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特開2024-18386熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、および半導体製造工程用粘着フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018386
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、および半導体製造工程用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240201BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240201BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240201BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240201BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B32B27/32 E
H01L21/78 M
C09J7/29
C09J7/38
C08L101/00
C08L23/00
C08L25/08
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121703
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK64A
4F100AK64B
4F100AK64C
4F100AK64J
4F100AK73B
4F100AK73J
4F100AL02A
4F100AL02B
4F100AL02C
4F100AL03A
4F100AL03B
4F100AL03C
4F100AL04A
4F100AL04B
4F100AL04C
4F100AL04J
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA14
4F100EH202
4F100GB41
4F100JK08
4F100JK17
4F100JL01
4J002AA011
4J002BB021
4J002BB042
4J002BB052
4J002BB111
4J002BB152
4J002BC023
4J002BP013
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD100
4J002FD170
4J002GF00
4J002GQ00
4J004AA04
4J004AA06
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA05
5F063AA15
5F063AA18
5F063EE08
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、取扱い性やエキスパンド性に優れるだけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減し、切削屑に起因する不具合を抑制することの可能なフィルムを提供することにある。
【解決手段】
表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムであって、
中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、以下を満たすオレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
(1)オレフィン系エラストマー(α):
オレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムであって、
中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、以下を満たすオレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
(1)オレフィン系エラストマー(α):
オレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示す。
【請求項2】
引張破断伸度が100~700%の範囲内であり、且つ引張弾性率が100~700MPaの範囲内である請求項1に記載に熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
表層及び裏層を構成する樹脂組成物がオレフィン系エラストマー(α)を含有し、中間層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量が、表層および裏層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量よりも多い請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
スチレン系エラストマーをさらに含有する請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
スチレン系エラストマーのスチレン成分含有率が40質量%以上である請求項4に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を有する粘着フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の粘着フィルムを用いた半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、又は化粧シート等の基材として好適に用いられる熱可塑性樹脂フィルム、当該熱可塑性樹脂フィルムを用いた粘着フィルム及び半導体製造工程用粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れる熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムが用いられており、PVC系フィルムを用いた際に生じる上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、PVC系、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。
【0005】
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進み、フィルムに取扱い性やエキスパンド時に求められる柔軟性だけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑の低減を求められるケースがある。
【0006】
特許文献2には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
また、特許文献3には、剛性に優れ破断伸度に特徴のあるフィルムについて開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されているフィルムでは、帯電防止性能や耐熱性には優れるものの、フィルムの切削屑の低減に関する言及は無く、改善の余地があると推察される。
また、特許文献3は破断伸度に特徴のあるフィルムについて記載はあるものの、剛性が高くエキスパンド性や取扱い性には劣るものと推察され、半導体製造工程用途に用いるには改善の余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09-008111号公報
【特許文献2】特開2020-84143号公報
