(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018445
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20240201BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20240201BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240201BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240201BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/33
A61K8/19
A61K8/37
A61K8/02
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121800
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 典子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC171
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC402
4C083AD152
4C083AD242
4C083BB11
4C083BB23
4C083BB24
4C083BB49
4C083CC01
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】粉末の分散性が良いエアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品を提供する。
【解決手段】原液と液化ガスとを含み、原液は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含み、液化ガスは、ジメチルエーテルを含み、ジメチルエーテルの含有量は、1~30質量%である、エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と液化ガスとを含み、
前記原液は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含み、
前記液化ガスは、ジメチルエーテルを含み、
前記ジメチルエーテルの含有量は、1~30質量%である、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記粘土鉱物粉末の含有量は、エアゾール組成物中、2~20質量%である、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記無機粉末または有機粉末は、シリル化シリカを含む、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記無機粉末または有機粉末の含有量は、エアゾール組成物中、3~40質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物を、エアゾール容器に充填した、エアゾール製品。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物を、定量噴射機構を備えたエアゾール容器に充填した、定量噴射型エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品に関する。より詳細には、本発明は、粉末の分散性が良いエアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の粉末を含み、使用前に容器を振って粉末をエアゾール組成物中に分散させてから噴霧するエアゾール製品が知られている。しかしながら、粉末の沈降速度が速い場合、エアゾール組成物は、使用前に容器を振って粉末をエアゾール組成物中に分散させても、粉末の付着にムラができやすい。また、粉末の沈降速度が遅く、粉末が凝集しやすい場合、エアゾール組成物は、保管中に粉末が凝集して使用前に容器を振っても大きなかたまりの状態となり粉末を均一に噴射できなかったり、バルブを詰まらせやすい。このような不具合は、特に定量噴射機構を備えている定量バルブを使用している場合に顕著である。定量バルブを備える定量噴射型エアゾール製品は、容器を振っても定量室内の粉末が撹拌されにくく、いったん凝集した粉末を再分散させるのが困難である。
【0003】
そこで、特許文献1には、無機粉末および/または有機粉末、疎水化処理粘土鉱物粉末、液化ガス噴射剤、炭素数6~26の脂肪族アルコールを含む組成物に定量噴射機構を備えたエアゾール容器に充填した非水系粉末エアゾール製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、粉末の含有量が少なく、液化ガスの配合量が多くなるよう調整されている。このようなエアゾール製品は、噴霧されたエアゾール組成物の粉末が舞い散りやすい。また、所望する量の粉体を配合させにくい。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、粉末の分散性が良いエアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)原液と液化ガスとを含み、前記原液は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含み、前記液化ガスは、ジメチルエーテルを含み、前記ジメチルエーテルの含有量は、1~30質量%である、エアゾール組成物。
【0009】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含む原液に、ジメチルエーテルを特定量含有することでジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られ、粉末の分散性が優れる。
【0010】
(2)前記粘土鉱物粉末の含有量は、エアゾール組成物中、2~20質量%である、(1)記載のエアゾール組成物。
【0011】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られやすい。
【0012】
(3)前記無機粉末または有機粉末は、シリル化シリカを含む、(1)または(2)記載のエアゾール組成物。
【0013】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、粉末の分散性がさらに優れる。
【0014】
(4)前記無機粉末または有機粉末の含有量は、エアゾール組成物中、3~40質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0015】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、無機粉末または有機粉末を高濃度に含有しても分散性に優れており、無機粉末または有機粉末の効果が得られやすい。
【0016】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のエアゾール組成物を、エアゾール容器に充填した、エアゾール製品。
【0017】
このような構成によれば、エアゾール製品は、粉末の分散性が優れたエアゾール組成物を含んでいる。そのため、エアゾール製品は、エアゾール容器内において、粉末が凝集および沈降しにくく、粉末を高濃度に含んでいても粉末を均一に噴射することができる。その結果、エアゾール製品は、粉末の効果が得られやすい。
【0018】
