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特開2024-18425無線センサ装置及び検出データ無線送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018425
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】無線センサ装置及び検出データ無線送信方法
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/02 20060101AFI20240201BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20240201BHJP
   G01D 9/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G08C17/02
G08C17/00 A
G01D9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121768
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】青島 有希
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇佑
【テーマコード(参考)】
2F070
2F073
【Fターム(参考)】
2F070AA01
2F070CC06
2F070CC11
2F070FF02
2F070FF12
2F070HH05
2F070HH07
2F073AA12
2F073AA19
2F073AA32
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073AB05
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE13
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG06
2F073GG08
(57)【要約】
【課題】センサを備える装置の消費電力をなるべく小さくしつつ、センサの検出データの欠落を抑制することを目的とする。
【解決手段】無線センサ装置は、検出データを出力するセンサと、第1メモリと、記憶したデータを保持するための消費電力が、第1メモリが記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい第2メモリと、無線通信回路と、検出データを第1メモリに記憶させる処理(S3)と、検出データを第2メモリに記憶させる処理(S13)と、第1メモリ又は第2メモリに記憶された検出データを、無線通信回路を通じて無線送信する処理(S5、S9)とを実行する処理部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出データを出力するセンサと、
第1メモリと、
記憶したデータを保持するための消費電力が、前記第1メモリが記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい第2メモリと、
無線通信回路と、
前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理と、前記検出データを前記第2メモリに記憶させる処理と、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、前記無線通信回路を通じて無線送信する処理とを実行する処理部と、
を備える無線センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線センサ装置であって、
前記第1メモリは、揮発性メモリであり、
前記第2メモリは、不揮発性メモリである、無線センサ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、
通常状態では、前記センサから出力される前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理を実行し、
前記検出データの記憶先を切替えるトリガーとなる条件である、記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記センサから出力される前記検出データを前記第2メモリに記憶させる処理を実行する、無線センサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線センサ装置であって、
前記記憶先切替条件は、前記無線通信回路を通じた無線通信が切断されたことである、無線センサ装置。
【請求項5】
請求項3に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、前記記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記第1メモリに記憶された前記検出データを、前記第2メモリに記憶させる処理を実行する、無線センサ装置。
【請求項6】
請求項3に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、
前記通常状態では、前記第2メモリの電力供給をオフにし、
前記記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリの電源をオンにする、無線センサ装置。
【請求項7】
請求項3に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、
前記検出データの記憶先を前記第1メモリに戻すためのトリガーとなる条件である、記憶先復帰条件が満たされたと判定されたときに、前記センサから出力される前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理を実行する、無線センサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の無線センサ装置であって、
前記記憶先復帰条件は、前記無線通信回路を通じた無線通信が復旧したことである、無線センサ装置。
【請求項9】
請求項7に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、前記記憶先復帰条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリの電力供給をオフにする、無線センサ装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、前記第2メモリに記憶された前記検出データを無線送信するための条件である、第2メモリ内データ送信条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリに記憶された前記検出データを、前記無線通信回路を通じて無線送信する処理を実行する、無線センサ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の無線センサ装置であって、
前記第2メモリ内データ送信条件は、前記センサによる検出停止タイミングと対応付けられた条件又は前記無線通信回路を通じた無線通信の復旧タイミングと対応付けられた条件である、無線センサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の無線センサ装置であって、
前記センサは、輸送機の移動に伴う変化を検出するセンサであり、
前記第2メモリ内データ送信条件は、輸送機の停止である、無線センサ装置。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の無線センサ装置であって、
前記処理部は、
前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データに連続符号を付加して無線送信し、
前記連続符号の指定を含む再送指令を受けた場合に、前記検出データを再度無線送信する、無線センサ装置。
【請求項14】
請求項1又は請求項2に記載の無線センサ装置であって、
前記センサは、輸送機の移動に伴う変化を検出するセンサである、無線センサ装置。
【請求項15】
請求項1又は請求項2に記載の無線センサ装置であって、
前記センサは、鉄道車両の移動に伴う変化を検出するセンサである、無線センサ装置。
【請求項16】
センサの検出データを無線送信する検出データ無線送信方法であって、
前記センサの前記検出データを第1メモリ又は記憶保持状態における消費電力が前記第1メモリの記憶保持状態における消費電力よりも小さい第2メモリに記憶させ、
前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、無線送信する、
