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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018381
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240201BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240201BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240201BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F27/255
H01F37/00 D
H01F37/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121694
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕平
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA12
5E070CB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラス層とフェライト層との密着性に優れたコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1Aは、第1ガラス層15aと、その一方側に隣接した第1フェライト層16aと、他方側に隣接した第2フェライト層16bを有する素体10Aと、第1ガラス層内部のコイルと素体の表面上の外部電極を備え、第1フェライト層で,第1ガラス層側の主面の位置を第1位置E1、第1位置から10μm離れた位置を第2位置E2、第1ガラス層と反対側の主面の位置を第3位置E3、第3位置から10μm離れた位置を第4位置E4、第1位置と第2位置間の領域を第1内側領域F1、第3位置と第4位置間の領域を第1外側領域G1、第2位置と第4位置間の領域を第1中間領域H1としたとき、第1内側領域における空孔の面積率は、第1中間領域におけるそれよりも大きく、第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、第1中間領域におけるそれよりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス層と、前記第1ガラス層の一方主面側に隣接した第1フェライト層と、前記第1ガラス層の他方主面側に隣接した第2フェライト層と、を積層方向に有する素体と、
前記第1ガラス層の内部に設けられたコイルと、
前記素体の表面上に設けられ、かつ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記第1フェライト層において、前記第1ガラス層側の主面の位置を第1位置、前記第1位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第2位置、前記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第3位置、前記第3位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第4位置、前記第1位置と前記第2位置との間の領域を第1内側領域、前記第3位置と前記第4位置との間の領域を第1外側領域、前記第2位置と前記第4位置との間の領域を第1中間領域としたとき、
前記第1内側領域における空孔の面積率は、前記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
前記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、前記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1内側領域における空孔の面積率を1としたとき、前記第1中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、前記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2フェライト層において、前記第1ガラス層側の主面の位置を第5位置、前記第5位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第6位置、前記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第7位置、前記第7位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第8位置、前記第5位置と前記第6位置との間の領域を第2内側領域、前記第7位置と前記第8位置との間の領域を第2外側領域、前記第6位置と前記第8位置との間の領域を第2中間領域としたとき、
前記第2内側領域における空孔の面積率は、前記第2中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
前記第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、前記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2内側領域における空孔の面積率を1としたとき、前記第2中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、前記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記素体は、前記第1フェライト層に対して前記第1ガラス層と反対側に隣接した第2ガラス層と、前記第2フェライト層に対して前記第1ガラス層と反対側に隣接した第3ガラス層と、を更に有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1外側領域における空孔の面積率は、前記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
前記第1外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、前記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1外側領域における空孔の面積率を1としたとき、前記第1中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、前記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、請求項9に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第2フェライト層において、前記第1ガラス層側の主面の位置を第5位置、前記第5位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第6位置、前記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第7位置、前記第7位置から前記積層方向に10μm離れた位置を第8位置、前記第5位置と前記第6位置との間の領域を第2内側領域、前記第7位置と前記第8位置との間の領域を第2外側領域、前記第6位置と前記第8位置との間の領域を第2中間領域としたとき、
前記第2外側領域における空孔の面積率は、前記第2中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
前記第2外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、前記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第2外側領域における空孔の面積率を1としたとき、前記第2中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、請求項12に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第2外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、前記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、請求項12に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記第2ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記第3ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項17】
前記コイルとして、第1コイルと、前記第1コイルと絶縁された第2コイルとが設けられたコモンモードチョークコイルである、請求項1~16のいずれかに記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部導体が埋設された第1の誘電体ガラス層の両主面に一対の磁性体層が形成されると共に、該一対の磁性体層の各々主面に一対の第2の誘電体ガラス層が形成された積層コイル部品において、上記一対の第2の誘電体ガラス層のうちの少なくとも一方の第2の誘電体ガラス層は、厚みが10~64μmであることを特徴とする積層コイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-102507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載の積層コイル部品では、誘電体ガラス層(ガラス層とも言う)と磁性体層(フェライト層とも言う)との密着性が不充分になるおそれがあることが判明した。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ガラス層とフェライト層との密着性に優れたコイル部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル部品は、第1ガラス層と、上記第1ガラス層の一方主面側に隣接した第1フェライト層と、上記第1ガラス層の他方主面側に隣接した第2フェライト層と、を積層方向に有する素体と、上記第1ガラス層の内部に設けられたコイルと、上記素体の表面上に設けられ、かつ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、上記第1フェライト層において、上記第1ガラス層側の主面の位置を第1位置、上記第1位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第2位置、上記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第3位置、上記第3位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第4位置、上記第1位置と上記第2位置との間の領域を第1内側領域、上記第3位置と上記第4位置との間の領域を第1外側領域、上記第2位置と上記第4位置との間の領域を第1中間領域としたとき、上記第1内側領域における空孔の面積率は、上記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、上記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラス層とフェライト層との密着性に優れたコイル部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態1のコイル部品の一例を示す斜視模式図である。
図2図2は、図1に示すコイル部品の線分A1-A2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
図3図3は、図1に示すコイル部品の線分B1-B2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
図4図4は、図1に示すコイル部品の線分C1-C2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
