(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018376
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】協調運用計画システムおよび協調運用計画方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240201BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240201BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240201BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/38 170
H02J3/32
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121681
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AA09
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力需給先システムとの間で調整を行い電力需給先システムとの電力の授受を可能とする。
【解決手段】実施形態によれば協調運用計画システム300は、電力需給先システム20と主母線30を介して接続するプラント内母線15から電力の供給を受けて水素を製造する水素製造装置11の運転計画を立案する水素製造プラント計画装置100と、電力需給先システム20との間で電力の授受の条件の調整を行う水素製造プラント調整装置200を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需給先システムと主母線を介して接続するプラント内母線から電力の供給を受けて水素を製造する水素製造装置の運転計画を立案する水素製造プラント計画装置と、
前記電力需給先システムとの間で電力の授受の条件の調整を行う水素製造プラント調整装置と、
を備えることを特徴とする協調運用計画システム。
【請求項2】
前記電力需給先システムは、電力発電設備または電力需要設備の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の協調運用計画システム。
【請求項3】
前記プラント内母線に接続するプラント内電力供給装置をさらに備え、
前記水素製造プラント計画装置は、前記プラント内電力供給装置を含めて運転計画を立案する、
ことを特徴とする請求項1に記載の協調運用計画システム。
【請求項4】
前記プラント内電力供給装置は、再生可能エネルギー発電装置、蓄電池および水素発電装置の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の協調運用計画システム。
【請求項5】
前記水素製造プラント計画装置は、目的関数を設定し、当該水素製造プラント内の状態変数についての最適化演算により前記運転計画を立案することを特徴とする請求項1に記載の協調運用計画システム。
【請求項6】
前記水素製造プラント調整装置は、
前記電力需給先システムから提示される応諾条件を受け入れて、
前記応諾条件に基づいて前記運転計画の再検討を前記水素製造プラント計画装置に指示し、
前記再検討の結果に基づいて前記応諾条件の修正案を希望条件として前記電力需給先システムに提示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の協調運用計画システム。
【請求項7】
前記応諾条件は、前記電力需給先システムとの電力授受に関する制約条件と、前記制約条件遵守の重要度とであることを特徴とする請求項6に記載の協調運用計画システム。
【請求項8】
前記水素製造プラント計画装置は、将来の採算性または環境性を予測する予測部を備えることを特徴とする請求項1に記載の協調運用計画システム。
【請求項9】
水素製造プラントが運転計画に基づいて電力需給先システムに電力需給依頼を提示する提案ステップと、
前記電力需給依頼に対して前記電力需給先システムから提示される応諾条件を受けて、前記運転計画の変更を検討する検討ステップと、
前記検討ステップの結果に基づいて前記水素製造プラントが前記電力需給先システムに希望条件を提示するステップと、
を有することを特徴とする協調運用計画方法。
【請求項10】
前記応諾条件は、前記電力需給先システムとの電力授受に関する制約条件と、前記制約条件遵守の重要度とであることを特徴とする請求項9に記載の協調運用計画方法。
【請求項11】
前記検討ステップは、前記水素製造プラント内において、
水素製造プラント調整装置が、前記応諾条件に基づく再計画を水素製造プラント計画装置に指示する指示ステップと、
前記水素製造プラント計画装置が、前記応諾条件に基づき再計画を行う再計画ステップと、
水素製造プラント調整装置が、前記再計画の結果が前記水素製造プラントにおける判定用閾値に基づく判定条件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて判定条件を満たさないと判定された場合に、前記水素製造プラント調整装置が変更条件を設定する条件変更ステップと、
前記判定ステップにおいて判定条件を満たすと判定された場合に、前記水素製造プラント調整装置が前記変更条件を希望条件として扱い、
前記指示ステップ、前記再計画ステップ、前記判定ステップ、および前記条件変更ステップは繰り返し実施される、
ことを特徴とする請求項9に記載の協調運用計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、協調運用計画システムおよび協調運用計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たなクリーンエネルギーとして水素エネルギーが注目されつつある。電力と水を入力とし水素製造装置によって水素が生成される。生成された水素は水素貯蔵供給装置により水素輸送装置に充填され輸送される。水素輸送装置により輸送された水素は、需要地において水素供給装置により需要先に供給される。供給された水素は、たとえば、水素発電装置による電力と熱の生成に利用される。
【0003】
