(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018420
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両の異常検出装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B60C23/04 160A
B60C23/04 110D
B60C23/04 160B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121758
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】高部 徹
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制しながら、車両のタイヤ及びタイヤ周りの車両部材の異常を検出し異常情報を出力することができる車両の異常検出装置を提供する。
【解決手段】車両のタイヤ内の圧力及び温度を検出するタイヤ状態検出手段31と、検出されたタイヤ内の圧力及び温度からタイヤの異常を判定するタイヤ異常判定手段43aと、タイヤの異常が判定されたらタイヤ異常情報を発するタイヤ異常情報出力手段45aと、外気温検出手段42と、検出された外気温に応じて判定閾値を設定する判定閾値設定手段43cと、検出されたタイヤ内の温度が判定閾値以上となったとき、ホイールの周りの軸受部又はブレーキ機構部が過昇温状態にあると判定するタイヤ周辺部高温判定手段43bと、軸受部又はブレーキ機構部の過昇温が判定されたら過昇温情報を発する異常情報出力手段45bと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備され、タイヤが装着されたホイールの外周リム部に配置され、前記タイヤ内の圧力及び温度を検出するタイヤ状態検出手段と、
前記タイヤ状態検出手段により検出された前記タイヤ内の圧力及び温度から前記タイヤの異常を判定するタイヤ異常判定手段と、
前記タイヤ異常判定手段により前記タイヤの異常が判定されたらタイヤ異常情報を発するタイヤ異常情報出力手段と、
前記車両の外気温を検出する外気温検出手段と、
前記外気温検出手段により検出された前記外気温に応じて判定閾値を設定する判定閾値設定手段と、
前記タイヤ状態検出手段で検出された前記タイヤ内の温度が前記判定閾値以上となったとき、前記ホイールを軸支する軸受部又は前記ホイール内側に配設されたブレーキ機構部が過昇温状態にあると判定するタイヤ周辺部高温判定手段と、
前記タイヤ周辺部高温判定手段により前記軸受部又は前記ブレーキ機構部の過昇温が判定されたら過昇温情報を発する異常情報出力手段と、を備える
ことを特徴とする、車両の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤの異常やタイヤ周辺の制動装置や軸受装置の異常を検出する、車両の異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行時においてタイヤの空気圧や温度に異常が生ずると、バースト等のリスクが高まり事故につながる虞がある。このため、従来より、タイヤの空気圧や温度を自動的に監視してタイヤに異常が生じると警報を発する装置(tire pressure monitoring system,略して、TPMS)が開発されている。例えば特許文献1には、タイヤホイールにタイヤ空気圧及び温度を検知する手段を設け、この検出手段から得られたタイヤ情報を表示部に表示する装置が開示されている。
【0003】
また、ブレーキ機構が異常に加熱すると、フェード現象やベーパーロック現象が発生し制動力が低下して事故につながる虞がある。このため、ブレーキの温度を自動的に監視してブレーキ機構の温度に異常が生じると警報を発する装置も開発されている。例えば特許文献2には、ブレーキ機構の温度を検出するブレーキ温度センサを備え、このブレーキ温度センサから得られるブレーキ機構の温度の変化等からブレーキ機構の異常を予測して警報を発する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-121281号公報
【特許文献2】特開平10-44976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の安全運航のためには、上記のタイヤの空気圧や温度を監視する装置(TPMS)やブレーキ機構等のタイヤ周りの車両部材の温度を監視する装置が有効であるが、それぞれの装置を装備する場合、コストアップは避けられない。また、タイヤの空気圧及び温度を検出するセンサはタイヤホイールに装着されるのに対して、例えばブレーキ温度センサはブレーキ機構のキャリパ等に取り付けられるため、センサ本体のみならずハーネス、ECU等の部品点数が多くなる。このため、物理的な故障頻度やメンテナンス費用が増加すること等も懸念される。
