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特開2024-18406変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018406
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/62 20060101AFI20240201BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240201BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20240201BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08G18/62 075
C08G18/10
C08G18/75 010
C08G18/28 015
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121731
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】522304497
【氏名又は名称】橘色材技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163418
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】橘 佳樹
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA02
4J034GA33
4J034GA48
4J034JA42
4J034QB17
4J034RA07
(57)【要約】
【課題】弱溶剤に可溶な変性テトラフルオロエチレン樹脂を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】(1)ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応により脂肪族イソシアネート化合物を得る工程、および(2)前記脂肪族イソシアネート化合物と、側鎖に水酸基を有するテトラフルオロエチレン樹脂とを反応させる工程、を含む、水酸基価の変性率が15~90%である変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応により脂肪族イソシアネート化合物を得る工程、および
(2)前記脂肪族イソシアネート化合物と、側鎖に水酸基を有するテトラフルオロエチレン樹脂とを反応させる工程、
を含む、
水酸基価の変性率が15~90%である変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価が10~150である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族アルコールの炭素数が8以上である、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネートである、
請求項1または2に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内塗料市場の中で最大のシェアを持っている市場は建築塗料である。その建築塗料市場の中でも住宅改修用途が最大の割合を占める。住宅改修市場は、成長市場であるため、多くのリフォーム業者が参入している。各リフォーム会社は、長期耐久性を有する高機能塗料の開発を盛んに行っている。長期耐久性を有する塗料として、テトラフルオロエチレン樹脂を含む塗料が挙げられる(特許文献1)。
【0003】
一方、住宅改修工事では、既に存在する古い塗膜の上から塗装するため、塗膜溶解性の高い強溶剤が塗料中に含まれると、下地の古い塗膜を溶解してしまい、塗膜剥離や膨れ、色の浮き上がりなどの問題が生じる。そのため、住宅改修塗料は、下地の塗膜を溶解しにくい、ターペンなどの弱溶剤を使用する必要がある。塗料に使用される樹脂も、弱溶剤に可溶の樹脂であることが求められる。
【0004】
テトラフルオロエチレン樹脂を含む塗料も、住宅改修用途に適用するためには弱溶剤に可溶性を有する必要がある。弱溶剤への可溶性を持たせる方法としては、側鎖の水酸基に、ジイソシアネートを用いて弱溶剤に可溶な成分を付加する方法が挙げられる。しかし、ジイソシアネートにおける2つのイソシアネート基の反応性が同じ場合には副産物が生じ、目的とする反応の効率が低下してしまう。
【0005】
一般的なウレタン化合物の合成において、アルコールと、反応性の異なるイソシアネート基を含むジイソシアネート化合物とを反応させる方法が知られている(非特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-005692号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ネットワークポリマー」Vol.32 No.6(2011)「キシリレンジイソシアネートの特性とその塗料用硬化剤への応用」
【非特許文献2】東ソー研究・技術報告第59巻19頁(2015)「ウレタン化の反応機構に関する計算化学的および反応速度論的研究」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、弱溶剤に可溶な変性テトラフルオロエチレン樹脂を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、イソホロンジイソシアネートを用いると、テトラフルオロエチレン樹脂の変性反応を効率的に行えることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応により脂肪族イソシアネート化合物を得る工程、および(2)前記脂肪族イソシアネート化合物と、側鎖に水酸基を有するテトラフルオロエチレン樹脂とを反応させる工程、を含む、水酸基価の変性率が15~90%である変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法である。
【0011】
前記テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価が10~150であることが好ましい。
【0012】
前記脂肪族アルコールの炭素数が8以上であることが好ましい。
【0013】
前記ジイソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法によれば、弱溶剤に可溶な変性テトラフルオロエチレン樹脂を効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法>>本発明の変性テトラフルオロエチレン樹脂の製造方法は、(1)ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応により脂肪族イソシアネート化合物を得る工程、および(2)前記脂肪族イソシアネート化合物と、側鎖に水酸基を有するテトラフルオロエチレン樹脂とを反応させる工程を含み、得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価の変性率が15~90%であることを特徴とする。
