上記長さの上限は、5mmであることがより好ましく、2mmであることが更に好ましい。
【0023】
上記長方形の断面形状において、幅方向の長さと高さ方向の長さの比は特に限定されるものではないが、(幅方向)/(高さ方向)=1/4~4/1の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
本開示のガスケットにおいては、溝の幅及び深さが重要であり、溝の形状については、特に限定されるものではなく図10に示したような任意の形状とすることができる。また、各辺上の溝の形状は同一であっても相違するものであってもよい。
【0025】
本発明者らは、このような溝の形状とガスケットの復元率について検討を行い、これらの関係性を明らかにした。このような検討は、各形状の場合の復元率をシミュレーションによって算出することによって行ったものである。このようなシミュレーションによる復元率に基づいて、好適な形状を判定した。以下に、このシミュレーション内容の説明を行うとともに、本開示の具体的内容を詳述する。
【0026】
(ガスケットの復元率)
復元率は、圧縮状態からの寸法の戻りやすさを表すものである。
より具体的には、図2に示したように物品の初期の寸法t、圧縮時の寸法t、圧縮して解放した後の寸法tとしたときに、
[(t-t)/(t-t)×100(%)で定義される値である。
なお、ガスケットの復元率は、ガスケットの厚み方向について測定した寸法を元にして計算する。
【0027】
断面形状が長方形であるPFA,PP,PBT,PPSに対して、圧縮率12.5%、37.5%について、実測した値を図3に示した。
(実験に使用したガスケットの寸法)
外径Φ17.7±0.05
内径Φ14.3±0.02
厚み1.6±0.025
圧縮率:12.5%/37.5%
温度:常温
保持時間: ~500hrs
(測定方法)
各樹脂材・圧縮率毎にn数13以上の復元率を測定し、その復元率を最小二乗法による時間対数曲線により近似した。
【0028】
図3から明らかなように、上記復元率は、長期使用によって徐々に低下していく値である。従って、初期段階での復元率を高めておくことで、長期使用における復元率を高いレベルで維持できる。以下の説明における復元率は初期復元率を表すものである。
【0029】
(シミュレーションと実測データとの相関性の確認)
本開示においては、商用ソルバー Ansys Mechanical R19.0を用いた構造シミュレーションを行う。このような構造シミュレーションを行うに先立って、当該構造シミュレーションによる復元率が実測値と対応したものであるかどうかについて、確認を行う。
【0030】
シミュレーションによる圧縮の試験方法は、模式図としての図2に示した。
試験片は直径10mm、高さ20mmの円柱形状で、材質は後述するPP相当の材料定数を用いる。試験片の下面(底面)側に固定した剛体平面である下治具と、試験片の上面(天面)側に圧縮方向に変位させる剛体平面を用意し、上治具の圧縮速度は1mm/minで行った。上記試験において、上治具変位d,上治具圧縮荷重Fを測定する。
圧縮応力:σ=F/A
圧縮ひずみ:ε=d/T
(ここで、F:圧縮荷重、 d: 圧縮変位 A: 試験片初期断面積、T試験片初期厚み)
として、算出を行い、圧縮応力を縦軸、圧縮ひずみを横軸としてプロットしたものを図4,5に示した。
【0031】
樹脂の弾塑性材料モデルに、等方性弾性特性として弾性率390MPa、ポアソン比0.46、背応力テンソルの重ね合わせで表現される非線形移動硬化型モデルの1種であるChabocheモデルとして、初期降伏応力σ=9.4MPa重ねられる移動硬化モデルの数nを2、C=2、γ=―2、C=170、γ=9と設定する。これら材料モデルを使用して、実在の圧縮試験と同様の条件でシミュレーションしたとき概ね実測と一致する。この結果は、シミュレーションの妥当性を表し、同時に圧縮率上げると復元率が小さくなるのを模擬できていることを示しており、実在のガスケットの復元挙動を正確に模擬することができる。
【0032】
ここで用いるChabocheモデルの材料構成則および材料定数は、下記数1,表1に示したようなものである。
【0033】
【数1】
【0034】
【表1】
【0035】
更に、断面が長方形であるガスケットについて、上記実測による圧縮試験とシミュレーションによる圧縮の解析とを行った。
実測は、以下の条件で行った。
ガスケット材質: PP
ガスケット寸法:
外径Φ17.7±0.05
内径Φ14.3±0.02
厚み1.6±0.025
圧縮率: 25%
温度: 常温
保持時間: なし(圧縮載荷および除荷を10分以内で行い、除荷後直ぐに厚みを計測)
シミュレーションは、時間経過を考慮しない条件、すなわち、静的問題として条件を設定し、他の条件については上述したものと同様の方法で行った。
結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2の結果から、ガスケットにおいても、実測値とシミュレーションは高い相関性を示した。したがって、上述したシミュレーションは妥当な方法であり、これに基づいて、復元率についての予測を行うことができることは明らかである。
【0038】
(溝を有するガスケットの復元率)
上述したように、本開示のガスケットは、長方形の各辺に溝を形成したものである。このような形状のガスケットは、復元率が高いものとなる。そして、溝の形状と復元率とは密接な関係を有するものとなる。
この点について、シミュレーションに基づいてさまざまな形状を有するガスケットについて、復元率を算出した。
