(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018357
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D77/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121648
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BB01A
3E067BC02A
3E067EA06
3E067EA32
3E067EB27
3E067EE60
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】蓋がシールされるフランジ部の平坦度を確保すると共に、トレーの安定性を確保することが可能な包装体を提供する。
【解決手段】トレー1の底板部4に、紙の凹凸加工部6が設けられた第1領域10と、それ以外の第2領域11を設け、底板部4を下向きにトレー1を配置した状態で、第1領域10の最下位部を第2領域11の最下位部より下方に位置させることにより、第2領域11が吸湿などの理由によって下向きに膨出しても、その膨出部と第1領域10の最下位部、或いは第1領域10の2以上の最下位部がトレー1の配置上面に当接されるので、トレー1の安定性が確保され、また底板部4と周壁部5の境界(折り目)を湾曲させる必要がないことから、蓋2がシールされるフランジ部3の平坦度も確保される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部を有して開口する紙製のトレーと、前記フランジ部とシールされて内容物を密封する蓋と、を備える包装体であって、
前記トレーは、底板部と周壁部とを有し、
前記底板部は、紙の凹凸加工部が設けられた第1領域と、それ以外の第2領域とを有し、
前記底板部を下向きに前記トレーを配置した状態で、前記第1領域の最下位部が前記第2領域の最下位部より下方に位置する、包装体。
【請求項2】
前記第2領域が平坦部であり、前記凹凸加工部は、前記底板部を下向きに前記トレーを配置した状態で下向きに突出する凸部である、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記凸部は、線状の凸条部を含む、請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記第1領域の凹凸加工部は、前記底板部を下向きに前記トレーを配置した状態で前記底板部の中央部を囲繞して下向きに突出する円環状の凸部及びその円環状の凸部の内部を上向きに窪ませた凹部を有し、前記円環状の凸部の外側に平坦な前記第2領域が配置された、請求項1に記載の包装体。
【請求項5】
前記底板部の重心を通り且つ底板部の外周の対向位置を結ぶ最長線分に対し、前記凸部が前記重心を中心として前記最長線分の35%~85%の範囲内に配置された、請求項2又は4に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体、特にフランジ部を有して開口する紙製のトレーと、前記フランジ部とシールされて内容物を密封する蓋と、を備える包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような包装体としては、例えば、下記特許文献1に記載されるものがある。この包装体では、規定の形状に切断された紙素材(ブランクシート)を折り曲げて底板部の周縁に周壁部を立設し、隣り合う周壁部同士を接着(溶着)して紙製のトレーを形成している。このトレーの周壁部には、外側に広がるフランジ部が設けられており、このフランジ部に蓋をシール(溶着)して内容物が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される包装体のトレーの底板部は文字通り平坦であるが、底板部を構成する紙が吸湿するという理由や、ブランクシートをプレスしてトレーを形成する際に、トレーの底板部周縁の角度が金型の角度以上には折り込めないなどの理由によって底板部が下向きに膨出することがあり、そのようになるとトレーを置いた際、トレーが回転するなど不安定となる。こうした不具合を防止するために、例えば底板部と周壁部の境界(折り目)を直線でなく、曲線とすることで、底板部の隅部を下方に突出させてトレーを安定させることが考えられる。