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特開2024-18389計測装置、検査システムおよび計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018389
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】計測装置、検査システムおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121706
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿路川 雄介
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065FF04
2F065FF06
2F065HH06
2F065HH07
2F065HH12
2F065HH14
2F065JJ05
2F065JJ08
2F065QQ21
2F065QQ31
2F065SS04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】穴や金属などのように、拡散反射しない部分を有する計測対象については測定誤りを生じやすいため、例えば基板などを計測対象とした計測装置や検査装置では、測定誤りの抑制が求められる。
【解決手段】計測装置は、対象物に特定パターンの光を照射する照射部と、上記照射部により光が照射された上記対象物を撮影する撮影部と、パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分部と、上記照射部と上記撮影部とを用いて上記対象物の3次元形状を計測し、上記第1領域と上記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に特定パターンの光を照射する照射部と、
前記照射部により光が照射された前記対象物を撮影する撮影部と、
パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分部と、
前記照射部と前記撮影部とを用いて前記対象物の3次元形状を計測し、前記第1領域と前記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測部と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記第2領域内の3次元形状が計測できなかった箇所について、当該第2領域内で計測できた3次元形状に基づいて形状を補完する補完部を更に備える請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記領域区分部は、前記第2領域について更に、穴に対応した領域部分と、穴以外に対応した領域部分とに分け、
前記補完部は、前記穴以外に対応した領域部分について補完を行う請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記照射部は、前記第1領域と前記第2領域とで異なるパターンの光を照射する請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記計測部は、前記第1領域について位相シフト法によって3次元形状を計測し、前記第2領域について光切断法によって3次元形状を計測する請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記領域区分部は、カラー画像の前記撮影画像に基づいて前記第1領域と前記第2領域とを分ける請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記領域区分部は、ディープラーニングの学習モデルによって前記第1領域と前記第2領域とを分ける請求項1に記載の計測装置。
【請求項8】
前記照射部および前記撮影部は、前記撮影画像の取得にも用いられる請求項1に記載の計測装置。
【請求項9】
前記照射部は、前記撮影画像の取得に際し、前記対象物に対して複数方向から光を照射する請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の計測装置と、
前記計測装置によって計測された3次元形状で前記対象物を検査する検査装置と、
を備える検査システム。
【請求項11】
パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分ステップと、
前記対象物に特定パターンの光を照射する照射部、および、当該特定パターンの光が照射された当該対象物を撮影する撮影部を用いて当該対象物の3次元形状を計測し、前記第1領域と前記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測ステップと、
を有する計測装置における計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、検査システムおよび計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測対象の3次元形状を計測する計測装置として、計測対象に対して特定のパターンで光を照射し、光が照射された箇所などを撮影して3次元形状を計測する計測装置がある。また、計測された形状で計測対象の検査を行う検査システムがある。