以下表3の形状に基づいて、各形状について、それぞれ復元率を算出した。結果を下記表3に示す。表3より、長方形の各辺に溝を形成した形状のガスケットが、最も復元率が高いことが明らかになった。
【0039】
【表3】
【0040】
(溝形状とガスケットの復元率との関係性について)
以上を踏まえたうえで、本発明者らは、更に溝を有するガスケットにおいて、溝形状とガスケットとの関係について詳細にシミュレーションを行った。すなわち、溝が存在するほうが、復元率が好適なものであるという、上記表3の結果を踏まえて、最適な溝形状についての検討を行うものである。
【0041】
まず、本開示における、溝形状を特定するパラメータであるL1~L4について、図6に基づいて説明する。
L1は、ある特定の辺の長さである。そして、L2は、その辺上に形成された溝の幅を表す。さらに、L3は、長方形におけるL1と直角な辺の長さである。そして、L4は溝の深さを表す。
以下のシミュレーションにおいては、溝の形状は重要ではなく、溝の幅及び深さが特定の数値であることのみが重要となる。
【0042】
上記定義から明らかなように、4つの辺それぞれについて、L1~L4の値が存在する。
以下のシミュレーションにおいては、いずれの辺をL1と取った場合も、L2/L1及びL4/L3の比が4辺すべてに対して同一になるような形状として算出を行っている。
実際には、これらがすべて同一となる必要はなく、辺毎に溝の大きさが相違しており、辺毎にL2/L1及びL4/L3が相違するものであってもよい。このように、辺毎にL2/L1及びL4/L3が相違する場合、それぞれの値の4辺について、L2/L1及びL4/L3を各々の辺で算出し、これら値が所定の数値範囲内のものであればよい。
【0043】
本発明者らは、上述したシミュレーション手法に基づいて、多くの種類のL2/L1(以下これを「溝幅比」と記すことがある)、L4/L3(以下これを「溝深比」と記すことがある)に対して、復元率の予測についてのシミュレーションを行った。
【0044】
シミュレーションは、環状ガスケット断面において、幅/厚みの比が0.5の場合、1.0の場合(この場合、正方形となる)、2.0の場合それぞれについて行った。
これらの3つの形状の長方形に対して、溝深比を5%、15%、25%、35%,45%とし、更に、溝幅比を10%、30%、50%、70%、90%の場合についてそれぞれ25パターンの溝についてのシミュレーション計算を行った。さらに、溝を形成しない長方形形状のものについても、同様のシミュレーションを行い、それぞれの場合の復元率を算出した。
【0045】
このようにして算出された復元率について、溝を有さない長方形形状の復元率に対して、どれだけ復元率が上昇したかを復元率の向上率として算出した。このようにして行ったシミュレーションの結果を、幅/厚みの比が0.5の場合を図7、1.0の場合を図8、2.0の場合を図9としてそれぞれ示した。
【0046】
このような復元率の評価は、溝を有さない長方形形状と比較した場合の復元率の向上率が20%以上である場合を合格として行った。その結果、いずれの場合においても、溝幅比Bが50%以上、且つ、溝深比Cが25%以上とした場合に、復元率の向上率20%以上を達成できることが図7~9の結果より、明らかになった。図7~9の結果からみて、長方形形状における縦横比は、復元率に大きく影響を与えるものでなく、縦横比0.5~2.0のいずれの幅においても、同様の傾向を示した。
【0047】
なお、上記溝幅比Bは、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがもっとも好ましい。上記溝深比Cは、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがもっとも好ましい。
【0048】
上記溝幅比Bは、その上限を特に限定されるものではないが、90%以下とすることが好ましく、80%以下とすることが更に好ましい。
【0049】
上記溝深比Cは、その上限を特に限定されるものではないが、45%以下とすることが好ましく、40%以下とすることが更に好ましい。
【0050】
また、溝が大きい場合は、復元率が高いものとすることができるが、反面、あまりにも樹脂量が少ないガスケットとなった場合は、環状の形状を維持することが困難である場合がある。したがって、ガスケットの断面積/基準となる長方形の面積の比が96%以上であるものとすることが好ましく、94%以上とすることが更に好ましい。
【0051】
上記シミュレーションにおいて、復元率の絶対的な値自体は使用する樹脂によって変動するものであるが、復元率の向上率は、相対的な値となることから、樹脂種にかかわらず、同様の値が算出される。したがって、上述したシミュレーション自体はポリプロピレン樹脂に対して行ったものであるが、これに基づいて、その他の樹脂に対しても同様の結果を適用することができる。さらに、その他の樹脂について同様のシミュレーションを行った場合にも、同様の結果が得られる。このような点を考慮すれば、上述したシミュレーションの結果によって得られた好適なガスケット形状は、樹脂の種類を問わず、好適な形状となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示のガスケットは、二次電池、半導体製造装置、FPD製造装置、食品・化粧品・医薬品の製造設備、配管継手等において好適に使用することができる。また、電池用のガスケット部材として使用する場合は、リチウムイオン電池において特に好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10