図5図5は、図1に示すコイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す斜視模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態2のコイル部品の一例を示す斜視模式図である。
図7図7は、図6に示すコイル部品の線分A3-A4に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のコイル部品について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。
【0011】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明のコイル部品」と言う。
【0012】
以下の各実施形態では、本発明のコイル部品の一例として、コモンモードチョークコイルを示す。本発明のコイル部品は、コモンモードチョークコイル以外のコイル部品にも適用可能である。
【0013】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0014】
本明細書中、要素間の関係性を示す用語(例えば、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、文字通りの厳密な態様のみを意味するだけではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度の差異を含む範囲も意味する。
【0015】
本発明のコイル部品は、第1ガラス層と、上記第1ガラス層の一方主面側に隣接した第1フェライト層と、上記第1ガラス層の他方主面側に隣接した第2フェライト層と、を積層方向に有する素体と、上記第1ガラス層の内部に設けられたコイルと、上記素体の表面上に設けられ、かつ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、上記第1フェライト層において、上記第1ガラス層側の主面の位置を第1位置、上記第1位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第2位置、上記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第3位置、上記第3位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第4位置、上記第1位置と上記第2位置との間の領域を第1内側領域、上記第3位置と上記第4位置との間の領域を第1外側領域、上記第2位置と上記第4位置との間の領域を第1中間領域としたとき、上記第1内側領域における空孔の面積率は、上記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、上記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0016】
[実施形態1]
本発明の実施形態1のコイル部品において、素体は、第1ガラス層と、第1ガラス層の一方主面側に隣接した第1フェライト層と、第1ガラス層の他方主面側に隣接した第2フェライト層と、を積層方向に有する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態1のコイル部品の一例を示す斜視模式図である。
【0018】
図1に示すコイル部品1Aは、素体10Aと、第1外部電極21と、第2外部電極22と、第3外部電極23と、第4外部電極24と、を有している。図1に示していないが、後述するように、コイル部品1Aは、素体10Aの内部に設けられた第1コイル及び第2コイルも有している。
【0019】
コイル部品1Aは、回路用ノイズフィルタの一種であるコモンモードチョークコイルとも呼ばれる。
【0020】
本明細書中、長さ方向、高さ方向、及び、幅方向を、図1等に示すように、各々、L、T、及び、Wで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと高さ方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0021】
素体10Aは、長さ方向Lに相対する第1端面11a及び第2端面11bと、高さ方向Tに相対する第1主面12a及び第2主面12bと、幅方向Wに相対する第1側面13a及び第2側面13bと、を有しており、例えば、直方体状又は略直方体状である。
【0022】
素体10Aの第1端面11a及び第2端面11bは、長さ方向Lに厳密に直交している必要はない。また、素体10Aの第1主面12a及び第2主面12bは、高さ方向Tに厳密に直交している必要はない。更に、素体10Aの第1側面13a及び第2側面13bは、幅方向Wに厳密に直交している必要はない。
【0023】
コイル部品1Aを基板に実装する場合、素体10Aの第1主面12aが実装面となる。
【0024】
素体10Aは、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。素体10Aの角部は、素体10Aの3面が交わる部分である。素体10Aの稜線部は、素体10Aの2面が交わる部分である。
【0025】
素体10Aは、第1ガラス層15aと、第1フェライト層16aと、第2フェライト層16bと、を積層方向に有している。素体10Aにおいて、第1ガラス層15a等の積層方向は、高さ方向Tに平行である。つまり、素体10Aにおいて、第1ガラス層15a等の積層方向は、実装面となる素体10Aの第1主面12aに直交している。
【0026】
積層方向(ここでは、高さ方向T)において、第1フェライト層16aは第1ガラス層15aの一方主面側に隣接し、第2フェライト層16bは第1ガラス層15aの他方主面側に隣接している。つまり、素体10Aでは、積層方向(ここでは、高さ方向T)において、第1ガラス層15aが、第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bに挟まれている。
【0027】
本明細書では、積層方向(ここでは、高さ方向)を鉛直方向として、素体の第1主面を下側、素体の第2主面を上側として示しているが、これらの方向に限定されるものではなく、コイル部品を設置する状態によって適宜変更される。例えば、素体10Aは、第1フェライト層16aが鉛直方向の下側に位置し、かつ、第2フェライト層16bが鉛直方向の上側に位置する態様であってもよいし、第1フェライト層16aが鉛直方向の上側に位置し、かつ、第2フェライト層16bが鉛直方向の下側に位置する態様であってもよい。
【0028】
図1に示していないが、後述するように、第1ガラス層15aの内部には、第1コイル及び第2コイルが設けられている。
【0029】
第1ガラス層15aは、例えば、後述するような、複数の絶縁層が積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる複層構造を有している。
【0030】
第1ガラス層15aは、ガラスセラミック材料(誘電体ガラス材料とも呼ばれる)で構成される。
【0031】
第1ガラス層15aは、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。つまり、第1ガラス層15aを構成するガラスセラミック材料は、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。
【0032】
第1ガラス層15aに含まれるガラス材料は、全量を100重量%としたとき、KをKO換算で0.5重量%以上、5重量%以下、BをB換算で10重量%以上、25重量%以下、SiをSiO換算で70重量%以上、85重量%以下、AlをAl換算で0重量%以上、5重量%以下含有することが好ましい。
【0033】
第1ガラス層15aは、石英(SiO)及びアルミナ(Al)の少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。つまり、第1ガラス層15aを構成するガラスセラミック材料は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。第1ガラス層15aを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英を含むことにより、コイル部品1Aの高周波特性が向上しやすくなる。また、第1ガラス層15aを構成するガラスセラミック材料がフィラーとしてアルミナを含むことにより、素体10Aの機械的強度が向上しやすくなる。
【0034】
第1ガラス層15aを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英及びアルミナを含む場合、ガラスセラミック材料は、全量を100重量%としたとき、ガラス材料を60重量%以上、66重量%以下、フィラーとしての石英を34重量%以上、37重量%以下、フィラーとしてのアルミナを0.5重量%以上、4重量%以下含むことが好ましい。
【0035】
第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bは、各々、例えば、後述するような、複数の絶縁層が積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる複層構造を有している。
【0036】
第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bは、各々、Ni-Cu-Zn系フェライト材料で構成されることが好ましい。この場合、コイル部品1Aのインダクタンスが大きくなりやすい。
【0037】
第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bを構成するNi-Cu-Zn系フェライト材料は、各々、全量を100mоl%としたとき、FeをFe換算で40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnO換算で5mol%以上、35mol%以下、CuをCuO換算で6mol%以上、12mol%以下、NiをNiO換算で8mol%以上、40mol%以下含有することが好ましい。
【0038】
第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bを構成するNi-Cu-Zn系フェライト材料は、各々、Mn、Co、SnO、Bi、SiO等の添加剤を更に含有してもよい。
【0039】
第1フェライト層16a及び第2フェライト層16bを構成するNi-Cu-Zn系フェライト材料は、各々、不可避不純物を更に含有してもよい。
【0040】
第1ガラス層15a、第1フェライト層16a、及び、第2フェライト層16bの高さ方向Tにおける寸法は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。第1ガラス層15a、第1フェライト層16a、及び、第2フェライト層16bの高さ方向Tにおける寸法が、互いに異なる、又は、一部で異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0041】
ガラス層及びフェライト層は、以下のようにして区別される。まず、必要に応じてコイル部品の周囲を樹脂で封止した上で、コイル部品を積層方向(例えば、高さ方向)に直交する第1方向(例えば、幅方向)に研磨することにより、第1方向の略中央部で、積層方向及び第1方向に直交する第2方向(例えば、長さ方向)と積層方向とに沿う断面を露出させる。次に、素体の露出断面において異なる層が存在すると推定できる領域(例えば、色調の違い等により異なる層が存在すると推定できる領域)に対して、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDX)で組成(検出される元素の含有比率)を求める。そして、得られた組成から、各層の構成材料がガラスセラミック材料かフェライト材料かを判断することにより、ガラス層及びフェライト層を区別する。
【0042】
第1外部電極21は、素体10Aの表面上に設けられている。図1に示す例において、第1外部電極21は、素体10Aの第1側面13aの一部から、第1主面12a及び第2主面12bの各面の一部にわたって延びている。
【0043】
第2外部電極22は、素体10Aの表面上に設けられている。図1に示す例において、第2外部電極22は、素体10Aの第2側面13bの一部から、第1主面12a及び第2主面12bの各面の一部にわたって延びている。また、第2外部電極22は、幅方向Wにおいて第1外部電極21に相対する位置に設けられている。
【0044】