(6)(1)~(4)のいずれかに記載のエアゾール組成物を、定量噴射機構を備えたエアゾール容器に充填した、定量噴射型エアゾール製品。
【0019】
このような構成によれば、定量噴射型エアゾール製品は、粉末の分散性が優れたエアゾール組成物を含んでいる。そのため、定量噴射型エアゾール製品は、定量室内において、粉末が凝集および沈降しにくく、粉末を高濃度に含んでいても粉末を均一に噴射することができる。その結果、定量噴射型エアゾール製品は、粉末の効果が得られやすい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、粉末の分散性が良いエアゾール組成物、エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、原液と液化ガスとを含む。原液は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含む。液化ガスは、ジメチルエーテルを含む。ジメチルエーテルの含有量は、1~30質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0022】
(原液)
原液は、無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方と、粘土鉱物粉末と、油剤とを含む。
【0023】
・無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方
無機粉末または有機粉末のうち少なくともいずれか一方(以下、これらを合わせて無機粉末等ともいう)は、肌に付着することで制汗効果や収れん効果を得たり、皮脂を吸収して肌をさらさらにしたりなどの効果を得るために配合される。また、無機粉末等は、分散性を良くするために用いられる。
【0024】
無機粉末等は特に限定されない。一例を挙げると、無機粉末等は、アルミニウムクロロハイドレート、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、酸化亜鉛などの制汗剤、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlなどの皮脂吸収剤、タルク、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ナイロン等である。これらの中でも、無機粉末等は、アルミニウムクロロハイドレートなどの制汗剤やオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlなどの皮脂吸収剤を含有することが好ましい。
【0025】
無機粉末等の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、無機粉末等は、エアゾール組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、無機粉末等の含有量は、エアゾール組成物中、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。無機粉末等の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られやすく、また、無機粉末等による制汗効果や収れん効果などが得られやすい。
【0026】
・表面を疎水化処理したシリル化シリカ
本実施形態のエアゾール組成物は、さらに、表面を疎水化処理したシリル化シリカを含むことが好ましい。これにより、原液の粘度を調整しやすく、エアゾール組成物は、無機粉末等を高濃度に含有しても分散性がさらに優れる。
【0027】
疎水化処理に用いられる処理剤は特に限定されない。一例を挙げると、処理剤は、有機シリル化合物、シリコーン化合物等である。有機シリル化合物は、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、長鎖アルキルトリクロロシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、長鎖アルキルトリアルコキシシラン、メタクリルシラン、フルオロアルキルシランおよびペルフルオロアルキルシラン等である。シリコーン化合物は、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンおよびアミノ変性シリコーン等である。
【0028】
シリル化シリカが配合される場合、シリル化シリカの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、シリル化シリカの含有量は、エアゾール組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、シリル化シリカの含有量は、エアゾール組成物中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。シリル化シリカの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、粉末の分散性がより向上しやすい。
【0029】
特に、本実施形態のエアゾール組成物は、アルミニウムクロロハイドレートなどの制汗剤の分散性が良くなりやすい点からシリル化シリカを含むことが好ましい。
【0030】
・粘土鉱物粉末
粘土鉱物粉末は、原液の粘度を調整するだけでなく、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果を得られやすくするために用いられる。
【0031】
粘土鉱物粉末は特に限定されない。一例を挙げると、粘土鉱物粉末は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スメクタイト、セリサイト、ベントナイト等である。これらの中でも、粘土鉱物粉末は、ヘクトライト、スメクタイト、ベントナイトであることが好ましい。
【0032】
粘土鉱物粉末の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粘土鉱物粉末の含有量は、エアゾール組成物中、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、粘土鉱物粉末の含有量は、エアゾール組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。粘土鉱物粉末の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られやすく、粉末の分散性をより向上させやすい。
【0033】
・油剤
油剤は、エアゾール組成物中の粉末を分散させる溶媒として配合される。
【0034】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル、イソノナン酸イソトリデシル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のエステル油、メチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等のシリコーンオイル、流動パラフィン、ケロシン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素油、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油等の油脂等である。
【0035】
油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、エアゾール組成物中、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、エアゾール組成物中、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られやすく、粉末を分散させやすい。