【0006】
本件は、このような課題に着目して創案されたもので、部品点数の増加を抑制しながら、車両のタイヤ及びタイヤ周りの車両部材の異常を検出して異常情報を出力することができる、車両の異常検出装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る車両の異常検出装置は、車両に装備され、タイヤが装着されたホイールの外周リム部に配置され、前記タイヤ内の圧力及び温度を検出するタイヤ状態検出手段と、前記タイヤ状態検出手段により検出された前記タイヤ内の圧力及び温度から前記タイヤの異常を判定するタイヤ異常判定手段と、前記タイヤ異常判定手段により前記タイヤの異常が判定されたらタイヤ異常情報(例えば、警報、警告灯等)を発するタイヤ異常情報出力手段と、前記車両の外気温を検出する外気温検出手段と、前記外気温検出手段により検出された前記外気温に応じて判定閾値を設定する判定閾値設定手段と、前記タイヤ状態検出手段で検出された前記タイヤ内の温度が前記判定閾値以上となったとき、前記ホイールを軸支する軸受部又は前記ホイール内側に配設されたブレーキ機構部が過昇温状態にあると判定するタイヤ周辺部高温判定手段と、前記タイヤ周辺部高温判定手段により前記軸受部又は前記ブレーキ機構部の過昇温が判定されたら過昇温情報(例えば、警報、警告灯等)を発する異常情報出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本適用例によれば、タイヤ状態検出手段により検出されたタイヤ内の圧力及び温度からタイヤの異常を判定し、異常が判定されたら、タイヤ異常情報を発する。また、タイヤ状態検出手段で検出されたタイヤ内の温度が判定閾値以上となったとき、ホイールを軸支する軸受部又はホイール内側に配設されたブレーキ機構部が過昇温状態にあると判定し、過昇温が判定されたら、異常情報を発する。このように、タイヤ状態検出手段による検出情報を利用して、タイヤ周りの車両部材である軸受部又はブレーキ機構部の過昇温の異常を検出して異常情報を発するので、部品点数の増加を抑制しながら、車両のタイヤ及びタイヤ周りの車両部材の異常を検出して異常情報を出力することができる。
さらに、軸受部又はブレーキ機構部の異常を判断する判定閾値は外気温で補正されるため異常判定の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、部品点数の増加を抑制しながら、車両のタイヤ及びタイヤ周りの車両部材である軸受部又はブレーキ機構部の過昇温の異常を検出して異常情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る車両の異常検出装置を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る車両のタイヤの要部を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る車両のブレーキ機構部のブレーキ使用による温度上昇とタイヤ状態検出手段により検出されたタイヤ内の温度上昇との関係を説明するグラフである。
【
図4】実施形態に係るブレーキ機構部の過昇温判定に用いる判定閾値の設定を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0012】
[1.構成]
[1.1.車輪及び車輪周辺の構成]
図2は、車両(例えば、トラック)1の車輪11の一例としての後輪について、その要部を示す断面図である。
図2に示すように、車輪11は、図示しないサスペンション機構を介して車体10に軸支される。この車輪11は、ホイール12とホイール12の外周リム部12aに取り付けられたタイヤ13とを備える。ホイール12の内周リム部12cは、ホイールハブ14のフランジ部14aに締結部材(ハブボルト15a及びホイールナット15b)により締結される。ホイール12の外周リム部12aと内周リム部12cとの間には、軽量化孔(図示略)を有するディスク部12bが備えられる。
【0013】
ホイールハブ14は、アクスルパイプ16の先端側の外周面上に左右一対のローラベアリング17a,17bからなる軸受部17を介して回転可能に支持されている。アクスルパイプ16はアクスルハウジングの先端部に結合される。また、アクスルパイプ16内を貫通するようにアクスルシャフト18が挿通されており、アクスルシャフト18の先端側のフランジ18aが連結ボルト18bによってホイールハブ14に連結されている。これにより、アクスルシャフト18の回転と共にホイールハブ14が回転する。また、車輪11のホイール12内の空間において、ホイールハブ14側とアクスルパイプ16側との間には、ブレーキ機構部19が配備されている。本実施形態では、ブレーキ機構部19にドラムブレーキが採用されている。ただし、ブレーキ機構部19はドラムブレーキに限定されるものではなく、摩擦熱が生じる機械式ブレーキであればよく、例えばディスクブレーキであってもよい。
