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特開2024-18394ステントグラフト、及び、グラフト留置装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018394
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ステントグラフト、及び、グラフト留置装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240201BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121712
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山本 実明
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC02
4C097CC03
4C097CC16
4C097MM09
(57)【要約】
【課題】ステントグラフトを安定的にグラフト留置装置に対して係止させることと、当該ステントグラフトをより低侵襲に生体管腔内の所望の部位に留置することと、を両立させることが可能なステントを提供する。
【解決手段】ステントグラフト100は、管状グラフト90と、骨格部10と、を備え、骨格部10は、複数の巻回部15を有し、複数の巻回部15には、軸方向における一方の端に位置する端部巻回部が含まれ、端部巻回部は、複数の山部24を含み、当該端部巻回部における山部24以外の部位が管状グラフト90に対して縫着により固定されているとともに、山部24は管状グラフト90に対して非固定とされており、ステントグラフト100が縮径した状態では、複数の山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出した突出状態となり、当該ステントグラフト100が拡径した状態では、複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に留置されるステントグラフトであって、
グラフト材料により形成された管状グラフトと、
ワイヤにより構成されている骨格部であって、前記管状グラフトと同軸に配置されている骨格部と、
を備え、
前記骨格部は、それぞれ前記管状グラフトの周方向に巻回されているとともに前記管状グラフトの軸方向において相互にずれた位置に配置されている複数の巻回部を有し、
前記複数の巻回部には、前記軸方向における一方の端に位置する端部巻回部が含まれ、
前記端部巻回部は、前記一方に向けて凸のV字状の複数の山部と、前記一方に対する反対側に向けて凸のV字状の複数の谷部と、を含み、前記山部と前記谷部とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されており、
前記端部巻回部は、当該端部巻回部における前記山部以外の部位が前記管状グラフトに対して縫着により固定されているとともに、前記山部は前記管状グラフトに対して非固定とされており、
当該ステントグラフトが縮径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となり、
当該ステントグラフトが拡径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となるステントグラフト。
【請求項2】
前記端部巻回部は、隣り合う前記山部と前記谷部とを相互に繋ぐストラット部を更に備えている請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記谷部は、前記管状グラフトに対して縫着により固定されていることによって、前記管状グラフトに対して相対的に前記軸方向に変位不能となっており、
前記ストラット部は、前記管状グラフトに対して相対的に前記軸方向に変位可能、且つ、前記管状グラフトに対して揺動可能な状態で、前記管状グラフトに対して縫着されている請求項2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記ストラット部における前記山部との境界部位が前記管状グラフトに対して縫着されている請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記ストラット部は、直線状に形成されているとともに、前記谷部側から前記山部側に向かうにつれて前記一方の側に変位する向きに傾斜している請求項3又は4に記載のステントグラフト。
【請求項6】
当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記軸方向における前記山部の寸法よりも、前記境界部位から前記管状グラフトの前記一端までの距離が大きい請求項4又は5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記境界部位から前記山部の頂点までの距離が、前記境界部位から前記管状グラフトの前記一端までの距離よりも大きい請求項4又は5に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記骨格部は、前記管状グラフトと同軸に配置されているとともに前記管状グラフトの軸方向において相互に離間している複数のリングにより構成されており、
前記複数のリングの各々が前記巻回部を構成している請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項9】
前記骨格部は、螺線状に形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項10】
当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記山部の頂角が45度以上である請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載のステントグラフトと、前記ステントグラフトを生体管腔内の留置箇所に送達する送達システムと、を備え、前記ステントグラフトを生体管腔内に留置するためのグラフト留置装置であって、
前記ステントグラフトが縮径した状態では、前記山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムに対して係止されており、
前記ステントグラフトが拡径した状態では、前記山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムから離脱するグラフト留置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフト、及び、グラフト留置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフト留置装置(同文献には、デリバリーシステムと記載)等によって生体管腔内の所望の部位に搬送されるとともに、当該所望の部位に留置して用いられるステントグラフトとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1のステントグラフトは、管状グラフト(同文献には、皮膜と記載)と、管状グラフトの軸方向における一方の端に配置されている端部巻回部(同文献には、端部骨格と記載)と、を備えている。
特許文献1の端部巻回部は、複数の山部を含み、複数の山部は、ステントグラフトの縮径状態と拡径状態との両方において、管状グラフトの一端から軸方向に突出しており、ステントグラフトは、当該複数の山部を介してデリバリー装置と連結されている。このため、ステントグラフトは、これらの複数の山部が管状グラフトの一端から軸方向に突出した状態で生体管腔内に留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/177303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1のステントグラフトは、生体管腔内に留置する際の低侵襲性を実現する観点から、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、生体管腔内に留置されるステントグラフトであって、
グラフト材料により形成された管状グラフトと、
ワイヤにより構成されている骨格部であって、前記管状グラフトと同軸に配置されている骨格部と、
を備え、
前記骨格部は、それぞれ前記管状グラフトの周方向に巻回されているとともに前記管状グラフトの軸方向において相互にずれた位置に配置されている複数の巻回部を有し、
前記複数の巻回部には、前記軸方向における一方の端に位置する端部巻回部が含まれ、
前記端部巻回部は、前記一方に向けて凸のV字状の複数の山部と、前記一方に対する反対側に向けて凸のV字状の複数の谷部と、を含み、前記山部と前記谷部とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されており、
前記端部巻回部は、当該端部巻回部における前記山部以外の部位が前記管状グラフトに対して縫着により固定されているとともに、前記山部は前記管状グラフトに対して非固定とされており、
当該ステントグラフトが縮径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となり、
