(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018421
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】画像処理装置および磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121761
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河田 康雄
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 良孝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 吉広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 拡樹
(72)【発明者】
【氏名】仲山 貴行
(72)【発明者】
【氏名】白勢 竜二
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA10
4C096AB36
4C096AC01
4C096AC03
4C096AC05
4C096BA18
4C096BA37
4C096DC19
4C096DC20
4C096DC31
4C096DD16
(57)【要約】
【課題】MRI画像から、管状組織の複数種類の病変を抽出する。
【解決手段】血管画像の所定のスライスから、複数の血管像を抽出し、予め定めておいた特定の血管像をさらに抽出する。抽出した複数の血管像に対して第1の処理を施して、複数の血管のいずれかに生じている第1の種類の血管病変を検出する。抽出した特定の血管像に対して予め定めておいた第2の処理を施して、特定の血管に生じている第2の種類の血管病変を検出する。検出した第1の種類の血管病変と、第2の種類の血管病変とを接続されている表示部に表示させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置を用いて撮影した血管画像の所定のスライスから、予め定めた複数の血管像を抽出する第1血管抽出部と、
前記第1血管抽出部が抽出した複数の血管像から、予め定めておいた特定の血管像をさらに抽出する第2血管抽出部と、
前記第1血管抽出部が抽出した複数の血管像に対して予め定めておいた第1の処理を施して、前記複数の血管のいずれかに生じている第1の種類の血管病変を検出する第1病変検出部と、
前記第2血管抽出部が抽出した前記特定の血管像に対して予め定めておいた第2の処理を施して、前記特定の血管に生じている第2の種類の血管病変を検出する第2病変検出部と、
前記第1病変検出部の検出した第1の種類の血管病変と、第2病変検出部が検出した第2の種類の血管病変とを接続されている表示部に表示させる表示制御部とを有する画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1病変検出部は、前記第1血管抽出部が抽出した複数の血管像の形状およびサイズの少なくとも一方に基づいて、1以上の第1病変候補領域を検出する第1病変候補検出部と、前記第1病変候補領域が、前記第1の種類の血管病変であるかどうかを判別する第1判別部とを含む
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、前記第2病変検出部は、前記第2血管抽出部が抽出した前記特定の血管像の形状およびサイズの少なくとも一方に基づいて、1以上の第2病変候補領域を検出する第2病変候補検出部と、前記第2病変候補領域が、前記第2の種類の血管病変であるかどうかを判別する第2判別部とを含む
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、前記第1病変候補検出部は、前記第1血管抽出部が抽出した複数の血管像の形状およびサイズの少なくとも一方が、予め定めておいた第1の基準範囲から外れている領域を、前記第1病変候補領域として検出する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、前記第2病変候補検出部は、前記第2血管抽出部が抽出した前記特定の血管像の形状の形状およびサイズの少なくとも一方が、予め定めておいた第2の基準値から外れている領域を、前記第2病変候補領域として検出する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の画像処理装置であって、前記第1判別部は、前記第1の種類の血管病変を判別するように予め学習した学習済みモデルであり、
前記第2判別部は、前記第2の種類の血管病変を判別するように予め学習した学習済みモデルである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1の種類の血管病変は、嚢状脳動脈瘤を含む動脈瘤であり、前記第2の種類の血管瘤は、紡錘状脳動脈瘤であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1血管抽出部は、内頸動脈と椎骨動脈を含む脳血管像を抽出し、前記第2血管抽出部は、前記特定の血管像として椎骨動脈の像を抽出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1血管抽出部は、内頸動脈と椎骨動脈を含む脳血管像を抽出し、前記第2血管抽出部は、前記特定の血管像として椎骨動脈と眼動脈の像を抽出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1血管抽出部は、内頸動脈と椎骨動脈と前大脳動脈と全交通動脈とを含む脳血管像を抽出し、前記第2血管抽出部は、前記特定の血管像として、椎骨動脈と前交通動脈の像を抽出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像処理装置であって、前記第1の種類の血管病変および前記第2の種類の血管病変はそれぞれ、動脈瘤、動脈奇形、動脈硬化、静脈瘤、および、静脈奇形を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
