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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018481
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121849
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】伊縫 賢
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 啓伍
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA05
3C064AB01
3C064AC02
3C064BA19
3C064BB26
3C064BB47
3C064BB48
3C064BB71
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA23
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB05
3C064CB08
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB43
3C064CB52
3C064CB63
(57)【要約】
【課題】好適な緩衝緩和手段を提供する。
【解決手段】電動切断機10では、伝達ギヤ51が、ケース30に固定された支持軸52に上下方向に相対移動可能に支持されている。また、伝達ギヤ51の下側には、ラバーワッシャ84を有する衝撃緩和機構80が設けられている。そして、モータ40の過負荷状態時に所定値以上の下側へのスラスト力が伝達ギヤ51に作用して、伝達ギヤ51が下側へ移動(変位)すると、ラバーワッシャ84が圧縮変形する。すなわち、ラバーワッシャ84によって、伝達ギヤ51に加わる衝撃を吸収することができる。換言すると、伝達ギヤ51が変位することでラバーワッシャ84を圧縮変形させて、モータ40の伝達経路に生じる衝撃を緩和することができる。これにより、例えば、モータ40の全体を変位させてラバーワッシャ84を圧縮変形させる構成と比べて、ラバーワッシャ84を良好に圧縮変形させることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力によって作動する出力部と、
前記モータの駆動力によって回転すると共に、前記出力部に前記駆動力を伝達する伝達ギヤと、
前記伝達ギヤを収容するケースと、
前記ケースに固定され、前記伝達ギヤを回転可能に支持する支持軸と、
前記ケースに設けられた弾性体と、
を備え、
前記伝達ギヤは、前記支持軸に対して相対移動可能に構成されており、
前記伝達ギヤの前記支持軸に対する相対移動時に前記弾性体が弾性変形する作業機。
【請求項2】
モータ本体及び回転軸を含んで構成されたモータと、
前記モータの駆動力によって作動する出力部と、
前記回転軸の軸方向の一方側端部に設けられたモータギヤと、
前記モータギヤに噛合され、前記出力部に前記駆動力を伝達する伝達ギヤと、
前記伝達ギヤの前記軸方向の他方側に設けられた弾性体と、
を備え、
前記モータへの過負が大きくなった時に、前記伝達ギヤが前記軸方向の他方側へ移動して前記弾性体が弾性変形する作業機。
【請求項3】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸に連結され、前記モータの駆動力によって回転する伝達ギヤと、
前記伝達ギヤの軸方向の一方側に設けられ、前記伝達ギヤによって前記モータの駆動力が伝達されて作動する出力部と、
前記モータへの過負が大きくなった時に、前記軸方向の一方側に移動する前記回転軸によって、または、前記軸方向の他方側へ変位する前記伝達ギヤによって弾性変形する弾性体と、
を備えた作業機。
【請求項4】
前記弾性体は、前記モータへの負荷が大きくなった時に、前記軸方向の他方側へ変位する前記伝達ギヤによって弾性変形し、
前記伝達ギヤの軸方向の他方側には前記弾性体を含む支持機構が設けられ、
前記支持機構は、
前記伝達ギヤを回転可能に支持すると共に、前記軸方向の他方側へのスラスト力を受けるスラストベアリングと、
前記スラストベアリングに対して前記軸方向の他方側に設けられた前記弾性体と、
を有する請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記スラストベアリングは、
前記伝達ギヤの前記軸方向の他方側に隣接配置され、前記伝達ギヤの周方向に並んで配置された複数の転動体と、
前記転動体を前記軸方向の他方側から支持するリング状のベース部と、
を有している請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記モータは、固定子と、前記固定子に対して前記軸方向の両側へ突出する回転軸と、を含んで構成され、
前記支持機構が、前記回転軸の径方向外側で且つ前記固定子よりも前記軸方向の一方側に配置されている請求項4又は請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記回転軸を回転可能に支持する軸受が、前記固定子の前記軸方向の一方側に設けられており、
前記支持機構が、前記軸受よりも前記軸方向の一方側に配置されている請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記回転軸の軸方向の一方側端部には、前記伝達ギヤと噛合されたモータギヤが設けられており、
前記支持機構が、前記モータギヤの径方向外側に配置されている請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記伝達ギヤの回転を往復動に変換して前記出力部に伝達する往復動変換機構を有し、
前記出力部には、ブレードが取り付け可能に構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の作業機。
【請求項10】
前記伝達ギヤの回転を往復動に変換して前記出力部に伝達する往復動変換機構を有し、
前記出力部には、ブレードが取り付け可能に構成され、
前記ケースは、前記伝達ギヤを収容する収容部と、前記収容部を覆うカバーを有し、