【0036】
・任意成分
本実施形態の原液は、上記した無機粉末、有機粉末、粘土鉱物粉末、油剤のほかに、適宜、有効成分、アルコール、固形油剤等の任意成分を含んでもよい。
【0037】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、ニューコクシン(赤色102号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、ローズベンカルK(赤色232号)、ビオラミンR(赤色401号)、レゾルシンブラウン(かっ色201号)、オレンジI(だいだい色402号)、オレンジII(だいだい色205号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエロー(黄色5号)、ウラニン(黄色202号)、キノリンイエローWS(黄色203号)、ナフト-ルイエローS(黄色403号)、ファストグリーン(緑色3号)、アリザリンシアニングリーンF(緑色201号)、ピラニンコンク(緑色204号)、ナフトールグリーンB(緑色401号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)、パテントブルー(青色203号)、アリズロールパープル(紫色401号)、ナフトールブルーブラック(黒色401号)などの色素、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ミントやメントールなどの清涼剤、塩化セチルピリジニウムやイソプロピルメチルフェノールなどの殺菌消毒剤、ソルビトール、ヒアルロン酸などの保湿剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、クエン酸や乳酸などのpH調整剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤などである。
【0038】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。有効成分の含有量は、エアゾール組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、エアゾール組成物中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分の効果が得られやすい。
【0039】
アルコールは、乾燥性を調整し、使用感を良くするなど目的で配合される。
【0040】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0041】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、エアゾール組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、エアゾール組成物、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、乾燥性が調整しやすい。
【0042】
固形油剤は、原液の粘度を調整し、粉末の分散性を補助する等の目的で用いられる。
【0043】
固形油剤は特に限定されない。一例を挙げると、固形油剤は、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素、ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウなどのロウ類等である。
【0044】
固形油剤が配合される場合、固形油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、固形油剤の含有量は、エアゾール組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、固形油剤の含有量は、エアゾール組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。固形油剤の含有量が上記範囲内であることにより、固形油剤を配合することによる効果が得られやすく、かつ、べたつき等による使用感が低下しにくい。
【0045】
原液全体の説明に戻り、原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が得られやすい。
【0046】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、油剤に上記した無機粉末等、粘土鉱物粉末および任意成分等を添加して混合し、粉末を分散させることにより調製し得る。
【0047】
(液化ガス)
液化ガスは、ジメチルエーテルを含む。ジメチルエーテルは、エアゾール組成物中で粉末を分散させる分散剤として用いられる。
【0048】
ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。ジメチルエーテルの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、粉末の分散性を向上させる効果が得られやすく、粉末を分散させやすい。
【0049】
液化ガスは、エアゾール組成物の圧力を調整する等の目的でジメチルエーテル以外の液化ガスを含んでもよい。ジメチルエーテル以外の液化ガスは、液化石油ガス、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze、沸点-19℃)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf、沸点-29℃)などの沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン等である。
【0050】
ジメチルエーテル以外の液化ガスを配合する場合、ジメチルエーテル以外の液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ジメチルエーテル以外の液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。ジメチルエーテル以外の液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルによる粉末の分散性を向上させる効果が阻害されにくく、粉末の分散性が優れ、最後まで噴射されやすい。
【0051】
なお、エアゾール組成物は、圧縮ガスで加圧されてもよい。圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。
【0052】
圧縮ガスが使用される場合、圧縮ガスは、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.4MPa以上となるよう充填されることが好ましく、0.45MPa以上となるよう充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.85MPa以下となるよう充填されることが好ましく、0.80MPa以下となるよう充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、エアゾール組成物は、低温時でも安定に吐出されやすい。
【0053】
<エアゾール製品>
本発明の一実施形態のエアゾール製品は、上記したエアゾール組成物を、エアゾール容器に充填したエアゾール製品である。本実施形態のエアゾール製品は、エアゾール組成物を充填することにより、調製することができる。具体的には、容器本体に原液を充填してバルブを固着し、バルブから液化ガスを充填し、原液と液化ガスを混合し、粉末を分散させることによってエアゾール組成物を調製するとともに、エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を調製することができる。
