(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018436
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20240201BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60K15/03 B
F02M37/00 331A
F02M37/00 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121786
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】都築 洋久
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA12
3D038CA15
3D038CA23
3D038CA29
3D038CC00
3D038CD18
(57)【要約】
【課題】燃料タンク内に燃料が残っている状態での燃料切れの発生を抑制できる作業車両を提供する。
【解決手段】前輪4および後輪5の間に燃料タンク31を構成し、前輪4および後輪5間の中央部近傍で燃料タンク31底部に他の底部31bよりも低い燃料溜まり部31aを構成し、燃料溜まり部31aから燃料をエンジン7に供給する吸込みパイプ42を構成するとともに、吸込みパイプ42の先端42aを燃料溜まり部31a以外の底部31bよりも低い位置に配置した。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(4)および後輪(5)の間に燃料タンク(31)を構成し、前輪(4)および後輪(5)間の中央部近傍で燃料タンク(31)底部に他の底部(31b)よりも低い燃料溜まり部(31a)を構成し、燃料溜まり部(31a)から燃料をエンジン(7)に供給する吸込みパイプ(42)を構成するとともに、吸込みパイプ(42)の先端(42a)を燃料溜まり部(31a)以外の底部(31b)よりも低い位置に配置したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
エンジン(7)で残った燃料を燃料タンク(31)に戻す戻しパイプ(41)を設け、戻しパイプ(41)は吸込みパイプ(42)とほぼ平行に構成される上下部(41a)と燃料タンク(31)の底部(31b)近傍に構成される前後部(41b)を有し、戻しパイプ(41)の先端(41a)を吸込みパイプ(42)の先端(42a)から離れた燃料タンク(41)後部に設けてなる請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車体下部の左右に燃料タンクを備えた作業車両において、左右の燃料タンクを連通したホースを中央でS字状に連結するとともに、連結部の中央にエンジンへの燃料供給路形成し、内部にスチールボールを設けることで、走行車体が左右に傾斜しても燃料を吸い込みやすくした作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されたトラクタによると、車体が左右に傾斜して燃料が極僅かになった場合でも、スチールボールによって上位側のタンクへの連通が塞がれ、この位置で燃料を保持でき、下位側の燃料タンクから燃料を取り込むことができる。
【0005】
しかし、上記の構成でも前後左右への傾斜に対しては、燃料の偏りが発生してしまい、タンク内に燃料がある状態で燃料切れを起こしてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、燃料タンク内に燃料が残っている状態での燃料切れの発生を抑制できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前輪4および後輪5の間に燃料タンク31を構成し、前輪4および後輪5間の中央部近傍で燃料タンク31底部に他の底部31bよりも低い燃料溜まり部31aを構成し、燃料溜まり部31aから燃料をエンジン7に供給する吸込みパイプ42を構成するとともに、吸込みパイプ42の先端42aを燃料溜まり部31a以外の底部31bよりも低い位置に配置した。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、エンジン7で残った燃料を燃料タンク31に戻す戻しパイプ41を設け、戻しパイプ41は吸込みパイプ42とほぼ平行に構成される上下部41aと燃料タンク31の底部31b近傍に構成される前後部41bを有し、戻しパイプ41の先端41aを吸込みパイプ42の先端42aから離れた燃料タンク41後部に設けてなる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、燃料たまり部31aから燃料を吸い上げるように構成することで、燃料タンク31内の燃料を最後まで使うことができる。