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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001848
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】柱状タウリンの循環製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/44 20060101AFI20231227BHJP
   C07C 309/14 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07C303/44
C07C309/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025153
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】202210720762.3
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520336182
【氏名又は名称】チェンジャン ヨンアン ファーマシュティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーチュエン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオボ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD15
4H006BB31
4H006BC51
4H006BC53
(57)【要約】
【課題】プロセスが新規であり、効率が高く、リサイクルにより生産コストとエネルギー消費の両方を減少させる柱状タウリンの循環製造方法を提供する。
【解決手段】所定濃度のタウリン水溶液を調製し、塩基性樹脂に該タウリン水溶液を通して処理を行い、ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体を除去し、塩基性樹脂出口からの流出液を監視して、監視に合格する流出液を収集し、収集した流出液のタウリンを結晶化処理して、タウリン結晶を得ることを含む、柱状タウリンの循環製造方法を開示する。本発明の方法は、プロセスが革新的であり、効率が高く、得られたタウリンは結晶の品質が高く、流動性に優れ、凝集がなく、生産コストが低く、効率が高いなどの利点を有し、生産の工業化が期待できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定濃度のタウリン水溶液を調製し、
塩基性樹脂に該タウリン水溶液を通して処理を行い、ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体を除去し、
塩基性樹脂出口からの流出液を監視して、監視に合格する前記流出液を収集し、
収集した前記流出液のタウリンを結晶化処理して、タウリン結晶を得ること、
を含む、柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項2】
前記塩基性樹脂出口からの流出液のpH値及び/又はヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、監視に合格しない場合、監視に合格しない流出液をリサイクルすること、を含む、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項3】
前記タウリン水溶液を調製することは、タウリン粗生成物を水又はタウリン母液と混合して溶解させた後、不溶性固形不純物を除去して該タウリン水溶液を得ること、含む、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項4】
前記タウリン水溶液を調製することは、
エチレンオキシドと亜硫酸水素塩溶液とを付加反応させてヒドロキシエチルスルホン酸塩を得て、
得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩とアンモニアとを混合してアンモノリシス反応を行い、アンモノリシス反応液を得て、
前記アンモノリシス反応液から過剰なアンモニアを蒸発させて除去し、タウリン塩を得て、
得られた前記タウリン塩をタウリン溶液に転化させ、
前記タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、分離してタウリン粗生成物とタウリン母液を得て、前記タウリン粗生成物を用いて前記タウリン水溶液を調製し、
前記タウリン母液をリサイクルすること、
を含む、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項5】
前記タウリン水溶液を調製することは、
タウリン粗生成物を水又は回収したタウリン精製母液に溶解して結晶化させて精製し、分離して一次タウリン精製物と一次タウリン精製母液を得て、
前記一次タウリン精製物を水又は回収したタウリン精製母液に加えて、脱色ろ過を行い、さらに降温結晶化処理を行い、
降温結晶化後のタウリン材料を固液分離して、分離により得られたタウリン湿式精製物を乾燥させてタウリンを得て、
固液分離して得られた前記タウリン精製母液を回収し、回収した前記タウリン精製母液を用いて前記タウリン水溶液を調製すること、
を含む、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項6】
前記塩基性樹脂カラムは、飽和になった後にアルカリで再生される、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項7】
結晶化処理後のタウリン材料を固液分離して、タウリン精製母液を得ることをさらに含み、
前記タウリン精製母液と前記タウリン粗生成物とを混合したものを、前記タウリン水溶液として前記塩基性樹脂処理に通し、リサイクルするか、又は
前記タウリン精製母液と結晶化処理前の前記流出液とを混合して、リサイクルする、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項8】
結晶釜を用いて前記降温結晶化処理を行い、前記流出液を5~35℃に降温する、請求項5に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項9】
前記タウリン水溶液の質量/体積濃度が5%~25%である、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項10】
前記塩基性樹脂は、弱塩基性樹脂、強塩基性樹脂又は両方の組み合わせである、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項11】
前記タウリン水溶液が前記塩基性樹脂を通過する流速は、0.25~25BV/hである、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項12】