低コストで水素製造を行うためには、水素製造の一方の原料である電力をいかに低コストで調達するかが課題となる。この場合の方法として、再生可能エネルギー発電装置や蓄電池などの活用が考えられるが、これらの設備を水素製造側で自社所有した場合はコスト増となる。
【0004】
そのため、これらの電力設備は他社の所有、他社による運営でなされることが望ましい。将来、電力系統に連系する再生可能エネルギー発電装置や蓄電池が増加した場合、時間帯によっては、再生可能エネルギー発電装置や蓄電池からの出力電力の供給先(売電先)が見つからないという状況が起こり得ることが想定される。したがって、水素製造側と、再生可能エネルギー発電装置や蓄電池側との間で、協議・調整をした上で、電力のやり取りを行うことが考えられる。
【0005】
しかしながら、水素製造側、再生可能エネルギー発電装置側、蓄電池側は、それぞれが別事業であるため、お互いに独立した評価指標で運用を行っており、協議・調停をする際には、お互いの都合を情報交換し、お互いに譲歩をする仕組みが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6233275号公報
【特許文献2】特許第6334177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水素製造側にとっての連携対象である再生可能エネルギー発電装置側あるいは蓄電池側が、水素製造側とは異なる評価指標で運用されている場合、お互いの評価指標、目的関数がマッチせず、お互いに計画を立てるのが困難となるという問題がある。
【0008】
この点に関しては、従来は、水素製造側、再生可能エネルギー発電装置側および蓄電池側など、すべての装置を一体化して取扱い、全体を1つの目的関数に基づいて計画を導く例が知られている。
【0009】
すなわち、運用する際の目的関数が異なる複数の事業者の間で、他の事業者が運用する装置を利用または利用し合う場合、1つの方法として、アグリゲータのような上位装置に調停を任せることが考えられる。
【0010】
しかしながら、この方法は、以下のような問題がある。
【0011】
第1に、下位側となる装置運用者にとって上位装置はブラックボックスであり、結果に対する下位側となる装置運用者の納得感を得られない場合がある。
【0012】
第2に、下位側の装置が多数になった場合、上位装置が情報集約と全体最適を行うのに、通信時間や計算時間が多くかかることが予想され、結果が出るまでの時間が問題となる
【0013】
第3に、上位装置では、全ての要求を考慮すると膨大な規模となるため、ある特定種類の要求(例えば需給調整市場への調整力提供)だけを考慮し、下位装置でのそれ以外の利用(例えば蓄電池への充放電)については考慮されない可能性がある。あるいは、上位装置にこのような機能が備わっていないために考慮できない場合もある。
【0014】
また、仮に上位装置に調停依頼をすることになるとしても、それ以前に、ある程度の調停を事業者間で済ませておくことが望ましい場合もあると考えられる。
【0015】
以上のような状況を鑑みると、水素製造事業をする事業者にとって、異なる目的関数を持つシステムとの間でも調整可能な技術を有することが望まれる。
【0016】
本発明の目的は、電力需給先システムとの間で調整を行い電力需給先システムとの電力の授受を可能とする協調運用計画システムおよび協調運用計画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る協調運用計画システムは、電力需給先システムと主母線を介して接続するプラント内母線から電力の供給を受けて水素を製造する水素製造装置および前記水素を貯蔵し供給する水素貯蔵供給装置の運転計画を立案する水素製造プラント計画装置と、前記電力需給先システムとの間で電力の授受の条件の調整を行う水素製造プラント調整装置と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る協調運用計画システムを含む水素製造プラントおよびこれに関連する電力需給先システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る協調運用計画システムにおける水素製造プラント計画装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る協調運用計画システムにおける水素製造プラント計画装置の演算モデルの変数を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る協調運用計画システムにおける水素製造プラント調整装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示すフロー図である。
【
図6】第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第1のケースのフロー図である。
【
図7】第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第2のケースのフロー図である。
【
図8】第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第3のケースのフロー図である。
【
図9】第2の実施形態に係る協調運用計画システムにおける水素製造プラント調整装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態に係る協調運用計画システムにおける水素製造プラント調整装置の予測部の作用を説明するグラフである。
【
図11】第3の実施形態に係る協調運用計画システムおよびこれに関連する複数の電力需給先システムとの情報授受を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る協調運用計画システムおよび協調運用計画方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る協調運用計画システム300を含む水素製造プラント10およびこれに関連する電力需給先システム20の構成を示すブロック図である。
【0021】
水素製造プラント10と電力需給先システム20とは、主母線30を介して電気的に接続されており、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間の電力の授受が可能に構成されている。ここで、主母線30は、たとえば事業用の電力系統である。なお、主母線30は、産業用施設の母線であってもよいし、自営線でもよい。
