(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018476
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B27C 1/10 20060101AFI20240201BHJP
B27C 1/14 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B27C1/10 C
B27C1/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121840
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 朴人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 悟知
(57)【要約】
【課題】作業機の操作性を向上させる。
【解決手段】電動かんな1は、電源部4と、電源部4から供給される電力によって駆動される電動モータ6と、電動モータ6の駆動力によって回転するカッタブロック8と、カッタブロック8を支持するリアベース3と、リアベース3に対して上下動可能なフロントベース33aと、作業者によって操作され、フロントベース33aを上下動させる昇降機構15と、を有する。昇降機構15は、フロントベース33aを上下動させる際の操作荷重を調整可能な調整機構16を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力によって回転するカッタブロックと、
前記カッタブロックを支持するリアベースと、
前記リアベースに対して上下動可能なフロントベースと、
作業者によって操作され、前記フロントベースを上下動させる昇降機構と、
を有し、
前記昇降機構は、前記フロントベースを上下動させる際の操作荷重を調整可能な調整機構を備える、作業機。
【請求項2】
前記昇降機構は、前記フロントベースと係合する回転部を有し、
前記調整機構は、前記回転部に生じる摩擦力を調整可能な機構である、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記モータと前記カッタブロックとを収容するハウジングを有し、
前記回転部は、前記ハウジングと摺動し、
前記摩擦力は、前記回転部と前記ハウジングとの摺動によって発生する、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記回転部と前記ハウジングとが摺動する部分に介在される介在部材を含む、請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記調整機構は、前記回転部の径方向に延在する操作部を含む、請求項3に記載の作業機。
【請求項6】
前記昇降機構は、前記回転部の軸方向に延びるノブを含む、請求項2に記載の作業機。
【請求項7】
前記調整機構は、前記回転部に設けられたスペーサ部材と、前記スペーサ部材と前記ハウジングとの間に挟持される弾性体と、を含む、請求項5に記載の作業機。
【請求項8】
前記弾性体は、ばね部材であり、
前記操作部によって前記ばね部材の圧縮量を調整することで、前記摩擦力の大きさを変化させる、請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記調整機構は、前記ハウジングの外部に配置される、請求項3に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機の一例として、電動モータを駆動源とし、木材の表面仕上げや寸法調整等に用いられる電動かんなが知られている。
【0003】
