IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特開-配管接続機構 図1
  • 特開-配管接続機構 図2
  • 特開-配管接続機構 図3
  • 特開-配管接続機構 図4
  • 特開-配管接続機構 図5
  • 特開-配管接続機構 図6
  • 特開-配管接続機構 図7
  • 特開-配管接続機構 図8
  • 特開-配管接続機構 図9
  • 特開-配管接続機構 図10
  • 特開-配管接続機構 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018355
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】配管接続機構
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/24 20060101AFI20240201BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20240201BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240201BHJP
【FI】
H01J49/24
H01J49/42 150
H01J49/00 500
G01N27/62 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121645
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良 亮佑
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041GA03
2G041GA09
(57)【要約】
【課題】第1の配管の一端を第2の配管の端部に差し込んで接続する機構において、前記第1の配管を容易に抜き差し可能とする。
【解決手段】第1配管131が挿通される第1筒部142と第1筒部の軸に直交する面である第1対向面148とを備えた第1接続部材140と、第1配管の外径よりも大きな内径を有する第2配管124の一端が挿入される第2筒部152と第2筒部の軸に直交する面である第2対向面157とを備えた第2接続部材150と、を有し、第1配管の一端が第2配管の前記一端に差し込まれた状態において第1対向面と第2対向面とが互いに対向するものであって、第1配管の外周面と第1筒部の内周面との間を封止する第1シール部材161と、第2配管の外周面と第2筒部の内周面との間を封止する第2シール部材162と、第1対向面と第2対向面との間で狭圧される第3シール部材163と、を有する配管接続機構。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管と、該第1配管の外径よりも大きな内径を有する第2配管とを接続する機構であって、
前記第1配管が挿通される第1筒部と、該第1筒部の軸に直交する面である第1対向面と、を備えた第1接続部材と、
前記第2配管の一端が挿入される第2筒部と、該第2筒部の軸に直交する面である第2対向面と、を備えた第2接続部材と、
を有し、前記第1配管の一端が前記第2配管の前記一端に差し込まれた状態において、前記第1対向面と前記第2対向面とが互いに対向するものであって、
前記第1配管の外周面と前記第1筒部の内周面との間を封止するリング状の第1シール部材と、
前記第2配管の外周面と前記第2筒部の内周面との間を封止するリング状の第2シール部材と、
前記第1対向面と前記第2対向面との間で狭圧されるリング状の第3シール部材と、
を有する配管接続機構。
【請求項2】
前記第1接続部材が、更に、
前記第1筒部の外周に設けられたフランジと、
前記第1筒部の前記一端側の領域であって、前記第2筒部の内径よりも小さな外径を有する第1配管被覆部と、
を備え、
前記第1対向面が前記フランジの一面であり、
前記第1配管被覆部が、前記第1配管の前記一端と共に前記第2配管の前記一端に差し込まれるものである、請求項1に記載の配管接続機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管接続機構を備えた構造体であって、
第1筐体と、前記第1配管とを有し、前記第1筐体から前記第1配管が突出している第1ユニットと、
第2筐体と、前記第2配管とを有し、前記第2筐体から前記第2配管が突出している第2ユニットと、
前記第2筒部が嵌め込まれる貫通孔を有し、前記第2接続部材を支持する板状部品と、
を有し、
前記第1ユニットと前記第2ユニットが前記板状部品を挟んで対向配置されている構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の構造体を備えた質量分析装置であって、
前記第2ユニットがイオンを解離させるコリジョンセルであり、