当該ステントグラフトが拡径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となるステントグラフトが提供される。
【0006】
また、本発明によれば、本発明のステントグラフトと、前記ステントグラフトを生体管腔内の留置箇所に送達する送達システムと、を備え、前記ステントグラフトを生体管腔内に留置するためのグラフト留置装置であって、
前記ステントグラフトが縮径した状態では、前記山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムに対して係止されており、
前記ステントグラフトが拡径した状態では、前記山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムから離脱するグラフト留置装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステントグラフトを安定的にグラフト留置装置に対して係止させることと、当該ステントグラフトをより低侵襲に生体管腔の留置箇所に留置することと、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るステントグラフトの模式的な平面図であり、ステントグラフトが拡径した状態を示す。
図2】実施形態における端部巻回部の斜視図であり、ステントグラフトが拡径した状態を示す。
図3】実施形態に係るステントグラフトの先端部の部分拡大図であり、ステントグラフトを平坦に展開した状態、且つ、ステントグラフトが拡径した状態を示す。
図4】実施形態に係るステントグラフトの先端部の部分拡大図であり、ステントグラフトを平坦に展開した状態、且つ、ステントグラフトが縮径した状態を示す。
図5】実施形態における端部巻回部の部分拡大図であり、端部巻回部を平坦に展開した状態、且つ、端部巻回部が拡径した状態を示す。
図6】実施形態に係るグラフト留置装置を示す図であり、アウターシースの先端部及びその周辺構造を示す。
図7】実施形態に係るステントグラフトが生体管腔内に留置されている状態を示す模式図である。
図8】変形例1に係るステントグラフトの先端部の部分拡大図であり、ステントグラフトを平坦に展開した状態、且つ、ステントグラフトが拡径した状態を示す。
図9】変形例2に係るステントグラフトの模式的な平面図であり、ステントグラフトが拡径した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。
なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
ステントグラフト100の軸方向(管状グラフト90の軸方向)は、図1における上下方向である。
図3及び図4は、ステントグラフト100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し展開した状態を示す図であり、図3及び図4における左右方向は、ステントグラフト100の周方向と対応している。同様に、図5は、端部巻回部を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図5における上下方向は、ステントグラフト100の周方向と対応している。また、図1図3図4及び図6において、管状グラフト90の外形線の内側の領域を等間隔に配列されている複数のドットの網掛けで表している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るステントグラフト100は、生体管腔内に留置されるステントグラフト100であって、グラフト材料により形成された管状グラフト90と、ワイヤ13により構成されている骨格部10であって、管状グラフト90と同軸に配置されている骨格部10と、を備えている。
骨格部10は、それぞれ管状グラフト90の周方向に巻回されているとともに管状グラフト90の軸方向において相互にずれた位置に配置されている複数の巻回部15を有する。
複数の巻回部15には、軸方向における一方の端(本実施形態の場合、後述する先端91a)に位置する端部巻回部(本実施形態の場合、後述する第1巻回部21)が含まれる。
図2に示すように、端部巻回部は、一方に向けて凸のV字状の複数の山部24と、一方に対する反対側に向けて凸のV字状の複数の谷部28と、を含み、山部24と谷部28とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されている。
また、図3に示すように、端部巻回部は、当該端部巻回部における山部24以外の部位が管状グラフト90に対して縫着により固定されているとともに、山部24は管状グラフト90に対して非固定とされている。
ステントグラフト100が縮径した状態では、複数の山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出した突出状態となり(図4及び図6参照)、当該ステントグラフト100が拡径した状態では、複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態となる(図1及び図3参照)。
【0011】
また、図6に示すように、本実施形態に係るグラフト留置装置200は、上記のステントグラフト100と、ステントグラフト100を生体管腔内の留置箇所に送達する送達システム210と、を備え、ステントグラフト100を生体管腔内に留置するためのグラフト留置装置である。
ステントグラフト100が縮径した状態では、山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出した突出状態となって、複数の山部24が送達システムに対して係止されている。
ステントグラフト100が拡径した状態では、山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態となって、複数の山部24が送達システムから離脱する。
【0012】
ステントグラフト100の縮径状態とは、ステントグラフト100がアウターシース220内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている状態を意味している。また、ステントグラフト100の拡径状態とは、少なくとも縮径状態よりも拡径した状態を意味しており、例えば、ステントグラフト100の自然状態である。
ステントグラフト100は、グラフト留置装置200のアウターシース220(図6参照)の先端部211内に収容されている間は縮径状態となっている。ステントグラフト100を収容しているアウターシース220の先端部221を生体管腔の留置箇所に送達し、アウターシース220からステントグラフト100を離脱させると、ステントグラフト100は縮径状態から拡径状態へと弾性復元する。こうして、ステントグラフト100を生体管腔の留置箇所に搬送及び留置することができる。
【0013】
本実施形態によれば、ステントグラフト100が縮径した状態では、複数の山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出した突出状態となるので、複数の山部24をグラフト留置装置200の送達システム210に対して係止させることができる。すなわち、複数の山部24によって送達システム210(後述する先端チップ240)を外周囲から拘束するようにして、複数の山部24ひいてはステントグラフト100を送達システム210に対して係止させることができる。よって、ステントグラフト100を安定的に送達システム210に対して係止させた状態で、ステントグラフト100を生体管腔内の留置箇所に送達することができる。
一方、ステントグラフト100が拡径した状態では、複数の山部24が送達システム210からその外周囲に離間することによって、送達システム210が複数の山部24による拘束から解除されるので、複数の山部24を(ひいてはステントグラフト100を)送達システム210から離脱させることができる。
また、ステントグラフト100が拡径した状態では、複数の山部24は、管状グラフト90に収納された非突出状態となる。すなわち、ステントグラフト100は、複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態で生体管腔内の留置箇所に留置される。
これにより、管状グラフト90によって生体組織を複数の山部24から保護することができるので、ステントグラフト100をより低侵襲に生体管腔の留置箇所に留置することができる。
このように本実施形態によれば、ステントグラフト100を安定的にグラフト留置装置200に対して係止させることと、当該ステントグラフト100をより低侵襲に生体管腔の留置箇所に留置することと、を両立させることができる。
更には、複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態で生体管腔内に留置されるので、図7に示すように、当該生体管腔から分枝している他の生体管腔の開口の近傍、且つ、当該開口に対する山部24の干渉を抑制できる位置でステントグラフト100を配置することができる。
【0014】
以下の説明において、管状グラフト90の周方向を単に周方向と称し、管状グラフト90の軸方向を単に軸方向と称する場合がある。また、便宜的に、軸方向における一方側(一端側(図1における上方向))を先端側、軸方向における他方側(他端側(図1における下方向))を基端側と称する。