【特許文献3】特開2020-104076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みて、半導体製造工程におけるフィルムの取扱い性やエキスパンド性に優れるだけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減し、切削屑に起因する不具合を抑制することの可能なフィルムの提供を目的とする。また、本発明は、該フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムの中間層に、特定のオレフィン系エラストマー(α)を所定量含有するフィルムを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムであって、
中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、以下を満たすオレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
(1)オレフィン系エラストマー(α):
オレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示す。
[2]
引張破断伸度が100~700%の範囲内であり、且つ引張弾性率が100~700MPaの範囲内である[1]に記載に熱可塑性樹脂フィルム。
[3]
表層及び裏層を構成する樹脂組成物がオレフィン系エラストマー(α)を含有し、中間層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量が、表層および裏層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量よりも多い[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[4]
スチレン系エラストマーをさらに含有する[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[5]
スチレン系エラストマーのスチレン成分含有率が40質量%以上である[4]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を有する粘着フィルム。
[7]
[6]に記載の粘着フィルムを用いた半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、半導体製造工程におけるフィルムの取扱い性やエキスパンド性に優れるだけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減し、切削屑に起因する不具合を抑制することの可能なフィルムの提供をすることができる。また、該フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムであって、中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、以下を満たすオレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムである。
(1)オレフィン系エラストマー(α):
オレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示す。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには柔軟性の調整や、フィルムの引張破断伸度の調整を目的とし、後述するオレフィン系エラストマー(α)が必須成分として含有される。破断伸度が600%以下を示すオレフィ系エラストマー(α)を所定量含有することにより、得られるフィルムの破断伸度を低下させることが可能となる。よって、ダイシングブレードを用いてフィルムが切削される際にも、フィルムが繊維状の切削屑を形成する前に破断させることが容易となり、ブレードとフィルムが接触し引き伸ばされることで発生する繊維状の切削屑の抑制が可能となる。
また、オレフィン系エラストマー(α)以外の成分としては、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、オレフィン系エラストマー(α)との相溶性が良好となり、得られるフィルムの外観も良好なものとすることが可能となる。さらに、得られる熱可塑性樹脂フィルムに耐熱性と適度な柔軟性の付与が可能となる。また、オレフィン系エラストマー(α)以外のオレフィン系エラストマーを用いることもできる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
【0017】
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
【0018】
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピークとしては、120℃以上を示すことが好ましい。120℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られるフィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。
入手のし易さ、耐熱性および柔軟性付与の観点から、上記のポリプロピレン系樹脂の中でもホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いることが好ましく、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0020】
ホモポリプロピレンの市販品としては、例えば、ノバテックPP「MA3U」、ノバテックPP「FY6HA」(以上、日本ポリプロ社製)、PC600A、PC600S、PL500A、PLA00A(以上、サンアロマー社製)、WF836DG3、FLX80H5(以上、住友化学社製)、F-113Q、F-704NP(以上、プライムポリプロ社製)等が挙げられる。
ランダムポリプロピレンの市販品としては、例えば、ノバテックPP「FW4BA」、ノバテックPP「FX3B」(以上、日本ポリプロ社製)、PC630A、PC630S(以上、サンアロマー社製)、F-730NV、F-744NP(以上、プライムポリプロ社製)等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0021】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。それらの中でも、金属イオンを含有するものについては、その金属イオンの影響により半導体ウエハや、ウエハに形成された回路の故障や不具合を生じる可能性があることから、意図的に金属イオンを含有させたものは用いないことが好ましい。
入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0022】
高密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、ノバテックHD「HF560」、ノバテックHD「HF562」(以上、日本ポリエチレン社製)、F371、B161(以上、旭化成社製)等が挙げられる。
低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、ノバテックLD「LC500」、ノバテックLD「LC520」、ノバテックLD「LC720」(以上、日本ポリエチレン社製)、F224N、F324C、F522N(以上、宇部丸善ポリエチレン社製)等が挙げられる。
線状低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、ノバテックLL「UF420」、ノバテックLL「UF641」(以上、日本ポリエチレン社製)、ユメリット「0540F」、ユメリット「4040F」(以上、宇部丸善ポリエチレン社製)等が挙げられる。