【0016】
<第(1)工程>
本工程では、ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応により脂肪族イソシアネート化合物を得る。
【0017】
ジイソシアネート化合物としては、直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族ジイソシアネートや芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0018】
これらのジイソシアネート化合物の中でも、1つのイソシアネート基のみを脂肪族アルコールと反応させるために、2つのイソシアネート基の反応性が異なるものが好ましく、脂肪族骨格を有するものがより好ましく、炭素数8~14のものがさらに好ましく、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0019】
イソホロンジイソシアネートは、シクロヘキシル骨格に直結した2級のイソシアネート基と、側鎖のメチル基に結合した1級のイソシアネート基を有し、後者は前者に対し反応性が約10倍高い。本発明においてイソホロンジイソシアネートを用いる場合、第(1)工程ではイソホロンジイソシアネートの1級のイソシアネート基と、脂肪族アルコールの水酸基とが反応することが好ましい。
【0020】
脂肪族アルコールとしては、炭素数8~34のものが好ましく、炭素数8~24のものがより好ましい。炭素数が8未満では弱溶剤への可溶性が得られないことがある。炭素数が34を超えると、得られる樹脂で塗膜を形成したときに、塗膜表面にべたつきが生じる傾向がある。また、脂肪族アルコールは、1価のアルコールが好ましい。
【0021】
このような脂肪族アルコールの具体例として、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、1-へプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンエイコサノール、ベへニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、1-へプタコサノール、モンタニルアルコール、1-ノナコサノール、ミリシルアルコール、1-ドトリアコンタノール、ゲジルアルコールなどが挙げられる。これらの中でも2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、リグノセリルアルコールが好ましい。
【0022】
第(1)工程において、ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの配合比は、ジイソシアネート化合物100重量部に対し、脂肪族アルコールが10~300重量部が好ましく、50~200重量部がより好ましい。
【0023】
ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応態様は特に限定されないが、例えば、脂肪族アルコールを、あらかじめターペン、ミネラルスピリットなどの溶媒と溶解し、その後、ジイソシアネート化合物を添加することができる。この場合、溶媒は、脂肪族アルコール100重量部に対し、10~300重量部用いることができる。
【0024】
ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応温度は特に限定されないが、15~50℃において行うことが好ましい。反応温度が50℃を超えると、脂肪族アルコールがジイソシアネート化合物の2つのイソシアネート基と反応してしまう結果、脂肪族イソシアネート化合物の収率が低下する傾向がある。ジイソシアネート化合物と脂肪族アルコールとの反応時間は特に限定されず、例えば1~5時間、行うことができる。
【0025】
<第(2)工程>
本工程では、第(1)工程で得られた脂肪族イソシアネート化合物と、側鎖に水酸基を有するテトラフルオロエチレン樹脂とを反応させる。
【0026】
テトラフルオロエチレン樹脂は、側鎖に水酸基を有するものであれば特に限定されず、エチレン構造の中にフッ素原子が4個存在するテトラフルオロエチレン構造と、側鎖に水酸基を有する炭素数2~6の不飽和炭化水素構造が共重合したものが挙げられる。不飽和炭化水素構造の具体例としては、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブタジエンが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレン構造と不飽和エチレン構造が共重合したものが好ましく、これらが交互共重合したものが特に好ましい。テトラフルオロエチレン樹脂の市販品としては、たとえばダイキン工業製ゼッフルシリーズが挙げられる。
【0027】
テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価は10~150が好ましく、20~100がより好ましい。テトラフルオロエチレン樹脂の数平均分子量は2000~10000が好ましい。
【0028】
テトラフルオロエチレン樹脂の酸価は2mgKOH/g以上が好ましく、3~4mgKOH/gがより好ましい。
【0029】
第(2)工程におけるテトラフルオロエチレン樹脂の使用量は、第(1)工程で使用したジイソシアネート化合物100重量部に対し、100~1500重量部が好ましく、200~600重量部がより好ましい。100重量部未満では、得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価の変性率が高くなり、この樹脂からなる塗膜の強度が低下することがある。1500重量部を超えると、得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂の水酸基価の変性率が低くなり、弱溶剤への溶解性が得られないことがある。
【0030】
脂肪族イソシアネート化合物と、テトラフルオロエチレン樹脂との反応温度は特に限定されないが、50~120℃において行うことが好ましい。
【0031】
脂肪族イソシアネート化合物と、テトラフルオロエチレン樹脂との反応時には、硬化触媒を加えてもよい。硬化触媒としては、4価の錫化合物が挙げられ、具体的にはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、トリエチレンジアミンが挙げられる。硬化触媒を使用する場合、その添加量は、反応系の全量に対し0.01~1%が好ましい。
【0032】