前記第1ユニットが前記コリジョンセルにラジカルを供給するラジカル供給部であり、
前記板状部品が、前記コリジョンセルを収容した真空チャンバの外壁の一部である、
質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の一端を別の配管の端部に差し込んで液密又は気密に接続する配管接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析の1つの手法として、特定の質量電荷比(厳密にはm/z)を有するイオンを解離させ、これにより生成されるプロダクトイオンの質量分析を行うMS/MS分析という手法が知られている。MS/MS分析を実施するための質量分析装置としては種々の構成のものがあるが、構造が比較的簡単で廉価なタンデム四重極型(三連四重極型とも呼ばれる)質量分析装置が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のタンデム四重極型質量分析装置は、前段四重極マスフィルタ、コリジョンセル(衝突室)、後段四重極マスフィルタ、イオン検出器、及びこれらを収容する真空チャンバと、真空チャンバの外部に配設されたラジカル供給部とを備えている。前段四重極マスフィルタは、目的化合物由来の各種イオンのうち所定のm/zを有するイオンのみを選択的に通過させ、該前段四重極マスフィルタを通過したイオンはプリカーサイオンとしてコリジョンセルに導入される。コリジョンセルに導入されたプリカーサイオンは、ラジカル供給部からコリジョンセル内に導入された水素ラジカル等のラジカルと衝突して解離され、複数のプロダクトイオンを生じる。後段四重極マスフィルタは、前記プロダクトイオンのうち所定のm/zを有するイオンのみを選択的に通過させ、該後段四重極マスフィルタを通過したイオンがイオン検出器によって検出される。
【0004】
上記のような、タンデム四重極型質量分析装置における、コリジョンセルとラジカル供給部との一般的な接続機構について、図10及び図11を参照しつつ説明する。ラジカル供給部10は、筐体11と、筐体11の内部からコリジョンセル20の内部へと供給されるラジカルが通過する配管である第1配管12とを備えている。第1配管12は、ガラス製の細管であって、筐体11の外壁を貫通しており、その一端は筐体11の外部に突出している。コリジョンセル20は、筐体21と、筐体21の周壁から突出する配管である第2配管22とを備えている。第2配管22は、第1配管12の外径よりも僅かに大きい内径を有する円筒形の金属管であって、その内部空間はコリジョンセル20の内部空間と連通している。図10に示すように、コリジョンセル20とラジカル供給部10との間には、真空チャンバの壁面30が存在しており、ラジカル供給部10の第1配管12は、真空チャンバの壁面30に設けられた貫通孔31を介してコリジョンセル20の第2配管22に挿入される。図11に示すように、第2配管22の内周面には、その軸方向に間隔を開けて複数のOリング23が配設されており、これらのOリング23によって第1配管12の外周面と第2配管22の内周面との間が封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/240908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構成を有するタンデム四重極型質量分析装置において、コリジョンセル20又はラジカル供給部10のメンテナンス作業を行う際には、第1配管12と第2配管22との接続を解除してラジカル供給部10をコリジョンセル20から取り外す必要がある。しかしながら、上記の通り、第1配管12と第2配管22との間にはOリング23による軸シール(すなわち筒体又は管体の周面間のシール)が設けられているため、第1配管12を第2配管22に対して抜き差しする際には、第1配管12の外周面とOリング23との間の摩擦によって第1配管12が破損しないように、第1配管12をその軸方向に正確に、また、注意深く動かす必要があった。そのため、第1配管12と第2配管22との接続の解除作業及び再接続作業に時間と手間が掛かるという問題があった。
【0007】
なお、上記では第1配管12がガラス製である場合を例に挙げたが、第1配管12がガラス以外の素材(例えば金属又はセラミック)から成る場合であっても、第1配管12を第2配管22に対して抜き差しする際には、第1配管12をその軸方向に正確に動かさないと第1配管12が曲がったり破損したりするおそれがある。そのため、上記同様に、第1配管12と第2配管22の接続作業及び接続解除作業に時間と手間が掛かるという問題があった。更に、こうした問題は、上記のようなタンデム四重極質量分析装置におけるラジカル供給部10の第1配管12とコリジョンセル20の第2配管22との接続に限らず、気体又は液体等の流体が流通する配管を接続するものであって、配管の一端を別の配管の端部に差し込んで液密又は気密に接続する配管接続機構において共通に存在するものである。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、配管の一端を別の配管の端部に差し込んで液密又は気密に接続する配管接続機構において、前記配管を前記別の配管に対して容易に抜き差し可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る配管接続機構は、