また、ステントグラフト100の各部の位置関係及び形状は、特に断りが無い限り、ステントグラフト100の拡径状態での位置関係及び形状を説明したものである。
【0015】
本実施形態の場合、骨格部10は、管状グラフト90と同軸に配置されているとともに管状グラフト90の軸方向において相互に離間している複数のリング16により構成されており、複数のリング16の各々が巻回部15を構成している。なお、図1及び図7においては、複数のリング16(複数の巻回部15)の形状を簡略化して示している。
また、図1に示すように、骨格部10は、複数の巻回部15として、管状グラフト90の先端部91に配置されている第1巻回部21と、当該管状グラフト90の基端部92に配置されている複数の第4巻回部51と、第1巻回部21と複数の第4巻回部51との間に配置されている複数の第2巻回部31及び複数の第3巻回部41と、を有する。より詳細には、管状グラフト90において、第1巻回部21、複数の第2巻回部31、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51が、軸方向において先端側からこの順に配置されている。
複数の巻回部15の各々は、例えば、略円環状に形成されている。複数の巻回部15(第1巻回部21~複数の第4巻回部51)は、例えば、互いに同径に形成されており、互いに同軸に配置されており、且つ、軸方向において互いに離間して配置されている。なお、ここでいう離間とは、複数の巻回部15が、周方向における各位置においてそれぞれ軸方向に離間していることを意味しており、図1に示すように、1つの巻回部15の全体と当該巻回部15に隣接する他の巻回部15の全体とが軸方向において重複していることを許容する。
本実施形態の場合、複数の巻回部15のうち、管状グラフト90の先端部91に配置されている第1巻回部21が、上記の端部巻回部を構成している。すなわち、本実施形態の場合、端部巻回部は軸方向における先端に位置する。
【0016】
図2に示すように、端部巻回部(第1巻回部21)を構成しているワイヤ13は、一例として、2本のワイヤ13である。その他の巻回部15を構成しているワイヤ13は、例えば、それぞれ1本のワイヤである。ただし、複数の巻回部15の各々は、1本のワイヤによって構成されていてもよいし、複数のワイヤによって構成されていてもよい。
ワイヤ13の材料は、特に限定されず、金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。
ワイヤ13の線径(外径)は、特に限定されないが、例えば、0.05mm以上0.55mm以下であることが好ましい。
【0017】
図1及び図2に示すように、第1巻回部21は、複数(例えば、6つ)の山部24と、複数(例えば、6つ)の谷部28と、を含み、山部24と谷部28とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されている。
複数の山部24の各々は、第1傾斜方向(図3における右上がり方向)に延在する第1傾斜部22と、第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向(図3における左上がり方向)に延在する第2傾斜部23と、を含む。複数の山部24の各々は、第1傾斜部22と第2傾斜部23とによって、先端側に向けて凸のV字状に形成されている。また、個々の山部24において、第1傾斜部22の一端部と第2傾斜部23の一端部との境界の角部の頂点が当該山部24の頂点24aを構成している。
複数の谷部28の各々は、第3傾斜方向(図3における右下がり方向)に延在する第3傾斜部26と、第3傾斜方向とは逆向きの第4傾斜方向(図3における左下がり方向)に延在する第4傾斜部27と、を含む。複数の谷部28の各々は、第3傾斜部26と第4傾斜部27とによって、基端側に向けて凸のV字状に形成されている。
図1及び図3に示すように、軸方向において、複数の山部24の各々は、複数の谷部28の各々よりも先端側に配置されている。
また、本実施形態の場合、軸方向において、複数の山部24は、互いに略同等の位置に配置されており、複数の谷部28も、互いに略同等の位置に配置されている。
また、例えば、周方向において、複数の山部24は、互いに略等間隔で配置されており、複数の谷部28も、互いに略等間隔で配置されている。
【0018】
図3等に示すように、第1傾斜部22、第2傾斜部23、第3傾斜部26及び第4傾斜部27は、例えば、それぞれ略直線状に形成されている。ただし、本発明において、第1傾斜部22、第2傾斜部23、第3傾斜部26及び第4傾斜部27は、それぞれ湾曲形状に形成されていてもよい。
また、各山部24の角部(第1傾斜部22の一端部と第2傾斜部23の一端部との境界の角部)及び各谷部28の角部(第3傾斜部26の一端部と第4傾斜部27の一端部との境界の角部は、それぞれ丸みを帯びた形状に形成されている。
【0019】
本実施形態の場合、ステントグラフト100の縮径状態では、ステントグラフト100が有する山部24のうちの、少なくとも複数(例えば、3つ以上)の山部24が、管状グラフト90の先端91aよりも先端側に突出した突出状態となり、好ましくはすべての山部24が突出状態となる。
また、ステントグラフト100の縮径状態では、突出状態となる山部24について、当該山部24の少なくとも一部分が、管状グラフト90の先端91aよりも先端側に突出する。好ましくは、ステントグラフト100の縮径状態では、突出状態となる山部24について、当該山部24の軸方向における長さの1/3以上が、管状グラフト90の先端91aよりも先端側に突出し、より好ましくは当該山部24の軸方向における長さの1/2以上が、管状グラフト90の先端91aよりも先端側に突出し、更に好ましくは当該山部24の全体が管状グラフト90の先端91aよりも先端側に突出する。
同様に、本実施形態の場合、ステントグラフト100の拡径状態では、ステントグラフト100が有する山部24のうちの、少なくとも複数(例えば、3つ以上)の山部24が管状グラフト90に収納される非突出状態となり、好ましくはすべての山部24が非突出状態となる。
また、ステントグラフト100の拡径状態では、非突出状態となる山部24について、少なくともステントグラフト100の縮径状態と比較して、管状グラフト90に収納される(管状グラフト90の先端91aよりも基端側に配置される)。好ましくは、ステントグラフト100の拡径状態では、非突出状態となる山部24について、当該山部24の軸方向における長さの1/3以上が、管状グラフト90に収納され、より好ましくは当該山部24の軸方向における長さの1/2以上が、管状グラフト90に収納され、更に好ましくは当該山部24の全体が、管状グラフト90に収納される。なお、ここでいう「山部24の全体が、管状グラフト90に収納される」とは、山部24の頂点24aが、管状グラフト90の先端91aと軸方向において同じ位置にある状態も含む。
【0020】
更に、図2及び図3に示すように、端部巻回部(本実施形態の場合、第1巻回部21)は、例えば、隣り合う山部24と谷部28とを相互に繋ぐストラット部29を備えている。
ストラット部29は、山部24の一端部24bと当該山部24の一方の側に隣接する谷部28の一端部28aとを相互に繋いでいる第1ストラット部29aと、当該山部24の他端部24cと当該山部24の他方の側に隣接する谷部28の他端部28bとを相互に繋いでいる第2ストラット部29bと、を含む。
第1巻回部21は、第1ストラット部29a、山部24、第2ストラット部29b、谷部28が、図3における左からこの順に繰り返し連なった形状である。
また、本実施形態の場合、ストラット部29(第1ストラット部29a及び第2ストラット部29b)は、直線状に形成されている。また、ストラット部29(同上)は、谷部28側から山部24側に向かうにつれて先端側に変位する向きに傾斜している。
より詳細には、第1ストラット部29aは、例えば、対応する谷部28の一端部28aから山部24の一端部24bに向けて、図3における右上がり方向に傾斜している。第2ストラット部29bは、例えば、対応する谷部28の他端部28bから山部24の他端部24cに向けて、図3における左上がり方向に傾斜している。そして、複数の山部24の各々は、ストラット部29よりも先端側に配置されている。
また、管状グラフト90の軸心に対して直交する仮想線401(図5参照)を基準として、ストラット部29の傾斜角度(図5に示すR2)は、山部24の第1傾斜部22及び第2傾斜部23の各々の傾斜角度よりも小さい。なお、ここでの傾斜角度とは、ステントグラフト100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態(図3及び図5等参照)における傾斜角度である。
軸方向において、各第1ストラット部29aは、互いに略同等の位置に配置されており、各第2ストラット部29bも、多賀に略同等の位置に配置されている。
【0021】
本発明において、例えば、個々の山部24において、第1傾斜部22と第2傾斜部23とは、互いに同等の長さ寸法(延在方向における寸法)や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。また、各山部24の第1傾斜部22は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。同様に、各山部24の第2傾斜部23は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。