磁気共鳴イメージング装置を用いて撮影した管状組織画像の所定のスライスから、予め定めた複数の管状組織像を抽出する第1管状組織抽出部と、
前記第1管状組織抽出部が抽出した複数の管状組織の像から、予め定めておいた特定の管状組織像をさらに抽出する第2管状組織抽出部と、
前記第1管状組織抽出部が抽出した複数の管状組織の像に対して予め定めておいた第1の処理を施して、前記複数の管状組織のいずれかに生じている第1の種類の管状組織病変を検出する第1病変検出部と、
前記第2管状組織抽出部が抽出した前記特定の管状組織の像に対して予め定めておいた第2の処理を施して、前記特定の管状組織に生じている第2の種類の管状組織病変を検出する第2病変検出部と、
前記第1病変検出部の検出した第1の種類の管状組織病変と、第2病変検出部が検出した第2の種類の管状組織病変とを接続されている表示部に表示させる表示制御部とを有する画像処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理装置であって、前記管状組織は、脳動脈、脳静脈、肺動脈、冠動脈、小腸、および、大腸を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
磁気共鳴イメージング装置を用いて撮影した血管画像の所定のスライスから、予め定めておいた特定の血管像を抽出する血管抽出部と、
前記血管抽出部が抽出した前記特定の血管像に対して予め定めておいた処理を施して、前記特定の血管に生じている特定の種類の血管病変を検出する病変検出部と、
前記病変検出部の検出した特定の血管病変とを接続されている表示部に表示させる表示制御部とを有する画像処理装置。
【請求項15】
請求項1に記載の画像処理装置を備えた磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置が撮像した画像から、血管や消化管等の管状組織の瘤等の病変を抽出する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生する核磁気共鳴(NMR)信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮像においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時部列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
また、MRI装置を用いて、3D TOF(time of flight)シーケンスにより撮像することにより、造影剤を用いることなく脳血管が高信号で描画された画像を得る血管撮像(MR Angiography)技術が知られている。得られた3D TOF画像をMIP(最大値投影)法で所望の角度に投影することにより、所望の角度から血管像を見ることができる。
【0004】
脳の動脈に発生する未破裂脳動脈瘤は、脳卒中の原因の一つであり、その発見は重要な課題のひとつである。しかし、脳動脈瘤の大きさや位置によっては、検出が困難な場合がある。そこで、MRA画像を用いて、未破裂脳動脈瘤の診断を支援する技術が要望されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、MRAによって血管を描出した第1画像と、T2*強調画像等の血栓が描出される第2画像とを用い、第1画像を用いて動脈溜の輪郭を検出し、輪郭を取り囲む周辺領域において血栓が存在するかどうかを第2画像で特定するシステムが開示されている。
【0006】
一方、特許文献2には、脳血管領域が抽出された画像を多重解像度解析し、解像度レベル毎にベクトル集中度を算出し、ベクトル集中度が所定値となる病変部の候補領域でのみ元の画像を再構成した後、正常な血管画像を削除することにより、病変部を検出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-144725号公報
【特許文献2】国際公開第2007/026598号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
脳動脈瘤には、嚢状脳動脈瘤、紡錘状脳動脈瘤、解離性脳動脈瘤などの形状が異なる複数の種類がある。その形状によって、特徴が異なり、検出が困難な場合がある。
【0009】
また、脳動脈と同様に管状の組織に発生する病変として、肺動脈に発生する動静脈奇形、小腸に発生するクローン病などがあり、これらも、未破裂脳動脈瘤と同様に、検出が困難な場合がある。
【0010】
本願の目的は、MRI画像から、管状組織の複数種類の病変を抽出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、磁気共鳴イメージング装置を用いて撮影した血管画像の所定のスライスから、予め定めた複数の血管像を抽出する第1血管抽出部と、第1血管抽出部が抽出した複数の血管像から、予め定めておいた特定の血管像をさらに抽出する第2血管抽出部と、第1血管抽出部が抽出した複数の血管像に対して予め定めておいた第1の処理を施して、複数の血管のいずれかに生じている第1の種類の血管病変を検出する第1病変検出部と、第2血管抽出部が抽出した特定の血管像に対して予め定めておいた第2の処理を施して、特定の血管に生じている第2の種類の血管病変を検出する第2病変検出部と、第1病変検出部の検出した第1の種類の血管病変と、第2病変検出部が検出した第2の種類の血管病変とを接続されている表示部に表示させる表示制御部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、MRI装置で撮像した血管画像から、第1の種類の病変と、第2種類の病変を検出し、表示することができるため、医師は、複数の種類の病変を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るMRI装置の全体構成の一例を示すブロック図。