上述のような電動かんなとして、例えば、特許文献1には、刃物による被削材への切込み深さを調整する切込み深さ調整機構を備えた電動かんなが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載された電動かんなは、フロントベースを昇降させることで被削材への切込み深さを変更することが可能な構造となっている。切込み深さを変更する際のノブの操作荷重は、その荷重の大きさによっては作業に支障を来たす恐れがある。例えば、ノブの操作荷重が軽すぎると微調整が難しく、操作荷重が重すぎると調整に力が多く必要となり疲れやすくなってしまう。またノブは作業時における補助的なハンドルの役割も担っており、作業者はノブを作業中に操作し、切込み深さを調整しながら作業を行うことも可能である。このとき、ノブの操作荷重が軽すぎると作業機本体を操作するときにノブが簡単に動いてしまい、意図せず切込み深さが変更されてしまう恐れがある。また、ノブの操作荷重が重過ぎると作業中における切込み深さの変更が困難になる。以上により、従来の作業機においては操作性の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、操作性を向上させた作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機は、モータと、前記モータの駆動力によって回転するカッタブロックと、前記カッタブロックを支持するリアベースと、前記リアベースに対して上下動可能なフロントベースと、作業者によって操作され、前記フロントベースを上下動させる昇降機構と、を有し、前記昇降機構は、前記フロントベースを上下動させる際の操作荷重を調整可能な調整機構を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態の作業機の構造を示す外観側面図である。
【
図2】
図1の作業機の内部構造を示す断面図である。
【
図3】
図1のA-A線に沿って切断した構造を示す断面図である。
【
図4】
図1の作業機においてノブの操作荷重を小に調整した状態を示す部分断面図である。
【
図5】
図1の作業機においてノブの操作荷重を大に調整した状態を示す部分断面図である。
【
図6】
図1の作業機においてノブの操作荷重が小に調整された状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図1の作業機においてスペーサ部材のねじ部材を緩めてスペーサ部材を下降させる状態を示す部分断面図である。
【
図8】
図1の作業機においてスペーサ部材を下降させて弾性体を圧縮させた状態を示す部分断面図である。
【
図9】
図1の作業機においてノブを回転させて下降させる状態を示す部分断面図である。
【
図10】
図1の作業機においてノブを所定位置まで下降させてノブとナット部材とスペーサ部材と回転軸とを一体化させた状態を示す部分断面図である。
【
図11】本発明の変形例の作業機の構造を示す図であり、(a)は部分外観側面図、(b)は(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態の作業機について図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、作業機の一例として、電動かんな1を取り上げて説明する。
図1~
図3に示されるように、電動かんな1は、ハウジング2と、リアベース3と、電源部4と、制御ユニット5と、電動モータ(モータ)6と、ファン7と、刃物8aが取り付けられたカッタブロック8と、ノブ9と、ハンドル10とを有する。電動かんな1は、電源部4から供給される電力によって電動モータ6が駆動し、電動モータ6の駆動力によってカッタブロック8が回転することで被削材を切削加工することができる。
【0011】
尚、以下の説明では、
図1~
図3において、電源部4に対してノブ9が設けられている方向を前方向とし、逆方向(電源部4に対してハンドル10が設けられている方向)を後方向と定義する。また、ハウジング2に対してリアベース3が設けられている方向を下方向とし、逆方向(ハウジング2に対して電源部4が設けられている方向)を上方向と定義する。更に、後方向から電動かんな1を見た場合の右側の方向を右方向とし、逆方向を左方向と定義する。
【0012】
図1に示されるように、ハウジング2は、電動かんな1の外郭を成し、ハウジング2の下方向の端面(下端面)にはリアベース3が取り付けられている。ハウジング2は、本体ハウジング21と、ギヤハウジング22と、フロントハウジング23と、リアハウジング24とを有する。
図2に示されるように、ハウジング2の内部には、モータ収容部2aと、制御部収容部2bと、配線収容部2cとが形成される。
【0013】