本実施形態の場合、個々の山部24において、第1傾斜部22の長さ寸法と、第2傾斜部23の長さ寸法とは、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、各山部24の第1傾斜部22は、互いに同等の長さ寸法に設定されており、各山部24の第2傾斜部23も、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、個々の山部24において、管状グラフト90の軸心に対する第1傾斜部22の傾斜角度と、当該軸心に対する第2傾斜部23の傾斜角度とは、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
また、各山部24の第1傾斜部22は、互いに同等の傾斜角度に設定されており、各山部24の第2傾斜部23も、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
同様に、本発明において、例えば、個々の谷部28において、第3傾斜部26と第4傾斜部27とは、互いに同等の長さ寸法(延在方向における寸法)や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。また、各谷部28の第3傾斜部26は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。同様に、各谷部28の第4傾斜部27は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。
本実施形態の場合、個々の谷部28において、第3傾斜部26の長さ寸法と、第4傾斜部27の長さ寸法とは、例えば、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、各谷部28の第3傾斜部26は、互いに同等の長さ寸法に設定されており、各谷部28の第4傾斜部27も、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、個々の谷部28において、管状グラフト90の軸心に対する第3傾斜部26の傾斜角度と、当該軸心に対する第4傾斜部27の傾斜角度とは、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
また、各谷部28の第3傾斜部26は、互いに同等の傾斜角度に設定されており、各谷部28の第4傾斜部27も、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
【0022】
更に、本発明において、例えば、各第1ストラット部29aと、各第2ストラット部29bとは、互いに同等の長さ寸法(延在方向における寸法)や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。また、各第1ストラット部29aは、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。同様に、各第2ストラット部29bは、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。
本実施形態の場合、各第1ストラット部29aの長さ寸法と、各第2ストラット部29bの長さ寸法とは、例えば、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、各第1ストラット部29aは、互いに同等の長さ寸法に設定されており、各第2ストラット部29bも、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、管状グラフト90の軸心に対して直交に対する仮想線401(図5参照)を基準とした第1ストラット部29aの傾斜角度と、当該仮想線401を基準とした第2ストラット部29bの傾斜角度とは、互いに同等の寸法に設定されている。
また、各第1ストラット部29aは、互いに同等の傾斜角度に設定されており、各第2ストラット部29bも、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
【0023】
複数の第2巻回部31の各々は、例えば、図1における右上がり方向に延在する第1延在部33と、第1延在部33の延在方向とは逆向きの方向(図1における右下がり方向)に延在する第2延在部34と、が交互に繰り返し連なったジグザグ形状である。複数の第2巻回部31において、第1延在部33の一端部と当該第1延在部33の一方の側に隣接する第2延在部34の一端部との境界の角部は先端側に向けて凸の形状となっており、第1延在部33の他端部と当該第1延在部33の他方の側に隣接する第2延在部34の他端部との境界の角部が基端側に向けて凸の形状となっている。
また、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51は、例えば、それぞれ第2巻回部31と略同一形状及び略同一寸法となっている。したがって、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51も、それぞれ第1延在部33と第2延在部34とが交互に繰り返し連なったジグザグ形状である。なお、本発明において、第2巻回部31、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51は、互いに異なる形状に形成されていてもよい。
また、本実施形態の場合、第2巻回部31、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51は、常時(すなわちステントグラフト100が縮径状態か拡径状態かにかかわらず)管状グラフト90に収まっている。すなわち、第2巻回部31、複数の第3巻回部41及び複数の第4巻回部51は、軸方向において、管状グラフト90の先端91aと基端92aとの間に位置する。
【0024】
本発明において、例えば、個々の第2巻回部31~第4巻回部51において、第1延在部33と第2延在部34とは、互いに同等の長さ寸法(延在方向における寸法)や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。また、各第1延在部33は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。同様に、各第2延在部34は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。
本実施形態の場合、個々の第2巻回部31~第4巻回部51において、各第1延在部33の長さ寸法と、各第2延在部34の長さ寸法とは、例えば、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、各第1延在部33は、互いに同等の長さ寸法に設定されており、各第2延在部34も、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、個々の第2巻回部31~第4巻回部51において、管状グラフト90の軸心に対する第1延在部33の傾斜角度と、当該軸心に対する第2延在部34の傾斜角度とは、互いに同等の寸法に設定されている。
また、各第1延在部33の傾斜角度は、互いに同等の傾斜角度に設定されており、各第2延在部34も、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
【0025】
なお、本発明において、骨格部10が有する巻回部15の数は特に限定されず、ステントグラフト100の各部位の所望の寸法や用途に応じて適宜変更することができる。
【0026】
上述のように、ステントグラフト100は、骨格部10に加えて、グラフト材料により形成された管状グラフト90を備えている。
本実施形態の場合、骨格部10は、管状グラフト90と同径に形成されている。
管状グラフト90は、例えば、円筒状に形成されている。また、管状グラフト90は、ステントグラフト100の縮径に伴って縮径することができるように構成されているとともに、ステントグラフト100の拡径に伴って拡径することができるように構成されている。
図1に示すように、本実施形態の場合、一例として、第1巻回部21、複数の第2巻回部31及び複数の第4巻回部51は、それぞれ管状グラフト90の内周面(内側)に固定されており、複数の第3巻回部41の各々は、管状グラフト90の外周面(外側)に固定されている。すなわち、複数の巻回部15のうち、管状グラフト90の先端部91、基端部92及びその近傍に配置されている巻回部15は、管状グラフト90の内周面(内側)に固定されている。これにより、ステントグラフト100を留置する際に、管状グラフト90の先端部91及び基端部92の各々が生体管腔の内壁面に対して良好に密着するようにできる。なお、図3図4及び図6においては、便宜的に複数の巻回部15を実線で示している。
ここで、上述の「管状グラフト90と同径に形成されている」とは、骨格部10が管状グラフト90の内側に固定されている場合は、骨格部10の外径と管状グラフト90の内径とが互いに等しいことを意味しており、骨格部10が管状グラフト90の外側に固定されている場合は、骨格部10の内径と管状グラフト90の外径とが互いに等しいことを意味している。
なお、本発明において、ステントグラフト100は2つの(二重の)管状グラフト90を備えており、骨格部10は、外側の管状グラフト90の内周面と内側の管状グラフト90の外周面との間に配置されていてもよい。