【0022】
水素製造プラント10は、水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、プラント側受変電設備13、プラント内電力供給装置14、プラント内母線15、制御装置16、協調運用計画システム300を備える。ここで、協調運用計画システム300は、水素製造プラント計画装置100、および水素製造プラント調整装置200を具備する。
【0023】
プラント内母線15は、プラント側受変電設備13を介して主母線30に接続され、主母線30との間で電力を授受する。
【0024】
水素製造装置11は、電力を用いて燃料物質としての水素を製造する要素である。水素製造装置11は、プラント内母線15からの電力を利用して水素を製造する。水素製造装置11は、供給を受けた単位時間平均電力や製造した単位時間水素量などの情報を制御装置16に提供するが、さらに水素製造プラント計画装置100に提供することでもよい。また、水素製造装置11は、水素製造プラント計画装置100が作成した計画に基づいて水素を製造する。
【0025】
ここで、燃料物質は水素に限定されない。例えば、アンモニア、メタン、メタノール、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット燃料(SAF)、軽油、重油、エタノール、エチレン、LPG、一酸化炭素などでも構わない。アンモニアは、水素製造後や水素貯蔵後や水素輸送後に水素をアンモニアに変換したものでも良いし、水素製造装置の代わりに電力から直接アンモニアを製造する装置を用いて製造したアンモニアでもよい。以下では、水素を例にとって説明する。
【0026】
水素貯蔵供給装置12は、貯蔵タンク12aを有し、水素を貯蔵し気体水素から液体水素あるいは気体水素から圧縮水素への変換や供給をする要素である。水素貯蔵供給装置12は、水素製造装置11が製造した水素を貯蔵するとともに、水素輸送装置(図示しない)を介して水素を水素需要家(図示しない)に供給する。水素貯蔵供給装置12は、貯蔵水素量や水素輸送装置への供給量などの情報を制御装置16に提供するが、さらに水素製造プラント計画装置100に提供することでもよい。水素貯蔵供給装置12は、例えば、水素製造プラント計画装置100が作成した水素貯蔵供給計画に基づいて水素を貯蔵し水素需要家に水素を供給する。
【0027】
なお、図示しないが、水素製造装置11および水素貯蔵供給装置12のそれぞれの補機が必要とする電力も、プラント内母線15から供給される。
【0028】
図1において破線で囲んだプラント内電力供給装置14は、例えば風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー発電装置、あるいは蓄電池、あるいは燃料電池や水素ガスタービンといった水素発電装置である。プラント内電力供給装置14は、主母線30に接続され、主母線30との間で、電力を授受する。プラント内電力供給装置14は、電力の授受の情報を制御装置16に提供するが、さらに水素製造プラント計画装置100に提供することでもよい。なお、水素製造プラント10は、必ずしもプラント内電力供給装置14を備えていない場合であってもよい。
【0029】
制御装置16は、水素製造プラント10内の各装置すなわち水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14の各状態量に関する情報を受け入れて、水素製造装置11、およびプラント内電力供給装置14に制御信号を出力する。なお、必要に応じて、水素貯蔵供給装置12にも制御信号を出力してもよい。また、制御装置16は、水素製造プラント計画装置100に必要な情報を出力するとともに、水素製造プラント計画装置100により計画され実行すると決まった計画に基づいて、水素製造プラント10内の各装置を制御する。
【0030】
協調運用計画システム300の水素製造プラント計画装置100は、水素製造プラント10内の各装置すなわち水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14の各状態量に関する情報を、直接にあるいは間接的に制御装置16を通じて受け入れて、たとえば、コストを目的関数として、水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14の各状態量の最適化演算を行い、水素製造プラント10の計画を作成する。水素製造プラント計画装置100の詳細については、後に
図2を引用しながら説明する。
【0031】
協調運用計画システム300の水素製造プラント調整装置200は、電力需給先システム20との間で電力の授受の条件の調整を行う。水素製造プラント調整装置200の詳細については、後に
図4を引用しながら説明する。
【0032】
なお、水素製造プラント10を有するあるいはプラント内電力供給装置14をさらに有する事業者を、以下では、水素製造事業者と呼ぶものとする。
【0033】
次に、電力需給先システム20について説明する。電力需給先システム20は、水素製造プラント10にとっては、主母線30を介してそれから電力の供給を受ける電力の供給元であり、場合によっては、水素製造プラント10からそこへ電力を供給する相手、すなわち電力の供給先ともなる相手である。電力の供給を受け、あるいは、これに加えて電力を供給することを、以下では、電力の需給と総称することとする。
【0034】
電力需給先システム20は、電力需給装置21、受変電設備22、これらの装置の制御を行う制御装置23、および電力需給先システム20の計画を作成する計画装置24を備える。
【0035】
電力需給装置21は、受変電設備22を介して主母線30に接続されている。電力需給装置21は、以下に例示するが、水素製造プラント10からみて電力需給を担う装置の総称である。
【0036】
電力需給装置21の第1の例は発電装置である。発電装置としては、事業用、産業用の火力、原子力、揚水、あるいは各種の再生可能エネルギー発電装置である。
【0037】