第1配管と、該第1配管の外径よりも大きな内径を有する第2配管とを接続する機構であって、
前記第1配管が挿通される第1筒部と、該第1筒部の軸に直交する面である第1対向面と、を備えた第1接続部材と、
前記第2配管の一端が挿入される第2筒部と、該第2筒部の軸に直交する面である第2対向面と、を備えた第2接続部材と、
を有し、前記第1配管の一端が前記第2配管の前記一端に差し込まれた状態において、前記第1対向面と前記第2対向面とが互いに対向するものであって、
前記第1配管の外周面と前記第1筒部の内周面との間を封止するリング状の第1シール部材と、
前記第2配管の外周面と前記第2筒部の内周面との間を封止するリング状の第2シール部材と、
前記第1対向面と前記第2対向面との間で狭圧されるリング状の第3シール部材と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明に係る配管接続機構によれば、第1配管を第2配管に対して容易に抜き差しすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る配管接続機構を備えたタンデム四重極型質量分析装置の要部構成を示す模式図。
図2】同実施形態におけるコリジョンセル、真空チャンバの扉、及びラジカル供給部の構成を示す分解斜視断面図。
図3】同実施形態における第1接続部材の構成を示す断面図。
図4】同実施形態における第2接続部材の構成を示す断面図。
図5】同実施形態における真空チャンバの扉の構成を示す断面図。
図6】同実施形態においてコリジョンセルをラジカル供給部に接続する前の状態を示す拡大断面図。
図7】同実施形態においてコリジョンセルをラジカル供給部に接続した状態を示す拡大断面図。
図8】本発明に係る配管接続機構の別の構成例を示す拡大断面図。
図9】本発明に係る配管接続機構の更に別の構成例を示す拡大断面図。
図10】従来のタンデム四重極型質量分析装置におけるコリジョンセル、真空チャンバの壁面、及びラジカル供給部の構成を示す斜視図。
図11】前記従来のタンデム四重極型質量分析装置における一般的な配管接続機構を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係る配管接続機構を備えたタンデム四重極型質量分析装置(以下単に「質量分析装置」とよぶ)の要部構成を示す模式図である。本実施形態に係る質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気される真空チャンバ110を有しており、真空チャンバ110の内部には、試料中の化合物をイオン化するイオン源171と、特定のm/zを有するイオンをプリカーサイオンとして選択的に通過させる前段四重極マスフィルタ172と、その内部でプリカーサイオンをラジカルと衝突させて解離させることにより各種プロダクトイオンを生成するコリジョンセル120(本発明における第2ユニットに相当)と、プロダクトイオンの中で特定のm/zを有するイオンを選択的に通過させる後段四重極マスフィルタ173と、後段四重極マスフィルタ173を通過したイオンを検出する検出器174と、が配置されている。なお、イオン源171は真空チャンバ110の外部に設けられる場合もある。
【0014】
コリジョンセル120は、比較的密閉性の高い中空の構造体であって、その内部には、イオンを収束させつつ輸送する四重極(又はそれ以上の多重極)型のイオンガイド121が配置されている。コリジョンセル120には、ラジカル(すなわち不対電子を有する原子、分子、又はイオン)を生成してコリジョンセル120に供給するためのラジカル供給部130(本発明における第1ユニットに相当)が付設されている。ラジカル供給部130は、真空チャンバ110の外部に配設され、真空チャンバ110の壁面を貫通する配管によってコリジョンセル120に接続されている。
【0015】
前記配管は、ラジカル供給部130から水素ラジカル又はヒドロキシラジカル等のラジカルを導出するためのガラス管131(本発明における第1配管に相当)と、コリジョンセル120に設けられた管状のガラス管挿入部124(本発明における第2配管に相当)とを含んでいる。以下、ラジカル供給部130及びコリジョンセル120の構成、並びにガラス管131とガラス管挿入部124との接続機構について、図2図7を参照しつつ説明する。
【0016】
