(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018397
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置のためのコンピュータプログラム、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/62 20130101AFI20240201BHJP
G06F 21/31 20130101ALI20240201BHJP
【FI】
G06F21/62 318
G06F21/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121715
(22)【出願日】2022-07-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 哲
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗久
(72)【発明者】
【氏名】大原 清孝
(72)【発明者】
【氏名】榎本 勝則
(72)【発明者】
【氏名】伊津見 光樹
(72)【発明者】
【氏名】森 匡平
(72)【発明者】
【氏名】野川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松下 聡
(72)【発明者】
【氏名】矢田 裕紀
(57)【要約】
【課題】ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードである状況において、設定値の不正な変更の抑制とユーザの利便性との両立を図るための技術を提供する。
【解決手段】
通信装置は、端末装置から変更要求が受信され、かつ、ユーザの認証が成功する場合に、メモリ内の特定の設定値を現在値から変更要求に従った値に変更する変更部を備え、変更部は、ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、特定の設定値が第1種の設定値である場合に、メモリ内の特定の設定値を現在値から変更要求に従った値に変更し、ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、特定の設定値が第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、メモリ内の特定の設定値は現在値に維持される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリと、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信部と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証部と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更部と、
を備え、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
通信装置。
【請求項2】
前記変更要求は、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secureの略)に従ったコマンドである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値であり、かつ、前記ユーザが第1種のユーザである場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値であり、かつ、前記ユーザが前記第1種のユーザとは異なる第2種のユーザである場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持される、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1種の設定値は、前記パスワードの前記現在値である、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、さらに、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第2種の設定値である場合に、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであることに起因して前記特定の設定値の設定値の変更が失敗したことを通知する通知部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記複数個の設定値のそれぞれは、MIB(Management Information Baseの略)のOID(Object IDの略)と関連付けて前記メモリに記憶されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
通信装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記通信装置は、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリと、
コンピュータと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、以下の各部、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信部と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証部と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更部と、
