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特開2024-18493火炎監視装置、及び、火炎監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018493
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】火炎監視装置、及び、火炎監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F23N5/24 106A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121866
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 武志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003SA01
3K003SB09
3K003SC01
(57)【要約】
【課題】フレーム電圧の監視及びフレーム電流の監視では検出できない断火の予兆を検出する。
【解決手段】火炎監視装置20は、メインバーナ42の火炎による火炎検出器45での放電の頻度を示すフレームレベルFLを順次取得する情報取得部21Aと、情報取得部21Aにより順次取得されたフレームレベルFLを監視するフレームレベル監視部21Bと、を備える。フレームレベル監視部21Bは、フレームレベルFLが所定の閾値FLth未満となっている状態が予め定められた所定期間Tth以上フレームレスポンス期間Tfr未満の長さ継続する特定期間Tの発生を検出することにより火炎の断火の予兆を検出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの火炎による火炎検出器での放電の頻度を示すフレームレベルを順次取得する情報取得部と、
前記情報取得部により順次取得された前記フレームレベルを監視するフレームレベル監視部と、を備え、
前記フレームレベル監視部は、前記フレームレベルが所定の閾値未満となっている状態が予め定められた第1期間以上第2期間未満の長さ継続する特定期間の発生を検出することにより前記火炎の断火の予兆を検出し、
前記第2期間は、前記火炎の断火が生じたと仮定したときに当該断火が生じてから前記バーナを制御する燃焼システムで前記断火が検出されるまでの期間以下の長さの期間である、
火炎監視装置。
【請求項2】
前記フレームレベル監視部は、前記特定期間の発生を検出したときに前記予兆を検出した旨を報知する処理を行う、
請求項1に記載の火炎監視装置。
【請求項3】
前記フレームレベル監視部は、一定期間当たりの前記特定期間の発生回数が、2回以上の所定回数を超えたときに前記予兆を検出した旨を報知する処理を行う、
請求項2に記載の火炎監視装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記バーナに供給された燃料流量及び空気流量を順次取得し、
前記フレームレベル監視部は、前記予兆を検出した旨を、前記情報取得部により順次取得された前記燃料流量及び前記空気流量のうち前記特定期間と当該特定期間から遡った一定期間との少なくとも一方での前記燃料流量と前記空気流量との関係を表す流量情報とともに報知する、
請求項2又は3に記載の火炎監視装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記燃焼システムにおける、前記フレームレベルを少なくとも含む燃焼情報を順次取得し、
前記フレームレベル監視部は、
前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち実際に起こった断火から所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動と断火が生じていないときの前記所定の時間分の燃焼情報の変動とを教師データとして、断火の発生の有無と燃焼情報との関係を学習し、
前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち前記所定の時間分の燃焼情報の変動と、学習した前記関係とに基づいて、断火が発生する可能性を導出し、導出した前記可能性に基づく処理を実行する、
請求項1に記載の火炎監視装置。
【請求項6】
前記フレームレベル監視部は、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち実際に生じた前記特定期間から前記所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動を前記断火から前記所定の時間だけ遡った期間内の前記燃焼情報の変動として前記関係を学習する、
請求項5に記載の火炎監視装置。
【請求項7】
前記可能性に基づく処理は、前記可能性を報知する処理と、前記可能性が所定値よりも大きい場合にその旨を報知する処理と、前記可能性が前記所定値よりも大きい場合に前記バーナへの燃料の供給を停止する処理と、の少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の火炎監視装置。
【請求項8】
コンピュータに、
バーナの火炎による火炎検出器での放電の頻度を示すフレームレベルを順次取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにより順次取得された前記フレームレベルを監視するフレームレベル監視ステップと、を備え、
前記フレームレベル監視ステップは、前記フレームレベルが所定の閾値未満となっている状態が予め定められた第1期間以上第2期間未満の長さ継続する特定期間の発生を検出することにより前記火炎の断火の予兆を検出し、