図2は、ラジカル供給部130と、コリジョンセル120と、両者の間に位置する真空チャンバ110の外壁の一部、本実施形態では真空チャンバ110の扉(以下、真空チャンバ扉111とよぶ)を、ラジカル供給部130に設けられたガラス管131の中心軸Aを含む面で切断した状態を示す分解斜視図である。なお、本実施形態においては、真空チャンバ扉111が本発明における板状部品に相当する。コリジョンセル120の内部には、上述の通りイオンガイド121が配設されているが、図2では簡略化のため図示を省略している。図3は、後述する第1接続部材140の構成を示す断面図であり、図4は後述する第2接続部材150の構成を示す断面図である。図5は真空チャンバ扉111の構成を示す断面図である。図6は、ラジカル供給部130とコリジョンセル120を接続する前の状態(又は両者の接続を解除した状態)を示す拡大断面図であり、図7は、両者を接続した状態を示す拡大断面図である。
【0017】
ラジカル供給部130は、高周波プラズマを用いて所定の種類の原料ガスからラジカルを生成してコリジョンセル120に供給するものである。ラジカル供給部130は、内部にラジカル生成室(図示略)が形成された中空円筒状の筐体(以下、ラジカル供給部筐体132とよぶ)と、ラジカル生成室を排気する真空ポンプ(図示略)と、ラジカル生成室内に原料ガスを導入する原料ガス供給源(図示略)と、ラジカル生成室内で真空放電を生じさせるためのマイクロ波を供給する高周波プラズマ源(図示略)と、ラジカル生成室内で生成されたラジカルを外部に導出するガラス管131と、を備えている。ラジカル供給部筐体132は、少なくとも一端が開放された円筒状の本体部133と、本体部133の前記一端から径方向外側に延出する取付フランジ134とを備えており、本体部133の前記一端の開口部には第1接続部材140が取り付けられている。
【0018】
第1接続部材140は、ガラス管131が挿通される第1筒部142と、第1筒部142の外周に設けられた第1フランジ141とを備えている。第1筒部142は、その一端が第1フランジ141の一方の面から突出し、その他端が第1フランジ141の他方の面から突出している。第1接続部材140は、第1フランジ141を本体部133の前記一端の開口部に嵌め込むことによって本体部133に取り付けられている。すなわち、本実施形態においては第1接続部材140の第1フランジ141がラジカル供給部筐体132の一部を兼ねている。第1フランジ141は、溶接又はねじ留め等によって本体部133に接合される。以下、第1筒部142のうち、ラジカル供給部筐体132の外方に突出する領域を「先端側領域144」とよび、ラジカル供給部筐体132の内部に位置する領域を「基端側領域143」とよぶ。先端側領域144は、更に、外径が相対的に大きい第2筒部挿入部145と、外径が相対的に小さいガラス管被覆部146(本発明における第1配管被覆部に相当)とを備えている。第2筒部挿入部145は、先端側領域144の基端側(第1フランジ141に近い側)に位置しており、後述する第2筒部152の内径よりも小さく且つガラス管挿入部124の内径よりも大きい外径を有している。ガラス管被覆部146は、先端側領域144の先端側(第1フランジ141から遠い側)に位置しており、ガラス管挿入部124の内径よりも僅かに小さい外径を有している。
【0019】
ガラス管131は、その一端を所定の長さに亘ってラジカル供給部筐体132から(すなわち第1フランジ141から)突出させるようにして第1接続部材140の第1筒部142に挿通されており、その突出している領域の半分以上(望ましくは2/3以上)が第1接続部材140のガラス管被覆部146によって被覆されている。第1筒部142の基端側領域143の内周面には環状の第1溝部147が形成されている。第1溝部147には、環状の第1シール部材161が収容されており、この第1シール部材161によって、ガラス管131の外周面と第1筒部142の内周面との間がシールされている。
【0020】
コリジョンセル120は、中空円筒状の筐体(以下、コリジョンセル筐体122とよぶ)と、コリジョンセル筐体122の周面から外方に突出した円筒状のガラス管挿入部124とを備えている。コリジョンセル筐体122の周面にはガラス管挿入部124に対応する位置に貫通孔123が設けられており、ガラス管挿入部124の内部空間は貫通孔123を介してコリジョンセル筐体122の内部空間と連通している。ガラス管挿入部124は、第1接続部材140の第1筒部142の外径よりも僅かに大きい内径を有する円筒状の管体125と、管体125の一端に設けられた取付フランジ126とを備えており、取付フランジ126をコリジョンセル筐体122の周壁にねじ留め等で固定することによってコリジョンセル筐体122に取り付けられている。
【0021】
ラジカル供給部130とコリジョンセル120との間に位置する真空チャンバ扉111には、ラジカル供給部130と対向する側の面(すなわち外面)に平面視で円形の凹部112が形成され、その中央には貫通孔である配管挿通孔113が穿設されている。凹部112には、平面視で円形の第2接続部材150が嵌め込まれる。
