(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018438
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A01M1/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121789
(22)【出願日】2022-07-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.フードセーフティジャパン2021(令和3年10月26日~令和3年10月29日) 2.赤門ウイレックス株式会社(令和4年1月11日) 3.丸栄産業株式会社(令和4年1月21日) 4.株式会社ミヤコ消毒(令和4年2月24日) 5.株式会社帝装化成 千葉営業所(令和4年2月25日) 6.株式会社エーテック(令和4年2月25日) 7.FOODEX JAPAN 2022(令和4年3月7日~令和4年3月11日) 8.西武消毒株式会社(令和4年3月16日) 9.株式会社ウィッシュ 石岡営業所(令和4年3月17日) 10.第9回ナレッジイノベーションアワード(令和4年3月20日) 11.有限会社石川消毒(令和4年3月24日) 12.株式会社サニテック(令和4年4月7日) 13.株式会社バーム(令和4年4月14日) 14.茨城消毒(令和4年4月22日) 15.ライトトラップモニタリング活用セミナー(令和4年5月24日) 16.株式会社アイシンテクノス(令和4年5月25日) 17.ライトトラップモニタリング活用セミナー(令和4年5月27日) 18.ライトトラップモニタリング活用セミナー(令和4年5月31日) 19.ライトトラップモニタリング活用セミナー(令和4年6月3日) 20.ウメザワ産業株式会社(令和4年6月9日) 21.東北環境消毒有限会社(令和4年6月21日) 22.株式会社クリーン・リース(令和4年7月21日) 23.株式会社北日本消毒(令和4年7月29日)
(71)【出願人】
【識別番号】520034509
【氏名又は名称】株式会社ペストビジョンソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片山 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】川竹 友志
(72)【発明者】
【氏名】田之江 崇文
(72)【発明者】
【氏名】亀本 達也
(72)【発明者】
【氏名】武津 一輔
(72)【発明者】
【氏名】馬場 庸介
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121BA03
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】捕虫シートが歪んでいたとしても適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる撮像システムを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも一面に虫を捕虫可能な捕虫面が設けられる捕虫シートの捕虫面91aを撮像する撮像システムであって、捕虫面の面方向に沿う引張方向に張力をかけた状態で捕虫シートを保持する保持部と、保持部に保持された捕虫シートの捕虫面を撮像する撮像手段と、を備える。また、保持部は、前記捕虫シートの引張方向に離間した両端部を固定する一対の固定手段(第一固定手段43、第二固定手段44)と、一対の固定手段が捕虫シートの両端部を固定した状態で、引張方向に張力を付与する張力付与手段45と、を備える。
【選択図】
図5c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に虫を捕虫可能な捕虫面が設けられる捕虫シートの前記捕虫面を撮像する撮像システムであって、
前記捕虫面の面方向に沿う引張方向に張力をかけた状態で前記捕虫シートを保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記捕虫シートの前記捕虫面を撮像する撮像手段と、を備える撮像システム。
【請求項2】
前記保持部は、
前記捕虫シートの前記引張方向に離間した両端部を固定する一対の固定手段と、
前記一対の固定手段が前記捕虫シートの両端部を固定した状態で、前記引張方向に張力を付与する張力付与手段と、を備える請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記引張方向と略平行に走行可能に構成される請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記捕虫面に光を照射する照射装置を備え、
前記照射装置は、前記捕虫面の面方向に沿い、かつ、前記引張方向と直交する幅方向において、前記捕虫面の少なくとも一方側から前記捕虫面に対して光を照射するように構成される請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項5】
画像処理部を備え、
前記撮像手段は、前記引張方向に離間した複数位置で前記捕虫面を撮像し、
前記画像処理部は、前記撮像手段が撮像した複数の画像に基づいて、処理済画像データを生成する画像処理を実行するよう構成される請求項1又は2に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫シートの捕虫面を撮像する撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、捕獲された虫類を同定する捕獲虫類同定システムとして、特許文献1に記載のシステムが知られている。捕獲虫類同定システムは、虫類が粘着した粘着シートの画像を画像読み取り装置で読み取る画像読み込み手段と、読み込まれた画像を解析して捕獲された虫類を同定する解析装置と、を備える。解析装置は、読み込まれた画像に対して、虫が写った領域である虫領域と背景とを区別するための画像処理をする前処理手段と、前処理された画像から虫類のメルクマールデータを取得する特徴抽出手段と、虫類の形態的特徴のメルクマールを標準化した標準メルクマールデータを記憶するデータ記憶手段と、特徴抽出手段によって抽出されたメルクマールデータとデータ記憶手段に記憶された標準メルクマールデータとを比較して虫類の同定をする同定手段と、を備える。