前記塩基性樹脂出口からの流出液のpH値が5~9である場合、監視に合格するものとし、前記流出液を収集する、請求項1又は2に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項13】
前記塩基性樹脂の再生に使用されるアルカリは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア水又はこれらの組み合わせである、請求項6に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項14】
前記塩基性樹脂の再生により得られる流出液中のヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体は、アンモノリシス反応に再利用される、請求項6に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項15】
前記流出液のタウリンを結晶化処理することは、監視に合格する前記流出液を、質量/体積比が25%~40%となるように濃縮して結晶化させる、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項16】
前記ろ過は、有機ナノ濾過膜、セラミックナノ濾過膜、SiCナノ濾過膜、金属微孔性フィルタ又はPE微孔性フィルタによって行われる、請求項5に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項17】
結晶釜における前記降温結晶化処理の結晶化温度を60~80℃に制御し、
前記降温結晶化処理においては、初期保温温度は65~75℃、保温時間は0.5h~1.0h、降温速度は1℃~20℃/hである、請求項5に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項18】
前記固液分離は、プレート遠心分離機、吊下型遠心分離機、デカンタ型遠心分離機、ろ過機又はフィルタプレートによって行われる、請求項5又は7に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項19】
0~100℃の温度範囲で、前記タウリン粗生成物水溶液を調製する、請求項2に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項20】
ヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、ヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量が0.05%超の場合、合格しないものとする、請求項2に記載の柱状タウリンの循環製造方法。
【請求項21】
前記ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩は、ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属ナトリウム、アルカリ金属カリウム又はアルカリ金属リチウムである、請求項1に記載の柱状タウリンの循環製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学医薬結晶の技術分野に関し、具体的には、柱状タウリンの効率的な循環製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タウリンは、化学名が2-アミノエタンスルホン酸であり、天然に存在するβ-スルホン化アミノ酸であり、ヒトや哺乳類の生体活動に必須の硫黄含有アミノ酸である。生体内でタンパク質や酵素類の合成に直接関与しないが、極めて重要な生理機能を持ち、生体内の環境の正常な恒常性の維持に関与するだけでなく、中枢神経、心血管、消化、泌尿、免疫、内分泌、生殖などの系統の生理機能の正常な発揮に重要な調節作用を持つ。
【0003】
タウリンはその独特な生理、薬理機能のため、広範な応用範囲を持っている。食品に添加すると、体質を強化して、疾患を予防して、疲労を解消し、仕事の効率を高めるなどの役割を果たす。医薬分野に応用すると、脂肪肝、心筋炎、心不全、アテローム性動脈硬化などの疾患の治療に役立つ。動物用飼料に添加すると、動物の発育・繁殖を促進することができる。タウリンは市場の将来性が期待できる。
【0004】
現在、中国のタウリンの工業化生産方法は、主にエタノールアミン法とエチレンオキシド法があり、結晶化は分離精製と生成物精製の重要なステップである。タウリンは、無色又は白色の針状結晶又は結晶性粉末であり、無臭で、水に易溶性である。現在市販されているタウリン製品では、結晶粒度が小さく分布が不均一で、かさ密度が低く、流動性が悪く、塊になりやすいなどの問題がある。生産企業では、結晶方式が単一で、プロセスが煩雑であるため、生産効率が低く、原料コストが高く、公共工事のエネルギー消費が大きく、設備利用率が低いなどの欠点がある。タウリン結晶の品質が悪く、生産効率が低いことは、製品価格、企業利益及び市場応用に影響する重要な原因の一つである。
【0005】
特許文献1及び特許文献2は、いずれも湿式混合造粒機を用いてタウリン粒子を製造する方法を記載している。この方法はプロセスが簡単で、造粒機の形態や具体的なパラメータに対する要求が厳しく、設備への依存性が大きく、しかも設備の損失が深刻で、利用率が低く、設備コストが高い。
【0006】
特許文献3は、2-アミノエタンスルホン酸の凝集の問題を回避するために、工業的に純粋な2-アミノエタンスルホン酸で2-アミノエタンスルホン酸を精製するための、多段降温結晶化方法を開示している。しかし、この方法は高圧反応条件下で行う必要があり、また、活性炭による脱色・不純物除去を促進するためにアルカノールを添加する必要がある。さらに、タウリン結晶を得るには、ろ液冷却による結晶化の保持時間などの手段と組み合わせる必要がある。その結果、タウリン結晶中にアルカノール不純物が残留するだけでなく、得られたタウリン結晶の結晶形は円柱針状であり、柱状結晶形と一定の違いがある。また、この円柱針状のタウリン結晶は、タウリンの吸湿凝集を効果的に防止するには、アルミプラスチックフィルム包装を必要とする。
【0007】
特許文献4は、乾燥機及び乾燥条件を制御することにより、球状粒子のタウリンを製造する方法を記載している。この方法は、プロセスが遅れ、公共工事のエネルギー消費が極めて大きく、生産コストを増加させる。
【0008】
特許文献5は、タウリン水溶液に塩基性物質を添加してpHを調整し、冷却して結晶化させて柱状タウリン結晶を得る製造方法を記載している。この方法では、有機不純物が導入され、原料と後続の母液の処理コストが増大している。
【0009】
特許文献6は、有機カルボン酸塩添加剤を用いてタウリン結晶の形態を変化させ、柱状結晶のタウリンを得る方法を記載している。この方法は、原料コストが低く、得られる結晶形態も良好である。しかしながら、結晶化方式が単一であるため、シングルパスの収率が低下している。工業化生産の場合は、何度も母液を再利用しなければ結晶化操作の全体的な収率を高めることができず、操作フローが煩雑で、生産効率が低下している。