しかし、そのようにすると、周壁部が湾曲してしまい、その結果、フランジ部が平坦でなくなって蓋のシール性が低下するというトレードオフが生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓋がシールされるフランジ部の平坦度を確保すると共に、トレーの安定性を確保することが可能な包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る包装体は、フランジ部を有して開口する紙製のトレーと、前記フランジ部とシールされて内容物を密封する蓋と、を備える包装体であって、前記トレーは、底板部と周壁部とを有し、前記底板部は、紙の凹凸加工部が設けられた第1領域と、それ以外の第2領域とを有し、前記底板部を下向きに前記トレーを配置した状態で、前記第1領域の最下位部が前記第2領域の最下位部より下方に位置することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装体によれば、底板部を下向きのトレーを配置した状態では、凹凸加工部が設けられた第1領域の最下位部が平坦な底板部である第2領域の最下位部よりも下方に位置していることから、この第2領域が吸湿などの理由によって下向きに膨出しても、その膨出部と第1領域の最下位部、或いは第1領域の最下位部が2以上である場合には、それら2以上の最下位部がトレーの配置上面に当接されるので、トレーの安定性が確保され、また底板部と周壁部の境界(折り目)を湾曲させる必要がないことから、蓋がシールされるフランジ部の平坦度も確保される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の包装体の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の包装体の第2実施形態を示すトレーの三面図である。
【
図8】本発明の包装体の第3実施形態を示すトレーの説明図である。
【
図9】従来の包装体のトレーの一例を示す三面図である。
【
図10】底板部の重心を通り且つ底板部の外周の対向位置を結ぶ最長線分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の包装体の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1は、包装体の第1実施形態を示す斜視図であり、この包装体は、フランジ部3を有して上方に開口する紙製のトレー1と、蓋2を備えて構成される。蓋2は、トレー1のフランジ部3にヒートシールされ、これにより図示しない内容物が包装体内に密封される。このトレー1と蓋2は、上記特許文献1に記載されるものとほぼ同様である。以下、トレー1と蓋2の概要について説明する。トレー1は、平面視で、四隅が面取りされた長方形をなしており、底板部4と、底板部4の周囲を囲う周壁部5を有している。周壁部5は、底板部4の周縁から連設されると共に所定の角度で立ち上がるように延伸されており、容器としての収容部が構成され、この収容部は上方に開口している。そして、周壁部5の上端周縁部からはトレー1の外側に広がるフランジ部3が連設されている。
【0010】
トレー1は、例えば一枚の紙素材(ブランクシート)を折り立てることによって形成される。紙素材は、台紙と、台紙に積層された熱可塑性樹脂層の二層を有し、熱可塑性樹脂層がトレー1の内側面に配置される。台紙としては、紙容器として通常使用される板紙を用いることができ、例えば、カード紙、マニラボール紙、コート紙、アイボリー紙が挙げられる。食品用一次容器として使用する場合には、古紙の混入の恐れが小さい板紙を用いることが好ましい。また、印刷適性を良好なものにするために、板紙上にコート層が設けられてもよい。
また、トレー1は例えば一枚のブランクシートを折り立てることによって形成された成型品に、熱可塑性樹脂からなる内装フィルムを貼り付けることによって形成されてもよい。これによっても同様に、熱可塑性樹脂層が内側面に配置されたトレー1が得られる。
【0011】
熱可塑性樹脂層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などを使用することができる。熱可塑性樹脂には、上記の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂も使用することができ、これらのうちの何れか、又は複数から、トレー1の用途や要求される品質などを考慮して選択することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、例えば電子レンジによる加熱などに対する耐熱性の面で優れる。トレー1の形成(構成)には、上記特許文献1に記載の手法が用いられる。
【0012】
蓋2は、例えば樹脂製のフィルムで構成される。
図1では、蓋2の形状をトレー1の平面視形状と同一としているが、トレー1の平面視形状よりも大きな相似形としてもよく、トレー1の平面視形状に関わらず、長方形であってもよい。蓋2の形成方法としては、トレー1とのヒートシール時は長尺の樹脂フィルムであってもよく、この場合、ヒートシール後に裁断することで蓋2となる。蓋2の材質としては、熱可塑性樹脂層を構成する材質と同様であってもよく、熱可塑性樹脂を構成する材質と非相溶又は部分相溶な海島構造を有してもよい。海島構造は、蓋2の表面の外形を形成する海状部と海状部内に分散した複数の島状部とから構成される。島状部を構成する樹脂の材質としては、熱可塑性樹脂層と非相溶又は部分相溶である限り、熱可塑性樹脂層と同様の材料を用いることができる。蓋2が海島構造を有する場合、海島構造を有しない樹脂基材と海島構造を有する層が積層されていてもよい。
