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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018380
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水硬性材料用組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240201BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20240201BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20240201BHJP
   C04B 41/62 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/12 A
C04B24/32 A
C04B41/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121691
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大郎
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰
【テーマコード(参考)】
4G028
4G112
【Fターム(参考)】
4G028CA02
4G028CD06
4G112PB20
4G112PB36
4G112PC01
4G112PC14
(57)【要約】
【課題】収縮低減効果を備えた上で、コンクリート表層部に緻密な構造を形成し、コンクリートの保護効果を高めて耐久性能の向上を図ることができる水硬性材料用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物と、(B)イソチアゾリン系化合物とを含む、水硬性材料用組成物。
O-(AO)-H (1)
(式(1)中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1乃至11の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物と、
(B)イソチアゾリン系化合物とを含む、
水硬性材料用組成物。
O-(AO)-H (1)
(式(1)中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1乃至11の整数を表す。)
【請求項2】
前記(B)イソチアゾリン系化合物が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物である、請求項1に記載の水硬性材料用組成物。
【化1】
(式(2)中、
は、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
【化2】
(式(3)中、
は、水素原子、または置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基または芳香族基を表す。mは0~4の整数を示す。)
【請求項3】
前記(A)成分と(B)成分の質量比が90:10~99.99:0.01である
請求項1に記載の水硬性材料用組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の水硬性材料用組成物からなるコンクリート養生剤。
【請求項5】
請求項4に記載のコンクリート養生剤を、セメント系硬化体表面に施工することを特徴とする、セメントモルタル又はコンクリートの養生方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の水硬性材料用組成物を含む、セメント系硬化体。
【請求項7】
請求項4に記載のコンクリート養生剤が表面から表層に含浸されてなる、セメント系硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモルタルやコンクリート等の水硬性材料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化コンクリートは水とセメントとの反応よりなる水硬性組成物であり、その硬化過程において水分の蒸発または水和に伴う水分の損失が生じ、コンクリート収縮の発生につながる。硬化コンクリートの収縮は部材内でのひずみを生じ、やがては部材面でのひび割れにつながり、漏水等によるコンクリート構造物の劣化を促進し、ひいては構造的欠陥に繋がるおそれがある。
【0003】
このような硬化過程におけるコンクリート収縮等への対策として、収縮低減剤の使用が提案されている。例えば、特許文献1には、炭素原子数1ないし4の低級アルコールのアルキレンオキシド付加物をセメント用収縮低減剤として使用することが記載されている。また、特許文献2には、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物の、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合比率を最適化することで、より収縮低減効果に優れた収縮低減剤が得られることが記載されている。さらに、特許文献3には収縮低減剤のセメントスラリー中での分散状態を改善し、起泡性を低減することで硬化体の強度低下を防止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭56-51148号公報
【特許文献2】特開2001-163653号公報
【特許文献3】特開2003-171155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで提案されたセメント用収縮低減剤は、セメント硬化体の収縮低減や、硬化体の強度の低下を抑制することを主目的とするものであるが、コンクリート表層部に緻密な構造を形成する養生効果は十分でなく、耐久性が低下する問題があった。