【0014】
[1.2.タイヤ空気圧監視装置]
車両1には、タイヤ空気圧監視装置(tire pressure monitoring system,略して、TPMS)20Aを含んだ車両の異常検出装置20が装備されている。
図1は本実施形態に係る車両の異常検出装置20を示すブロック図である。
図1に示すように、異常検出装置20は、車輪11側(タイヤ13側)に装備されたタイヤセンサユニット30と、車体10側に装備された異常検出ユニット40とを備えている。
【0015】
タイヤセンサユニット(タイヤセンサ)30は、
図2に示すように、ホイール12の外周リム部12aに配置され、タイヤ13の空気室13a内の圧力及び温度を検出する。ここでは、ホイール12の外周リム部12aにおいて、軸方向中心寄りの径が小さくなった部分の外面の空気室13a内に、圧力検出部32及び温度検出部33からなるセンサ部(タイヤ状態検出手段)31が配置されている。圧力検出部32には、例えば圧力検出素子が用いられ、温度検出部33には、例えば温度検出素子が用いられる。
【0016】
このタイヤセンサユニット30は、
図1に示すように、センサ部31(圧力検出部32及び温度検出部33)、圧力検出部32及び温度検出部33から出力された検出信号を処理する信号処理部34と、プログラム等の各種情報を記憶する記憶部35と、信号処理部34で処理された情報を電磁波によって送信する送信処理部36と、電源である電池37とを備える。
【0017】
信号処理部34は、CPUにより構成され、記憶部35に記憶されたプログラムにより動作する。信号処理部34は、所定の周期で、圧力検出部32及び温度検出部33から出力されたアナログ検出信号を図示しないA/D変換回路によってデジタル信号に変換し、デジタル値として取り込んだ検出情報を識別情報と紐付けして送信処理部36に出力する。
【0018】
送信処理部36は、図示しない送信回路と送信用アンテナとを備えており、送信処理部36では、信号処理部34から送られた情報(識別情報と紐付けされた検出情報)を、送信回路を介して送信用アンテナから所定周波数の電磁波によって送信する。
なお、電池37は、非接触充電可能であり、電池37に充電された電力は、信号処理部34や記憶部35や送信処理部36の動作に用いられる。
【0019】
異常検出ユニット40は、
図1に示すように、タイヤセンサユニット30から送信された信号を受信する受信処理部41と、車体10に装備された外気温検出部(外気温検出手段、外気温センサともいう)42と、受信処理部41及び外気温検出部42から出力された検出信号を処理する信号処理部43と、プログラム等の各種情報を記憶する記憶部44と、信号処理部43で処理された情報を出力する情報出力部(情報出力手段)45と、を備える。
【0020】
受信処理部41は、図示しない受信用アンテナと受信回路とを備え、受信用アンテナによりタイヤセンサユニット30から送信された電磁波を受信して、受信した情報(識別情報と紐付けされた検出情報)をデジタル信号として出力する。
外気温検出部42は、車両の周囲の外気温を検出して検出情報をデジタル信号として出力する。
【0021】
信号処理部43は、CPUにより構成され、記憶部44に記憶されたプログラムにより動作する。信号処理部43は、機能的要素として、タイヤの空気圧異常を判定するタイヤ異常判定部(タイヤ異常判定手段)43aと、ホイール12内側に配設されたブレーキ機構部19が過昇温状態にあるか否かを判定するタイヤ周辺部高温判定部(タイヤ周辺部高温判定手段、単に、高温判定部ともいう)43bと、外気温検出部42により検出された外気温に応じて判定閾値を設定する判定閾値設定部(判定閾値設定手段)43cと、を備える。
【0022】
タイヤ異常判定部43aは、タイヤセンサユニット30から送信されたタイヤ13の空気室13a内の圧力Pt及び温度Ttを、記憶部44に記憶された閾値と比較してタイヤ13の異常を判定する。ここでは、記憶部44に、圧力(タイヤ空気圧)Ptの閾値として上限閾値Pts1及び下限閾値Pts2が記憶され、温度(タイヤ内温度)Ttの閾値として上限閾値Tts1がそれぞれ記憶されている。なお、圧力Ptの下限閾値Pts2以上且つ上限閾値Pts1以下の範囲は、タイヤ13の適正空気圧として設定される。また、温度Ttの上限閾値Tts1は、タイヤ13の高温劣化を招く虞がある温度値に基づいて設定され、例えば100℃程度の値が設定される。