【0013】
トレー1のフランジ部3と蓋2をヒートシールする場合には、トレー1の内側に内容物を入れ、その上から蓋2となるフィルムを被せる。ここでは、フィルムは長尺のフィルムであるとする。そして、フィルムの上からトレー1のフランジ部3に対してシールヘッドで加熱及び加圧を行い、フィルムとトレー1をヒートシールする。ヒートシールの際、トレー1のフランジ部3に係る圧力の受け台として、フランジ部3を支えられるように成形された受け台を用いてもよい。最後に、フィルムを蓋2の形状に裁断して包装体が完成する。包装体では、紙素材の時点で台紙に積層されていた熱可塑性樹脂層と蓋2が直接ヒートシールされている。
【0014】
図2は、
図1のトレー1の三面図であり、
図2aは平面図、
図2bは正面図である。なお、
図2aを含めて、以下では理解を容易にするために、底板部4の外周を平面視長方形としている。この実施形態では、トレー1の底板部4に凹凸加工部6が設けられている。この実施形態の凹凸加工部6は、紙部材を厚さ方向に加圧することにより形成され、加圧している側の紙部材の面には凹部が、反対側の面には凸部が形成される。これを紙の面に沿って連続して行うことで線状の凹条部や凸条部が形成される。これは、罫線とも呼ばれ、紙素材の折り目などに用いられている。この実施形態では、底板部4が下向きになるようにトレー1を配置した状態で、下向きに突出する4つの直線状の凸条部8(凸部7)を方形に組合せて底板部4の中央部に平面視長方形の凹凸加工部6を形成した。厚さが一様な紙部材で構成される長方形の底板部4の重心は、対角線の交点であり、底板部4の中心でもある。この重心を含む底板部4の中央部に、下向きに突出する凸条部8を平面視長方形に連続形成し、この長方形の凸条部8からなる凹凸加工部6が設けられた領域を第1領域10と規定する。この実施形態では、この長方形の凸条部8からなる凹凸加工部6の外側領域が第2領域11であり、前述したような紙の膨出がなければ、第2領域11は平坦部である。
【0015】
図3は、
図2aのA-A断面図であり、罫線で構成される凸条部8の断面形状を示す。この凸条部8は、底板部4の上面側から紙部材を厚さ方向に加圧し、その結果、底板部4の下面側に紙部材が凸状に突出して形成されている。したがって、底板部4の上面には、凹条部が形成される。この凸条部8は、紙素材の段階で形成してもよいし、前述のように紙素材を折り立てる際に、同時に形成することもできる。また、トレー1を形成した後で追加形成することも可能である。そして、この実施形態では、この凸条部8(凹凸加工部6)が設けられた第1領域10の最下位部が第2領域11の最下位部よりも下方に位置するように設定している。
図2bは、底板部4が吸湿などの理由によって下向きに膨出している状態を示している。本来、平坦である底板部4の第2領域11も、
図9の従来のトレー1に示すように、底板部4が下向きに膨出すると下向きに凸の状態となり、トレー1が机の上面などに置かれて底板部4の中央部が小さな面積で配置上面に当接すると不安定である。そこで、この実施形態では、凹凸加工部6が設けられた第1領域10の最下位部が第2領域11の最下位部よりも下方に位置するように設定することで、第1領域10と第2領域11、或いは第1領域10が2か所以上で配置上面に当接することでトレー1が安定する。
【0016】
このように、この実施形態の包装体では、第2領域11が吸湿などの理由によって下向きに膨出しても、その膨出部と第1領域10の最下位部、或いは第1領域10の2以上の最下位部がトレー1の配置上面に当接されるので、トレー1の安定性が確保され、また底板部4と周壁部5の境界(折り目)を湾曲させる必要がないことから、蓋2がシールされるフランジ部3の平坦度も確保される。
また、第2領域11が平坦部であり、凹凸加工部6が底板部4を下向きにトレー1を配置した状態で下向きに突出する凸部7であることにより、凸部7を複数個所に形成したり伸長状態に形成したりすることができ、これによりトレー1の安定性が向上し、また凸部7の加工も容易になる。
【0017】
また、凸部7が線状の凸条部8を含むことにより、凹凸加工部6を罫線によって容易に形成することができる。
図4は、第1実施形態の包装体の変形例を示すトレー1の平面図である。この例では、トレー1の底板部4の中心を挟んだ図示左右に二点鎖線で囲んだ第1領域10を形成し、それぞれの第1領域10の内部に平行な凸条部8(凸部7)を図において斜めに複数形成し、この凸条部8と凸条部8間に形成される凹条部を凹凸加工部6とした。この実施形態では、図示左右の第1領域10以外の底板部4が第2領域11となる。凸条部8は、第1実施形態の
