(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018443
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】固液分離システム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20240201BHJP
B01D 21/18 20060101ALI20240201BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01D21/02 F
B01D21/02 J
B01D21/18 G
B01D21/24 D
B01D21/24 G
B01D21/24 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121794
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚住
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性を向上し、破損を低減することが可能な固液分離システムを提供すること。
【解決手段】固液分離システム100は、沈澱池Pと、傾斜管沈降装置10と、を備える。傾斜管沈降装置10は、沈澱池P内に設置され、複数の傾斜管20を有する。傾斜管20の内周面20aの角部25~28の少なくとも1つはR形状を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈澱池と、
前記沈澱池内に設置され、複数の傾斜管を有する傾斜管沈降装置と、を備え、
前記傾斜管の内周面の角部の少なくとも1つはR形状を有する、
固液分離システム。
【請求項2】
前記傾斜管は、四角筒状であり、
前記内周面の全ての角部がR形状を有する、
請求項1に記載の固液分離システム。
【請求項3】
前記内周面の前記R形状は、1R以上、3R以下で形成されている、
請求項1または2に記載の固液分離システム。
【請求項4】
前記沈澱池に被処理水が流入する流入部と、
前記沈澱池から処理水が流出する流出部と、を更に備え、
前記傾斜管沈降装置は、
前記流入部から前記流出部に向かう第1方向および鉛直方向に平行に配置された複数の板状の支持部材を更に有し、
前記傾斜管は、
互いに平行であって前記第1方向において対向して配置された一対の傾斜側部と、
前記第1方向に垂直且つ水平な第2方向において対向し、各々が前記鉛直方向に沿って配置された一対の鉛直側部と、を有し、
前記傾斜管は、前記支持部材の間に配置され、一対の前記鉛直側部の各々は、前記第2方向における外側に配置された前記支持部材に接着されている、
請求項1または2に記載の固液分離システム。
【請求項5】
前記第2方向における前記傾斜側部の長さは、前記第1方向における前記鉛直側部の長さよりも長い、
請求項4に記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浄水場処理場の沈澱池には沈降面積を向上させるため複数の傾斜管が設けられた傾斜管沈降装置が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。当該傾斜管沈降装置によりフロック(微細粒子を凝集剤により大きな集合体へ生成させた集塊)の沈降を促進させ水を浄化するシステムが開発されていた。
【0003】
傾斜管沈降装置は、水中に設置して浮かない特性を持つ硬質塩化ビニルを用いて製作されており、また、運用時に傾斜管沈降装置を通過する際に処理できなかった懸濁水中のフロックが傾斜管沈降装置上に堆積しないよう又は、施工の際に人によって移動できるように薄肉軽量化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薄肉軽量化の弊害としてメンテナンスによる洗浄を行う際に使用する高圧洗浄水の圧力によって破損する場合があった。また、施工の際に傾斜管沈降装置上に人が乗って作業するために傾斜管沈降装置上にコンパネ等を置くことがあり、このときにコンパネの角部が傾斜管に触れる等して破損する場合があった。
【0006】
本発明は、耐衝撃性を向上し、破損を低減することが可能な固液分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明にかかる固液分離システムは、沈澱池と、傾斜管沈降装置と、を備える。傾斜管沈降装置は、沈澱池内に設置され、複数の傾斜管を有する。傾斜管の内周面の角部の少なくとも1つはR形状を有する。
【0008】
このように内周面の少なくとも1つがR形状を有することによって、耐衝撃強度を向上することができ、洗浄時の高圧洗浄水や、施工時のコンパネを敷いた際の衝撃に対して強度を向上することができる。
【0009】
第2の発明にかかる固液分離システムは、第1の発明にかかる固液分離システムであって、傾斜管は、四角筒状である。内周面の全ての角部がR形状を有する。
【0010】