第3外部電極23は、素体10Aの表面上に設けられている。図1に示す例において、第3外部電極23は、長さ方向Lにおいて第1外部電極21と離隔した位置で、素体10Aの第1側面13aの一部から、第1主面12a及び第2主面12bの各面の一部にわたって延びている。
【0045】
第4外部電極24は、素体10Aの表面上に設けられている。図1に示す例において、第4外部電極24は、長さ方向Lにおいて第2外部電極22と離隔した位置で、素体10Aの第2側面13bの一部から、第1主面12a及び第2主面12bの各面の一部にわたって延びている。また、第4外部電極24は、幅方向Wにおいて第3外部電極23に相対する位置に設けられている。
【0046】
以上のように、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24は、素体10Aの表面上で互いに離隔した位置に設けられている。
【0047】
以上のように、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24の各々の一部が、実装面となる素体10Aの第1主面12a上に設けられていると、コイル部品1Aの実装性が向上しやすくなる。
【0048】
なお、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24の配置態様は、図1に示す態様に限定されない。
【0049】
第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24は、各々、単層構造を有していてもよいし、複層構造を有していてもよい。
【0050】
第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24が、各々、単層構造を有する場合、各々の外部電極の構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0051】
第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び、第4外部電極24が、各々、複層構造である場合、各々の外部電極は、素体10Aの表面側から順に、例えば、Agを含む下地電極と、Niめっき電極と、Snめっき電極と、を有してもよい。
【0052】
図2は、図1に示すコイル部品の線分A1-A2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。図3は、図1に示すコイル部品の線分B1-B2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。図4は、図1に示すコイル部品の線分C1-C2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【0053】
図2図3、及び、図4に示すように、第1ガラス層15aは、絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、絶縁層15ad、及び、絶縁層15aeが、積層方向(ここでは、高さ方向T)に順に積層されてなる。より具体的には、第1ガラス層15aでは、素体10Aの第1主面12a側から第2主面12b側に向かって、絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、絶縁層15ad、及び、絶縁層15aeが順に積層されている。
【0054】
絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、絶縁層15ad、及び、絶縁層15aeの構成材料は、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0055】
なお、図2図3、及び、図4では、説明の便宜上、第1ガラス層15aを構成する絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0056】
図2図3、及び、図4に示すように、第1フェライト層16aは、絶縁層16aa及び絶縁層16abが、積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる。より具体的には、第1フェライト層16aでは、第1ガラス層15a側から順に、絶縁層16aa及び絶縁層16abが積層されている。
【0057】
なお、図2図3、及び、図4では、説明の便宜上、第1フェライト層16aを構成する絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0058】
図2図3、及び、図4に示すように、第2フェライト層16bは、絶縁層16ba及び絶縁層16bbが、積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる。より具体的には、第2フェライト層16bでは、第1ガラス層15a側から順に、絶縁層16ba及び絶縁層16bbが積層されている。
【0059】
なお、図2図3、及び、図4では、説明の便宜上、第2フェライト層16bを構成する絶縁層間の境界が示されているが、実際にはこれらの境界が明瞭に現れていない。
【0060】
第1ガラス層15aの内部には、第1コイル31及び第2コイル32が設けられている。
【0061】
第1コイル31と第2コイル32とは、互いに絶縁されている。
【0062】
第1コイル31、より具体的には、第1コイル31の一端は、図3に示す第1引き出し導体51を介して、第1外部電極21に電気的に接続されている。図3に示す例では、第1引き出し導体51が素体10Aの第1側面13aに露出しており、第1外部電極21が第1引き出し導体51の露出部分に接続されている。
【0063】
第1コイル31、より具体的には、第1コイル31の他端は、図3に示す第2引き出し導体52を介して、第2外部電極22に電気的に接続されている。図3に示す例では、第2引き出し導体52が素体10Aの第2側面13bに露出しており、第2外部電極22が第2引き出し導体52の露出部分に接続されている。
【0064】
第2コイル32、より具体的には、第2コイル32の一端は、図4に示す第3引き出し導体53を介して、第3外部電極23に電気的に接続されている。図4に示す例では、第3引き出し導体53が素体10Aの第1側面13aに露出しており、第3外部電極23が第3引き出し導体53の露出部分に接続されている。
【0065】
第2コイル32、より具体的には、第2コイル32の他端は、図4に示す第4引き出し導体54を介して、第4外部電極24に電気的に接続されている。図4に示す例では、第4引き出し導体54が素体10Aの第2側面13bに露出しており、第4外部電極24が第4引き出し導体54の露出部分に接続されている。
【0066】
以上のように、コイル部品1Aは、コイルとして、第1コイル31と、第1コイル31と絶縁された第2コイル32とが設けられたコモンモードチョークコイルである。
【0067】
図2に示すように、第1コイル31は、コイル軸D1を有している。図2に示す例では、第1コイル31のコイル軸D1は、高さ方向Tに沿って、素体10Aの第1主面12aと第2主面12bとの間を貫通している。つまり、第1コイル31のコイル軸D1の方向は、実装面となる素体10Aの第1主面12aに直交している。
【0068】
図2に示すように、第2コイル32は、コイル軸D2を有している。図2に示す例では、第2コイル32のコイル軸D2は、高さ方向Tに沿って、素体10Aの第1主面12aと第2主面12bとの間を貫通している。つまり、第2コイル32のコイル軸D2の方向は、実装面となる素体10Aの第1主面12aに直交している。
【0069】
なお、第1コイル31のコイル軸D1、及び、第2コイル32のコイル軸D2は、各々、高さ方向Tから見たときの、第1コイル31の内周側、及び、第2コイル32の内周側を通るが、説明の便宜上、図2に示されている。
【0070】
以上より、第1ガラス層15aを構成する絶縁層の積層方向と、第1コイル31のコイル軸D1の方向と、第2コイル32のコイル軸D2の方向とは、同じ高さ方向Tに沿って、実装面となる素体10Aの第1主面12aに直交している。
【0071】
図5は、図1に示すコイル部品(ただし、外部電極を除く)を分解した状態の一例を示す斜視模式図である。
【0072】
図5に示すように、第1コイル31は、コイル導体41aと、コイル導体41bと、を含んでいる。
【0073】
コイル導体41aは、絶縁層15aaの主面上に設けられている。コイル導体41aは、一端においてランド部61aを有し、他端において第1引き出し導体51に接続されている。
【0074】
コイル導体41bは、絶縁層15abの主面上に設けられている。コイル導体41bは、一端においてランド部61bを有し、他端において第2引き出し導体52に接続されている。
【0075】
コイル導体41aのランド部61aと、コイル導体41bのランド部61bとは、高さ方向Tから見たときに重なっている。
【0076】
絶縁層15abには、高さ方向Tから見たときにランド部61a及びランド部61bに重なる位置に、高さ方向Tに貫通するビア導体71aが設けられている。
【0077】
コイル部品1Aでは、絶縁層15aa及び絶縁層15abが積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されることにより、コイル導体41a及びコイル導体41bが、これらの絶縁層とともに高さ方向Tに積層されつつ電気的に接続される。より具体的には、コイル導体41aのランド部61aと、コイル導体41bのランド部61bとが、ビア導体71aを介して電気的に接続される。このように、コイル導体41a及びコイル導体41bが電気的に接続されることにより、第1コイル31が構成される。
【0078】
図5に示すように、第2コイル32は、コイル導体42aと、コイル導体42bと、を含んでいる。
【0079】
コイル導体42aは、絶縁層15acの主面上に設けられている。コイル導体42aは、一端においてランド部62aを有し、他端において第4引き出し導体54に接続されている。
【0080】
コイル導体42bは、絶縁層15adの主面上に設けられている。コイル導体42bは、一端においてランド部62bを有し、他端において第3引き出し導体53に接続されている。
【0081】
コイル導体42aのランド部62aと、コイル導体42bのランド部62bとは、高さ方向Tから見たときに重なっている。
【0082】
絶縁層15adには、高さ方向Tから見たときにランド部62a及びランド部62bに重なる位置に、高さ方向Tに貫通するビア導体72aが設けられている。
【0083】
コイル部品1Aでは、絶縁層15ac及び絶縁層15adが積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されることにより、コイル導体42a及びコイル導体42bが、これらの絶縁層とともに高さ方向Tに積層されつつ電気的に接続される。より具体的には、コイル導体42aのランド部62aと、コイル導体42bのランド部62bとが、ビア導体72aを介して電気的に接続される。このように、コイル導体42a及びコイル導体42bが電気的に接続されることにより、第2コイル32が構成される。
【0084】
第1ガラス層15aでは、絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、及び、絶縁層15adの積層部分に対して、コイル導体、引き出し導体、ビア導体等の導体が設けられていない絶縁層15aeが、素体10Aの第2主面12b側に更に積層されている。これにより、第1コイル31及び第2コイル32(特に、第2コイル32)が、第1ガラス層15aの内部に設けられることになる。
【0085】
なお、第1ガラス層15aでは、絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、絶縁層15ad、及び、絶縁層15aeの積層部分に対して、コイル導体、引き出し導体、ビア導体等の導体が設けられていない少なくとも1つの絶縁層が、素体10Aの第1主面12a側及び第2主面12b側の少なくとも一方側に更に積層されていてもよい。つまり、第1ガラス層15aを構成する絶縁層の数は、図5に示す態様(5つ)に限定されない。
【0086】
なお、第1コイル31及び第2コイル32の各々を構成するコイル導体の数は、図5に示す態様(2つ)に限定されない。
【0087】