として機能させ、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
通信装置の制御方法であって、
前記通信装置は、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリ
を備え、
前記制御方法は、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信工程と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証工程と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更工程と、
を備え、
前記変更工程は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更工程は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数個の設定値を記憶するメモリを備える通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザ認証においてアクセス可能と判断する場合に、MIB(Management Information Baseの略)処理を実行する画像入出力装置が開示されている。画像入出力装置は、アクセス不可能と判断する場合に、MIB処理を実行せず、エラーレスポンス処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザ認証に利用されるパスワードとして初期パスワードが画像入出力装置のベンダによって設定される場合がある。初期パスワードは、ベンダから画像入出力装置のユーザに提供されるが、ユーザ以外の第三者も容易に知ることができる。初期パスワードが第三者に知られると、MIB処理が不正に実行される可能性がある。
【0005】
本明細書では、ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードである状況において、設定値の不正な変更の抑制とユーザの利便性との両立を図るための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される通信装置は、特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリと、端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信部と、前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証部と、前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更部と、を備え、前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する。
【0007】
例えば、ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードである場合に、複数個の設定値のいずれの設定値の変更も許可しない比較例が想定される。この比較例では、初期パスワードが第三者に知られて、設定値が不正に変更されることを抑制できる一方で、初期パスワードのままでは、ユーザも設定値を変更することができない。これに対して、上記の構成によれば、ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードである場合には、第2種の設定値の変更が許可されない一方で、第1種の設定値の変更は許可される。即ち、第2種の設定値については設定値の不正な変更の抑制を優先し、第1種の設定値については設定値の変更を希望するユーザの意図を優先する。ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードである状況において、設定値の不正な変更の抑制とユーザの利便性との両立を図ることができる。
【0008】
上記の通信装置を実現するためのコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体も新規で有用である。また、上記の通信装置によって実行される方法も新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
(通信システム2の構成;
図1)
図1に示されるように、通信システム2は、プリンタ10と端末装置100とを備える。各デバイス10、100は、LAN(Local Area Networkの略)6に接続されており、LAN6を介して相互に通信可能である。LAN6は、有線LANであってもよいし無線LANであってもよい。端末装置100は、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、携帯電話(例えばスマートフォン)等のユーザ端末である。本実施例では、プリンタ10が、端末装置100からの要求コマンド(即ち後述のPOSTコマンド又はGETコマンド)に応じて、設定値を書き込んだり送信したりすることを実現する。
【0011】
(プリンタ10の構成)
プリンタ10は、印刷機能を実行可能な周辺装置(例えば端末装置100の周辺装置)である。変形例では、プリンタ10は、印刷機能に加えて、スキャン機能、FAX機能等を実行可能な多機能機であってもよい。プリンタ10は、操作部12と、表示部14と、LANインターフェース16と、印刷実行部18と、制御部30と、を備える。各部12~30は、バス線(符号省略)に接続されている。なお、以下では、「インターフェース」を「I/F」と記載する。
【0012】