検出データ無線送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、センサの検出データを無線送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基体と、前記基体に取り付けられた、1又は複数の無線通信センサと、無線通信センサと無線通信する無線通信機器とを含むセンサシステムを開示している。特許文献1において、無線通信センサは、センサが検出した自機の姿勢が所定条件を満たすと、無線通信モジュールと無線通信機器との無線通信の状態を第1状態から当該第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ変更する。第2状態は、無線通信センサと無線通信機器との間でデータの送信及び/又は受信を行うことが可能な状態である。この状態で、センサの検出結果を含むデータが、無線通信センサから無線通信機器に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/025010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、外部環境の影響により、無線通信センサと無線通信機器との間で通信が困難な状況になることが考えられる。無線通信機器へのデータ送信ができない状態で、センサがデータの取得を継続すると、取得されたデータがメインメモリの容量を超える可能性がある。そうすると、無線通信機器側において、センサによって取得されたデータが欠落してしまう可能性がある。
【0005】
ここで、無線通信センサについては、消費電力をなるべく小さくすることが要請される。メインメモリを大きくすると、消費電力が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本開示は、センサを備える装置の消費電力をなるべく小さくしつつ、センサの検出データの欠落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、無線センサ装置は、検出データを出力するセンサと、第1メモリと、記憶したデータを保持するための消費電力が、前記第1メモリが記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい第2メモリと、無線通信回路と、前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理と、前記検出データを前記第2メモリに記憶させる処理と、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、前記無線通信回路を通じて無線送信する処理とを実行する処理部と、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決するため、検出データ無線送信方法は、センサの検出データを無線送信する検出データ無線送信方法であって、前記センサの前記検出データを第1メモリ又は記憶保持状態における消費電力が前記第1メモリの記憶保持状態における消費電力よりも小さい第2メモリに記憶させ、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、無線送信する、検出データ無線送信方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、センサを備える装置の消費電力をなるべく小さくしつつ、センサの検出データの欠落を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るセンサデータ収集システムの全体構成を示す説明図である。
図2】マスタ機器及び無線センサ装置を示すブロック図である。
図3】無線センサ装置を示すブロック図である。
図4】無線センサ装置の処理例を示すフローチャートである。
図5】データ構造例を示す説明図である。
図6】通信処理例を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る処理例を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る無線センサ装置の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る無線センサ装置及び検出データ無線送信方法について説明する。図1は無線センサ装置50を備えるセンサデータ収集システム30の全体構成を示す説明図である。本実施形態では、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法が鉄道車両10に適用された例が説明される。
【0012】
本システムが組込まれる鉄道車両について説明する。鉄道車両10は軌道18を走行する。軌道18は、鉄道車両を経路に沿って導く線状の路である。ここでは、軌道18は、2つのレール18a、18aを含む。2つのレール18a、18aは、地上に枕木等を介して並行状態で敷設されている。軌道は、モノレールのように1本のレールが鉄道車両を案内するものであってもよい。軌道は、高架橋等によって地上よりも上の位置に設けられていてもよい。軌道は、地下に掘られたトンネル内に設けられていてもよい。
【0013】
鉄道車両10は、車体12と、台車14とを備える。台車14は、台車枠15と、複数の車輪16とを備える。複数の車輪16は、台車枠15の左右部位に車軸を介して台車枠15に回転可能に支持されている。ここで、左右とは鉄道車両10から進行方向を見た場合の左右をいう。左右の車輪16は、軌道18の2つのレール18a、18aによって案内されつつ当該軌道18上を走行する。台車14が下方から車体12を支持している。台車14が軌道18上を走行することで、車体12を含む鉄道車両10が軌道18に沿って走行する。鉄道車両10は、軌道18を走行する車両であればよく、電車、貨物列車の機関車、貨車、旅客列車の機関車、客車のいずれであってもよい。貨車又は客車は、機関車によって牽引される付随車であってもよいし、自身が動力を有する動力車であってもよい。機関車は、電気機関車であってもよいし、ディーゼル機関車等の内燃機関車であってもよい。鉄道車両10は、人又は荷物の輸送のための営業車両であってもよいし、鉄道軌道状態を監視するための事業用車両であってもよい。鉄道車両10は、鉄道軌道と道路との両方を走行可能な軌陸車であってもよい。
【0014】
センサデータ収集システム30は、マスタ機器32と、データ収集装置40と、無線センサ装置50とを備える。
【0015】
無線センサ装置50は、センサの検出対象に取付けられる。検出対象は、鉄道車両10におけるいずれの部位であってもよい。例えば、検出対象は、レール18aを転がる車輪16を支持する台車枠15であり、無線センサ装置50は、台車枠15に取付けられてもよい。すなわち、車輪16がレール18aを転がると、車輪16は、レール18aの上下、左右の曲り具合及びレール18aの表面の凹凸形状に応じた動きを示し、当該車輪16の動きが台車枠15に伝わる。よって、無線センサ装置50が台車枠15の動きを検出することで、軌道18の曲り具合及び気道18の表面の凹凸形状等が把握され得る。また、車輪16がレール18aを転がると、車輪16は、自己の車輪径及び表面の凹凸形状に応じた動きを示し、当該車輪16の動きが台車枠15に伝わる。よって、無線センサ装置50が台車枠15の動きを検出することで、車輪16の車輪径及び表面の凹凸形状等の状況が把握され得る。
【0016】
台車枠15に取付けられた無線センサ装置50は、車輪16がレール18aを転がることによって生じ得る変動状況を検出し、検出データを含むデータを無線送信する。
【0017】
センサデータ収集システム30は、少なくとも1つの無線センサ装置50を備える。センサデータ収集システム30は、複数の無線センサ装置50を備えてもよい。例えば、鉄道車両10が複数の台車14を備え、それぞれの台車14が、前後及び左右に4つの車輪16を備える場合がある。複数の無線センサ装置50が、複数の車輪16のそれぞれに対応するように、台車枠15に取付けられてもよい。
【0018】
マスタ機器32は、無線センサ装置50と無線通信を行って、無線センサ装置50から検出データを含むデータを受信する。
【0019】
データ収集装置40は、CPU等のプロセッサ、メモリ等を含むコンピュータによって構成されている。データ収集装置40は、マスタ機器32と通信可能に接続されている。マスタ機器32が無線センサ装置50から検出データを含むデータを受信すると、当該検出データを逐次データ収集装置40に送信する。データ収集装置40は、逐次送信される検出データを、例えば、連続走行状況データ44として収集する。連続走行状況データ44は、例えば、鉄道車両10の走行に伴って連続的に検出されるデータが、当該検出時の時間又は位置座標に対応付けられた一連のデータ群である。
【0020】
マスタ機器32には、車速センサ31が接続されていてもよい。車速センサ31は、鉄道車両10の速度を検出するセンサである。車速センサ31は、鉄道車両10に組込まれた速度発電機であってもよい。車速センサ31の出力に基づいて、鉄道車両10が走行中であるか否かが判断される。
【0021】
