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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001839
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】函体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20231227BHJP
   H02B 1/38 20060101ALI20231227BHJP
   H02B 1/44 20060101ALI20231227BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20231227BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20231227BHJP
   B65D 43/16 20060101ALI20231227BHJP
   E05D 7/10 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H05K5/03 C
H02B1/38 B
H02B1/44
H02B3/00 K
F16C11/04 G
B65D43/16 100
E05D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184119
(22)【出願日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022100332
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【テーマコード(参考)】
2E030
3E084
3J105
4E360
5G016
5G211
【Fターム(参考)】
2E030AB01
2E030BB01
2E030JA01
2E030JB01
2E030JC01
3E084AA05
3E084AA14
3E084AA24
3E084AB10
3E084BA01
3E084BA03
3E084CA03
3E084CC03
3E084DA03
3E084DB14
3E084DC03
3E084FA07
3E084GA06
3E084GB06
3E084GB21
3E084LD30
3J105AA04
3J105AB02
3J105AB24
3J105AC10
3J105BA06
3J105BC02
4E360AB08
4E360AB51
4E360BA08
4E360BB02
4E360BB12
4E360BB17
4E360BB22
4E360BB23
4E360BD03
4E360BD05
4E360EA12
4E360EA21
4E360EB02
4E360EC04
4E360EC05
4E360EC12
4E360EC14
4E360EC16
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED04
4E360ED17
4E360ED23
4E360ED28
4E360GA02
4E360GA04
4E360GA07
4E360GA08
4E360GA53
4E360GB94
4E360GC08
5G016CC08
5G211AA12
5G211BB09
5G211DD01
5G211DD04
(57)【要約】
【課題】
本体に対する蓋体の開角が特定角度においてのみ、当該本体と蓋体との着脱を可能に、当該特定角度を除く他の角度では、本体と蓋体との着脱を不能に、両者の分離を防止する。
【解決手段】
蓋壁(蓋体)D1 に設けられた一対の回動支点ピン21a,21bが、周壁(本体)M1 に設けられた一対の支点ピン孔11a,11bに挿入されて、周壁M1 に蓋壁D1 が開閉可能に組み付けられ、周壁M1 と蓋壁D1 に設けられた各移動規制部は、蓋壁D1 の開閉動に伴い互いに当接可能位置と、当接不可位置とに変位可能であって、当接不可位置は、前記蓋壁D1 の開閉動の中間位置であり、当該中間位置において、前記各移動規制部が当接不可となって、周壁M1 と蓋壁D1 とを分離可能な構成とする。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、当該本体に開閉可能に組み付けられて、前記本体の前面開口を覆う蓋体と、から成り、前記本体と前記蓋体の内部に機器類を収容する収容空間を形成する函体であって、
前記本体と前記蓋体のうち一方には、同一軸心上に配置された棒状の一対の軸部が、先端を対向させ、又は反対方向を向いて設けられ、
前記本体と前記蓋体のうち他方には、前記各軸部が挿入される一対の軸挿入部が設けられ、
前記蓋体は、前記各軸部を前記各軸挿入部に挿入することで、前記本体に組み付けられた状態で、前記本体の前面開口を覆う閉位置と、当該前面開口を露出させる開位置との間で、前記各軸部を回動中心として回動可能であり、
前記本体及び前記蓋体には、互いに組み付けられた状態で、前記軸挿入部からの前記軸部の抜出し移動を規制して、前記本体と前記蓋体とを分離不能とする移動規制部がそれぞれ設けられ、
前記本体側及び蓋体側の各移動規制部は、当該蓋体の開閉動に伴い互いに当接可能となる位置と、当接不可となる位置とに変位可能であり、
前記当接不可となる位置は、前記蓋体の前記閉位置と前記開位置との中間であり、
前記各移動規制部が当接不可となる位置で、前記蓋体を前記本体に対して相対移動させることで、前記各軸部を前記各軸挿入部から抜出し移動させて、前記本体と前記蓋体とを分離可能とし、
前記移動規制部は、前記閉位置から前記途中の位置までの間に当接可能な位置となる前半移動規制部と、前記途中の位置から前記開位置までの間に当接可能となる後半移動規制部とから成り、前記蓋体が前記途中の位置を除く、その他の位置に配置された場合には、前記各軸挿入部からの前記各軸部の抜け出しが規制される構成であることを特徴とする函体。
【請求項2】
前記一対の軸部のうち、本体と蓋体との分離時に軸挿入部から先に抜け出し移動させる側の軸部は、他方の軸部よりもその軸長が短いことを特徴とする請求項1に記載の函体。
【請求項3】
前記前半移動規制部及び後半移動規制部は、いずれも前記一対の軸部のいずれかに近接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の函体。
【請求項4】
本体と、当該本体に開閉可能に組み付けられて、前記本体の前面開口を覆う蓋体と、から成り、前記本体と前記蓋体の内部に機器類を収容する収容空間を形成する函体であって、
前記本体と前記蓋体のうち一方には、同一軸心となる棒状の複数の軸部が、先端を同一方向に向けて所定間隔をおいて設けられ、
前記本体と前記蓋体のうち他方には、前記各軸部が挿入される複数の軸挿入部が設けられ、
前記蓋体は、前記各軸部を前記各軸挿入部に挿入することで、前記本体に組み付けられた状態で、前記本体の前面開口を覆う閉位置と、当該前面開口を露出させる開位置との間で、前記各軸部を回動軸心として回動可能であり、
前記本体及び前記蓋体には、互いに組み付けられた状態で、前記軸挿入部からの前記軸部の抜出し移動を規制して、前記本体と前記蓋体とを分離不能とする移動規制部がそれぞれ設けられ、
前記本体及び蓋体に設けられた各移動規制部のうち、一方の移動規制部は、スライド当接体で構成され、当該スライド当接体は、スライドさせることで、他方の移動規制部に当接可能な位置と、当接不可となる位置とに変位可能であり、
前記スライド当接体が当接不可となる位置に配置された状態で、前記蓋体を前記本体に対し回動させることで、当該回動方向に沿った特定の1箇所においてのみ、前記蓋体の各軸部を前記本体の各軸挿入部から抜出し移動させることで、前記本体と前記蓋体とが分離可能となる構成であることを特徴とする函体。
【請求項5】
前記本体と前記蓋体には、当該蓋体の回動方向に沿って互いに当接して、当該蓋体の最大開位置を定める開き止め部が設けられ、
前記開き止め部には、前記蓋体の前記閉位置と前記開位置との間の特定位置で、前記軸部の抜け出し方向への移動を許容する部位と、その他の位置において、前記抜け出し方向への移動を規制するように互いに当接する部位とが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の函体。
【請求項6】
前記スライド当接体が当接する移動規制部は、前記軸挿入部に形成され、当該軸挿入部における前記軸部の挿入側と反対側の端面に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の函体。