例えば特許文献1には、クリームハンダの三次元計測に際し、プリント基板の表面に対し斜め上方から所定の光パターンを照射し、プリント基板上の光パターンの照射された部分を撮影する検査装置について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-284215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、穴や金属などのように、拡散反射しない部分を有する計測対象については測定誤りを生じやすいため、例えば基板などを計測対象とした計測装置や検査装置では、測定誤りの抑制が求められる。
そこで、本開示は、計測誤りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る計測装置は、対象物に特定パターンの光を照射する照射部と、上記照射部により光が照射された上記対象物を撮影する撮影部と、パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分部と、上記照射部と上記撮影部とを用いて上記対象物の3次元形状を計測し、上記第1領域と上記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測部と、を備える。
本開示に係る検査システムは、上記計測装置と、上記計測装置によって計測された3次元形状で前記対象物を検査する検査装置と、を備える。
本開示に係る計測方法は、パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分ステップと、上記象物に特定パターンの光を照射する照射部、および、当該特定パターンの光が照射された当該対象物を撮影する撮影部を用いて当該対象物の3次元形状を計測し、上記第1領域と上記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、計測誤りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る検査システムのシステム構成を模式的に示す図である。
図2図2は、カメラとプロジェクタの配置例を示す概略平面図である。
図3図3は、カメラとプロジェクタの配置の変形例を示す図である。
図4図4は、図1に示す検査システムにおける機能構成を示す図である。
図5図5は、検査システムにおける前処理を示すフローチャートである。
図6図6は、3次元形状の計測処理を示すフローチャートである。
図7図7は、前処理と計測処理の具体例を示す図である。
図8図8は、補完処理の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の計測装置、検査システムおよび計測方法の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0009】
図1は、本実施形態に係る検査システム1のシステム構成を模式的に示す図である。
検査システム1は、パーソナルコンピュータ(PC)10と、コントローラ20と、複数のカメラ30と、複数のプロジェクタ35とを備える。
PC10はコントローラ20に、対象物の3次元形状を計測するための投光パターンを指示するとともに当該投光パターンによる投光中の撮影を指示する。
【0010】
コントローラ20は、プロジェクタ35を制御して、PC10によって指示された投光パターンによる対象物への投光を実行させ、カメラ30を制御して、投光中の対象物の撮影を実行させる。コントローラ20は、カメラ30から撮影画像を入手してPC10へと送る。
【0011】
PC10は、コントローラ20から送られてくる撮影画像に基づいて対象物の3次元形状を計測し、計測した形状に基づいて対象物を検査する。
検査システム1における3次元形状の計測方法としては、複数の計測方法が用意され、それらの計測方法がPC10によって適宜に使い分けられる。使い分けの詳細については後述する。
【0012】
図2は、カメラ30とプロジェクタ35の配置例を示す図である。
図2には、一例として、4台のカメラ30と4台のプロジェクタ35が備えられる場合の配置例が示される。カメラ30とプロジェクタ35は、異なる数が備えられてもよい。
【0013】
図2に示す例では、ワークと称される対象物Wが載置されるステージSの上方に、4方向それぞれから対象物Wに光Lを照射する4台のプロジェクタ35が配備される。プロジェクタ35は、対象物Wの3次元形状の計測方式に応じた特定パターンの光Lを対象物Wに照射する。そして、4台のプロジェクタ35の相互間に4台のカメラ30が配備される。図2では、4台のカメラ30が、4台のプロジェクタ35による光Lの照射方向とは異なる4方向それぞれから対象物Wを撮影する
【0014】
カメラ30は、プロジェクタ35により光が照射された対象物Wを撮影する。プロジェクタ35による投光方向は、例えば図2の上下左右それぞれ方向であり、カメラ30による撮影方向は、例えば図2の右上、右下、左上および左下それぞれの方向である。