【
図3】本発明の実施形態1の画像処理装置の機能ブロック図。
【
図4】本発明の実施形態1の画像処理装置の処理を示すフローチャート。
【
図5】本発明の実施形態1の画像処理装置の表示画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の画像処理装置を備えたMRI装置の実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本実施形態のMRI装置は、管状組織の画像を撮影し、管状組織の像を抽出し、管状組織の病変を検出する。管状組織は、例えば、脳動脈、脳静脈、肺動脈、冠動脈、小腸、および、大腸等である。管状組織の病変は、例えば、動脈瘤、動脈奇形、動脈硬化、静脈瘤、静脈奇形、小腸や大腸の腫瘍、および、小腸や大腸の閉塞である。
【0016】
<<MRI装置の全体概要>>
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るMRI装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、
図1に示すように、MRI装置は静磁場発生部2と、傾斜磁場発生部3と、送信部5と、受信部6と、信号処理部7と、シーケンサ4と、演算処理装部(CPU)8とを備えて構成される。傾斜磁場発生部3と、送信部5と、受信部6、及び、シーケンサ4を纏めて計測制御部100と呼ぶ。
【0017】
静磁場発生部2は、被検体1の撮像部位が配置される空間に静磁場を発生させる。静磁場発生部2は、被検体1の周りに配置された、永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源である。静磁場発生源は、垂直磁場方式であれば被検体1の体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば被検体1の体軸方向に均一な静磁場を発生させる。
【0018】
傾斜磁場発生部3は、MRI装置の座標部(静止座標部)であるX,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とを備えて構成され、後述のシーケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス選択傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0019】
送信部5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1に高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)を照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとを備えて構成される。高周波発振器11から出力されたRFパルスを、後述するシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調されたRFパルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給する。これにより、高周波コイル14aからRFパルスが被検体1に照射される。
【0020】
受信部6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴(NMR)により放出されるエコー信号(以下、NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とを備えて構成される。
【0021】
送信コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号は、被検体1に近接して配置された受信コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二部統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理部7に送られる。
【0022】
シーケンサ4は、RFパルスと、傾斜磁場パルスとをある所定のパルスシーケンスに従って、繰り返し印加し、これにより発生したNMR信号を所定のタイミングで受信させる制御手段である。シーケンサ4は、演算処理部8の制御で動作し、パルスシーケンスに従って、送信部5、傾斜磁場発生部3、および受信部6に種々の命令を送り、被検体1の断層画像の生成に必要なNMR信号データを収集する。
【0023】
信号処理部7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有する。
【0024】
受信部6からNMR信号のデータが演算処理部(CPU)8に入力されると、演算処理部8が信号処理および画像再構成等の処理を実行し、被検体1の断層画像を再構成する。演算処理部8は、被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0025】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理部7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0026】
なお、
図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生部2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。一方、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。なお、上述したように、上記傾斜磁場発生部3、送信部5、受信部6、及びシーケンサ4を纏めて計測制御部100ともいう。