【0027】
管状グラフト90を構成する材料は、血流を透過させないものであればよく、例えば、セルロース繊維、綿、リンター、カポック、亜麻、大麻、ラミー、絹、羊毛等の天然繊維、ナイロン(ポリアミド)、テトロン、レーヨン、キュプラ、アセテート、ビニロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、シリコーン等の化学繊維、またはこれら天然および化学繊維のうちの2以上の組み合わせ(混紡等)等が挙げられる。
【0028】
ここで、本実施形態の場合、谷部28は、管状グラフト90に対して縫着により固定されていることによって、管状グラフト90に対して相対的に軸方向に変位不能となっている。
一方、ストラット部29(第1ストラット部29a及び第2ストラット部29b)は、管状グラフト90に対して軸方向に変位可能、且つ、管状グラフト90に対して揺動可能な状態で、管状グラフト90に対して縫着されている。
なお、ここでいう「変位不能」とは、谷部28が、軸方向において、管状グラフト90に対して相対的に実質的に変位不能であることを意味している。より詳細には、各谷部28は、ストラット部29よりも強固に管状グラフト90に対して固定されており、軸方向において、谷部28の変位量は、少なくとも山部24の変位量よりも小さいことを意味している。つまり、軸方向において、谷部28が管状グラフト90に対して僅かに変位することは許容する。
このような構成によれば、ステントグラフト100が縮径する際に、ストラット部29が揺動しつつ管状グラフト90に対して相対的に前進(先端側に移動)するので、山部24の突出量を十分に確保することができる。また、ステントグラフト100が拡径する際には、ストラット部29が揺動しつつ管状グラフト90に対して相対的に後退(基端側に移動)するので、山部24がより確実に管状グラフト90に収納されるようにできる。
【0029】
また、図3等に示すように、本実施形態の場合、ストラット部29における山部24との境界部位(以下、山部側境界部位25a、25b)が管状グラフト90に対して縫着されている。
このような構成によれば、谷部28の縫着箇所(後述する複数の第2縫着部66)からストラット部29の縫着箇所(後述する第1縫着部61a、61b)までの距離を十分に確保できる。このため、ステントグラフト100が縮径する際のストラット部29の挙動を安定的に行うことができ、各山部24の突出量を所望の突出量にすることができる。すなわち、ストラット部29が、管状グラフト90に対して相対的に揺動しつつ前進する(先端側に移動する)動作の、当該ストラット部29の揺動角度及び前進距離を再現性良くすることができるとともに、当該動作を安定的に行うことができる。
【0030】
本実施形態の場合、図3及び図5等に示すように、個々の第1ストラット部29aにおいて、1つの縫着部(以下、第1縫着部61a)が形成されている。
より詳細には、第1縫着部61aは、第1ストラット部29aにおける山部24との境界部位(山部側境界部位25a)に形成されている。同様に、個々の第2ストラット部29bにおいて、1つの縫着部(以下、第1縫着部61b)が形成されている。第1縫着部61bは、第2ストラット部29bにおける山部24との境界部位(山部側境界部位25b)に形成されている。すなわち、各山部24の両端側にそれぞれ縫着部(第1縫着部61a、61b)が形成されている。一方、例えば、ストラット部29における谷部28との境界部位(以下、谷部側境界部位25c、25d)には、縫着部は形成されていない。
また、個々の山部24において、縫着部は形成されておらず、管状グラフト90に対して非固定となっている。このため、ストラット部29の揺動及び進退に伴って、各山部24も、管状グラフト90に対して相対的に軸方向に変位可能である。
第1縫着部61aは、例えば、I字状に形成されている。第1縫着部61aは、第1ストラット部29aの傾斜方向に対する反対方向(図3における左上がり方向)に傾斜している。同様に、第1縫着部61bは、例えば、I字状に形成されている。第1縫着部61bは、第2ストラット部29bの傾斜方向に対する反対方向(図3における右上がり方向)に傾斜している。また、本実施形態の場合、各第1ストラット部29aは、対応する第1縫着部61aの両端どうしの間において、当該第1縫着部61aに対して相対的に軸方向に変位可能且つ揺動可能である。同様に、各第2ストラット部29bは、対応する第1縫着部61bの両端どうしの間において、当該第1縫着部61bに対して相対的に軸方向に変位可能且つ揺動可能である。
このような構成によれば、X字状に縫着部が形成されている場合などと比較して、ステントグラフト100の縮径に伴って管状グラフト90が縮径する際に、管状グラフト90における各縫着部の形成領域及びその近傍に捩れ(よれ)や皺(しわ)が発生してしまうことを抑制できる。これにより、ステントグラフト100の縮径に伴って各山部24及びストラット部29が管状グラフト90に対して相対的に後退する際に、当該各山部24及びストラット部29が管状グラフト90に対して引っ掛かってしまうことを抑制できる。また、ステントグラフト100をアウターシース220から離脱させる際に、管状グラフト90がアウターシース220に対して引っ掛かってしまうことを抑制できる。
【0031】
一方、個々の谷部28において、第3傾斜部26と第4傾斜部27との両方が管状グラフト90に対して縫着されている。本実施形態の場合、第3傾斜部26及び第4傾斜部27のそれぞれに複数の縫着部(以下、第2縫着部66)が形成されている。一例として、各第3傾斜部26において、4つの第2縫着部66が形成されており、このうち1つの第2縫着部66は、第3傾斜部26におけるストラット部29側の境界部位26aに形成されている。同様に、各第4傾斜部27においても、4つの第2縫着部66が形成されており、このうち1つの第2縫着部66は、第4傾斜部27におけるストラット部29側の境界部位27aに形成されている。また、第3傾斜部26と第4傾斜部27との境界の角部において、1つの第2縫着部66が形成されている。
複数の第2縫着部66の各々は、I字状に形成されている。より詳細には、複数の第2縫着部66のうち、境界部位26a及び第3傾斜部26に形成されている第2縫着部66は、例えば、第3傾斜部26の傾斜方向に対する反対方向(図3における右上がり方向)に傾斜している。複数の第2縫着部66のうち、境界部位27a及び第4傾斜部27に形成されている第2縫着部66は、例えば、第4傾斜部27の傾斜方向に対する反対方向(図3における左上がり方向)に傾斜している。また、第3傾斜部26と第4傾斜部27との境界の角部に形成されている第2縫着部66は、軸方向に延在している。
第3傾斜部26に形成されている各第2縫着部66と、第4傾斜部27に形成されている各第2縫着部66とは、軸方向において互いに略対称形状に配置されている。
このように、個々の谷部28は、当該谷部28の複数箇所において、管状グラフト90に対して縫着により固定されている。
【0032】
一例として、個々の縫着部(第1縫着部61a、61b及び複数の第2縫着部66)は、1本の糸部材(不図示)を用いて縫着することによって形成されている。個々の縫着部を形成する糸部材の両端部は、結び目(不図示)を形成しており管状グラフト90に対して固定されている。なお、図1及び図6においては、便宜的に個々の縫着部の図示を省略している。
ただし、本発明において、個々の縫着部の形状は特に限定されず、ワイヤ13の線径や管状グラフト90の材料などに応じて適宜設定することができる。
また、第1縫着部61a、61bの幅寸法(図3に示すW1)は、ストラット部29の線径よりも大きい。好ましくは、第1縫着部61a、61bの幅寸法W1は、ストラット部29の線径の1.5倍以上10倍以下であり、より好ましくは当該線径の2倍以上5倍以下である。本実施形態の場合、一例として、第1縫着部61a、61bの幅寸法W1は、1mm以上2mm以下である。
これにより、逢着部(第1縫着部61a、61b)に対するストラット部29の動きの自由度を確保できるので、ストラット部29が、管状グラフト90に対して揺動しつつ進退する際の、当該ストラット部29の揺動角度及び進退距離を十分に確保することができる。
また、個々の第2縫着部66の幅寸法(図3に示すW2)は、第1縫着部61a、61bの幅寸法W1と同等又は当該幅寸法W1よりも小さい。より詳細には、個々の第2縫着部66の幅寸法W2は、第1縫着部61a、61bの幅寸法W1よりも小さいことが好ましく、例えば、個々の第2縫着部66の幅寸法W2は、第1縫着部61a、61bの幅寸法W1の1/2以下であってもよい。本実施形態の場合、一例として、個々の第2縫着部66の幅寸法W2は、0.2mm以上1mm以下である。
これにより、各谷部28をストラット部29よりも強固に管状グラフト90に対して固定することができる。
【0033】