【0003】
上記のような捕獲虫類同定システムによれば、人手によって虫類の同定をする場合に比べて客観性及び一貫性のある同定結果を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような捕獲虫類同定システムで虫類を同定する場合には、画像読み取り装置で読み取った画像から虫類の形態的特徴等を読み取る必要がある。しかしながら、捕虫シート(粘着シート)は、虫類を捕獲するために設置された環境において吸湿等によって歪むことがある。歪んだ状態の捕虫シートを画像読み取り装置で読み取るとピントがずれる等して、捕獲虫類の形態的特徴が把握できなくなる恐れがある。
【0006】
また、このような問題は、機械によって捕獲虫類を同定する場合に限らず、捕虫シートを撮像した画像を基に人が同定作業をする場合でも同様に起こり得る。
【0007】
そこで、本発明は、捕虫シートが歪んでいたとしても適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像システムは、少なくとも一面に虫を捕虫可能な捕虫面が設けられる捕虫シートの前記捕虫面を撮像する撮像システムであって、前記捕虫面の面方向に沿う引張方向に張力をかけた状態で前記捕虫シートを保持する保持部と、前記保持部に保持された前記捕虫シートの前記捕虫面を撮像する撮像手段と、を備えるよう構成される。
【0009】
かかる構成によれば、保持部は捕虫面の面方向に沿う方向に張力をかけた状態で捕虫シートを保持するので、張力によって捕虫シートの歪みを抑えることができる。よって、適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる。
【0010】
また、前記保持部は、前記捕虫シートの前記引張方向に離間した両端部を固定する一対の固定手段と、前記一対の固定手段が前記捕虫シートの両端部を固定した状態で、前記引張方向に張力を付与する張力付与手段と、を備えるよう構成することもできる。
【0011】
かかる構成によれば、張力付与手段が固定手段に固定された捕虫シートに張力を付与するので、保持部に保持された捕虫シートに確実に張力を付与できるため、捕虫シートの歪みを抑えることができる。
【0012】
また、前記撮像手段は、前記引張方向と略平行に走行可能に構成することもできる。
【0013】
かかる構成によれば、張力によって捕虫面の歪みを抑制した状態で撮像手段が引張方向と平行に走行するので、捕虫面と撮像手段の距離を略一定にしつつ、撮像装置の位置を変えて捕虫面を撮像することができる。よって、適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる。
【0014】
また、前記捕虫面に光を照射する照射装置を備え、前記照射装置は、前記捕虫面の面方向に沿い、かつ、前記引張方向と直交する幅方向において、前記捕虫面の少なくとも一方側から前記捕虫面に対して光を照射するように構成することもできる。
【0015】
かかる構成によれば、照射装置は幅方向の少なくとも一方側から捕虫面に光を照射するので、張力によって引張方向における捕虫紙の長さが変わったとしても確実に捕虫紙に対して光を照射できる。よって、適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる。
【0016】
また、画像処理部を備え、前記撮像手段は、前記引張方向に離間した複数位置で前記捕虫面を撮像し、前記画像処理部は、前記撮像手段が撮像した複数の画像に基づいて、処理済画像データを生成する画像処理を実行するよう構成することもできる。
【0017】
かかる構成によれば、画像処理部は、撮像手段が撮像した複数の画像に基づいて処理済画像データを生成するので、引張方向における複数位置の画像を処理済画像データにすることができるため、得られる画像データを取り扱いやすい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、捕虫シートが歪んでいたとしても適切に捕虫シートの捕虫面を撮像できる撮像システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。
【
図5a】同撮像システムの保持部に捕虫シートの一端を固定した状態を示す図である。
【
図5b】
図5aに示す状態から捕虫シートを左右方向に引っ張る状態を示す図である。
【
図5c】同撮像システムの保持部に捕虫シートの両端を固定した状態を示す図である。
【
図8】同撮像システムの撮像手段が撮像する画像の概略を示す図である。
【
図9】同撮像システムの画像処理部における画像処理の概略を示す図である。
【
図10】同撮像システムが撮像する捕虫シートの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る撮像システム1について
図1乃至
図10を参照して説明する。説明の便宜上、上下方向、左右方向及び前後方向は
図2に示す方向を基準に説明する。
【0021】
まず、本発明に係る撮像システム1で撮像される捕虫シート9について
図10を参照して説明する。
【0022】
図10に示すように、捕虫シート9は、平面視略長方形状のシート状である。具体的に、捕虫シート9は、左右方向に延びるシート状の捕虫部91と、捕虫部91の左右方向の両端に連結される一対のシート端部92と、を備える。
【0023】
捕虫部91は、上面及び下面の両方に捕虫可能な捕虫面91aを有するように構成されている。具体的に、捕虫部91は、左右方向に長い平面視長方形状でシート状の基材と、基材の上面及び下面に設けられる捕虫面91aと、を備え、捕虫面91aは、虫が粘着可能な粘着面として構成されている。本実施形態の捕虫部91は、飛翔する虫が捕虫面91aに接触することで、虫が捕虫面91aに粘着して虫を捕虫できるように構成されている。
【0024】