【0027】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0028】
MRIを用いた脳血管等の管状組織の画像化するMRA(Magnetic Resonance Angiography)の手法として、3D TOF(Time of Flight)法のパルスシーケンスがある。
図2は3D TOF法のシーケンス図の一例である。
図2において、RFは、RFパルス401の印加及びNMR信号402の取得のタイミングを示し、Gs、Gp及びGrは、スライス方向、位相エンコード方向及び読み出し方向の傾斜磁場パルス403~408の印加タイミングと大きさを示している。3桁の数字のあとのハイフン後の数字は、繰り返し回数を示す数字である。例えば402「-1」の「1」は、1回目の繰り返しで印加されるパルス及び取得される信号を示し、「-2」の「2」は、2回目の繰り返しで印加されるパルス及び取得される信号を示す。すなわち、
図2の3D TOF法のパルスシーケンスは、スライス方向Gsの傾斜磁場パルス403を印加しながら、RFパルス401を照射した後、スライス方向Gsの傾斜磁場パルス404と位相エンコード方向Gpの傾斜磁場パルス405と読み出し方向Grの傾斜磁場パルス408とを印加し、その後読み出し方向の傾斜磁場パルス407を印加しながら、NMR信号402を受信するシーケンスを、所定回数繰り返す。繰り返しのたびに、スライス方向Gsの傾斜磁場パルス404の大きさを変化させるとともに、位相エンコード方向Gpの傾斜磁場パルス405および406の大きさを変化させることにより、スライス位置と位相エンコードを変化させて3D TOF画像の生成に必要なNMR信号を取得する。
【0029】
なお、小腸、大腸の画像化手法としては、MR Entero-colonography (Magnetic Resonance Enterocolonography)などの手法を用いる。
【0030】
以下、本実施形態のMRI装置において、演算処理部8が、管状組織の病変を検出する処理について説明する。各実施形態において、演算処理部8は、画像処理装置としても機能する。よって、以下の各実施形態において、演算処理部8を、画像処理装置8とも呼ぶ。
【0031】
<<実施形態1>>
実施形態1のMRI装置の画像処理装置8について説明する。
図3は、画像処理装置8の機能ブロック図である。
【0032】
実施形態1では、管状組織の病変の一例として、脳動脈の瘤を検出する画像処理装置8について説明する。脳動脈瘤には、嚢状動脈瘤、紡錘状動脈瘤、解離性動脈瘤等の複数の種類があり、形状の特徴や、生じやすい位置が異なる。また、破裂すると命に係わるため、未破裂脳動脈瘤を精度よく検出することが望まれているが、脳には多数の血管があり、それらが複雑に分岐、湾曲、および接続して入り組んだ構造であるため高精度な検出は容易ではない。本実施形態1では、脳動脈において、検出するのが困難な動脈瘤ができやすい特定の血管を予め定めておくことにより、複数の種類の動脈瘤を精度よく検出する。
【0033】
<画像処理装置8の構造>
図3に示すように画像処理装置8は、3D TOF法のパルスシーケンスを実行したMRI装置の受信部6からNMR信号を受け取って血管画像(3D画像)を再構成する血管画像再構成部70と、第1血管抽出部31と、第2血管抽出部32と、第1病変検出部41と、第2病変検出部42と、表示制御部80とを備えている。
【0034】
第1血管抽出部31は、血管画像再構成部70が再構成した血管画像の予め定めておいた所定のスライスから、予め定めた複数の血管像を抽出する。例えば、脳底の所定のスライスから、解像学的な構造に基づいて2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈を抽出するとともに、内頚動脈に連続する脳動脈全体を抽出する。
【0035】
第2血管抽出部32は、第1血管抽出部31が抽出した複数の血管の像から、予め定めておいた特定の血管像をさらに抽出する。例えば、第1血管抽出部31が抽出した2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈の血管像から、2本の椎骨動脈の像と、方向を考慮した領域拡張処理を行うことによって、椎骨動脈に連続する後方循環系の血管の像とを抽出する。
【0036】
第1病変検出部41は、第1血管抽出部が抽出した複数の血管の像に対して予め定めておいた第1の処理を施して、複数の血管のいずれかに生じている第1の種類の血管病変を検出する。
【0037】
例えば、第1病変検出部41は、第1病変候補検出部51と、第1判別部61とを備えている。第1病変候補検出部51は、第1血管抽出部31が抽出した複数の血管の像の形状およびサイズの少なくとも一方に基づいて、1以上の第1病変候補領域を検出する。具体的には、第1病変候補検出部51は、第1血管抽出部31が抽出した複数の血管の像の形状およびサイズの少なくとも一方が、予め定めておいた第1の基準範囲から外れている領域を、第1病変候補領域として検出する。一例としては、抽出した脳血管に対して、球形度、楕円体の領域を強調する処理を行って、病変の候補領域を検出する。例えば球形度を用いて病変候補領域を検出する手法として、以下の非特許文献1に記載された公知の技術を用いることができる。
【非特許文献1】Ze Jin, Hidetaka Arimura, Shingo Kakeda, et al, A novel ellipsoid convex enhancement filter for boosting the performance in detection of asymptomatic intracranial aneurysms at 3.0T magnetic resonance angiography, IEICE Technical Report vol. 115, no. 401, MI2015-125, pp.257-261, 2016.01.