上記ポリエチレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは50~1500MPaの範囲内、さらに好ましくは50~1000MPaの範囲内である。
【0025】
本発明に必須成分として用いられるオレフィン系エラストマー(α)とは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
【0026】
オレフィン系エラストマー(α)の具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0027】
オレフィン系エラストマー(α)は、そのオレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示すものを用いることが必要である。引張破断伸度が600%以下のものを用いることで、得られる熱可塑性樹脂フィルムの取扱い性を損なうことがなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減することが可能となる。より好ましくは550%以下、さらに好ましくは500%以下である。
【0028】
オレフィン系エラストマー(α)のメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0029】
オレフィン系エラストマー(α)の強度については、そのオレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張弾性率が20~800MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が20~800MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは20~600MPaの範囲内、さらに好ましくは20~400MPaの範囲内である。
【0030】
オレフィン系エラストマー(α)の市販品としては、例えば、タフマー「BL2491M」、タフマー「BL2481M」、アブソートマー「EP1001」、アブソートマー「EP1013」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマー(α)は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、切削屑の低減効果を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0031】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、熱可塑性樹脂フィルムへの柔軟性の付与や、フィルムを得る際の製膜性の観点から、前述したオレフィン系エラストマー(α)以外のオレフィン系エラストマーを添加することもできる。
当該オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、ウェルネクス「RFX4V」、ウェルネクス「RFG4VM」、ウェルネクス「RMG02」(以上、日本ポリプロ社製)、キャタロイ「C200F」(以上、サンアロマー社製)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマー(α)以外のオレフィン系エラストマーについても、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、切削屑の低減効果を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、柔軟性の付与や切削屑の低減を目的として、スチレン系エラストマーを含有させることができる。
スチレン系エラストマーとしては、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロック(以下、スチレン成分)で、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0033】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
【0034】
スチレン系エラストマーのメルトフローレート(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレートが0.1g/10分以上、10g/10分以下であれば、前述した樹脂との相溶性がよく、製膜性の点で好ましい。
【0035】
前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン成分の含有量は40質量%以上であることが好ましい。スチレン成分の含有量が40質量%以上であれば、得られるフィルムの取扱い性や柔軟性を損なうことがなく、且つダイシングブレードにてフィルムを切削した際の切削屑の発生を低減させることが可能となるため好ましい。より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
スチレン成分の含有量およびそれ以外の成分の含有量は、H-NMRや13C-NMRを用いることにより測定することができる。ここで、「スチレン成分の含有量」とは、スチレン系エラストマーの質量を基準としてスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0036】
スチレン成分の含有量が40%以上であるスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフテックH1051、タフテックH1517、タフテックH1043(以上、旭化成社製)、セプトン2104、(以上、クラレ社製)、ダイナロン9901P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、切削屑の低減効果を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
また、前述したスチレン成分が40質量%以上であるものに加えて、スチレン成分が40質量%以下のスチレン系エラストマーをさらに添加することも可能である。得られるフィルムを切削した際の切削屑の発生の悪化することがなく、且つ引張弾性率や引張破断伸度を損なわない程度に、スチレン成分40質量%以下のスチレン系エラストマーの添加量を適宜選択することができる。
【0037】
<その他の樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、前述したオレフィン系エラストマー、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、スチレン系エラストマー以外にも耐熱性や柔軟性を損なわない範囲でその他の樹脂を添加することができる。その他の樹脂としては、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0038】
ポリメチルペンテン系樹脂としては、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を用いることが好ましい。具体例としては、ポリプロピレン系樹脂についてプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα-オレフィンと4-メチルペンテン-1との共重合体を挙げることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα-オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