カメラ30は一例としてモノクロカメラであり、プロジェクタ35は、一例としてR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)それぞれの色で投光可能である。また、プロジェクタ35は、コントローラ20による制御によって、各計測方式に対応した投光パターンで光Lを対象物Wに照射することができる。投光パターンとしては、例えば、位相シフト法における空間コード化された位相シフトパターンや、光切断法における白線パターンが用いられる。
【0015】
カメラ30およびプロジェクタ35は、3次元形状を計測するための投光および撮影のみならず、対象物Wの2次元画像としてのカラー画像の撮影も可能である。カラー画像の撮影に際してプロジェクタ35は対象物Wに、パターン化されていない光を照射する。
対象物Wの2次元画像は、3次元形状の計測用とは別のカメラによって撮影されてもよいが、本実施形態では、3次元形状の計測に用いられるカメラ30およびプロジェクタ35が2次元画像の取得にも用いられる。カメラ30およびプロジェクタ35の兼用により、装置構成の簡素化が図られる。
【0016】
図1に示す検査システム1では複数のカメラ30と複数のプロジェクタ35が備えられるが、カメラ30およびプロジェクタ35は、双方もしくは一方が検査システム1に1台備えられてもよい。
【0017】
図3は、カメラ30とプロジェクタ35の配置の変形例を示す図である。
図3には、一例として、1台のカメラ30と4台のプロジェクタ35が備えられる場合の配置例が示される。図3に示す例では、4方向それぞれから対象物Wに光Lを照射する4台のプロジェクタ35がステージSの上方に配備され、対象物Wを真上から撮影する1台のカメラ30が配備される。
【0018】
以下では、図2に示す配置例でカメラ30とプロジェクタ35が配備されるものとして説明を続ける。
図4は、図1に示す検査システム1における機能構成を示す図である。
PC10は機能構成として、特徴領域検出部11と、計測方式制御部12と、高さ算出部13と、補完部14と、良否判定部15とを備える。
【0019】
特徴領域検出部11は、対象物W上で拡散反射しない特徴領域を、対象物Wの2次元画像から検出する。特徴領域検出部11は、コントローラ20に対して2次元画像の撮影を指示し、コントローラ20から転送されてくる対象物Wの2次元画像を取得して特徴領域を検出する。言い換えると特徴領域検出部11は、パターン化されていない光が照射された対象物Wの撮影画像に基づいて、当該対象物Wの領域を、拡散反射する通常領域と、拡散反射しない特徴領域とに分ける。
【0020】
特徴領域検出部11は、対象物Wの撮影画像のうち、カラー画像の撮影画像に基づいて通常領域と特徴領域とを分ける。カラー画像はモノクロ画像よりも対象物Wにおける反射の特性が区別しやすいからである。また、特徴領域検出部11は、ディープラーニングの学習モデルによって通常領域と特徴領域とを分ける。ディープラーニングの学習モデルが用いられることによって通常領域と特徴領域とが精度よく区分される。
【0021】
計測方式制御部12は、3次元形状の計測方式を対象物Wの領域毎に制御し、特徴領域であるか否かによって計測方式を切り替える。そして、計測方式制御部12は、計測方式に応じた投光パターンをコントローラ20に指示する。
高さ算出部13は、対象物Wの2次元位置それぞれについて対象物Wの高さを算出することで対象物Wの3次元形状を計測する。高さ算出部13は、コントローラ20から撮影画像の転送を受け、計測方式によっては投光時の空間コードも入手して、撮影画像および空間コードに基づいて対象物Wの高さを算出する。
【0022】
つまり、計測方式制御部12および高さ算出部13は、カメラ30とプロジェクタ35とを用いて対象物Wの3次元形状を計測し、通常領域と特徴領域とでは異なる計測方式を用いる。
補完部14は、対象物Wの2次元位置のうち、高さ算出部13で高さが検出できなかった箇所について、当該箇所の周囲で計測された高さに基づいて補完を行う。対象物Wに開いている穴が補完によって潰れることの無いように、後述するように補完部14では、補完対象となる箇所の選択が行われる。
【0023】
良否判定部15では、対象物Wの3次元形状に基づいて対象物Wに対する良否判定が行われる。例えば基板の検査においては半田形状の良否などが判定される。判定の具体的な手法については従来周知の任意の手法が採用されるものとして詳細説明は省略する。
検査システム1における3次元形状の計測においては、基板のように穴や金属部分などを有する対象物Wについても計測誤りの少ない計測を実現するために、対象物Wの各領域における光の反射状態に応じて計測方式が切り替えられる。計測方式の切り換えの準備として、検査システム1では以下説明する前処理が実行される。
【0024】
図5は、検査システム1における前処理を示すフローチャートである。図5に示す前処理は、PC10の特徴領域検出部11によって実行される。
前処理が開始されると、まず、対象物Wの2次元画像としてカラー画像が撮影される(S101)。検査システム1のカメラ30はモノクロカメラなので、検査システム1では、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)それぞれの光による撮影が行われる。そして、各撮影画像が組み合わされることにより、疑似的にカラー画像が得られる。また、2次元画像の撮影に際しては、4つのプロジェクタ35による4つの投光方向全部から同時に光Lが対象物Wに照射され、4つのカメラ30それぞれで撮影が行われる。つまり、プロジェクタ35は、2次元画像の取得に際し、対象物Wに対して複数方向から光を照射する。複数方向からの投光により、2次元画像上で、拡散反射か否かの判定や穴の有無の判定が容易となる。