データ収集装置40が通信装置48に接続されており、当該データ収集装置40が、通信装置48、28を介して、管理基地に設置される基地局データ収集装置20に通信可能に接続されていてもよい。
【0022】
管理基地は、軌道18及び鉄道車両10を監視するために地上に設置された基地である。基地局データ収集装置20は、CPU等のプロセッサ、メモリ等を含むコンピュータによって構成されている。基地局データ収集装置20は、通信装置28に接続されており、通信装置28、48を介して、鉄道車両10側のデータ収集装置40と通信を行う。基地局データ収集装置20は、データ収集装置40から送信される連続走行状況データ44を受信して、連続走行状況データ24として記憶する。基地局データ収集装置20において記憶される連続走行状況データ24は、連続走行状況データ44と同じであってもよいし、複数の連続走行状況データ44を統合したデータであってもよい。
【0023】
基地局データ収集装置20とデータ収集装置40との通信可能に接続する通信路29は、有線式であっても無線式であってもよいしそれらの複合方式であってもよい。また、通信路29は、公衆通信網であっても専用回線であってもよい。
【0024】
基地局データ収集装置20は、通信装置28を介して、複数の鉄道車両10の無線センサ装置50と通信を行ってもよい。この場合、基地局データ収集装置20において記憶される連続走行状況データ24は、複数の鉄道車両10からの連続走行状況データ44を統合したデータであってもよい。
【0025】
鉄道車両10においてデータ収集装置40が省略されてもよい。この場合、マスタ機器32の検出データを含むデータが、逐次通信装置28を介して基地局データ収集装置20に送信され、当該基地局データ収集装置20において連続走行状況データ24が記憶されてもよい。
【0026】
図2はマスタ機器32及び無線センサ装置50を示すブロック図である。マスタ機器32は、無線センサ装置50の制御を司るマスタ機器32であり、無線センサ装置50は、当該マスタ機器32によって制御されるスレーブ機器の一例である。
【0027】
マスタ機器32は、マスタコントローラ33と、通信モジュール36とを備える。
【0028】
マスタコントローラ33は、CPU等のプロセッサ34及びメモリ35等を含むコンピュータによって構成されている。通信モジュール36は、アンテナ及び通信コントローラ等を含む。複数の無線センサ装置50との間での無線通信を円滑に行うため、マスタ機器32は、複数の通信モジュール36を備えていてもよい。
【0029】
マスタコントローラ33が通信モジュール36を介して無線センサ装置50との間で無線通信を行い、無線センサ装置50から検出データを受信する。マスタコントローラ33は、無線センサ装置50から受信した検出データを、データ収集装置40に出力する。
【0030】
無線センサ装置50は、スレーブコントローラ51と、センサ64と、通信モジュール66とを備えている。
【0031】
センサ64は、検出対象の状況を検出するセンサであり、例えば、輸送機の一例である鉄道車両10の移動に伴う変化を検出するセンサである。例えば、センサ64が台車枠15の動きを検出することを目的としている場合、センサ64は、慣性を利用して動きを検出するセンサであってもよい。例えば、センサ64は、少なくとも1つの軸方向の加速度を検出する加速度センサであってもよいし、少なくとも1つの軸周りの角速度を検出するジャイロセンサであってもよいし、加速度センサとジャイロセンサとが一体化されたセンサであってもよい。
【0032】
スレーブコントローラ51は、センサ64によって得られた検出データを、通信モジュール66を介してマスタ機器32に無線送信する。
【0033】
上記通信モジュール36、66は、双方向通信を行う通信モジュールである。通信モジュール36、66は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))の通信規格に準じた通信を行うモジュールである。鉄道車両10に搭載されたマスタ機器32と、台車14に取付けられた無線センサ装置50とは、無線通信可能に接続されており、無線センサ装置50による検出結果を含む検出データは、無線通信によって、マスタ機器32に送信される。
【0034】
鉄道車両10の走行中において、無線センサ装置50は、検出対象の状態を連続的に検出し、当該検出結果を含む検出データを送信する。ここで、無線センサ装置50のサンプリング周波数が大きいほど、鉄道車両10の走行に伴う緻密な情報が検出される。サンプリング周波数は、例えば、100Hz~1000Hzである。また、鉄道車両10の走行中において、データ収集装置40が無線センサ装置50から送信される検出データを連続的に収集することで、鉄道車両10の走行中における連続走行状況データ44が得られる。連続走行状況データ44は、例えば、鉄道車両10が走行した軌道18の状態把握、又は、鉄道車両10の状態把握に利用され得る。
【0035】
鉄道車両10が走行した軌道18又は鉄道車両10の状態把握の正確性を高め、かつ、漏れを抑制するためには、無線センサ装置50によるサンプリング周期をなるべく小さくし、かつ、データ収集装置40が無線センサ装置50の検出データをなるべく漏れなく収集できることが好ましい。
【0036】
無線センサ装置50は、センサ64による検出結果を含む検出データを、自己が内蔵するRAM(Random Access Memory)に一時的に書込み、順次マスタ機器32に無線送信することが考えられる。この場合、読み書き速度が高速であること、書換回数が実質無限大であること等から、RAMとしてSRAM(Static Random Access Memory)が用いられることが考えられる。
【0037】
一方、無線センサ装置50を鉄道車両10に簡易に取付けられるようにするため、無線センサ装置50は内蔵バッテリによって動作することが望まれている。無線センサ装置50については、設置場所の制約を少なくするため、なるべく小型であることが要請されている。また、無線センサ装置50の内蔵バッテリを大容量化すると、無線センサ装置50が大型化する。小容量の内蔵バッテリでなるべく長期間動作可能とするため、無線センサ装置50は低消費電力であることが望まれている。
【0038】
消費電力上の問題及びコスト上の問題から、無線センサ装置50に内蔵可能なSRAMの容量に制約がある。例えば、無線センサ装置50は、数kBから数十kBのSRAMを内蔵することが想定される。
【0039】
鉄道車両10の走行中において、外部環境の影響によって、無線センサ装置50とマスタ機器32との間の無線通信が困難となることが考えられる。この場合、SRAMに記憶した検出データをマスタ機器32に送信できない一方、センサ64自体は検出を継続する。すると、記憶しておくべき検出データの量が、SRAMの容量を超えてしまい、検出データの記憶場所が無くなってしまう。その後、無線センサ装置50とマスタ機器32との間の無線通信が復旧しても、検出データの一部は欠落してしまう可能性がある。
【0040】
上記のように、検出対象の状態をなるべく小さいサンプリング周期で連続的に検出することが要請される状況下においては、記憶しておくべき検出データの量がSRAMの容量を超える状況となり易い。
【0041】
本無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法は、センサ64の検出データを、なるべく漏れなく収集できるようにする技術に関する。
【0042】
図3は無線センサ装置50を示すブロック図である。
【0043】
無線センサ装置50は、センサ64と、SRAM53と、FeRAM(強誘電体メモリ、Ferroelectric random access memory、FRAM(登録商標)ともいう)54と、マルチプロセッサ52とを備える。
【0044】
センサ64は、上記したように、検出対象の状態を検出して、検出データを出力するセンサである。センサ64は、データバッファ55に接続されている。データバッファ55は、SRAM53及びFeRAM54にデータ転送可能に接続されている。センサ64から出力された検出データは、データバッファ55に一時的に記憶され、その後、SRAM53又はFeRAM54に転送される。
【0045】
SRAM53は、第1メモリの一例である。FeRAM54は、第2メモリの一例である。第2メモリが記憶したデータを保持するための消費電力は、第1メモリが記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい。SRAM53にはデータを保持しておくために電力供給が継続される。FeRAM54は、電力供給が絶たれてもデータを保持することができる。このため、第2メモリの一例であるFeRAM54が記憶したデータを保持するための消費電力は、第1メモリの一例であるSRAM53が記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい。
【0046】