積層方向(ここでは、高さ方向T)から見たとき、各々のコイル導体は、図5に示すような直線部のみで構成される形状であってもよいし、曲線部のみで構成される形状であってもよいし、直線部及び曲線部で構成される形状であってもよい。つまり、高さ方向Tから見たとき、第1コイル31及び第2コイル32は、各々、図5に示すような直線部のみで構成される形状であってもよいし、曲線部のみで構成される形状であってもよいし、直線部及び曲線部で構成される形状であってもよい。
【0088】
積層方向(ここでは、高さ方向T)から見たとき、各々のランド部は、図5に示すような円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0089】
各々のコイル導体は、独立して、ランド部を端部に有していなくてもよい。
【0090】
各々のコイル導体、各々の引き出し導体、及び、各々のビア導体の構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0091】
上述したように、第1フェライト層16aは、絶縁層16aa及び絶縁層16abが、積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる。
【0092】
なお、第1フェライト層16aを構成する絶縁層の数は、図5に示す態様(2つ)に限定されない。つまり、第1フェライト層16aを構成する絶縁層の数は、1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
【0093】
上述したように、第2フェライト層16bは、絶縁層16ba及び絶縁層16bbが、積層方向(ここでは、高さ方向T)に積層されてなる。
【0094】
なお、第2フェライト層16bを構成する絶縁層の数は、図5に示す態様(2つ)に限定されない。つまり、第2フェライト層16bを構成する絶縁層の数は、1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
【0095】
図2に示すように、コイル部品1Aでは、第1フェライト層16aにおいて、第1ガラス層15a側の主面の位置を第1位置E1、第1位置E1から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第2位置E2、第1ガラス層15aと反対側の主面の位置を第3位置E3、第3位置E3から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第4位置E4、第1位置E1と第2位置E2との間の領域を第1内側領域F1、第3位置E3と第4位置E4との間の領域を第1外側領域G1、第2位置E2と第4位置E4との間の領域を第1中間領域H1としたとき、以下の特徴(1)及び(2)の両方を満たしている。
(1)第1内側領域F1における空孔(ポア)の面積率は、第1中間領域H1における空孔の面積率よりも大きい。
(2)第1内側領域F1におけるフェライトの平均結晶粒径は、第1中間領域H1におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい。
【0096】
コイル部品1Aでは、上記の特徴(1)及び(2)の両方を満たしていることにより、第1ガラス層15aと第1フェライト層16aとの密着性(例えば、接合強度)が向上する。
【0097】
第1内側領域F1における空孔の面積率を1としたとき、第1中間領域H1における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下であることが好ましい。この場合、第1ガラス層15aと第1フェライト層16aとの密着性が大幅に向上する。
【0098】
第1内側領域F1におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、第1中間領域H1におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下であることが好ましい。この場合、第1ガラス層15aと第1フェライト層16aとの密着性が大幅に向上する。
【0099】
フェライト層の対象領域における空孔の面積率は、以下のようにして定められる。まず、必要に応じてコイル部品の周囲を樹脂で封止した上で、コイル部品を積層方向(例えば、高さ方向)に直交する第1方向(例えば、幅方向)に研磨することにより、第1方向の略中央部で、積層方向及び第1方向に直交する第2方向(例えば、長さ方向)と積層方向とに沿う断面を露出させる。この際、例えば、図2に示すような長さ方向及び高さ方向に沿う断面を露出させてもよいし、幅方向及び高さ方向に沿う断面を露出させてもよい。次に、露出した断面の画像を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、倍率を5000倍、視野の大きさを8μm角として撮影する。そして、撮影された8μm角の断面画像に対して、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、フェライト層の対象領域における空孔の面積率を測定する。このような空孔の面積率の測定を、5箇所で撮影された断面画像に対して行い、得られた5個の測定値の平均値を、フェライト層の対象領域における空孔の面積率と定める。
【0100】
フェライト層の対象領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、以下のようにして定められる。まず、空孔の面積率を測定する際に用いられる8μm角の断面画像に対して、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、フェライト層の対象領域において、1個のフェライト結晶粒子が占める面積を求め、その面積から等価円相当径を求める。そして、このような等価円相当径の測定を、同じ断面画像内の20個のフェライト結晶粒子に対して行い、得られた20個の測定値の平均値を、フェライト層の対象領域におけるフェライトの平均結晶粒径と定める。
【0101】
図2に示すように、コイル部品1Aでは、第2フェライト層16bにおいて、第1ガラス層15a側の主面の位置を第5位置E5、第5位置E5から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第6位置E6、第1ガラス層15aと反対側の主面の位置を第7位置E7、第7位置E7から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第8位置E8、第5位置E5と第6位置E6との間の領域を第2内側領域F2、第7位置E7と第8位置E8との間の領域を第2外側領域G2、第6位置E6と第8位置E8との間の領域を第2中間領域H2としたとき、以下の特徴(3)及び(4)の両方を満たすことが好ましい。
(3)第2内側領域F2における空孔の面積率は、第2中間領域H2における空孔の面積率よりも大きい。
(4)第2内側領域F2におけるフェライトの平均結晶粒径は、第2中間領域H2におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい。
【0102】
コイル部品1Aでは、上記の特徴(3)及び(4)の両方を満たすことにより、第1ガラス層15aと第2フェライト層16bとの密着性(例えば、接合強度)が向上する。
【0103】
第2内側領域F2における空孔の面積率を1としたとき、第2中間領域H2における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下であることが好ましい。この場合、第1ガラス層15aと第2フェライト層16bとの密着性が大幅に向上する。
【0104】
第2内側領域F2におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、第2中間領域H2におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下であることが好ましい。この場合、第1ガラス層15aと第2フェライト層16bとの密着性が大幅に向上する。
【0105】
コイル部品1Aは、例えば、以下の方法で製造される。
【0106】
<ガラスセラミック材料を作製する工程>
まず、KO、B、SiO、及び、Alを所定の比率になるように秤量し、白金製のるつぼ内等で混合する。
【0107】
次に、得られた混合物を熱処理することにより、溶融させる。熱処理温度については、例えば、1500℃以上、1600℃以下とする。
【0108】
その後、得られた溶融物を急冷することにより、ガラス材料を作製する。
【0109】
ガラス材料は、全量を100重量%としたとき、KをKO換算で0.5重量%以上、5重量%以下、BをB換算で10重量%以上、25重量%以下、SiをSiO換算で70重量%以上、85重量%以下、AlをAl換算で0重量%以上、5重量%以下含有することが好ましい。
【0110】
次に、ガラス材料を粉砕することにより、ガラス粉末を準備する。ガラス粉末のメジアン径D50については、例えば、1μm以上、3μm以下とする。また、フィラーとして、石英粉末及びアルミナ粉末を準備する。石英粉末及びアルミナ粉末のメジアン径D50については、例えば、0.5μm以上、2.0μm以下とする。ここで、ガラス粉末、石英粉末、及び、アルミナ粉末のメジアン径D50は、体積基準の累積確率が50%となるときの粒径である。
【0111】
そして、ガラス粉末に、フィラーとしての石英粉末及びアルミナ粉末を添加することにより、ガラスセラミック材料(誘電体ガラス材料:非磁性材料)を作製する。
【0112】
<ガラスセラミックシートを作製する工程>
まず、ガラスセラミック材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合することにより、ガラスセラミックスラリーを作製する。
【0113】
次に、ガラスセラミックスラリーを、ドクターブレード法等で所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、ガラスセラミックシートを作製する。ガラスセラミックシートの厚みについては、例えば、20μm以上、30μm以下とする。ガラスセラミックシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0114】
<フェライト材料を作製する工程>
まず、Fe、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量する。この際、Mn、Co、SnO、Bi、SiO等の添加剤を添加してもよい。
【0115】
次に、これらの秤量物と、純水と、分散剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕する。
【0116】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼成する。仮焼成温度については、例えば、700℃以上、800℃以下とする。仮焼成時間については、例えば、2時間以上、3時間以下とする。
【0117】
このようにして、粉末状のフェライト材料(磁性材料)を作製する。
【0118】
フェライト材料は、全量を100mоl%としたとき、FeをFe換算で40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnO換算で5mol%以上、35mol%以下、CuをCuO換算で6mol%以上、12mol%以下、NiをNiO換算で8mol%以上、40mol%以下含有することが好ましい。
【0119】
本工程では、上記の粉砕物を得る際の粉砕度合いを変化させることにより、比表面積(平均粒径)が異なる複数種類のフェライト材料を作製する。
【0120】
<フェライトシートを作製する工程>
まず、粉末状のフェライト材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、フェライトスラリーを作製する。
【0121】
次に、フェライトスラリーを、ドクターブレード法等で所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、フェライトシートを作製する。フェライトシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0122】
本工程では、上記の比表面積(平均粒径)が異なる複数種類のフェライト材料を用いることにより、フェライト材料の比表面積(平均粒径)が異なる複数種類のフェライトシートを作製する。例えば、比表面積が相対的に大きい(平均粒径が相対的に小さい)フェライト材料からなる第1フェライトシートと、比表面積が相対的に小さい(平均粒径が相対的に大きい)フェライト材料からなる第2フェライトシートとを作製する。