【0039】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには帯電防止性や耐熱性、耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0040】
高分子型帯電防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
【0041】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0042】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0043】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0044】
<熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムであって、中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、以下を満たすオレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムである。
(1)オレフィン系エラストマー(α):
オレフィン系エラストマー(α)のみからなるフィルムの引張破断伸度が600%以下を示す。
オレフィ系エラストマー(α)を所定量含有することにより、得られるフィルムの破断伸度を低下させることが可能となり、よって、ダイシングブレードを用いてフィルムが切削される際にも、フィルムが繊維状の切削屑を形成する前に破断させることが容易となり、ブレードとフィルムが接触し引き伸ばされることで発生する繊維状の切削屑の抑制が可能となる。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなる。少なくとも3層からなるフィルムとすることにより、表層、裏層、中間層の各層に特徴を持たせることも可能であり、いずれかの層のみに特徴を付与するといった調整が容易となる。さらに、中間層が2以上の多層から構成されていてもよい。その場合には、得られる熱可塑性フィルムは4層以上からなるフィルム構成となる。
【0046】
表層、裏層、中間層の各層の厚みは、表層および裏層のそれぞれが熱可塑性樹脂フィルムの総厚みの1~20%の範囲内であり、中間層が60~98%の範囲内であることが好ましい。表層、裏層、中間層の各層の厚みを上記の範囲内とすることにより、複数の層からなるフィルムを安定して生産することが可能となる。より好ましくは表層および裏層が2~18%、中間層が64~96%の範囲内、さらに好ましくは表層および裏層が4~16%、中間層が68~92%の範囲内である。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中に、オレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%含有することを必須とするが、表層、裏層、中間層の各層を構成する熱可塑性樹脂組成物には、それぞれオレフィン系エラストマー(α)を含有させることが好ましく、更に、表層、裏層、中間層の各層を構成する熱可塑性樹脂組成物には、それぞれ前述したポリオレフィン系樹脂及びオレフィン系エラストマー(α)を含有させることが好ましい。各層にポリオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマー(α)を含有されることにより、必要な性能の付与が容易となり、いずれの層にも切削屑を低減させる効果を付与することが可能となる。
また、中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中には、ポリオレフィン系樹脂を20~70質量%、オレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~40質量%含有させることが好ましい。用いる熱可塑性樹脂を前述の比率で含有させることにより、得られるフィルムの引張弾性率と破断伸度の調整が容易となる。より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を20~65質量%、オレフィン系エラストマー(α)を35~75質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~35質量%、さらに好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を20~60質量%、オレフィン系エラストマー(α)を40~70質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~30質量%の範囲内である。
【0048】
表層および裏層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中には、ポリオレフィン系樹脂を50~90質量%、オレフィン系エラストマー(α)を10~40質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~30質量%含有させることが好ましい。用いる熱可塑性樹脂を前述の比率で含有させることにより、フィルムを製膜する際の搬送ロールへのフィルムの貼りつきが低減される、フィルム同士のブロッキングを抑制することが容易となる。より好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を60~95質量%、オレフィン系エラストマー(α)を5~35質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~35質量%、さらに好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を70~100質量%、オレフィン系エラストマー(α)を0~30質量%、その他の熱可塑性樹脂を0~30質量%の範囲内である。
ここで、表層および裏層を構成するそれぞれの樹脂組成物中の各樹脂成分の種類及び含有量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
さらに、中間層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量が、表層および裏層を構成する樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(α)の含有量よりも多いことが好ましい。中間層にオレフィン系エラストマー(α)を多く含有させることにより、得られるフィルムの各種物性の調整を行いつつ、切削屑の低減効果を付与することが容易となり、且つ複数の層からなるフィルムを安定して生産することが可能となる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、柔軟性の付与や切削屑の低減を目的として、前述したスチレン系エラストマーを含有させることができる。スチレン系エラストマーは、中間層に含有させることが好ましい。この場合、中間層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中には、ポリオレフィン系樹脂を20~70質量%、オレフィン系エラストマー(α)を30~80質量%、スチレン系エラストマーを0~40質量%含有させることが好ましい。
また、スチレン系エラストマーは、表層、裏層の少なくとも1層に含有させることもできる。この場合、表層及び/又は裏層を構成する樹脂組成物中の熱可塑性樹脂100質量%中には、ポリオレフィン系樹脂を50~90質量%、オレフィン系エラストマー(α)を10~40質量%、スチレン系エラストマーを0~30質量%含有させることが好ましい。