【0010】
特許文献7は、菱形状タウリン結晶及びその製造方法を記載しており、菱形状タウリン結晶が得られる。この方法の流れは簡単であるが、所定量の酸、特に有機酸を添加する必要がある。そのため、新たな不純物が導入されてしまう。また、工業化生産中に酸が濃縮され、その後タウリン結晶を抽出した後の母液処理の難度が増加し、生産コストが増加し、工業的な量産に不利である。
【0011】
特許文献8は、かさ密度、流動性が向上し、凝集しないタウリン結晶及びその製造方法を記載している。この製造方法では、一定の滴下速度で系に所定量の貧溶媒を加える必要がある。そのため、大量の有機不純物が導入され、工業化生産中に濃縮され、後続で母液を完全に分離することが難しくなり、また、分離コストが大幅に増える。
【0012】
特許文献9は、タウリン及びその再結晶方法を記載している。特許文献9に記載された方法では、降温や保温を段階的に制御することで、最終的に、結晶の軸方向の長さが600μm~950μm、径方向の長さが250μm~450μm、軸方向と径方向の長径比が2:1~3:1であり、その粒子が小さい柱状結晶形を実現している。また、その顕微鏡写真によれば、その柱状結晶形は、標準柱状とは一定の違いが存在し、粒子の表面は不規則的であることを示しており、これは、タウリンの凝集特性に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許出願公開第101904819号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第103830186号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101857558号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第1872029号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第101671283号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第103848763号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第109694336号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第号109574886明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第112479944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、結晶粒度が小さく分布が不均一で、かさ密度が低く、流動性が悪く、塊になりやすいなどの従来のタウリンに存在する問題の少なくとも1つを解決する柱状タウリンの効率的な循環製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の柱状タウリンの循環製造方法は、所定濃度のタウリン水溶液を調製し、塩基性樹脂に該タウリン水溶液を通して処理を行い、ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体を除去し、塩基性樹脂出口からの流出液を監視して、監視に合格する流出液を収集し、収集した流出液のタウリンを結晶化処理して、タウリン結晶を得ること、を含む。
【0016】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該塩基性樹脂出口からの流出液のpH値及び/又はヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、監視に合格しない場合、監視に合格しない流出液をリサイクルしてもよい。
【0017】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、タウリン粗生成物を水又はタウリン母液と混合して溶解させた後、不溶性固形不純物を除去して該タウリン水溶液を得てもよい。
【0018】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該タウリン水溶液の調製工程は、エチレンオキシドと亜硫酸水素塩溶液とを付加反応させてヒドロキシエチルスルホン酸塩を得て、得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩とアンモニアとを混合してアンモノリシス反応を行い、アンモノリシス反応液を得て、該アンモノリシス反応液から過剰なアンモニアを蒸発させて除去し、タウリン塩を得て、得られた該タウリン塩をタウリン溶液に転化させ、タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、分離してタウリン粗生成物とタウリン母液を得て、該タウリン粗生成物を用いて該タウリン水溶液を調製し、該タウリン母液をリサイクルすることnを含んでもよい。
【0019】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該タウリン水溶液の調製工程は、タウリン粗生成物を水又は回収したタウリン精製母液に溶解して結晶化させて精製し、分離して一次タウリン精製物と一次タウリン精製母液を得て、該一次タウリン精製物を水又は回収したタウリン精製母液に加えて、脱色ろ過を行い、さらに降温結晶化処理を行い、降温結晶化後のタウリン材料を固液分離して、分離により得られたタウリン湿式精製物を乾燥させてタウリンを得て、固液分離して得られた該タウリン精製母液を回収し、回収した該タウリン精製母液を用いて該タウリン水溶液を調製すること、を含んでもよい。
【0020】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、塩基性樹脂カラムが飽和になった後、前記塩基性樹脂カラムはアルカリで再生されてもよい。
【0021】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、結晶化処理後のタウリン材料を固液分離して、タウリン精製母液を得ることをさらに含み、該タウリン精製母液とタウリン粗生成物とを混合したものを、該タウリン水溶液として該塩基性樹脂処理に通し、リサイクルしてもよく、又は該タウリン精製母液と結晶化処理前の該流出液とを混合して、リサイクルしてもよい。
【0022】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、結晶釜を用いて降温結晶化処理を行い、流出液を5~35℃、好ましくは15~25℃に降温してもよい。
【0023】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該タウリン水溶液の質量/体積濃度は、5%~25%、好ましくは10%~20%であってもよい。