本体ハウジング21には、電動かんな1の本体を成す部分として、電動モータ6と、ファン7と、カッタブロック8と、切屑排出部11とが設けられている。本体ハウジング21の内部の前後方向略中央にモータ収容部2aが形成されている。また、本体ハウジング21の内部の上側には、配線5aが収容される空間である配線収容部2cが形成されている。モータ収容部2aには、電動モータ6が収容される。
【0014】
ギヤハウジング22は、本体ハウジング21の左側に設けられている。また、ギヤハウジング22は、本体ハウジング21の左側を閉塞し、切屑排出孔11aへ流れるファン風がハウジング2の外部に拡散することを防止している。
【0015】
フロントハウジング23は、本体ハウジング21の前方に本体ハウジング21と一体に設けられている。フロントハウジング23は、切削加工の際の切り込み深さを調整する切込調整機構33を備えている。リアハウジング24は、本体ハウジング21の後方に本体ハウジング21と一体に設けられている。リアハウジング24の左右両側面にはそれぞれ吸気口24bが形成されている。リアハウジング24の内部には制御部収容部2bが形成され、制御ユニット5が収容されている。
【0016】
リアベース3は、カッタブロック8を支持しており、電動かんな1を用いて切削加工を行う際に、被削材の上面に当接させられる平面状の作業部である。リアベース3は、前後方向及び左右方向に平行な平面において略矩形状に形成されている。
【0017】
電動モータ6は、上述したモータ収容部2aに収容され、
図3に示されるように回転軸6aを有している。回転軸6aは、本体ハウジング21とギヤハウジング22とに跨って左右方向に延びる軸である。回転軸6aは、本体ハウジング21の右側に設けられたボールベアリング21a及び左側に設けられたボールベアリング22aによって回転可能に支持されている。また、回転軸6aの左端部には、プーリ6bが設けられ、ギヤハウジング22に収容されている。
【0018】
電動モータ6は、例えばブラシレスモータであり、後述する制御ユニット5により制御可能に構成される。電動モータ6は電源部4からの電力の供給を受けて駆動する。電動モータ6が駆動することによって、回転軸6a及びプーリ6bは回転駆動される。換言すると、回転軸6aは、電動モータ6によって駆動する駆動軸である。
【0019】
ファン7は、上述した本体ハウジング21とギヤハウジング22との境界付近に配置され、電動モータ6の回転軸6aと同軸に設けられる。ファン7は、電動モータ6の駆動に応じて回転軸6aと共回りすることにより回転駆動され、ハウジング2内にファン風を発生させる。
【0020】
カッタブロック8は、左右方向に延びる略円筒形状を成す部材であり、電動モータ6の前方かつ下方に、本体ハウジング21及びギヤハウジング22に対して回転可能に設けられる。カッタブロック8は、ハウジング2に収容されている。カッタブロック8の軸心は、電動モータ6の回転軸6aの軸心と略平行となる位置関係を有している。カッタブロック8は、カッタブロック軸8bを備え、外周部には左右方向に延びる板状の刃物8aが取り付けられている。
【0021】
カッタブロック軸8bは、本体ハウジング21とギヤハウジング22とに跨って左右方向に延びる軸である。カッタブロック軸8bは、本体ハウジング21の右側に設けられたボールベアリング21b及び左側に設けられたボールベアリング22bにより回転可能に支持されている。カッタブロック軸8bの左端側にはプーリ8cが設けられ、ギヤハウジング22に収容されている。プーリ8cと、回転軸6aのプーリ6bとは、ギヤハウジング22に収容されたベルト6cによって接続されている。このため、回転軸6aの回転力は、プーリ6b、ベルト6c及びプーリ8cを介してカッタブロック軸8bに伝達される。刃物8aは、カッタブロック8の軸心を中心として対称な2箇所に着脱可能に取り付けられる。換言すると、カッタブロック8は、駆動軸である回転軸6aに設けられ、被削材を加工する加工部である。
【0022】
本実施形態の電動かんな1では、上述した電動モータ6と、回転軸6aと、カッタブロック8とは、駆動部13を構成する。
【0023】