【0038】
第1判別部61は、第1病変候補検出部51が検出した第1病変候補領域が、予め定めておいた第1の種類の血管病変であるかどうかを判別する。例えば、第1判別部61は、第1病変候補領域が、嚢状脳動脈瘤を含む動脈瘤であるかどうかを判別する。第1判別部61としては、例えば、第1の種類の血管病変を判別するように予め学習した学習済みモデルを用いることができるが、学習済みモデルに限定されるものではない。
【0039】
一方、第2病変検出部42は、第2血管抽出部32が抽出した特定の血管の像に対して、予め定めておいた第2の処理を施して、特定の血管に生じている第2の種類の血管病変を検出する。
【0040】
例えば、第2病変検出部42は、第2病変候補検出部52と第2判別部62とを備えて構成される。第2病変候補検出部52は、第2血管抽出部32が抽出した特定の血管の像の形状およびサイズの少なくとも一方に基づいて、1以上の第2病変候補領域を検出する。具体的には、第2血管抽出部32が抽出した特定の血管の像の形状の、円筒形状からの乖離度が所定値以上の領域を、第2病変候補領域として検出することができる。
【0041】
第2判別部62は、第2病変候補領域が予め定めておいた第2の種類の血管病変であるかどうかを判別する。例えば、第2判別部62は、第2病変候補領域が、紡錘状脳動脈瘤を含む動脈瘤であるかどうかを判別する。第2判別部62としては、例えば、第2の種類の血管病変を判別するように予め学習した学習済みモデルを用いることができるが、学習済みモデルに限定されるものではない。
【0042】
表示制御部80は、第1病変検出部61の検出した第1の種類の血管病変と、第2病変検出部62が検出した第2の種類の血管病変とを接続されているディスプレイ20に表示させる。
【0043】
<画像処理装置8の処理>
画像処理装置8の各部の処理動作を、
図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0044】
図4に示した画像処理装置8の処理フローは、予めプログラムとして磁気ディスク18に記憶されており、演算処理部(CPU)8が磁気ディスク1からそのプログラムを読み込んで実行することによりソフトウエアにより実現される。なお、画像処理装置8の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて画像処理装置8の一部または全部を構成し、その機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0045】
(ステップS201)
血管画像再構成部70は、MRA撮像により取得されたNMR信号を受け取って、3Dの血管画像(MRA画像)を再構成する。
【0046】
(ステップS202)
第1血管抽出部31は、ステップS201で再構成されたMRA画像から、所定のスライスの画像を取得し、当該スライスの画像に含まれる複数の血管像を抽出する。具体的には、脳底の所定のスライスの画像を取得し、信号値(画素値)を閾値処理し、閾値以上の画素値の画素を求める。これにより、当該スライスの画像を横切る4本の動脈像(2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈)を抽出する。
【0047】
第1血管抽出部31は、4本の動脈像(2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈)の断面像を、所定のスライスと上方側に隣接するスライスに順次領域拡張していくことにより、4本の動脈像全体を抽出する。また、内頚動脈に連続する脳血管全体をさらに抽出する。
【0048】
(ステップS203)
第2血管抽出部32は、ステップS202で抽出された4本の動脈のうち、特定の血管の像を抽出する。具体的には、ステップS202で閾値処理後の脳底のスライスに含まれる4本の動脈(2本の内頸動脈と3本の椎骨動脈)のうち、解剖学的に後頭部側の2本を選択する。これにより、椎骨動脈の断面像が選択される。2本の椎骨動脈の断面像を、ステップS202の所定のスライスと上方側に隣接するスライスに順次領域拡張していくことにより、2本の椎骨動脈像を領域拡張法で抽出しながら、2本の椎骨動脈像の中心軸の被検体の体軸方向に対する傾斜角を算出する。2本の椎骨動脈像のうち少なくとも一方の傾斜角が、予め定めた閾値以上になった場合、椎骨動脈像の抽出を終了する。または、2本の椎骨動脈像が1本に合体したならば、脳底動脈に達したと判断して、椎骨動脈像の抽出を終了する。これにより、椎骨動脈像を抽出することができる。