両者の反応時間は特に限定されず、反応が終結するまで行えばよいが、例えば3~10時間、行うことができる。反応の終結は、NCO(イソシアネート基)当量の計測により測定でき、反応系中の、脂肪族イソシアネート化合物に由来するNCO当量がゼロになった時点で、反応を終了させればよい。NCO当量の測定は、JIS-K-1603-1に準拠し、ジブチルアミンを用いた中和滴定により行える。
【0033】
<変性テトラフルオロエチレン樹脂>
本発明の方法により得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂は、水酸基価の変性率が15~90%であることを特徴とする。水酸基価は、15~85%が好ましく、20~60%がより好ましい。水酸基価の変性率が15%未満では、弱溶剤への溶解性が得られない傾向がある。水酸基価の変性率が90%を超えると、得られる樹脂で塗膜を形成したときに塗膜表面にべたつきが生じる傾向がある。
【0034】
本発明の方法により得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂は、弱溶剤への可溶性を有する。弱溶剤への可溶性は、変性テトラフルオロエチレン樹脂を10w/v%の濃度でターペン中に混合した後、白濁の有無を観察することにより評価する。白濁が生じない場合には弱溶剤に可溶と判断できる。
【0035】
<<変性テトラフルオロエチレン樹脂を含む塗料組成物>>
本発明の方法により得られる変性テトラフルオロエチレン樹脂は弱溶剤への可溶性を有し、塗料組成物、特に住宅改修用の塗料組成物に好適に用いることができる。このような塗料組成物は、変性テトラフルオロエチレン樹脂に加えて、バインダー樹脂、硬化剤、顔料、溶剤などを含むことが好ましい。
【0036】
塗料組成物中の変性テトラフルオロエチレン樹脂の配合量は、10~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。
【0037】
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0038】
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられ、水酸基を有するものが好ましい。アクリル樹脂は、水酸基以外に、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基を有していてもよい。
【0039】
ウレタン樹脂としては、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0040】
塗料組成物中のバインダー樹脂の配合量は、変性テトラフルオロエチレン樹脂100重量部に対し、50~1000重量部が好ましい。
【0041】
硬化剤としては、バインダー樹脂と変性テトラフルオロエチレン樹脂を架橋できる物質であれば特に限定されず、例えば、へキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。硬化剤の配合量は、変性テトラフルオロエチレン樹脂100重量部に対し、10~200重量部が好ましい。
【0042】
顔料としては、着色顔料、体質顔料、防錆顔料が挙げられる。着色顔料としては、酸化チタン、酸化鉄系黄色顔料及び赤色顔料、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ベンツイミダゾロン、キナクリンドン、アントラキノン、ナフトール、アゾ系各種顔料などが挙げられる。体質顔料としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、アルミナホワイト、硫酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、バライトパウダー、珪藻土、シリカが挙げられる。防錆顔料としては、シアナミド鉛、亜酸化鉛、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、亜鉛華などが挙げられる。顔料の配合量は特に限定されないが、変性テトラフルオロエチレン樹脂100重量部に対し1~1000重量部添加することができる。
【0043】
溶剤としては、ターペン、ミネラルスピリットなどの弱溶剤を用いることができる。
【0044】
塗料組成物は、1液型であってもよいが、保存安定性の観点から2液型とすることが好ましい。2液型とする場合、少なくとも変性テトラフルオロエチレン樹脂およびバインダー樹脂を含む主剤と、少なくとも硬化剤を含む副剤により構成することが好ましい。
【実施例0045】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特にことわりのない限り、「部」は重量部を意味する。
【0046】
(変性樹脂の評価方法)
(1)弱溶剤可溶性テスト
変性樹脂を、ターペン中に10w/v%の濃度で混合して白濁しない事を確認することにより、付加反応による変性ができている事を確認した。
【0047】
(2)塗膜のべたつき試験
溶剤(ターペン)中で、変性樹脂20重量部、バインダー樹脂(アクリル樹脂)20重量部、および硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)10重量部を混合して塗料組成物を得た。この塗料組成物を基材に塗布し、常温で8時間乾燥することにより塗膜を硬化させた。硬化後の塗膜を指で触り、べたつき度合いを検討した。
【0048】
(3)硬化試験
上記(2)と同じ方法で塗膜を形成し、硬化後の塗膜の表面に酢酸ブチルを滴下して指でこすった。硬化が不十分である場合には、塗膜表面が溶解する。
【0049】
(実施例1)C8の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の54%を、C8脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の3個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、2.6個となり、OHVは30となる。
【0050】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、配合量1111部)2-エチルヘキサノール(大伸化学製、配合量390部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、均一に混合した。
【0051】
次に、下記を混合し、容器の中で攪拌機を使い常温で3時間攪拌し、反応させ、片末端NCO脂肪鎖を作製した。イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、666部)
【0052】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。反応が終了した事を確認するために、NCO当量を測定した。