【請求項7】
前記スライド当接体のスライド方向は、前記一対の軸部の軸心と直交する方向であることを特徴とする請求項4又は5に記載の函体。
【請求項8】
前記スライド当接体は、前記蓋体の裏面に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の函体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、通信機器やブレーカー等の電気機器を収容する配電函として使用される函体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力計等の計器類を収容する収容ボックスは、被固定物に固定されるボックス本体と、当該ボックス本体の開口を閉塞すべく前記ボックス本体にヒンジ連結される蓋体とから成る。蓋体は、ボックス本体に対してヒンジピン31を介して回動可能なようにヒンジ連結されている。
【0003】
蓋体を開けた状態で保守作業を行う場合、開けた状態の蓋体が作業の邪魔になるため、ヒンジピン31を引き抜いて、蓋体を取り外していた。しかし、ヒンジピン31の引き抜き作業がやりにくく、面倒であった。
【0004】
また、上記した収容ボックスは右開き専用であり、左開きにしたい場合、上下反転させて取り付けると、蓋体が脱落してしまうので、このような取り付けはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-78270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本体に対する蓋体の開角が特定角度においてのみ、当該本体と蓋体との着脱を可能に、当該特定角度を除く他の角度では、本体と蓋体との着脱を不能に、両者の分離を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、
本体と、当該本体に開閉可能に組み付けられて、前記本体の前面開口を覆う蓋体と、から成り、前記本体と前記蓋体の内部に機器類を収容する収容空間を形成する函体であって、
前記本体と前記蓋体のうち一方には、同一軸心上に配置された棒状の一対の軸部が、先端を対向させ、又は反対方向を向いて設けられ、
前記本体と前記蓋体のうち他方には、前記各軸部が挿入される一対の軸挿入部が設けられ、
前記蓋体は、前記各軸部を前記各軸挿入部に挿入することで、前記本体に組み付けられた状態で、前記本体の前面開口を覆う閉位置と、当該前面開口を露出させる開位置との間で、前記各軸部を回動中心として回動可能であり、
前記本体及び前記蓋体には、互いに組み付けられた状態で、前記軸挿入部からの前記軸部の抜出し移動を規制して、前記本体と前記蓋体とを分離不能とする移動規制部がそれぞれ設けられ、
前記本体側及び蓋体側の各移動規制部は、当該蓋体の開閉動に伴い互いに当接可能となる位置と、当接不可となる位置とに変位可能であり、
前記当接不可となる位置は、前記蓋体の前記閉位置と前記開位置との中間であり、
前記各移動規制部が当接不可となる位置で、前記蓋体を前記本体に対して相対移動させることで、前記各軸部を前記各軸挿入部から抜出し移動させて、前記本体と前記蓋体とを分離可能とし、
前記移動規制部は、前記閉位置から前記途中の位置までの間に当接可能な位置となる前半移動規制部と、前記途中の位置から前記開位置までの間に当接可能となる後半移動規制部とから成り、前記蓋体が前記途中の位置を除く、その他の位置に配置された場合には、前記各軸挿入部からの前記各軸部の抜け出しが規制される構成であることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明は、本体と蓋体とには、一対の軸部又は当該軸部が挿入される一対の軸挿入部のいずれか一方が、それぞれ設けられて、当該各軸部及び各軸挿入部を介して本体に対して蓋体は、回動可能に連結されている。また、本体と蓋体とには、両者が前記軸部の軸方向に移動して、軸挿入部から軸部が抜け出ることで、本体と蓋体とが分離されるのを防止する移動規制部がそれぞれ設けられていて、蓋体の開閉動の中間の特定位置において、本体と蓋体の各移動規制部が当接不可となる位置が存在していて、前記軸挿入部から軸部が抜け出ることで、本体と蓋体とが分離可能となっていると共に、当該当接不可位置を除く残りの全ての位置においては、本体と蓋体の各移動規制部が互いに当接して、前記軸部の抜け出しが規制されて、本体と蓋体とが分離不能となっている。
【0009】
従って、請求項1の発明によれば、使用時においては、本体と蓋体との分離が確実に防止した上で、何らかの原因で、本体と蓋体とを分離させる必要が生じた場合には、本体に対して蓋体を前記当接不可位置に配置させて、本体と蓋体とを分離させられる。よって、本体と蓋体との分離規制と、その分離との相反する状態を確実に実現できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記一対の軸部のうち、本体と蓋体との分離時に軸挿入部から先に抜け出し移動させる側の軸部は、他方の軸部よりもその軸長が短いことを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、一対の軸部のうち、本体と蓋体との分離時に軸挿入部から抜け出し移動させる側の軸部は、他方の軸部よりもその軸長が短くなっているので、本体に対して蓋体を軸部の軸方向に相対移動させて、両者を分離させる作業が容易となる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記前半移動規制部及び後半移動規制部は、いずれも前記一対の軸部のいずれかに近接して設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記前半移動規制部及び後半移動規制部は、いずれも前記一対の軸部のいずれかに近接して設けられているので、蓋体の開閉動の中間位置に存在する各移動規制部が当接不可位置における本体と蓋体との分離がし易くなると共に、本体と蓋体との分離を規制する各移動規制部が一対の軸部のいずれかに近接しているので、使用中における本体と蓋体との分離防止の効果が高まる。
【0014】
請求項4の発明は、
本体と、当該本体に開閉可能に組み付けられて、前記本体の前面開口を覆う蓋体と、から成り、前記本体と前記蓋体の内部に機器類を収容する収容空間を形成する函体であって、
前記本体と前記蓋体のうち一方には、同一軸心となる棒状の複数の軸部が、先端を同一方向に向けて所定間隔をおいて設けられ、
前記本体と前記蓋体のうち他方には、前記各軸部が挿入される複数の軸挿入部が設けられ、
前記蓋体は、前記各軸部を前記各軸挿入部に挿入することで、前記本体に組み付けられた状態で、前記本体の前面開口を覆う閉位置と、当該前面開口を露出させる開位置との間で、前記各軸部を回動軸心として回動可能であり、
前記本体及び前記蓋体には、互いに組み付けられた状態で、前記軸挿入部からの前記軸部の抜出し移動を規制して、前記本体と前記蓋体とを分離不能とする移動規制部がそれぞれ設けられ、
前記本体及び蓋体に設けられた各移動規制部のうち、一方の移動規制部は、スライド当接体で構成され、当該スライド当接体は、スライドさせることで、他方の移動規制部に当接可能な位置と、当接不可となる位置とに変位可能であり、
前記スライド当接体が当接不可となる位置に配置された状態で、前記蓋体を前記本体に対し回動させることで、当該回動方向に沿った特定の1箇所においてのみ、前記蓋体の各軸部を前記本体の各軸挿入部から抜出し移動させることで、前記本体と前記蓋体とが分離可能となる構成であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、スライド当接体のスライドという簡単な操作によって、本体の側の前記軸挿入部が形成されている移動規制部に当接可能な位置と、当接不可となる位置とに変位可能であるため、当該スライド当接体を当接不可位置に配置させた状態で、前記本体に対して蓋体を、当該蓋体の回動方向に沿った特定の1箇所の分離可能位置に配置させて、当該蓋体の各軸部を前記本体の各軸挿入部から抜出し移動させることで、前記本体と前記蓋体とを分離できる。従って、使用中においては、本体と蓋体とにそれぞれ設けられた移動規制部に前記軸部の軸方向に沿った当接により、当該本体と蓋体との分離を確実に防止したうえで、本体に対して蓋体を、その回動方向に沿った特定の1箇所の分離可能位置において、着脱できる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記本体と前記蓋体には、当該蓋体の回動方向に沿って互いに当接して、当該蓋体の最大開位置を定める開き止め部が設けられ、