【0006】
本発明は収縮低減効果を備えた上で、コンクリート表層部に緻密な構造を形成し、コンクリートの保護効果を高めて耐久性能の向上を図ることができるコンクリート養生剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題について検討し研究を進めた結果、特定構造の収縮低減剤と、イソチアゾリン系化合物を組み合わせて水硬性材料用組成物とし、これをセメント系硬化体に適用することにより、該硬化体の表面透気係数を小さくすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、以下の[1]~[7]を対象とする。
[1]
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも一種の化合物と、
(B)イソチアゾリン系化合物とを含む、
水硬性材料組成物。
O-(AO)-H (1)
(式(1)中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1乃至11の整数を表す。)
[2]
前記(B)イソチアゾリン系化合物が、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される化合物である、[1]に記載の水硬性材料用組成物。
【化1】
(式(2)中、
は、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
【化2】
(式(3)中、
は、水素原子、または置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基または芳香族基を表す。mは0~4の整数を示す。)
[3]
前記(A)成分と(B)成分の質量比が90:10~99.99:0.01である、
[1]に記載の水硬性材料用組成物。
[4]
[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載の水硬性材料用組成物からなるコンクリート養生剤。
[5]
[4]に記載のコンクリート養生剤を、セメント系硬化体表面に施工することを特徴とする、セメントモルタル又はコンクリートの養生方法。
[6]
[1]乃至[3]のうちいずれか一項に記載の水硬性材料用組成物を含む、セメント系硬化体。
[7]
[4]に記載のコンクリート養生剤が表面から表層に含浸されてなる、セメント系硬化体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水硬性材料用組成物は、これを適用したセメント系硬化体において、圧縮強度を高め、乾燥収縮を低減し、また表面透気係数が低減された硬化体を提供することができる。
また本発明によれば、これを適用したセメント系硬化体の表層部の緻密化構造の形成が
促進され、表面透気係数の低減が期待でき、表層からのガスやイオン等の侵入によるコンクリート劣化防止に寄与できる硬化体を提供できる。
【0010】
またセメント系硬化体は、通常、部材の厚みや鉄筋までの「かぶり」の距離を取って耐久性を担保するが、硬化体の表層に緻密層を形成することで、薄い部材のコンクリートでも十分な強度向上が見込まれる。すなわち、本発明の水硬性材料用組成物の適用によって硬化体表層部の緻密化構造の形成が促進されることで、施工ボリュームの減少、環境負荷低減につながることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物とイソチアゾリン系化合物を含有する水硬性材料用組成物に関し、またこれを適用したセメント系硬化体及び養生方法に関する。
本発明者らは低級アルコールのアルキレンオキシド付加物とイソチアゾリン系化合物を組み合せた水硬性材料用組成物として配合することにより、該水硬性材料用組成物を適用したセメント系硬化体において、驚くべきことに表面透気係数が小さくなるという効果に寄与できること、すなわち表層緻密化剤としての機能を有し得ることを見出した。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0012】
[水硬性材料用組成物]
<(A)一般式(1)で表される化合物>
本発明に係る水硬性材料用組成物を構成する(A)成分は下記一般式(1)で表される化合物(低級アルコールのアルキレンオキシド付加物)である。
本発明において、(A)成分は収縮低減剤としての機能を有するとともに、後述する(B)成分との分離性を改善し、両者の相溶性さらには一液性を強化する働きをも担い得る。
【0013】
O-(AO)-H (1)
(式(1)中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1乃至11の整数を表す。)
【0014】
前記一般式(1)において、Rは炭素数が1~8のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。これらのうち、成分(B)との相溶性の観点から炭素原子数1乃至4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基が好ましい。
【0015】
また、前記一般式(1)において、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を示し、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。
nはオキシアルキレン基AOの付加モル数であって、1~11の整数を表す。nが2以上の場合、オキシアルキレン基は同一のものであっても異なるものであってもよい。