前記往復動変換機構は、前記カバーに支持されている請求項1に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電動工具(作業機)では、モータの駆動軸がベアリングによって回転可能に支持されており、ベアリングは、駆動軸の軸方向に移動可能にハウジングに支持されている。また、ベアリングの外輪は、弾性体によって付勢されている。ブレードが切断加工中に被切断材に噛み込んで、駆動部がロックすると、モータが過負荷状態になる。モータの過負荷状態時には、駆動軸のピニオン及び駆動伝達ギヤに衝撃が加わり、駆動軸に生じるスラスト力が大きくなり、駆動軸が後方側へ移動すると共に、弾性体が圧縮変形する。これにより、弾性体によって、ピニオンや駆動伝達ギヤに加わる衝撃が吸収されて、モータの過負荷状態時における駆動伝達経路に生じる衝撃を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号2019/138726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記電動工具では、上述のように、モータの過負荷状態時に、モータの駆動軸の全体が軸方向に移動する。すなわち、モータの過負荷状態には、モータの全体、駆動軸、モータ基板、及びモータ基板に接続される配線等が、駆動軸の軸方向に移動する。このため、例えば、これら移動部材を良好に移動させるために、ハウジング内において、これらの移動部品と、他の部品との間のクリアランス等を適切に確保する必要がある。また、例えば、弾性体による衝撃緩和機能を発揮させるためには、モータの全体を移動させるための比較的大きなスラスト力を駆動軸に発生させる必要がある。したがって、電動工具では、モータの駆動伝達経路において、好適な衝撃緩和手段を有することが好ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、好適な緩衝緩和手段を有する作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータと、前記モータの駆動力によって作動する出力部と、前記モータの駆動力によって回転すると共に、前記出力部に前記駆動力を伝達する伝達ギヤと、前記伝達ギヤを収容するケースと、前記ケースに固定され、前記伝達ギヤを回転可能に支持する支持軸と、前記ケースに設けられた弾性体と、を備え、前記伝達ギヤは、前記支持軸に対して相対移動可能に構成されており、前記伝達ギヤの前記支持軸に対する相対移動時に前記弾性体が弾性変形する作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータ本体及び回転軸を含んで構成されたモータと、前記モータの駆動力によって作動する出力部と、前記回転軸の軸方向の一方側端部に設けられたモータギヤと、前記モータギヤに噛合され、前記出力部に前記駆動力を伝達する伝達ギヤと、前記伝達ギヤの前記軸方向の他方側に設けられた弾性体と、を備え、前記モータへの過負が大きくなった時に、前記伝達ギヤが前記軸方向の他方側へ移動して前記弾性体が弾性変形する作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、回転軸を有するモータと、前記回転軸に連結され、前記モータの駆動力によって回転する伝達ギヤと、前記伝達ギヤの軸方向の一方側に設けられ、前記伝達ギヤによって前記モータの駆動力が伝達されて作動する出力部と、前記モータへの過負が大きくなった時に、前記軸方向の一方側に移動する前記回転軸によって、または、前記軸方向の他方側へ変位する前記伝達ギヤによって弾性変形する弾性体と、を備えた作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記弾性体は、前記モータへの負荷が大きくなった時に、前記軸方向の他方側へ変位する前記伝達ギヤによって弾性変形し、前記伝達ギヤの軸方向の他方側には前記弾性体を含む支持機構が設けられ、前記支持機構は、前記伝達ギヤを回転可能に支持すると共に、前記軸方向の他方側へのスラスト力を受けるスラストベアリングと、前記スラストベアリングに対して前記軸方向の他方側に設けられた前記弾性体と、を有する作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記スラストベアリングは、前記伝達ギヤの前記軸方向の他方側に隣接配置され、前記伝達ギヤの周方向に並んで配置された複数の転動体と、前記転動体を前記軸方向の他方側から支持するリング状のベース部と、を有している作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記モータは、固定子と、前記固定子に対して前記軸方向の両側へ突出する回転軸と、を含んで構成され、前記支持機構が、前記回転軸の径方向外側で且つ前記固定子よりも前記軸方向の一方側に配置されている作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記回転軸を回転可能に支持する軸受が、前記固定子の前記軸方向の一方側に設けられており、前記支持機構が、前記軸受よりも前記軸方向の一方側に配置されている作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記回転軸の軸方向の一方側端部には、前記伝達ギヤと噛合されたモータギヤが設けられており、前記支持機構が、前記モータギヤの径方向外側に配置されている作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記伝達ギヤの回転を往復動に変換して前記出力部に伝達する往復動変換機構を有し、前記出力部には、ブレードが取り付け可能に構成されている作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記伝達ギヤの回転を往復動に変換して前記出力部に伝達する往復動変換機構を有し、前記出力部には、ブレードが取り付け可能に構成され、前記ケースは、前記伝達ギヤを収容する収容部と、前記収容部を覆うカバーを有し、前記往復動変換機構は、前記カバーに支持されている作業機である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、好適な緩衝緩和手段を有する作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電動切断機を示す右側から見た側面図である。