前記開き止め部には、前記蓋体の前記閉位置と前記開位置との間の特定位置で、前記軸部の抜け出し方向への移動を許容する部位と、その他の位置において、前記抜け出し方向への移動を規制するように互いに当接する部位とが設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、蓋体の最大開位置を定める機能と、前記軸部の抜け出し方向への移動の許容と規制を行う前記スライド当接体とは別の移動規制部としての機能との二つの異なる機能を有している。よって、前記開き止め部により、本体に対して蓋体を最大開位置であって、しかも前記軸部の抜け出し方向への移動を許容する二つの条件を満たす位置に配置させると、本体に対して蓋体を軸部の軸方向に移動させられて、分離できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4又は5の発明において、前記スライド当接体が当接する移動規制部は、前記軸挿入部に形成され、当該軸挿入部における前記軸部の挿入側と反対側の端面に形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明によれば、軸部を挿入させる軸挿入部を、スライド当接体が当接して、前記軸部が抜け出し移動するのを防止する移動規制部として利用しているため、当該スライド当接体の専用の移動規制部を設ける必要がなくなって、本体又は蓋体の構成が簡単となる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項4又は5の発明において、前記スライド当接体のスライド方向は、前記一対の軸部の軸心に対して直交する方向であることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明によれば、スライド当接体の当接対象である移動規制部に対する当接可能位置と当接不可位置とを直感的に判別できて、本体と蓋体との組み付け及び分離の各作業を誤りなく行える。
【0022】
請求項8の発明は、請求項4又は5の発明において、前記スライド当接体は、前記蓋体の裏面に配置されていることを特徴としている。
【0023】
請求項8の発明によれば、スライド当接体により本体の前面開口が部分的に閉塞されなくなるので、蓋体を開いた状態で、本体に対して機器類を取付け易くなる。
【発明の効果】
【0024】
請求項4の発明では、移動規制部に対してスライド当接体をスライドさせて、当接及びその解除を行うことも条件として、請求項1及び同4の各発明のいずれにおいても、周壁(本体)に対する蓋体の開角が特定角度の場合のみ、周壁(本体)及び蓋体が軸部の軸心方向に移動して、複数の各軸挿入部から各軸部が抜け出ることで、当該周壁(本体)と蓋体との分離が可能になると共に、周壁(本体)に対する蓋体の開角が前記特定角度を除く残りの大部分の角度の場合には、周壁(本体)及び蓋体のそれぞれ設けられた移動規制部が当接することで、軸挿入部からの軸部の抜け出しが不能となって、使用中において、周壁(本体)に対する蓋体が分離することなく、安定した使用が可能となる。
【0025】
特に、請求項4の発明では、本体と蓋体との分離の可否は、スライド可能なスライド当接体の配置位置により目視で分かるので、本体と蓋体との分離の可否の状態を誤りなく把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a),(b)は、それぞれ本発明の実施例1の配電函A1 の一対の蓋壁D1 の開状態及び閉状態の斜視図である。
図2】実施例1の配電函A1 を構成する周壁M1 、底壁B及び一対の蓋壁D1 の分解斜視図である。
図3】(a),(b)は、それぞれ周壁M1 を異なる方向から見た斜視図である。
図4】周壁M1 の横断面図(平面断面図)である。
図5】(a)は、周壁M1 の側面図であり、(b)は、周壁M1 及び左側の蓋壁D1 の上端部の組付けを示す部分斜視図であり、(c)は、周壁M1 及び左側の蓋壁D1 の下端部の組付けを示す部分斜視図である。
図6】(a),(b),(c)は、それぞれ左側の蓋壁D1 の開角が60°,90°及び135°における周壁M1 と蓋壁D1 の上下のヒンジ連結部の組合せに係る図5(a)のW1 -W1 線及びW2 -W2 線の各断面図である。
図7】周壁M1 に対する左側の蓋壁D1 の開角が90°であって、当該蓋壁D1 を上方に持ち上げて周壁M1 に対して着脱を行う状態の蓋壁組付け部の縦断面図である。
図8】周壁M1 に対する左側の蓋壁D1 の開角が60°の状態における蓋壁組付け部の縦断面図である。
図9】底壁Bの正面斜視図である。
図10】同じく正面図である。
図11】(a),(b)は、それぞれ図10のX1 -X1 線及びX2 -X2 線の断面図である。
図12】周壁M1 と底壁BとがパッキンGを介して複数の連結具Eで連結固定された状態の斜視図である。
図13】周壁M1 と底壁BとがパッキンGを介して複数の連結具Eで連結固定された状態の縦断面図である。
図14図13のQの部分の拡大図である。
図15】本発明の実施例2の配電函A2 を構成する本体M2 と蓋体D2 との分解斜視図である。
図16】蓋体D2 に別体のヒンジ体Hが装着される構造を示す斜視図である。
図17】(a),(b)は、それぞれ本体M2 と蓋体D2 とをピン連結する途中の異なる状態の斜視図である。
図18】(a),(b)は、それぞれ本体M2 と蓋体D2 とがピン連結された状態で、スライド当接体Sをスライドさせて、本体M2 と蓋体D2 とを分離不能にする前後の斜視図である。
図19】(a),(b)は、それぞれ蓋体D2 の裏面にヒンジ連結部に装着されるヒンジ体Hを異なる方向から見た斜視図である。
図20】(a),(b)は、それぞれスライド当接体Sを異なる方向から見た斜視図であり、(c),(d)は、それぞれスライド当接体Sの正面図及び中央縦断面図である。
図21図18のY-Y線断面図である。
図22】スライド当接体Sにより分離不可とされた本体M2 に対して蓋体D2 を開いた状態の蓋体D2 のヒンジピン挿通支持体72及び本体M2 の開き止め体63の部分を断面して下方を見た図〔図18(b)のZ-Z線断面図〕である。
図23】同じく本体M2 に対して蓋体D2 を閉じた状態の図である。
図24】配電函A3 の本体M3 と蓋体D3 とをヒンジピンP’で連結する途中の状態を示す斜視図である。
図25】(a)は、図24の本体M3 と蓋体D3 とのヒンジ連結部の拡大図であり、(b)は、図24のスライド当接体S’の部分の横断面図である。
図26】配電函A3 の本体M3 と蓋体D3 とをヒンジピンP’で連結された状態を示す斜視図である。
図27】(a)は、図26の本体M3 と蓋体D3 とのヒンジ連結部の拡大図であり、(b)は、図26のスライド当接体S’の部分の横断面図である。
図28】蓋体D3 のヒンジ体H’と、本体M3 における当該ヒンジ体H’にヒンジ連結される部分とを分離させた状態の斜視図である。
図29】本体M3 と蓋体D3 とのヒンジ連結部の拡大斜視図である。
図30】蓋体D3 に別体のヒンジ体H’が装着される構造を示す斜視図である。
図31】(a),(b)は、それそれスライド当接体S’を異なる方向から見た斜視図であり、(c)は、スライド当接体S’の係止爪片112の部分の横断面図である。
図32】(a),(b)は、それぞれ配電函A3 の本体M3 と蓋体D3 とが分離不能及び分離可能な状態における当該本体M3 に対するスライド当接体S’の配置位置を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0027】
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明に係る函体の代表使用例は、通信機器、電気機器等の諸機器類を収納する配電函である。本配電函A1 は、図1及び図2に示されるように、矩形枠状をした周壁M1 と、当該周壁M1 とは別体に形成されて、当該周壁M1 の後方開口を閉塞する方形盤状の底壁Bと、当該周壁M1 とは別体に形成されて、当該周壁M1 の前方開口を閉塞する一対の蓋壁D1 とから成る。周壁M1 、底壁B及び蓋壁D1 は、いずれも樹脂の射出成形品であり、それぞれ個別の一体構造になっていて、これらを組み付けることで、配電函A1 が形成される。本発明は、それぞれ別体の周壁M1 、底壁B及び蓋壁D1 の「組付け構造」に発明部分(特徴部分)が存在するので、この「組付け構造」に係る部分について詳細に説明し、周壁M1 、底壁B及び蓋壁D1 の各組付け部を除く一般部分には、本発明の特徴は存在しないので、説明を略すか、或いは概略説明のみを行う。