シート端部92は、捕虫部91の左右方向の両端部に連結された板状体である。具体的に、シート端部92は、捕虫部91の左右方向の一方側(左側)の端部に設けられる板状の第一シート端部921と、捕虫部91の左右方向の他方側(右側)の端部に設けられる板状の第二シート端部922と、を備える。第一シート端部921は、厚み方向に貫通する掛孔921aと、捕虫に関する情報(例えば、捕虫場所や捕虫時間)を記入可能な記入部921bと、を備える。第二シート端部922は、面方向が捕虫部91の上面及び下面に沿う状態における左右方向の中途部分に捕虫部91が連結されており、捕虫部91との連結部分よりも左右方向一方側(左側)に設けられ、面方向が捕虫部91の上面及び下面に沿う状態で捕虫部91と上下方向で重なる内方部分922aと、捕虫部91との連結部分よりも左右方向他方側(右側)に設けられる外方部分922bと、を備える。また、本実施形態で、第一シート端部921及び第二シート端部922の前後方向(幅方向)長さは、捕虫部91の前後方向(幅方向)長さよりも長く構成されている。
【0025】
このような捕虫シート9は、捕虫する場所(例えば虫がいるかどうかを調査すべき場所)に一定期間設置される。例えば、捕虫シート9は、設置場所に設けられるフックを掛孔921aに挿通して設置場所に設置され、設置された状態で数日から数カ月維持された後に回収される。ここで、捕虫シート9は、設置された環境での吸湿等によって歪むことがあり、例えば、左右方向長さが全体的又は局所的に伸びたり縮んだりすることがある。
【0026】
図1に示すように、撮像システム1は、捕虫シート9を撮像する撮像装置2と、撮像装置2が撮像した結果に基づいて捕虫シート9に捕虫された虫についての判定をする判定処理部3と、を備える。本実施形態の判定処理部3は、撮像装置2の外部に設けられたサーバであり、有線又は無線で撮像装置2と通信可能に構成されている。このような撮像システム1は、上述のように捕虫する場所に一定期間設置された後に回収された捕虫シート9の捕虫面91aを撮像するシステムである。
【0027】
図1乃至
図3に示すように、撮像装置2は、箱型の筐体21と、撮像する捕虫シート9を保持する保持部4と、装置全体の制御を行う制御部23と、保持部4に保持された捕虫シート9を撮像する撮像手段5と、保持部4に保持された捕虫シート9に光を照射する照射装置6と、外部からの入力を受け付ける操作部7と、撮像手段5が撮像した画像を処理する画像処理部8と、を備える。また、保持部4、制御部23、撮像手段5及び照射装置6は、筐体21の内部に設けられる。筐体21は、前面に開閉可能な扉22を備え、扉22を開くと保持部4が前方に引き出されるように構成されている。さらに、筐体21は、磁性のある金属(例えば鉄)を含んで構成されている。
【0028】
図3及び
図4に示すように、保持部4は、筐体21に連結された平面視長方形状の枠状の部位である。具体的に、保持部4は、捕虫シート9を保持する保持枠部41と、保持枠部41を筐体21に連結する保持基部46と、を備える。本実施形態の保持枠部41は、保持基部46を介して筐体21に対して着脱可能に構成されている。このような保持部4は、筐体21の下面から上方に離間した位置に、長手方向が左右方向に一致するように設けられ、捕虫シート9が水平方向に延びるように保持する。
【0029】
図4に示すように、保持枠部41は、平面視長方形状の枠状体であり、内部に捕虫シート9を保持可能である。具体的に、保持枠部41は、長手方向(左右方向)及び短手方向(前後方向)に延びる平面視長方形状の枠本体部42と、枠本体部42の長手方向の一端部に設けられる第一固定手段43と、枠本体部42の長手方向の他端部に設けられる第二固定手段44と、保持する捕虫シート9に長手方向における張力を付与する張力付与手段45と、を備える。枠本体部42は、長手方向に延びる一対の棒状体と短手方向に延びる一対の棒状体を組み合わせて形成された枠であり後述する保持基部46の保持突起と係合可能な連結孔41aを複数有する。
【0030】
第一固定手段43は、捕虫シート9の左右方向一方側(左側)の端部を固定する部位である。具体的に、第一固定手段43は、枠本体部42に連結される板状の第一固定基部431と、第一固定基部431に連結されたフック部432と、を備える。第一固定基部431は、枠本体部42に対して移動不能に固定されている。フック部432は、第一シート端部921の掛孔921aに挿通可能なフックであり、短手方向の略中央部分に設けられ、第一固定基部431から上方且つ左側に向かって延びる。
【0031】
第二固定手段44は、捕虫シート9の左右方向他方側(右側)の端部を固定する部位である。具体的に、第二固定手段44は、張力付与手段45を介して保持枠部41に連結された板状の第二固定基部441と、第二固定基部441から下方に延びる板状の止め部442(
図6参照)と、を備える。止め部442は、第二固定基部441の長手方向一方側の端部から下方に延びるように設けられており、第二シート端部922の内方部分922aが長手方向一方側に移動することを規制する。
【0032】
第二固定基部441は、長手方向一端部を構成する板状の固定本体部443と、固定本体部443に連結され、長手方向他端側に延びる板状の位置決め部444と、を備える。位置決め部444は短手方向に離間して一対設けられ、具体的には、固定本体部443の短手方向一端部及び他端部にそれぞれ連結されている。また、
図5(a)に示すように、一対の位置決め部444は、短手方向において、固定する捕虫シート9の捕虫部91の短手方向長さと略等しい距離だけ離間して配置される。
【0033】
図4及び
図6に示すように、張力付与手段45は、第一固定手段43及び第二固定手段44に固定された捕虫シート9に対して張力を付与する。張力付与手段45は、第一固定手段43と第二固定手段44が離間する方向に張力を付与し、本実施形態では、第二固定手段44を第一固定手段43から離れる方向に付勢することで、第一固定手段43及び第二固定手段44に固定された捕虫シート9に対して第一固定手段43と第二固定手段44が離間する方向に張力をかける。具体的に、張力付与手段45は、枠本体部42に連結された、長手方向に延びるガイド部451と、ガイド部451に設けられる付勢手段452と、を備える。