図2図1に示される電動切断機の内部を示す右側から見た側面図である。
図3図2に示されるケースの内部を示す右側から見た縦断面図である。
図4図3に示されるケースにおける後部の内部を示す前側から見た断面図(図3の4-4線断面図)である。
図5図2に示されるケース単体を示す左斜め前方から見た斜視図である。
図6図5に示されるケースの後部を示す平面図である。
図7図2に示されるギヤ機構部及び往復動機構部のケースへの収容状態を示す平面図である。
図8図2に示される振動低減機構部のケースへの収容状態を示す平面図である。
図9図3に示されるラバーワッシャの変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としての電動切断機10について説明する。なお、図面において適宜示される矢印UP、矢印FR、及び矢印RHは、それぞれ電動切断機10の上側、前側、及び右側を示している。そして、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、電動切断機10の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0019】
電動切断機10は、パイプ等の被切断材に切断加工を施す電動工具として構成されている。図1及び図2に示されるように、電動切断機10は、電動切断機10の外郭を構成するハウジング20と、ハウジング20内に収容固定されたケース30と、ケース30に組付けられたモータ40と、ケース30に収容された駆動機構50(図3参照)と、を含んで構成されている。また、電動切断機10は、モータ40の過負荷状態時に、駆動機構50のギヤ機構部50Aに生じる衝撃を緩和するための支持機構としての衝撃緩和機構80(図4参照)と、グリス漏れ防止機構90(図9(A)及び(B)参照)と、を有している。以下、電動切断機10の各構成について説明する。
【0020】
(ハウジング20について)
ハウジング20は、全体として前後方向に延在された略中空円柱状に形成されている。ハウジング20は、左右方向に2分割されたハウジング部材によって構成されており、これらのハウジング部材が互いに組付けられて、ハウジング20が形成されている。ハウジング20は、ハウジング20の前部を構成するフロントハウジング部20Aと、ハウジング20の後端部を構成するハンドルハウジング部20Bと、を含んで構成されている。フロントハウジング部20Aは、前後方向に延在されており、フロントハウジング部20Aの後端部が下側へ屈曲している。ハンドルハウジング部20Bは、上下方向に延在されており、ハンドルハウジング部20Bの上下方向両端部が、前側へ屈曲されて、フロントハウジング部20Aの後端部に接続されている。切断加工時には、作業者がハンドルハウジング部20Bを把持して、切断加工を行う。
【0021】
ハンドルハウジング部20Bの上端側部分には、トリガ22が設けられている。トリガ22は、ハンドルハウジング部20Bから前側へ突出すると共に、後側へ引き操作可能に構成されている。ハンドルハウジング部20Bには、トリガ22の後側において、スイッチ機構部24が設けられている。スイッチ機構部24は、トリガ22によって操作されるスイッチ(図示省略)を有しており、当該スイッチは、コントローラ26に電気的に接続されている。コントローラ26は、フロントハウジング部20Aの後端側の下端部に設けられている。そして、トリガ22の操作に応じた出力信号が、スイッチからコントローラ26へ出力される。
【0022】
ハンドルハウジング部20Bの下端部には、バッテリ28が後側から着脱可能に装着されている。バッテリ28は、コントローラ26及び後述するモータ40に電気的に接続されており、バッテリ28からコントローラ26及びモータ40に電力が供給される。
【0023】
(ケース30について)
図2図6に示されるように、ケース30は、金属製であり、鋳造にて成形されている。ケース30は、全体として、前後方向に延在され、上側へ開放された略矩形箱状に形成されている。ケース30の開口部は、後述するケースカバー32によって閉塞されている。ケース30は、フロントハウジング部20Aの上部内に収容されており、ハウジング20を構成するハウジング部材によって左右方向外側から挟み込まれて、ハウジング20に固定されている。
【0024】
ケース30の後部における底部には、後述する伝達ギヤ51等を収容するための収容凹部30A(図4参照)が形成されている。収容凹部30Aは、上下方向を軸方向とする2段の段付き略円筒状に形成されている。具体的には、収容凹部30Aは、収容凹部30Aの上部を構成する伝達ギヤ収容部30A1と、収容凹部30Aの上下方向中間部を構成する中間収容部30A2と、収容凹部30Aの下部を構成するロア収容部30A3と、を含んで構成されている。中間収容部30A2の直径がロア収容部30A3の直径よりも大きく設定されており、伝達ギヤ収容部30A1の直径が中間収容部30A2の直径よりも大きく設定されている。伝達ギヤ収容部30A1は、ケース30の底壁よりも上側へ突出している。また、伝達ギヤ収容部30A1の左右方向両側部分が、ケース30の側壁よりも左右方向外側へ張り出して、ケース30の外郭を構成している。中間収容部30A2の下面の外周部には、後述する転がりボール83を収容するボール溝30B(図3及び図4参照)が形成されている。ボール溝30Bは、中間収容部30A2の周方向に沿って延在されると共に、中間収容部30A2の周方向全周に亘って形成されている。
【0025】
図9(A)及び(B)にも示されるように、ケース30の底部には、収容凹部30Aの後側で且つ左右方向中央部において、後述するモータ40における回転軸41のピニオンギヤ44を収容するためのモータギヤ収容部30Cが形成されている。モータギヤ収容部30Cは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、ケース30の内部と外部とがモータギヤ収容部30Cによって連通されている。また、平面視で、モータギヤ収容部30Cは、収容凹部30Aの後端部と重なるように配置されており、モータギヤ収容部30Cの上部と伝達ギヤ収容部30A1とが連通している。すなわち、伝達ギヤ収容部30A1の側面には、モータギヤ収容部30Cの上部を前側へ開口させる連通部としての開口部30Dが形成されており、伝達ギヤ収容部30A1の底面の一部が、モータギヤ収容部30Cの下部における前端部によって上側へ開放されている。