【0023】
タイヤ異常判定部43aは、圧力Ptが上限閾値Pts1よりも大きければ、空気圧が過剰であると判定し、圧力Ptが下限閾値Pts2よりも小さければ、空気圧が不足していると判定する。温度Ttが上限閾値Tts1よりも大きければ、タイヤ内温度が過剰であると判定する。これらの判定結果は、情報出力部45に送られる。
【0024】
タイヤ周辺部高温判定部43bは、タイヤ13の空気室13a内の温度Ttを判定閾値設定部43cで設定された過昇温判定閾値Ttssと比較して、空気室13a内の温度Ttが過昇温判定閾値Ttss以上となったとき、ホイール12を軸支する軸受部17又はホイール12内側に配設されたブレーキ機構部19が過昇温状態にあると判定する。
判定閾値設定部43cでは、外気温検出部42により検出された車両の周囲の外気温に基づいて、過昇温判定閾値Ttssを設定する。
【0025】
タイヤ周辺部高温判定部43bは、タイヤ13の空気室13a内の温度Ttを用いてホイール12を軸支する軸受部17又はホイール12内側に配設されたブレーキ機構部19が過昇温状態であるか否かを判定するが、ここで、
図3,
図4を参照して、タイヤ内温度Ttと、軸受部17又はブレーキ機構部19の温度との関係について、タイヤ周辺部高温判定及び過昇温判定閾値Ttssの設定について説明する。
【0026】
図3は、試験結果を示し、横軸はブレーキ操作回数、縦軸はタイヤ内温度Tt及びブレーキ機構19のライニングの温度である。ブレーキ操作回数は、ブレーキペダルを所定の周期で所定時間踏み込んだ際の踏み込み回数である。冬季を想定した外気温5℃におけるタイヤ内温度Ttを○印で示し、夏季の猛暑日を想定した外気温35℃におけるタイヤ内温度Ttを□印で示す。また、ブレーキ操作回数に応じたライニングの温度を△印で示す。
【0027】
図3に示すように、ブレーキ操作回数が増加するのに応じて、ブレーキライニングの温度が上昇していく。また、ブレーキ操作回数が増加するのに応じて、タイヤ内温度Ttも上昇していく。ただし、ブレーキライニングの温度に比べて比較的低温のタイヤ内温度Ttは周囲の温度(つまり、外気温)の影響を受け、冬季を想定した外気温5℃におけるタイヤ内温度Tt(○印)に対して、夏季の猛暑日を想定した外気温35℃におけるタイヤ内温度Tt(□印)は高温側にシフトする。
【0028】
ここで、外気温5℃におけるタイヤ内温度Tt(○印)の温度上昇データに基づく上昇特性線をL1とし、外気温35℃におけるタイヤ内温度Tt(□印)の温度上昇データに基づく上昇特性線をL2とし、ブレーキライニングの温度上昇データに基づく上昇特性線をL3とすると、L1,L2,L3は互いに相関する。
【0029】
ブレーキライニングの温度が高まり、例えば300℃以上になると、フェード現象が発生し始める。本実施形態では、この領域中でも、ブレーキライニングの温度が例えば350℃以上になると、警告を発するようにブレーキライニングの過昇温を判定している。
【0030】
このブレーキライニングの温度350℃に対応するのは、外気温5℃におけるタイヤ内温度Tt(○印)の上昇特性線L1では、約80℃である。したがって、外気温5℃におけるタイヤ内温度Ttが例えば80℃以上であれば、ブレーキライニングが過昇温状態であると推定することができる。つまり、ブレーキライニング過昇温の判定閾値Ttssは80(℃)となる。
【0031】
また、外気温35℃におけるタイヤ内温度Tt(□印)の上昇特性線L2に着目すると、ブレーキライニングの温度350℃に対応するのは、外気温35℃におけるタイヤ内温度Ttの上昇特性線L2では、約100℃である。したがって、外気温35℃におけるタイヤ内温度Ttが例えば100℃以上であれば、ブレーキライニングが過昇温状態であると推定することができる。つまり、ブレーキライニング過昇温の判定閾値Ttssは100(℃)となる。
【0032】
外気温5℃におけるタイヤ内温度Tt(○印)に対して外気温35℃におけるタイヤ内温度Tt(□印)は高温側にシフトする。ここで、
図4に示すように、判定閾値Ttssは外気温に応じて線形にシフトすると考えると、30度上昇した場合に判定閾値Ttssは20(℃)だけ増加することから、判定閾値Ttssは、外気温5℃を基準に、外気温の5℃からの温度上昇量Δt(℃)に応じた閾値補正温度Tc(=(20/30)・Δt(℃))を加算し、以下の式(A)のように設定することができる。
【数1】
判定閾値設定部43cでは、このように、外気温検出部42により検出された車両の周囲の外気温に基づいて、過昇温判定閾値Ttssを設定する。
【0033】