【0053】
上記方法で得られた樹脂は、ターペン可溶性を確保し、塗膜中の硬化膜の状態も良好であった。酢酸ブチルによるラビングテストも良好であった。
【0054】
(実施例2)C8の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の89%を、C8脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の5個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、0.6個となり、OHVは7となる。
【0055】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、1111部)2-エチルヘキサノール(大伸化学製、650部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、混合した。
【0056】
次に、下記を混合し、容器の中で攪拌機を使い3時間攪拌し、反応させた。イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、1110部)
【0057】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。
【0058】
上記方法で得られた樹脂は、ターペン可溶となるが、塗膜の架橋密度が低下し、塗膜の酢酸ブチルによるラビングテスト性能が落ちる。
【0059】
(実施例3)C12の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の36%を、C12脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の2個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、3.6個となり、OHVは40となる。
【0060】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、配合量1111部)ラウリルアルコール(東京化成工業製、配合量372部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、混合した。
【0061】
次に、下記を混合し、容器の中で攪拌機を使い3時間攪拌し、反応させた。イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、444部)
【0062】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。反応が終了した事を確認するために、NCO当量を測定した。
【0063】
上記方法で得られた樹脂は、塗膜中の硬化膜の状態も良好であった。酢酸ブチルによるラビングテストも良好であった。
【0064】
(実施例4)C18の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の18%を、C18脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の1個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、4.6個となり、OHVは52となる。
【0065】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、1111部)ステアリルアルコール(HAI製、270部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、混合した。
【0066】
次に、下記を混合し、容器の中で攪拌機を使い3時間攪拌し、反応させた。イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、222部)
【0067】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。反応が終了した事を確認するために、NCO当量を測定した。
【0068】
上記方法で得られた樹脂は、ターペン可溶性を確保し、塗膜中の硬化膜の状態も良好であった。酢酸ブチルによるラビングテストも良好であった。
【0069】
(実施例5)C24の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の18%を、C24脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の1個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、4.6個となり、OHVは52となる。
【0070】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、配合量1111部)リグノセリルアルコール(東京化成工業製、配合量355部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、混合した。
【0071】
イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、222部)上記を混合し、容器の中で攪拌機を使い3時間攪拌し、反応させた。
【0072】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。
【0073】
上記方法で得られた樹脂は、ターペン可溶性を確保し、酢酸ブチルによるラビングテストも良好であった。塗膜中の硬化膜の状態も良好であるが、長鎖脂肪鎖による塗膜のべたつきが出る傾向がみられた。
【0074】
(比較例1)C12の脂肪鎖を持つアルコールを用いた付加反応
フッ素樹脂中に存在するOH基の中の11%を、C12脂肪鎖により変性したものである。樹脂中に存在する5.6個のOH基の中の0.6個を脂肪族鎖変性する反応である。反応の結果、樹脂中に残存するOH基は、5個となり、OHVは56となる。
【0075】
(1)末端NCO基を持つ反応性脂肪鎖の合成ミネラルスピリット(大伸化学製、配合量1111部)ラウリルアルコール(東京化成工業製、配合量112部)上記原料を容器の中で、攪拌機を使い5分攪拌し、混合した。
【0076】
イソホロンジイソシアネート(角徳コーポレーション製、133部)上記を混合し、容器の中で攪拌機を使い3時間攪拌し、反応させた。
【0077】
(2)テトラフルオロエチレン樹脂への付加反応ゼッフルGK-570(ダイキン工業製、7692部)を徐々に加え、加え終わった後に、80℃に加温し、3時間攪拌し、付加反応を行った。
【0078】
上記方法で得られた樹脂は、ターペン可溶性が出ず、白濁した。
【0079】
実施例1~5および比較例1で用いた脂肪族アルコールと、得られた樹脂の性能を表1に示す。
【表1】