【0025】
次に、4つのプロジェクタ35による4つの投光方向それぞれの光Lによってモノクロ画像が撮影される(S102)。モノクロ画像は、1つの投光方向に対して4つのカメラ30それぞれで撮影が行われる。このため、モノクロ画像は合計で4×4=16個得られる。
【0026】
カラー画像とモノクロ画像が得られると、対象物W上の特徴領域が検出される(S103)。特徴領域は、対象物W上で拡散反射しない領域であり、カラー画像に対して周知の画像分析が施されることで特徴領域が検出される。特徴領域を検出する画像分析としては、例えば、深層学習を含む機械学習で得られる学習モデルによる分析や、画像上の特徴量による画像分析などが採用可能である。
【0027】
なお、本実施形態では、特徴領域内の、16個のモノクロ画像の全てで黒潰れを生じた箇所については、穴領域として処理される。つまり、S103では、特徴領域について更に、穴に対応した領域部分と、穴以外に対応した領域部分とに分けられる。また、カメラ30とプロジェクタ35との16種類の組み合わせのうち、画像中に白飛びを生じていないか白飛びが最も少ない組み合わせが、3次元形状の計測用の組み合わせとして選択される。
【0028】
図5に示す前処理が終了すると、3次元形状の計測が行われる。
図6は、3次元形状の計測処理を示すフローチャートである。
3次元形状の計測処理が開始されると、拡散反射する通常領域に対し、空間コード化された位相シフト法で計測が行われる(S201)。通常領域に対する空間コード化された位相シフト法の適用は、PC10の計測方式制御部12による計測方式の切り換えによって実現される。
【0029】
また、S201で高さ算出部13は、位相シフト法に従って対象物Wの通常領域の各所について高さを算出することで、通常領域における3次元形状を計測する。対象物Wの通常領域では、位相シフト法が苦手とする鏡面反射を生じないため、当該領域における3次元形状が位相シフト法によって精度よく計測される。なお、S201では、カメラ30とプロジェクタ35との上述した組み合わせが用いられることで白飛びが回避されて精度の良い計測が実現される。
【0030】
S201の計測が終了すると、次に、特徴領域について光切断法で計測が行われる(S202)。特徴領域では鏡面反射などが生じるが、光切断法は鏡面反射による白飛びに強いため、光切断法によって特徴領域における3次元形状が精度よく計測される。
S201における通常領域の計測と、S202における特徴領域の計測とで計測方式が切り替えられることにより、各領域の反射特性に応じた計測方式で精度の良い計測が実現される。
【0031】
S201とS202に関する上記説明では、領域と計測方式との望ましい組み合わせが例示される。即ち、通常領域について位相シフト法によって3次元形状が計測され、特徴領域について光切断法によって3次元形状が計測される。
但し、領域と計測方式との組み合わせは上記に限定されるものではない。例えば、空間コード化された位相シフトを基本として、領域に応じて投光パターンが変更されてもよい。また、特徴領域については、固定の計測方式や投光パターンに替えて、あらかじめ用意された複数種類の計測方式や投光パターンのうち、特徴領域での反射特性に応じた計測方式や投光パターンが選択されてもよい。例えば、特徴領域の鏡面反射を生じる箇所では、撮影の露光時間が下げられてもよいし、多重反射を生じる箇所では投光パターンにマスクが適用されてもよい。
【0032】
S201およびS202による計測が終了すると、特徴領域内で計測できなかった箇所、即ち高さが算出不能だった箇所について、当該箇所の周囲で算出された高さから当該箇所の高さが補完で求められる(S203)。言い換えると、特徴領域内の3次元形状が計測できなかった箇所について、当該特徴領域内で計測できた3次元形状に基づいて形状が補完される。計測できなかった箇所としては、例えば、鏡面反射の白飛びが避けられなかった箇所などが考えられる。
【0033】
補完により、白飛びなどで計測不能となった箇所についても高さの情報が得られ、対象物Wにおける欠けの無い3次元形状が得られる。また、S203の補間では、図5に示す前処理で検出された穴領域については補完対象から除外され、穴以外に対応した領域部分について補完が行われる。これにより、対象物Wに開いている穴が補完で塞がってしまう不具合が回避される。
【0034】
図7は、前処理と計測処理の具体例を示す図である。
図7に示す例では、対象物Wの一例として電子基板が用いられる。図7の左上には、前処理で得られたカラー画像40が示される。カラー画像40の解析により、カラー画像40上の各領域(即ち対象物W上の各領域)が、特徴領域41と通常領域43とに分けられる。特徴領域41としては、例えば電子基板上の半田箇所などが該当する。また、カラー画像40上には、モノクロ画像の解析で得られた穴領域42も示される。なお、本実施形態では、撮影画像中の、対象物Wから外れた領域(例えば図7で通常領域43の上方に位置する領域)も穴領域42として処理される。
【0035】