燃料溜まり部31aを前輪4および後輪5間の中央部近傍に構成することにより作業車体の前後傾斜の影響を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、戻しパイプ41の先端から出てくる燃料は温度が高くなっているため、吸込みパイプ41から離れた位置に構成することで、エンジン7に入る燃料の温度上昇を防止できる。また、吸込みパイプ41の先端41a付近で気泡が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態にかかるトラクタの側面図である。
【
図3】同トラクタのミッションケース、燃料タンク、フェンダ等の配置構成を示す斜視図である。
【
図4】(A)同トラクタの燃料タンクの前方斜視図、(B)同後方斜視図である。
【
図5】同燃料タンクのミッションケースへの取付状況を示す前方斜視図である。
【
図6】同燃料タンクと燃料供給配管等を示す斜視図である。
【
図7】同燃料タンクの一部切り欠き断面とした拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
トラクタ1は、
図1乃至
図6に示すように、操舵用の車輪として設けられる前輪4と、駆動用の車輪として設けられる後輪5とを有した機体2などを備えている。後輪5には、機体2前部のボンネット6内に搭載されるエンジン7(
図1)で発生した動力が、図示しない主変速装置及び副変速装置で適宜減速して伝達され、後輪5は、この動力によって駆動される。
【0014】
また、トラクタ1は、エンジン7で発生しかつ主変速装置及び副変速装置で減速した動力を、前輪増速切換機構(図示せず)を介して、前輪4にも伝達可能になっている。トラクタ1は、前輪増速切換機構が動力を伝達すると、エンジン7から伝達されてくる動力によって前輪4と後輪5との四輪が駆動され、前輪増速切換機構が動力の伝達を遮断すると、エンジン7から伝達されてくる動力によって後輪5のみの二輪が駆動される。即ち、トラクタ1は、二輪駆動と四輪駆動との切り換えが可能になっている。また、トラクタ1の機体2後部には、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能に構成し、この作業機を駆動するPTO出力軸3が配設されている。
【0015】
機体2は、主変速装置、副変速装置、前輪増速切換機構、PTO出力軸3に駆動力を伝達するPTO伝導部などを収容したミッションケース8と、ミッションケース8の前部に取り付けられる前部フレーム9などで構成されている。機体2は、前部フレーム9の後部側にエンジン7を搭載し、前部フレーム9の前部側には前輪4への伝動機構を収容する前車軸ケース15を架設している。そして、エンジン7をボンネット6にて被覆し、ミッションケース8を機体2の後部に亘って設ける。また、ミッションケース8の後部上方に運転席10を設け、運転席10の左右両側方に泥除け用のフェンダ11を設けている。
【0016】
泥除け用のフェンダ11は、後輪5の上方から前方にかけた位置に設けられ、後輪5を覆うことにより後輪5で巻き上げた泥土の飛散を抑制するものである。即ち、トラクタ1は、機体2を構成するミッションケース8と、ミッションケース8の後部上方に設けられた運転席10と、運転席10の左右両側方に設けられた泥除け用のフェンダ11と、を備えている。
【0017】
運転席10は、運転者がトラクタ1を操縦する際に座るものであって、左右の泥除け用のフェンダ11間に設けられている。また、運転席10の前方には、
図1及び
図2に示すように、前輪4の操舵に用いるステアリングハンドル13が設けられている。ステアリングハンドル13は、当該ステアリングハンドル13を回転可能に支持するハンドルポスト14の上端側に配設されている。また、ハンドルポスト14の下方側、即ち、運転席10に運転者が座った場合における運転者の足元付近には、クラッチペダル20、後輪5をペダル操作に応じて制動するためのブレーキペダル(図示せず)、アクセルペダル(図示せず)が設置されている。
【0018】