なお、タイヤ内温度Ttの上昇要因は、ブレーキ操作によるブレーキライニングの昇温のほかに、路面との摩擦によるタイヤ13自体の発熱や、軸受部17の発熱も考えられる。したがって、タイヤ内温度Ttが判定閾値Ttss超えた場合に、ブレーキライニングが過昇温状態であると断定はできないが、ブレーキライニングが過昇温状態の虞がある、或いは、ブレーキ機構部19及び軸受部17の何れかが過昇温状態の虞がある、と警告を発することはできる。
【0034】
情報出力部45は、
図1に示すように、タイヤ異常判定部43aによりタイヤ13の各種異常が判定されたらタイヤ異常情報として、警報や警告灯表示或いは警告メッセージ等を発するタイヤ異常情報出力部(タイヤ異常情報出力手段)45aと、タイヤ周辺部高温判定部43bにより軸受部17又はブレーキ機構部19の過昇温が判定されたら過昇温情報として、警報や警告灯表示或いは警告メッセージ等を発する異常情報出力部(異常情報出力手段)45bと、を備える。
【0035】
タイヤ異常判定部43aによる判定とタイヤ周辺部高温判定部43bによる判定は、互いに独立して行われるので、タイヤ内温度Ttによっては、タイヤ異常情報出力部45aによる警報等と異常情報出力部45bによる警報等とが同時に発せられる場合もある。
【0036】
なお、タイヤセンサユニット30及び異常検出ユニット40のうち、外気温検出部42,タイヤ周辺部高温判定部43b及び判定閾値設定部43cを除く要素は、タイヤ空気圧監視装置(TPMS)20Aの構成要素であり、本実施形態に係る車両の異常検出装置は、タイヤ空気圧監視装置(TPMS)20Aに、外気温検出部42,タイヤ周辺部高温判定部43b及び判定閾値設定部43cを追加したものである。
また、
図2には、後輪を例に説明したが、本実施形態に係る車両の異常検出装置は、車両の装備される各車輪に備えられる。
【0037】
[2.作用及び効果]
本実施形態に係る車両の異常検出装置によれば、タイヤセンサユニット30による検出情報を利用して、タイヤ13周りの車両部材である軸受部17又はブレーキ機構部19の過昇温の異常を検出して異常情報を発する。したがって、ドライバに、エンジンブレーキなどの他の制動操作を併用するなどの対応を促すことができ、ブレーキフェードを未然に防ぐことが可能になる。
【0038】
このように、部品点数の増加を抑制しながら、車両のタイヤ13及びタイヤ13周りの軸受部17又はブレーキ機構部19の異常を検出して異常情報を出力することができるので、装置コストを抑えることができ、物理的な故障頻度やメンテナンス費用の増加も抑制することができる。
さらに、軸受部17又はブレーキ機構部19の異常を判断する判定閾値は外気温で補正されるため異常判定の精度を高めることができる。
【0039】
[3.その他]
上記実施形態の構成は一例であって、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
例えば、
図3,
図4及び上記の式(A)に示す数値等の値は一例であり、センサやホイール等の特性によって異なる値となることが考えられる。ただし、予め試験等を行ってセンサやホイール等の特性に応じた各数値等を求めることにより、上記の式(A)の各数値を適切に設定することができる。
また、上記実施形態では、ブレーキの操作状態は考慮していないが、ブレーキスイッチ情報からブレーキの操作頻度を演算し、ブレーキの操作頻度が一定以上で且つタイヤ内の温度が判定閾値以上となったときには、ブレーキ機構部が過昇温状態であると判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
10 車体
11 車輪
12 ホイール
12a ホイール12の外周リム部
12b ホイール12のディスク部
12c ホイール12の内周リム部
13 タイヤ
14 ホイールハブ
14a ホイールハブ14のフランジ部
15a ハブボルト(締結部材)
15b ホイールナット(締結部材)
16 アクスルパイプ
17 軸受部
17a,17b ローラベアリング
18 アクスルシャフト
18a アクスルシャフト18のフランジ
18b 連結ボルト
19 ブレーキ機構部
20A タイヤ空気圧監視装置(TPMS)
20 車両の異常検出装置
30 タイヤセンサユニット(タイヤセンサ)
40 異常検出ユニット
31 センサ部(タイヤ状態検出手段)
32 圧力検出部
33 温度検出部
34 信号処理部
35 記憶部
36 送信処理部
37 電池
40 異常検出ユニット
41 受信処理部
42 外気温検出部(外気温検出手段、外気温センサ)
43 信号処理部
43a タイヤ異常判定部(タイヤ異常判定手段)
43b タイヤ周辺部高温判定部(タイヤ周辺部高温判定手段)
43c 判定閾値設定部(判定閾値設定手段)
44 記憶部
45 情報出力部(情報出力手段)
45a タイヤ異常情報出力部(タイヤ異常情報出力手段)
45b 異常情報出力部(異常情報出力手段)