電力需給装置21の第2の例は蓄電池である。蓄電池の放電により水素製造プラント10が電力の供給を受ける場合すなわち電力需給先システム20が電力供給源と位置付けられる場合と、水素製造プラント10内のプラント内電力供給装置14が電力需給先システム20の蓄電池の充電のために電力を供給する場合すなわち水素製造プラント10にとって電力供給先と位置付けられる場合とがある。なお、電力需給装置21が、蓄電池ではなく揚水発電装置の場合であってもよい。
【0038】
電力需給装置21の第3の例は水素製造設備である。すなわち、電力需給先システム20が水素製造設備を有し、この水素製造設備は主母線30から専ら電力の供給を受ける装置である場合である。主母線30を有する事業者側と電力需給先システム20との契約の中で、電力需給先システム20自らが受けることになっている電力供給の一部を他の事業者に融通してもよいという条件が含まれている場合が考えられる。このような場合は、水素製造プラント10にとって、電力需給先システム20は、電力供給源として位置づけられる。さらには、水素製造プラント10からみて、電力需給先システム20のこの水素製造設備に水素製造プラント10から電力を供給する電力供給先となる場合も考えられる。
【0039】
また、電力需給装置21は、以上の例に限定されず、水素製造プラント10からみて電力需給の対象となる装置であれば、これらの例の組み合わせ、あるいは他の形態でもよい。
【0040】
なお、電力需給先システム20を有する事業者は、PPA(Power Purchase Agreement)を含む電力供給事業者、産業用の発電装置を有する事業者、さらには、国あるいは地方公共団体においてこのような事業を担う部門であってもよい。あるいは、国あるいは地方公共団体の委託を受けた事業者であってもよい。以下では、これらを総称して、電力需給先事業者と呼ぶものとする。
【0041】
電力需給先システム20の計画を作成する計画装置24については、電力需給先システム20の通常の運用のみを定める場合、周囲の状況を予測して電力需給先システム20の運用計画を設定する場合、あるいは、周囲の状況さらには将来を予測して、電力需給先システム20を構成する装置の状態を、目的に応じて最適化する場合などが考えられる。このように、電力需給先システム20が独自にその運用計画あるいは運転計画(以下、運転計画)を策定しているのが一般的であり、これらを行う装置を総称して、計画装置24と呼ぶものとする。
【0042】
いずれにしても、計画装置24によって、電力需給先システム20の運転計画における制約条件およびその重要度が明確に定められると考えられる。ここで、重要度とは、制約条件を絶対的に守るべきものなのか、あるいは、できるだけ守るべきものなのか、あるいは、遵守することが好ましいという程度なのか等の、制約条件を遵守すべき度合を意味するものとする。また、電力需給先事業者として、電力を他の事業者に融通するにあたって、さらなる条件を決めていることも考えられる。以下では、制約条件、重要度、およびさらなる条件を条件情報と総称する。
【0043】
図2は、第1の実施形態に係る協調運用計画システム300における水素製造プラント計画装置100の構成を示すブロック図である。
【0044】
協調運用計画システム300の水素製造プラント計画装置100は、入力部110、記憶部120、演算部130、および出力部140を有する。水素製造プラント計画装置100は、たとえば、計算機システムである。あるは、個別の装置により構成されていてもよい。
【0045】
入力部110は、水素製造プラント10内の各装置すなわち水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14のそれぞれの状態に係る情報を、それぞれの装置から直接に、および/あるいは制御装置16を経由して受け入れる。また、入力部110は、演算部130での最適化演算のための制約条件、目的関数などの制約条件等に関する情報、および、最適化演算の演算式における定数など演算用データに関する情報を、外部入力として受け入れる。さらに、入力部110は、水素製造プラント調整装置200からの制約条件あるいは目的関数の変更等を含む情報および指令を受け入れる。
【0046】
記憶部120は、制約条件等記憶部121、演算用データ記憶部122、実績値記憶部123、計画値記憶部124、および演算結果記憶部125を有する。
【0047】
制約条件等記憶部121は、入力部110が受け入れた最適化演算のための制約条件、目的関数などの制約条件等に関する情報を記憶する。
【0048】
演算用データ記憶部122は、入力部110が受け入れた演算式における定数など演算用データを記憶する。
【0049】
実績値記憶部123は、水素製造プラント10内の各装置すなわち水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14のそれぞれの状態に係る情報を、実績値として記憶する。なお、実績値として記憶されたデータは、バッチ的に別の記憶装置(図示しない)に移されもよい。
【0050】
計画値記憶部124は、当該水素製造プラント計画装置100による計画を記憶する。
【0051】
演算結果記憶部125は、演算部130による演算結果を、随時、記憶する。
【0052】
演算部130は、数理モデル作成部131および数理最適化演算部132を有する。演算部130は、入力部110が受け入れた水素製造プラント調整装置200からの情報および指令に基づいての演算も実施する。
【0053】
数理モデル作成部131は、最適化演算のための制約条件、目的関数に関する制約条件、水素製造プラント10内の各装置すなわち水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12、およびプラント内電力供給装置14のそれぞれの状態を示す状態変数を用いて、水素製造プラント10を数理式で模擬する。状態変数の例としては、次のようなものがある。
【0054】
蓄電池の場合は、例えば、SOC(State of Charge)、SOP(State of Power)、SOH(State of Health)、劣化、稼働台数などがある。水素システムの場合は、例えば、水電解装置の状態、タンク内の水素残量、水電解装置の劣化、燃料電池の劣化などがある。太陽光発電所や風力発電所などの再生可能エネルギー発電所の場合は、発電可能電力上限、稼働台数などがある。また、配電線に直列に接続された受変電設備の場合はオンオフ、受変電設備内の配線の場合は電流値などがある。
【0055】