図2に示されるように、切屑排出部11は、電動モータ6の前方に設けられており、切屑排出孔11aと、連絡孔11bと、取込孔11cとが形成されている。切屑排出孔11aは、本体ハウジング21を左右方向に貫通する孔であり、電動モータ6の回転軸6aの軸方向(左右方向)に略平行に延びる。切屑排出孔11aは、カッタブロック8の上方かつ電動モータ6の前方に形成されている。切屑排出孔11aの右側の開口端は排気口に相当する。
【0024】
切屑排出孔11aの左側の開口端とモータ収容部2aの左端部とは、連絡孔11bによって連通している。連絡孔11bは、上方が塞がれているため、ファン7により発生したファン風は、モータ収容部2a側に流れることが抑制されつつ、モータ収容部2aから連絡孔11bを介して切屑排出孔11aへ流れる。取込孔11cは、カッタブロック8の前部上側と対向する本体ハウジング21の部分に形成される。取込孔11cを介して、カッタブロック8の切削加工によって発生した切屑は切屑排出孔11aに取り込まれ、切屑排出孔11aの右側の開口端からハウジング2の外部に排出される。
【0025】
電源部4は、ハンドル10に設けられた装着部12に着脱可能に装着される電池パックである。電源部4は、直方体状の形状であり、内部に複数のリチウム電池セル等からなる電池が収容されている。電源部4は、電動かんな1に装着されると、装着部12に設けられた接続端子12aと電気的に接続される。電源部4は、制御ユニット5の制御に応じて、電動モータ6を有する駆動部13へ電力を供給する。
【0026】
制御ユニット5は、電動モータ6に対して後方に設けられ、リアハウジング24内の制御部収容部2b内に収容される。制御ユニット5は、配線5aにより電源部4と電気的に接続され、配線5bにより後述するトリガスイッチ10eと電気的に接続される。
【0027】
切込調整機構33は、上述したようにフロントハウジング23に設けられ、切削加工の際の被削材への切込み深さを調整する。切込調整機構33は、フロントベース33aと、雌ねじ33bとを有する。フロントベース33aは、前後方向及び左右方向に平行な面上において略矩形状に形成されており、フロントハウジング23の下端面に設けられている。フロントベース33aは、リアベース3に対して上下動可能に設けられている。そして、フロントハウジング23の内部において、上下方向に延びる雌ねじ33bがフロントベース33aに取り付けられている。
【0028】
ノブ9は、握り部9aと、操作部9cが取り付けられたナット部材9fと、回転軸(回転部)9dとを有する。握り部9aは、フロントハウジング23の上部に設けられる。
図1に示されるように、握り部9aは上下方向に延びる柱状に形成され、その下端はハウジング2の上側端部25よりも上方に位置する。すなわち、握り部9aは、上下方向において、ハウジング2の頂点位置である上側端部25よりもリアベース3から離れた位置に設けられる。握り部9aは、ユーザが電動かんな1を使用する際に、一方側の手で把持される。ナット部材9fは、回転軸9dと螺合されており、回転軸9dに対して回転させることで上下動可能である。
図2に示されるように、ナット部材9fには、回転軸9dの径方向L1に延在する操作部9cが取り付けられている。操作部9cは、ナット部材9fを回転させる際に回転させ易いように把持する部分である。さらに、操作部9cは、ノブ9を回転させる際にもノブ9と一緒に把持して回転させることが可能であり、ユーザがノブ9を回転しやすくする機能も有している。
【0029】
回転軸9dは、上下方向に沿って握り部9a、ナット部材9f及びフロントハウジング23の内部に設けられる。回転軸9dにナット部材9fを介して設けられた操作部9cは、回転軸9dで回転可能である。そして、ユーザが操作部9c(ノブ9)を回転操作することにより、回転軸9dは、フロントハウジング23に対して回転する。回転軸9dの下端には雄ねじ9eが形成され、上述したフロントハウジング23内に取り付けられた雌ねじ33bと螺合している。
【0030】
切込み深さの調整は、ユーザが操作部9c(ノブ9)を回転操作することにより行われる。ユーザが操作部9cを回転操作すると、ナット部材9fとともに回転軸9dが回転する。この回転軸9dの回転により、雄ねじ9eと螺合している雌ねじ33bが、雄ねじ9eに対して相対的に上下方向に移動する。この雌ねじ33bの移動に応じて、雌ねじ33bが取り付けられているフロントベース33aがフロントハウジング23に対して上下方向に移動する。この結果、リアベース3に対するフロントベース33aの上下方向の位置(高さ)が変化することで、切削加工の際の切込み深さが調整される。