また、第2血管抽出部32は、さらに、椎骨動脈に連続する後方循環系の血管の像を領域拡張法により抽出する。
【0049】
なお、第2血管抽出部32が、2本の椎骨動脈像を抽出する方法は、領域拡張法で抽出する方法に限られず、他の方法を用いてもよい。例えば、U-net(深層学習を用いた画像のセグメンテーション手法)という深層学習モデルに、椎骨動脈の判別を予め学習させた学習済みモデルを予め生成しておき、この学習済みモデルに、ステップS201で再構成したMRA画像を入力することにより、椎骨動脈像を抽出させることも可能である。
【0050】
(ステップS204)
第1病変候補検出部51は、ステップS202で抽出した2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈と、4本の動脈像に連続する脳血管像に対して、形状およびサイズの少なくとも一方が、予め定めておいた第1の基準範囲から外れている領域を、第1病変候補領域(嚢状動脈瘤を含む動脈瘤の可能性がある領域)として検出する。具体的には、血管像の球形度、楕円体の領域を強調する処理を行って、第1病変候補領域を検出する。検出方法は、公知の方法を用いる。例えば、上述の非特許文献1に記載の公知の楕円体強調技術を用いることができる。
【0051】
(ステップS205)
第2病変候補検出部52は、ステップS203で抽出した椎骨動脈像および後方循環系の血管の像の、円筒形状からの乖離度が所定値(第2の基準値)以上の領域を第2病変候補領域(紡錘状動脈瘤の可能性がある領域)として検出する。具体的には例えば、椎骨動脈像の血管の断面の外形をスライスごとに抽出し、直径を求め、例えば平均直径よりも閾値(%)以上大きいスライスを選択し、第2病変候補領域とする。または、断面の外形のいびつ度合(円形からの乖離度)が閾値より大きいスライスや、断面の外形の直径が平均より閾値以上小さくなっているスライスや、断面の外形の非対称の度合いが閾値より大きいスライスを第2病変候補領域としてもよい。
【0052】
(ステップS206)
第1判定部61は、ステップ204で検出した第1病変候補領域が、予め定めておいた第1の種類の血管病変であるかどうかを判別する。具体的には、第1判別部61は、第1病変候補領域が、嚢状動脈瘤や、解離性動脈瘤や、紡錘状動脈瘤を含む動脈瘤であるかどうかを判別する。例えば、第1判定部61は、脳動脈瘤を判別するよう予め学習させた学習済み学習モデルを含み、学習モデルを用いて判別する。
【0053】
学習モデルが機械学習の学習モデルである場合、第1病変候補領域の特徴量(コントラストや球形度など)を算出し、第1病変候補領域の血管像とともに、学習モデルに入力する。
【0054】
学習モデルが、深層学習の学習モデルの場合、第1病変候補領域の血管像を学習モデルに入力する。
【0055】
第1判定部61の学習モデルとして、機械学習の学習モデルと深層学習の学習モデルの両方を用いてもよい。
【0056】
これにより、第1病変候補領域が、動脈瘤であるかどうかの判定結果(確率等)を学習モデルの出力として得ることができる。
【0057】
(ステップS207)
第2判定部62は、ステップ205で検出した第2病変候補領域が、予め定めておいた第2の種類の血管病変であるかどうかを判別する。具体的には、第2判別部62は、第2病変候補領域が、紡錘状動脈瘤であるかどうかを判別する。例えば、第2判定部61は、紡錘状脳動脈瘤を判別するよう予め学習させた学習済み学習モデルを含み、学習モデルを用いて判別する。
【0058】
学習モデルが機械学習の学習モデルである場合、第2病変候補領域の特徴量(コントラストや球形度など)を算出し、第2病変候補領域の血管像とともに、学習モデルに入力する。
【0059】
学習モデルが、深層学習の学習モデルの場合、第2病変候補領域の血管像を学習モデルに入力する。
【0060】
第2判定部62の学習モデルとして、機械学習の学習モデルと深層学習の学習モデルの両方を用いてもよい。
【0061】
これにより、第2病変候補領域が、動脈瘤であるかどうかの判定結果(確率等)を学習モデルの出力として得ることができる。
【0062】
(ステップS208)
表示制御部80は、ステップS206において動脈瘤であると判別された第1病変候補領域501および、ステップS207において紡錘状動脈瘤であると判別された第2病変候補領域502を、例えば
図5のように表示する。機械学習によって、抽出した病変の確率を表す病変スコアとともに、病変候補領域を画像化する。その際、抽出した病変候補を用いて、Radiomics解析を行うことによって、脳動脈瘤が破裂する確率を示してもよい。また、算出したそれらのスコアやリスクに応じて、候補領域の色付け表示や数値表示を行う。