【0034】
ガイド部451は、長手方向に沿って延びる棒状の部位である。具体的にガイド部451は、長手方向に沿って延びる棒状のガイド本体部453と、ガイド本体部453の長手方向一端部に設けられる上下方向に延びる壁状の付勢連結部454と、ガイド本体部453の長手方向他端部に設けられる上下方向に延びる壁状のスライド規制部455と、を備える。ガイド本体部453には、第二固定基部441を取り付け可能であり、取り付けられた第二固定基部441は、ガイド本体部453に沿ってスライド規制部455と付勢連結部454の間を移動可能である。
【0035】
第二固定手段44は、第二固定基部441がガイド部451に沿って長手方向に移動することで、第一固定手段43に対して接離する方向に移動可能である。具体的に、第二固定手段44は、ガイド本体部453に沿って付勢連結部454とスライド規制部455の間を移動可能である。ここで、ガイド部451は、第二固定手段44が第一固定手段43(具体的にはフック部432)に対して捕虫シート9の長手方向長さよりも近い位置と遠い位置の間で移動できるように設けられている。具体的にガイド部451は、長手方向において、ガイド本体部453の一端部に設けられる付勢連結部454が第一固定手段43に対して捕虫シート9の長手方向長さよりも近い位置に設けられ、ガイド本体部453の他端部に設けられるスライド規制部455が第一固定手段43に対して捕虫シート9の長手方向長さよりも遠い位置に設けられている。よって、第二固定手段44は、第一固定手段43に対して捕虫シート9の長手方向長さよりも近い位置と遠い位置の間で移動できる。
【0036】
付勢手段452は、ガイド部451に取り付けられた第二固定基部441を長手方向他端側に付勢する部位である。具体的に、付勢手段452は、長手方向の一端部が付勢連結部454に連結され、他端部が第二固定基部441に当接するようにガイド部451に設けられており、本実施形態では、付勢連結部454と第二固定基部441の間に設けられるコイルバネである。また、付勢手段452は、外力を受けない状態において、長手方向で第二固定基部441が第一固定手段43に対して捕虫シート9の長手方向長さよりも遠い位置に位置するように第二固定基部441を付勢する。
【0037】
このような張力付与手段45は、短手方向に離間して一対設けられている。具体的に、張力付与手段45は、枠本体部42の長手方向に延びる棒状体の一方及び他方にそれぞれ設けられている。また、短手方向一方側の張力付与手段45は、第二固定手段44の短手方向一端部に、短手方向他方側の張力付与手段45は、第二固定手段44の短手方向他端部にそれぞれ連結されている。さらに、短手方向一方側の張力付与手段45の付勢部は、第二固定手段44の短手方向一端部に当接して第二固定手段44を付勢し、短手方向他方側の張力付与手段45の付勢部は、第二固定手段44の短手方向他端部に当接して第二固定手段44を付勢する。
【0038】
図5(a)乃至
図5(c)を参照して保持枠部41に捕虫シート9を装着する方法について説明する。本実施形態では、第二シート端部922を第二固定手段44に固定してから第一シート端部921を第一固定手段43に固定する。
【0039】
図5(a)に示すように、第二シート端部922を第二固定手段44に固定する際には、第二固定基部441に第二シート端部922を係止させる。具体的には、捕虫部91を固定本体部443の上方に配置し、第二シート端部922の内方部分922aを固定本体部443の下方に配置して、固定本体部443の上面及び下面の間(厚み)で第二シート端部922と捕虫部91の連結部分を支持する。そして、第二シート端部922の上面が固定本体部443の下面に当接して、第二固定基部441に係止する状態となる。
【0040】
ここで、固定本体部443の幅方向(短手方向)の両端部には長手方向他端側に延びる位置決め部444が連結されているので、捕虫部91が幅方向にずれることを位置決め部444で抑制することができる。また、第二シート端部922の幅方向長さは捕虫部91の幅方向長さよりも長いので、幅方向で第二シート端部922の捕虫部91よりも外方の部分が位置決め部444の下面に確実に係止することができる。よって、第二固定手段44に固定された捕虫シート9がずれたり、第二固定手段44から脱落したりすることを抑制できる。
【0041】
次に、
図5(b)及び(c)に示すように、第二固定手段44が第二シート端部922を固定した状態で、付勢手段452の付勢に抗って第二固定基部441を長手方向一端側(引張方向一方側)に移動させて、第二固定手段44を第一固定手段43に対して近づけ、第一固定手段43に第一シート端部921を固定する。第一固定手段43に第一シート端部921を固定する際には、第一シート端部921の掛孔921aにフック部432を挿通する。
【0042】
以上の手順により捕虫シート9は保持枠部41に装着される。なお、上記以外の手順で捕虫シート9を保持枠部41に装着することもできる。例えば、第一シート端部921を第一固定手段43に固定してから、第二固定手段44を第一固定手段43に近づけ、第二シート端部922を第二固定手段44に固定するように構成することもできる。
【0043】
図5(c)に示すように保持枠部41に装着された捕虫シート9は、張力付与手段45によって長手方向に引っ張られた状態となる。具体的には、第二固定手段44が付勢部によって長手方向他端側に付勢されることで、第二固定手段44に固定された第二シート端部922が長手方向他端側に付勢され、捕虫シート9を長手方向に引っ張る張力がかかる。よって、張力により、捕虫シート9の歪みが矯正される。また、
図5(c)及び
図6に示すように、第二固定手段44は、捕虫シート9の幅方向の全域を支持する。本実施形態の第二固定手段44は、捕虫シート9の捕虫部91と第二シート端部922との連結部分の幅方向の全域に長手方向一方側から当接して捕虫シート9を支持する。よって、張力が捕虫シート9の幅方向の一部に偏ってかかることを抑制できるので、張力に起因して捕虫シート9が歪むことを抑制できる。
【0044】