操作部12は、複数のキーを備える。ユーザは、操作部12を操作することによって、様々な指示をプリンタ10に入力することができる。表示部14は、様々な情報を表示させるディスプレイである。表示部14は、いわゆるタッチパネル(即ちユーザの操作を受け付ける操作部)としても機能する。LANI/F16は、LAN6に接続されている。印刷実行部18は、インクジェット方式、レーザ方式等の印刷機構を備える。
【0013】
制御部30は、CPU32と不揮発性メモリ34Aと揮発性メモリ34Bとを備える。CPU32は、不揮発性メモリ34Aに格納されているプログラム36に従って、様々な処理を実行する。不揮発性メモリ34Aは、プリンタ10の電源がOFFされても、記憶済みの情報が消去されないメモリである。不揮発性メモリ34Aは、プログラム36に加えて、管理テーブル38を記憶する。揮発性メモリ34Bは、プリンタ10の電源がOFFされると、記憶済みの情報が消去されるメモリである。揮発性メモリ34Bは、CPU32が処理を実行する過程で必要な情報を一時的に記憶する。
【0014】
管理テーブル38は、プリンタ10の様々な情報を記憶するためのテーブルである。当該情報は、例えば、プリンタ10の消耗品残量、MACアドレス、名前(例えば管理者名)、パスワード(例えば管理者パスワード)、初期管理者パスワード、IPアドレス、時計情報等を含む。管理者パスワードは、管理者名によって示される管理者の認証に利用されるパスワードの現在値である。管理者パスワードは、プリンタ10のユーザによって変更可能である。初期管理者パスワードは、管理者パスワードの初期値である。初期管理者パスワードは、プリンタ10のベンダによって出荷段階に管理テーブル38に予め記憶される。初期管理者パスワードは、例えば、プリンタ10とともに梱包される紙媒体(例えば説明書等)に記載される。プリンタ10のユーザは、当該紙媒体を見て、初期管理者パスワードを知ることができる。
【0015】
また、管理テーブル38は、個別ユーザ名と、個別パスワードと、を記憶可能である。個別ユーザ名は、管理者によってプリンタ10の管理テーブル38の少なくとも一部へのアクセスを許可されたユーザである。個別パスワードは、個別ユーザの認証に利用されるパスワードである。個別ユーザ名及び個別パスワードは、管理者によって管理テーブル38に記憶される。
【0016】
図1の管理テーブル38に例示されない情報としては、例えば、プリンタ10の設置場所、アクセス先、エラー履歴、ステータス(印刷実行中、待機中等)、印刷設定(例えばデフォルトの印刷解像度)等を含む。管理テーブル38は、ツリー構造(即ち階層構造)を利用して上記の様々な情報を格納する。このツリー構造を有する様々な情報の集合のことを「MIB(Management Information Baseの略)」と呼ぶ。
【0017】
具体的には、管理テーブル38は、内容とOID(Object IDの略)とMIB値とを関連付けて記憶する。内容は、情報の意味を示す文字列である。OIDは、情報を識別する識別子である。MIB値は、情報の具体的な値(即ち設定値)を示す。
【0018】
(プリンタ10と端末装置100の間の通信プロトコル)
プリンタ10と端末装置100との間でMIB値を通信するための通信プロトコルとしては、OSI(Open Systems Interconnectionの略)参照モデルのトランスポート層のUDP(User Datagram Protocolの略)に従ったプロトコルが広く知られている。具体的には、SNMP(Simple Network Management Protocolの略)が知られている。本発明者らは、MIB値を通信するための通信プロトコルとして、UDPに代えて、OSI参照モデルのトランスポート層のTCP(Transmission Control Protocolの略)に従った通信プロトコルを利用することを創作した。具体的には、HTTPS(Hyper Text Transfer Protocol Secureの略)を利用することを創作した。HTTPSは、ユーザ認証及びデータ暗号化を採用しているので、SNMPよりも高いセキュリティを有するからである。これにより、プリンタ10のMIB値が第三者によって不正に書き込まれたり不正に取得されたりすることを抑制することができる。
【0019】
端末装置100は、HTTPSのPOSTコマンドを利用して、MIB値をプリンタ10に書き込むことができると共に、HTTPSのGETコマンドを利用して、プリンタ10からMIB値を取得することができる。通常、HTTPSコマンド及びその応答コマンドは、JSON(Java Script Object Notationの略)、XML(Extensible Markup Languageの略)等の汎用的なフォーマットを採用する。
【0020】
(プリンタの処理;
図2)
図2を参照して、プリンタ10のCPU32がプログラム36に従って実行する処理について説明する。
図2の処理は、プリンタ10の電源がONされることをトリガとして実行される。なお、端末装置100との間の通信は、LANI/F16を介して実行される。以下では、特に言及しない限り、「LANI/F16を介して」及び「LAN6を介して」という記載を省略する。
【0021】
S10では、CPU32は、端末装置100からHTTPSのPOSTコマンドを受信することを監視する。POSTコマンドは、ユーザによって指定された1個以上のOIDのそれぞれについて、当該OIDと、管理テーブル38に書き込まれるべきMIB値(以下では、「書込対象のMIB値」と記載)と、を関連付けて含む。ここで、当該POSTコマンドの受信前に、CPU32は、端末装置100との間で端末装置100のユーザを認証するための認証通信を実行する。認証通信は、端末装置100から認証情報を含むHTTPSコマンドを受信することを含む。認証情報は、例えば、ユーザ名とパスワードのハッシュ値である。認証通信は、いわゆる、ダイジェスト認証である。例えば、認証情報から得られる情報(即ちユーザ名及びパスワード)が、管理テーブル38内の情報(例えば管理者名と管理者パスワード(