数理最適化演算部132は、数理モデル作成部131により定式化された結果に基づいて、数理最適化演算を実施する。最適化の方法としては、混合整数計画法や非線形計画法、メタヒューリスティックな方法(遺伝的アルゴリズムなど)、学習(サポートベクタマシン、ロジスティク回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、ナイーブベイズ、主成分分析、k近傍法、GAN(Generative Adversarial Networks)などを用いて求めてもよい。その一例について、後に
図3を引用しながら説明する。
【0056】
出力部140は、演算部130による演算結果を、制御装置16および水素製造プラント調整装置200に出力するとともに、主要な情報を表示する。
【0057】
入力部110および出力部140は、たとえば、対話型のインターフェイスを有してもよい。
【0058】
なお、水素製造プラント計画装置100による運転計画作成は、複数の運転計画を生成し、複数の運転計画を候補として提示し、人間がどれにするかを決定しても良い。
【0059】
図3は、第1の実施形態に係る協調運用計画システム300における水素製造プラント計画装置100の演算モデルの状態変数を示すブロック図である。水素製造プラント10は、水素製造装置11、水素貯蔵供給装置12およびプラント内電力供給装置14としての再生可能エネルギー発電装置を有し、また、電力需給先システム20は電力需給装置21として蓄電池を有する場合を例にとって示している。以下、水素製造プラント計画装置100による混合整数計画法を用いた運転計画作成の例を説明する。
【0060】
(状態変数)
以下に、最適化の対象とする状態変数を示す。
XEC(t):時刻tでの水素製造に利用する30分平均電力〔kW〕
XAUX(t):時刻tでの補機で利用する30分平均電力〔kW〕
XPV(t):時刻tでの再生エネルギー発電のPCSから出力される30分平均電力〔kW〕
XBAT_DCG(t):時刻tでの蓄電池から放電する30分平均電力〔kW〕
XBAT_CHG(t):時刻tでの蓄電池に充電される30分平均電力〔kW〕
XGR_SELL(t):時刻tでの電力系統へ売電(逆潮流)する30分平均電力〔kW〕
XGR_PCHS(t):時刻tでの電力系統から買電する30分平均電力〔kW〕
Cost :評価値[円]
【0061】
(定数名)
以下に、定数を示す。
CGR_PCHS(t):時刻tでの電力系統から買電する従量電気代単価〔円/kWh〕
CGR_SELL(t):時刻tでの電力系統へ売電する従量電気代単価〔円/kWh〕
【0062】
(制約条件)
制約条件の中で、特に、電力需給先システム20から示された条件情報に基づいて水素製造プラント調整装置200から提示された制約条件を定式化した制約式(1)および制約式(2)の例を示す。ここで、制約条件としては、時刻0時00分から5時59分まで(1日を48コマ(コマの開始時点t=0~47)に分割した場合の0から11に相当)は、電力需給装置21としての畜電池の利用を禁止されている場合を例にとって示している。
XBAT_DCG(t)=0,t=0,…,11 …(1)
XBAT_CHG(t)=0,t=0,…,11 …(2)
【0063】
(目的関数)
たとえば、次の式(3)のように、主母線側から電力を購入することによるコストと、主母線側に電力を売却することによる収入との差を目的関数Costとしてもよい。
【0064】
【0065】
ここで、主母線から購入する電力は、以下の式(4)に示すように各要素の和である。
XGR_PCHS(t)=XBAT_CHG(t)-XBAT_DCG(t)+XEC(t)+XAUX(t)-XPV(t) …(4)
【0066】
あるいは、目的関数Costとして、次の式(5)のように、利用不可の条件のもとに蓄電池を利用(充電および放電)した電力に、例えば制約条件の重要度を加味した金額への換算係数としてのペナルティ係数を乗じてこれをペナルティとして扱う、具体的には、目的関数Costに利用した分を費用に換算した値を加えてもよい。
【0067】
【数2】
…(5)
ここで、C
BAT_PENA(t)は、時刻tでの蓄電池利用のペナルティ〔円/kWh〕であり、利用禁止期間内では大きな値となっている。
【0068】
(最適化)
目的関数Costに対して、数理最適化を行い、例えば、最小のCostを求める。これにより求められた状態変数が解となる。
【0069】
図4は、第1の実施形態に係る協調運用計画システム300における水素製造プラント調整装置200の構成を示すブロック図である。
【0070】
水素製造プラント調整装置200は、前述の様に、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間での電力の授受の条件の調整を行う。
【0071】
このために、水素製造プラント調整装置200は、入力部210、記憶部220、演算部230、および出力部240を有する。水素製造プラント調整装置200は、たとえば、計算機システムである。あるは、個別の装置により構成されていてもよい。水素製造プラント計画装置100および水素製造プラント調整装置200がそれぞれ計算機システムである場合は、両者は共通の計算機システムの一部であってもよい。また、水素製造プラント計画装置100の入力部110および出力部140、ならびに水素製造プラント調整装置200の入力部210および出力部240の一部を、共通のたとえばマンマシーンインターフェイスを用いて実現してもよい。
【0072】
図1に示すように、水素製造プラント調整装置200は、電力需給先システム20との情報の授受を行う。なお、
図1では、水素製造プラント調整装置200が情報の授受を行う電力需給先システム20の要素を計画装置24としているが、これに限定されず電力需給先システム20の他の要素であってもよい。以下では、水素製造プラント調整装置200が情報の授受を行う相手が計画装置24の場合を例にとって説明する。
【0073】
入力部210は、水素製造プラント計画装置100からの情報、電力需給先システム20の計画装置24からの条件情報を含めた情報、および、その他の外部入力を受け入れる。
【0074】
ここで、水素製造プラント計画装置100からの情報は、水素製造プラント計画装置100の記憶部120に収納された情報の一部、たとえば、制約条件等記憶部121、計画値記憶部124および演算結果記憶部125に収納された情報を含む。