図4に示すように、保持基部46は、枠本体を受ける枠受け部461と、枠受け部461を筐体21に連結するとともに、枠受け部461を筐体21に対して回動させるための回動機構Kと、を備える。回転機構は、枠受け部461の外方に突出するとともに、筐体21に連結される軸部462と、枠受け部461を軸部462中心に回動させるための保持操作部463と、反転補助部464と、を備える。このような保持基部46は、保持操作部463を除いて筐体21の内部に収容される。
【0045】
枠受け部461は、内部に保持枠部41を収容可能な平面視長方形状の枠体であり、保持枠部41を内部に収容した状態で固定可能である。具体的に、枠受け部461は、内部に収容した保持枠部41の連結孔41aに係合する枠連結部461aを備える。枠連結部461aは、枠受け部461の内部に向かって突出する複数の突起であり、枠受け部461の内方に対して出退可能に設けられている。このような枠連結部461aは、進出した状態で連結孔41aに係合し、保持枠部41を枠受け部461に対して固定し、後退することで、連結孔41aに対する係合を解除し、保持枠部41の枠受け部461に対する固定を解除する。このような枠受け部461は、固定する保持枠部41が保持する捕虫シート9の上面を上部から視認可能となり、下面を下方から視認可能となるように構成されている。
【0046】
軸部462は、枠受け部461の長手方向両端部の短手方向中央部分から外方に延びる軸である。このような軸部462は、筐体21に対して保持基部46が回動可能となるように連結されており、具体的には、ベアリング(図示しない)を介して筐体21に連結されている。
【0047】
保持操作部463は、軸部462周りで枠受け部461を回動させるための部位であり、本実施形態では、筐体21内部に設けられる枠受け部461を筐体21の外部から軸部462周りで回動させることができるように設けられている。具体的に保持操作部463は、軸部462に連結され、軸部462から枠受け部461の長手方向において外方に延びる操作軸部465と、操作軸部465に連結された取手部466と、を備える。操作軸部465は、延伸方向(長手方向)の一端部が軸部462に連結され、他端部が筐体21の外方まで延出するように設けられた軸である。取手部466は、操作軸部465の延伸方向他端部に連結されており、筐体21の外部からの操作で軸部462を回動させることができるように構成されている。
【0048】
図4及び
図7に示すように、反転補助部464は、捕虫シート9の捕虫面91aが後述する撮像手段5に対向する状態になるように枠受け部461の軸部462周りの回動を補助する反転補助部464を備える。具体的に、反転補助部464は、枠受け部461と一体となって軸部462周りに回動する磁性体である第一磁性体464aと、後述する撮像手段5が保持される捕虫シート9の捕虫面91aに対向する状態で第一磁性体464aと吸着する第二磁性体と、を備える。
【0049】
第一磁性体464aは、枠受け部461に設けられる磁性体であり、例えば磁石である。具体的に、第一磁性体464aは、枠受け部461の短手方向の両端部に設けられる磁性体である。このような第一磁性体464aは、枠受け部461と一体となって軸部462周りで回動することができる。
【0050】
図7に示すように、第二磁性体は、第一磁性体464aに吸着可能な磁性体であり、例えば鉄である。本実施形態の第二磁性体は、筐体21の壁面の一部である。
【0051】
本実施形態で、第一磁性体464aは、枠受け部461の軸部462周りでの回動において、保持する捕虫シート9の捕虫面91a(上面又は下面)が撮像手段5と対向する状態の時に、筐体21の壁面に最も近づく状態となる。ここで、第一磁性体464aは第二磁性体に吸着可能であるので、枠受け部461の軸部462周りでの回動によって第一磁性体464aが第二磁性体に近づくと、磁力によって第一磁性体464aが第二磁性体に吸着しようとする。よって、第一磁性体464aが第二磁性体(本実施形態では筐体21の壁面)に最も近づく状態となるため、保持部4が保持する捕虫シート9の捕虫面91aが撮像手段5と対向する状態となることを補助できる。
【0052】
図3及び
図7に示すように、撮像手段5は、保持部4が保持する捕虫シート9の上方に設けられ、捕虫シート9の上側の面(捕虫面91a)を撮像可能に構成されている。具体的に撮像手段5は、捕虫面91aを撮像する撮像部51と、撮像部51を捕虫シート9の引張方向(長手方向)に沿って走行させる走行部52と、を備える。このような撮像手段5は、捕虫シート9の捕虫面91aの全域を撮像可能である。
【0053】
撮像部51は、保持部4が保持する捕虫シート9の捕虫面91aに対向するように設けられ、対向する捕虫面91aを撮像可能に構成されている。具体的に、撮像部51はカメラである。本実施形態の撮像部51は、捕虫面91aのうち、撮像部51に対向する部分(撮像部51の直下に位置する部分)にピントが合うように構成される。また、
図8に示すように、本実施形態の撮像部51は、捕虫面91aの短手方向(幅方向)の全域を撮像可能であり、かつ、捕虫面91aの長手方向(引張方向)の一部を撮像可能である。
【0054】
走行部52は、引張方向(長手方向)に沿って延びるレール53と、撮像部51と連結されるとともにレール53に係合し、レール53に沿って移動可能な移動部54と、を備える。レール53は、筐体21に連結された保持枠部41の引張方向(長手方向)一端部よりも一端側から、保持枠部41の他端部よりも他端側まで延びるように設けられている。
【0055】
以上のような撮像手段5は、捕虫シート9の引張方向に離間した複数位置で捕虫面91aを撮像可能である。具体的には、撮像部51がレール53に沿って引張方向に移動しつつ、複数位置で捕虫シート9を撮像する。本実施形態の撮像部51は、引張方向において所定間隔ごとに捕虫面91aを撮像するように構成されている。具体的に、撮像部51が引張方向で隣接する撮像位置で撮像した各画像の長手方向における端部同士が重なるように、撮像部51が捕虫面91aを撮像する間隔が設定され、本実施形態では、撮像される画像のピントが合っている部分が引張方向で隣り合うように撮像部51が捕虫面91aを撮像する間隔が設定される。ここで、レール53は引張方向に沿って延びるので、撮像部51が捕虫面91aと略平行に走行する。よって、引張方向に離間した複数の撮像位置において、捕虫面91aと撮像部51の距離を略一定にすることができる。なお、本実施形態の撮像手段5は、捕虫面91aの撮像に先立って、記入部921bを含むように第一シート端部921を撮像する。