これによって、傾斜管の強度をより向上することができ、傾斜管沈降装置の強度が向上する。
【0011】
第3の発明にかかる固液分離システムは、第1または第2の固液分離システムであって、内周面のR形状は、1R以上、3R以下で形成されている。
【0012】
R形状が1R未満の場合、強度の向上が小さい。また、R形状が3Rよりも大きい場合、重量が増加し、面積が大きくなるため上端にフロックが堆積し易くなる。このため、R形状を1R以上3R以下に設定することにより、重量の増加を抑えつつ、強度を確保することができる。
【0013】
第4の発明にかかる固液分離システムは、第1または第2の発明にかかる固液分離システムであって、流入部と、流出部と、を更に備える。流入部は、沈澱池に被処理水が流入する。流出部は、沈澱池から処理水が流出する。傾斜管沈降装置は、複数の板状の支持部材を更に有する。複数の板状の支持部材は、流入部から流出部に向かう第1方向および鉛直方向に平行に配置されている。傾斜管は、一対の傾斜側部と、一対の鉛直側部と、を有する。一対の傾斜側部は、互いに平行であって第1方向において対向して配置されている。一対の鉛直側部は、第1方向に垂直且つ水平な第2方向において対向し、各々が鉛直方向に沿って配置されている。傾斜管は、支持部材の間に配置され、一対の鉛直側部の各々は、第2方向における外側に配置された支持部材に接着されている。
【0014】
これにより、傾斜管の傾斜部に衝撃が加えられた場合にも耐衝撃性を向上することができる。
【0015】
第5の発明にかかる固液分離システムは、第4の発明にかかる固液分離システムであって、第2方向における傾斜部の長さは、第1方向における鉛直部の長さよりも長い。
【0016】
角部にR形状を形成することにより、耐衝撃性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐衝撃性を向上し、破損を低減することが可能な固液分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にかかる実施の形態における固液分離システムを示す側面図である。
【
図2】本発明にかかる実施の形態における傾斜管沈降装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明にかかる実施の形態における傾斜管沈降装置の分解図である。
【
図4】本発明にかかる実施の形態における傾斜管沈降装置の平面図である。
【
図5】(a)本発明にかかる実施の形態における傾斜管の平面図、(b)本発明にかかる実施の形態における傾斜管の側面図、(c)本発明にかかる実施の形態における傾斜管の正面図、(d)
図5(a)のT部拡大図である。
【
図6】傾斜管に衝撃が加わったときの説明をするための平面図である。
【
図7】傾斜管の割れを検証するための方法を説明するための図である。
【
図8】実施例の傾斜管沈降装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による実施の形態の固液分離システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<構成>
(固液分離システム100)
図1は、本実施の形態の固液分離システム100を示す図である。本実施の形態の固液分離システム100は、浄水場の沈澱池Pにおける被処理水Wの固液分離に適用される。
【0021】
図1に示すように、固液分離システム100は、沈澱池P(沈澱池の一例)と、傾斜管沈降装置10と、阻流板11と、越流堰12と、水路(集水トラフ)13と、流入部14と、流出部15と、汚泥掻き寄せ機16と、汚泥ホッパー17と、を備える。
【0022】
流入部14は、原水(被処理水W)が沈澱池Pに流入する。流出部15は、沈澱池Pにおいて流入部14の反対側に設けられており、沈澱池Pから浄化された被処理水Wが流出する。
【0023】
傾斜管沈降装置10は、沈澱池Pの略中央部から下流側(流出部15側)の部分に配置されている。傾斜管沈降装置10は、複数の傾斜管20を有している。
【0024】
傾斜管沈降装置10は、被処理水Wの水面から所定の深さまで沈み、かつ、沈澱池Pの底面との間に所定の空間が確保されるように支持されている。この支持は、桁材41に支持された吊り下げ部材42によって吊り下げられてもよいし、たとえば図示しない支持体上に載置されてもよい。傾斜管沈降装置10の詳細については後段にて詳述する。
【0025】
阻流板11は、傾斜管沈降装置10の上流側(流入部14側)であって沈澱池Pの略中央部分に設けられている。阻流板11は、水面から所定の深さまでの領域内の被処理水Wの下流側(流出部15側)への流れを阻む。阻流板11は、流入部14から流入した水流方向に対して主面が垂直になるように配置されている。
【0026】
越流堰12は、阻流板11よりも下流側(流出部15側)の被処理水Wの水面付近に配置されている。越流堰12は、上流側から下流側に向かう方向に沿って形成されている。
【0027】