【0075】
電力需給先システム20の計画装置24からの条件情報は、電力需給先システム20の電力需給装置21の利用に関する条件情報、すなわち制約条件に関する情報、重要度に関する情報およびさらなる情報を含む。ここで、重要度とは、前述の様に、電力需給装置21の利用に関する制約条件の重要度であり、言い換えれば、制約条件を遵守すべき程度(制約条件の遵守度)である。すなわち、前述の式(4)に示したように、制約条件を破った場合のペナルティの程度、支払い代金に置き換えてもよい。
【0076】
その他の外部入力としては、演算部230での成否判定を行う際の判定用閾値、調整終結判定を行う際の終結判定値、計画条件を変更する際の演算に必要なパラメータの値などを含む。
【0077】
記憶部220は、判定用値記憶部221、条件情報記憶部222、計画装置演算結果記憶部223、希望条件記憶部224、および調整履歴記憶部225を有する。
【0078】
判定用値記憶部221は、入力部210で受け入れた判定用閾値および終結判定値を記憶する。
【0079】
条件情報記憶部222は、入力部210で受け入れた電力需給装置21の利用に関して電力需給先システム20から提示された条件情報を記憶する。
【0080】
計画装置演算結果記憶部223は、水素製造プラント計画装置100での演算結果を記憶する。
【0081】
希望条件記憶部224は、計画条件変更部232で導出した変更後の計画条件を記憶する。
【0082】
調整履歴記憶部225は、水素製造プラント調整装置200が行ってきた水素製造プラント10と電力需給先システム20との間の電力授受に関する調整の経緯を、記憶する。
【0083】
演算部230は、成否判定部231、計画条件変更部232、および調整終結判定部233を有する。演算部230は、以下のような構成であるが、具体的には、たとえば、機械学習等により演算能力を備えた装置である。さらには、記憶部220に記憶されている閾値等についても、機械学習の結果で変更していくことでもよい。
【0084】
成否判定部231は、水素製造プラント計画装置100での演算結果を、判定用値記憶部221に記憶されている判定用閾値と比較して、水素製造プラント計画装置100での演算結果の成否を判定する。
【0085】
計画条件変更部232は、電力需給先システム20から提示され条件情報記憶部222に記憶された電力需給装置21の利用に関する制約条件に関する情報および重要度に関する情報に基づいて、水素製造プラント計画装置100で演算するための条件をどのように変更するかを決定する。この際、電力需給装置21の利用に関する制約条件に関する情報および重要度をそのまま用いる選択、制約条件を緩和するすなわち複数の制約条件の一部を除去する選択あるいは制約条件における閾値等の判定基準値を緩和する側に変更する選択、重要度を緩和する、具体的には目的関数のペナルティ係数を変更(緩和)する選択等が考えられる。
【0086】
計画条件変更部232による条件情報の変更の選択については、たとえば、機械学習に基づく計画条件変更部232による選択結果を人間系が確認し判断してもよい。あるいは、事前に、たとえば上記の選択肢に優先順位をつけておき、計画条件変更部232がその優先順位に基づいて、条件情報の変更を行うことでもよい。
【0087】
調整終結判定部233は、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間の電力授受に関する調整を終結するか否かを判定する。判定根拠としては、調整のやりとりの回数が上限値に達した場合、目的関数最小とする場合に、調整ステップごとの目的関数の低下の程度が最低値以下である場合、などが考えられる。なお、これら以外の根拠であってもよい。
【0088】
出力部240は、出力先として、水素製造プラント10の水素製造プラント計画装置100、電力需給先システム20の計画装置24,および装置の監視・操作者がある。
【0089】
出力部240が水素製造プラント計画装置100に出力する情報としては、希望条件記憶部224に収納されている希望条件がある。
【0090】
出力部240が、電力需給先システム20の計画装置24に出力する情報としては,計画条件変更部232が導出した変更条件がある。
【0091】
出力部240が、装置の監視・操作者に出力、表示する情報としては、記憶部220に収納されている情報を随時呼び出し、また、演算部230の演算結果のうち指定された項目が随時表示される。
【0092】
入力部210および出力部240は、対話型のインターフェイスを有していてもよい。
【0093】
図5は、第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示すフロー図である。
図5に示すフロー図は、水素製造プラント10側の協調運用計画システム300における水素製造プラント計画装置100および水素製造プラント調整装置200の実施内容と、電力需給先システム20側の実施内容とを、これらの相互間のやり取りのタイミングと対応させて表現したものである。
【0094】
まず、最初の状態として、水素製造プラント10側の協調運用計画システム300における水素製造プラント計画装置100において、水素製造プラント10の運転計画が策定されている(ステップS11)。
【0095】
同様に、電力需給先システム20の計画装置24においても、電力需給先システム20の運転計画が策定されている(ステップS21)。この際、電力需給先システム20の運転計画を最適化しようとする場合の目的関数は、水素製造プラント10側の目的関数と一致していてもよいが、通常は、両者は異なっているものと考えられる。
【0096】
このような状況の中で、協調運用計画システム300における水素製造プラント調整装置200は、電力需給先システム20に対して、電力需給を依頼示する(ステップS12)。
【0097】
この水素製造プラント調整装置200による電力需給依頼に対して、電力需給先システム20から、応諾条件に関する情報が提示される(ステップS22)。すなわち、この条件を満たすなら、電力需給に応じてもよいとの応諾条件が電力需給先システム20から提示される。これは、電力需給先システム20において策定されていた運転計画の内容そのものである場合もあるし、水素製造プラント調整装置200による電力需給依頼の内容を考慮したものである場合もある。
【0098】