第1メモリ及び第2メモリの例は上記例に限られない。例えば、第1メモリがSRAM又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、第2メモリがFeRAM又はFLASHメモリであってもよい。また、例えば、第1メモリは、電力供給がないと記憶したデータを保持できない揮発性メモリであり、第2メモリは、電力供給が無くても記憶したデータを保持できる不揮発性メモリであってもよい。
【0047】
SRAM53とFeRAM54とは、データ転送可能に接続されており、SRAM53に記憶されたデータはFeRAM54に転送されることができる。
【0048】
無線センサ装置50の動作中において、SRAM53には常時電力供給がなされる。
【0049】
FeRAM54は電源57に接続されると共に、FET(Field effect transistor)58を介してグランド接続されている。FET58は、制御端子に対する制御信号に応じて、オンオフ状態に切替えられるスイッチング素子の一例である。FET58は、例えば、MOSFETである。FET58がオン状態になることで、FeRAM54に電力供給がなされる。FeRAM54に電力供給がなされることで、FeRAM54に対する読み書きが可能となる。FET58がオフ状態になることで、FeRAM54への電力供給が絶たれる。
【0050】
マルチプロセッサ52は、演算回路を含む。本実施形態では、マルチプロセッサ52は、通信用プロセッサ52aと、スレーブ用プロセッサ52bとが統合されたプロセッサである。
【0051】
通信用プロセッサ52aは、アンテナ66aに接続されている。通信モジュール66は、無線通信回路の一例であり、通信用プロセッサ52aとアンテナ66aとを備える。スレーブ用プロセッサ52bによる制御に基づき、通信用プロセッサ52aが所定の通信規格に準じた通信制御を行うことで、アンテナ66aを通じた無線通信が実現される。通信規格は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)の通信規格である。
【0052】
スレーブ用プロセッサ52bは、SRAM53、FeRAM54及びデータバッファ55に制御可能に接続されている。スレーブ用プロセッサ52bの制御によって、データバッファ55からのデータ転送先がSRAM53とFeRAM54との間で切替えられる。スレーブ用プロセッサ52bの制御によって、SRAM53からFeRAM54へデータが転送される。また、スレーブ用プロセッサ52bの制御に応じて、SRAM53又はFeRAM54から読出されたデータが、通信モジュール66を介して無線送信される。
【0053】
また、スレーブ用プロセッサ52bは、入出力回路56を介してFET58に接続されている。スレーブ用プロセッサ52bによって、FET58がオンオフ制御され、FeRAM54に対する電力供給状態が切替えられる。
【0054】
このスレーブ用プロセッサ52bが、処理部として、検出データをSRAM53に記憶させる処理と、検出データをFeRAM54に記憶させる処理と、SRAM53又はFeRAM54に記憶された検出データを、通信モジュール66を通じて無線送信する処理とを実行する。
【0055】
無線センサ装置50の動作について説明する。図4は無線センサ装置50におけるスレーブ用プロセッサ52bの処理例を示すフローチャートである。なお、初期状態において、FET58はオフ状態、つまり、FeRAM54に対する電力供給はなされていない。通常状態、即ち、後のステップS10が実行される迄では、FeRAM54の電力供給はオフにした状態に保たれる。
【0056】
無線センサ装置50が動作を開始すると、ステップS1において、連続符号Nが初期値(例えば、0)にリセットされる。
【0057】
次ステップS2において、鉄道車両10の走行開始の有無が判定される。走行開始の有無は、例えば、車速センサ31の検出結果に基づいてなされてもよい。例えば、車速センサ31の検出結果がマスタ機器32に入力される。マスタ機器32が、車速センサ31の検出結果に基づいて鉄道車両10の車速が0を越えたか否かを判定し、車速が0を越えたと判定したときに、マスタ機器32が無線センサ装置50に向けて走行開始信号を送信する。無線センサ装置50は、当該走行開始信号の有無に基づいて鉄道車両10が走行を開始したか否かを判定する。ステップS2において、鉄道車両10の走行が開始されたと判定されると、次ステップS3に進む。
【0058】
ステップS3では、データバッファ55内のデータをSRAM53に記憶するように設定される。即ち、鉄道車両10の走行が開始されると、センサ64の検出結果を含む検出データがデータバッファ55内に一時的に記憶される。スレーブ用プロセッサ52bは、データバッファ55に、記憶した検出データをSRAM53に転送するように指令を与える。よって、通常状態では、センサ64から出力される検出データは、SRAM53に記憶される。なお、通常状態とは、センサ64の検出結果が滞りなくマスタ機器32に向けて無線送信されている状態であり、例えば、無線センサ装置50とマスタ機器32との間で無線通信が成立している状態である。
【0059】
次ステップS4では、通信が成立しているか否かが判定される。すなわち、本無線センサ装置50は、通信モジュール66を介して、マスタ機器32の通信モジュール36との間で無線通信を行う。無線センサ装置50とマスタ機器32との間で無線通信が成立している場合にはステップS5に進み、無線通信が不成立である場合にはステップS10に進む。無線通信が成立していないこと、換言すれば、無線通信が切断されたことは、検出データの記憶先を切替える処理(ステップS11、S13参照)を行うトリガーとなる条件である、記憶先切替条件の一例である。
【0060】
なお、無線通信の規格の一例として、次の処理によって無線通信が成立しているか否かが確認される場合がある。すなわち、マスタ機器32又は無線センサ装置50から問合せのための信号が送信され、所定時間t1、問合せに対する応答がなされるか否かが待たれる。問合せに対する応答があれば、通信が成立していると判定される。応答が無ければ、通信不成立と判定される。問合せのための信号送信開始時から所定のタイムアウト時間t2経過後に、問合せのための処理を終了する。問合せのための信号は、一定間隔で送信されてもよいし、検出データの無線送信タイミングで送信されてもよい。
【0061】
上記確認処理がなされる場合、問合せ時からタイムアウト時間t2迄の検出データが無線送信されずにSRAM53に残る場合がある。このため、SRAM53は、タイムアウト時間t2分の検出データを記憶できる容量を有していることが好ましい。つまり、SRAM53は、サンプリング周期に鑑みて、タイムアウト時間t2に出力される検出データの量以上の記憶容量を有することが好ましく、余裕を持たせるため、タイムアウト時間t2に出力される検出データの量を超える記憶容量を有することがより好ましい。
【0062】
ステップS5において、SRAM53内の検出データが、通信モジュール66を通じて無線送信される。無線送信を行う際に、検出データに、連続符号Nが付加される。例えば、図5に示すように、SRAM53内に検出データDaが記憶されており、スレーブ用プロセッサ52bは、検出データDaに、連続符号Nと、通信ヘッダDb等を付加したパケットデータを生成する。このパケットデータDpが通信モジュール66を通じて無線送信される。
【0063】
次ステップS6において、連続符号Nがインクリメントされる。連続符号Nは、パケット送信毎に1増えるシリアル番号である。
【0064】
次ステップS7において、鉄道車両10の走行終了の有無が判定される。走行終了の有無は、ステップS2と同様に、車速センサ31の検出結果に基づいてなされてもよい。鉄道車両10の走行終了と判定されるとステップS8に進み、走行終了ではないと判定されると、ステップS3に戻って以降の処理を繰返す。なお、ステップS3の繰返し時において、記憶された検出データが古い順で消去されて、新しい検出データが書込まれる。なお、SRAM53は、少なくとも1回分の送信分の検出データを記憶可能な容量を有しており、好ましくは、複数回の送信分の検出データを記憶可能な容量を有している。本実施形態では、SRAM53は、複数回の送信分の検出データを記憶可能な容量を有しているとする。
【0065】
無線センサ装置50とマスタ機器32との間で無線通信が良好に成立している場合には、上記ステップS3からステップS7の処理が繰返される。この場合、SRAM53内に記憶された検出データは、新しい検出データの記憶によって消去される前に、無線送信される。このため、検出データの漏れが抑制される。
【0066】
無線センサ装置50とマスタ機器32との間で無線通信が切断された状態で、仮にステップS5以降の処理を続けると、SRAM53内に記憶された検出データが無線送信される前に、新しい検出データの記憶によって消去される可能性がある。そこで、本実施形態では、ステップS4において、通信が成立していないと判定されると、ステップS10に進む。
【0067】
ステップS10では、スレーブ用プロセッサ52bは、FET58をオンに切替える。これにより、FeRAM54に電力供給がなされる。つまり、記憶先切替条件が満たされたときに、FeRAM54の電力供給がなされる。
【0068】