【0123】
<導体パターンを形成する工程>
Agペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等で各々のガラスセラミックシートに塗工することにより、図5に示すコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、図5に示す引き出し導体に相当する引き出し導体用導体パターンと、図5に示すビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを形成する。ビア導体用導体パターンを形成する際には、ガラスセラミックシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことでビアホールを予め形成しておき、そのビアホールに導電性ペーストを充填する。
【0124】
<積層体ブロックを作製する工程>
まず、導体パターンが形成された各々のガラスセラミックシートを、図5に示す順番、すなわち、図5に示す絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、及び、絶縁層15adの順番で、積層方向(ここでは、高さ方向)に積層する。その後、図5に示すように、得られた積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における一方の主面上、すなわち、図5に示す絶縁層15aeの位置に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積層する。
【0125】
次に、得られたガラスセラミックシートの積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における両方の主面上に、フェライトシートを所定の枚数積層する。この際、例えば、ガラスセラミックシートの積層体の両方の主面に対して、ガラスセラミックシートの積層体側から順に、第1フェライトシートと、第2フェライトシートとを積層する。より具体的には、図5に示す絶縁層16aa及び絶縁層16baの位置に第1フェライトシートを、図5に示す絶縁層16ab及び絶縁層16bbの位置に第2フェライトシートを積層する。
【0126】
そして、得られたガラスセラミックシート及びフェライトシートの積層体を、温間等方圧プレス(WIP)処理等で圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0127】
<素体及びコイルを作製する工程>
まず、積層体ブロックをダイサー等で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0128】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成温度については、例えば、860℃以上、920℃以下とする。焼成時間については、例えば、1時間以上、2時間以下とする。
【0129】
個片化されたチップを焼成することにより、ガラスセラミックシート及びフェライトシートは、各々、絶縁層となる。その結果、ガラスセラミックシートの積層部分は、第1ガラス層となる。また、上記のガラスセラミックシートの積層部分を積層方向(ここでは、高さ方向)に挟む、フェライトシートの2つの積層部分は、各々、第1フェライト層及び第2フェライト層となる。更に、コイル導体用導体パターン、引き出し導体用導体パターン、及び、ビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体、引き出し導体、及び、ビア導体となる。
【0130】
このようにして、積層方向(ここでは、高さ方向)において第1ガラス層が第1フェライト層及び第2フェライト層に挟まれた構造を有する素体と、第1ガラス層の内部に設けられた第1コイルと、第1ガラス層の内部に設けられ、かつ、第1コイルと絶縁された第2コイルとを作製する。ここで、素体の第1側面には、第1コイルの一端に接続された第1引き出し導体と、第2コイルの一端に接続された第3引き出し導体とが露出することになる。また、素体の第2側面には、第1コイルの他端に接続された第2引き出し導体と、第2コイルの他端に接続された第4引き出し導体とが露出することになる。
【0131】
ここで、上述した<積層体ブロックを作製する工程>において、ガラスセラミックシートの積層体側から順に、第1フェライトシートと、第2フェライトシートとを積層し、本工程での焼成後に第1フェライトシートの厚みが10μm、第2フェライトシートの厚みが10μmよりも大きくなるように調節しておくと、本工程で得られる第1フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第1内側領域と、第2フェライトシートの一部に由来する第1外側領域と、第2フェライトシートの残りの部分に由来する第1中間領域とが形成される。
【0132】
この際、本工程では、個片化されたチップを焼成する際に、ガラスセラミックシートに接する第1フェライトシートにおいて、フェライト材料の比表面積が相対的に大きい(平均粒径が相対的に小さい)ために、ガラスセラミック材料の成分がガラスセラミックシートから第1フェライトシートに拡散しやすくなる。そのため、拡散したガラスセラミック材料の成分を介して、ガラスセラミックシートと第1フェライトシートとの密着性が向上する。その結果、本工程で得られる第1ガラス層と第1フェライト層との密着性が向上する。
【0133】
その一方で、ガラスセラミック材料の成分がガラスセラミックシートから第1フェライトシートに拡散しやすくなると、第1フェライトシートにおいて、フェライト材料の焼結(結晶化)が阻害されやすくなる。その結果、本工程で得られる第1フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が、第2フェライトシートに由来する第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さくなる。更に、これに伴って、本工程で得られる第1フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第1内側領域における空孔の面積率が、第2フェライトシートに由来する第1中間領域における空孔の面積率よりも大きくなる。
【0134】
本工程で得られる第2フェライト層においても、第1フェライト層と同様に、第1フェライトシートに由来する第2内側領域と、第2フェライトシートの一部に由来する第2外側領域と、第2フェライトシートの残りの部分に由来する第2中間領域とが形成される。
【0135】
この際も、上述したのと同様の原理により、本工程で得られる第1ガラス層と第2フェライト層との密着性が向上する。
【0136】
その一方で、上述したのと同様の原理により、本工程で得られる第2フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が、第2フェライトシートに由来する第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さくなる。更に、これに伴って、本工程で得られる第2フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第2内側領域における空孔の面積率が、第2フェライトシートに由来する第2中間領域における空孔の面積率よりも大きくなる。
【0137】
以上のことから、例えば、上述した<フェライト材料を作製する工程>において上記の粉砕物を得る際の粉砕度合いを変化させることで、後にフェライト層の内側領域となる第1フェライトシートのフェライト材料の比表面積(平均粒径)を変化させることにより、本工程で得られるフェライト層について、内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径と、内側領域における空孔の面積率とを調節できる。
【0138】
素体に対しては、例えば、素体をメディアとともに回転バレル機に入れて、素体にバレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0139】
<外部電極を形成する工程>
まず、Ag及びガラスフリットを含むペースト等の導電性ペーストを、素体の第1側面で第1引き出し導体が露出した箇所と、素体の第2側面で第2引き出し導体が露出した箇所と、素体の第1側面で第3引き出し導体が露出した箇所と、素体の第2側面で第4引き出し導体が露出した箇所との合計4箇所に少なくとも塗工する。
【0140】
次に、得られた各塗膜を焼き付けることにより、素体の表面上に下地電極を形成する。
【0141】
そして、電解めっき等により、各々の下地電極の表面上に、めっき電極、例えば、Niめっき電極とSnめっき電極とを順に形成する。
【0142】
このようにして、第1コイルの一端に第1引き出し導体を介して電気的に接続された第1外部電極と、第1コイルの他端に第2引き出し導体を介して電気的に接続された第2外部電極と、第2コイルの一端に第3引き出し導体を介して電気的に接続された第3外部電極と、第2コイルの他端に第4引き出し導体を介して電気的に接続された第4外部電極とを、素体の表面上に形成する。
【0143】
以上により、コイル部品1Aが製造される。
【0144】
[実施形態2]
本発明の実施形態2のコイル部品において、素体は、第1フェライト層に対して第1ガラス層と反対側に隣接した第2ガラス層と、第2フェライト層に対して第1ガラス層と反対側に隣接した第3ガラス層と、を更に有する。本発明の実施形態2のコイル部品は、この点以外、本発明の実施形態1のコイル部品と同様である。
【0145】
図6は、本発明の実施形態2のコイル部品の一例を示す斜視模式図である。
【0146】
図6に示すコイル部品1Bにおいて、素体10Bは、素体10Aの構成、すなわち、第1ガラス層15aと、第1フェライト層16aと、第2フェライト層16bとに加えて、第2ガラス層15bと、第3ガラス層15cと、を更に有している。
【0147】
積層方向(ここでは、高さ方向T)において、第2ガラス層15bは第1フェライト層16aに対して第1ガラス層15aと反対側に隣接し、第3ガラス層15cは第2フェライト層16bに対して第1ガラス層15aと反対側に隣接している。つまり、素体10Bでは、積層方向(ここでは、高さ方向T)において、第1フェライト層16aが第1ガラス層15a及び第2ガラス層15bに挟まれ、第2フェライト層16bが第1ガラス層15a及び第3ガラス層15cに挟まれている。
【0148】
第2ガラス層15bを構成する絶縁層の数は、特に限定されず、1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
【0149】
第2ガラス層15bは、ガラスセラミック材料で構成される。
【0150】
第2ガラス層15bは、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。つまり、第2ガラス層15bを構成するガラスセラミック材料は、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。
【0151】
第2ガラス層15bに含まれるガラス材料は、全量を100重量%としたとき、KをKO換算で0.5重量%以上、5重量%以下、BをB換算で10重量%以上、25重量%以下、SiをSiO換算で70重量%以上、85重量%以下、AlをAl換算で0重量%以上、5重量%以下含有することが好ましい。
【0152】
第2ガラス層15bは、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。つまり、第2ガラス層15bを構成するガラスセラミック材料は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。第2ガラス層15bを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英を含むことにより、コイル部品1Bの高周波特性が向上しやすくなる。また、第2ガラス層15bを構成するガラスセラミック材料がフィラーとしてアルミナを含むことにより、素体10Bの機械的強度が向上しやすくなる。
【0153】
第2ガラス層15bを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英及びアルミナを含む場合、ガラスセラミック材料は、全量を100重量%としたとき、ガラス材料を60重量%以上、66重量%以下、フィラーとしての石英を34重量%以上、37重量%以下、フィラーとしてのアルミナを0.5重量%以上、4重量%以下含むことが好ましい。