【0031】
ハンドル10は、ハウジング2の後側、すなわち本体ハウジング21及びリアハウジング24の上方に設けられている。換言すると、ハウジング2には、前後方向に沿ってノブ9とハンドル10とが配列される。別の見方をすると、ハンドル10は、ノブ9が設けられるハウジング2の一方側(前側)に対して、他方側(後側)に設けられる。このため、ハンドル10と、上述したようにハウジング2の上側端部25よりも上方に設けられる握り部9aを有し上下方向に延びるノブ9とは、上下方向(すなわち、リアベース3と直交する方向)において重複する、と言うことができる。また、上述したようにノブ9の握り部9aは、ハウジング2の本体ハウジング21の上側端部25よりも上方に設けられていることから、ノブ9とハンドル10とは、リアベース3に平行な面上に設けられる、と言うことができる。
【0032】
ハンドル10は、ハンドル本体10aと、前部接続部10bと、後部接続部10cとにより構成される。前部接続部10bは、本体ハウジング21の上部、かつ、切屑排出孔11aの後方にてハウジング2と接続する。具体的には、前部接続部10bは、電動モータ6の上方にて本体ハウジング21と接続する。前部接続部10bは、上下方向に対して傾斜を有して後方上部へ向けて延びる。別の見方をすると、前部接続部10bは、リアベース3から離れるほどリアベース3と直交する上下方向に対して後方へ傾斜する。前部接続部10bは、上下方向に対して25°程度方向へ向けて傾斜する。尚、傾斜は25°に限定されるものではなく、例えば20°から30°までの範囲とすることができる。前部接続部10bの前側には、後述する電源部4を装着するための装着部12が設けられる。また、前部接続部10bの後方下部から後方に向けて、上述した配線収容部2cが延びる。
【0033】
ハンドル本体10aは、前部接続部10bの上端と接続され、本体ハウジング21及びリアハウジング24の上方で後方下部に延びる。ハンドル本体10aは、略円筒形状を成し、電動かんな1を使用する際にユーザによって両手のうちの一方の手で把持される。ハンドル本体10aの内部には、スイッチ機構10dと、トリガスイッチ10eとが設けられる。
【0034】
スイッチ機構10dは、ハンドル本体10aの内部に収容されており、配線5bを介して制御ユニット5に電気的に接続される。この配線5bは、ハンドル本体10aの内部と、後述する後部接続部10cの内部とを通過し、一方側の端部でトリガスイッチ10eと接続され、他方側の端部で制御ユニット5と接続される。トリガスイッチ10eは、ハンドル本体10aの前部下側に設けられている。上述したように、配線収容部2cが前部接続部10bの後方下部から後方に向けて延びていることから、トリガスイッチ10eは、上下方向(すなわちリアベース3と直交する方向)において、配線収容部2cと重複する。トリガスイッチ10eは、ユーザが上方に押し込むことによりスイッチ機構10dを介して電源部4からの電力が電動モータ6に供給される。すなわち、トリガスイッチ10eは、電動モータ6の駆動開始と駆動停止とを切り替える際にユーザによって操作されるスイッチである。
【0035】
後部接続部10cは、ハンドル本体10aと同様の略円筒形状を成し、ハンドル本体10aの後部とリアハウジング24の後端上部とに接続する。換言すると、後部接続部10cは、電源部4からノブ9へ向かう方向とは反対方向でのハンドル10の端部に形成される接続部であり、ハンドル10はこの接続部にてハウジング2と接続する。上述したように、リアベース3がハウジング2の下方に取り付けられていることから、
図1,
図3に示されるように、後部接続部10cの少なくとも一部は、リアベース3の後方側の端部3aよりも前方、すなわちノブ9側に位置する。
【0036】
ハンドル10が上述した形状を有することから、ハンドル10は、後部接続部10cから、リアベース3の面と交差する方向に沿って前方上側に位置するノブ9に向かって延びる、と言うことができる。
【0037】
図1,