【0024】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該塩基性樹脂は、弱塩基性樹脂、強塩基性樹脂又は両方の組み合わせであってもよい。
【0025】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該タウリン水溶液が該塩基性樹脂を通過する流速は、0.25~25BV/h、好ましくは5~15BV/hであってもよい。
【0026】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該塩基性樹脂出口からの流出液のpH値が5~9である場合に監視に合格するものとし、該流出液を収集し、好ましくはpH値が6~8である場合、監視に合格するものとし、該流出液を収集してもよい。
【0027】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該塩基性樹脂の再生に使用されるアルカリは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア水又はこれらの組み合わせ、好ましくは水酸化ナトリウム、アンモニア水又は両方の組み合わせであってもよい。
【0028】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該塩基性樹脂の再生により得られる流出液中のヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体は、アンモノリシス反応に再利用されてもよい。
【0029】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、監視に合格する該流出液を、質量/体積比が25%~40%、好ましくは30%~35%となるように濃縮して結晶化させてもよい。
【0030】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、有機ナノ濾過膜、セラミックナノ濾過膜、SiCナノ濾過膜、金属微孔性フィルタ又はPE微孔性フィルタ、好ましくはSiCナノ濾過膜によってろ過を行ってもよい。
【0031】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、結晶釜において、結晶化処理の結晶化温度を60~80℃、好ましくは65~75℃に制御してもよく、前記降温工程においては、初期保温温度は65~75℃、保温時間は0.5h~1.0h、降温速度は1℃~20℃/hであってもよい。
【0032】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、前記固液分離は、プレート遠心分離機、吊下型遠心分離機、デカンタ型遠心分離機、ろ過機又はフィルタプレートによって行われてもよい。
【0033】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、0~100℃、好ましくは35~80℃の温度範囲で、該タウリン粗生成物水溶液を調製してもよい。
【0034】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、ヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、ヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量が0.05%よりも大きい場合に合格しないものとしてもよく、好ましくはヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量が0.005%よりも大きい場合に合格しないものとしてもよく、より好ましくはヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量が0.001%よりも大きい場合に合格しないものとしてもよい。
【0035】
前記柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態によれば、該ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属塩は、ヒドロキシエチルスルホン酸アルカリ金属ナトリウム、アルカリ金属カリウム又はアルカリ金属リチウムであってもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、結晶粒度が小さく分布が不均一で、かさ密度が低く、流動性が悪く、塊になりやすいなどの従来の市販タウリン製品に存在する品質上の問題を解決することができる。さらに、生産企業側には、結晶方式及びフローが単一で、生産効率が低く、原料コストが高く、公共工事のエネルギー消費が大きく、設備利用率が低いなどの従来の欠点に対して、柱状タウリン結晶を効率的に循環製造する改良方法を開示する。該方法は、プロセスが新規であり、効率が高く、リサイクルにより生産コストとエネルギー消費の両方を減少させる。さらに、得られた結晶は、品質が高く、流動性に優れ、凝集がなく、生産コストが低く、効率が高いなどの利点を有し、生産の工業化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の柱状タウリンの循環製造方法の一実施形態のフロー図である。
図2】本発明の柱状タウリンの循環製造方法の別の実施形態のフロー図である。
図3】本発明の柱状タウリンの循環製造方法による結晶の画像である。
図4】本発明の柱状タウリンの循環製造方法による別の結晶の画像である。
図5】従来技術で生産されるタウリン結晶の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明で提供される柱状タウリンの循環製造方法についてさらに説明する。
【0039】
発明者らは、長期間にわたって鋭意研究を行ったところ、従来のタウリン生産プロセスで生産されたタウリン粗生成物中の水分含有量が約8%であり、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルスルホン酸誘導体、タウリン誘導体、エチレングリコール、ポリエーテル、エタノールアミン、硫酸ナトリウムなどの微量の不純物が粗生成物に混入されており、その結果、タウリンの再結晶工程においても上記の関連不純物が存在することを見出した。結晶学原理によれば、結晶形状に影響する因素には、過飽和度の変化、溶媒系の変化、不純物などが含まれる。結晶純度に影響する因素には、母液中の不純物、結晶化速度、結晶粒度及び粒度分布などが含まれる。結晶の大きさに影響する因素には、温度、核の質量、撹拌などが含まれる。タウリンのプロセスと組み合わせて分析した結果、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体のいずれにもヒドロキシル基が含有されており、タウリン分子と水素結合を形成しやすい。