(AO)nが2種以上のアルキレンオキシ基から構成される場合は、ブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよい。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノプ
ロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0017】
<(B)イソチアゾリン系化合物>
本発明に係る水硬性材料用組成物を構成する(B)成分はイソチアゾリン系化合物である。
上記イソチアゾリン系化合物は、好ましくは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
(式(2)中、
は、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
【化4】
(式(3)中、
は、水素原子、または置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、
は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基または芳香族基を表す。mは0~4の整数を示す。)
【0018】
前記一般式(2)において、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を表す。また前記一般式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または置換されていてもよい炭化水素基を表す。
前記一般式(3)において、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。また前記一般式(3)において、mは置換基Rの数であって0~4の整数を表し、Rは、複数存在する場合にはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族基または芳香族基を表す。
【0019】
前記炭化水素基としては、例えば炭素原子数1~30のアルキル基;フェニル基、アルキルフェニル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、及びナフチル基等のベンゼン環を有する炭素原子数6~18の芳香族基;並びにオレイル基、リノレイル基等の炭素原子数2乃至18のアルケニル基が挙げられ、中でも炭素原子数1~30のアルキル基を好ましい炭化水素基として挙げることができる。
また前記脂肪族基としては炭素原子数1~30のアルキル基を、前記芳香族基としては炭素原子数6~18の芳香族基を、夫々挙げることができる。
炭素原子数1~30のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロ
ピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、1-ヘプチルデシル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素原子数1~8のアルキル基が好ましい。
炭素原子数6~18の芳香族基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また該炭化水素基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0020】
上記一般式(2)又は一般式(3)で表されるイソチアゾリン系化合物の具体例としては、ただしこれら例示に限定されないが、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられ、これらの中でも、pH依存性の観点からクロロ原子未含有の化合物であることが好ましく、例えば2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(下記構造式参照)が好ましい。
【化5】
【0021】
本発明に係る水硬性材料用組成物において、(A)一般式(1)で表される化合物と(B)イソチアゾリン系化合物の配合割合は、質量比でA:B=90~10:99.99~0.01の範囲内にて使用することが可能であり、より好ましくは99:1~99.95:0.05の範囲である。
【0022】
本発明で使用する水硬性材料用組成物において、前記(A)一般式(1)で表される化合物と(B)イソチアゾリン系化合物に加え、水硬性材料用組成物に一般に使用されるその他の成分を含んでいてもよい。
他に含まれ得るその他の成分としては、汎用的に使用される防水剤、撥水剤、消泡剤、粘度安定剤、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤、防錆剤、皮張り防止剤などが挙げられる。
【0023】
[セメント系硬化体 及び セメントモルタル又はコンクリートの養生方法]
本発明においてセメント系硬化体とは、セメント類に細骨材及び水を混合したセメントモルタル或いは更に粗骨材を配合したコンクリートの硬化体であり、各種混和材料から選ばれる1種又は2種以上を更に配合したものでもよい。
上記セメント類としては、水硬性を有するものであればよく、例えば、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、エコセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメント、アルミナセメント、太平洋セメント(株)製「スーパージェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント(株)製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント等が挙げられ、これらから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。また、前記セメント類とは別に、セメント類に添加できる混和材として、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、炭酸カルシウ