図3に示す罫線と同じ構造である。この例のように、凹凸加工部6として凸条部8(凸部7)を形成することにより、第1実施形態と同様に、第2領域11が吸湿などの理由によって下向きに膨出しても、その膨出部と第1領域10の最下位部、或いは第1領域10の2以上の最下位部がトレー1の配置上面に当接されるので、トレー1の安定性を確保することができる。
【0018】
次に、包装体の第2実施形態について
図5を用いて説明する。
図5は、この実施形態のトレー1の三面図であり、
図5aは平面図、
図5bは正面図である。この実施形態では、平面視で小径の円形の凸部7が凹凸加工部6としてトレー1の底板部4に設けられている。この実施形態の凸部7は、紙部材を底板部4の内側から厚さ方向に加圧することにより、底板部4から下向きに突出形成されている。この実施形態では、4つの凸部7を重心(中心)から等距離の位置で対角線上に配置している。したがって、それぞれの凸部7が形成されている領域が第1領域10であり、それ以外の底板部4が第2領域11であり、前述したような紙の膨出がなければ、第2領域11は平坦部である。
図6は、
図5の凸部7の詳細図であり、
図6aは平面図、
図6bは断面図である。この凸部7は、平面視円形の外周部分が罫線で形成されており、その内側部分は、罫線による凸条部8よりも少し下方に突出している。この実施形態では、例えば
図5bに示すように、下向きに膨出する第2領域11よりも各第1領域10、すなわち4か所の凸部7の突出先端部が下方に位置しており、これら凸部7の突出先端部がトレー1の配置上面に当接することで、トレー1の安定性が確保される。
【0019】
図7は、第2実施形態の包装体の変形例を示すトレー1の平面図である。この例では、トレー1の底板部4の図示上部と下部の夫々に図の横方向に伸長する凸条部8を
図3と同様に形成すると共に、上下の凸条部8の中間部であって底板部4の左右両端部の夫々に
図5と同様の凸部7を形成した。凸条部8及び凸部7は、何れも、底板部4が下向きになるようにトレー1を配置した状態で、底板部4から下向きに突出する。この実施形態では、凸条部8と凸部7で囲まれた領域が第1領域10であり、その外側に第2領域11が配置されている。この例のように、凹凸加工部6として凸条部8と凸部7の双方を形成しても、第1実施形態と同様に、第2領域11が吸湿などの理由によって下向きに膨出した場合、その膨出部と第1領域10の最下位部、或いは第1領域10の2以上の最下位部がトレー1の配置上面に当接されるので、トレー1の安定性を確保することができる。
【0020】
次に、包装体の第3実施形態について
図8を用いて説明する。
図8aは、この実施形態のトレー1の平面図、
図8bは、
図8aのB-B断面図である。この実施形態では、底板部4の中央部を囲繞して下向きに突出する円(楕円)環状の凸条部8を連続形成すると共に、この凸条部8で囲繞された内側部分を上向きに窪ませて凹部9を形成した。この円(楕円)環状の凸条部8とその内側の凹部9は、例えば雄型と雌型で底板部4を挟んで加圧することにより形成される。したがって、この円(楕円)環状の凸条部8とその内側の凹部9からなる凹凸加工部6が第1領域10であり、その外側が第2領域11であり、前述したような紙の膨出がなければ、第2領域11は平坦部である。この第1領域10と第2領域11は、
図8bに明示するように、凸条部8が最も下向きに突出しており、そのすぐ外側部分は、凹部9に引っ張られるようにして下に凸に湾曲している。この実施形態でも、第1領域10の最下位部、すなわち凸条部8が第2領域11の最下位部より下方に位置しており、第2領域11の底板部4が下向きに膨出しても、この凸条部8の突出先端部がトレー1の配置上面に当接することで、トレー1の安定性が確保される。なお、凸条部8の円環は、必ずしも連続していなくてもよい。
【0021】
このように、この実施形態では、底板部4を下向きにトレー1を配置した状態で、底板部4の中央部を囲繞して下向きに突出する円環状の凸条部8(凸部7)及びその円環状の凸条部8の内部を上向きに窪ませた凹部9で構成される凹凸加工部6を第1領域10とし、円環状の凸条部8の外側を平坦な第2領域11とした。これにより、第2領域11の底板部4が下向きに膨出しても、この凸条部8の突出先端部がトレー1の配置上面に当接することで、トレー1の安定性が確保される。
以下、
図2の第1実施形態、
図5の第2実施形態、
図8の第3実施形態において、凸部7(凸条部8)の配置とトレー1の安定性、及びフランジ部3の平坦度について実験を行った。まず、