【0028】
周壁M1 は、全体形状が矩形(方形)枠状を成していて、上下方向に対向される上板部1及び下板部2と、左右方向に対向配置される一対の側板部3とから成り、前後がいずれも開口されて、前方開口4及び後方開口5を形成していて、横長、縦長、奥行長の順に寸法が小さくなっている。左右一対の側板部3は、左右対称形状であるが、上板部1及び下板部2は、「覆い位置」に配置される一対の蓋壁D1 が配置される前端部の形状が異なっているため、非同一形状となっている。周壁M1 の後方開口5は、方形盤状の底壁Bが一体に組み付けられることで閉塞される構造であるため、前記上板部1、下板部2及び一対の側板部3の各後端面は、同一平面上に配置されているが、当該周壁M1 の前方開口4は、当該部分に一対の蓋壁D1 が配置されるため、周壁M1 の前後方向に沿った前端部の配置位置は、それぞれ異なっていることで、一対の蓋壁D1 が配置される蓋壁配置空間6が形成されている。
【0029】
周壁M1 を構成する上板部1、下板部2及び一対の側板部3の板厚は、全長に亘って一定していて、当該上板部1、下板部2及び一対の側板部3における後方開口5に臨む所定長の部分は、底壁Bの後述の方形枠状をした挿入溝36に挿入される各挿入板部1a,2a,3aを構成している。上板部1、下板部2及び一対の側板部3における前記各挿入板部1a,2a,3aよりも内側の部分の各内面には、それぞれ後述の連結具Eを介して周壁M1 の後方開口5を閉塞する底壁Bを一体に組み付けるための被係止突起7が一体に形成されている。当該被係止突起7は、図15図19に示されるように、上板部1、下板部2及び一対の側板部3の各内面に対して垂直となって被係止板部7aが一体に形成され、当該被係止板部7aにおける後方開口5の側が複数の直角三角形状の支持板部7bで支持された構成である。前記被係止突起7は、上板部1及び下板部2には、横方向の中央部と両端部の計3箇所に形成され、当該上板部1及び下板部2よりも長さの短い一対の側板部3には、縦方向の中央部の1箇所のみに形成されている。
【0030】
周壁M1 の前方開口4には、一対の蓋壁D1 がピン連結構造により「観音開き構造」で配置連結されるため、一対の側板部3の前端部は、図4及び図5に示されるように、各蓋壁D1 の回動支点部となる側が配置される蓋壁回動支点配置部8が凹状となって上下方向のほぼ全長に亘って形成され、周壁M1 の前方開口4の側の上下端部(上板部1及び下板部2の各先端部)は、図13に示されるように、上下方向の中間部に空間部を有する三重板構造に形成されることで、一対の蓋壁D1 が配置される周壁M1 の前端側の全周は、補強された構造になっている。即ち、図4図5及び図13に示されるように、上板部1及び下板部2の各前端部は、内側に90°屈曲されて、その先端が更に内側に90°屈曲されることで、垂直な各前面板部1b,2bに接続して、空間部を介して上板部1及び下板部2に平行な各第1内側板部1c,2cが形成され、各第1内側板部1c,2cの後端が内側に向けて90°屈曲されて各後面板部1d,2dが形成され、各後面板部1d,2dの端部は、前方に向けて90°屈曲されることで、各第2内側板部1e,2eが形成されている。周壁M1 における各第1内側板部1c,2c及び各第2内側板部1e,2eの左右両端部に、前記蓋壁回動支点配置部8が上下方向に沿って形成されている。
【0031】
前記蓋壁回動支点配置部8の上下端部は、図5に示されるように、蓋壁D1 の回動支点ピン21a,21b及び当該回動支点ピン21a,21bを支持している支点ピン支持板22a,22bとの干渉回避のための干渉回避欠落部9a,9bが設けられている。蓋壁D1 の回動支点部の上下端部には、周壁M1 に対して蓋壁D1 が連結された状態で、支点ピン支持板22a,22bが周壁M1 の上板部1及び下板部2と平行となってそれぞれ一体に設けられ、上方及び下方の各支点ピン支持板22a,22bには、それぞれ回動支点ピン21a,21bが上方及び下方に向け、しかも同一軸心上に配置して設けられている。周壁M1 に対する一対の蓋壁D1 の着脱は、当該周壁M1 に対して蓋壁D1 の開角が90°の場合においてのみ、周壁M1 に対して蓋壁D1 を僅かに上下動可能にさせることで、周壁M1 の上下の各板部1,2における前記蓋壁回動支点配置部8の上下方向の延長部に形成された各支点ピン孔11a,11bに対して蓋壁D1 の各回動支点ピン21a,21bを着脱可能である。一方、蓋壁D1 の開角が90°を除く残りの全ての部分では、周壁M1 に設けられた後述の上動規制ブロック12、周壁M1 の蓋壁回動支点配置部8を構成する後述の第2及び第3の各板部8c,8dの下端部の移動規制部、当該周壁M1 の第1内側板部2c及び蓋壁D1 の上部に設けられた後述の上動規制部24a、蓋壁D1 の移動規制部として機能する上下の前記各支点ピン支持板22a,22bの上方移動規制作用によって、蓋壁D1 の支点ピン孔11a,11bに対する蓋壁D1 の回動支点ピン21a,21bの着脱が不能な構造にしてある。
【0032】
周壁M1 の前部の左右両端部に上下方向に形成された前記蓋壁回動支点配置部8は、図3図6に示されるように、周壁M1 に対する蓋壁D1 の最大開角が135°であるのに対応して、横断面視において側方に開口した4分円弧板部8aの一端に、所定長の第1板部8bが前方であって、当該4分円弧板部8aの接線方向に延設され、当該第1板部8bの先端が側方に向けて直角に屈曲された第2板部8cが形成され、更に当該第2板部8cの先端に、短長の第3板部8dが前方に向けて直角に折り曲げられ、当該第3板部8dの上下端部は、第2板部8cに対して僅かに上方及び下方に突出された形状である。
【0033】
蓋壁D1 の上部及び下部の各支点ピン支持板22a,22bは、当該蓋壁D1 が周壁M1 に装着された状態で、当該蓋壁D1 の蓋壁回動支点配置部8の4分円弧板部8aに対応する部分は円弧状に形成されていると共に、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の場合において、前記蓋壁回動支点配置部8の第2及び第3の各板部8c,8dとの干渉を回避するために、直交状態で切り欠かれた直交切欠部23が形成されることで、全体として概略方形状をなしている。蓋壁D1 の下方の支点ピン支持板22bの外周縁部には、蓋壁D1 の下端部と周壁M1 の下板部2の第1内側板部2cとの隙間を閉塞するためのL字リブ状の隙間閉塞部24bが全周縁に亘って下方に突出して形成されている〔図5(c)参照〕。一方、蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aの外周縁部には、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の場合のみ、当該周壁M1 に対する蓋壁D1 の上方への起動を許容して、前記開角が90°~135°の場合には、当該周壁M1 に対する蓋壁D1 の上方への移動を規制する上動規制部24aが形成されている。上記条件を満足させるために、図6(b)に示されるように、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の場合には、当該周壁M1 に対する蓋壁D1 の上下方向の移動(微動)を許容すべく、蓋壁D1 の支点ピン支持板22aにおける周壁M1 の内部に入り込んでいる部分には、リブ状の上動規制部24aは欠落されて、支点ピン支持板22aにおける周壁M1 の外部に突出している部分の外周縁のみに、当該上動規制部24aが形成されている。なお、上動規制部24aは、蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aと周壁M1 の上板部1の第1内側板部1cとの間に形成される空間部T(図8参照)を閉塞する機能も有する。
【0034】