【0054】
容器本体は、エアゾール組成物が充填される容器であり、有底筒状である。容器本体の開口部には、バルブが取り付けられる。
【0055】
容器本体の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0056】
バルブは、容器本体の開口部を閉止して密封し、エアゾール組成物を噴射するための部材である。バルブは特に限定されない。バルブは、ハウジングと、ハウジング内に上端部から嵌入され、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔を閉止するためのステムラバーと、ハウジングの下端部に設けられた容器本体内のエアゾール組成物を吸い上げるチューブ部材と、ステムを上方に付勢する付勢部材とを主に備える。ステムの上端には、エアゾール組成物を噴射するための噴射部材が取り付けられる。
【0057】
噴射部材は、バルブの開閉を操作してエアゾール組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、エアゾール組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0058】
本実施形態のエアゾール製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体内と外部とが連通し、エアゾール組成物の圧力によって、容器本体内のエアゾール組成物がステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0059】
本実施形態のエアゾール製品は、粉末の分散性が優れた上記エアゾール組成物を含んでいる。そのため、エアゾール製品は、エアゾール容器内において、粉末が凝集および沈降しにくく、高濃度の粉末を含んでいても粉末を均一に噴射することができる。その結果、エアゾール製品は、粉末の効果が得られやすい。
【0060】
<定量噴射型エアゾール製品>
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品は、上記したエアゾール組成物を、定量噴射機構を備えたエアゾール容器に充填したエアゾール製品である。本実施形態の定量噴射型エアゾール製品は、エアゾール組成物を充填することにより、調製することができる。具体的には、容器本体に原液を充填して定量噴射機構を備える定量噴射バルブを固着し、定量噴射バルブから液化ガスを充填し、原液と液化ガスを混合し、粉末を分散させることによってエアゾール組成物を調製するとともに、エアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾール製品を調製することができる。
【0061】
容器本体は、エアゾール製品の実施形態に関連して上記したものと同様である。
【0062】
定量噴射バルブは、容器本体の開口部を閉止して密封し、一定量のエアゾール組成物を噴射するための部材である。定量バルブは特に限定されない。定量噴射バルブは、ハウジングと、ハウジング内に上端部から嵌入され、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔を閉止するためのステムラバーと、ハウジングの下端部に設けられた容器本体内のエアゾール組成物を吸い上げるチューブ部材と、ハウジング内に設けられた定量室と、ステムを上方に付勢する付勢部材とを主に備える。ステムの上端には、エアゾール組成物を噴射するための噴射部材が取り付けられる。
【0063】
噴射部材は、エアゾール製品の実施形態に関連して上記したものと同様である。
【0064】
本実施形態の定量噴射型エアゾール製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。また、ステムの下端がチューブ部材から定量室に連通する連通部を閉鎖する。その結果、容器本体内と定量室内とが遮断され、定量室内と外部とが連通する。定量室内と外部とが連通すると、定量室内に貯留されているエアゾール組成物の圧力によって、一定量のエアゾール組成物がステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0065】
本実施形態の定量噴射型エアゾール製品は、粉末の分散性が優れた上記エアゾール組成物を含んでいる。そのため、エアゾール製品は、定量室内において、粉末が凝集および沈降しにくく、高濃度の粉末を含んでいても粉末を均一に噴射することができる。その結果、エアゾール製品は、粉末の効果が得られやすい。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0067】
(実施例1)
以下の表1に示される処方に従って原液Aを調製し、透明なポリエチレンテレフタレート製容器本体に51.0g(85質量%)充填した。容器本体の開口部に定量噴射型バルブを固着し、バルブからジメチルエーテルを9.0g(15質量%)充填し、エアゾール組成物を充填したエアゾール製品を製造した。定量噴射型バルブは、1回の噴射量が0.2mLであるものを用い、噴射部材は噴口がφ0.5であるものを用いた。
【0068】
【0069】
(実施例2、比較例1~2)
原液の処方を表1に記載の処方に変更し、原液B、D、Eを調製した。得られたそれぞれの原液B、D、Eを用いて、実施例1と同様の方法により、実施例2、比較例1~2のエアゾール組成物をそれぞれ調製した。
【0070】
(実施例3)
上記表1に示される処方に従って原液Cを調製し、透明なポリエチレンテレフタレート製容器本体に57.0g(95質量%)充填した。容器本体の開口部に定量室を備えていない連続噴射型バルブを固着し、バルブからジメチルエーテルを3.0g(5質量%)充填し、さらにバルブから窒素を充填して圧力を0.75MPaに調整し、エアゾール組成物を充填したエアゾール製品を製造した。噴射部材は噴口がφ0.5であるものを用いた。
【0071】
実施例1~3、比較例1~2で得られたエアゾール組成物について、以下の評価方法により、沈降性、再分散性を評価した。結果を表2に示す。
【0072】
<沈降性>
容器本体内のエアゾール組成物の液面の高さを80mmに調整し、40mmのところに印を付けて、容器本体を上下に振盪して粉末をエアゾール組成物中で分散させてから容器本体を一晩静置し、粉末の高さを、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
◎:粉末の高さは、75~80mmであった。
○:粉末の高さは、61~74mmであった。
△:粉末の高さは、41~60mmであった。
×:粉末の高さは、40mm以下であった。
【0073】
<再分散性>
容器本体を上下に振盪して粉末をエアゾール組成物中で分散させてから容器本体を一晩静置し、粉末の再分散性を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:1~3回振ると、粉末が均一に分散した。
△:4~9回振ると、粉末が均一に分散した。
×:10回振っても粉末が均一に分散せず、一部が底部に固まったままであった。
【0074】
【0075】
表2に示されるように、実施例1~2のエアゾール組成物は、ほとんど粉末が沈降せず、3回以内で均一に分散した。実施例3のエアゾール組成物は、ほとんど粉末が沈降せず、9回以内に粉末が均一に分散した。液化ガスを液化石油ガスにした比較例1のエアゾール組成物と液化ガスのジメチルエーテルを45質量%含有した比較例2のエアゾール組成物とは、粉末が半分以下まで沈降し、再分散性も悪かった。