図2に示されるように、装着部12は、ハンドル10の前部接続部10bの前側、すなわちハンドル10のうちノブ9と対向する側に設けられ、電源部4が着脱可能に装着される。装着部12は、装着された電源部4と電気的に接続される接続端子12aと、ハンドル10の前部接続部10bと接続する壁部12bとを有する。接続端子12aは、上述した配線5aによって制御ユニット5と電気的に接続される。この配線5aは、本体ハウジング21の上側に形成された配線収容部2cの内部を通過し、一方側の端部で接続端子12aと接続され、他方側の端部で制御ユニット5と接続される。
【0038】
次に、電動かんな1が備える昇降機構15について説明する。電動かんな1は、ユーザ(作業者)によって操作され、フロントベース33aを上下動させる昇降機構15を有している。さらに、昇降機構15は、フロントベース33aを上下動させる際の操作荷重を調整可能な調整機構16を備えている。
【0039】
具体的には、昇降機構15は、握り部9aを備え、かつ、回転軸9dの軸方向L2に延びるノブ9と、握り部9a及びフロントベース33aと係合する回転軸9dと、回転軸9dに設けられた調整機構16と、を有する。つまり、昇降機構15は、ノブ9を回転させることで、回転軸9dを介してフロントベース33aを上下動させることが可能な機構である。
【0040】
そして、調整機構16は、フロントベース33aを上下動させる際のノブ9による操作荷重を調整するものであり、回転軸9dに生じる摩擦力を調整可能な機構である。すなわち、ノブ9を回転させる操作において印加される荷重の大小を調整可能な機構である。具体的には、回転軸9dは、フロントハウジング23と摺動し、上記摩擦力は、回転軸9dとフロントハウジング23との摺動によって発生する。詳細には、
図4に示される回転軸9dとフロントハウジング23との摺動部分である摩擦力発生個所P1において上記摩擦力が発生する。
【0041】
ここで、調整機構16について詳細に説明する。調整機構16は、回転軸9dと螺合され、かつ、回転軸9dに対して回転させることで上下動可能なナット部材9fと、ナット部材9fの下部に配置され、かつ、回転軸9dに設けられたスペーサ部材9bと、スペーサ部材9bとフロントハウジング23との間に挟持される弾性体と、を含んでいる。本実施の形態では、上記弾性体は、サラばね(ばね部材)16bである。そして、ナット部材9fを上下動させてサラばね16bの圧縮量を変えることで、摩擦力発生個所P1で発生する上記摩擦力の大きさを変化させることが可能である。また、電動かんな1では、調整機構16は、フロントハウジング23の外部に配置されている。
【0042】
ナット部材9fは、上述のように回転軸9dと螺合され、かつ、回転軸9dに対して回転させることで上下動可能となっている。そして、ナット部材9fは、その上端においてノブ9の握り部9aの下端と接続する。また、ナット部材9fには、回転軸9dの径方向L1に延在する操作部9cが取り付けられている。
【0043】
スペーサ部材9bは、環状に形成され、孔部9gに回転軸9dが配置されている。スペーサ部材9bは、上端においてナット部材9fと接触し、下端においてサラばね16bと接触する。スペーサ部材9bは、
図1に示されるねじ部材16aを緩めることで、孔部9gが大きくなり、回転軸9dに対して上下動可能となる。また、ねじ部材16aを締めることで、回転軸9dに対して位置を固定することができる。したがって、ねじ部材16aを緩めてスペーサ部材9bを上下動可能な状態にし、この状態でナット部材9fを回転させることでスペーサ部材9bを上下動させてサラばね16bの圧縮量を変えることができる。
【0044】
また、スペーサ部材9bは、サラばね16bによって常に上方側に向けて付勢されている。したがって、ねじ部材16aを緩めてスペーサ部材9bを上下動可能な状態にし、この状態でナット部材9fを回転させてナット部材9fを上下動させると、スペーサ部材9bもナット部材9fに追従して上下動する。これにより、サラばね16bの圧縮量を変えることができる。
【0045】