次ステップS11において、SRAM53内の検出データがFeRAM54に転送されて記憶される。つまり、記憶先切替条件が満たされたときに、今後の検出データの記憶先がSRAM53からFeRAM54に切替えられるだけでなく、SRAM53に記憶済の検出データがFeRAM54に転送されて記憶される。これにより、後に無線通信が復旧してステップS3に戻る際に、無線送信されていない検出データが新しい検出データの記憶時に消去されることが抑制される。
【0069】
次ステップS12において、無線通信の切断が継続しているか否かが判定される。無線通信の切断が継続していると判定されると、ステップS13に進む。無線通信の切断が継続していない場合、即ち、無線通信が復旧したと判定されると、ステップS14に進む。無線通信の切断が継続していないこと、換言すれば、無線通信が復旧したことは、検出データの記憶先をSRAM53に戻すためのトリガーとなる条件である、記憶先復帰条件の一例である。
【0070】
ステップS12からステップS13に進むと、データバッファ55内のデータをFeRAM54に記憶するように設定される。即ち、鉄道車両10の走行が開始されると、センサ64の検出結果を含む検出データがデータバッファ55内に一時的に記憶される。スレーブ用プロセッサ52bは、データバッファ55に、記憶した検出データをFeRAM54に転送するように指令を与える。よって、記憶先切替条件が満たされたときに、センサ64から出力される検出データは、FeRAM54に記憶される。その後、ステップS12に戻り、ステップS12以降の処理を繰返す。なお、記憶先切替条件が満たされたときに、センサ64から出力される検出データは、SRAM53を経由してFeRAM54に記憶されてもよい。
【0071】
無線通信の切断が継続している期間中、ステップS12及びステップS13の処理が繰返される。このため、センサ64から出力される検出データは、FeRAM54に蓄積されていく。
【0072】
ステップS12において無線通信が復旧したと判定されると、ステップS14に進む。ステップS14では、スレーブ用プロセッサ52bは、FET58をオフに切替える。これにより、FeRAM54への電力供給が絶たれる。FeRAM54は、電力供給が絶たれても、検出データの保持を保つことができる。無線通信が切断されることによって無線送信できなかった検出データは、FeRAM54に保持される。ステップS14の後、ステップS3に戻って、以降の処理が繰返される。
【0073】
上記のように、ステップS3からステップS7、ステップS10からS14の処理が繰返されることによって、無線通信成立期間においては、センサ64からの検出データが逐次無線送信されてマスタ機器32によって受信されデータ収集装置40に収集される。また、無線通信不成立期間においては、センサ64からの検出データはFeRAM54に蓄積されることになる。
【0074】
そして、ステップS7において、鉄道車両10の走行が終了したと判定されると、ステップS8に進む。鉄道車両10の走行が終了するという条件は、第2メモリとしてのFeRAM54に記憶された検出データを無線送信するための条件である第2メモリ内データ送信条件の一例である。鉄道車両10の走行が終了するという条件は、輸送機の停止という条件の一例である。また、鉄道車両10の走行が終了すると、センサ64検出対象の状況を検出しなくてもよくなるので、当該走行終了タイミングはセンサ64による検出が停止されるタイミングと同じと考えられる。このため、鉄道車両10の走行が終了するという条件は、センサ64による検出停止タイミングと対応付けられた条件の一例でもある。
【0075】
ステップS8では、FeRAM54に電力供給がなされ、FeRAM54における検出データの有無が判定される。鉄道車両10の走行開始から走行終了迄の期間に、無線通信不成立期間が存在し、上記ステップS11又はS13が実行された場合には、FeRAM54に検出データが記憶されている。本ステップS8では、当該検出データの有無が判定される。FeRAM54において検出データが有ると判定されると、ステップS9に進み、検出データが無いと判定されると、処理を終了する。
【0076】
ステップS9では、FeRAM54内の検出データが、通信モジュール66を通じて無線送信される。つまり、第2メモリ内データ送信条件が満たされると、FeRAM54内の検出データが無線送信される。これにより、無線通信不成立期間における検出データが、無線センサ装置50からマスタ機器32に無線送信され、データ収集装置40において収集される。もって、鉄道車両10の走行開始から走行停止までの連続する検出データが、欠落が抑制された状態で、データ収集装置40において収集される。ステップS9においても、ステップS5と同様に、検出データに、連続符号Nが付加されたパケットデータが無線送信されてもよい。ステップS9後、送信済の検出データは消去されてもよいし、記憶されたままであってもよい。
【0077】
図6は無線センサ装置50とマスタ機器32との間でなされる通信処理例を示すフローチャートである。当該通信処理は、図5に示すステップS5処理時に合せてなされることが考えられる。図5に示す処理において、所定時間t1、問合せに対する応答がなされるか否かを待って通信の成否を判定すると、所定時間t1以内の通信切断が生じた場合に、検出データの抜けが発生する可能性がある。その理由は次の通りである。つまり、所定時間t1以内の通信切断が生じていても、通信が成立しているという判断下で、検出データを送信するステップS5の処理が実行される可能性がある。この場合に、断続的な通信切断によってマスタ機器32側で検出データを受信できない可能性があるからである。
【0078】
図6に示すように、無線センサ装置50において、ステップS21によりパケットデータが無線送信される。ステップS21に示す処理は、ステップS5に示す処理実行によってなされる処理であり、当該パケットデータDpは、検出データDaと連続符号Nとを含む。
【0079】
ステップS31において、当該パケットデータDpがマスタ機器32によって受信される。
【0080】
次ステップS32において、マスタ機器32は、前回受信時と今回受信時との連続符号Nの差が値2よりも大きいか否かを判定する。例えば、今回のパケットデータDpに含まれる連続符号N=nbであるとする。マスタ機器32は、前回受信時の連続符号Nを記憶しており、当該前回の連続符号N=Naとする。(nb-na)が値2よりも大きいか否かが判定される。連続符号Nは無線センサ装置50がパケット送信を行う毎に値1ずつ増加するため、(na-nb)が値2よりも大きいということは、前回のパケットデータDpと今回のパケットデータDpとの間に、検出データDaの漏れが存在していることを意味している。また、(na-nb)が値2よりも大きくないいうことは、前回のパケットデータDpと今回のパケットデータDpとの間に、検出データDaの漏れが存在していないことを意味している。
【0081】
ステップS32において、連続符号Nの差が値2よりも大きくないと判定されると、ステップS31に戻って次のパケットデータDpを受信し、ステップS32において、連続符号Nの差が値2よりも大きいと判定されると、ステップS33に進む。
【0082】
ステップS33では、漏れていると考えられる連続符号nxを指定して、無線センサ装置50に再送要求を無線送信する。漏れていると考えられる連続符号nxは、連続符号nxは、na<nx<nbを満たす整数の値であってもよい。当該条件を満たす値が複数存在する場合、連続符号nxとして、当該複数の値が指定されてもよい。連続符号nxは、今回の受信時の連続符号nbから値1減算した値であってもよい。ステップS33の後、ステップS34に進む。
【0083】
無線センサ装置50は、ステップS21においてパケットデータDpを送信した後、ステップS22において、マスタ機器32からの再送要求の有無を判定する。再送要求無しと判定されると、ステップS21に戻って次のパケットデータDpを送信又は送信可能な状態となる。再送要求有りと判定されると、ステップS23に進む。
【0084】
無線センサ装置50は、SRAM53の容量制限の範囲内で、過去送信時の検出データDaに送信時の連続符号Nを対応付けたデータを第1メモリとしてのSRAM53に記憶しており、ステップS23において、指定されたnxの検出データDaを含むパケットデータDpを再度無線送信する。この後、ステップS21に戻る。過去送信時のデータは、FeRAM54に記憶されていてもよい。
【0085】
無線センサ装置50から指定されたnxの検出データDaを含むパケットデータDpが送信されると、ステップS34に示すように、当該パケットデータDpがマスタ機器32において受信される。マスタ機器32は、当該パケットデータDpの受信後、ステップS31に戻る。
【0086】
以上のように構成された無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法によると、検出データがSRAM53又はFeRAM54に記憶される。FeRAM54が記憶を保持するための消費電力は、SRAM53が記憶を保持するための消費電力よりも小さい。このため、本実施形態によると、SRAM53とFeRAM54との合計容量を、SRAM53の容量だけで実現する場合と比較して、消費電力を小さくできる。