本実施形態の場合、ステントグラフト100が縮径する際には、第1ストラット部29aは、当該第1ストラット部29aと対応する谷部28との境界の角部の頂点30aを支点として、先端側に向けて立ち上がる方向(管状グラフト90の軸心に沿う方向に反時計回りに揺動しつつ、管状グラフト90に対して相対的に前進する。同様に、第2ストラット部29bは、当該第2ストラット部29bと対応する谷部28との境界の角部の頂点30bを支点として、先端側に向けて立ち上がる方向に時計回りに揺動しつつ、管状グラフト90に対して相対的に前進する。これにより、各山部24は、対応する第1ストラット部29aと第2ストラット部29bとによって先端側に押し上げられ、管状グラフト90に対して相対的に前進する。この際に、周方向において、各縫着部(第1縫着部61a、61b及び第2縫着部66)は、管状グラフト90の縮径に伴って互いに近づく方向に変位する。また、山部24の第1傾斜部22及び第2傾斜部23の各々も、頂点24aを支点として、管状グラフト90の軸心に沿う方向に揺動する。すなわち、複数の山部24の各々は、その頂角(図5に示すR1)が狭まる方向に弾性変形する。この結果、複数の山部24は、管状グラフト90の先端91aから先端側に突出した突出状態となる。
また、ステントグラフト100が拡径する際には、第1ストラット部29aは、頂点30aを支点として、基端側に向けて倒れる方向(管状グラフト90の軸心に対して直交する方向)時計回りに揺動しつつ、管状グラフト90に対して相対的に後退する。同様に、第2ストラット部29bは、頂点30bを支点として、基端側に向けて倒れる方向に反時計回りに揺動しつつ、管状グラフト90に対して相対的に後退する。これにより、各山部24は、対応する第1ストラット部29aと第2ストラット部29bとによって基端側に牽引され、管状グラフト90に対して相対的に後退する。この際に、周方向において、各縫着部は、管状グラフト90の拡径に伴って互いに遠ざかる方向に変位する。また、山部24の第1傾斜部22及び第2傾斜部23の各々も、頂点24aを支点として、管状グラフト90の軸心に対して直交する方向に揺動する。すなわち、複数の山部24の各々は、その頂角R1が広がる方向に弾性変形する。この結果、複数の山部24は、管状グラフト90に収納された非突出状態となる。
【0034】
ここで、本実施形態の場合、上述のようにストラット部29は、直線状に形成されているとともに、谷部28側から山部24側に向かうにつれて一方の側(本実施形態の場合、先端側)に変位する向きに傾斜している。
これにより、ステントグラフト100が縮径する際のストラット部29の挙動(上述のストラット部29が管状グラフト90に対して揺動しつつ前進する動作)をスムーズに行うことができる。
また、ストラット部29は直線状に形成されているので、ストラット部29の延在方向におけるいずれの部位に第1縫着部61a、61bを形成したとしても、ストラット部29はスムーズに管状グラフト90に対して相対的に揺動及び進退できる。
【0035】
また、一例として、当該ステントグラフト100が拡径した状態において、軸方向における山部24の寸法(図3及び図5に示すL1)よりも、境界部位(山部側境界部位25a、25b)から管状グラフト90の一端(本実施形態の場合、先端91a)までの距離(図3に示すD1)が大きい。
これにより、ステントグラフト100が拡径した状態において、より確実に、複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態とすることができる。特に、ステントグラフト100が生体管腔の留置箇所に留置される際に、複数の山部24をより確実に非突出状態とすることができる。
【0036】
また、図3に示すように、ステントグラフト100が拡径した状態において、山部24の頂角R1が45度以上であることが好ましい。
このような構成によれば、ステントグラフト100が縮径する際には、上述のように各山部24はその頂角R1が狭まる方向に弾性変形するが、その変形に伴う各山部24の突出量を十分に確保することができる。
また、ステントグラフト100が拡径した状態において、山部24の頂角R1が、90度超であることが、好ましい一例である。
このような構成によれば、ステントグラフト100が縮径する際の各山部24の突出量をより一層に確保することができる。
なお、ここでの山部24の頂角R1とは、ステントグラフト100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し展開した状態(図3及び図5等参照)における角度である。
【0037】
以下、本実施形態に係るステントグラフト100の各部位の好ましい寸法の一例を示す。
ステントグラフト100の外径は、例えば、12mm以上26mm以下であることが好ましく、より好ましくは22mm以上36mm以下である。
山部側境界部位25a、25bから管状グラフト90の一端(先端91a)までの距離D1は、例えば、1mm以上9mm以下であることが好ましく、より好ましくは3mm以上7mm以下である。
軸方向における端部巻回部(第1巻回部21)の寸法L2(図5参照)は、例えば、5mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは7mm以上8mm以下である。
軸方向における個々の山部24の寸法L1は、例えば、1mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上5mm以下である。
山部24の頂角R1は、例えば、45度以上120度以下であることが好ましく、より好ましくは60度以上100度以下である。
ストラット部29の傾斜角度R2は、例えば、5度以上25度以下であることが好ましく、より好ましくは12度以上14度以下である。
谷部28の頂角R3は、例えば、20度以上45度以下であることが好ましく、より好ましくは25度以上40度以下である。
山部側境界部位25b(又は山部側境界部位25a)から山部24の頂点24aまでの距離D2(図5参照)は、1.5mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5mm以上8mm以下である。
周方向における山部側境界部位25a、25bと山部24の頂点24aとの離間距離D3(図5参照)は、例えば、0.7mm以上3.8mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.7mm以上2.8mm以下である。
周方向における、山部側境界部位25aと谷部側境界部位25cとの離間距離D4(山部側境界部位25bと谷部側境界部位25dとの離間距離)(図5参照)は、例えば、2.2mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.7mm以上4.5mm以下である。
山部側境界部位25aから谷部側境界部位25cまでの距離D5(山部側境界部位25bから谷部側境界部位25dまでの距離)(図5参照)は、例えば、1.5mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以上8.0mm以下である。
上記の距離D2と距離D5との合計値(ステントグラフト100が縮径する際の端部巻回部の伸びに寄与する部分の寸法)は、3mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは6.0mm以上16mm以下である。
軸方向における山部24の頂点24aから境界部位26a、27aまでの距離D6(図5参照)は、3mm以上7mm以下であることが好ましく、より好ましくは4mm以上6mm以下である。
軸方向における管状グラフト90の先端91aから山部24の頂点24aまでの距離D7(図3参照)は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0038】
ここで、本発明において、端部巻回部が有する山部24の数及び谷部28の数は特に限定されず、ステントグラフト100の各部位の所望の寸法に応じて適宜設定することができる。よって、例えば、端部巻回部が有する山部24の数は8つであり、端部巻回部が有する谷部28の数は8つであってもよい。この場合、ステントグラフト100の各部位の好ましい寸法の一例は以下のとおりである。
ステントグラフト100の外径は、45mm以上51mm以下であることが好ましく、より好ましくは、38mm以上46mm以下である。
山部側境界部位25a、25bから管状グラフト90の一端(先端91a)までの距離D1は、例えば、1mm以上9mm以下であることが好ましく、より好ましくは3mm以上7mm以下である。
軸方向における端部巻回部(第1巻回部21)の寸法L2は、例えば、5mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは7mm以上8mm以下である。
軸方向における個々の山部24の寸法L1は、例えば、1mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上5mm以下である。
山部24の頂角R1は、例えば、45度以上120度以下であることが好ましく、より好ましくは60度以上100度以下である。
ストラット部29の傾斜角度R2は、例えば、4度以上20度以下であることが好ましく、より好ましくは9度以上11度以下である。
谷部28の頂角R3は、例えば、20度以上45度以下であることが好ましく、より好ましくは25度以上40度以下である。
山部側境界部位25b(又は山部側境界部位25a)から山部24の頂点24aまでの距離D2は、1.5mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5mm以上8mm以下である。
周方向における山部側境界部位25a、25bと山部24の頂点24aとの離間距離D3は、例えば、1.4mm以上2.8mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.9mm以上2.3mm以下である。