ここで、表層および裏層を構成するそれぞれの樹脂組成物中の各樹脂成分の種類及び含有量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの総厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、250μm以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。本発明のフィルムの厚みは、より好ましくは40~200μm、さらに好ましくは50~150μmである。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの引張破断伸度は、100~700%の範囲内であることが好ましい。引張破断伸度を100~700%の範囲内とすることで、フィルムに粘着加工等を施す場合においても破断による不具合が抑制でき、且つフィルムをダイシングブレードにて切削した際の切削屑の低減が期待できる。より好ましくは100~680%の範囲内、さらに好ましくは100~660%の範囲内である。
【0053】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの引張弾性率は、100~700MPaの範囲内であることが好ましい。100~700MPaの範囲内であればフィルムが柔軟すぎず、取扱い性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは120~680MPaの範囲内、さらに好ましくは140~660MPaの範囲内である。
【0054】
本発明のフィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0055】
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の表層に用いられる樹脂組成物を表裏の一方の面のみとすることも、表裏の両面とすることも可能となる。また、表層、裏層、中間層に用いる樹脂組成物を全て同一のものとし、実質的に単一の層のフィルムとすることもできる。表層、裏層および中間層からなる少なくとも3層からなるフィルムとすることが、得られるフィルムの引張破断伸度や引張弾性率、その他の機能を付与することが容易となることから、より好ましい。
【0056】
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0057】
<粘着フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、表裏の少なくとも片方の面に粘着剤層を設けることで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層に用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0058】
粘着剤層を設けるには、熱可塑性樹脂フィルム上に粘着剤を直接コーティングすることにより設けることもできる。また、離型層を有するセパレータ等に粘着剤層を積層し、その粘着剤層側を本発明の熱可塑性樹脂フィルムの表層に貼り合わせ、粘着剤層を転写することにより設けることもできる。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を設ける前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、フィルムと粘着剤層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
【0059】
粘着剤層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明のフィルムは、取扱い性やエキスパンド性に優れるだけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減し、切削屑に起因する不具合を抑制することの可能なフィルムである。
さらに、該フィルムに粘着剤層を積層することで粘着フィルムを得ることも可能であり、該粘着フィルムを半導体製造工程用にも好適に用いることができる。
【実施例0060】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0061】
[使用材料]
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーを以下に示す通り用いた。
<ランダムポリプロピレン>
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:7.5g/10分、結晶融解ピーク:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
<ホモポリプロピレン>
住友化学社製、「FLX80H5」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:8.0g/10分、結晶融解ピーク:162℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
<ポリエチレン系樹脂>
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500」(低密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.0g/10分、結晶融解ピーク:106℃、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
<オレフィン系エラストマー(α-1)>
三井化学社製、「タフマーBL2491M」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:9.0g/10分、結晶融解ピーク:100℃、単独フィルムの引張弾性率:230MPa)
<オレフィン系エラストマー(α-2)>
三井化学社製、「アブソートマーEP1001」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:10.0g/10分、単独フィルムの引張弾性率:240MPa)
<オレフィン系エラストマー(β)>
日本ポリプロ社製、「RFG4VM」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:6.0g/10分、結晶融解ピーク:129℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
<スチレン系エラストマー>
旭化成社製、「タフテックH1043」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:2.0g/10分、スチレン成分含有量:67質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
【0062】
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂を合計で100質量部となるように配合を行った。また、2種類以上を用いる際はドライブレンドにより混合し、目視にて均一に混合できていることを確認した。
【0063】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーに各樹脂組成物を投入し、各押出機の押出機温度を1900~230℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210~230℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約80μmの2種3層となる複層のフィルムを得た。
本発明では、得られたフィルムの鏡面上の冷却ロール側の面を表層と表現している。
また、オレフィン系エラストマーのみからなるフィルムについては、1種3層となる実質的に単層のフィルムとし、厚みは80μmとなるよう設定した。