これにより、タウリン結晶の構造が影響を受け、さらに核形成後のタウリン結晶の成長過程も一定の影響を受ける。また、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体の溶解度がタウリンの溶解度よりも大幅に大きいので、タウリンが降温により結晶化されて析出された後、未結晶の溶液中のタウリン量が低下する。一方、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体は、その高溶解度のため影響を受けず、その結果として、降温中に溶液中の成分が絶えずに変化する。すなわち、不純物の含有量が次第に上昇し、この不純物によってタウリン結晶の分子間の水素結合作用が高まり、針状タウリンが形成される。このため、結晶前にヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体を分離することによって、結晶液中の不純物の含有量が極めて低くなり、結晶工程の安定性が確保され、均一な柱状タウリン結晶が得られる。さらに、分離されたヒドロキシエチルスルホン酸塩はアンモノリシス反応の原料としてさらに使用可能であり、リサイクルすることができる。発明者らは、実験及び分析を多く行った結果、タウリン粗生成物に含まれる微量の不純物であるヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体に対応する酸がタウリンの酸性よりも大きい酸性を有するヒドロキシエチルスルホン酸であり、このような特性を利用して、適切な樹脂を用いてタウリン粗生成物中の不純物を優先的に吸着して分離することができることを見出した。ここで、塩基性樹脂は主にアニオン類を吸着するが、微量の非イオン性不純物も吸着する。具体的には、アニオン類としては、例えば、ヒドロキシエチルスルホン酸根、硫酸根、亜硫酸根、塩素イオンなどである。本発明では、塩基性樹脂を通過すると、主としてヒドロキシエチルスルホン酸根、ヒドロキシエチルスルホン酸誘導体アニオン、硫酸根、亜硫酸根などの不純物が除去される。もちろん、吸着させた不純物は、さらなる樹脂再生ステップによって溶出される。また、樹脂からの流出液は収集され、再生時に吸着させたアニオン、例えばヒドロキシエチルスルホン酸根、ヒドロキシエチルスルホン酸誘導体アニオン、硫酸根、亜硫酸根などが排出される。これらのうち無用な成分、例えば、硫酸根は後で処理されてもよい。本発明では、分離後の溶液を結晶化処理し、吸着後の樹脂をアルカリで再生させ、再生によりヒドロキシエチルスルホン酸塩を得た後、得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩を処理してアンモノリシス反応原料として使用することによって、循環生産が行われる。
【0040】
したがって、本発明で提供される柱状タウリンの循環製造方法は、具体的には、以下のステップS1~ステップS8を含んでもよい。
【0041】
ステップS1では、エチレンオキシドと亜硫酸水素塩溶液とを付加反応させて、ヒドロキシエチルスルホン酸塩を得る。
【0042】
ステップS2では、S1で得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩とアンモニアとを、金属塩又は金属アルカリの条件下で混合してアンモノリシス反応を行い、アンモノリシス反応液を得る。
【0043】
ステップS3では、アンモノリシス反応後の過剰なアンモニアを蒸発させて除去し、タウリン塩を得る。
【0044】
ステップS4では、得られたタウリン塩をタウリンに転化させる。
【0045】
ステップS5では、タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、分離してタウリン粗製生物及びタウリン母液を得る。これらのうち、タウリン母液を不純物を除去してS2ステップに戻し、S2の原料の1種とする。
【0046】
ステップS6では、上記タウリン粗生成物を水と混合して溶解させた後、不溶性固形不純物を除去して塩基性樹脂カラムに通し、塩基性樹脂カラムの出口からのタウリン溶液を収集し、出口でのpH及び出口でのタウリン溶液中のヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、ヒドロキシエチルスルホン酸根が合格しない場合、収集を停止し、合格しない材料はタウリンを生産する各ステップの原料として戻されて使用される。飽和になった塩基性樹脂カラムをアルカリで再生し、再生により得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩をステップS2の原料としてリサイクルする。
【0047】
ステップS7では、上記塩基性樹脂カラムの出口からのタウリン溶液を濃縮させて脱色し、ろ過した後、結晶釜に移して降温結晶化を行う。
【0048】
ステップS8では、降温結晶化後のタウリン材料を固液分離して、分離により得られたタウリン湿式精製物を乾燥させてタウリンを得て、分離により得られたタウリン精製母液をステップS6に戻してタウリン粗生成物と混合する。戻されたタウリン精製母液は、ある程度水の代わりとして機能するため、水を追加してタウリン粗生成物と混合する必要がなくなる。タウリン精製母液はまた、ステップS5に戻されて、濃縮結晶化前又は濃縮結晶化後のタウリン溶液と混合し、リサイクルしてもよい。好ましくはS6ステップに戻される。
【0049】
いくつかの好適な実施形態において、ステップS1において、亜硫酸水素塩溶液は、亜硫酸水素ナトリウム溶液であってもよい。亜硫酸水素ナトリウム溶液の濃度は、9~36wt%であり、亜硫酸水素ナトリウムとエチレンオキシドとの物質量比が1:0.95~1であってもよい。付加反応は、温度が50~80℃であってもよく、反応圧力が0.1Mpaよりも大きい(絶対圧力で表される)。
【0050】
ステップS2において、金属塩又は金属アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムのうちのいずれか1種、いずれか2種の組み合わせ又は複数種の混合物である。アンモノリシス反応は、温度150~280℃、反応圧力1~25MPaで行われる。
【0051】
ステップS3において、アンモニアの蒸発除去は、フラッシュ蒸発、単効用又は多重効用蒸発などの方式を含み、好ましくはフラッシュ蒸発である。
【0052】
ステップS3では、過剰なアンモニアを蒸発させて除去し、ステップS2に再利用する。
【0053】
ステップS4において、タウリン塩のタウリンへの転化は、酸性化、イオン交換、イオンフィルム又は加熱などの方式によって行われてもよい。酸性化に使用される酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、ヒドロキシエチルスルホン酸、亜硫酸などが含まれる。好ましくは、イオン交換樹脂及びイオンフィルムの方式、最も好ましくはイオン交換樹脂の方式である。
【0054】