【0056】
図3及び
図7に示すように、照射装置6は、保持部4が保持する捕虫シート9の捕虫面91aに対して光を照射する部位である。本実施形態の照射装置6は、引張方向の両サイドから捕虫面91aに対して光を照射するように構成されている。具体的に、照射装置6は、幅方向で走行部52のレール53をまたいだ一方側と他方側とにそれぞれ照明部61(例えばLEDライト)を有し、各照明部61が捕虫面91aに対して光を照射する。また、照明部61は、捕虫面91aの幅方向(面方向と直交する方向)の中心から上方に略45度離間した位置から光を照射するように設けられている。本実施形態の照射装置6は、引張方向に沿って複数の照明部61が並んで設けられるように構成されており、具体的には、保持枠部41の引張方向(長手方向)一端部よりも一端側から、保持枠部41の他端部よりも他端側までに亘って照明部61が並ぶように設けられている。また、本実施形態の照射装置6は、白色光を捕虫面91aに照射する。
【0057】
図2に示すように、操作部7は、筐体21外部から種々の操作を入力可能に構成されている。例えば、操作部7に撮像部51で捕虫シート9を撮像させる操作に関する入力や、撮像した結果を外部の判定処理部3に送信する操作などに関する入力を行うことができる。本実施形態の操作部7は、筐体21の外面に設けられるタッチパネルであるが、このような構成に限らず、筐体21外部に設けられる有線又は無線のコントローラとして構成することや、外部のコンピュータから操作を入力できるように構成することもできる。
【0058】
図8及び
図9に示すように、画像処理部8は、撮像手段5が捕虫面91aを撮像した複数の画像P1,P2に基づいて処理済画像データDを生成する画像処理を実行する。画像処理では、撮像手段5が捕虫面91aを撮像した複数の画像を組み合わせた処理済画像データDを生成する。具体的に、画像処理では、1面の捕虫面91aを撮像した複数の画像P1,P2を引張方向で結合した1つの処理済画像データDを生成する。本実施形態の画像処理では、撮像手段5が撮像した画像P1,P2のうち、ピントが合っている部分P1a,P2aを取出し、各画像P1,P2から取り出されたピントが合っている部分P1a,P2aを引張方向で並べて結合して処理済画像データDを生成する。なお、ピントが合っているとは、後述する判定処理部3での処理に支障がない程度にピントが合っているという意味である。また、本実施形態で各画像P1,P2のピントが合っている部分は、撮像部51の性能や後述する判定処理部3での処理に対する影響を勘案して事前に規定された範囲を指す。ピントが合っている部分P1a,P2aを狭くすると、処理済画像データDにおけるピンボケの悪影響を少なくすることができる一方で、処理済画像データDを生成するために必要な撮像部51が撮像する画像の数が増加し、ピントが合っている部分P1a,P2aを広くすると、処理済画像データDにおけるピンボケの悪影響が大きくなる一方で、処理済画像データDを生成するために必要な撮像部51が撮像する画像の数を抑制できる。
【0059】
制御部23は、撮像装置2全体を制御する。具体的に、制御部23は、操作部7からの入力に基づいて、撮像手段5を動作させたり、画像処理部8に撮像手段5が撮像した画像を画像処理させたりする。また、制御部23は、画像処理部8が画像処理した処理済画像データDを外部の判定処理部3に送信する。
【0060】
以上のような構成の撮像装置2で捕虫面91aを撮像する方法について説明する。撮像装置2で捕虫面91aを撮像する際には、まず保持部4に捕虫シート9を固定する。保持部4に捕虫シート9を固定する方法については上述の通りである。ここで、捕虫シート9を保持枠部41に固定する際には、保持基部46から保持枠部41を取外した状態で捕虫シート9を保持枠部41に固定することもできるし、保持枠部41が保持基部46に固定された状態で捕虫シート9を保持枠部41に固定することもできる。捕虫シート9が保持枠部41に固定されると、張力付与手段45により捕虫シート9の長手方向に沿って張力がかかるので、捕虫シート9の歪みが抑制される。保持部4に捕虫シート9が固定してから筐体21の扉22を閉じる。
【0061】
次に、操作部7を操作して、撮像手段5で捕虫シート9を撮像する。本実施形態ではまず、第一シート端部921の記入部921b及び両面に設けられる捕虫面91aのうち表側(上方に位置する)の捕虫面91aを撮像する。上方に位置する面の撮像が完了すると、作業者が保持操作部463の取手部466を軸部462周りで回動させて、保持部4及び保持部4に保持された捕虫紙を軸部462周りで反転させ、上方に位置する捕虫面91aを入れ替え、裏側の捕虫面91aを上方に位置するようにする。ここで、保持部4は反転補助部464を備えるので、保持部4の軸部462周りの回動を捕虫面91aが撮像部51に対向する位置で止めることができため、裏側の捕虫面91aが確実に撮像部51と対向した状態となることができる。そして、捕虫シート9を反転させてから再度操作部7を操作して、裏側の捕虫面91aを撮像手段5で撮像する。
【0062】
両面の捕虫面91aの撮像が完了すると、画像処理部8は、各捕虫面91aについて撮像された画像を処理して処理済画像データDを生成する。本実施形態の画像処理部8は、表側の捕虫面91aに対応した処理済画像データDと、裏側の捕虫面91aに対応した処理済画像データDと、をそれぞれ生成する。
【0063】
そして、制御部23が外部の判定処理部3に処理済画像データDを送信する。本実施形態では、表面及び裏面の捕虫面91aに対応した2面分の処理済画像データDと記入部921bを撮像した画像とを関連付けて判定処理部3に送信する。以上で撮像装置2における撮像等の処理が完了する。
【0064】
次に、判定処理部3における処理について説明する。判定処理部3では、処理済画像データDに基づいて、捕虫面91aに捕虫された虫の種類及び種類ごとの虫の数を判定する判定処理を行う。