【0064】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。
【0065】
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0066】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0067】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
また、オレフィン系エラストマーのみからなるフィルムについても上記の測定方法と同様に行った。
【0068】
[実施例1]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマー(α-1)を用いた。各樹脂の配合量は表1に記載の通りとし、樹脂組成物を調製した。また、オレフィン系エラストマー(α-1)のみからなるフィルムの引張破断伸度は450%であった。
上記の各樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムは、中間層に引張破断伸度が600%以下のオレフィン系エラストマー(α-1)を60質量%含有しており、得られたフィルムの引張破断伸度は640%であり、700%以下の引張破断伸度を示したことから、切削された際の切削屑の発生を抑制できるものであると推察される。また、引張弾性率は340MPaであることから、十分な柔軟性を有し、取扱い性も良好なものであることが確認された。
よって、本フィルムはダイシングブレードにより切削された際にも切削屑の発生が抑制されており、且つ良好な柔軟性を備えた取扱い性にも優れるフィルムであることが確認された。
【0069】
[実施例2]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマー(α-1)およびオレフィン系エラストマー(α-2)を用いた。各樹脂の配合量は表1に記載の通りとし、樹脂組成物を調製した。また、オレフィン系エラストマー(α-1)のみからなるフィルムの引張破断伸度は450%、オレフィン系エラストマー(α-2)のみからなるフィルムの引張破断伸度は340%であった。
上記の各樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムは、中間層に引張破断伸度が600%以下のオレフィン系エラストマー(α-1)およびオレフィン系エラストマー(α-2)を合計で62質量%含有しており、得られたフィルムの引張破断伸度は660%であり、700%以下の引張破断伸度を示したことから、切削された際の切削屑の発生を抑制できるものであると推察される。また、引張弾性率は330MPaであることから、十分な柔軟性を有し、取扱い性も良好なものであることが確認された。
よって、本フィルムはダイシングブレードにより切削された際にも切削屑の発生が抑制されており、且つ良好な柔軟性を備えた取扱い性にも優れるフィルムであることが確認された。
【0070】
[実施例3]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマー(α-1)およびスチレン系エラストマーを用いた。各樹脂の配合量は表1に記載の通りとし、樹脂組成物を調製した。また、オレフィン系エラストマー(α-1)のみからなるフィルムの引張破断伸度は450%であった。
上記の各樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムは、中間層に引張破断伸度が600%以下のオレフィン系エラストマー(α-1)を50質量%含有し、さらにスチレン成分の含有量が67%のスチレン系エラストマーを12質量%含有しており、得られたフィルムの引張破断伸度は660%であり、700%以下の引張破断伸度を示したことから、切削された際の切削屑の発生を抑制できるものであると推察される。また、引張弾性率は410MPaであることから、十分な柔軟性を有し、取扱い性も良好なものであることが確認された。
よって、本フィルムはダイシングブレードにより切削された際にも切削屑の発生が抑制されており、且つ良好な柔軟性を備えた取扱い性にも優れるフィルムであることが確認された。
【0071】
[比較例1]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよびオレフィン系エラストマー(α-1)を用いた。各樹脂の配合量は表1に記載の通りとし、樹脂組成物を調製した。また、オレフィン系エラストマー(α-1)のみからなるフィルムの引張破断伸度は450%であった。
上記の各樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムは、引張弾性率は300MPaであり、取扱い性には優れると考えられる。しかしながら、中間層に引張破断伸度が600%以下のオレフィン系エラストマー(α-1)を含有するものの、25質量%しか含有していないことから、得られたフィルムの引張破断伸度は780%であり、700%を上回る引張破断伸度を示した。
よって、本フィルムは取扱い性には優れるものの、引張破断伸度が大きく、ダイシングブレードにより切削された際に発生する切削屑を抑制することが困難であると推察されることから、フィルムの切削を伴う半導体製造工程用のフィルムとしては適していないものであると考えられる。
【0072】
[比較例2]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマー(β)を用いた。各樹脂の配合量は表1に記載の通りとし、樹脂組成物を調製した。また、オレフィン系エラストマー(β)のみからなるフィルムの引張破断伸度は750%であった。
上記の各樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムは、引張弾性率は390MPaであり、取扱い性には優れると考えられる。しかしながら、中間層に引張破断伸度が600%以上のオレフィン系エラストマー(β)を含有するため、フィルムの引張破断伸度は760%であり、700%を上回る引張破断伸度を示した。
よって、本フィルムは取扱い性には優れるものの、引張破断伸度が大きく、ダイシングブレードにより切削された際に発生する切削屑を抑制することが困難であると推察されることから、フィルムの切削を伴う半導体製造工程用のフィルムとしては適していないものであると考えられる。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例4]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
作製したセパレータの粘着剤層側の面を実施例1で得られたフィルムの表層側の面に貼り合わせることで本発明のフィルムと粘着剤層とが積層された粘着フィルムを得た。
本粘着フィルムを半導体製造工程用粘着フィルムとして用いることで、本粘着フィルムをダイシングブレードにより切削した際にも切削屑の発生が抑制され、半導体製造工程において切削屑に起因する不良を抑制することが可能となると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明により、取扱い性やエキスパンド性に優れるだけでなく、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハや回路の形成されたパッケージ状のウエハをチップ状に個片化する際に、ブレードにより切削されたフィルムから発生する切削屑を低減し、切削屑に起因する不具合を抑制することの可能なフィルムを提供することが可能となる。
また、該フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも可能となる。