【0026】
ケース30の底部には、モータギヤ収容部30Cの下側において、後述するモータ軸受45を固定する軸受固定部30Eが形成されている。軸受固定部30Eは、下側へ開放された凹状に形成されおり、軸受固定部30Eとモータギヤ収容部30Cとが連通している。
【0027】
図5及び図6に示されるように、ケース30における後部の上部には、左右方向外側に張出された左右一対の張出部30Fが形成されている。張出部30Fは、収容凹部30Aに対して前後方向両側に突出しており、収容凹部30Aの伝達ギヤ収容部30A1の上端部が、張出部30Fの底壁に接続されている。張出部30Fの底壁の前後方向外側端部には、固定ボス30Gがそれぞれ形成されている。固定ボス30Gは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。固定ボス30Gの内周部には、雌ねじが形成されている。一対の張出部30Fの底壁には、前後一対の固定ボス30Gの間において、後述するガイドメタル60を設置するための前後一対の設置部30Hがそれぞれ形成されている。
【0028】
また、ケース30の開口部には、複数(本実施の形態では、6箇所)のカバー固定ボス30Jが形成されている。カバー固定ボス30Jは、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、ケース30の左右の側壁に接続されている。カバー固定ボス30Jの内周部には、雌ねじが形成されている。ケース30の後端部には、後述するモータ40を保持するためのモータ保持部30Kが形成されている。モータ保持部30Kは、ケース30から下側へ突出し且つモータギヤ収容部30Cと同軸上に配置された略円筒状に形成されており、モータ保持部30Kの前端部及び後端部が切り欠かれて、モータ保持部30Kが前後方向外側へ開放されている。ケース30の前壁には、後述するプランジャ62を挿通させるための挿通孔30Lが前後方向に貫通形成されている。
【0029】
(ケースカバー32について)
図3及び図4に示されるように、ケースカバー32は、金属の板材で構成されている。ケースカバー32は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略矩形平板状に形成されている。ケースカバー32の外形は、平面視で、ケース30の端部の外形と略一致するように形成されている。ケースカバー32の外周部には、ケース30のカバー固定ボス30Jに対応する位置において、図示しない固定孔が貫通形成されている。そして、固定ボルトBL1が、固定孔内に上側から挿入され、カバー固定ボス30Jに螺合されて、ケースカバー32がケース30に固定されている。これにより、ケース30の上側開口部が、ケースカバー32によって閉塞されている。
【0030】
(モータ40について)
図3に示されるように、モータ40は、ブラシレスモータとして構成されて、ケース30の後端部の下側に配置されている。モータ40は、回転軸41を有している。回転軸41は、上下方向に延在されており、回転軸41の上端部には、モータギヤとしてのピニオンギヤ44が一体に設けられている。ピニオンギヤ44の外周部には、ハスバギヤによって構成された歯部が形成されている。回転軸41の上端側部分は、ケース30の軸受固定部30Eに固定された軸受としてのモータ軸受45によって回転可能に支持されており、ピニオンギヤ44がモータギヤ収容部30C内に配置されている。回転軸41の下端部は、モータ軸受46に回転可能に支持されており、モータ軸受46が、ケース30に組付けられた軸受ホルダ47に固定されている。
【0031】
モータ40のロータ42及びステータ43(固定子)は、モータ40のモータ本体40Aとして構成され、モータ軸受45及びモータ軸受46の間に配置されると共に、モータ保持部30Kの内側に配置されている。また、回転軸41の上端側部分には、ファン48が一体回転可能に設けられており、ファン48は、モータ軸受45の下側に近接して配置されている。ファン48は、遠心ファンとして構成されている。そして、電動切断機10の作動時には、モータ40の回転軸41が、上側から見て、時計回りに回転するようになっている。ステータ43には図示しないインシュレータが設けられている。ステータ43にはセンサ基板26Aが取り付けられている。センサ基板26Aは、回転軸41(ロータ42)の回転位置を検出するための磁気センサ(不図示)が搭載されており、磁気センサは回転軸41またはロータ42に設けられた磁性体の磁気を検知する。本実施の形態の場合、磁気センサはロータ42に設けられた永久磁石の磁気を検知する。センサ基板26Aはコントローラ26と接続されており、コントローラ26はセンサ基板26Aから送られる情報を基に、モータ40の回転速度を制御するように構成されている。
【0032】
(駆動機構50について)
図3図4図7、及び図8に示されるように、駆動機構50は、ケース30の内部に収容されている。駆動機構50は、ギヤ機構部50Aと、往復動機構部50Bと、振動低減機構部50Cと、を含んで構成されている。
【0033】
(ギヤ機構部50Aについて)
図3図4、及び図7に示されるように、ギヤ機構部50Aは、伝達ギヤ51を主要部として構成され、伝達ギヤ51は、上下方向を厚み方向とする略円板状に形成されている。伝達ギヤ51は、ケース30の伝達ギヤ収容部30A1内に収容されている。伝達ギヤ51の中央部には、支持孔51Aが貫通形成されている。支持孔51Aには、上下方向を軸方向とする支持軸52の上端部が挿入されており、支持孔51Aが、ニードルベアリング53を介して支持軸52に回転可能に支持されている。詳しくは、伝達ギヤ51が、支持軸52の軸方向に相対移動可能に且つ支持軸52の軸回りに回転可能に、支持軸52に支持されている。
【0034】
支持軸52は、ブッシュ54を介して、ケース30に固定されている。ブッシュ54は、金属製とされており、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、収容凹部30Aの中間収容部30A2及びロア収容部30A3の中心部に埋設されている。そして、支持軸52の下部が、ブッシュ54に上側から圧入されて、ブッシュ54に固定されている。また、伝達ギヤ51の下側には、衝撃緩和機構80を構成するスラストベアリング81の転がりボール83が設けられており、転がりボール83によって、伝達ギヤ51が下側から転がり支持されている。衝撃緩和機構80については、後述する。転がりボール83は本発明における転動体に相当する。