【0022】
第2接続部材150は、円筒形の第2筒部152と、第2筒部152の長さ方向(軸方向)の中間部から外方に延出する円環状の第2フランジ151とを備えている。第2筒部152は、ガラス管挿入部124の外径よりも僅かに大きい内径を有している。第2筒部152の外径は、第2フランジ151を挟んで一方の側で相対的に大きく、他方の側で相対的に小さくなっている。以下、第2筒部152のうち、外径が相対的に大きい領域を大径部153とよび、外径が相対的に小さい領域を小径部154とよぶ。第2フランジ151の外径は、配管挿通孔113の内径よりも大きく且つ凹部112の内径よりも小さくなっており、小径部154の外径は、配管挿通孔113の内径よりも僅かに小さくなっている。
【0023】
小径部154の内周面には環状の第2溝部155が形成されており、ここに環状の第2シール部材162が収容される。大径部153の端面には環状の第3溝部156が形成されており、ここに環状の第3シール部材163が収容される。また、真空チャンバ扉111に設けられた凹部112の底面には、配管挿通孔113を囲むように環状の第4溝部114が形成されており、ここに環状の第4シール部材164が収容される。
【0024】
ガラス管131としては、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス等のホウケイ酸ガラス、又は石英ガラス等から成るものを用いることができる。第1シール部材161、第2シール部材162、第3シール部材163、及び第4シール部材164としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のエラストマーから成るOリングを好適に用いることができる。また、図2に示す構成要素のうち、ガラス管131、第1シール部材161、第2シール部材162、第3シール部材163、及び第4シール部材164以外のもの、例えば、第1接続部材140、第2接続部材150、及びガラス管挿入部124等は、典型的にはステンレス等の金属から成るものとすることができるが、その他の素材、例えばセラミックス又は硬質の樹脂等から成るものとすることもできる。
【0025】
ガラス管131は、常に、第1筒部142に挿通された状態で第1接続部材140に取り付けられており、ラジカル供給部130が組み立てられた後は、原則的に第1接続部材140に対して抜き差しされることはない。また、ガラス管挿入部124も、コリジョンセル筐体122に常時固定された状態となっている。この状態(すなわち図2に示す状態)から、コリジョンセル120及びラジカル供給部130を真空チャンバ110に組み付ける際の手順について説明する。
【0026】
まず、真空チャンバ扉111の内面(すなわち真空チャンバ110の内部を臨む面)側から、配管挿通孔113へとガラス管挿入部124の先端を差し入れると共に、真空チャンバ扉111の外面側から、第2接続部材150の第2筒部152の小径部154を配管挿通孔113に差し入れる。なお、第2溝部155、第3溝部156、及び第4溝部114には、それぞれ予め第2シール部材162、第3シール部材163、及び第4シール部材164を取り付けておく。
【0027】
以上により、第2接続部材150の小径部154が配管挿通孔113に収容され、第2フランジ151及び大径部153が真空チャンバ扉111の凹部112に収容された状態となると共に、第2接続部材150の第2筒部152内にガラス管挿入部124の先端が挿入された状態となる。これにより、第2接続部材150の第2溝部155に取り付けられた第2シール部材162によって、ガラス管挿入部124の外周面と第2接続部材150の第2筒部152の内周面との間が封止されると共に、コリジョンセル120が真空チャンバ110に固定された状態となる(図6)。
【0028】
続いて、ガラス管131の先端を真空チャンバ扉111の外面に向けた状態で、ラジカル供給部130を真空チャンバ扉111に接近させることにより、ガラス管131と第1接続部材140のガラス管被覆部146とをガラス管挿入部124に挿入する(図7)。このとき、第1接続部材140の第2筒部挿入部145が、第2接続部材150に設けられた第2筒部152の上端に嵌め込まれた状態となる。そして、ラジカル供給部筐体132の取付フランジ134に設けられたネジ穴135及び真空チャンバ扉111に設けられたネジ穴115にネジ165を螺入することにより、取付フランジ134を真空チャンバ扉111に固定する。
【0029】