周壁M1 に一対の蓋壁D1 が組み付けられた状態では、図8に示されるように、蓋壁D1 の下方の回動支点ピン21aが、周壁M1 の下方の支点ピン孔11aに挿入されて、当該回動支点ピン21aにより蓋壁D1 の自重が支持されて、当該周壁M1 の上板部1の第1内側板部1cと、当該蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aとの間には、所定の空間部Tが形成されている。そして、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°~135°の範囲では、上動規制部24aが前記空間部Tに入り込んで周壁M1 の第1内側板部1cの裏面に当接することで、周壁M1 に対する蓋壁D1 の上方への移動が防止されている〔図6(c)参照〕と共に、前記開角が0°~90°の範囲では、上方の前記支点ピン支持板22aが後述の上動規制ブロック12の下方に入り込むことで、周壁M1 に対する蓋壁D1 の上方への移動が防止され、前記開角が90°の場合においてのみ、図6(b)に示されるように、前記上動規制部24aの全体が前記空間部Tの外側に配置されると共に、上方の支点ピン支持板22aと前記上動規制ブロック12とが非干渉状態となって、周壁M1 に対して蓋壁D1 の上方に移動可能となる。
【0035】
また、周壁M1 の上板部1における第1内側板部1cの裏面における前記蓋壁回動支点配置部8に対応する部分には、蓋壁D1 の開角が0°~90°の間において当該蓋壁D1 が上動するのを阻止するための板状の上動規制ブロック12が設けられ、当該蓋壁D1 の開角が0°~90°の間においては、蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aが前記上動規制ブロック12の下方に入り込むことで、当該蓋壁D1 の上動を阻止している〔図6(a)〕と共に、蓋壁D1 の開角が90°に達すると、蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aは、上動規制ブロック12の背面から脱出して、蓋壁D1 の上方への移動を可能にしている〔図6(b)〕。このように、上動規制ブロック12には、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の場合において、上方の支点ピン支持板22aの一辺と平行となる蓋壁着脱案内面12aが形成されていると共に、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が135°の場合において、当該蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aに設けられた上動規制部24aが当接することで、当該蓋壁D1 の最大開角を規制する最大開角規制面12bが形成されている。従って、上方の支点ピン支持板22aと、前記上動規制ブロック12及び上動規制部24aは、請求項1で特定される「前半移動規制部」及び「後半移動規制部」を構成する。なお、図5及び図6において、25,26は、蓋壁D1 の側板部及び内板部を示す。
【0036】
そして、周壁M1 に対する一対の蓋壁D1 の着脱は、上記したように、当該周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の場合においてのみ可能となっている。よって、図6(b)及び図7に示されるように、周壁M1 に対して蓋壁D1 を開角90°に配置して、当該周壁M1 に対して蓋壁D1 を僅かに持ち上げて僅かに傾斜させた状態で、図6(b)で矢印Nで示されるように、当該蓋壁D1 を周壁M1 の側に移動させて、蓋壁D1 の上方の回動支点ピン21aを、周壁M1 の上方の支点ピン孔11aに挿入して、蓋壁D1 の上下の各回動支点ピン21a,21bを結ぶ線分が垂直となるように当該蓋壁D1 を配置し直し、この状態で、当該蓋壁D1 の支持を開放させる。これにより、当該蓋壁D1 は、自重により僅かに下方に移動して、下方の回動支点ピン21bは、周壁M1 の下方の支点ピン孔11bに挿入されると共に、当該蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aにおける直交切欠部23が設けられた辺と対向する辺の端面が、上動規制ブロック12の蓋壁着脱案内面12aと平行に配置されて、周壁M1 に対して一方の蓋壁D1 が回動可能に組み付けられる。また、周壁M1 に対して蓋壁D1 が組み付けられた状態で、当該周壁M1 に対して蓋壁D1 を取り外すには、上記と逆の操作を行えばよく、蓋壁D1 を上方に持ち上げて僅かに傾斜させることで、下方の回動支点ピン21bを周壁M1 の下方の支点ピン孔11bから抜け出て、そのまま図6(b)で矢印N’で示される方向に蓋壁D1 を移動させればよい。なお、図5(c)に示されているように、周壁M1 の下方の支点ピン孔11bには、当該周壁M1 に対する蓋壁D1 の着脱方向である矢印N,N’の方向に沿って、蓋壁D1 の着脱時において、当該蓋壁D1 の下方の回動支点ピン21bの下端部が入り込むことで、蓋壁D1 の着脱操作を容易にするピン摺動案内溝部13が形成されている。
【0037】
ここで、図5及び図6に明瞭に図示されているように、蓋壁D1 の下方の支点ピン支持板22bに直交切欠部23を設けることで、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の状態において、周壁M1 の蓋壁回動支点配置部8を構成する第2及び第3の各板部8c,8dと干渉することなく、周壁M1 に対して蓋壁D1 を僅かに上方に移動させて、蓋壁D1 の下方の回動支点ピン21bを、周壁M1 の下方の支点ピン孔11bから脱出させられて、周壁M1 から蓋壁D1 の取り外しが可能となる。そして、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°を除く角度では、図6の右半分の図面に示されるように、蓋壁D1 の下方の支点ピン支持板22bにおける直交切欠部23の両側の部分は、それぞれ前半移動規制部22b1 及び後半移動規制部22b2 としての機能を果し、周壁M1 の第2及び第3の各板部8c,8dと干渉することで、周壁M1 に対する蓋壁D1 の上方への移動が不能となって、周壁M1 からの蓋壁D1 の取外しが不能となる。従って、下方の支点ピン支持板22bは、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°を除く角度において、周壁M1 から蓋壁D1 が外れるのを防止する機能を果す。上記により、周壁M1 に対して蓋壁D1 は、周壁M1 の前方開口4の全体を覆う開角0°の「閉位置」と、周壁M1 に対して開角135°の最大に開かれた「開位置」との間で、中間の開角90°の周壁M1 と蓋壁D1 とが分離可能な位置を支障なく通過して回動可能である。なお、下方の支点ピン支持板22bの前半移動規制部22b1 及び後半移動規制部22b2 と、上方の支点ピン支持板22aの側の上動規制ブロック12及び上動規制部24aは、いずれか先に当接した側が「上動規制」の作用を果し、上記実施例では、上方の支点ピン支持板22aの側が先に当接する場合である。
【0038】
なお、図7において、蓋壁D1 の上下の各回動支点ピン21a,21bの各先端の間の長さL1 と、周壁M1 を構成する上下の各第1内側板部1c,2cの上下方向の間隔L2 、上方の支点ピン支持板22aの上面からの回動支点ピン21aの突出長L3 及び蓋壁D1 の隙間閉塞部24bの下端面からの下方の回動支点ピン21bの突出長L4 (L4 <L1 )は、周壁M1 に対する蓋壁D1 の開角が90°の状態において、上記した周壁M1 に対する蓋壁D1 の着脱が可能な寸法に設定してある。
【0039】
上記の状態で、蓋壁D1 を内方に回動させて、その開角を60°にすると、図6(a)及び図8に示されるように、蓋壁D1 の上方の支点ピン支持板22aの一部が上動規制ブロック12の下方に入り込むことで、周壁M1 に対する蓋壁D1 の上下方向の移動(微動)が阻止された状態で、即ち、蓋壁D1 の上下の各回動支点ピン21a,21bが、それぞれ蓋壁D1 の各支点ピン孔11a,11bから抜け出ることなく挿入された状態を維持したままで、周壁M1 に対して蓋壁D1 の開閉が可能となる。なお、説明の関係上、周壁M1 に対する蓋壁D1 の着脱を述べたが、周壁M1 の後方端部に後述の底壁Bを一体に組み付けた後に、当該周壁M1 に一対の蓋壁D1 を組み付けるのが現実の施工法である。
【0040】