【0065】
本実施形態の判定処理部3は、教師データを用いた機械学習によって構築された学習済モデルによって、処理済画像データDに含まれる虫の種類を同定し、種類ごとの虫の数を計数するように構成されている。学習済モデルは、後述する教師画像データを教師データとして用いた機械学習によって構築される。
【0066】
教師画像データは、虫を含む画像に対して、該画像中の虫の位置を特定するための枠情報虫の姿勢を特定するための姿勢情報、及び、虫の種類を特定するための種類情報が付与されたデータである。本実施形態で姿勢情報は、虫の頭部及び腹部を含む少なくとも3点に付与された点情報と、点情報に付与された順番に関する順情報と、を含む。
【0067】
このような判定処理部3は、処理済画像データDを処理して、処理済画像データDに含まれる虫を発見し、該発見した虫の種類を同定する。本実施形態の判定処理部3は、処理済画像データDに対して、発見された虫の種類情報を付与し、種類ごとの虫の数を同定結果として出力する。本実施形態の判定処理部3では、同定結果を処理済画像データDに関連付けられた記入部921bに記載された情報を関連付けて出力する。例えば、記入部921bに記入された虫の捕獲場所及び捕獲時間と同定結果を関連付けて出力する。本実施形態では、虫の種類として主に科レベルでの分類を採用する。
【0068】
このような判定処理部3によれば、学習済モデルは、教師画像データに含まれる虫データに対して指定された少なくとも3点に関する点情報と順情報を含む姿勢情報を含んだ教師データを用いた機械学習によって構築されるので、例えば処理済画像データDに含まれる虫が折れ曲がっていても適切に虫の種類を同定することができる。
【0069】
以上のような構成の撮像システム1によれば、保持部4は捕虫面91aの面方向に沿う方向に張力をかけた状態で捕虫シート9を保持するので、張力によって捕虫シート9の歪みを抑えることができる。よって、適切に捕虫シート9の捕虫面91aを撮像できる。なお、歪みを抑えるとは、後の工程(例えば、判定処理部3での処理)において影響がない程度まで歪みを抑えるという意味であり、歪みを完全になくす場合には限定されない。
【0070】
また、張力付与手段45が固定手段に固定された捕虫シート9に張力を付与するので、保持部4に保持された捕虫シート9に確実に張力を付与できるため、捕虫シート9の歪みを抑えることができる。
【0071】
さらに、張力によって捕虫面91aの歪みを抑制した状態で撮像手段5が引張方向と平行に走行するので、捕虫面91aと撮像手段5の距離を略一定にしつつ、撮像装置2の位置を変えて捕虫面91aを撮像することができる。よって、適切に捕虫シート9の捕虫面91aを撮像できる。
【0072】
また、照射装置6は幅方向の少なくとも一方側から捕虫面91aに光を照射するので、張力によって引張方向における捕虫紙の長さが変わったとしても確実に捕虫紙に対して光を照射できる。よって、適切に捕虫シート9の捕虫面91aを撮像できる。
【0073】
さらに、画像処理部8は、撮像手段5が撮像した複数の画像に基づいて処理済画像データDを生成するので、引張方向における複数位置の画像を処理済画像データDにすることができるため、得られる画像データを取り扱いやすい。
【0074】
また、張力付与手段45は、一対の固定手段の一方(第二固定手段44)を他方(第一固定手段43)から離れる方向に付勢する付勢手段452を備え、付勢手段452は、一対の固定手段に固定される捕虫シート9の幅方向の一方側及び他方側に設けられる。よって、張力が捕虫シート9の幅方向の一部に偏ってかかることを抑制できるので、張力に起因して捕虫シート9が歪むことを抑制できる。
【0075】
さらに、張力付与手段45は、固定手段の一方を他方から離れる方向に付勢するよう構成され、一対の固定手段のうち少なくとも片方(第二固定手段44)は、捕虫シート9の幅方向の全域を保持するように構成される。よって、張力が捕虫シート9の幅方向の一部に偏ってかかることを抑制できるので、張力に起因して捕虫シート9が歪むことを抑制できる。
【0076】
また、一対の固定手段の離間距離は、捕虫のために設置される前の捕虫シート9の引張方向長さよりも短い距離から長い距離の間で変位可能である。よって、歪みによって捕虫シート9が縮んだ場合と延びた場合の両方で捕虫シート9に対して張力をかけることができるので、確実に捕虫シート9の歪みを抑えることができる。よって、適切に捕虫シート9の捕虫面91aを撮像できる。
【0077】
さらに、保持部4は、保持する捕虫シート9を引張方向に沿う軸部462周りで回動させる回動機構Kを備える。よって、捕虫シート9を反転させて撮像手段5に対向する面を変えることができるので、両面に捕虫面91aが設けられる捕虫シート9について両面を円滑に撮像できる。
【0078】
また、回動機構Kは、捕虫シート9の捕虫面91aがカメラに対向する状態になるように反転を補助する反転補助部464を備える。よって、確実に捕虫面91aが撮像部51に対向する状態とすることができるので、適切に捕虫シート9の捕虫面91aを撮像できる。
【0079】
さらに、反転補助部464は、捕虫面91aと共に軸部462周りで回動する第一磁性体464aと、捕虫面91aが撮像手段5と対向する状態で前記第一磁性体464aと吸着する第二磁性体と、を備える。よって、簡単な構成で捕虫面91aが撮像手段5に対向する状態とすることができる。
【0080】
また、回動機構Kは、捕虫シート9を反転させる操作をするための保持操作部463を備え、保持操作部463は、少なくとも一部が筐体21の外部に位置するように設けられる。よって、筐体21の外部からの操作で捕虫シート9を反転させることができるので、捕虫シート9を反転させる動作をしやすい。
【0081】
さらに、保持部4は、捕虫シート9を保持する保持枠部41と、保持枠部41を筐体21に固定する保持基部46と、を備え、保持枠部41は、保持基部46に着脱可能に設けられる。よって、保持枠部41は保持基部46に対して着脱可能であるので、必要に応じて保持枠部41を保持基部46から取り外して捕虫シート9を取り付けることができる。よって、捕虫シート9を保持部4に取り付けやすい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0083】