図2の第1実施形態の凸部7(凸条部8)について実験した。凸部7の配置については、底板部4の重心を通り且つ底板部4の外周の対向位置を結ぶ最長線分に着目する。すなわち、底板部4の差し渡し寸法に対して、凸部7がどこに配置されているかで評価する。長方形の底板部4では、その重心を通り且つ底板部4の外周の対向位置を結ぶ最長線分は対角線である。ここでは、対角線上に存在する凸部7(凸条部8)間の距離の対・対角線比が、30%、40%、80%、90%である場合のトレー1の安定性を実験した。なお、
図2から明らかなように、これらの実施形態では、何れも凸部7(凸条部8)は底板部4の重心に対して対称位置に配置されており、すなわち対角線上に存在する2つの凸部7は底板部4の重心を中心として配置されている。安定性の評価は、各試験片のトレー1を平坦なテーブルの上面に静置し、トレー1を指で軽く押したときにトレー1が安定していたものを○、回転したりガタついたが軽微だったものを△、大きく回転したりガタついたりしたものを×とした。なお、
図9の従来のトレー1に示すように、底板部4の膨出寸法は何れも0.5mmであった。
【0022】
実験の結果を下記表1に示す。対角線位置における凸部7(凸条部8)の突出寸法(高さ)は何れも0.2mmであった。また、何れもフランジ部3の平坦度は良好であった。これに対し、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が30%のものは安定性がやや低かった。これは、対角線上に存在する凸部7が近すぎたためであると考えられる。一方、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が40%、80%のものは安定性が良好であった。また、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が90%のものは不安定であった。これは、対角線上に存在する凸部7が遠すぎ、その結果、下向きの膨出している底板部4(第2領域11)がテーブルの上面に当接してしまったためであると考えられる。
【0023】
【0024】
次に、
図5の第2実施形態の凸部7について実験した。実験の結果を下記表2に示す。対角線位置における凸部7の突出寸法(高さ)は何れも0.2mmであった。また、何れもフランジ部3の平坦度は良好であった。これに対し、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が30%のものは安定性がやや低かった。これは、対角線上に存在する凸部7が近すぎたためであると考えられる。一方、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が40%、80%のものは安定性が良好であった。また、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が90%のものは不安定であった。これは、対角線上に存在する凸部7が遠すぎ、その結果、下向きの膨出している底板部4(第2領域11)がテーブルの上面に当接してしまったためであると考えられる。
【0025】
【0026】
次に、
図8の第3実施形態の凸部7について実験した。実験の結果を下記表2に示す。円(楕円)環状の凸部7(凸条部8)に対する凹部9の窪み寸法(深さ)は何れも0.5mmであった。また、何れもフランジ部3の平坦度は良好であった。これに対し、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が30%のものは安定性がやや低かった。これは、対角線上に存在する凸部7が近すぎたためであると考えられる。一方、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が40%、80%のものは安定性が良好であった。また、対角線上の凸部間距離の対・対角線比が90%のものは不安定であった。これは、対角線上に存在する凸部7が遠すぎ、その結果、下向きの膨出している底板部4(第2領域11)がテーブルの上面に当接してしまったためであると考えられる。
【0027】
【0028】
これらの結果から、
図10に示すように、対角線、すなわち底板部4の重心を通り且つ底板部4の外周の対向位置を結ぶ最長線分に対し、凸部7が底板部4の重心を中心として最長線分の35%~85%の範囲内に配置されていれば、トレー1を配置したときの安定性を確保することができる。
以上、実施形態に係る包装体について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、直線状或いは円環状の凸条部8や円形の凸部7からなる凹凸加工部6についてのみ説明したが、凸条部8や凸部7の形状は、これらに限定されない。
【0029】
また、平面視が凡そ長方形なトレー1についてのみ説明したが、トレー1の形状は如何様なものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 トレー
2 蓋
3 フランジ部
4 底板部
5 周壁部
6 凹凸加工部
7 凸部
8 凸条部
9 凹部
10 第1領域
11 第2領域