ステップS6において、タウリン粗生成物を水と混合して完全に溶解させる必要がある。ここで、溶解させる際にタウリン粗生成物と水との混合液の温度は0℃~100℃、好ましくは35℃~80℃である。
【0055】
ステップS6において、タウリン粗生成物水溶液の質量/体積濃度は、5~25%、好ましくは10~20%である。
【0056】
ステップS6において、塩基性樹脂は、弱塩基性樹脂、強塩基性樹脂のうちの一方又は両方の組み合わせである。また、使用される塩基性樹脂は、タウリンに対して非吸着性であるか、又は吸着力が低い。溶液中のアニオンを処理するには、塩基性樹脂がより効果的である。
【0057】
ステップS6において、上述したように塩基性樹脂は、弱塩基性樹脂、強塩基性樹脂のうちの一方又は両方の組み合わせである。使用される樹脂は、ヒドロキシエチルスルホン酸及びその誘導体に対しては吸着力が高い。
【0058】
ステップS6において、タウリン粗生成物水溶液が塩基性樹脂を通過する流速は、0.25~25BV/h、好ましくは5~15BV/hに制御される。
【0059】
ステップS6において、塩基性樹脂カラムの出口でのpH値を監視する。pH値が5~9である場合、塩基性樹脂カラムの出口からのタウリン溶液を収集する。さらに、好ましくはpH値が6~8である場合、塩基性樹脂カラムの出口からのタウリン溶液を収集する。
【0060】
ステップS6において、ヒドロキシエチルスルホン酸根を監視し、収集された塩基性樹脂を通過した溶液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量が0.05%未満である場合、合格するものとする。該溶液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は、好ましくは0.005%未満、より好ましくは0.001%未満である。
【0061】
ステップS6において、塩基性樹脂の再生に使用されるアルカリ溶液としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアンモニア水であり、好ましくは水酸化ナトリウム及びアンモニア水である。
【0062】
ステップS6において、塩基性樹脂の再生により得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩は、そのまま又は濃縮、不純物除去などの方式で処理されて、S2のアンモノリシス反応に再利用されて、タウリン塩をさらに合成してもよい。
【0063】
ステップS6において、除去された不溶性固形不純物は、固形不純物の性質に応じて、それぞれのステップに戻されて再利用されてもよい。
【0064】
ステップS6において、塩基性樹脂カラムが飽和になった後にアルカリで再生される際、吸着させたアニオン、例えばヒドロキシエチルスルホン酸根、ヒドロキシエチルスルホン酸誘導体アニオン、硫酸根、亜硫酸根などは全て排出される。これらのうち無用な成分、例えば、硫酸根、亜硫酸根などは、後で不純物除去処理を受ける。不純物除去処理のための方法は、具体的には、濃縮による不純物除去、降温による不純物除去、脱色による不純物除去、アンモニア導入による不純物除去などがある。もちろん、不純物除去処理によって得られた不純物もリサイクル可能である。
【0065】
ステップS7において、タウリン溶液は、質量/体積比が25%~40%、好ましくは30%~35%となるまで濃縮される。
【0066】
ステップS7において、脱色に使用される吸着剤は、活性炭、金属又は非金属酸化物吸着剤(例えばシリカゲル、アルミナ、分子篩、天然粘土など)、重合体吸着剤などを含む。これら吸着剤は、ステップS6におけるタウリン粗生成物に対して0.0質量1%~0.1質量%、好ましくは0.04質量%~0.08質量%である。
【0067】
ステップS7において、ろ過の方式には、有機ナノ濾過膜、セラミックナノ濾過膜、SiCナノ濾過膜、金属微孔性フィルタ又はPE微孔性フィルタなどが含まれるが、SiCナノ濾過膜によるろ過が好ましい。
【0068】
ステップS7において、結晶釜内の結晶液の結晶化温度は、60~80℃、好ましくは65~75℃に制御される。
【0069】
ステップS7において、降温結晶化工程において、結晶粒子をより大きくするために、結晶析出温度の近くに保温段階を設定する。結晶釜における降温工程においては、第一の保温温度は65~75℃、保温時間は0.2h~1.0h、降温速度は1℃~20℃/hである。
【0070】
ステップS8において、固液分離に使用される装置は遠心分離機、ろ過機、フィルタプレートなどであってもよいが、好ましくはプレート遠心分離機、吊下型遠心分離機及びデカンタ型遠心分離機である。
【0071】
本発明の柱状タウリンの効率的な循環製造方法のさらなる実施形態では、まず、タウリン粗生成物を精製して、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム及びヒドロキシエチルスルホン酸誘導体の含有量を低下させた一次精製物を得た後、リサイクルされた精製母液を塩基性樹脂で処理してもよい。このように、柱状タウリンを循環製造し、具体的には、以下のステップS1~S9を含んでもよい。
【0072】
S1では、エチレンオキシドと亜硫酸水素塩溶液とを付加反応させて、ヒドロキシエチルスルホン酸塩を得る。
【0073】
S2では、S1で得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩とアンモニアとを、金属塩又は金属アルカリの条件下で混合してアンモノリシス反応を行い、アンモノリシス反応液を得る。
【0074】
S3では、アンモノリシス反応後の過剰なアンモニアを蒸発させて除去し、タウリン塩を得る。
【0075】
S4では、得たタウリン塩をタウリンに転化させる。
【0076】
S5では、タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、分離してタウリン粗生成物及びタウリン母液を得る。これらのうち、タウリン母液を処理してS2ステップに戻す。
【0077】
S6では、S5で得られたタウリン粗生成物を水又はタウリン精製母液に溶解させ、結晶化させて精製し、分離して一次タウリン精製物及び一次タウリン精製母液を得る。分離して得られた一次タウリン精製母液をS5に戻して処理し、又はS6に再利用してタウリン粗生成物と再度混合する。
【0078】
S7では、一次タウリン精製物に水又はタウリン精製母液溶液(S9ステップで処理された精製母液)、及び活性炭を加えた後、撹拌してから昇温し、脱色ろ過を行い、ろ過後の溶液を結晶釜に送って、降温結晶化を行う。
【0079】
S8では、降温結晶化後のタウリン材料を固液分離して、分離により得られたタウリン湿式精製物を乾燥させてタウリンを得る。
【0080】
S9では、S8にステップで分離されたタウリン精製母液を塩基性樹脂カラムに通し、塩基性樹脂カラムの出口からのタウリン溶液を収集し、出口でのpH及び出口でのタウリン溶液中のヒドロキシエチルスルホン酸根を監視する。飽和になった塩基性樹脂カラムをアルカリで再生し、再生により得られたヒドロキシエチルスルホン酸塩をステップS2の原料としてリサイクルする。収集したタウリン溶液、即ちタウリン精製母液をS7に戻してリサイクルし、又は、タウリン精製母液をステップS6に戻してタウリン粗生成物と混合してもよい。タウリン精製母液は、ある程度水の代わりとして機能するので、追加される水が減少する。