次に、図9図11を参照して、矩形枠状の前記周壁M1 の後方開口5を閉塞するための底壁Bについて説明する。底壁Bは、方形盤状をなしていて、周壁M1 に一体に組み付けられた状態で、内面となる側は、二段差状に窪んでいて、大部分を占める中央部は、諸機器を取付ける機器取付け板Fを収容配置する方形状の第1凹部31が形成され、当該第1凹部31の外側と、底壁Bの最も外側を構成する外側重合板部32との間に、当該第1凹部31よりも浅い方形枠状の第2凹部33が形成されていることで、中央の大部分を占める部分には、全面に亘って底板部35が形成される。第1凹部31の対向短辺部におけるほぼ対角線方向に沿って対向する部分には、当該第1凹部31に対する機器取付け板Fの着脱を容易にするための着脱用凹部34が、前記第2凹部33に入り込んで形成されている。外側重合板部32は、全体として方形枠状を成していて、その短辺部の両端部は、前記周壁M1 の後方側の各挿入板部1a,2a,3aの挿入を容易化させるために、僅かに外方に膨出された外方膨出部32aが形成されている。方形枠状の外側重合板部32と第2凹部33との間には、前記周壁M1 の各挿入板部1a,2a,3aを挿入することで、周壁M1 と底壁Bとを一体化させる方形枠状の挿入溝36が全周に亘って形成され、当該挿入溝36の内側の部分は、前記外側重合部板32と開口する内側重合部37(図12参照)を形成している。
【0041】
第2凹部33の底面における前記挿入溝36の内側の部分には、後述の連結具Eをビス固定するためのビス91を螺入させる複数の第1ビス螺入筒部38が突設されている。当該第1ビス螺入筒部38は、前記周壁M1 の上板部1、下板部2及び一対の側板部3に形成された各被係止突起7の位置に対応して、方形状の底壁Bの長辺部には、両端部と中央部の3箇所に形成され、その短辺部には、中央部の1箇所のみに形成されている。第2凹部33の底面における前記第1凹部31の各コーナー部に対応する部分には、当該底壁Bを構造物に固定するボルト92を挿入するボルト挿通孔39が、それぞれ一対一組となって、計4組形成されている。第2凹部33の各短辺部における前記第1凹部31に臨む部分には、周辺を凹状に形成することで、当該第2凹部33の底面とほぼ同一高さとなる第2ビス螺入筒部41が形成されている。当該第2ビス螺入筒部41は、第1凹部31に収容配置された機器取付け板Fの周縁を複数の連結具Eにより固定する際に使用するビス91を螺入させる部分である。なお、第1凹部31の底面は、複数本の縦横の各補強リブ42が形成されている。
【0042】
次に、図12図14を参照して、周壁M1 に対して底壁Bを一体に組み付けるのに使用される連結具Eについて説明する。連結具Eは、底壁Bの第1及び第2の各ビス螺入筒部38,41の外側に嵌め込まれる円筒状の連結具本体51の手前側の端部に、前記周壁M1 に一体に設けられた被係止突起7の被係止板部7aの形状に対応した長方形状の係止板部52が、当該連結具本体51の接線方向に沿って一体に形成された形状である。円筒状の連結具本体51には、内径の異なる2種類の貫通孔が軸方向に連続して設けられ、係止板部52の側の小径の貫通孔はビス底壁孔51aとなっていると共に、後述の一対の廻止め凹部53が形成された側の大径の貫通孔は、当該連結具本体51の内部に、周壁M1 の第1及び第2の各ビス螺入筒部38,41を嵌入させるためのビス螺入筒部嵌入孔51bとなっている。連結具Eの連結具本体51の先端側の端面には、底壁Bの第1及び第2の各ビス螺入筒部38,41の基端部の対向する部分に一体に形成された断面三角形状の一対の廻止め突起43に対して嵌合される同じく断面三角形状の一対の廻止め凹部53が形成されている。長方形状の係止板部52の裏面には、底壁Bの被係止突起7の被係止板部7aの表面に喰込み可能な一対の喰込み爪54が、長手方向に沿って所定間隔をおいて短手方向に沿って形成されている。連結具Eは、周壁M1 と底壁Bとを一体に連結する機能のみならず、周壁M1 と底壁Bとの連結状態において、係止板部52の長手方向の端面が当接面52aとなって、周壁M1 の上板部1、下板部2及び一対の側板部3の内側面に当接することで、前記各板部1,2,3が内方に向けて撓むのを防止する機能も有している。
【0043】
そして、複数の連結具Eを用いて、周壁M1 と、当該周壁M1 の後方開口5を閉塞する底壁Bを一体化するには、以下のようにして行う。即ち、図13に示されるように、底壁Bに方形枠状に形成された挿入溝36に、同じく方形枠状のパッキンGを挿入して、その底部に配置した後に、当該底壁Bの挿入溝36に、周壁M1 の上板部1、下板部2及び一対の側板部3の各挿入板部1a,2a,3aを挿入すると、当該挿入溝36の底部に配置された前記パッキンGが僅かに圧縮される。
【0044】
その後に、複数の連結具Eを用いて、周壁M1 と底壁Bとを一体化させる。即ち、図14に示されるように、底壁Bの第1ビス螺入筒部38が、連結具Eの連結具本体51のビス底壁孔51aに嵌入されるようにし、当該第1ビス螺入筒部38の外側に連結具Eを配置すると、当該連結具Eの係止板部52は、周壁M1 の各板部1,2,3の内面に形成された被係止突起7の被係止板部7aの上面に当接された状態となる。最後に、連結具Eのビス底壁孔51aに挿通したビス91を第1ビス螺入筒部38に螺入させると、上板部1及び下板部2では、両端部と中央部の計3箇所において、一対の側板部3では、それぞれ中央部の1箇所において、複数の連結具Eを介して周壁M1 と底壁Bとが一体化される。
【0045】
最後に、段落「0035」に記載されているようにして、周壁M1 に対して一対の蓋壁D1 を組み付ける。
【実施例0046】
実施例2の配電函A2 は、内部に通信機器、電気機器などの機器類を配置して取付けると共に、必要なケーブルを収納するための函であって、有底函状の本体M2 と、当該本体M2 の右側の縦辺の部分にヒンジ連結される蓋体D2 とから成り、いずれも樹脂製である。実施例2の配電函A2 の特徴部分は、本体M2 と蓋体D2 とのヒンジ連結部に存在するので、この部分についてのみ詳細に説明し、他の部分の説明は略す。
【0047】
本体M2 の前面は開口されて、右側の縦辺のヒンジ連結部は前面開口から突出して形成され、当該ヒンジ連結部には、当該縦辺の方向に沿って所定間隔をおいて同一形状の一対のヒンジ連結ブロック体61a,61bが前方に所定長だけ突出して一体に設けられ、各ヒンジ連結ブロック体61a,61bにおける前記右側の縦辺側の端部には、当該縦辺の方向に沿ってピン挿入孔62a,62bが、当該本体M2 の前面開口と同方向に開口して形成されて、当該ピン挿入孔62a,62bの挿入方向の中央部には、後述のヒンジピンPを挿通して全方向に移動不能に支持するピン挿通支持板部62a1, 62b1が設けられている。上方のヒンジ連結ブロック体61aの上方には、各ヒンジ連結ブロック体61a,61bよりも突出長が短い開き止め体63が突設されている。この開き止め体63は、本体M2 に対する蓋体D2 の最大開位置で当該蓋体D2 の開き止めを行うと共に、当該開き止め位置においてのみ、組み付け方向に沿って蓋体D2 のヒンジ体Hと非当接となることで、本体M2 と蓋体D2 との分離を可能にして、他の回動方向の位置では、当該分離を不能とする移動規制部を兼用した部材である。
【0048】
本体M2 の上板部64と下板部65における一対のヒンジ連結ブロック体61a,61bが配置された側には、ヒンジ連結される蓋体D2 の回動を可能にするための円弧凹部64a,65aが形成されている。蓋体D2 の上板部66及び下板部67における本体M2 の前記円弧凹部64a,65aに対応する部分には、円弧板部66a,67aが突設されている。
【0049】
凹状に形成された蓋体D2 のヒンジ連結凹部78には、図16及び図19に示されるように、別体のヒンジ体Hが固定配置され、当該ヒンジ体Hは、長尺方形状の本体板部71の表面側に、本体M2 の一対のヒンジ連結ブロック体61a,61bの直上に配置される一対のヒンジピン挿通支持体72,73が所定間隔をおいて設けられている。上方のヒンジピン挿通支持体72は、本来のヒンジピンPを支持する機能に加えて、本体M2 の開き止め体63と協働して、蓋体D2 の最大開位置を定めると共に、本体M2 と蓋体D2 との分離を規制する機能を有しているため、別のヒンジピン挿通支持体73とは、全体形状が異なる。各ヒンジピン挿通支持体72,73は、複数又は1の中間板部72a,73aが設けられ、各中間板部72a,73aに設けられたピン挿通孔(図示せず)にヒンジピンPが挿通される。
【0050】