また、運転席10の右側には、トラクタ1の後部に装着したロータリ(図示せず)等の作業機を上下に昇降操作する作業機昇降レバー27が配設され、運転席10の左側には、トラクタ1の走行時における主変速装置の変速に関する操作を行う主変速レバー25、副変速装置の副変速レバー26が配設されている。主変速レバー25は、主変速装置の変速である主変速の操作を行うことができ、主変速を自動的に行う自動変速と、運転者の任意で行う手動変速と、を切り換え可能になっている。主変速レバー25は、手動変速では、主変速装置の減速比を8段のいずれかに切り換える。副変速レバー26は、副変速装置を操作し、走行速度を、超低速、低速、中速、高速及び中立に切り換え可能である。
【0019】
また、トラクタ1は、ステップ30の下方に、エンジン7に供給される燃料を収容する燃料タンク31を設けている。燃料タンク31は、ミッションケース8の左右一側(図例では左側)に設ける。すなわち、燃料タンク31の底部を受けるタンク支持プレート32に対して、その後部側をタンクバンド又は帯プレート33で固定し、その前部側は上部側で相互に連結されるパイプフレーム34及び帯プレート35で支持することで、所謂サブ組立とし、ミッションケース8から側方にタンクブラケット36を設け、タンクブラケット36にサブ組立を乗せて所定に締結固定する構成としている。
【0020】
タンク支持プレート32には、前面カバー32fや側面カバー32sを一体的又は適宜連結構成して設け、燃料タンク31を収納状態に支持する構成としている。そして、燃料タンク31の前部において、前記パイプフレーム34及び帯プレート35の連結部37は、安全フレーム構造のフロアパネル部やキャビン構造のフロアパネル部をミッションケース8に対して防振的に支持する防振支持フレーム38にボルト39等にて締結され吊下げ支持される構成である。なお、この防振支持フレーム37の上面側からボルト締結作業できるように構成すると作業が容易となる。
【0021】
また、前記ミッションケース8から延出するタンクブラケット36とタンク支持プレート32を締結固定するものである。
【0022】
なお、燃料タンク31は樹脂成型によって、前部側は給油部31Aに、中間部31Bは左右幅広部でかつ外側面はステップ30の配置構成に沿うよう階段的に、後部31Cはやや狭幅部に形成される。燃料タンク31の前側に向けてエンジン側への供給用パイプ40、戻しパイプ41を設け、供給用パイプ40は燃料ポンプ43を介在している。
【0023】
図7に示すように、燃料タンク31の前記中間部の底部に燃料溜まり部31aを形成している。この燃料溜まり部31aは、燃料タンク31の底部31bに、前後に適宜の幅で底部31bよりもやや低い溝底状に成形されるもので、その深さも任意である。そして、燃料溜まり部31aの前後位置は、前輪4と後輪5の中間部であって、トラクタ1車体が前後傾斜しても上下動の少ない箇所、例えば前輪4と前輪5の中央部又はその近傍に設けられている。
【0024】
前記燃料溜まり部31aから燃料をエンジン7に供給する供給用パイプ40に接続ずる吸込みパイプ42を構成するとともに、この吸込みパイプ42の先端42aを燃料溜まり部31a以外の底部31bよりも低い位置に配置している。
【0025】
このように構成すると、トラクタ1車体が前後傾斜動しても、燃料溜まり部31aの上下位置変動は抑制され、燃料溜まり部31aに配置された吸込みパイプ42による燃料吸込みが安定する。
【0026】
また、エンジン7で残った燃料を燃料タンク31に戻す前記戻しパイプ41は、吸込みパイプ4とほぼ平行に構成される上下部41aと燃料タンク31の底部31b近傍に構成される前後部41bを有し、戻しパイプ41の先端41cを吸込みパイプ42の先端42aから離れた位置で、燃料タンク31後部に設けている。このように構成すると、温度上昇された戻り燃料が直ぐに吸込みパイプ40aによって吸い込まれることをなくし、エンジン7へ温度の高い燃料供給を防止できる。また、吸込みパイプ先端42a付近での気泡発生を抑制できる。
【0027】
車体の転倒時、前記運転席10に座乗する運転者を保護する安全フレーム50を設けている。安全フレーム50は、後輪軸等を内装するリヤアクスルケース(図示せず)に基部を連結させた左右一対の左右フレーム部51L,51Rと、左右フレーム部51L,51Rの上部を連結した逆U状の上フレーム部52とからなり、門型を呈する。
【0028】
左右フレーム部51L,51Rの内側に、灯火装置55L,55Rを取り付けている。なおここで、灯火装置55L,55Rは、方向指示器、テールランプ、ブレーキランプ等を一体化させたコンビネーションランプとしている。
【符号の説明】
【0029】
4 前輪
5 後輪
7 エンジン
31 燃料タンク
31a 燃料溜まり部
31b 他の底部
42 吸込みパイプ
42a 吸込みパイプ先端
41 戻しパイプ
41a 上下部
41b 前後部