【0087】
また、検出データは、SRAM53又はFeRAM54に記憶され、SRAM53又はFeRAM54に記憶された検出データは、通信モジュール66を介して無線送信される。このため、検出データをSRAM53だけに記憶する場合と比較して、通信の不成立に備えて多くの検出データを保持でき、検出データの欠落が生じ難い。これにより、無線センサ装置50の消費電力をなるべく小さくしつつ、無線センサ装置50から無線送信される検出データの欠落を抑制できる。
【0088】
また、一般的にSRAM53等の揮発性メモリは高速な読み書きが可能である。センサ64からの検出データを第1メモリとしての揮発性メモリに記憶させることによって、高速な読み書きによる処理が可能となる。また、センサ64からの検出データを第2メモリとしての不揮発性メモリに記憶させることによって、検出データを記憶する消費電力を小さくできる。
【0089】
また、通常状態では、検出データをSRAM53に記憶し、記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、検出データをFeRAM54に記憶させる。このため、通常状態では、SRAM53を利用した高速な読み書きによる処理を実行し易い。
【0090】
記憶先切替条件が、無線通信が切断されたことであれば、記憶先切替条件が満たされる前、即ち、無線通信が成立している状態では、SRAM53を利用した処理が可能となる。
【0091】
そして、無線通信が切断された状態で、検出データをSRAM53に記憶させる処理を継続すると、SRAM53の検出データが溢れることが予想される。そこで、無線通信が切断されたことを記憶先切替条件とすることで、SRAM53の検出データの溢れを有効に抑制し、検出データの欠落を抑制できる。
【0092】
また、記憶先切替条件が満たされたときに、SRAM53に記憶された検出データを、FeRAM54に記憶させる。このため、当該記憶先切替条件が満たされたと判定された段階で、SRAM53に記憶されていた検出データがFeRAM54によって保持され、当該検出データが欠落し難くなる。
【0093】
また、通常状態では、FeRAM54の電力供給が絶たれ、記憶先切替条件が満たされたときに、FeRAM54に電力供給を開始する。このため、消費電力をより小さくできる。
【0094】
また、記憶先復帰条件が満たされたときに、センサ64からの検出データをSRAM53に記憶させる。これにより、SRAM53を利用した処理に復帰することができる。これにより、例えば、高速な読み書きが可能なSRAM53を利用した処理が実行され得る。
【0095】
無線通信が復旧すれば、検出データをSRAM53に記憶させても、SRAM53からデータが溢れ難い。そこで、記憶先復帰条件が、無線通信が復旧したこととすることで、SRAM53を利用した処理、例えば、高速な読み書きが可能なSRAM53を利用した処理に復帰できる。
【0096】
記憶先復帰条件が満たされたときに、FeRAM54への電力供給を絶つことで、当該FeRAM54によって無線送信前の検出データを保持しつつ、消費電力を小さくできる。
【0097】
また、第2メモリ内データ送信条件が満たされたと判定されたときに、FeRAM54に記憶された検出データを、無線送信することによって、検出データの無線送信欠落を抑制できる。
【0098】
センサ64による検出停止タイミング以降では、新たな検出データは生成されないため、当該新たな検出データを無線通信しなくてもよい。このため、第2メモリ内データ送信条件が、センサ64による検出停止タイミングと対応付けられた条件であれば、FeRAM54に記憶された検出データを、無線通信が空いた状態となり易い時間を利用して、無線送信することができる。
【0099】
センサ64が輸送機、例えば、鉄道車両10の移動に伴う変化を検出するセンサであれば、当該センサ64は、検出データを連続的に出力する。本実施形態の適用によって、連続的に出力される検出データの欠落を有効に抑制できる。これにより、輸送機、特に、鉄道車両10の軌道18に関する状況を、低コストで正確かつ漏れなく把握できる。
【0100】
この場合に、第2メモリ内データ送信条件が輸送機(ここでは鉄道車両10)の停止であれば、輸送機の移動中における検出データの無線送信を妨げ難くしつつ、FeRAM54の検出データを無線送信できる。
【0101】
また、SRAM53又はFeRAM54に記憶された検出データに連続符号Nを付加して無線送信し、マスタ機器32側では、連続符号Nの連続性から、受信できなかった検出データを特定できる。マスタ機器32から受信できなかった連続符号Nの指定を含む再送指令を送信すれば、無線センサ装置50は、当該指定された連続符号Nに対応する検出データを再度無線送信することができる。このため、検出データの漏れが抑制される。
【0102】
上記実施形態を前提とする変形例について説明する。図7は変形例に係る処理例を示すフローチャートである。図7は、図4に示す無線センサ装置50におけるスレーブ用プロセッサ52bの処理例に関する変形例を示している。
【0103】
図7に示す処理が、図4に示す処理と異なる点は次の通りである。すなわち、図4に示す処理において、ステップS7以降のステップS8、S9が省略される。代りに、ステップS12においてNOと判定された後、ステップS14が処理される前に、ステップS41が追加される。
【0104】
ステップS41は、ステップS9と同様に、FeRAM54内の検出データが、通信モジュール66を通じて無線送信される処理である。
【0105】
つまり、本変形例では、FeRAM54内の検出データを、センサ64による検出が停止するタイミング或いは鉄道車両10の走行が終了したタイミングではなく、無線通信の復旧タイミングで、無線送信する。本変形例は、第2メモリ内データ送信条件が、無線通信の復旧タイミングと対応付けられた条件である例である。
【0106】
本変形例によると、無線通信の復旧タイミングで、FeRAM54に記憶された検出データが無線送信されるため、FeRAM54に記憶された検出データがなるべくリアルタイムで無線送信され、データ収集装置40等において検出データがなるべくリアルタイムで把握され得る。
【0107】
{第2実施形態}
上記実施形態では、記憶先切替条件が、無線通信が切断されたことである場合が説明された。記憶先切替条件は、上記例に限られない。例えば、記憶先切替条件は、現状の処理が続くと、検出データが第1メモリを溢れることが予測される条件であってもよい。また、例えば、記憶先切替条件は、本第2実施形態のように、検出データが第1メモリを溢れてしまうことであってもよい。
【0108】
上記実施形態では、記憶先復帰条件が、無線通信が復旧したことである場合が説明された。記憶先復帰条件は、上記例に限られない。例えば、本第2実施形態のように、記憶先復帰条件は、第1メモリが溢れないことであってもよい。
【0109】
上記実施形態では、第2メモリ内データ送信条件が、センサの検出停止タイミング、鉄道車両10の停止タイミング又は無線通信の復旧タイミングと対応付けられている例が説明された。第2メモリ内データ送信条件は、上記例に限られない。例えば、本第2実施形態のように、第2メモリ内データ送信条件は、マスタ機器32から検出データの送信要求がなされたときであってもよい。
【0110】
図8は第2実施形態に係る処理例を示すフローチャートである。図8は、無線センサ装置50におけるスレーブ用プロセッサ52bの処理例を示している。
【0111】
無線センサ装置50が動作を開始すると、ステップS51において、ステップS1と同様に、連続符号Nが初期値(例えば、0)にリセットされる。
【0112】
次ステップS52において、ステップS2と同様に、鉄道車両10の走行開始の有無が判定される。ステップS52において、鉄道車両10の走行が開始されたと判定されると、次ステップS53に進む。
【0113】
次ステップS53において、ステップS6と同様に、連続符号Nがインクリメントされる。
【0114】
次ステップS54において、SRAM53のデータ溢れの有無が判定される。例えば、SRAM53の空容量と、データバッファ55内の検出データの量とに鑑みて、当該検出データをSRAM53に記憶させると、SRAM53からデータが溢れそうであれば、YESと判定される。データバッファ55内の検出データをSRAM53に記憶させても、SRAM53からデータが溢れなければ、NOと判定される。ステップS54において、YESと判定されるとステップS55に進み、NOと判定されるとステップS63に進む。
【0115】
ステップS54によって、検出データの記憶先がSRAM53からFeRAM54に切替えられるため、ステップS54は、記憶先を切替える記憶先切替条件を判定する処理の一例である。また、ステップS54によって、検出データの記憶先がFeRAM54からSRAM53に復帰するため、ステップS54は、記憶先復帰条件を判定する処理の一例である。
【0116】