【0154】
第3ガラス層15cを構成する絶縁層の数は、特に限定されず、1つのみであってもよいし、複数であってもよい。
【0155】
第3ガラス層15cは、ガラスセラミック材料で構成される。
【0156】
第3ガラス層15cは、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。つまり、第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料は、K、B、及び、Siを含有するガラス材料を含むことが好ましい。
【0157】
第3ガラス層15cに含まれるガラス材料は、全量を100重量%としたとき、KをKO換算で0.5重量%以上、5重量%以下、BをB換算で10重量%以上、25重量%以下、SiをSiO換算で70重量%以上、85重量%以下、AlをAl換算で0重量%以上、5重量%以下含有することが好ましい。
【0158】
第3ガラス層15cは、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。つまり、第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含むことが好ましい。第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英を含むことにより、コイル部品1Bの高周波特性が向上しやすくなる。また、第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料がフィラーとしてアルミナを含むことにより、素体10Bの機械的強度が向上しやすくなる。
【0159】
第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料がフィラーとして石英及びアルミナを含む場合、ガラスセラミック材料は、全量を100重量%としたとき、ガラス材料を60重量%以上、66重量%以下、フィラーとしての石英を34重量%以上、37重量%以下、フィラーとしてのアルミナを0.5重量%以上、4重量%以下含むことが好ましい。
【0160】
第1ガラス層15a、第2ガラス層15b、及び、第3ガラス層15cを構成するガラスセラミック材料は、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0161】
第1ガラス層15a、第2ガラス層15b、第3ガラス層15c、第1フェライト層16a、及び、第2フェライト層16bの高さ方向Tにおける寸法は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。第1ガラス層15a、第2ガラス層15b、第3ガラス層15c、第1フェライト層16a、及び、第2フェライト層16bの高さ方向Tにおける寸法が、互いに異なる、又は、一部で異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0162】
図7は、図6に示すコイル部品の線分A3-A4に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【0163】
図7に示すように、コイル部品1Bでは、第1フェライト層16aにおいて、第1ガラス層15a側の主面の位置を第1位置E1、第1位置E1から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第2位置E2、第1ガラス層15aと反対側の主面、すなわち、第2ガラス層15b側の主面の位置を第3位置E3、第3位置E3から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第4位置E4、第1位置E1と第2位置E2との間の領域を第1内側領域F1、第3位置E3と第4位置E4との間の領域を第1外側領域G1、第2位置E2と第4位置E4との間の領域を第1中間領域H1としたとき、コイル部品1Aと同様に、上記の特徴(1)及び(2)の両方を満たしている。更に、コイル部品1Bでは、以下の特徴(5)及び(6)の両方を満たすことが好ましい。
(5)第1外側領域G1における空孔の面積率は、第1中間領域H1における空孔の面積率よりも大きい。
(6)第1外側領域G1におけるフェライトの平均結晶粒径は、第1中間領域H1におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい。
【0164】
コイル部品1Bでは、上記の特徴(5)及び(6)の両方を満たすことにより、第2ガラス層15bと第1フェライト層16aとの密着性(例えば、接合強度)が向上する。
【0165】
第1外側領域G1における空孔の面積率を1としたとき、第1中間領域H1における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下であることが好ましい。この場合、第2ガラス層15bと第1フェライト層16aとの密着性が大幅に向上する。
【0166】
第1内側領域F1及び第1外側領域G1における空孔の面積率は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第1内側領域F1及び第1外側領域G1における空孔の面積率が互いに異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0167】
第1外側領域G1におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、第1中間領域H1におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下であることが好ましい。この場合、第2ガラス層15bと第1フェライト層16aとの密着性が大幅に向上する。
【0168】
第1内側領域F1及び第1外側領域G1におけるフェライトの平均結晶粒径は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第1内側領域F1及び第1外側領域G1におけるフェライトの平均結晶粒径が互いに異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0169】
図7に示すように、コイル部品1Bでは、第2フェライト層16bにおいて、第1ガラス層15a側の主面の位置を第5位置E5、第5位置E5から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第6位置E6、第1ガラス層15aと反対側の主面、すなわち、第3ガラス層15c側の主面の位置を第7位置E7、第7位置E7から積層方向(ここでは、高さ方向T)に10μm離れた位置を第8位置E8、第5位置E5と第6位置E6との間の領域を第2内側領域F2、第7位置E7と第8位置E8との間の領域を第2外側領域G2、第6位置E6と第8位置E8との間の領域を第2中間領域H2としたとき、以下の特徴(7)及び(8)の両方を満たすことが好ましい。
(7)第2外側領域G2における空孔の面積率は、第2中間領域H2における空孔の面積率よりも大きい。
(8)第2外側領域G2におけるフェライトの平均結晶粒径は、第2中間領域H2におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい。
【0170】
コイル部品1Bでは、上記の特徴(7)及び(8)の両方を満たすことにより、第3ガラス層15cと第2フェライト層16bとの密着性(例えば、接合強度)が向上する。
【0171】
第2外側領域G2における空孔の面積率を1としたとき、第2中間領域H2における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下であることが好ましい。この場合、第3ガラス層15cと第2フェライト層16bとの密着性が大幅に向上する。
【0172】
第2内側領域F2及び第2外側領域G2における空孔の面積率は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第2内側領域F2及び第2外側領域G2における空孔の面積率が互いに異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0173】
第2外側領域G2におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、第2中間領域H2におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下であることが好ましい。この場合、第3ガラス層15cと第2フェライト層16bとの密着性が大幅に向上する。
【0174】
第2内側領域F2及び第2外側領域G2におけるフェライトの平均結晶粒径は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第2内側領域F2及び第2外側領域G2におけるフェライトの平均結晶粒径が互いに異なる場合、それらの大小関係は特に限定されない。
【0175】
コイル部品1Bは、例えば、<積層体ブロックを作製する工程>を以下のように行うこと以外、コイル部品1Aと同様にして製造される。
【0176】
<積層体ブロックを作製する工程>
まず、導体パターンが形成された各々のガラスセラミックシートを、図5に示す順番で、積層方向(ここでは、高さ方向)に積層する。この際、得られた積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における少なくとも一方の主面上に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを所定の枚数積層する。
【0177】
次に、得られたガラスセラミックシートの積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における両方の主面上に、フェライトシートを所定の枚数積層する。この際、例えば、ガラスセラミックシートの積層体の両方の主面に対して、ガラスセラミックシートの積層体側から順に、第1フェライトシートと、第2フェライトシートと、第1フェライトシートとを積層する。
【0178】
続いて、得られたフェライトシートの2つの積層部分に対して、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを、積層方向(ここでは、高さ方向)に所定の枚数積層する。
【0179】
そして、得られたガラスセラミックシート及びフェライトシートの積層体を、温間等方圧プレス処理等で圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0180】
その後、<素体及びコイルを作製する工程>において、個片化されたチップを焼成することにより、内側に設けられたガラスセラミックシートの積層部分は、第1ガラス層となる。また、上記のガラスセラミックシートの積層部分を積層方向(ここでは、高さ方向)に挟む、フェライトシートの2つの積層部分は、各々、第1フェライト層及び第2フェライト層となる。更に、上記のフェライトシートの2つの積層部分の外側に設けられたガラスセラミックシートの2つの積層部分は、各々、第2ガラス層及び第3ガラス層となる。
【0181】
ここで、<積層体ブロックを作製する工程>において、ガラスセラミックシートの積層体側から順に、第1フェライトシートと、第2フェライトシートと、第1フェライトシートとを積層し、<素体及びコイルを作製する工程>での焼成後に両方の第1フェライトシートの厚みが10μmとなるように調節しておくと、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第1フェライト層では、一方の第1フェライトシートに由来する第1内側領域と、第2フェライトシートに由来する第1中間領域と、他方の第1フェライトシートに由来する第1外側領域とが形成される。更に、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第2フェライト層では、一方の第1フェライトシートに由来する第2内側領域と、第2フェライトシートに由来する第2中間領域と、他方の第1フェライトシートに由来する第2外側領域とが形成される。
【0182】
この際、<素体及びコイルを作製する工程>では、上述したのと同様の原理により、第2ガラス層と第1フェライト層との密着性、及び、第3ガラス層と第2フェライト層との密着性も向上する。
【0183】