さらに、ねじ部材16aを締めて回転軸9d上でのスペーサ部材9bの位置を固定すると、スペーサ部材9bと回転軸9dとが一体となる。これにより、回転軸9dもサラばね16bによって常に上方側に向けて付勢された状態となるため、ノブ9を回すと、回転軸9dとフロントハウジング23との間の摩擦力発生個所P1で摩擦力が発生する。その際、ナット部材9fによって調整されたサラばね16bの圧縮量に応じて上記摩擦力も大きくなったり小さくなったりする。その結果、電動かんな1では、ノブ9を回して回転軸9dを回転させてフロントベース33aを上下動させる際のノブ9による操作荷重を、サラばね16bの圧縮量に応じて大きくしたり小さくしたり調整することができる。言い換えれば、ノブ9を回してフロントベース33aを上下動させる際のノブ9による操作荷重を重くしたり軽くしたり調整することができる。
【0046】
図4は、サラばね16bの圧縮量が小さくなる位置でスペーサ部材9bを固定した状態の電動かんな1を示しており、この場合には、ノブ9を回転させてフロントベース33aを上下動させる際のノブ9の操作荷重は小さい(軽い)。つまり、小さい荷重でノブ9を回転させることができる状態である。一方、
図5は、サラばね16bの圧縮量が大きくなる位置でスペーサ部材9bを固定した状態の電動かんな1を示しており、この場合には、ノブ9を回転させてフロントベース33aを上下動させる際のノブ9の操作荷重は大きい(重い)。つまり、ノブ9を回転させるために大きな荷重が必要になる状態である。
【0047】
また、フロントハウジング23は、回転軸9dとフロントハウジング23とが摺動する部分に介在されるワッシャ(介在部材)17を含んでいる。すなわち、回転軸9dとフロントハウジング23とが摺動する部分に金属製の板状のワッシャ17が介在されている。さらに、サラばね16bとフロントハウジング23とが接触する部分にも金属製の板状のワッシャ(介在部材)18が介在されている。このように金属製のワッシャ17が介在されていることで、回転軸9dのフロントハウジング23に対する回転動作を滑らかにすることができる。さらに、金属製のワッシャ18が介在されていることで、サラばね16bの付勢力によるフロントハウジング23の損傷を抑えることができる。
【0048】
次に、
図6~
図10を用いてノブ9の操作荷重の調整手順について説明する。ここでは、ノブ9の操作荷重を小さい状態から大きい状態に変更する場合を取り上げて説明する。まず、
図6に示されるノブ9の操作荷重が小さい荷重となるように調整された状態(サラばね16bの圧縮量が小さくなるように調整された状態)において、
図1に示されるスペーサ部材9bを固定しているねじ部材16aを緩める。これにより、スペーサ部材9bを動かすことが可能な状態にする。続いて、
図7に示されるように、操作部9cを把持して操作部9cとともにナット部材9fを回転させ、ナット部材9fを所望の位置まで下降させる。このとき、スペーサ部材9bも動ける状態となっているため、ナット部材9fに押圧されてナット部材9fの下降に追従してスペーサ部材9bも下降する(下降Q1)。
【0049】
続いて、
図8に示されるように、ナット部材9fとともにスペーサ部材9bを所望の位置まで下降させてサラばね16bを所定量圧縮させる。この状態で、
図1に示されるねじ部材16aを締めることで、回転軸9d上におけるスペーサ部材9bの位置を固定する。これにより、サラばね16bの圧縮量が大きくなるように調整された状態となる。さらに好ましくは、スペーサ部材9bの位置を固定した後、再度、ナット部材9fを回転させて下降させることで、フロントハウジング23とナット部材9fとのガタツキを無くすことができ、昇降機構15及び調整機構16のレスポンスを向上できる。
【0050】
続いて、
図9に示されるように、ノブ9を回転させノブ9の下端がナット部材9fの上端に接触する位置までノブ9を下降させる(下降Q2)。これにより、サラばね16bの圧縮量が大きくなるように調整され、その結果、
図10に示されるように、ノブ9とナット部材9fとスペーサ部材9bと回転軸9dとが一体化されるとともに、ノブ9の操作荷重が大きくなるように調整された状態となる。
【0051】