ム微粉末、膨張剤、石膏類等を含めることができる。
【0024】
本発明の水硬性材料用組成物は、コンクリート養生剤として使用することができる。すなわち、前記水硬性材料用組成物からなるコンクリート養生剤も本発明の対象であり、該コンクリート養生剤には、水硬性材料用組成物に配合可能なその他成分も同様に配合し得る。
該水硬性材料用組成物(すなわちコンクリート養生剤)を、硬化あるいは半硬化したセメント系硬化体(セメントモルタル又はコンクリートの硬化体)の表面に施工することにより、該水硬性材料用組成物(コンクリート養生剤)が硬化体表面から表層に含浸され、表層に緻密化構造が形成された本発明のセメント系硬化体を得ることができる。具体的にはセメント系硬化体の仕上げ時の仕上げ補助として、または、セメント系硬化体の硬化脱型後、硬化体に前述の水硬性材料用組成物(コンクリート養生剤)を施工する。
該水硬性材料用組成物(コンクリート養生剤)の施工方法は、セメント系硬化体の表面に施工できる方法であれば特に限定されるものではなく、散布、塗布、吹付け、噴霧等で行うことが可能であり、ローラ、刷毛又はブラシ等による塗布、噴霧器等による噴霧等のように、セメント系硬化体の表面に均一に施工できるものが好ましい。
【0025】
本発明に係る水硬性材料用組成物をコンクリート養生剤としてコンクリート硬化体に対して適用する際、その使用量は特に限定されるものではないが、例えば硬化体表面1mあたり50~300gとなる範囲にて使用し得、好ましい態様において100~200g/mとなる範囲にて使用することができる。50g/mより少ないと、仕上げ時のスムーズなコテ均し及び水分の逸散防止効果が得られにくくなる虞があり、300g/mを超えると過剰な量で付着強度の低下が懸念される。また、対象となるセメント系硬化体としてはモルタルおよびコンクリートのいずれも含まれる。
【0026】
また、本発明の水硬性材料用組成物は、モルタルまたはコンクリートに混和して使用することもできる。混和して使用する場合、添加量としては、モルタルまたはコンクリート中のセメント100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0028】
[水硬性材料用組成物]
以下の実施例及び比較例で使用した水硬性材料用組成物I~VI((A)一般式(1)で表される化合物と(B)イソチアゾリン系化合物との組み合わせ)は以下のとおりである。
【表1】
【0029】
[試験用フレッシュコンクリートの製造]
フレッシュコンクリートの目標値は、スランプ:15±2.5cm、空気量:4.5±1.5%とした。試験用コンクリートの配合を表2に示す。
20℃、80%RHの恒温室内において、公称容量55Lのパン型ミキサを用い、まずセメントと細骨材および粗骨材をミキサへ投入し30秒練り、その後練り混ぜ水、減水剤、空気量調整剤を投入して120秒間練り混ぜ、その後排出し、以降の試験[(1)~(3)]に供した。
【表2】
【0030】
[水硬性材料用組成物を用いたコンクリート評価試験]
前記の手順にて作製したフレッシュコンクリートを、各試験に用いる寸法の型枠に打設し、注水後24時間で脱型し、試験体表面に表2に示すように各水硬性材料用組成物(I~VI)を均一に塗布(150g/m)した。塗布後、所定材齢まで、温度20℃、湿度60%の環境下で気中養生を行った。
【0031】
(1)圧縮強度試験
圧縮強度は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠し、圧縮強度試験用の試験体(φ10cm×20cm)を用い、材齢28日まで20℃、60%RH環境下で養生を行い、得られた各試験体の圧縮強度を測定した。
【0032】
(2)乾燥収縮試験
乾燥収縮試験は、JIS A 1129-2「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法-第2部:コンタクトゲージ方法」に準じて実施した。
乾燥収縮試験用の試験体は、寸法を30cm×30cm×6cm(平板試験体)とし、打設後24時間で脱型し、打設面(打設上面)のみに各水硬性材料用組成物を塗布し、その他の面(5面)をアルミテープにて被覆した。
試験は、試験面を打設上面として、水硬性材料用組成物を塗布後にゲージプラグを貼り付け、その長さ及び試験体の質量を測定(基準値)し、20℃、60%RH環境下で養生し、材齢182日で再び長さ及び質量を測定し、これらの長さ変化・質量減少率を求めた。
【0033】
(3)表面透気係数
表面透気係数kT値は、トレント法にて測定した。試験は、10cm×10cm×40cmの試験体を用いて、20℃、60%RH環境下で養生し、材齢28日で測定した。
【0034】
得られた結果を表3に示す。
【表3】
【0035】
表3に示すように、無塗布(比較例1)に比べ、水硬性材料用組成物II~VIの適用により、試験体の圧縮強度が向上し、また長さ変化及び質量減少率(乾燥収縮)が小さくなり、さらに表面透気係数が小さくなる結果(実施例1~5)が得られ、本発明の水硬性材料用組成物の適用によって高い養生効果が得られることが確認された。なお、(B)イソチアゾリン系化合物を配合していない水硬性材料用組成物Iを塗布した試験体(比較例2)では、無塗布(比較例1)に比べると圧縮強度・乾燥収縮・表面透気係数に改善がみられたが、水硬性材料用組成物II~VI(実施例1~5)と比べて表面透気係数の低減に大きく劣る結果となった。
【0036】
以上、(A)一般式(1)で表される特定の化合物と(B)イソチアゾリン系化合物とを組み合わせた本発明の水硬性材料用組成物により、圧縮強度を高め、乾燥収縮を低減し
、また表面透気係数が低減された硬化体を提供することができることが確認された。