【0035】
伝達ギヤ51の外周部には、ハスバギヤによって構成された歯部51Bが形成されており、歯部51Bが、モータ40における回転軸41のピニオンギヤ44に噛合している。これにより、モータ40の回転時には、伝達ギヤ51が回転すると共に、ハスバギヤにより構成されたピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51の噛合によって、上下方向のスラスト力がピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51に発生する。具体的には、モータ40の回転時には、上側へのスラスト力が回転軸41に作用し、下側へのスラスト力が伝達ギヤ51に作用するように、ピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51におけるハスバギヤの捩じれ角の方向が設定されている。このように構成することで、モータ40の駆動時にピニオンギヤ44へ下方向のスラスト力が発生しにくくなる。モータ40は、ケース30に対して下側から取り付けられるものであるが、ピニオンギヤ44へ下方向のスラスト力が発生する場合、ケース30から回転軸41が離間するような力が働き、回転軸41がケース30から分離(分解)してしまう恐れがあるため、モータ40を(特に下方向へ移動しないように)強固にケース30に対して固定する必要がある。このため、本実施の形態では、モータ40(回転軸41)の固定方法をより柔軟に選択できるようになる。
【0036】
伝達ギヤ51には、クランクシャフト55が一体回転可能に設けられている。クランクシャフト55は、側面視で略クランク状に形成されている。具体的には、クランクシャフト55は、上下方向に延在された第1シャフト部55Aと、第1シャフト部55Aの上端部から前側へ延出されたシャフト連結部55Bと、シャフト連結部55Bの先端部から上側へ延出された第2シャフト部55Cと、を含んで構成されている。第1シャフト部55Aは、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成され、伝達ギヤ51の支持軸52に対して偏心した位置に配置されると共に、伝達ギヤ51から上側へ突出している。第1シャフト部55Aには、円筒状のスリーブ57が、ニードルベアリング56を介して回転可能に設けられており、第1シャフト部55Aの上端部が、ニードルベアリング56及びスリーブ57よりも上側へ突出している。第2シャフト部55Cは、第1シャフト部55Aと同様に、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成され、支持軸52を挟んで第1シャフト部55Aとは反対の位置で且つ支持軸52に対して偏心した位置に配置されている。具体的には、第1シャフト部55A及び第2シャフト部55Cは、伝達ギヤ51の周方向に180離間して配置されている。第2シャフト部55Cには、スリーブ59がニードルベアリング58を介して回転可能に連結されている。
【0037】
(往復動機構部50Bについて)
往復動機構部50Bは、ギヤ機構部50Aの上側において、ケース30に収容されている。往復動機構部50Bは、左右一対のガイドメタル60と、前後一対の位置決め部材61と、出力部としてのプランジャ62と、を含んで構成されている。
【0038】
(ガイドメタル60について)
左右一対のガイドメタル60は、焼結材で構成されており、ガイドメタル60には、潤滑剤が含侵されている。ガイドメタル60は、前後方向を長手方向とし且つ上下方向を厚み方向とする略矩形板状に形成されると共に、前後方向から見て、左右方向内側へ開放された略U字形状に形成されている。すなわち、ガイドメタル60の上下方向中間部には、スリット60Aが形成されており、スリット60Aは、左右方向内側へ開放された溝状に形成されると共に、前後方向に貫通している。ガイドメタル60はプランジャ62を往復動可能にガイドするガイド部である。ガイドメタル60はすべり軸受である。
【0039】
ガイドメタル60は、ケース30の張出部30Fに収容されると共に、ガイドメタル60の下面が、張出部30Fの設置部30Hに設置されている。ガイドメタル60は、前後一対の固定ボス30Gの間に配置されて、固定ボス30Gによってガイドメタル60の前後方向の位置が決定されている。
【0040】
ガイドメタル60の前後方向中間部における左右方向内側部には、逃げ凹部60B(図7参照)が形成されている。逃げ凹部60Bは、平面視で、伝達ギヤ51の回転軸線を中心とする略円弧形凹状に形成されて、左右方向内側へ開放されると共に、上下方向に貫通している。また、ガイドメタル60における逃げ凹部60Bの縁部は、伝達ギヤ51の左右方向両側の外周部の上側に近接して配置されている。これにより、伝達ギヤ51の上側への移動が、ガイドメタル60によって制限されている。
【0041】
図7に示されるように、前後一対の位置決め部材61は、前後対称に構成されている。このため、以下、後側の位置決め部材61を用いて、位置決め部材61の構成について説明する。位置決め部材61は、上下方向を板厚方向とし且つ左右方向に延在された略長尺板状に形成されている。位置決め部材61の長手方向両端部には、後側へ延出された固定部61Aが形成されている。そして、固定部61Aが、固定ボス30Gの上側に配置され、固定ボス30Gに螺合された固定ボルトBL2によってケース30に固定されている。位置決め部材61の固定状態では、位置決め部材61がガイドメタル60の上側に隣接配置されて、位置決め部材61によってガイドメタル60が固定されている。
【0042】
左右の固定部61Aには、位置決め部61Bがそれぞれ形成されている。位置決め部61Bは、固定部61Aから左右方向内側へ延出されると共に、下側へ屈曲されている。位置決め部61Bの先端部(下端部)には、押圧部61Cが形成されており、押圧部61Cは、左右方向外側へ凸となる略半円状に形成されている。また、位置決め部61Bは、左右方向に弾性変形可能に構成されている。そして、押圧部61Cがガイドメタル60の後端部を左右方向外側へ押付けて、ガイドメタル60が、ケース30の内周面に当接している。これにより、左右方向におけるガイドメタル60の位置が決定されている。また、押圧部61Cのガイドメタル60の押圧状態では、位置決め部61Bが左右方向内側へ弾性変形している。これにより、押圧部61Cのガイドメタル60への押圧状態が維持されている。