周方向における山部側境界部位25aと谷部側境界部位25cとの離間距離D4(山部側境界部位25bと谷部側境界部位25dとの離間距離)は、例えば、3.0mm以上5.9mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0mm以上4.9mm以下である。
山部側境界部位25aから谷部側境界部位25cまでの距離D5(山部側境界部位25bから谷部側境界部位25dまでの距離)は、例えば、2.5mm以上15mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0mm以上10mm以下である。
また、上記の距離D2と距離D5との合計値(ステントグラフト100が縮径する際の端部巻回部の伸びに寄与する部分の寸法)は、4.0mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは6.5mm以上18mm以下である。
軸方向における山部24の頂点24aから境界部位26a、27aまでの距離D6は、3mm以上7mm以下であることが好ましく、より好ましくは4mm以上6mm以下である。
軸方向における管状グラフト90の先端91aから山部24の頂点24aまでの距離D7は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0039】
グラフト留置装置200の送達システム210は、例えば、管状に形成されているアウターシース220と、アウターシース220に対して軸方向に摺動可能に挿通されているインナーカテーテル230と、アウターシース220の基端部に設けられている操作部(不図示)と、を備えている。
なお、図6においては、アウターシース220の内部構造を示すため、便宜的にアウターシース220をその軸方向に沿った断面で図示している。
アウターシース220及びインナーカテーテル230の各々は、長尺な中空の管状部材である。図6に示すように、インナーカテーテル230は、アウターシース220の内腔に挿通されており、アウターシース220はインナーカテーテル230に対してその軸方向に摺動可能である。
インナーカテーテル230の先端部は、ステントグラフト100が配置される配置区間を構成しており、当該ステントグラフト100はこの配置区間に外挿された状態で、アウターシース220の先端部221内に収容される。
操作部に対する操作によってアウターシース220をインナーカテーテル230に対して相対的に基端側に後退させることによって、インナーカテーテル230の先端部、ひいてはステントグラフト100をアウターシース220から露出させ、生体管腔に留置することができる。
ここで、上述のように、ステントグラフト100の縮径状態において、複数の山部24が管状グラフト90の先端91aから軸方向に突出する。これにより、ステントグラフト100がアウターシース220内に収容されている状態において、アウターシース220の先端部221の内周面の一部分が、管状グラフト90の外周面ではなく複数の山部24に対して接触するようにできる。このため、アウターシース220を基端側に後退させる際のステントグラフト100とアウターシース220との間に生じる摩擦抵抗(放出抵抗)をより小さくすることができる。
【0040】
また、インナーカテーテル230の最先端部には、先端チップ240が設けられている。先端チップ240の基端部は、基端側に向けて徐々に縮径している。
本実施形態の場合、一例として、先端チップ240の基端部に対して、複数の山部24を紐部材71(図6参照)によって巻き付けることによって、ステントグラフト100を送達システム210に対して係止する。紐部材71の一端部は、アウターシース220の内腔を介して先端側から基端側からに向けて送達システム210の外部へと導出されている。なお、図6においては、便宜的に紐部材71の巻回部を選択的に図示している。
また、上述のように、ステントグラフト100の縮径状態において、複数の山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出した突出状態となる。また、本実施形態の場合、複数の山部24は周方向において略等間隔で配置されている。
このため、紐部材71によって、複数の山部24ひいてはステントグラフト100の先端部を周回状に拘束することができる。そして、複数の山部24が紐部材71によって周回状に拘束された状態では、ステントグラフト100の少なくとも先端部において縮径状態から拡径状態への弾性復元が規制される。このような構成によれば、ステントグラフト100をアウターシース220から離脱させた後も、少なくともステントグラフト100の先端部において縮径状態を維持することができる。このため、生体管腔の留置箇所において、アウターシース220から露出したステントグラフト100を精度よく配置した後に、紐部材71を山部24から取り外し当該ステントグラフト100を拡径状態とすることができる。すなわち、ステントグラフト100をより確実に所望の部位に留置することができる。
更には、管状グラフト90の外周囲ではなく、管状グラフト90の内面側に配置されている複数の山部24に紐部材71を巻回することができるので、縮径状態におけるステントグラフト100の外径をより小さくすることができる。よって、このため、ステントグラフト100を、より低侵襲に生体管腔の留置箇所に送達することができる。
【0041】
また、先端チップ240の基端部には、例えば、径方向外側に向けて突出した複数の突起部(不図示)が形成されている。複数の突起部は、周方向に並んで配置されており、各突起部に対して複数の山部24がそれぞれ係止される。
本実施形態の場合、先端チップ240の各突起部の長さ寸法(先端チップ240の軸方向における寸法)は、0.3mm以上1mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上0.8mm以下である。
なお、上述のように端部巻回部が有する山部24の数は8つであり、端部巻回部が有する谷部28の数は8つである場合、先端チップ240の各突起部の長さ寸法(同上)は、0.4mm以上1mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mm以上0.9mm以下である。
【0042】
以下、本実施形態のグラフト留置装置200の使用方法の一例を説明する。
以下では、一例として、ステントグラフト100を、大動脈弓310及び下行大動脈330における大動脈瘤320(図7参照)と対応する部位に留置する手技にグラフト留置装置200が用いられる例について説明する。
まず、送達システム210を、不図示のガイドワイヤに沿って生体管腔内に導入する。より詳細には、インナーカテーテル230をガイドワイヤの軸方向に沿って基端側から先端側に摺動させながら、アウターシース220の先端部221を留置箇所(大動脈瘤320及びその近傍)まで送り込む。次に、アウターシース220の先端部221が留置箇所まで挿入されたら、ステントグラフト100を留置する。より詳細には、先ず、アウターシース220を基端側に後退させることによって、ステントグラフト100の少なくとも先端部をアウターシース220から露出させる。そして、ステントグラフト100を所望の位置に位置決めした状態で、複数の山部24に巻回されている紐部材71を取り外す。これにより、送達システム210が複数の山部24による拘束から解除されるとともに、ステントグラフト100の先端部が、縮径状態から拡径状態となる。次に、ステントグラフト100の全体をアウターシース220から露出させることによって、当該ステントグラフト100の全体が、縮径状態から拡径状態となる。ただし、本発明において、ステントグラフト100の全体をアウターシース220から露出させた後に、紐部材71を複数の山部24から取り外してもよい。
このようにして、生体管腔の留置箇所にステントグラフト100が留置される。
ここで、本発明によれば、上述のように複数の山部24が管状グラフト90に収納された非突出状態で生体管腔内に留置される。よって、図7に示すように、大動脈弓310から分枝している分枝血管340の開口に対して複数の山部24が干渉してしまうことを抑制できる。これにより、ステントグラフト100が留置されている状態においても、分枝血管340に対する手技をスムーズに行うことができる。
【0043】
<変形例1>
次に、図8を用いて変形例1に係るステントグラフト100を説明する。
本実施形態の変形例1に係るステントグラフト100は、以下に説明する点で、上記の実施形態に係るステントグラフト100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るステントグラフト100と同様に構成されている。図8は、ステントグラフト100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図である。このため、図8における左右方向は、ステントグラフト100の周方向と対応している。また、図8において、管状グラフト90を等間隔に配列されている複数のドットの網掛けで表している。
【0044】
本変形例の場合、図8に示すように、当該ステントグラフト100が拡径した状態において、境界部位(山部側境界部位25a、25b)から山部24の頂点24aまでの距離D2が、当該境界部位から管状グラフト90の一端(本実施形態の場合、先端91a)までの距離D1よりも大きい。