ステップS55に進んだ場合、ステップS3と同様に、データバッファ55内の検出データをSRAM53に記憶するように設定される。この際、検出データに、連続符号Nが対応付けて記憶される。この後、ステップS56に進む。
【0117】
ステップS63に進んだ場合、ステップS10と同様に、FeRAM54に電力供給される。
【0118】
次ステップS64において、ステップS13と同様に、データバッファ55内のデータをFeRAM54に記憶するように設定される。この際、検出データに、連続符号Nが対応付けて記憶される。この後、ステップS56に進む。
【0119】
ステップS56では、SRAM53又はFeRAM54内の検出データが、通信モジュール66を通じて無線送信される。送信対象となる検出データは、送信済のデータを除き、連続符号Nが最も小さい検出データである。
【0120】
次ステップS57において、ステップS22と同様に、マスタ機器32からの再送要求の有無が判定される。なお、マスタ機器32は、図6のステップS31からS34に示す処理を実行する。再送要求無しと判定されると、ステップS59に進み、再送要求有りと判定されると、ステップS58に進む。つまり、本実施形態では、第2メモリ内データ送信条件は、マスタ機器32から検出データの送信要求がなされたときである。
【0121】
ステップS58では、ステップS23と同様に、指定されたnxの検出データを含むパケットデータを再度無線送信する。この後、ステップS59に進む。これにより、マスタ機器32において、無線受信されていなかった検出データが受信される。
【0122】
ステップS59では、SRAM53又はFeRAM54において、過去の検出データを消去する。例えば、ステップS56において無線送信したデータよりも1回前に送信したデータを保持しておく場合には、ステップS56において無線送信した検出データの連続符号Nを基準に、(N-2)以下の連続符号の検出データを消去する。ステップS56において無線送信したデータよりも、m回前に送信したデータを保持しておく場合には、ステップS56において無線送信した検出データの連続符号Nを基準に(N-m-1)以下の連続符号の検出データを消去する。どの程度前のデータを保持しておくかは、保持しておくべき検出データの大きさ、SRAM53の容量等によって適宜設定される。
【0123】
次ステップS60において、FeRAM54内の検出データの有無が判定される。FeRAM54内の検出データ無しと判定されると、ステップS61に進み、FeRAM54内の検出データ有りと判定されるとステップS62に進む。
【0124】
ステップS61では、FeRAM54の電力供給が絶たれ、FeRAM54が電源オフされる。この後、ステップS62に進む。
【0125】
ステップS62では、ステップS7と同様に、走行終了か否かが判定され、走行終了ではないと判定されると、ステップS53に戻って以降の処理を繰返す。走行終了と判定されると、処理を終了する。
【0126】
本第2実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、検出データをSRAM53又はFeRAM54に記憶できる。このため、無線センサ装置50の消費電力がなるべく小さくされつつ、無線センサ装置50から無線送信される検出データの欠落が抑制される。
【0127】
また、ステップS54において、SRAM53が溢れると判定されると、検出データの記憶先がSRAM53からFeRAM54に切替えられる。つまり、記憶先切替条件が、検出データがSRAM53を溢れることとされている。このため、SRAM53の容量が有効に活用されつつ、検出データの欠落がより確実に抑制される。
【0128】
また、ステップS54において、SRAM53が溢れないと判定されると、検出データの記憶先がFeRAM54からSRAM53に復帰する。つまり、記憶先復帰条件が、検出データがSRAM53を溢れないこととされている。このため、SRAM53の容量を有効に活用することができる。
【0129】
また、ステップS57において、マスタ機器32から検出データの送信要求がなされたと判定されたときに、ステップS58において、指定された検出データを送信する。つまり、第2メモリ内データ送信条件が、マスタ機器32から検出データの送信要求がなされたときとされている。このため、検出データを、漏れを抑制しつつなるべくリアルタイムでデータ収集装置40に無線送信することができる。
【0130】
{変形例}
本実施形態では、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法が鉄道車両10に適用された例が説明された。
【0131】
無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法は、各種輸送機に適用され得る。輸送機は、人及び物の少なくとも一つを輸送する機械である。鉄道車両10は、輸送機の一例である。輸送機の他の例としては、各種車両、船舶又は飛行機であってもよい。
【0132】
無線センサ装置50におけるセンサ又は検出データ無線送信方法において用いられるセンサは、輸送機の移動中において、当該輸送機の各種状態又は移動経路の各種状態を検出するものであってもよい。この場合、センサは、検出対象の状況を、輸送機の移動に伴って連続的かつ長期間に亘って検出することが想定される。例えば、検出対象の状況を、1秒以下の周期で、かつ、1時間以上に亘って検出することが想定される。輸送機の移動中において、当該輸送機の状態又は移動経路の状態を把握するためには、輸送機の移動中におけるセンサの検出データの漏れ、抜けを抑制することが望まれる。このような場合において、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法は、連続的且つ長期間に亘って検出されるデータを、漏れなく取得できる技術として有効に利用され得る。
【0133】
また、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法の適用対象は、各種輸送機に限定されない。
【0134】
例えば、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法は、工場設備又は社会基盤設備において状況を検出するセンサに適用されてもよい。すなわち、無線センサ装置50及び検出データ無線送信方法は、状況把握対象の状況を、センサによって続的かつ長時間に亘って取得する場合に適用され得る。状況把握対象の状況としては、動きである場合、音である場合等が想定される。動きは、加速度センサ又は角速度センサで検出され、音は、マイクロホン等の音センサによって検出される。
【0135】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0136】
本開示は下記の各態様を開示する。
【0137】
第1の態様は、検出データを出力するセンサと、第1メモリと、記憶したデータを保持するための消費電力が、前記第1メモリが記憶したデータを保持するための消費電力よりも小さい第2メモリと、無線通信回路と、前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理と、前記検出データを前記第2メモリに記憶させる処理と、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、前記無線通信回路を通じて無線送信する処理とを実行する処理部と、を備える無線センサ装置である。
【0138】
この無線センサ装置によると、検出データを第1メモリ又は第2メモリに記憶できる。情報記憶保持状態における第2メモリの消費電力は第1メモリの情報記憶保持状態における消費電力よりも小さいため、第1メモリの容量と第2メモリの容量と合計容量を、第1メモリの容量だけによって実現する場合と比較して、消費電力を小さくできる。また、検出データは、第1メモリ又は第2メモリに記憶され、第1メモリ又は第2メモリに記憶された検出データは、無線通信回路を通じて無線送信される。このため、検出データを第1メモリだけに記憶する場合と比較して、検出データの欠落が生じ難い。これにより、無線センサ装置の消費電力をなるべく小さくしつつ、無線センサ装置から無線送信される検出データの欠落を抑制できる。
【0139】
第2の態様は、第1の態様に係る無線センサ装置であって、前記第1メモリは、揮発性メモリであり、前記第2メモリは、不揮発性メモリとされているものである。
【0140】
第2の態様のように、センサから出力される検出データを第1メモリとしての揮発性メモリに記憶させることによって、高速な読み書き速度による処理が可能となる。センサから出力される検出データを第2メモリとしての不揮発性メモリに記憶させることによって、検出データを記憶する消費電力を小さくできる。