【0043】
(プランジャ62について)
図3図4、及び図7に示されるように、プランジャ62は、前後方向に延在された長尺状に形成されている。プランジャ62は、プランジャ62の後部を構成するコネクタ63と、プランジャ62の前部を構成する出力軸64と、を含んで構成されている。コネクタ63は、上下方向を板厚方向とする略T字形板状に形成されている。具体的には、コネクタ63は、左右方向に延在されたリヤコネクタ部63Aと、リヤコネクタ部63Aの左右方向中間部から前側へ延出されたフロントコネクタ部63Bと、を含んで構成されている。そして、リヤコネクタ部63Aの左右方向両端部が、ガイドメタル60のスリット60A内に前後方向に移動可能に挿入されて、左右一対のガイドメタル60によって、コネクタ63が前後方向に移動可能に支持されている。
【0044】
リヤコネクタ部63Aには、連結孔63Cが貫通形成されており、連結孔63Cは、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されている。そして、伝達ギヤ51のクランクシャフト55の第1シャフト部55A、ニードルベアリング56、及びスリーブ57が、左右方向に移動可能に且つ前後方向に係合可能に、連結孔63C内に挿入されている。これにより、伝達ギヤ51の回転力が、スリーブ57を含む第1シャフト部55Aによって変換されて、コネクタ63(プランジャ62)が前後方向に往復移動する構成になっている。なお、第1シャフト部55Aは、左右一対のガイドメタル60の間に配置されており、伝達ギヤ51の回転時には、ガイドメタル60の逃げ凹部60Bによって、スリーブ57とガイドメタル60との干渉を抑制する構成になっている。また、フロントコネクタ部63Bには、前端部を除いて、肉逃げ孔63Dが貫通形成されており、肉逃げ孔63Dは、前後方向に延在された略矩形状に形成されている。コネクタ63(リヤコネクタ部63A、連結孔63C)及びクランクシャフト55は、それぞれ往復動変換機構の一部である。
【0045】
出力軸64は、前側へ開放された略有底円筒状に形成されている。そして、出力軸64の後端部が、コネクタ63の前端部に前後方向に係合すると共に、プランジャスリーブ65によって、コネクタ63の前端部に相対移動不能に連結されている。出力軸64の前端側部分は、ケース30の前端部に設けられた上下一対のローラ66の間に配置されて、ローラ66によって転がり支持されている。
【0046】
出力軸64の前端部には、ブレード装着機構67が設けられている。ブレード装着機構67には、先端工具としてのブレード68(図3参照)が装着されている。ブレード68は、左右方向を板厚方向とし且つ前後方向に延在された略長尺板状に形成されており、ブレード68の後端部が、ブレード装着機構67に装着されている。ブレード68の下端部には、刃部68Aが形成されており、刃部68Aは、ブレード68の長手方向全体に亘って形成されている。これにより、駆動機構50の作動時には、ブレード68が出力軸64と共に前後方向に往復移動する構成になっている。
【0047】
(振動低減機構部50Cについて)
図3図4、及び図8に示されるように、振動低減機構部50Cは、往復動機構部50Bの上側において、ケース30の後部に収容されている。振動低減機構部50Cは、左右一対のベース部材70と、左右一対のガイド部材71と、カウンタウエイト73と、を含んで構成されている。
【0048】
ベース部材70は、振動低減機構部50Cの下端部に配置されて、振動低減機構部50Cの基台として機能している。ベース部材70は、上下方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。ベース部材70は、位置決め部材61の上側に載置されている。ベース部材70の前端部及び後端部には、前後方向外側へ開放された篏合溝70Aが形成されており、固定ボルトBL2の頭部が篏合溝70A内に嵌め込まれている。
【0049】
左右一対のガイド部材71は、前後方向に延在される共に、前後方向から見て略L字形板状に形成されている。具体的には、ガイド部材71は、ガイド部材71の下端部を構成する下壁71Aと、下壁71Aの左右方向外側端部から上側へ延出された側壁71Bと、を含んで構成されている。そして、ガイド部材71の下壁71Aがベース部材70の上側に配置されている。また、ガイド部材71の左右方向外側には、板状のダンパ72が設けられており、ダンパ72によって、ガイド部材71が弾性支持されている。なお、ダンパ72は、ベース部材70及びケース30によって保持されている。ダンパ72は弾性体であり、本実施の形態ではゴム製である。ダンパ72は他の材料からなる弾性体であってもよい。ダンパ72はカウンタウエイト73が左右方向に動作した際の動きを緩衝する。これによって左右方向の振動を低減し、騒音も抑制する。
【0050】
カウンタウエイト73は、上下方向を板厚方向とし前後方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。カウンタウエイト73の前後方向中間部には、左右方向外側へ突出した左右一対のウエイト鍔部73Aが形成されている。そして、ウエイト鍔部73Aが、ガイド部材71の下壁71Aの上側に配置されている。
【0051】
ウエイト鍔部73Aの側面には、前後一対の第1ボール溝部73Bがそれぞれ形成されている。第1ボール溝部73Bは、前後方向に延在されると共に、前後方向から見た断面視で、左右方向外側及び下側へ開放されている。そして、第1ボール溝部73Bとガイド部材71との間に配置された第1ボール74によって、カウンタウエイト73が転がり支持されている。これにより、カウンタウエイト73が前後方向にスライド可能に構成されている。
【0052】
また、カウンタウエイト73の上面には、左右方向中央部において、前後一対の第2ボール溝部73Cが形成されている。第2ボール溝部73Cは、前後方向に延在されており、前後方向から見た断面視で、上側へ開放された略半円状に形成されている。そして、第2ボール溝部73C内には、第2ボール75が配置されており、第2ボール75が、ケースカバー32の下面及び第2ボール溝部73Cの内周面に当接している。これにより、カウンタウエイト73が、第2ボール75によって転がり支持されている。