水路(集水トラフ)13は、越流堰12に囲まれて形成されており、流出部15に繋がっている。なお、越流堰12に限らず、管に穴が形成された構成であってもよい。
【0028】
流入部14から沈澱池Pに流入してきた被処理水Wは、阻流板11に水流方向(矢印D方向)を阻まれ、阻流板11の下端と沈澱池Pの底面との間の部分に向かって下降する。沈澱池Pの底面と阻流板11の下端との間を通り抜けた被処理水Wは、水路(集水トラフ)13に向かう上向流Jとなり、傾斜管沈降装置10の下部から傾斜管20の間に流入し上昇する。
【0029】
そして、被処理水Wの汚泥が、傾斜管沈降装置10内を通過する間に沈降し、傾斜管20の内周面または外周面上に沈澱することにより被処理水Wが浄化される。傾斜管20の内周面または外周面に沈澱した汚泥は、斜面に堆積にするため、自重で落下する。
【0030】
汚泥掻き寄せ機16は、沈澱池Pの底面付近に配置されている。沈澱池Pの底面付近には沈降した汚泥Mが堆積している。堆積した汚泥Mは、汚泥掻き寄せ機16が、
図1上時計回りに回転することにより汚泥ホッパー17に集められ、排泥される。汚泥掻き寄せ機16は、阻流板11より上流側において、水面付近を通過し、浮遊物も掻き寄せる。
【0031】
汚泥ホッパー17は、沈澱池Pの流入部14付近の底面に形成されている。
【0032】
(傾斜管沈降装置10)
図2は、傾斜管沈降装置10の一部の構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図2に示す傾斜管沈降装置10の分解斜視図である。傾斜管沈降装置10は、複数の傾斜管20と、複数のシート部材30(支持部材の一例)と、を有する。傾斜管20とシート部材30の材質としては、塩化ビニルを用いることができ、特に硬質塩化ビニルが好ましいが、これに限るものではない。傾斜管20およびシート部材30の材質は、たとえば、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよい。
【0033】
シート部材30は、沈澱池の両側面に亘って固定された桁材1から下方に延びた吊り下げ部材42等によって支持されている。
【0034】
図4は、傾斜管沈降装置10の部分平面図である。
図4では、分かり易くするために傾斜管20とシート部材30にハッチングを施している。なお、ハッチング部分は中実である。
【0035】
上述した矢印D方向(第1方向の一例)に対して垂直且つ水平な方向を幅方向E(第2方向の一例)とする。幅方向Eのうち矢印D方向に向いた右側を右方向E1とし、幅方向Eのうち矢印D方向に向いた左側を左方向E2とする。
【0036】
図2および
図3に示すように、矢印D方向に沿って複数の傾斜管20が所定間隔を空けて一列に並んでおり、複数の傾斜管20が並んだ列が、幅方向Eに沿って複数列配置されている。また、一列の傾斜管20の幅方向Eにおける両側には、シート部材30が配置されている。例えば、
図2では、複数の傾斜管20の列が4列配置されており、右方向E1側の端から順にL1~L4の符号が付されている。
【0037】
図2に示す幅方向Eにおける中央の2列L2および列L3の傾斜管20は、
図3に示すように、上端20cが下端20dよりも流入部14側に位置するように傾斜している。また、右方向E1側の端の列L1および左方向E2側の端の列L4の傾斜管は、
図3に示すように、上端20cが下端20dよりも流出部15側に位置するように傾斜している。なお、列L2、L3に配置されている傾斜管20と、列L1、L4に配置されている傾斜管20は、傾斜方向が逆であり、対称に配置されている。
【0038】
図では、複数の傾斜管20が4列配置されている構成のみ示しているが、4列よりも多く設けられていてもよい。例えば、列L1の右方向E1側に更に列が設けられていてもよく、その列の傾斜管20は、上端20cが下端20dよりも流入部14側に位置するように傾斜して配置されてもよい。例えば、列L4の左方向E2側に更に列が設けられていてもよく、その列の傾斜管20は、上端20cが下端20dよりも流入部14側に位置するように傾斜して配置されてもよい。このように、幅方向Eの外側(右方向E1または左方向E2)に向かって傾斜方向が交互になるように複数の傾斜管20の列が配置されていてもよい。
【0039】
また、
図2に示す構成では、中央の2列L2およびL3の傾斜管20は、同一方向に傾斜しているが、反対方向に傾斜していてもよい。
【0040】
図4に示すように、矢印D方向において、傾斜管20は連続して配置されておらず、隣り合う傾斜管20の間には、所定空間Sが設けられている。また、幅方向Eにおいて、隣り合う傾斜管20の間には、所定空間Sが設けられている。複数の傾斜管20は、千鳥状に配置されている。例えば、列L2の傾斜管20の幅方向Eにおける左隣りには、列L3において空間Sが配置されており、列L2の傾斜管20の幅方向Eにおける右隣りには、列L1において空間Sが配置されている。また、列L2の空間Sの幅方向Eにおける左隣りには、列L3において傾斜管20が配置されており、列L2の空間Sの幅方向Eにおける右隣りには、列L1において傾斜管20が配置されている。