電力需給先システム20から提示された応諾条件に関する情報に基づいて、水素製造プラント10側は、計画条件の変更、運転計画の修正を行う(ステップS13)。ステップS13の詳細は次の通りである。
【0099】
まず、水素製造プラント調整装置200の計画条件変更部232は、電力需給先システム20から提示された応諾条件に関する情報を変更計画条件として、水素製造プラント計画装置100に運転計画の作成を指示する(ステップS13a)。
【0100】
水素製造プラント計画装置100は、水素製造プラント調整装置200から提示された変更計画条件に基づいて、運転計画を作成し、その結果を水素製造プラント調整装置200に出力する(ステップS13b)。
【0101】
水素製造プラント調整装置200の成否判定部231は、水素製造プラント計画装置100が作成した修正された運転計画および目標関数の算出値等の演算結果に基づいて、その運転計画が、評価基準を満たすか否か、成否を判定する(ステップS13c)。
【0102】
ステップ13cにおいて、水素製造プラント計画装置100が作成した修正された運転計画が、評価基準を満たさないと判定された場合(ステップS13c NO)、水素製造プラント調整装置200の計画条件変更部232は、計画条件の変更を行い、この結果を変更計画条件として、水素製造プラント計画装置100に運転計画の作成を指示する(ステップS13d)。
【0103】
以降、ステップS13cで、運転計画が、評価基準を満たすと判定されるまで、ステップS13d、ステップS13b、ステップS13cを繰り返す。
【0104】
一方、ステップS13cで、運転計画が、評価基準を満たすと判定された場合(ステップS13c YES)には、水素製造プラント調整装置200は、この時使用した条件を希望条件として、電力需給先システム20に提示する(ステップS14)。
【0105】
電力需給先システム20からは、水素製造プラント調整装置200が提示した希望条件に対して、応諾条件が提示される(ステップS23)。
【0106】
水素製造プラント調整装置200の成否判定部231は、電力需給先システム20から提示された応諾条件が許容できるか否か、すなわち、調整が成立しているか否かを判定する(ステップS15)。
【0107】
ステップS15において、水素製造プラント調整装置200の成否判定部231が、調整が成立していると判定した場合(ステップS15 YES)には、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間での電力需給に関する契約手続きとなる(ステップS31)。なお、ここでの「契約」とは、期間を含めて、当該調整の対象として調整を行った結果、合意され成立した範囲に関しての契約を意味する。
【0108】
ステップS15において、水素製造プラント調整装置200の成否判定部231が、調整が成立していると判定しなかった場合(ステップS15 NO)には、水素製造プラント調整装置200の調整終結判定部233が、調整を継続するか否かを判定する(ステップS16)。
【0109】
ステップS16において、水素製造プラント調整装置200の調整終結判定部233が、調整を継続すると判定しなかった場合(ステップS16 NO)には、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間での電力需給に関する調整は打ち切りとなる(ステップS32)。
【0110】
なお、
図5のフロー図に明示していないが、計画条件の変更・運転計画の修正ステップS13においても、成否判定部231が、計画条件の変更・運転計画の修正を繰り返しても見通しがないと判定した場合は、ステップS32の調整打ち切りとしてもよい。
【0111】
ステップS16において、水素製造プラント調整装置200の調整終結判定部233が、調整を継続すると判定した場合(ステップS16 YES)には、計画条件の変更・運転計画の修正ステップS13に戻り、ステップS13内のステップを実行する。
【0112】
図6は、第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第1のケースのフロー図である。このフロー図は、
図5におけるステップ13の詳細の図示を省略したものであり、
図7に示す第2のフロー図および
図8に示す第3のフロー図との比較を容易とするために示している。
【0113】
図7は、第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第2のケースのフロー図である。本第2のケースは、第1のケースの変形であり、水素製造プラント調整装置200が、電力需給先システム20に対して、電力需給依頼とともに電力需給先システム20の状態情報の提示を依頼する点が異なる。
【0114】
図7では、電力需給先システム20が、状態情報の提示依頼に応じて、電力需給先システム20の状態情報が提示された場合を示している。水素製造プラント調整装置200が電力需給先システム20の状態情報を取得することによって、更なる調整、交渉の可能性が生ずる。
【0115】
たとえば、電力需給先システム20が有する蓄電池の充電状態(SOC)が低下していることが分かった場合、希望情報として、充電用電力の供給の申し出とともに安価な価格の条件を提示しても、電力需給先システム20が止む無く安価な充電を受入れる可能性がある。この場合、水素製造プラント10の利益につながる。逆に、電力需給先システム20が有する蓄電池のSOCが満充電に近いことが分かった場合、希望情報として、電力の供給依頼とともに安価な価格の条件を提示しても、電力需給先システム20が止む無く安価な放電を受入れる可能性がある。この場合も、水素製造プラント10の利益につながる。
【0116】
図8は、第1の実施形態に係る協調運用計画方法の手順を示す第3のケースのフロー図である。本第3のケースは、第1のケースの変形であり、電力需給先システム20側から、水素製造プラント10側に対して、電力需給に関する提案がある場合である。
【0117】
この場合も、電力需給先システム20側からの提案以降は、水素製造プラント調整装置200は、第1の実施形態と同様の流れで、調整を行うことができる。
【0118】
以上のように、電力需給先システム20が異なる目的関数のもとに事業を行っている場合であっても、水素製造プラント調整装置200自身で、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間の電力の授受についての調整が可能となる。