その一方で、上述したのと同様の原理により、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第1フェライト層では、他方の第1フェライトシートに由来する第1外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が、第2フェライトシートに由来する第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さくなる。更に、これに伴って、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第1フェライト層では、他方の第1フェライトシートに由来する第1外側領域における空孔の面積率が、第2フェライトシートに由来する第1中間領域における空孔の面積率よりも大きくなる。
【0184】
更に、上述したのと同様の原理により、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第2フェライト層では、他方の第1フェライトシートに由来する第2外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が、第2フェライトシートに由来する第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さくなる。更に、これに伴って、<素体及びコイルを作製する工程>で得られる第2フェライト層では、他方の第1フェライトシートに由来する第2外側領域における空孔の面積率が、第2フェライトシートに由来する第2中間領域における空孔の面積率よりも大きくなる。
【実施例0185】
以下、本発明のコイル部品を具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0186】
[実施例1]
実施例1のコイル部品として、本発明の実施形態1のコイル部品を以下の方法で製造した。
【0187】
<ガラスセラミック材料を作製する工程>
まず、KO、B、SiO、及び、Alを所定の比率になるように秤量し、白金製のるつぼ内で混合した。
【0188】
次に、得られた混合物を熱処理することにより、溶融させた。熱処理温度については、1500℃とした。
【0189】
その後、得られた溶融物を急冷することにより、ガラス材料を作製した。
【0190】
次に、ガラス材料を粉砕することにより、ガラス粉末を準備した。ガラス粉末のメジアン径D50については、1μm以上、3μm以下とした。また、フィラーとして、石英粉末及びアルミナ粉末を準備した。石英粉末及びアルミナ粉末のメジアン径D50については、0.5μm以上、2.0μm以下とした。
【0191】
そして、ガラス粉末に、フィラーとしての石英粉末及びアルミナ粉末を添加することにより、ガラスセラミック材料を作製した。
【0192】
<ガラスセラミックシートを作製する工程>
まず、ガラスセラミック材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合することにより、ガラスセラミックスラリーを作製した。
【0193】
次に、ガラスセラミックスラリーを、ドクターブレード法でシート状に成形した後、打ち抜くことにより、ガラスセラミックシートを作製した。ガラスセラミックシートの厚みについては、20μm以上、30μm以下とした。ガラスセラミックシートの形状については、矩形状とした。
【0194】
<フェライト材料を作製する工程>
まず、Fe、ZnO、CuO、及び、NiOを所定の比率になるように秤量した。
【0195】
次に、これらの秤量物と、純水と、分散剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕した。
【0196】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼成した。仮焼成温度については、800℃とした。仮焼成時間については、2時間とした。
【0197】
このようにして、粉末状のフェライト材料を作製した。
【0198】
本工程では、上記の粉砕物を得る際の粉砕度合いを変化させることにより、比表面積(平均粒径)が異なる2種類のフェライト材料を作製した。
【0199】
<フェライトシートを作製する工程>
まず、粉末状のフェライト材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤とを、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、フェライトスラリーを作製した。
【0200】
次に、フェライトスラリーを、ドクターブレード法でシート状に成形した後、打ち抜くことにより、フェライトシートを作製した。フェライトシートの形状については、矩形状とした。
【0201】
本工程では、上記の比表面積(平均粒径)が異なる2種類のフェライト材料を用いることにより、フェライト材料の比表面積(平均粒径)が異なる2種類のフェライトシートを作製した。より具体的には、比表面積が相対的に大きい(平均粒径が相対的に小さい)フェライト材料からなる第1フェライトシートと、比表面積が相対的に小さい(平均粒径が相対的に大きい)フェライト材料からなる第2フェライトシートとを作製した。第1フェライトシートの厚みについては、後工程での焼成後に10μmとなるようにした。第2フェライトシートの厚みについては、後工程での焼成後に20μmとなるようにした。
【0202】
<導体パターンを形成する工程>
Agペーストを、スクリーン印刷法で各々のガラスセラミックシートに塗工することにより、図5に示すコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、図5に示す引き出し導体に相当する引き出し導体用導体パターンと、図5に示すビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを形成した。ビア導体用導体パターンを形成する際には、ガラスセラミックシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことでビアホールを予め形成しておき、そのビアホールにAgペーストを充填した。
【0203】
<積層体ブロックを作製する工程>
まず、導体パターンが形成された各々のガラスセラミックシートを、図5に示す順番、すなわち、図5に示す絶縁層15aa、絶縁層15ab、絶縁層15ac、及び、絶縁層15adの順番で、積層方向(ここでは、高さ方向)に積層した。その後、図5に示すように、得られた積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における一方の主面上、すなわち、図5に示す絶縁層15aeの位置に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積層した。
【0204】
次に、得られたガラスセラミックシートの積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における両方の主面に対して、ガラスセラミックシートの積層体側から順に、第1フェライトシートと、第2フェライトシートとを積層した。より具体的には、図5に示す絶縁層16aa及び絶縁層16baの位置に第1フェライトシートを、図5に示す絶縁層16ab及び絶縁層16bbの位置に第2フェライトシートを積層した。
【0205】
そして、得られたガラスセラミックシート及びフェライトシートの積層体を、温間等方圧プレス処理で圧着することにより、積層体ブロックを作製した。圧着条件については、温度80℃、圧力100MPaとした。
【0206】
<素体及びコイルを作製する工程>
まず、積層体ブロックをダイサーで所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製した。
【0207】
次に、個片化されたチップを焼成した。焼成温度については、910℃とした。焼成時間については、2時間とした。
【0208】
個片化されたチップを焼成することにより、ガラスセラミックシート及びフェライトシートは、各々、絶縁層となった。その結果、ガラスセラミックシートの積層部分は、第1ガラス層となった。また、上記のガラスセラミックシートの積層部分を積層方向(ここでは、高さ方向)に挟む、フェライトシートの2つの積層部分は、各々、第1フェライト層及び第2フェライト層となった。更に、コイル導体用導体パターン、引き出し導体用導体パターン、及び、ビア導体用導体パターンは、各々、コイル導体、引き出し導体、及び、ビア導体となった。
【0209】
このようにして、積層方向(ここでは、高さ方向)において第1ガラス層が第1フェライト層及び第2フェライト層に挟まれた構造を有する素体と、第1ガラス層の内部に設けられた第1コイルと、第1ガラス層の内部に設けられ、かつ、第1コイルと絶縁された第2コイルとを作製した。ここで、素体の第1側面には、第1コイルの一端に接続された第1引き出し導体と、第2コイルの一端に接続された第3引き出し導体とが露出していた。また、素体の第2側面には、第1コイルの他端に接続された第2引き出し導体と、第2コイルの他端に接続された第4引き出し導体とが露出していた。
【0210】
本工程で得られた第1フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第1内側領域と、第2フェライトシートの一部に由来する第1外側領域と、第2フェライトシートの残りの部分に由来する第1中間領域とが形成された。
【0211】
更に、本工程で得られる第2フェライト層では、第1フェライトシートに由来する第2内側領域と、第2フェライトシートの一部に由来する第2外側領域と、第2フェライトシートの残りの部分に由来する第2中間領域とが形成された。
【0212】
その後、素体をメディアとともに回転バレル機に入れて、素体にバレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けた。
【0213】
<外部電極を形成する工程>
まず、Ag及びガラスフリットを含む導電性ペーストを、素体の第1側面で第1引き出し導体が露出した箇所と、素体の第2側面で第2引き出し導体が露出した箇所と、素体の第1側面で第3引き出し導体が露出した箇所と、素体の第2側面で第4引き出し導体が露出した箇所との合計4箇所に少なくとも塗工した。
【0214】
次に、得られた各塗膜を焼き付けることにより、素体の表面上に下地電極を形成した。各塗膜の焼き付け温度については、800℃とした。
【0215】
そして、電解めっきにより、各々の下地電極の表面上に、Niめっき電極とSnめっき電極とを順に形成した。
【0216】
このようにして、第1コイルの一端に第1引き出し導体を介して電気的に接続された第1外部電極と、第1コイルの他端に第2引き出し導体を介して電気的に接続された第2外部電極と、第2コイルの一端に第3引き出し導体を介して電気的に接続された第3外部電極と、第2コイルの他端に第4引き出し導体を介して電気的に接続された第4外部電極とを、素体の表面上に形成した。
【0217】
以上により、実施例1のコイル部品が製造された。
【0218】
実施例1のコイル部品は、長さ方向における寸法が0.65mm、高さ方向における寸法が0.30mm、幅方向における寸法が0.50mmであった。
【0219】
[比較例1]
<積層体ブロックを作製する工程>において、図5に示す絶縁層16aa、絶縁層16ab、絶縁層16ba、及び、絶縁層16bbのすべての位置に第2フェライトシートを積層したこと以外、実施例1のコイル部品と同様にして、比較例1のコイル部品を製造した。
【0220】
[評価]
実施例1のコイル部品と比較例1のコイル部品との各々について、上述したように、第1フェライト層における第1内側領域、第1外側領域、及び、第1中間領域を定め、更に、第2フェライト層における第2内側領域、第2外側領域、及び、第2中間領域を定めた上で、以下の評価を行った。結果を、表1及び表2に示す。
【0221】
<フェライト層における空孔の面積率>
まず、必要に応じてコイル部品の周囲を樹脂で封止した上で、コイル部品を幅方向に研磨することにより、幅方向の略中央部で、長さ方向と高さ方向とに沿う断面を露出させた。次に、露出した断面の画像を、走査型電子顕微鏡で、倍率を5000倍、視野の大きさを8μm角として撮影した。そして、撮影された8μm角の断面画像に対して、画像解析ソフトで画像解析を行うことにより、フェライト層の対象領域における空孔の面積率を測定した。より具体的には、撮影された8μm角の断面画像に対して、画像解析ソフト「GIMP」で二値化処理を行った上で、旭化成エンジニアリング社製の「A像くん(登録商標)」を用いて、フェライト層の対象領域における空孔の面積率(フェライト層の対象領域全体のピクセル数における、空孔の存在領域全体のピクセル数の割合)を測定した。このような空孔の面積率の測定を、5箇所で撮影された断面画像に対して行い、得られた5個の測定値の平均値を、フェライト層の対象領域における空孔の面積率と定めた。