【0053】
カウンタウエイト73の前後方向中間部には、ウエイト連結孔73Dが貫通形成されている。ウエイト連結孔73Dは、左右方向を長手方向とする長孔状に形成されている。そして、クランクシャフト55の第2シャフト部55C(スリーブ59)の上端部が、左右方向に相対移動可能に且つ前後方向に係合可能に、ウエイト連結孔73D内に挿入されている。これにより、伝達ギヤ51の回転時には、カウンタウエイト73が前後方向に往復移動するようになっている。具体的には、伝達ギヤ51が回転することで、カウンタウエイト73が、プランジャ62と逆位相で前後方向に往復移動するようになっている。カウンタウエイト73は第2ボール75を介してケースカバー32に支持されている。カウンタウエイト73にクランクシャフト55が接続されている(当接している)ため、クランクシャフト55(往復動変換機構)は間接的にケースカバー32に支持されている。
【0054】
(衝撃緩和機構80について)
図3及び図4に示されるように、衝撃緩和機構80は、スラストベアリング81と、スラストベアリング81を支持する弾性体としてのラバーワッシャ84と、を含んで構成されている。
【0055】
スラストベアリング81は、収容凹部30Aのボール溝30Bに収容され、伝達ギヤ51の下側に配置されて、伝達ギヤ51に作用する下側へのスラスト力を受ける受け部材として構成されている。スラストベアリング81は、ベース部としてのリングベース82と、複数の転がりボール83と、を含んで構成されている。
【0056】
リングベース82は、金属製とされると共に、略円環状に形成されており、その長手方向から見た断面で、上側へ開放された略U字形板状に形成されている。リングベース82は、収容凹部30Aのボール溝30Bに収容されて、後述するラバーワッシャ84によって下側から支持されている。複数の転がりボール83は、リングベース82の下壁の上側に載置されて、ボール溝30Bの周方向に並んで配置されている。また、転がりボール83は、リングベース82の内周壁と外周壁との間に配置されると共に、伝達ギヤ51の下側に隣接して配置されている。これにより、衝撃緩和機構80では、スラストベアリング81の転がりボール83によって、伝達ギヤ51を下側から直接受ける構造を成している。なお、転がりボール83の上端部は、伝達ギヤ収容部30A1の底面よりも上側へ突出しており、伝達ギヤ51と伝達ギヤ収容部30A1の底面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0057】
ラバーワッシャ84は、ゴム等の弾性材によって構成されると共に、略円環状に形成されており、その長手方向から見た断面で、略矩形状に形成されている。ラバーワッシャ84は、ボール溝30Bの底部に収容されており、スラストベアリング81を下側から支持している。
【0058】
衝撃緩和機構80は、伝達ギヤ51の下側で且つモータ40の回転軸41を支持する上側のモータ軸受45の上側に配置されると共に、回転軸41の径方向外側に配置されている。具体的には、衝撃緩和機構80が、ピニオンギヤ44の径方向外側に配置されている。また、衝撃緩和機構80の一部は、回転軸41のピニオンギヤ44と支持軸52との間に配置されると共に、上下方向から見て、モータ軸受45の一部と重なっている。
【0059】
そして、詳細については後述するが、ブレード68の後側への移動時にブレード68が被切断材に噛み込まれたときには、モータ40が過負荷状態となると共に、所定値以上の下側へのスラスト力が伝達ギヤ51に作用して、ラバーワッシャ84が上下方向に圧縮変形するようになっている。すなわち、モータ40が過負荷状態時には、ラバーワッシャ84が上下方向に圧縮変形するように、ラバーワッシャ84の硬度や厚み寸法等が設定されている。
【0060】
(作用効果)
次に、本実施の形態の電動切断機10の作用及び効果について説明する。
【0061】
上記のように構成された電動切断機10の切断加工では、作業者がトリガ22を引き操作することで、コントローラ26によってモータ40が駆動する。これにより、モータ40のピニオンギヤ44に噛合された伝達ギヤ51が回転する。その結果、クランクシャフト55が伝達ギヤ51と共に回転し、クランクシャフト55の第1シャフト部55Aに連結されたプランジャ62が、ブレード68と共に前後方向に往復移動する。よって、被切断材に対する切断加工が施される。
【0062】
また、クランクシャフト55の回転時には、クランクシャフト55の第2シャフト部55Cに連結されたカウンタウエイト73が、前後方向に往復移動する。第1シャフト部55A及び第2シャフト部55Cは、伝達ギヤ51の周方向に180度離間しているため、カウンタウエイト73の前後方向の往復移動が、プランジャ62及びブレード68の前後方向の往復移動に対して逆位相となる。これにより、振動低減機構部50Cが動吸振器として作用して、プランジャ62及びブレード68の往復移動により生じる振動が、振動低減機構部50Cによって低減される。
【0063】
(衝撃緩和機構80の作用効果について)
ブレード68の後方移動時にブレード68が被切断材に噛み込んだときには、ブレード68の後方移動が停止されると共に、伝達ギヤ51及びピニオンギヤ44の回転も停止される。一方、モータ40には、電力が供給されて、モータ40の駆動が継続されているため、モータ40の回転軸41は回転しようとする。すなわち、モータ40が過負荷状態となる。モータ40の過負荷状態時には、伝達ギヤ51及びピニオンギヤ44が急激に停止するため、伝達ギヤ51やピニオンギヤ44に衝撃が加わり、ピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51に過大なスラスト力が発生する。具体的には、ピニオンギヤ44には上側への、伝達ギヤ51には下側への過大なスラスト力が作用する。
【0064】