図7の上段中央に示すように、対象物Wの計測に際しては、まず、特徴領域41以外の全領域を対象として、空間コード化された位相シフトパターン51が投光され、位相シフト法による計測が行われる。次に、図7の右上に示されるように、特徴領域41の一部について白線パターン52が投光され、光切断法による計測が行われる。特徴領域41に対する投光方向と撮影方向との組み合わせについては、鏡面反射をできるだけ避けた組み合わせが用いられる。
【0036】
投光方向と撮影方向との適切な組み合わせが特徴領域41毎に異なることや、他の特徴領域41から反射された投光パターンの映り込みを避けることなどから、図7の右下から左下に示すように、特徴領域41が複数のグループに分けられて順次に計測される。特徴領域41のグループごとに投光パターンの照度が調整されてもよい。
【0037】
特徴領域41と通常領域43とで異なるパターンの光が照射されることにより、特徴領域41と通常領域43それぞれにおける反射の特性に応じた投光が可能となり、3次元形状が精度良く計測される。
【0038】
図8は、補完処理の具体例を示す図である。
図8の左上には、対象物Wについて計測処理で得られた補間前の形状データ61が示され、左下には、対象物Wについて前処理で得られたカラー画像62が示される。
補間前の形状データ61における一部領域45内には、黒潰れした穴領域42が含まれる。また、補間前の形状データ61における特徴領域41内には、例えばはんだ表面の鏡面反射による非計測個所46が含まれる。
【0039】
特徴領域41は、カラー画像62上で検出され、一部領域45に含まれた穴領域42についてはカラー画像62と上述したモノクロ画像とによって特定される。
図8の右側には補正後の形状データ63が示され、特徴領域41内の非計測個所46が補完されてはんだ47の正しい形状が得られる。これに対して穴領域42には補完が行われないため、正しく穴として残ることになる。
【0040】
なお、ここでは、本発明の計測装置および計測方法における使用方法の一例として検査システムが挙げられるが、本発明の計測装置および計測方法は上記に限定されず、3Dプリント用の3Dスキャンなど広範囲に使用可能である。
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
対象物に特定パターンの光を照射する照射部と、
前記照射部により光が照射された前記対象物を撮影する撮影部と、
パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分部と、
前記照射部と前記撮影部とを用いて前記対象物の3次元形状を計測し、前記第1領域と前記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測部と、
を備える計測装置。
(2)
前記第2領域内の3次元形状が計測できなかった箇所について、当該第2領域内で計測できた3次元形状に基づいて形状を補完する補完部を更に備える(1)に記載の計測装置。
(3)
前記領域区分部は、前記第2領域について更に、穴に対応した領域部分と、穴以外に対応した領域部分とに分け、
前記補完部は、前記穴以外に対応した領域部分について補完を行う(2)に記載の計測装置。
(4)
前記照射部は、前記第1領域と前記第2領域とで異なるパターンの光を照射する(1)~(3)のいずれかに記載の計測装置。
(5)
前記計測部は、前記第1領域について位相シフト法によって3次元形状を計測し、前記第2領域について光切断法によって3次元形状を計測する(1)~(4)のいずれかに記載の計測装置。
(6)
前記領域区分部は、カラー画像の前記撮影画像に基づいて前記第1領域と前記第2領域とを分ける(1)~(5)のいずれかに記載の計測装置。
(7)
前記領域区分部は、ディープラーニングの学習モデルによって前記第1領域と前記第2領域とを分ける(1)~(6)のいずれかに記載の計測装置。
(8)
前記照射部および前記撮影部は、前記撮影画像の取得にも用いられる(1)~(7)のいずれかに記載の計測装置。
(9)
前記照射部は、前記撮影画像の取得に際し、前記対象物に対して複数方向から光を照射する(8)に記載の計測装置。
(10)
(1)から(9)のいずれかに記載の計測装置と、
前記計測装置によって計測された3次元形状で前記対象物を検査する検査装置と、
を備える検査システム。
(11)
パターン化されていない光が照射された対象物の撮影画像に基づいて、当該対象物の領域を、拡散反射する第1領域と、拡散反射しない第2領域とに分ける領域区分ステップと、
前記対象物に特定パターンの光を照射する照射部、および、当該特定パターンの光が照射された当該対象物を撮影する撮影部を用いて当該対象物の3次元形状を計測し、前記第1領域と前記第2領域とでは異なる計測方式を用いる計測ステップと、
を有する計測装置における計測方法。
【符号の説明】
【0041】
1 :検査システム
10 :パーソナルコンピュータ(PC)
11 :特徴領域検出部
12 :計測方式制御部
13 :高さ算出部
14 :補完部
15 :良否判定部
20 :コントローラ
30 :カメラ
35 :プロジェクタ
40 :カラー画像
41 :特徴領域
42 :穴領域
43 :通常領域
51 :位相シフトパターン
52 :白線パターン
W :対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8