【0063】
<効果>
実施形態1の画像処理装置は、脳動脈において、検出するのが困難な動脈瘤(例えば紡錘状動脈瘤)ができやすい特定の血管(例えば椎骨動脈)を定めておき、複数の脳動脈像から特定の血管像を抽出し、複数の脳動脈全体に対する第1病変検出処理とは別に、特定の血管に対する第2病変検出処理を行う。これにより、脳動脈像全体の検出処理により、嚢状動脈瘤等の脳動脈瘤の全般を検出し、特定の血管(椎骨動脈)像に対する検出処理により、紡錘状動脈瘤を検出することができる。よって、形状が異なるために、脳動脈像全体に対する処理では検出しにくい紡錘状動脈瘤を、精度よく検出でき、脳動脈全体の処理で検出した嚢状動脈瘤等と同時に表示することにより、医師は、動脈瘤をその種類に問わず把握できるようになる。
【0064】
<<実施形態2>>
実施形態2の画像処理装置について説明する。
【0065】
実施形態2の画像処理装置は、実施形態1と同様の構成であり、同様の処理を行うが、特定の血管の種類が実施形態1とは異なっている。実施形態2では、実施形態1の椎骨動脈に加えて、眼動脈の像を特定の血管像として抽出し、その動脈瘤を抽出する。以下、椎骨動脈像と眼動脈像の両方を特定の血管像として抽出する例について説明する。
【0066】
そのため、第2血管抽出部32は、
図4のステップS203において、特定の血管像として、椎骨動脈の像を抽出するとともに、ステップS201で再構成したMRA画像から眼球の像をテンプレート法(Template Matching)やオートクリップ法(Autoclip)等により眼球の像を抽出し、眼球につながる脳血管を領域拡張法で抽出することにより眼動脈を抽出する。
【0067】
第2病変候補検出部52は、ステップS205において、椎骨動脈像の第2病変候補領域を検出するとともに、眼動脈についても、円筒形状からの乖離度が所定値(第2の基準値)以上の領域や、球形度、円形度の閾値を異ならせて抽出した領域を第2病変候補領域として検出する。
【0068】
第2判定部62は、ステップS207において、椎骨動脈像の第2病変候補領域が紡錘状動脈瘤であるかどうかを、学習済み学習モデルを用いて判別するとともに、眼動脈についても第2病変候補領域が動脈瘤であるかどうかを、眼動脈瘤を判別するように学習済みの学習モデルを用いて判別する。
【0069】
眼動脈瘤を判別する学習モデルは、眼動脈瘤が高効率で抽出されるように、眼動脈専用の学習し、例えばCNN(Convolutional Neural Network)の中間層の重みが、眼動脈瘤が抽出されるように設定されている学習モデルを用いる。また、眼動脈専用の学習はしていないが、眼動脈において動脈瘤が判別された場合は、スコア(確率)が低くても表示するように設定した学習モデルを用いてもよい。
【0070】
実施形態2の画像処理装置の他の構成および処理は、実施形態1と同様である。
【0071】
実施形態2の画像処理装置は、脳動脈像全体に対する処理では検出しにくい眼動脈の動脈瘤を、精度よく検出できる。眼動脈の動脈瘤を、眼動脈、内頸動脈に連続する血管および/または椎骨動脈に連続する血管において検出した嚢状動脈瘤等と同時に表示することにより、医師は、動脈瘤を眼動脈も含めて把握できる。
【0072】
<<実施形態3>>
実施形態3の画像処理装置について説明する。実施形態3では、破裂する可能性の高いことが知られている前交通動脈の動脈瘤を精度よく検出する。
【0073】
実施形態3の画像処理装置は、実施形態1と同様の構成であり、同様の処理を行うが、第1血管抽出部31は、2本の内頸動脈と、2本の椎骨動脈と、内頸動脈に連続する脳血管全体とに加えて、2本の前大脳動脈と、前交通動脈を抽出する。第2血管抽出部32は、2本の椎骨動脈の像と、椎骨動脈に連続する後方循環系の血管に加えて、前交通動脈を抽出する点が、実施形態1とは異なっている。
【0074】
例えば、第1血管抽出部31は、ステップS202において、2本の内頸動脈と、2本の椎骨動脈と、内頚動脈に連続する脳血管全体とを抽出処理するとともに、ステップS201で再構成されたMRA画像から、3次元的に脳梁をテンプレートマッチング法等により抽出する。脳梁の前方の下側のスライスに位置する複数の血管像を閾値処理等により抽出し、複数の血管像のうち、輝度の高い2本の血管像をシード(seed)点として、それぞれ領域拡張法等により血管を抽出する。これにより、2本の前大脳動脈の像が抽出される。第1血管抽出部31は、抽出した2本の前大脳動脈を連結する血管を領域拡張法等により抽出することにより、前交通動脈を抽出する。
【0075】