【0222】
なお、表1及び表2では、各々のフェライト層の対象領域における空孔の面積率の測定値に加えて、同一のフェライト層について、内側領域における空孔の面積率を1としたときの、対象領域における空孔の面積率の比率も示す。
【0223】
<フェライト層におけるフェライトの平均結晶粒径>
まず、空孔の面積率を測定する際に用いられた8μm角の断面画像に対して、旭化成エンジニアリング社製の画像解析ソフト「A像くん」で画像解析を行うことにより、フェライト層の対象領域において、1個のフェライト結晶粒子が占める面積を求め、その面積から等価円相当径を求めた。そして、このような等価円相当径の測定を、同じ断面画像内の20個のフェライト結晶粒子に対して行い、得られた20個の測定値の平均値を、フェライト層の対象領域におけるフェライトの平均結晶粒径と定めた。
【0224】
なお、表1及び表2では、各々のフェライト層の対象領域におけるフェライトの平均結晶粒径の測定値に加えて、同一のフェライト層について、内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたときの、対象領域におけるフェライトの平均結晶粒径の比率も示す。
【0225】
<ガラス層とフェライト層との密着性>
コイル部品において、第1ガラス層と第1フェライト層との界面、及び、第1ガラス層と第2フェライト層との界面近傍をマイクロスコープで観察することにより、ガラス層とフェライト層との密着性を、以下の判定基準で評価した。
○(良):ガラス層とフェライト層との間に隙間が見られなかった。
×(不良):ガラス層とフェライト層との間に隙間が見られた。
【0226】
【表1】
【0227】
【表2】
【0228】
表1に示すように、第1フェライト層について、第1内側領域における空孔の面積率が第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、かつ、第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい実施例1のコイル部品では、第1ガラス層と第1フェライト層との密着性が良好であった。更に、第2フェライト層について、第2内側領域における空孔の面積率が第2中間領域における空孔の面積率よりも大きく、かつ、第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい実施例1のコイル部品では、第1ガラス層と第2フェライト層との密着性が良好であった。
【0229】
一方、表2に示すように、第1フェライト層について、第1内側領域における空孔の面積率が第1中間領域における空孔の面積率よりも小さく、かつ、第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも大きい比較例1のコイル部品では、第1ガラス層と第1フェライト層との密着性が不充分であった。更に、第2フェライト層について、第2内側領域における空孔の面積率が第2中間領域における空孔の面積率よりも小さく、かつ、第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径が第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも大きい比較例1のコイル部品では、第1ガラス層と第2フェライト層との密着性が不充分であった。
【0230】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0231】
<1>
第1ガラス層と、上記第1ガラス層の一方主面側に隣接した第1フェライト層と、上記第1ガラス層の他方主面側に隣接した第2フェライト層と、を積層方向に有する素体と、
上記第1ガラス層の内部に設けられたコイルと、
上記素体の表面上に設けられ、かつ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
上記第1フェライト層において、上記第1ガラス層側の主面の位置を第1位置、上記第1位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第2位置、上記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第3位置、上記第3位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第4位置、上記第1位置と上記第2位置との間の領域を第1内側領域、上記第3位置と上記第4位置との間の領域を第1外側領域、上記第2位置と上記第4位置との間の領域を第1中間領域としたとき、
上記第1内側領域における空孔の面積率は、上記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
上記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、ことを特徴とするコイル部品。
【0232】
<2>
上記第1内側領域における空孔の面積率を1としたとき、上記第1中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、<1>に記載のコイル部品。
【0233】
<3>
上記第1内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、<1>又は<2>に記載のコイル部品。
【0234】
<4>
上記第2フェライト層において、上記第1ガラス層側の主面の位置を第5位置、上記第5位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第6位置、上記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第7位置、上記第7位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第8位置、上記第5位置と上記第6位置との間の領域を第2内側領域、上記第7位置と上記第8位置との間の領域を第2外側領域、上記第6位置と上記第8位置との間の領域を第2中間領域としたとき、
上記第2内側領域における空孔の面積率は、上記第2中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
上記第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、<1>~<3>のいずれかに記載のコイル部品。
【0235】
<5>
上記第2内側領域における空孔の面積率を1としたとき、上記第2中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、<4>に記載のコイル部品。
【0236】
<6>
上記第2内側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、上記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、<4>又は<5>に記載のコイル部品。
【0237】
<7>
上記第1ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、<1>~<6>のいずれかに記載のコイル部品。
【0238】
<8>
上記素体は、上記第1フェライト層に対して上記第1ガラス層と反対側に隣接した第2ガラス層と、上記第2フェライト層に対して上記第1ガラス層と反対側に隣接した第3ガラス層と、を更に有する、<1>~<7>のいずれかに記載のコイル部品。
【0239】
<9>
上記第1外側領域における空孔の面積率は、上記第1中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
上記第1外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、<8>に記載のコイル部品。
【0240】
<10>
上記第1外側領域における空孔の面積率を1としたとき、上記第1中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、<9>に記載のコイル部品。
【0241】
<11>
上記第1外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、上記第1中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、<9>又は<10>に記載のコイル部品。
【0242】
<12>
上記第2フェライト層において、上記第1ガラス層側の主面の位置を第5位置、上記第5位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第6位置、上記第1ガラス層と反対側の主面の位置を第7位置、上記第7位置から上記積層方向に10μm離れた位置を第8位置、上記第5位置と上記第6位置との間の領域を第2内側領域、上記第7位置と上記第8位置との間の領域を第2外側領域、上記第6位置と上記第8位置との間の領域を第2中間領域としたとき、
上記第2外側領域における空孔の面積率は、上記第2中間領域における空孔の面積率よりも大きく、
上記第2外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、上記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径よりも小さい、<8>~<11>のいずれかに記載のコイル部品。
【0243】
<13>
上記第2外側領域における空孔の面積率を1としたとき、上記第2中間領域における空孔の面積率は、0.3以上、0.8以下である、<12>に記載のコイル部品。
【0244】
<14>
上記第2外側領域におけるフェライトの平均結晶粒径を1としたとき、上記第2中間領域におけるフェライトの平均結晶粒径は、1.5以上、2.5以下である、<12>又は<13>に記載のコイル部品。
【0245】
<15>
上記第2ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、<8>~<14>のいずれかに記載のコイル部品。
【0246】
<16>
上記第3ガラス層は、石英及びアルミナの少なくとも一方を含有するフィラーを含む、<8>~<15>のいずれかに記載のコイル部品。
【0247】
<17>
上記コイルとして、第1コイルと、上記第1コイルと絶縁された第2コイルとが設けられたコモンモードチョークコイルである、<1>~<16>のいずれかに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0248】
1A、1B コイル部品
10A、10B 素体
11a 素体の第1端面
11b 素体の第2端面
12a 素体の第1主面
12b 素体の第2主面
13a 素体の第1側面
13b 素体の第2側面
15a 第1ガラス層
15aa、15ab、15ac、15ad、15ae、16aa、16ab、16ba、16bb 絶縁層
15b 第2ガラス層
15c 第3ガラス層
16a 第1フェライト層
16b 第2フェライト層
21 第1外部電極
22 第2外部電極
23 第3外部電極
24 第4外部電極
31 第1コイル
32 第2コイル
41a、41b、42a、42b コイル導体
51 第1引き出し導体
52 第2引き出し導体
53 第3引き出し導体
54 第4引き出し導体
61a、61b、62a、62b ランド部
71a、72a ビア導体
D1、D2 コイル軸
E1 第1位置
E2 第2位置
E3 第3位置
E4 第4位置
E5 第5位置
E6 第6位置
E7 第7位置
E8 第8位置
F1 第1内側領域
F2 第2内側領域
G1 第1外側領域
G2 第2外側領域
H1 第1中間領域
H2 第2中間領域
L 長さ方向
T 高さ方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0227
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0227】
【表2】