図1参照))と一致する場合に、端末装置100のユーザの認証が成功する。ユーザの認証が成功する場合には、S10のPOSTコマンドは、暗号キーにより暗号化される。
【0022】
CPU32は、端末装置100からHTTPSのPOSTコマンドが受信されたと判断する場合(S10でYES)に、S14に進む。S14では、CPU32は、端末装置100のユーザの認証が成功したのか否かを判断する。CPU32は、端末装置100のユーザの認証が成功したと判断する場合(S14でYES)に、S16に進む。
【0023】
S16では、CPU32は、S10のPOSTコマンドに従ったPOST処理(
図3で後述)を実行する。S16が終了すると、CPU32は、S10の監視に戻る。
【0024】
また、CPU32は、端末装置100のユーザの認証が失敗したと判断する場合(S14でNO)に、S16の処理をスキップして、S10の監視に戻る。なお、HTTPSのPOSTコマンド以外のコマンド(例えばSNMPのGETコマンド)が受信される場合には、S14以降の処理が実行されず、当該コマンドに従った処理(図示省略)が実行される。
【0025】
(POST処理;
図3)
S50では、CPU32は、
図2のS10のPOSTコマンドに含まれる1個以上の「key」の中から1個の「key」を選択する。
図4は、POSTコマンドの具体的な記述を示す。
図4に示すように、POSTコマンドのボディ部には、1個以上の「key」のそれぞれについて、当該「key」と、OIDと、書込対象のMIB値と、の組が記述される。
【0026】
S52では、CPU32は、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致するのか否かを判断する。CPU32は、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致すると判断する場合(S52でYES)に、S54に進む。
【0027】
S54では、CPU32は、S50で選択された1個の「key」に関連付けてPOSTコマンド含まれるOID(以下では「関連のOID」と記載)が、管理者パスワードのOIDであるのか否かを判断する。CPU32は、関連のOIDが管理者パスワードのOIDであると判断する場合(S54でYES)に、S56に進む。
【0028】
S56では、CPU32は、S10のPOSTコマンドの受信前に実行された認証通信で認証されたユーザのユーザ名(以下では、「認証ユーザ名」と記載)が、管理者名であるのか否かを判断する。CPU32は、認証ユーザ名が管理者名であると判断する場合(S56でYES)に、S60に進む。
【0029】
S60では、CPU32は、POSTコマンドからS50で選択された1個の「key」に関連付けて含まれる情報(即ちOIDと書込対象のMIB値)を特定する。そして、CPU32は、特定済みのOIDに関連付けて特定済みの書込対象のMIB値を管理テーブル38に書き込む。別言すれば、管理テーブル38内の特定済みのOIDに関連付けて記憶されているMIB値がPOSTコマンド内の書込対象のMIB値に変更される。
【0030】
続くS62では、CPU32は、成功ステータス「0」をPOSTコマンドに対する処理応答に追加する。成功ステータス「0」は、特定済みの書込対象のMIB値の書き込みが成功したことを示す。具体的には、
図4に示すように、「key」と特定済みのOID(例えば「1.3.6.1.4.1.xxxxxx.2」)と成功ステータス「0」の組が処理応答のボディ部に記述される。
【0031】
続くS70では、CPU32は、POSTコマンドに含まれる1個以上の「key」の中に未選択の「key」が存在するのか否かを判断する。CPU32は、POSTコマンドに含まれる1個以上の「key」の中に未選択の「key」が存在すると判断する場合(S70でYES)に、S50に戻って、別の「key」を選択する。
【0032】
また、CPU32は、POSTコマンドに含まれる1個以上の「key」の中に未選択の「key」が存在しないと判断する場合(S70でNO)に、
図3の処理を終了する。
【0033】
また、CPU32は、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致しないと判断する場合(S52でNO)に、S54の処理をスキップして、S56に進む。
【0034】
また、CPU32は、関連のOIDが管理者パスワードのOIDでないと判断する場合(S54でNO)、又は、認証ユーザ名が管理者名でないと判断する場合(S56でNO)に、S64に進む。認証ユーザ名が管理者名でない場合は、例えば、認証ユーザ名が個別ユーザ名である場合である。
【0035】
S64は、失敗ステータス「-1」を追加する点を除いて、S62と同様である。失敗ステータス「-1」は、特定済みの書込対象のMIB値の書き込みが失敗したことを示す。具体的には、
図4に示すように、「key」と特定済みのOID(例えば「1.3.6.1.4.1.xxxxxx.4」)と失敗ステータス「-1」の組が処理応答のボディ部に記述される。
【0036】
S66では、CPU32は、失敗原因通知を端末装置100に送信する。失敗原因通知は、MIB値の書き込みが失敗した原因を示すメッセージを含む。当該原因は、例えば、認証ユーザ名が管理者名以外のユーザ名であること、関連のOIDが管理者パスワードのOID以外のOIDであること等である。S66が終了すると、CPU32は、S70に進む。
【0037】