図15及び図22に示されるように、本体M2 の前記開き止め体63におけるヒンジ連結部の側の端部であって、しかも当該本体M2 の開口から最も離れた部分には、断面方形状の当接部68が、ヒンジ連結部の側(本体M2 と蓋体D2 とが組み付けられた状態では、当該蓋体D2 のヒンジピンPの側)に突設されている。なお、図22及び図23においては、図18(b)のZ-Z線断面図とした場合には、同一形状の一対のヒンジ連結ブロック体61a,61bのうち上方のヒンジ連結ブロック体61aが視認されるが、スライド当接体Sと当接(干渉)するものは、下方のヒンジ連結ブロック体61bであるので、特殊図法として、当該下方のヒンジ連結ブロック体61bを図示してある。図19及び図22に示されるように、上方のヒンジピン挿通支持体72の外周面は、ヒンジピンPの軸心Cを中心とする断面半円弧状に形成され、当該ヒンジピン挿通支持体72における本体M2 の開き止め体63と対向する部分には、本体M2 の開き止め体63の当接部68が挿入されて、本体M2 に対する蓋体D2 の最大開角が90°となるように、断面略4分円弧状の廻り止め規制凹部74が形成されている。当該廻り止め規制凹部74の円弧方向に沿って対向する一方の内端面は、本体M2 の当接部68が当接することで、本体M2 に対する蓋体D2 の最大開位置を定める蓋体D2 の廻り止め規制面74aとなっていると共に、当該廻り止め規制凹部74における当該廻り止め規制面74aに接続する部分は、ヒンジピン挿通支持体72の全長に亘って貫通して、開き止め体63の当接部68が非当接(非干渉)の状態で相対的に通過可能な当接部抜き孔74bが形成されている。廻り止め規制凹部74における前記当接部抜き孔74bを除く残りの部分の底面は、本体M2 に対する蓋体D2 の開角が最大開角を除く範囲において、開き止め体63の当接部68が当接して、本体M2 と蓋体D2 の分離を規制する当接規制面74cとなっている。
【0051】
蓋体D2 は、浅い函状をなしていて、そのヒンジ連結部の部分は、横断面がわん曲形状になっている(図22参照)ことに対応して、ヒンジ体Hの各ヒンジピン挿通支持体72,73の裏面側の横断面は、蓋体D2 のヒンジ連結部の横断面に対応したわん曲形状となっている。本体板部71における下方のヒンジピン挿通支持体73の下方には、スライド当接体Sを横方向にスライド可能に嵌着させる方形状の嵌着孔75が形成されている。本体板部71には、ヒンジ体Hの全体を蓋体D2 の底板部60(図21参照)の内側に設けられた一対のビス螺入筒部69に螺入して固定する各ビス93が挿通されるビス螺入孔76が設けられている。蓋体D2 のヒンジ連結部における下方のビス螺入筒部69の下方には、ヒンジ体Hの嵌着孔75に嵌着されたスライド当接体Sの後述の係止突条83を係止させる2枚の被係止板部70が上下方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0052】
スライド当接体Sは、図20に示されるように、側面視でコの字をした当接体本体81の各脚部81aの先端部に係止片部82が一体に形成されて、各係止片部82における各脚部81aを結ぶ方向に沿って突出した部分が、ヒンジ体Hの嵌着孔75の周縁部裏面に係止される係止部82aとなっている。当接体本体81の内面には、ヒンジ体Hの嵌着孔75に嵌着された状態で、蓋体D2 に設けられた前記被係止板部70に係止されて、嵌着状態のスライド当接体Sが横方向にずれるのを防止する係止突条83が各脚部81aを結ぶ方向に沿って設けられている。各脚部81aは、その先端部を接近する方向に弾性変形させて、ヒンジ体Hの嵌着孔75に嵌着させる。
【0053】
そして、蓋体D2 のヒンジ連結凹部78に一対のビス93を介して固定配置されたヒンジ体Hを介して本体M2 と当該蓋体D2 とをヒンジ連結するには、以下のようにして行う。蓋体D2 の各ヒンジピン挿通支持体72,73には、それぞれヒンジピンPが挿通支持されていると共に、ヒンジ体Hの嵌着孔75には、スライド当接体Sが嵌着されて、組付け時における下方のヒンジ連結ブロック体61a,61bとの干渉回避のために、嵌着孔75の右端に配置されている。図17(a)に示されるように、本体M2 に対する蓋体D2 の開角を90°に配置し、しかも各ヒンジピンPの軸心Cと本体M2 の各ヒンジ連結ブロック体61a,61bのピン挿入孔62a,62bの軸心とを合致させた状態で、蓋体D2 のヒンジ体Hの上方のヒンジピン挿通支持体72の当接部抜き孔74bに、本体M2 の開き止め体63の当接部68を挿入させ、このままの状態で、本体M2 に対して蓋体D2 を下降させると、図17(b)に示されるように、蓋体D2 の各ヒンジピンPが、本体M2 の各ヒンジ連結ブロック体61a,61bのピン挿入孔62a、62bに挿入され、本体M2 の各ヒンジ連結ブロック体61a,61bの上面に、蓋体D2 の各ヒンジピン挿通支持体72,73の下端面が当接すると、図18(a)に示されるように、本体M2 と蓋体D2 とが組み付けられる。また、上下のヒンジピンの長さに関しては、下方のヒンジピンPの方が長く、先に当該下方のヒンジピンPの先端を位置決めした状態で、上方のヒンジピンPの位置合せ、及び当接部68と当接部抜き孔74bの位置合せができるので、作業性がよい。
【0054】
その後に、スライド当接体Sを左方にスライドさせて、図18(b)及び図22に示されるように、下方のヒンジ連結ブロック体61bの下方に配置させると、嵌着孔75の左方に配置されたスライド当接体Sと、その直上の下方のヒンジ連結ブロック体61bとが当接(干渉)することで、蓋体D2 の下方のヒンジピン挿通支持体73と、蓋体D2 に装着されたスライド当接体Sとで、本体M2 の下方のヒンジ連結ブロック体61bと蓋体D2 が挟持されて、本体M2 に対して蓋体D2 を上方に移動させられないので、本体M2 と蓋体D2 とは、分離不能に組み付けられる。この状態で、一対のヒンジピンPを回動支点として、本体M2 に対して蓋体D2 を90°回動させて、当該本体M2 の開口を閉塞させると、図23に示されるように、本体M2 の開き止め体63の当接部68は、蓋体D2 の上方のヒンジピン挿通支持体72の外周部に形成された廻り止め規制凹部74の当接規制面74cに当接するので、直上の本体M2 のヒンジ連結ブロック体61bに当接するスライド当接体Sと協働して、本体M2 に対する蓋体D2 の上動が規制されて、使用中における本体M2 と蓋体D2 との分離が防止される。これらの上動規制により、上下を反転させた状態としても蓋体D2 が外れない状態で使用できるので、右開きと左開きを変更できる。
【0055】
また、本体M2 と蓋体D2 とを分離させるには、上記と逆の順序で各操作を行えばよい。即ち、本体M2 に対して蓋体D2 を無造作に開くと、図22に示されるように、蓋体D2 のヒンジ体Hのヒンジピン挿通支持体72の廻り止め規制凹部74の周方向の一端面の廻り止め規制面74aに、本体M2 の開き止め体63の当接部68が当接することで、本体M2 に対して蓋体D2 は、90°回動した時点で停止され、前記開き止め体63の当接部68は、廻り止め規制凹部74の当接部抜き孔74bの直上に配置されて、蓋体D2 の分離方向に沿って当該当接部68とヒンジピン挿通支持体72とが非当接(非干渉)の状態となる。その後に、スライド当接体Sを嵌着孔75の右端にスライドさせると、本体M2 に対する蓋体D2 の分離方向に沿って当接部(干渉部)が存在しなくなって、両者の分離が可能となる。
【0056】
上記したスライド当接体Sのスライド方向は、本体M2 と蓋体D2 とをヒンジ連結している一対のヒンジピンPの軸心Cに対し直交する方向であるため、移動規制部としても機能する下方のヒンジ連結ブロック体61bに対する当接可能位置と当接不能位置との判別を目視できるため、本体M2 と蓋体D2 との組み付け及びその分離の各作業を誤りなく行える。
【0057】
また、本体M2 と蓋体D2 とが組み付けられた後においては、仮に、スライド当接体Sを下方のヒンジ連結ブロック体61bの下方にスライド配置するのを忘れても、本体M2 に対する蓋体D2 の開角が90°以外の角度であるならば、本体M2 の開き止め体63の当接部68と、蓋体D2 の廻り止め規制凹部74の底面である当接規制面74cとが当接して、本体M2 と蓋体D2 とが分離される恐れはない。
【0058】
また、上記したように、蓋体D2 の下方のヒンジピン挿通支持体73と、蓋体D2 に装着されたスライド当接体Sとで、本体M2 の下方のヒンジ連結ブロック体61bと蓋体D2 が挟持されることで、本体M2 と蓋体D2 とが分離不能に組み付けられているため、配電函A2 を上下反転させて、ヒンジ連結部が、本体M2 の左側縦辺に配置されても、本体M2 と蓋体D2 とが分離されない。従って、同一の配電函A2 を右開きと左開きとのいずれかに選択して使用できる。
【実施例0059】