以上のようにラジカル供給部130の取付フランジ134を真空チャンバ扉111に締結することにより、第1接続部材140の第1フランジ141の一方の面148(本発明における第1対向面に相当)が第2接続部材150の大径部153の端面157(本発明における第2対向面に相当)に押しつけられると共に、第2接続部材150の第2フランジ151が真空チャンバ扉111の凹部112の底面に押しつけられた状態となる。その結果、第1接続部材140の第1フランジ141と第2接続部材150の大径部153の端面157との間で第3シール部材163が狭圧されて両者の間が封止されると共に、第2接続部材150の第2フランジ151と真空チャンバ扉111の凹部112の底面との間で第4シール部材164が狭圧されて両者の間が封止される。また、上述の通り、ガラス管131の外周面と第1接続部材140の第1筒部142の内周面との間は第1シール部材161によってシールされ、ガラス管挿入部124の外周面と第2接続部材150の第2筒部152の内周面との間は第2シール部材162によってシールされている。したがって、以上のような接続機構によれば、ラジカルの漏れ出しや、真空チャンバ110の真空度悪化などを生じることなく、ラジカル供給部130を真空チャンバ110内のコリジョンセル120に接続することができる。
【0030】
なお、質量分析装置のメンテナンスを行う際などに、真空チャンバ110からラジカル供給部130及びコリジョンセル120を取り外す際には、上記とは逆の手順で作業を行う。
【0031】
上記の通り、本実施形態に係る質量分析装置では、ガラス管131をガラス管挿入部124に対して抜き差しする際に相対移動する面同士の間は、面シール(平面間のシール)である第3シール部材163によってシールされており、従来のようなガラス管131の外周面とガラス管挿入部124の内周面との間を封止する軸シール(筒又は管の周面同士の間のシール)は設けられていない。そのため、ガラス管挿入部124に対してガラス管131を抜き差しする際に、軸シールとの摩擦によってガラス管131が破損するおそれがない。また、前記のような摩擦が生じないため、抜き差しの際にガラス管131を正確にその軸方向に動かす必要がなく、ガラス管131とガラス管挿入部124との接続の解除作用及び再接続作業を容易に行えるようになる。更に、ガラス管131のうち、ガラス管挿入部124に挿入される領域の大部分が第1接続部材140のガラス管被覆部146によって保護されているため、ガラス管131を抜き差しする際などに、ガラス管131の外周面に衝撃が加わってガラス管131が破損するのを防ぐこともできる。
【0032】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。
【0033】
例えば、上記実施形態では、第3シール部材163を第2接続部材150に取り付ける構成としたが、これに代えて第3シール部材163を第1接続部材140に取り付ける構成としてもよい。その場合、第1フランジ141の、第2接続部材150と対向する側の面(図6における下側の面)に円環状の溝を設けて該溝に第3シール部材163を嵌め込むものとする。
【0034】
また、上記実施形態では、第1接続部材140にガラス管被覆部146を設ける構成としたが、ガラス管被覆部146は必ずしも設けなくてもよい。ガラス管被覆部146を設けない場合の構成例を図8に示す。なお、同図において、図2図7に示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付している。
【0035】
また、上記実施形態では、ガラス管131が本発明における第1配管に相当するものとしたが、本発明における第1配管は、必ずしもガラスから成るものでなくてもよく、その他の素材、例えば金属又はセラミックス等から成るものであってもよい。
【0036】
また、本発明に係る配管接続機構の適用対象は、上記のようなタンデム四重極型質量分析装置におけるコリジョンセル120とラジカル供給部130との接続部に限定されるものではなく、配管(第1配管)の一端を別の配管(第2配管)の端部に差し込んで液密又は気密に接続する部分であれば、いかなる構造体のいかなる接続部に適用してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、第2接続部材150を、板状の部材(具体的には真空チャンバ扉111)に設けられた凹部112に嵌め込んで支持すると共に、第1接続部材140が固定されたラジカル供給部筐体132を前記板状の部材にねじ留めすることによって、第1接続部材140と第2接続部材150の互いに対向する面の間で第3シール部材163を狭圧する構成としたが、本発明に係る配管接続機構は、必ずしも前記板状の部材を備えなくてもよい。板状の部材を設けない場合の構成例を図9に示す。なお、同図において、図2図7に示したものと対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付している。同図の例では、第1配管331が挿通される第1接続部材340、及び第2配管324が挿通される第2接続部材350が、それぞれ上述のような第1フランジ141及び第2フランジ151を備えておらず、第1筒部342の一端面(本発明における第1対向面に相当)と第2筒部352の一端面(本発明における第2対向面に相当)との間に第3シール部材363が挟持されている。また、第1接続部材340と第2接続部材350は、ねじ366等の着脱自在な固定手段によって相互に固定されている。なお、着脱自在な固定手段としては、ねじ366のほか、所定の係合手段による係合、又は所定の嵌合手段による嵌合などを用いてもよい。