端末装置100は、失敗原因通知を受信すると、失敗原因通知内のメッセージを表示する。これにより、ユーザは、MIB値の書き込みが失敗した原因を知ることができる。失敗原因通知は、例えば、HTTPSのコマンドである。なお、変形例では、失敗原因通知は、電子メール、SMS、SNSのメッセージ等であってもよい。
【0038】
(具体的なケース)
例えば、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致し、かつ、関連のOIDが管理者パスワードのOIDである場合(S52でYES、かつ、S54でYES)には、書込対象のMIB値が管理テーブル38に書き込まれる(S60)。即ち、初期管理者パスワードから新しい管理者パスワードの変更がユーザによって指示される場合には、書込対象のMIB値である新しい管理者パスワードが管理テーブル38に記憶される。
【0039】
また、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致し、かつ、関連のOIDが管理者パスワードのOIDでない場合(S52でYES、かつ、S54でNO)には、書込対象のMIB値が管理テーブル38に書き込まれない。即ち、管理者パスワードが初期管理者パスワードから変更されていない状況において、管理者パスワードのOID以外のOIDに対応するMIB値は、ユーザの指示に反して維持される。
【0040】
また、現在の管理者パスワードが初期管理者パスワードと一致しない状況(S52でNO)では、関連のOIDが管理者パスワードのOIDであるのか否かのS54の判断がスキップされ、書込対象のMIB値が管理テーブル38に書き込まれる。
【0041】
例えば、
図4に示すように、ユーザによって管理者パスワードの変更とIPアドレスの変更とが指示される場合には、管理者パスワードの変更は許可される一方で、IPアドレスの変更は許可されない。
【0042】
例えば、管理者パスワードが初期管理者パスワードである場合に、複数個のMIB値のいずれの変更も許可しない比較例が想定される。この比較例では、初期管理者パスワードが第三者に知られて、MIB値が不正に変更されることを抑制できる一方で、初期管理者パスワードのままでは、ユーザもMIB値を変更することができない。これに対して、本実施例の構成によれば、管理者パスワードが初期管理者パスワードである場合には、管理者パスワードの変更は許可される一方で、管理者パスワード以外のMIB値の変更が許可されない。即ち、管理者パスワード以外のMIB値についてはMIB値の不正な変更の抑制を優先し、管理者パスワードについては管理者パスワードの変更を希望するユーザの意図を優先する。ユーザの認証に利用された管理者パスワードが初期管理者パスワードである状況において、MIB値の不正な変更の抑制とユーザの利便性との両立を図ることができる。
【0043】
また、プリンタ10は、認証ユーザ名が管理者名でない場合(S56でNO)、例えば、認証ユーザ名が個別ユーザ名である場合には、MIB値の変更を許可しない。管理者以外のユーザによって、管理者パスワードが変更されることを抑制することができる。
【0044】
(対応関係)
プリンタ10、不揮発性メモリ34Aが、それぞれ、「通信装置」、「メモリ」の一例である。管理者パスワードが、「特定の設定値」の一例である。管理テーブル38内のMIB値が、「複数個の設定値」の一例である。端末装置100が、「端末装置」の一例である。POSTコマンドが、「変更要求」の一例である。管理者パスワード、初期管理者パスワードが、それぞれ、「パスワード」、「初期パスワード」の一例である。管理者パスワード、管理者パスワード以外のMIB値が、それぞれ、「第1種の設定値」、「第2種の設定値」の一例である。管理者、個別ユーザが、それぞれ、「第1種のユーザ」、「第2種のユーザ」の一例である。
【0045】
図2のS10、S16が、それぞれ、「変更要求受信部」、「変更部」によって実現される処理の一例である。S10の前に実行される認証通信が、「認証部」によって実現される処理の一例である。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0047】
(変形例1)「通信装置」は、プリンタ10に限らず、例えば、デスクトップPC等の端末装置、サーバ等であってもよい。
【0048】
(変形例2)「特定の設定値」は、管理者パスワードに限らず、例えば、時計情報、元号の情報、言語の設定値等であってもよい。
【0049】
(変形例3)端末装置100との間でMIB値を通信するための通信プロトコルは、HTTPSに限らず、HTTP、SNMP等であってもよい。
【0050】
(変形例4)
図4のS56の判断は実行されなくてもよい。本変形例では、「第1種のユーザ」及び「第2種のユーザ」を省略可能である。
【0051】
(変形例5)
図4のS66の処理は実行されなくてもよい。本変形例では、「通知部」を省略可能である。
【0052】
(変形例6)
図4のS66では、音声による通知が実行されてもよい。また、他の変形例では、失敗の通知が、プリンタ10の表示部14に表示されてもよい。
【0053】
(変形例7)管理テーブル38は、MIBとは異なる方式に従ったデータ構成を有していてもよい。
【0054】
(変形例8)上記の実施例では、CPU32がプログラム36を実行することによって、
図2~
図4の各処理が実現される。これに代えて、いずれかの処理は、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0055】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0056】