次に、図24図32を参照して、実施例3の配電函A3 について説明する。実施例3の配電函A3 は、実施例2の配電函A2 に対して、本体M3 と蓋体D3 とは、ヒンジ連結構造で開閉可能に連結されている点は、同一であるが、本体M3 と蓋体D3 とがヒンジ連結された状態で、両者が分離するのを防止するためのスライド当接体S(S’)が、実施施2の配電函A2 では、蓋体D2 の側に配置されているのに対して、実施例3の配電函A3 では、本体M3 の側に配置されている構成が異なるのみである。なお、配電函A2 の全体形状は、方形函状であるのに対して、配電函A3 の全体形状は、円形函状であるが、この全体形状の相違は、ヒンジ連結構造に影響を与えない〔全体形状が異なっていても、本体M3 (M2 )と蓋体D3 (D2 )とのヒンジ連結構造は同一である〕。従って、実施例3の配電函A3 の説明において、実施例2の配電函A2 と機能上同一の部分には、使用済の符号に「’」を付すことで、重複符号の使用を避け、実質的に実施例2と異なる部分であるスライド当接体S’及びそのスライド構造を中心にして説明する。
【0060】
配電函A3 の円形函状の本体M3 は、図24及び図28に示されるように、隔壁101により、大部分を占める配線収容空間102と、残りの割円状のヒンジ部形成空間103に分離され、当該ヒンジ部形成空間103に上下方向に所定間隔をおいて一対のヒンジ連結ブロック体61a',61b'が、当該本体M3 の開口面から突出して形成され、上方のヒンジ連結ブロック体61a'の上方に開き止め体63’が、同じく開口面から突出して形成されている。各ヒンジ連結ブロック体61a',61b'には、それぞれピン挿入孔62a',62b'が形成され、前記開き止め体63’の突出端部には、開状態の蓋体D3 の後述の当接部抜き孔74b'に挿入される当接部68’が本体M3 の周縁に向けて突設されている。
【0061】
スライド当接体S’は、図29図31及び図32に示されるように、本体M3 の上下のヒンジ連結ブロック体61a',61b'の間に、当該本体M3 の開口面と平行な方向にスライド可能に配置されて、ヒンジ連結された本体M3 と蓋体D3 とが分離されるのを阻止する部材であり、厚板長方形状の当接体本体111の短辺方向のほぼ中間部であって、長辺方向の両端部に、一対の係止爪片112が、当該当接体本体111の板面に対して垂直な方向に突設され、当接体本体111における一対の係止爪片112が突設された面と反対の面には、操作片113が設けられている。当接体本体111における一対の係止爪片112が突設されている面には、本体M3 に対してスライド当接体S’が外力、振動等が原因でずれるのを防止するための1本のスライド防止突条114が一対の係止爪片112を結ぶ方向に設けられている。
【0062】
上方のヒンジ連結ブロック体61a'の下面と、一対のヒンジ連結ブロック体61a',61b'の基端部を連結するように配置された連結壁115には、手前側に開口して、スライド当接体S’の形状に対応した方形状に切り欠かれた当接体嵌着開口116が形成されている。前記連結壁115と、当該連結壁115と所定間隔をおいて設けられた基端壁117とは、前記スライド当接体S’をスライド可能に嵌着させる被嵌着壁118で連結され、当該被嵌着壁118の手前側の面には、スライド当接体S’のスライド方向に沿って所定間隔をおいて、当該スライド当接体S’のスライド防止突条114が嵌合される2本のスライド防止凹条119a,119bが設けられている。スライド当接体S’は、その一対の係止爪片112が被嵌着壁118に、本体M3 の周縁に対して接近離間する方向にスライド可能に嵌着される。前記被嵌着壁118の上下の各傾斜端面118aは、板厚方向の奥側に向かうに従って間隔が広くなるように、互いに逆方向に傾斜した傾斜面に形成され、当該被嵌着壁118に対してスライド当接体S’を手前側から押し付けると、一対の係止爪片12は、前記一対の傾斜端面118aを押圧することで、外方に弾性変形された後に原形状に復元することで、被嵌着壁118に対してスライド当接体S’が嵌着される。
【0063】
一方、蓋体D3 は、浅底の円形函状をなしていて、隔壁104により割円状に分離された部分にヒンジ体H’が装着される。ヒンジ体H’は、図30に示されるように、細長比の大きな長方形の長辺方向の中間部に同じく長方形状の突出部71a'が短辺方向(側方)に突出した形状の本体板部71’における当該突出部71a'の長辺方向の両端部に一対のヒンジピン挿通支持体72’,73’が、当該蓋体D3 の開口に向けて突設されて、本体板部71’の長辺方向に沿った両端部が、蓋体D3 に設けられた一対のビス螺入筒部69’に一対のビス93’を用いて固定される。一対のヒンジピン挿通支持体72’,73’には、それぞれピン挿通孔72d',73d'が形成され、上方に配置されるヒンジピン挿通支持体72’における本体M3 の開き止め体63’と対向する部分には、開き止め体63’の先端の当接部68’を挿入可能な断面方形状の当接部抜き孔74b'が、手前側に開口して全長に亘って形成され、当該当接部抜き孔74b'のほぼ上半部は、蓋体D3 の回動時に本体M3 の開き嵌め体63’の先端の当接部68’が入り込んで、本体M3 に対する蓋体D3 の回動を規制する廻り止め規制凹部74’が形成されている。前記当接部抜き孔74b'の一方の内側面は、本体M3 に対する蓋体D3 の最大の開角度を規制する廻り止め規制面74a'となっている。
【0064】
そして、本体M3 と蓋体D3 との連結は、実施例2の本体M2 と蓋体D2 との連結と同様にして行う。図32(b)に示されるように、スライド当接体S’のスライド防止突条114を、被嵌着壁118のスライド防止凹条119bに嵌合させることで、当該スライド当接体S’を後退端位置に配置させた状態で、図24及び図25に示されるように、本体M3 に対する蓋体D3 の開角を90°に配置し、しかも各ヒンジピンPの軸心と本体M3 の各ヒンジ連結ブロック体61a',61b'のピン挿入孔62a',62b'の軸心とを合致させた状態で、蓋体D3 のヒンジ体H’の上方のヒンジピン挿通支持体72’の当接部抜き孔74b'に、本体M3 の開き止め体63’の当接部68’を挿入させ、このままの状態で、本体M3 に対して蓋体D3 を下降させると、蓋体D3 の各ヒンジピンP’が、本体M3 の各ヒンジ連結ブロック体61a',61b'のピン挿入孔62a',62b'に挿入され、本体M3 の各ヒンジ連結ブロック体61a',61b'の上面に、蓋体D3 の各ヒンジピン挿通支持体72’,73’の下端面が当接すると、図26及び図27に示されるように、本体M3 と蓋体D3 とが組み付けられる。
【0065】
その後に、図32(a)に示されるように、スライド当接体S’をスライドさせて前進端に位置させて、そのスライド防止突条114を、被嵌着壁118のスライド防止凹条119aに嵌合させることで、当該スライド当接体S’の先端部が、蓋体D3 の下方のヒンジピン挿通支持体73’の上面の直上に配置されて、本体M3 に対して蓋体D3 が分離方向に移動不能となって、両者M3 ,D3 の分離が防止される。なお、図24において、121は、本体M3 を柱類に固定するためのビスを示す。
【0066】
なお、実施例2,3は、いずれも蓋体D2 (D3 )の側にヒンジピンP(P’)が設けられ、本体M2 (M3 )の側にピン挿入孔62a,62b(62a',62b') が設けられているが、その配置を逆にしてもよい。
【0067】
なお、実施例1の蓋体D1 は、観音開きであるが、1枚の蓋体が開閉する構成であってもよい。実施例2においては、蓋体D2 は、上下開きにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,A2,A3 :配電函(函体)
C:ヒンジピンの軸心
1 :蓋壁
2,D3 :蓋体
H:ヒンジ体
1 :周壁
2,M3 :本体
P:ヒンジピン(軸部)
S:スライド当接体
8:蓋壁回動支点配置部
8c:蓋壁回動支点配置部の第2板部(移動規制部)
8d:蓋壁回動支点配置部の第3板部(移動規制部)
11a,11b :支点ピン孔(軸挿入部)
12:上動規制ブロック(前半移動規制部)
22a:上方の支点ピン支持板(移動規制部)
22b:下方の支点ピン支持板(移動規制部)
22b1:下方の支点ピン支持板の前半移動規制部
22b2:下方の支点ピン支持板の後半移動規制部
24a:上動規制部(後半移動規制部)
61a:ヒンジ連結ブロック体(軸挿入部)
61b:ヒンジ連結ブロック体(軸挿入部、移動規制部)
63:開き止め体(開き止め部)
74:廻り止め規制凹部(開き止め部)
74a:廻り止め規制面(開き止め部)
74b:当接部抜き孔
74c:当接規制面(移動規制部)
図1
図2
図3
図4
図5
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