第2血管抽出部32は、ステップS203において、ステップS202で抽出された2本の前大脳動脈を連結する血管を領域拡張法等により抽出する。これにより、特定の血管像として、前交通動脈の像が抽出される。
【0076】
第1病変候補検出部51は、2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈と、内頚動脈に連続する脳血管全体に加えて、2本の前大脳動脈像と前交通動脈像に対して、第1病変候補領域(嚢状動脈瘤を含む動脈瘤の可能性がある領域)を検出し、第1判別部61は、第1病変候補領域が動脈瘤かどうかを学習モデルを用いて判別する。なお、2本の前大脳動脈像と前交通動脈像の動脈瘤の第1病変候補領域の検出の際に用いる第1の基準範囲は、2本の内頸動脈と2本の椎骨動脈の第1病変候補領域の検出の際に用いる第1の基準範囲とは異なる値の範囲を設定することができる。
【0077】
第2病変候補検出部52は、2本の椎骨動脈の像と、椎骨動脈に連続する後方循環系の血管に加えて、前交通動脈像に対して第2病変候補領域(紡錘状動脈瘤の可能性がある領域)を検出し、第2判別部62は、第2病変候補領域が動脈瘤かどうかを、紡錘状動脈瘤が高効率で抽出されるように学習済みの学習モデルを用いて判別する。なお、前交通動脈像の第2病変候補領域(紡錘状動脈瘤の可能性がある領域)の検出の際に用いる円筒形状からの乖離度の所定値(第2の基準値)は、2本の椎骨動脈の像と後方循環系の血管像について第2病変候補領域の検出の際に用いる乖離度の所定値(第2の基準値)とは異なる値を設定することができる。
【0078】
実施形態3の画像処理装置の他の構成および処理は、実施形態1と同様である。
【0079】
実施形態3の画像処理装置は、破裂する可能性の高いことが知られている前交通動脈の動脈瘤を、精度よく検出できる。
【0080】
<<実施形態4>>
実施形態4の画像処理装置について説明する。実施形態1~3では、第2血管抽出部32が、特定の血管像として、予め定めておいた脳動脈の像を抽出し、脳動脈瘤を検出する構成であったが、特定の血管の像の形状の、円筒形状からの乖離度が所定値(第2の基準値)以上の領域を、第2病変候補領域として検出することにより、脳動脈瘤に限らず、動脈奇形、動脈硬化、静脈瘤、静脈奇形を検出することができる。また、円筒形状からの乖離度に替えて、または、円筒形状からの乖離度に加えて、特定の血管像の表面が滑らかさを用いてもよい。血管像の表面の滑らかではない領域を第2病変候補領域とすることにより、動脈硬化を精度よく検出することができる。
【0081】
実施形態4の画像処理装置の他の構成および処理は、実施形態1と同様である。
【0082】
<<実施形態5>>
実施形態5の画像処理装置について説明する。実施形態1~4では、脳血管の病変について検出する構成であったが、脳血管に限らず、管状組織であれば、実施形態1~4の脳血管と同様に病変を検出することが可能である。例えば、肺動脈、冠動脈、小腸および大腸などの管状組織を抽出し、円筒形状からの乖離度等により病変候補領域を設定し、実施形態1~4と同様の処理を適用することにより、病変として、小腸や大腸の腫瘍、小腸や大腸の閉塞を検出することが可能である。
【0083】
上述の実施形態1~3においては、特定の血管が予め定められていたが、特定の血管をオペレータが、キーボード24等のユーザーインタフェースを介して、選択できるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 被検体
2 静磁場発生部
3 傾斜磁場発生部
4 シーケンサ
5 送信部
6 受信部
7 信号処理部
8 演算処理部(画像処理装置)
9 傾斜磁場コイル
10 傾斜磁場電源
11 高周波発振器
12 変調器
13 高周波増幅器
14a 送信側の高周波コイル(送信コイル)
14b 受信側の高周波コイル(受信コイル)
15 信号増幅器
16 直交位相検波器
17 変換器
18 磁気ディスク
19 光ディスク
20 ディスプレイ
23 マウス
24 キーボード
25 操作部
31 第1血管抽出部
32 第2血管抽出部
41 第1病変検出部
42 第2病変検出部
51 第1病変候補検出部
52 第2病変候補検出部
61 第1判別部
62 第2判別部
70 血管画像再構成部
80 表示制御部
Gp 位相エンコード方向
Gr 読み出し方向
Gs スライス方向
100 計測制御部
401 RFパルス
402 NMR信号
403 傾斜磁場パルス
404 傾斜磁場パルス
405 傾斜磁場パルス
407 傾斜磁場パルス
408 傾斜磁場パルス
501 第1病変候補領域
502 第2病変候補領域