【0041】
列L2、L3に配置されている傾斜管20と、列L1、L4に配置されている傾斜管20は、傾斜方向が逆であるだけで、対称に構成されているため、列L2、L3に配置されている傾斜管20を例に挙げて説明する。
【0042】
図5(a)は、傾斜管20の平面図であり、
図5(b)は、傾斜管20の側面部であり、
図5(c)は、傾斜管20の正面図である。
図5(d)は、
図5(a)のT部拡大図である。なお、前述の
図2~
図4お並びに後述の
図6および
図7では、傾斜管20およびシート部材30の厚みは分かり易くするために誇張して示している。
【0043】
図5(a)に示すように、傾斜管20は、四角筒状である。傾斜管20は、第1側面部21(傾斜側部の一例)と、第2側面部22(傾斜側部の一例)と、第3側面部23(鉛直側部の一例)と、第4側面部24(鉛直側部の一例)と、を含む。第1側面部21は、傾斜管20の流入部14側の板状の部分である。第2側面部22は、傾斜管20の流出部15側の板状の部分である。第1側面部21と第2側面部22は、矢印D方向(第1方向の一例)において対向して配置されている。第1側面部21と第2側面部22は、互いに平行に配置されている。第1側面部21と第2側面部22は、幅方向Eと平行に配置されている。
図5(b)に示すように、第1側面部21および第2側面部22が水平方向と成す角のうち鋭角をαとすると、例えば、角αは汎用的には60°に設定されているが、使用用途に合わせ、±10°程度角度を変更してもよい。
【0044】
第3側面部23は、傾斜管20の右方向E1側の板状の部分である。第3側面部23は、第1側面部21の右方向E1側の端と第2側面部22の右方向E1側の端を繋ぐように配置されている。第3側面部23は、幅方向Eに対して垂直に配置されている。
【0045】
第4側面部24は、傾斜管20の左方向E2側の板状の部分である。第4側面部24は、第1側面部21の左方向E2側の端と第2側面部22の左方向E2側の端を繋ぐように配置されている。第4側面部24は、幅方向Eに対して垂直に配置されている。
【0046】
図5(a)に示すように、第1側面部21および第2側面部22の幅方向Eにおける長さは、第3側面部23および第4側面部24の矢印D方向における長さよりも長く設定されている。
【0047】
傾斜管20は、第1側面部21の右方向E1側の端と第3側面部23の流入部14側の端によって形成される角部25と、第1側面部21の左方向E2側の端と第4側面部24の流入部14側の端によって形成される角部26と、第2側面部22の右方向E1側の端と第3側面部23の流出部15側の端によって形成される角部27と、第2側面部22の右方向E1側の端と第4側面部24の流出部15側の端によって形成される角部28と、を有する。
【0048】
傾斜管20の角部25~28の各々は、その内周面20aにおいてR形状を有する。角部25~28は、同様のR形状を有する。
図5(d)では、角部26のR形状が示されている。角部25~28のR形状は、1R以上3R以下に設定する方が好ましい。1Rは、半径1mmの円形状に形成されていることであり、3Rは、半径3mmの円形状に形成されていることである。
図5(d)において、0Rの状態が、点線N1と点線N2で示されている。点線N1は、内周面20aのうち第1側面部21の部分の延長線である。点線N2は、内周面20aのうち第4側面部24の部分の延長線である。
【0049】
角部25~28のR形状が1R未満の場合、強度の向上が小さくなり、R形状が3Rよりも大きい場合、重量が増加し、断面積が大きくなるため上端にフロックが体積し易くなる。このため、R形状を1R以上3R以下に設定することにより、重量の増加と強度の向上のバランスを保つことができる。
【0050】
なお、
図5(d)に示すように、角部25~28の各々は、傾斜管20の外周面20bにもR形状を有しているが、成形上Rを小さくすると、バリなどの発生によりハンドリング性が悪化し、大き過ぎると隙間へフロックが詰まる可能性があるため、Rとしては0.5以上1以下程度とする。
【0051】
シート部材30は、
図2および
図3に示すように、板状の部材である。シート部材30は、鉛直方向および矢印D方向と平行に配置されている。シート部材30は、列L1の右方向E1側と、列L1と列L2の間と、列L2と列L3の間と、列L3と列L4の間と、列L4の左方向E2側に配置されている。シート部材30は、右方向E1側の第1主面31と、左方向側の第2主面32と、を有する。
【0052】
各々の傾斜管20の幅方向E側の一対の第1側面部21および第2側面部22が、各々の外側に配置されているシート部材30に接着されている。
図4に示すように、第1側面部21がシート部材30の第2主面32に接着され、第2側面部22がシート部材30の第1主面31に接着されている。第3側面部23と第4側面部24は、空間Sに面している。
【0053】