【0119】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る協調運用計画システム300における水素製造プラント調整装置200aの構成を示すブロック図である。
【0120】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、水素製造プラント調整装置200aの演算部230aは、予測部234をさらに有する。
【0121】
本実施形態においては、入力部210aは、さらに、長期的に採算性を評価、予測するための採算性情報を受け入れる。
【0122】
記憶部220aは採算性情報記憶部226をさらに有する。採算性情報記憶部226をこの採算性情報を収納、記憶する。採算性情報は、将来の採算性を評価する上で必要な情報であり、たとえば、当該水素製造プラント10の事業者そのものの経営データ、水素市場および電力市場に関する情報、環境情報、各国の開発情報、為替等の情報、外交関係の情報などのいずれか、あるいは全体を含むものである。また、採算性情報は、電力需給先システム20に関するものを含めた情報であってもよい。
【0123】
演算部230aは、予測部234をさらに有する。予測部234は、採算性情報記憶部226に収納された採算性情報を用いて、将来の採算性を予測する。さらには、環境性の予測を行ってもよい。また、長期予測の途中情報を、短期情報として提供する。予測部234は、予測方法として、自己回帰モデル、指数平滑法、移動平均法、自己回帰移動平均モデル、最小二乗法、機械学習などを用いてもよい。
【0124】
図10は、第2の実施形態に係る協調運用計画システム300における水素製造プラント調整装置200aの予測部234の作用を説明するグラフである。
【0125】
図10に示す例では、短期的な予測の結果では時点T1においては、採算性はマイナスである。また、長期的な予測では、時点T2では採算性がプラスに転じるという結果である。ここで、採算性は、水素製造プラント10についての目的関数がコストさらに重要度が付加されている場合での目的関数の値の算出結果のみではなく、電力需給先システム20に関する評価結果、あるいは、その両者を含めた場合であってもよい。
【0126】
このような場合、成否判定部231は、採算性は短期的には成立しなくとも、長期的に目的関数が閾値を満足すれば、成立と判定する場合があってもよい。この場合は、たとえば、長期的な評価結果に基づいて、人間系が判定に関与してもよい。
【0127】
電力需給先システム20が発電所を有する場合、予測部234がその発電所の発電コストを予測した場合、その予測値を使って、安価な価格を提示することで、他事業者が止む無く安価な発電を受け入れられそうな場合は、そのように希望情報と重要度を提示することができる。
【0128】
さらには、電力需給先システム20が蓄電池を有する場合、その蓄電池の充放電コストを予測して、その予測値を使って、安価な価格を提示することで、他事業者が止む無く安価な充放電を受け入れられそうな場合は、そのように希望情報と重要度を提示することができる。
【0129】
以上のように、長期的な予測を実施することにより、水素製造プラント10と電力需給先システム20との調整範囲をさらに拡大することができる。電力需給先システム20
【0130】
[第3の実施形態]
図11は、第3の実施形態に係る協調運用計画システム300およびこれに関連する複数の電力需給先システム20との情報授受を示すブロック図である。
【0131】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、水素製造プラント10と調整すべき電力需給先システム20が複数、すなわち
図11の例では、電力需給先システム20a、20b、20cと調整する場合の形態である。
【0132】
図11では、電力需給先システム20a、20b、20cのそれぞれの電力需給装置21が、それぞれ、蓄電池21a、再生エネルギー発電装置21b、および水素製造装置21cである場合を例にとって示している。
【0133】
この場合、水素製造プラント10の水素製造プラント調整装置200は、電力需給先システム20a、20b、20cと個別に調整することになる。すなわち、電力需給先システム20a、20b、20cのそれぞれが互いに他の情報を得ることがないようにする必要がある。
【0134】
このため、授受情報は、水素製造プラント10と電力需給先システム20a、水素製造プラント10と電力需給先システム20b、および水素製造プラント10と電力需給先システム20cと、それぞれ個別にやりとりされるスター型の構成となる。ここで、情報授受とは、第1の実施形態において、水素製造プラント10と電力需給先システム20との間で授受される情報である。
【0135】
それぞれの情報のやり取りにより、第1の実施形態の内容で調整が可能である。
【0136】
このように、複数の調整先があっても、個別に調整をすることができる。
【0137】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0138】
10…水素製造プラント、11…水素製造装置、12…水素貯蔵供給装置、12a…貯蔵タンク、13…プラント側受変電設備、14…プラント内電力供給装置、15…プラント内母線、16…制御装置、20、20a、20b、20c…電力需給先システム、21…電力需給装置、21a…蓄電池、21b…再生エネルギー発電装置、21c…水素製造装置、22、22a、22b、22c…受変電設備、23、23a、23b、23c…制御装置、24、24a、24b、24c…計画装置、30…主母線、100…水素製造プラント計画装置、110…入力部、120…記憶部、121…制約条件記憶部、122…演算用データ記憶部、123…実績値記憶部、124…計画値記憶部、125…演算結果記憶部、130…演算部、131…数理モデル作成部、132…数理最適化演算部、140…出力部、200…水素製造プラント調整装置、210…入力部、220…記憶部、221…判定用閾値記憶部、222…条件情報記憶部、223…計画装置演算結果記憶部、224…希望条件記憶部、225…調整履歴記憶部、230…演算部、231…成否判定部、232…計画条件変更部、233…調整終結判定部、240…出力部、300…協調運用計画システム