例えば、捕虫シート9の構成は実施形態で説明した構成に限定されない。例えば、捕虫面91aが粘着面である場合について説明したが、このような構成に限らず、捕虫可能な種々の構成を採用でき、例えば、落下した虫の死骸が一面に載置されるトレイの上面を捕虫面91aとして構成することもできるし、粘着面として構成する場合であっても、捕虫面91aが両面に設けられる場合に限らず、片面にのみ設けられる構成とすることができる。また、捕虫面91aが引張方向に長い略長方形状である場合について説明したが、このような構成に限らず、捕虫面91aを円形や正方形状等など種々の形状に構成することもできる。
【0084】
また、固定手段の構成はフック部432を有する第一固定手段43と、第二シート端部922の全体を係止可能な第二固定手段44と、を備える構成に限らず、捕虫シート9の端部を固定可能な種々の手段を採用できる。例えば捕虫シート9の両端をフック又はシート端部92全体を引掛ける部分の構成にすることもできるし、シート端部92を挟持して捕虫シート9の端部を固定するように構成することもできる。
【0085】
さらに、保持部4は張力付与手段45で捕虫シート9に引張方向の張力をかける場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、作業者の力で引張方向に張力をかけ、その状態のまま捕虫シート9の両端部を固定することで、張力をかけた状態で捕虫シート9を保持するように構成することもできる。
【0086】
また、保持部4は、捕虫シート9が水平方向に延びるように捕虫シート9を保持する場合について説明したが、このような構成に限らず、捕虫シート9が上下方向に延びるように保持することもできる。このような構成を採用する場合には、重力と張力付与手段45の相乗効果で歪みを抑制できる。
【0087】
さらに、保持部4が回動機構Kを備える場合について説明したが、このような構成に限らず、保持部4が保持する捕虫シート9を反転させることができない構成とすることもできる。このような構成を採用する場合には、例えば、撮像手段5が片面を撮像した後に作業者が捕虫シート9を保持部4から取り外して、反転させて再度保持部4に固定することで、両面を撮像可能としたり、撮像手段5を捕虫シート9の表面側と裏面側とにそれぞれ設けることで、捕虫シート9を反転させることなく両面を撮像可能としたりすることができる。
【0088】
また、撮像手段5は引張方向に走行して、引張方向に離間した複数個所で粘着面を撮像する場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、引張方向に離間した複数個所に撮像部51を設け、各撮像部51で撮像することで、引張方向に離間した複数個所で粘着面を撮像するように構成することもできるし、捕虫シート9の引張方向に走行して、撮像に適した1か所でのみ捕虫面91aを撮像するように構成することもできる。
【0089】
さらに、画像処理部8は、撮像装置2の内部に設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、撮像装置2の外部に設けることもできる。例えば、撮像手段5が撮像した画像を画像処理部8としての外部のコンピュータに送信し、外部のコンピュータが画像処理を実行するように構成することもできる。
【0090】
また、画像処理では、複数の画像のそれぞれについてピントが合っている部分として予め規定された範囲を切り出し、切り出した部分をつなぎ合わせて処理済画像データDを生成する場合について説明したが、このような構成に限らず、例えば、複数の画像のそれぞれについて、ピントが合っている部分を判定し、ピントが合っていると判定された部分を切り出してつなぎ合わせるように構成することもできる。
【0091】
さらに、画像処理部8は、画像処理で生成した処理済画像データDを撮像装置2の外部に設けられる判定処理部3に送信し、判定処理部3が、捕虫面91aに捕虫された虫についての判定処理を実行する場合について説明したが、このような構成に限らず、判定処理部3を撮像装置2の内部に設けるように構成することもできる。
【0092】
また、判定処理部3は、画像処理で生成した処理済画像データDに基づいて、捕虫面91aに捕虫した虫についての判定処理を実行する場合について説明したが、このような構成に限らず、判定処理部3を備えないように構成することもできるし、判定処理部3を備える場合であっても、例示した判定処理の一部のみを実行する(例えば、虫の総数を計数して出力する)ように構成することもできる。
【0093】
さらに、撮像装置2を捕虫器の一部として構成し、保持部4に固定された捕虫シート9で虫を捕獲可能に構成しつつ、撮像手段5が所定時間毎に捕虫面91aを撮像するように構成することもできる。このような構成によれば、捕虫している捕虫シート9の状況を監視することができるので、虫の発生や増加などを把握しやすい。なお、上記の場合において、捕虫シート9に虫を誘引する誘引手段(例えば匂いや光等を発して虫を誘引する機構)を設けることもできる。
【符号の説明】
【0094】
1…撮像システム、2…撮像装置、21…筐体、22…扉、23…制御部、3…判定処理部、4…保持部、41…保持枠部、41a…連結孔、42…枠本体部、43…第一固定手段、431…第一固定基部、432…フック部、44…第二固定手段、441…第二固定基部、442…止め部、443…固定本体部、444…位置決め部、45…張力付与手段、451…ガイド部、452…付勢手段、453…ガイド本体部、454…付勢連結部、455…スライド規制部、46…保持基部、461…枠受け部、462…軸部、463…保持操作部、464…反転補助部、464a…第一磁性体、465…操作軸部、466…取手部、5…撮像手段、51…撮像部、52…走行部、53…レール、54…移動部、6…照射装置、61…照明部、7…操作部、8…画像処理部、9…捕虫シート、91…捕虫部、91a…捕虫面、92…シート端部、921…第一シート端部、921a…掛孔、921b…記入部、922…第二シート端部、922a…内方部分、922b…外方部分