本実施の形態の電動かんな1では、フロントベース33aの昇降機構15が備える調整機構16においてナット部材9fを回転させることで、サラばね16bの圧縮量を変えることができ、これにより、ノブ9の操作荷重を変えることができる。すなわち、フロントベース33aを昇降させて切込み深さを変更する際のノブ9の操作荷重を軽くしたり、重くしたり容易に変更することができる。言い換えれば、ユーザ(作業者)がノブ9の操作荷重を好みの大きさに調整することができる。その結果、電動かんな1の操作性を向上させることができる。
【0052】
また、電動かんな1では、調整機構16がフロントハウジング23の外部に配置されている。調整機構16をフロントハウジング23の内部に配置することも可能であるが、調整機構16をフロントハウジング23の内部に配置すると、操作部9cを露出させるための開口部をフロントハウジング23に形成する必要が生じる。フロントハウジング23に開口部が形成されていると、この開口部からフロントハウジング23の内部に粉塵が入り込む可能性が高まるため、開口部は形成されていない方が好ましい。すなわち、調整機構16がフロントハウジング23の外部に配置されていることで、フロントハウジング23の内部に粉塵が入り込む可能性を低くすることができる。さらに、調整機構16がフロントハウジング23の外部に配置されていることで、ノブ9の操作荷重を調整する際に、操作をしやすくすることができる。
【0053】
また、ナット部材9fとサラばね16bとの間にスペーサ部材9bが設けられていることで、スペーサ部材9bの厚みによって操作部9cとフロントハウジング23との距離を確保することができ、操作部9cを回転させる際に容易に操することができる。すなわち、スペーサ部材9bが嵩上げの機能を有し、操作部9cの回転操作を容易にすることができる。
【0054】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
図11は、変形例の作業機の構造を示す図であり、(a)は部分外観側面図、(b)は(a)の断面図である。
図11に示される電動かんな1では、調整機構16が備える弾性体として、スプリングばね(ばね部材)16cが採用されている。すなわち、フロントハウジング23とスペーサ部材9bとの間に配置される弾性体として、スプリングばね16cが設けられている。弾性体として、スプリングばね16cが設けられた電動かんな1においても、
図1に示される電動かんな1と同様に、フロントベース33aを昇降させて切込み深さを変更する際のノブ9の操作荷重を軽くしたり、重くしたり容易に変更することができる。その結果、変形例の電動かんな1においてもその操作性を向上させることができる。
【0055】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態及び変形例では、電動かんな1の調整機構16にスペーサ部材9bが設けられている場合を説明したが、調整機構16においては、ナット部材9f及び弾性体が設けられていればスペーサ部材9bは必ずしも設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…電動かんな(作業機)、2…ハウジング、2a…モータ収容部、2b…制御部収容部、2c…配線収容部、3…リアベース、3a…端部、4…電源部、5…制御ユニット、5a,5b…配線、6…電動モータ(モータ)、6a…回転軸、6b…プーリ、6c…ベルト、7…ファン、8…カッタブロック、8a…刃物、8b…カッタブロック軸、8c…プーリ、9…ノブ、9a…握り部、9b…スペーサ部材、9c…操作部、9d…回転軸(回転部)、9e…雄ねじ、9f…ナット部材、9g…孔部、10…ハンドル、10a…ハンドル本体、10b…前部接続部、10c…後部接続部、10d…スイッチ機構、10e…トリガスイッチ、11…切屑排出部、11a…切屑排出孔、11b…連絡孔、11c…取込孔、12…装着部、12a…接続端子、12b…壁部、13…駆動部、15…昇降機構、16…調整機構、16a…ねじ部材、16b…サラばね(弾性体、ばね部材)、16c…スプリングばね(弾性体、ばね部材)、17,18…ワッシャ(介在部材)、21…本体ハウジング、21a,21b…ボールベアリング、22…ギヤハウジング、22a,22b…ボールベアリング、23…フロントハウジング、24…リアハウジング、24b…吸気口、25…上側端部、33…切込調整機構、33a…フロントベース、33b…雌ねじ、L1…径方向、L2…軸方向、P1…摩擦力発生個所、Q1,Q2…下降