【0081】
以下、複数の特定の実施例をもって柱状タウリンの循環製造方法に関する効果についてさらに説明する。以下の実施例は、本発明の実施方法を示し、特に断らない限り、使用される原料は全て市販品であり、使用される方法は全て通常の方法である。材料の含有量は、質量体積百分率で表す。反応における物質の含有量は、HPLC及びLC-MS分析方法によって検出され得る。
【0082】
一実施例において、タウリン粗生成物の製造工程は、以下を含む。
【0083】
(1)ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウムの製造
所定量の亜硫酸水素ナトリウム溶液とエチレンオキシドとを、亜硫酸水素ナトリウムとエチレンオキシドとのモル比が1:0.95~1:1となる割合で、圧力0.1Mpa、pH値5.0~9.0、温度60~80℃の条件下で反応させ、ヒド3キシエチルスルホン酸ナトリウムを製造した。
【0084】
(2)タウリンナトリウムの製造
水酸化ナトリウムを加えた条件下で、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウムとアンモニアとをアンモノリシス反応させた。アンモノリシス反応を、温度250~270℃、圧力10~15MPaの条件下で、45min行い、反応終了後、アンモニアガスをフラッシュ蒸発で除去し、タウリンナトリウム溶液を得た。
【0085】
(3)タウリンナトリウムのタウリンへの転化
ステップ(2)のタウリンナトリウム溶液を、所定の流速で酸性樹脂カラムに通し、タウリン溶液として樹脂カラムの排出液体材料を収集したる。排出液体材料の指標が供給液体の指標とほぼ一致する、例えば排出液体材料のpH値が供給液体のpH値に近い場合、材料の供給及び排出を停止し、脱イオン水を用いて樹脂カラム内の液体材料を洗浄して回収し、材料洗浄が終了した後、酸を所定の流速で樹脂に通すことで樹脂を再生処理した。再生終了後、純水で洗浄すると、樹脂はさらなる材料供給が可能なものとなる。
【0086】
(4)タウリン粗生成物の製造
検出したタウリン含有量が6.7%である上記で収集したタウリン溶液を約1850mL準備して濃縮し、次に、20℃に降温して結晶化させた。さらに、遠心分離し、タウリン粗生成物125gを得た。タウリン粗生成物は、タウリンの含有量が92.5質量%、水分の含有量が7%であり、残りがタウリン母液72mLであった。タウリン母液の含有量は11.56質量%であった。
【0087】
上記タウリン粗生成物の製造工程に基づいて、本分野で既存のタウリンの抽出方法が使用され、この方法は以下を含む。
【0088】
製造されたタウリン粗生成物(タウリン92.5質量%、水分7質量%)500gに水1160gを加え、活性炭0.5gを加え、撹拌しながら90℃に昇温し、15min保温後、熱いうちろ過した。ろ液を結晶化フラスコに投入して、65~75℃で30min保温し、その後、降温速度を10℃/hに制御して20℃に降温し、分離して乾燥させ、タウリン乾燥精製物324g、タウリン精製母液1380mL(タウリン含有量9.86%)を得た。ここで、降温結晶化前のろ液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は0.28%であった。得られたタウリンは、粒子径0.1~1mmの細長い針状結晶であり、かさ密度が0.7g/mLであった。具体的には、粒子径に応じた篩分けを表1に示す。
【表1】
【0089】
上記従来技術に比べて、本発明のタウリン抽出方法は、以下を含む。
【0090】
製造したタウリン粗生成物(タウリン92.5質量%、水分7質量%)500gに水2500gを加え、撹拌しながら溶解するまでまで昇温し、不溶性不純物を粗ろ過により除去した。次に、保温の条件下で溶液を10BV/hの速度で塩基性樹脂カラム125mlに通し、樹脂カラムの出口からの溶液を収集した。溶液のpHが7.5であることが検出されたとき、得られた溶液を質量/体積比が30%超になるまで濃縮し、次に、活性炭0.1gを加えて15min保温した後、熱いうちにろ過した。ろ液を結晶化フラスコに投入して、65~75℃で30min保温した後、降温速度を10℃/hに制御して20℃に降温し、分離して乾燥させ、タウリン乾燥精製物353g、タウリン精製母液1125mL(含有量9.68%)を得た。ここで、検出したところ、降温結晶化前のタウリンろ液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は0.02%であった。得られたタウリンは、結晶粒径として長さ2~4mm、幅0.4~0.6mm、厚さ0.2~0.4mmの柱状結晶であり、かさ密度が0.87g/mLであった。具体的には、粒子径に応じた篩分けを表2に示す。
【表2】
【0091】
さらに、1つの特定実施例では、柱状結晶製造後の材料(即ち再生液)のリサイクルの工程は以下を含む。
【0092】
(1)再生液の収集
飽和まで吸着させた塩基性樹脂を、水酸化ナトリウムの含有量が5質量%の水酸化ナトリウム溶液600gで再生処理して、再生後の溶液を収集した。
【0093】
(2)タウリンナトリウムの製造
混合液中に占める再生液のモル割合が0.1%~100%となるように、再生液をヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム溶液と混合し、水酸化ナトリウム及びアンモニアを加えた後、アンモノリシス反応を、温度250~270℃、圧力10~15MPaの条件下で、45min行った。反応終了後、アンモニアガスをフラッシュ蒸発により除去し、タウリンナトリウム溶液を得た。再生液が水酸化ナトリウムで再生されたものである場合、再生液を添加した混合液中の水酸化ナトリウムが混合液中のヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウムのモル量の0.1%以上に達すれば、アンモノリシス前に水酸化ナトリウムを添加しなくてもよい。再生液がアンモニアで再生されたものである場合、水酸化ナトリウムの更なる添加が必要である。
【0094】
(3)タウリンナトリウムのタウリンへの転化
上記タウリンナトリウム溶液を所定の流速で酸性樹脂カラムに通し、タウリン溶液として樹脂カラムの排出液体材料を収集した。排出液体材料の指標が供給液体の指標とほぼ一致する(例えばpH値が近い)場合、材料の供給を停止し、脱イオン水を用いて樹脂カラム内の液体材料を洗浄して回収し、材料洗浄が終了した後、酸を所定の流速で樹脂に通すことで樹脂を再生処理する。再生終了後、純水で洗浄すると、樹脂はさらなる材料供給が可能なものとなる。
【0095】
(4)タウリン粗生成物の製造