【0141】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、通常状態では、前記センサから出力される前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理を実行し、前記検出データの記憶先を切替えるトリガーとなる条件である、記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記センサから出力される前記検出データを前記第2メモリに記憶させる処理を実行するものである。
【0142】
この場合、通常状態では、検出データを第1メモリに記憶させる処理を実行するため、高速な読み書き速度による処理を実行し易い。
【0143】
第4の態様は、第3の態様に係る無線センサ装置であって、前記記憶先切替条件は、前記無線通信回路を通じた無線通信が切断されたことであってもよい。
【0144】
すなわち、無線通信回路を通じた無線通信が切断された状態で、検出データを第1メモリに記憶させると、第1メモリの検出データが溢れることが予想される。そこで、第4の態様のように、前記無線通信回路を通じた無線通信が切断されたことを、記憶先切替条件とすることで、第1メモリの検出データの溢れを有効に抑制し、検出データの欠落を抑制できる。
【0145】
第5の態様は、第3又は第4の態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記第1メモリに記憶された前記検出データを、前記第2メモリに記憶させる処理を実行してもよい。
【0146】
この場合、記憶先切替条件が満たされたと判定された段階で、第1メモリに記憶された検出データが第2メモリに記憶される。このため、記憶先切替条件が満たされたと判定された段階で、第1メモリに記憶されていた検出データが欠落し難くなる。
【0147】
第6の態様は、第3から第5のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記通常状態では、前記第2メモリの電力供給をオフにし、前記記憶先切替条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリの電源をオンにしてもよい。
【0148】
このように、通常状態では、第2メモリの電力供給をオフにすれば、消費電力をより小さくできる。
【0149】
第7の態様は、第3から第6のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記検出データの記憶先を前記第1メモリに戻すためのトリガーとなる条件である、記憶先復帰条件が満たされたと判定されたときに、前記センサから出力される前記検出データを前記第1メモリに記憶させる処理を実行してもよい。
【0150】
これにより、記憶先復帰条件が満たされると、第1メモリを利用した処理に復帰することができる。
【0151】
第8の態様は、第7の態様に係る無線センサ装置であって、前記記憶先復帰条件は、前記無線通信回路を通じた無線通信が復旧したことであってもよい。
【0152】
この場合、無線通信が復旧すると、第1メモリを利用した処理に復帰することができる。
【0153】
第9の態様は、第7又は第8の態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記記憶先復帰条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリの電力供給をオフにしてもよい。
【0154】
この場合、記憶先復帰条件が満たされると、第2メモリの電力供給をオフにして、消費電力を小さくできる。
【0155】
第10の態様は、第1から第9のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記第2メモリに記憶された前記検出データを無線送信するための条件である、第2メモリ内データ送信条件が満たされたと判定されたときに、前記第2メモリに記憶された前記検出データを、前記無線通信回路を通じて無線送信する処理を実行してもよい。
【0156】
このように、第2メモリ内データ送信条件が満たされたと判定されたときに、第2メモリに記憶された前記検出データを、無線通信回路を通じて無線送信することによって、検出データの送信欠落を抑制できる。
【0157】
第11の態様は、第10の態様に係る無線センサ装置であって、前記第2メモリ内データ送信条件は、前記センサによる検出停止タイミングと対応付けられた条件又は前記無線通信回路を通じた無線通信の復旧タイミングと対応付けられた条件であってもよい。
【0158】
第11の態様のように、センサによる検出停止タイミング又は無線通信の復旧タイミングで、第2メモリに記憶された検出データを無線送信すると、無線センサ装置から無線通信装置に送信される検出データの欠落を抑制できる。特に、センサによる検出停止タイミングで、第2メモリに記憶された検出データを無線送信すると、無線センサ装置から無線通信装置に送信される検出データの欠落を抑制できる。また、無線通信回路を通じた無線通信の復旧タイミングで、第2メモリに記憶された検出データを無線送信すると、なるべくリアルタイムでデータを確認できる。
【0159】
第12の態様は、第11の態様に係る無線センサ装置であって、前記センサは、輸送機の移動に伴う変化を検出するセンサであり、前記第2メモリ内データ送信条件は、輸送機の停止であってもよい。
【0160】
このように、輸送機の停止中に、第2メモリに記憶された検出データを無線送信するため、輸送機の移動中における検出データの送信を妨げ難い。
【0161】
第13の態様は、第1から第12のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記処理部は、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データに連続符号を付加して無線送信し、前記連続符号の指定を含む再送指令を受けた場合に、前記検出データを再度無線送信してもよい。
【0162】
この場合、第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された検出データに連続符号を付加して無線送信する。このため、マスタ機器側では、連続符号の連続性から、受信できなかった検出データを特定できる。マスタ機器側で、受信できなかった連続符号の指定を含む再送指令を送信すれば、無線センサ装置は、検出データを再度無線送信する。このため、検出データの漏れが抑制される。
【0163】
第14の態様は、第1から第13のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記センサは、輸送機の移動に伴う変化を検出するセンサであってもよい。
【0164】
このように、センサが、輸送機の移動に伴う変化を検出する装置であれば、当該センサは、検出データを連続的に出力する。連続的に出力される検出データの欠落を有効に抑制できる。
【0165】
第15の態様は、第1から第14のいずれか1つの態様に係る無線センサ装置であって、前記センサは、鉄道車両の移動に伴う変化を検出するセンサとされているものである。
【0166】
このように、センサが、鉄道車両の移動に伴う変化を検出する装置であれば、当該センサは、検出データを連続的に出力する。連続的に出力される検出データの欠落を有効に抑制できる。
【0167】
第16の態様は、センサの検出データを無線送信する検出データ無線送信方法であって、前記センサの前記検出データを第1メモリ又は記憶保持状態における消費電力が前記第1メモリの記憶保持状態における消費電力よりも小さい第2メモリに記憶させ、前記第1メモリ又は前記第2メモリに記憶された前記検出データを、無線送信する、検出データ無線送信方法である。
【0168】
この検出データ無線送信方法によると、検出データを第1メモリ又は第2メモリに記憶できる。情報記憶保持状態における第2メモリの消費電力は第1メモリの情報記憶保持状態における消費電力よりも小さいため、第1メモリの容量と第2メモリの容量と合計容量を、第1メモリの容量だけによって実現する場合と比較して、消費電力を小さくできる。また、検出データは、第1メモリ又は第2メモリに記憶され、第1メモリ又は第2メモリに記憶された検出データが、無線送信される。このため、検出データを第1メモリだけに記憶する場合と比較して、検出データの欠落が生じ難い。これにより、第1メモリ及び第2メモリにおける消費電力をなるべく小さくしつつ、無線送信される検出データの欠落を抑制できる。
【0169】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0170】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0171】
10 鉄道車両
30 センサデータ収集システム
32 マスタ機器
40 データ収集装置
50 無線センサ装置
51 スレーブコントローラ
52 マルチプロセッサ
52a 通信用プロセッサ
52b スレーブ用プロセッサ
57 電源
58 FET
64 センサ
66 通信モジュール
66a アンテナ
Da 検出データ
N 連続符号
53 SRAM
54 FeRAM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8