ここで、伝達ギヤ51は、ケース30に固定された支持軸52に上下方向(軸方向)に相対移動可能に支持されている。また、伝達ギヤ51の下側には、ラバーワッシャ84を有する衝撃緩和機構80が設けられている。そして、モータ40の過負荷状態時に所定値以上の下側へのスラスト力が伝達ギヤ51に作用して、伝達ギヤ51が下側へ移動(変位)すると、ラバーワッシャ84が圧縮変形する。すなわち、ラバーワッシャ84によって、伝達ギヤ51に加わる衝撃を吸収することができる。換言すると、伝達ギヤ51が変位することでラバーワッシャ84を圧縮変形させて、モータ40の動力が伝達する伝達経路に生じる衝撃を緩和し、例えば伝達機構の少なくとも一部が破損、変形することを抑制することができる。また、この構成によれば、例えば、モータ40の全体を変位させてラバーワッシャ84を圧縮変形させる構成と比べて、ラバーワッシャ84を良好に圧縮変形させることができる。以上により、本実施形態の電動切断機10によれば、好適な衝撃緩和手段を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態では、伝達ギヤ51の下側への移動によって、ラバーワッシャ84が圧縮変形する。このため、伝達ギヤ51の周囲において、伝達ギヤ51の移動を許容できるスペースを確保すれば足りる。これにより、例えば、モータ40の全体を変位させてラバーワッシャ84を圧縮変形させる構成と比べて、電動切断機10の全体の小型化に寄与することができる。
【0066】
また、衝撃緩和機構80は、伝達ギヤ51に作用する下側へのスラスト力を受けるスラストベアリング81と、スラストベアリング81の下側に設けられたラバーワッシャ84と、を含んで構成されている。このため、モータ40の過負荷時に生じる伝達ギヤ51への衝撃を、簡易な構成で緩和することができる。
【0067】
また、スラストベアリング81は、伝達ギヤ51の下側に隣接配置された複数の転がりボール83と、転がりボール83を下側から支持するリングベース82と、を含んで構成されている。このため、転がりボール83によって、伝達ギヤ51を下側から直接的に転がり支持することができる。したがって、スラストベアリング81における部品点数の削減に寄与することができると共に、スラストベアリング81のコストダウンに寄与することができる。なお、転がりボール83は球状となっているが、柱状の転動体を用いてもよい。
【0068】
また、衝撃緩和機構80が、モータ40の回転軸41の径方向外側でモータ40のステータ43の上側に配置されている。より詳しくは、衝撃緩和機構80が、上側のモータ軸受45の上側に配置されている。このため、上下方向における伝達ギヤ51とモータ軸受45との間の領域を有効に活用して、当該領域に衝撃緩和機構80を配置することができる。特に、モータ40の駆動力によって作動するプランジャ62を伝達ギヤ51の上側に配置した電動切断機10おいて、有効な配置構造を実現することができる。
【0069】
また、衝撃緩和機構80が、ピニオンギヤ44の径方向外側に位置している。すなわち、伝達ギヤ51に噛合されるピニオンギヤ44と衝撃緩和機構80とを、上下方向において、重なる位置に配置することができる。したがって、上下方向における電動切断機10の小型化に寄与することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、ピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51がハスバ歯車で構成されているが、ピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51をハスバ歯車以外の歯車(平歯車や傘歯車など)で構成してもよい。例えば、ピニオンギヤ44及び伝達ギヤ51を平歯車として構成した場合でも、ブレード68が被切断材に噛み込んだときには、ブレード68の後方移動が停止されると共に、伝達ギヤ51及びピニオンギヤ44の回転も停止される。このときには、伝達ギヤ51が支持軸52に対して傾いて下側へ変位する。すなわち、下側への荷重が伝達ギヤ51からラバーワッシャ84に作用して、ラバーワッシャ84が圧縮変形する。したがって、この場合でも。ラバーワッシャ84によって、伝達ギヤ51に加わる衝撃を吸収することができる。
【0071】
なお、本実施の形態は種々の変更が可能である。例えば、モータ40の過負荷状態時には、伝達ギヤ51の下方に配置された弾性体(ラバーワッシャ84)によって衝撃を緩衝するように構成したが、弾性体の配置はこの場所に限られない。
【0072】
図9は弾性体(ラバーワッシャ)を別の箇所にも設けた変形例である。以下では変形例において変更された点を説明する。
【0073】
図9に示す構成においては、モータ軸受45の上にはラバーワッシャ84Aが設けられる。また、ケース30には上下方向に貫通した軸受ホルダ47Bが組付けられている。軸受ホルダ47Bの上側開口は、回転軸41が若干の隙間をもって挿通される程度の大きさである。また、軸受ホルダ47Bの下側開口は、モータ軸受46の外径と略等しくなっている。モータ軸受46は下側から軸受ホルダ47Bに挿入され、止め輪41Bによって抜け止めされる。そして、モータ軸受46の上側にはラバーワッシャ84Bが配置される。ラバーワッシャ84Bは、モータ軸受46と軸受ホルダ47Bとで挟まれている。
【0074】
図9に示す構成においては、モータ40の過負荷状態時に伝達ギヤ51及びピニオンギヤ44の噛み合いの作用によって回転軸41が上方に移動し、その際に軸受を介してラバーワッシャ(84A、84B)が圧縮されるように構成される。この構成でも、モータ40の過負荷状態時において、ピニオンギヤ44に対して回転軸41がケース30から分離する方向とは逆のスラスト力が発生するように構成したことを利用してモータ40の伝達経路間に発生する衝撃を緩衝できるという本発明を実施できる。
【0075】
弾性体はモータ40の過負荷状態時に圧縮されるものを用いたが、例えばコイルスプリングなどの過負荷状態時に伸長する弾性体を用いてもよい。また、過負荷状態時に圧縮されるものと伸長されるものの両方を用いてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 電動切断機(作業機)
30 ケース
40 モータ
40A モータ本体
41 回転軸
44 ピニオンギヤ(モータギヤ)
45 モータ軸受(軸受)
51 伝達ギヤ
52 支持軸
62 プランジャ(出力部)
80 衝撃緩和機構(支持機構)
81 スラストベアリング
82 リングベース(ベース部)
83 転がりボール(転動体)
84 ラバーワッシャ(弾性体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9