タウリン含有量が6.8%の、収集したタウリン溶液を約8000mL準備して濃縮し、次に、20℃に降温して結晶化させ、さらに遠心分離し、粗生成物550gを得た。、粗生成物は、タウリンの含有量が92.6質量%、水分の含有量が6.9質量%であり、残りが母液300mLであり、タウリン母液の含有量は11.45質量%であった。
【0096】
(5)タウリン結晶化
得られたタウリン粗生成物(タウリン92.6質量%、水分6.9質量%)500gに水2500gを加え、撹拌しながら溶解するまで昇温し、不溶性不純物を粗ろ過により除去した。次に、保温の条件下で溶液を10BV/hの速度で塩基性樹脂カラム125mlに通し、樹脂カラムの出口からの溶液を収集した。溶液のpH値が7.5であることが検出されたとき、得られた出口溶液を質量/体積比が30%超になるまで濃縮し、次に、活性炭0.1gを加えて15min保温した後、熱いうちにろ過した。ろ液を結晶化フラスコに投入して、65~75℃で30min保温し、その後、降温速度を10℃/hに制御して20℃に降温し、分離して乾燥させ、乾燥精製物354g、精製母液1115mL(含有量9.65%)を得た。降温結晶化前のろ液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は0.01%であった。得られたタウリンは、粒径として長さ2~4mm、幅0.4~0.6mm、厚さ0.2~0.4mmの柱状結晶であり、かさ密度が0.85g/mLであった。具体的には、粒子径に応じた篩分けを表3に示す。
【表3】
【0097】
さらに、タウリン粗生成物に精製母液をリサイクルしてタウリン結晶化を行うことで、精製母液のリサイクルの場合のタウリン結晶化効果に違いがあるか否かを検証する。
【0098】
具体的には、タウリン結晶化工程は、以下を含む。
【0099】
製造したタウリン粗生成物品(タウリン92.6質量%、水分6.9質量%)500gに、タウリン結晶化工程で得られた精製母液1100mlを加え、純水1900gを加えて、撹拌しながら溶解するまで昇温し、不溶性不純物を粗ろ過により除去した。次に、保温の条件下で溶液を10BV/hの速度で塩基性樹脂カラム125mlに通し、樹脂カラムの出口からの溶液を収集した。溶液のpH値が7.5であることが検出されたとき、得られた溶液を質量/体積比が30%超になるまで濃縮し、次に、活性炭0.1gを加えて15min保温した後、熱いうちにろ過した。ろ液を結晶化フラスコに投入して、65~75℃で30min保温した後、降温速度を10℃/hに制御して20℃に降温し、分離して乾燥させ、乾燥精製物440g、精製母液1350mL(含有量9.70%)を得た。降温結晶化前のろ液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は0.01%であった。得られたタウリンは、結晶粒径として長さ2~4mm、幅0.4~0.6mm、厚さ0.2~0.4mmの柱状結晶であり、かさ密度が0.86g/mLであった。具体的には、粒子径に応じた篩分けを表4に示す。
【表4】
【0100】
さらに、対照実験群を通じて、タウリン結晶化工程において、樹脂で不純物を除去した後、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウムを人為的に添加することがタウリン結晶化に与える影響を調べた結果、ヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウムは結晶化に大きな影響を与える。
【0101】
具体的には、タウリン結晶化工程は以下を含む。
【0102】
取得したタウリン粗生成物(タウリン92.5質量%、水分7質量%)500gに水2500gを加えて、撹拌しながら溶解するまで昇温し、不溶性不純物を粗ろ過により除去した。次に、保温の条件下で、溶液を10BV/hの速度で塩基性樹脂カラム125mlに通し、樹脂カラムの出口からの溶液を収集した。溶液のpH値が7.5であることが検出されたとき、得られた出口溶液を質量/体積比が30%超になるまで濃縮し、次に、活性炭0.1g及びヒドロキシエチルスルホン酸ナトリウム0.5gを加えて15min保温した後、熱いうちにろ過した。ろ液を結晶化フラスコに投入して、65~75℃で30min保温した後、降温速度を10℃/hに制御して20℃に降温し、分離して乾燥させ、乾燥精製物335g、精製母液1300mL(含有量9.75%)を得た。ここで、降温結晶化前のろ液中のヒドロキシエチルスルホン酸根の含有量は0.05%であった。得られたタウリンは、粒子長さ0.1~1mmの細長い針状結晶であり、かさ密度が0.71g/mLであった。具体的には、粒子径に応じた篩分けを表5に示す。
【表5】
【0103】
上記実施例から分かるように、本発明で得られたタウリンの結晶は、粒子が大きく、粒子径分布が均一な柱状結晶形である。具体的には、粒子の長さは2~4mm、幅は0.4~0.6mm、厚さは0.2~0.4mmである。粒子径に応じて篩分けた結果、40メッシュ以下のものの比率は35%超であり、80メッシュ以下のものの比率は90%超であり、120メッシュ以上の微細粉末は3%未満である。得られたタウリンは、かさ密度が0.8g/mL~0.9g/mLと高い。全体として流動性に優れ、ろ過及び乾燥の速度が速く、包装、輸送や使用などの性能に優れ、より使用されやすい。また、本発明の柱状タウリンの循環製造方法では、結晶化工程にいずれの補助物質も添加されていないので、タウリンには補助物質の残留が全くない。また、結晶液が精製されることにより、タウリンの純度がさらに確保され、タウリンの含有量が99.8質量%超である。また、本発明は、リサイクルを可能とし、生産コストを大幅に削減させ、工業化に有利である。さらに、本発明のタウリン結晶化方法は、分回式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。さらに、結晶化が常圧下で行われるので、条件の制御が容易であり、工業化量産により有利である。
【0104】
以上のように、本発明は、発明者らが長期間の実験要約に基づいて、タウリン結晶の粒子径分布が均一であり、かさ密度が高く、流動性に優れ、凝集がなく、ろ過及び乾燥の速度が速く、包装、輸送や使用などの性能に優れるタウリン柱状結晶の製造方法を提供する。また、タウリン母液のリサイクルも図られる。タウリンの結晶形が細長くて小さいので、塊になりやすいという従来のタウリンの問題が効果的に解決され、また、新しい有機試薬などの試薬の導入がないので、タウリンの純度が非常に高く、操作が簡単であり、工業化が図られる。
【0105】
以上の実施例は本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、具体的かつ詳細に説明されているが、発明の特許範囲を限定するものとして理解されるべきではない。なお、当業者であれば、本発明の構想を逸脱することなく、いくつかの変形や改良を行うことができ、これらは全て本発明の特許範囲に含まれるものとする。したがって、本発明の特許範囲は添付の特許請求の範囲に準じるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5