本特許出願時の特許請求の範囲において、各請求項が一部の請求項のみに従属している場合であっても、各請求項が当該一部の請求項のみに従属可能であることに限定されない。技術的に矛盾しない範囲において、各請求項は、出願時に従属していない他の請求項にも従属可能である。即ち、各請求項の技術は以下のように様々に組み合わせることができる。
(項目1)
通信装置であって、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリと、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信部と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証部と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更部と、
を備え、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
通信装置。
(項目2)
前記変更要求は、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secureの略)に従ったコマンドである、項目1に記載の通信装置。
(項目3)
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値であり、かつ、前記ユーザが第1種のユーザである場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値であり、かつ、前記ユーザが前記第1種のユーザとは異なる第2種のユーザである場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持される、項目1又は2に記載の通信装置。
(項目4)
前記第1種の設定値は、前記パスワードの前記現在値である、項目1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
(項目5)
前記通信装置は、さらに、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第2種の設定値である場合に、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであることに起因して前記特定の設定値の設定値の変更が失敗したことを通知する通知部を備える、項目1から4のいずれか一項に記載の通信装置。
(項目6)
前記複数個の設定値のそれぞれは、MIB(Management Information Baseの略)のOID(Object IDの略)と関連付けて前記メモリに記憶されている、項目1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
(項目7)
通信装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記通信装置は、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリと、
コンピュータと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、以下の各部、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信部と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証部と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更部と、
として機能させ、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更部は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
コンピュータプログラム。
(項目8)
通信装置の制御方法であって、
前記通信装置は、
特定の設定値を含む複数個の設定値を記憶するメモリ
を備え、
前記制御方法は、
端末装置から、前記メモリ内の前記特定の設定値の変更を要求する変更要求を受信する変更要求受信工程と、
前記変更要求の送信元である前記端末装置のユーザを認証する認証工程と、
前記端末装置から前記変更要求が受信され、かつ、前記ユーザの認証が成功する場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を現在値から前記変更要求に従った値に変更する変更工程と、
を備え、
前記変更工程は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が第1種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更し、
前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードであり、かつ、前記特定の設定値が前記第1種の設定値とは異なる第2種の設定値である場合に、前記メモリ内の前記特定の設定値は前記現在値に維持され、
前記変更工程は、前記ユーザの認証に利用されたパスワードが前記初期パスワードとは異なるパスワードである場合に、前記特定の設定値が前記第1種の設定値及び前記第2種の設定値のいずれであっても、前記メモリ内の前記特定の設定値を前記現在値から前記変更要求に従った値に変更する、
制御方法。
【符号の説明】
【0057】
2 :通信システム
6 :LAN
10 :プリンタ
12 :操作部
14 :表示部
16 :LANI/F
18 :印刷実行部
30 :制御部
32 :CPU
34A :不揮発性メモリ
34B :揮発性メモリ
36 :プログラム
38 :管理テーブル
100 :端末装置