図6は、傾斜管20に衝撃が加わったときの説明をするための平面図である。例えば、矢印Fに示すように、傾斜管20の第1側面部21に衝撃が加わると、第1側面部21は内側に向かって移動する。このとき第3側面部23と第4側面部24がシート部材30に接着されているため、角部25、25の接着部分(丸部分G、H参照)を起点に割れが発生しやすくなるが、本実施形態では角部25,26がR形状を有していることにより、強度を確保でき、割れの発生を低減できる。
【0054】
以上のように、傾斜管20の内周面20aの角部25~28がR形状を有することによって、耐衝撃強度を向上することができ、洗浄時の高圧洗浄水や、施工時のコンパネを敷いた際の衝撃に対して強度を向上することができる。
【0055】
また、内周面20aの角部25~28のR形状を、1R以上、3R以下に設定することによって、重量の増加を抑えたうえで、割れの発生を低減することができる。
【0056】
<他の実施の形態>
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
(A)
傾斜管沈降装置10における列の数および各々の列における傾斜管20の数は、上記実施形態の構成に限らなくてもよく変更してもよい。
【0058】
(B)
上記実施形態では、角部25~28の全てがR形状を有している。耐衝撃性の観点からは角部25~28の全てにR形状を有している方が好ましいが、少なくとも1つの角がR形状を有していることにより、従来の傾斜管と比較すると耐衝撃性を向上することができる。
【0059】
(C)
上記実施形態では、矢印D方向において、傾斜管20の間に空間Sが設けられているが、設けられていなくてもよい。また、幅方向Eにおける傾斜管20の隣には、空間Sが設けられているが傾斜管20が配置されていてもよい。
【0060】
(D)
上記実施形態では、傾斜管20は、管の伸びる方向に対して垂直な断面が矩形状に形成されているが、矩形状に限らなくてもよく、5角以上の多角形状であってもよい。
【0061】
(実施例)
(割れの検証)
傾斜管20の割れの発生について検証を行い、衝撃強度の確認を行った。
【0062】
試験は以下のように行われた。
・試験には、角部25~28が約1.5RのR形状を有する傾斜管20を用いた。
・
図7に示すように、傾斜管20を第3側面部23および第4側面部24が鉛直になるように配置し、ガイドパイプ51を上端20cに配置した。ガイドパイプ51を通して、ナス型の錘52を落下させて、傾斜管20の割れが発生する高さを確認した。
・傾斜管20の角部25~28の全てにR形状が形成されていない0Rの従来の傾斜管を比較例として用いた。なお、比較例におけるR形状が形成されていない角は、
図5における延長線N1、N2によって形成される角のことである。
【0063】
結果として、従来の傾斜管では、割れない高さは900mmであり、本実施形態の傾斜管では、割れない高さは1300mmであった。このように、本実施形態の傾斜管20は、従来の傾斜管よりも約1.45倍衝撃強度が高くなったことがわかる。
【0064】
(重量の検証)
角部にR形状を設けたことによる重量の差を確認した。
・外周面積から内周面積を差し引いて傾斜管20の断面積を求めた。
・傾斜管20の体積と比重1.4の積から1つの傾斜管20の重量(g/本)を求めた。
・傾斜管20は107個用いられているため、1つの傾斜管20の重量(g/本)に、107を掛けることによって、全ての傾斜管20の総重量(kg/個)を求めた。
【0065】
上述した角部にR形状が形成されていない傾斜管沈降装置に対して、本実施形態の傾斜管沈降装置10のように角部にR形状を形成することによって増加する重量は、以下の(表1)に示すように、1個当たり(W372mm×L3000mm×H530mm)で0.31kgと約1%程度の微増にとどまった。なお、
図8に示すように、傾斜管沈降装置10の幅方向Eの長さをWとし、高さをHとし、矢印D方向に沿った長さをLとする。下記(表1)における「長さ」は、傾斜管20の傾斜に沿った長さであり、
図8においてMで示されている。下記(表1)における「比重」は、傾斜管20の材料の比重を示す。下記(表1)における「外周面積(cm
2)」、「内周面積(cm
2)」、「断面積(cm
2)」、「体積(cm
3)」および「重量(g/本)」は、1本の傾斜管について示すものである。「本数(本/個)」は、1つの傾斜管沈降装置に用いられている傾斜管20の本数を示す。「重量(kg/個)」は、1つの傾斜管沈降装置の重量を示し、「重量(g/本)」と「本数(本/個)」の積である。
【0066】
【表1】
これにより、施工時における傾斜管の持ち運びにも問題がないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の固液分離システムは、耐衝撃性を向上し、破損を低減することが可能な効果を発揮し、下水処理施設の最終沈殿池などとして有用である。
【符号の説明】
【0068】
10:傾斜管沈降装置
20:傾斜管
20a:内周面
25~28:角部
100:固液分離システム
P:沈澱池