このような構成によれば、境界部位(山部側境界部位25a、25b)から管状グラフト90の一端までの距離D1と比較して、各山部24の斜辺が十分な大きさを有する。これにより、上述のように各山部24がその頂角R1が狭まる方向に弾性変形する際に(ステントグラフト100が縮径する際に)、その変形に伴う山部24の突出量を十分に確保することができる。すなわち、ステントグラフト100の縮径状態において、複数の山部24が管状グラフト90の一端から軸方向に突出する構成をより確実に実現できる。
【0045】
<変形例2>
次に、図9を用いて実施形態の変形例2に係るステントグラフト100を説明する。
本実施形態の変形例2に係るステントグラフト100は、以下に説明する点で、上記の実施形態に係るステントグラフト100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るステントグラフト100と同様に構成されている。図9において、管状グラフト90を等間隔に配列されている複数のドットの網掛けで表している。
【0046】
図9に示すように、本変形例の場合、骨格部10は、螺線状に形成されている。
より詳細には、本変形例の場合、複数の巻回部15は、例えば、ワイヤ13が軸方向にジグザグ状に振れつつ、螺旋状に巻回されることによって構成されている。より詳細には骨格部10は、ワイヤ13が順次に段を変えつつ複数周回延在することによって形成されている。ワイヤ13は、例えば、各段において周方向に約1周回分延在しており、各巻回部15をそれぞれ構成している。
螺旋状の骨格部10は、管状グラフト90の先端部91から基端部92に亘って延在しており、複数の巻回部15のうち最も先端側に位置している巻回部15が端部巻回部を構成している。
端部巻回部は、実施形態と同様に、複数の山部24、複数の谷部28及びストラット部29(第1ストラット部29a及びストラット部29b)を有する。
本変形例の場合も、軸方向において、複数の山部24は互いに略同等の位置に配置されていることが好ましく、複数の谷部28も互いに略同等の位置に配置されていることが好ましい。また、軸方向において、各第1ストラット部29aは互いに略同等の位置に配置されていることが好ましく、各第2ストラット部29bも互いに略同等の位置に配置されていることが好ましい。
例えば、本変形例の場合、螺旋状の骨格部10の全体が、管状グラフト90の内周面に固定されている。ただし、本変形例の場合も、ステントグラフト100は2つ(二重)の管状グラフト90を備え、当該2つの管状グラフト90どうしの間に骨格部10が配置されていてもよい。
このような構成によっても、ステントグラフト100を安定的にグラフト留置装置200に対して係止させることが可能な構成を実現しつつ、当該ステントグラフト100をより低侵襲に生体管腔の留置箇所に留置することができる。
【0047】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0048】
例えば、本発明において、骨格部10は、少なくとも複数の山部24と複数の谷部28とを含む端部巻回部を有していればよく、その他の巻回部15の形状は図1図10に示す形状に限定されない。
【0049】
また、上記においては、端部巻回部が、ストラット部29を含む例を説明したが、本発明において、端部巻回部は、少なくとも複数の山部24と複数の谷部28とを含んでいればよく、必ずしもストラット部29を含んでいなくてもよい。
【0050】
また、上記においては、複数の谷部28とストラット部29との両方が管状グラフト90に対して縫着されている例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、ストラット部29と谷部28とのうちの少なくとも片方が管状グラフト90に対して縫着されていればよい。
【0051】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)生体管腔内に留置されるステントグラフトであって、
グラフト材料により形成された管状グラフトと、
ワイヤにより構成されている骨格部であって、前記管状グラフトと同軸に配置されている骨格部と、
を備え、
前記骨格部は、それぞれ前記管状グラフトの周方向に巻回されているとともに前記管状グラフトの軸方向において相互にずれた位置に配置されている複数の巻回部を有し、
前記複数の巻回部には、前記軸方向における一方の端に位置する端部巻回部が含まれ、
前記端部巻回部は、前記一方に向けて凸のV字状の複数の山部と、前記一方に対する反対側に向けて凸のV字状の複数の谷部と、を含み、前記山部と前記谷部とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されており、
前記端部巻回部は、当該端部巻回部における前記山部以外の部位が前記管状グラフトに対して縫着により固定されているとともに、前記山部は前記管状グラフトに対して非固定とされており、
当該ステントグラフトが縮径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となり、
当該ステントグラフトが拡径した状態では、前記複数の山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となるステントグラフト。
(2)前記端部巻回部は、隣り合う前記山部と前記谷部とを相互に繋ぐストラット部を更に備えている(1)に記載のステントグラフト。
(3)前記谷部は、前記管状グラフトに対して縫着により固定されていることによって、前記管状グラフトに対して相対的に前記軸方向に変位不能となっており、
前記ストラット部は、前記管状グラフトに対して相対的に前記軸方向に変位可能、且つ、前記管状グラフトに対して揺動可能な状態で、前記管状グラフトに対して縫着されている(2)に記載のステントグラフト。
(4)前記ストラット部における前記山部との境界部位が前記管状グラフトに対して縫着されている(3)に記載のステントグラフト。
(5)前記ストラット部は、直線状に形成されているとともに、前記谷部側から前記山部側に向かうにつれて前記一方の側に変位する向きに傾斜している(3)又は(4)に記載のステントグラフト。
(6)当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記軸方向における前記山部の寸法よりも、前記境界部位から前記管状グラフトの前記一端までの距離が大きい(4)又は(5)に記載のステントグラフト。
(7)当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記境界部位から前記山部の頂点までの距離が、前記境界部位から前記管状グラフトの前記一端までの距離よりも大きい(4)又は(5)に記載のステントグラフト。
(8)前記骨格部は、前記管状グラフトと同軸に配置されているとともに前記管状グラフトの軸方向において相互に離間している複数のリングにより構成されており、
前記複数のリングの各々が前記巻回部を構成している(1)から(4)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(9)前記骨格部は、螺線状に形成されている(1)から(4)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(10)当該ステントグラフトが拡径した状態において、前記山部の頂角が45度以上である(1)から(4)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(11)(1)から(4)のいずれか一項に記載のステントグラフトと、前記ステントグラフトを生体管腔内の留置箇所に送達する送達システムと、を備え、前記ステントグラフトを生体管腔内に留置するためのグラフト留置装置であって、
前記ステントグラフトが縮径した状態では、前記山部が前記管状グラフトの一端から軸方向に突出した突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムに対して係止されており、
前記ステントグラフトが拡径した状態では、前記山部が前記管状グラフトに収納された非突出状態となって、前記複数の山部が前記送達システムから離脱するグラフト留置装置。
【符号の説明】
【0052】
10 骨格部
13 ワイヤ
15 複数の巻回部15
16 複数のリング
21 第1巻回部(端部巻回部)
22 第1傾斜部
23 第2傾斜部
24 山部
24a 頂点
24b 一端部
24c 他端部
25a、25b 山部側境界部位
25c、25d 谷部側境界部位
26 第3傾斜部
26a 境界部位
27 第4傾斜部
27a 境界部位
28 谷部
28a 一端部
28b 他端部
29 ストラット部
29a 第1ストラット部
29b 第2ストラット部
30a、30b 頂点
31 第2巻回部
33 第1延在部
34 第2延在部
41 第3巻回部
51 第4巻回部
61a、61b 第1縫着部
66 複数の第2縫着部
71 紐部材
90 管状グラフト
91 先端部
91a 先端
92 基端部
92a 基端
100 ステントグラフト
200 グラフト留置装置
210 送達システム
220 アウターシース
221 先端部
230 インナーカテーテル
240 先端チップ
310 大動脈弓
320 大動脈瘤
330 下行大動脈
340 分枝血管
401 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9