【0038】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0039】
(第1項)本発明の一態様に係る配管接続機構は、第1配管と、該第1配管の外径よりも大きな内径を有する第2配管とを接続する機構であって、
前記第1配管が挿通される第1筒部と、該第1筒部の軸に直交する面である第1対向面と、を備えた第1接続部材と、
前記第2配管の一端が挿入される第2筒部と、該第2筒部の軸に直交する面である第2対向面と、を備えた第2接続部材と、
を有し、前記第1配管の一端が前記第2配管の前記一端に差し込まれた状態において、前記第1対向面と前記第2対向面とが互いに対向するものであって、
前記第1配管の外周面と前記第1筒部の内周面との間を封止するリング状の第1シール部材と、
前記第2配管の外周面と前記第2筒部の内周面との間を封止するリング状の第2シール部材と、
前記第1対向面と前記第2対向面との間で狭圧されるリング状の第3シール部材と、
を有するものである。
【0040】
第1項に係る配管接続機構によれば第1配管を第2配管に対して抜き差しする際に、第1配管の外周面に軸シールによる摩擦が加わることがない。これにより、第1配管と第2配管の接続作業及び該接続の解除作業が容易となると共に、第1配管の破損を防止することができる。
【0041】
(第2項)第2項に係る配管接続機構は、第1項に係る配管接続機構において、
前記第1接続部材が、更に、
前記第1筒部の外周に設けられたフランジと、
前記第1筒部の前記一端側の領域であって、前記第2筒部の内径よりも小さな外径を有する第1配管被覆部と、
を備え、
前記第1対向面が前記フランジの一面であり、
前記第1配管被覆部が、前記第1配管の前記一端と共に前記第2配管の前記一端に差し込まれるものである。
【0042】
第2項に係る配管接続機構によれば、第1配管のうち、第2配管に挿入される領域の少なくとも一部が第1配管被覆部によって保護されるため、第2配管に対して第1配管を抜き差しする際などに、第1配管の外周面に衝撃が加わって第1配管が破損するのを防ぐことができる。
【0043】
(第3項)第3項に係る構造体は、第1項又は第2項に記載の配管接続機構を備えた構造体であって、
第1筐体と、前記第1配管とを有し、前記第1筐体から前記第1配管が突出している第1ユニットと、
第2筐体と、前記第2配管とを有し、前記第2筐体から前記第2配管が突出している第2ユニットと、
前記第2筒部が嵌め込まれる貫通孔を有し、前記第2接続部材を支持する板状部品と、
を有し、
前記第1ユニットと前記第2ユニットが前記板状部品を挟んで対向配置されているものである。
【0044】
第3項に係る構造体によれば、前記板状部品によって支持された第2接続部材を介して、前記第1ユニット及び前記第2ユニットを相互に接続することができる。
【0045】
(第4項)第4項に係る質量分析装置は、第3項に記載の構造体を備えた質量分析装置であって、
前記第2ユニットがイオンを解離させるコリジョンセルであり、
前記第1ユニットが前記コリジョンセルにラジカルを供給するラジカル供給部であり、
前記板状部品が、前記コリジョンセルを収容した真空チャンバの外壁の一部である。
【0046】
第4項に係る質量分析装置によれば、ラジカルの漏れ出しや、真空チャンバの真空度悪化などを生じることなく、ラジカル供給部を、真空チャンバ内のコリジョンセルに接続することができると共に、装置メンテナンスの際などに、第1配管と第2配管の接続作業及び該接続の解除作業を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
110…真空チャンバ
111…真空チャンバ扉
112…凹部
113…配管挿通孔
120…コリジョンセル
122…コリジョンセル筐体
124…ガラス管挿入部
130…ラジカル供給部
131…ガラス管
132…ラジカル供給部筐体
133…本体部
134…取付フランジ
140…第1接続部材
141…第1フランジ
142…第1筒部
143…基端側領域
144…先端側領域
145…第2筒部挿入部
146…ガラス管被覆部
150…第2接続部材
151…第2フランジ
152…第2筒部
153…大径部
154…小径部
161…第1シール部材
162…第2シール部材
163…第3シール部材
164…第4シール部材
165…ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11