前記第2期間は、前記火炎の断火が生じたと仮定したときに当該断火が生じてから前記バーナを制御する燃焼システムで前記断火が検出されるまでの期間以下の長さの期間である、
火炎監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎監視装置、及び、火炎監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼シーケンスを構成する複数のサブシーケンス(特許文献1では、「パイロット点火(トライアル)」、「パイロットオンリー」、「メイン着火」、及び、「メイン安定」)それぞれ毎にバーナの火炎の活発度を示すフレーム電圧又はフレーム電流を監視する技術が開示されている。この技術では、フレーム電圧又はフレーム電流がサブシーケンスごとに定められている所定の範囲からずれている場合に、燃焼装置に不調が生じていること、つまり、断火の予兆を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-60573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術のようなフレーム電圧又はフレーム電流の監視では、種々の断火の予兆のうちの一部の断火の予兆についてしか検出できない。例えば、断火の予兆として考えられる火炎のリフティングは、フレーム電圧又はフレーム電流の監視では検出できない。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、フレーム電圧の監視及びフレーム電流の監視では検出できない断火の予兆を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る火炎監視装置は、バーナの火炎による火炎検出器での放電の頻度を示すフレームレベルを順次取得する情報取得部と、前記情報取得部により順次取得された前記フレームレベルを監視するフレームレベル監視部と、を備え、前記フレームレベル監視部は、前記フレームレベルが所定の閾値未満となっている状態が予め定められた第1期間以上第2期間未満の長さ継続する特定期間の発生を検出することにより前記火炎の断火の予兆を検出し、前記第2期間は、前記火炎の断火が生じたと仮定したときに当該断火が生じてから前記バーナを制御する燃焼システムで前記断火が検出されるまでの期間以下の長さの期間である。
【0007】
一例として、前記フレームレベル監視部は、前記特定期間の発生を検出したときに前記予兆を検出した旨を報知する処理を行う。
【0008】
一例として、前記フレームレベル監視部は、一定期間当たりの前記特定期間の発生回数が、2回以上の所定回数を超えたときに前記予兆を検出した旨を報知する処理を行う。
【0009】
一例として、前記情報取得部は、前記バーナに供給された燃料流量及び空気流量を順次取得し、前記フレームレベル監視部は、前記予兆を検出した旨を、前記情報取得部により順次取得された前記燃料流量及び前記空気流量のうち前記特定期間と当該特定期間から遡った一定期間との少なくとも一方での前記燃料流量と前記空気流量との関係を表す流量情報とともに報知する。
【0010】
一例として、前記情報取得部は、前記燃焼システムにおける、前記フレームレベルを少なくとも含む燃焼情報を順次取得し、前記フレームレベル監視部は、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち実際に起こった断火から所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動と断火が生じていないときの前記所定の時間分の燃焼情報の変動とを教師データとして、断火の発生の有無と燃焼情報との関係を学習し、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち前記所定の時間分の燃焼情報の変動と、学習した前記関係とに基づいて、断火が発生する可能性を導出し、導出した前記可能性に基づく処理を実行する。
【0011】
一例として、前記フレームレベル監視部は、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち実際に生じた前記特定期間から前記所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動を前記断火から前記所定の時間だけ遡った期間内の前記燃焼情報の変動として前記関係を学習する。
【0012】
一例として、前記可能性に基づく処理は、前記可能性を報知する処理と、前記可能性が所定値よりも大きい場合にその旨を報知する処理と、前記可能性が前記所定値よりも大きい場合に前記バーナへの燃料の供給を停止する処理と、の少なくとも1つを含む。
【0013】
本発明に係る火炎監視プログラムは、コンピュータに、バーナの火炎による火炎検出器での放電の頻度を示すフレームレベルを順次取得する情報取得ステップと、前記情報取得ステップにより順次取得された前記フレームレベルを監視するフレームレベル監視ステップと、を備え、前記フレームレベル監視ステップは、前記フレームレベルが所定の閾値未満となっている状態が予め定められた第1期間以上第2期間未満の長さ継続する特定期間の発生を検出することにより前記火炎の断火の予兆を検出し、前記第2期間は、前記火炎の断火が生じたと仮定したときに当該断火が生じてから前記バーナを制御する燃焼システムで前記断火が検出されるまでの期間以下の長さの期間である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フレーム電圧の監視及びフレーム電流の監視では検出できない断火の予兆を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る火炎監視装置を有する加熱システムの構成図である。
図2図2は、燃焼制御装置で実行される燃焼シーケンスのフローチャートである。
図3図3は、フレーム電圧とフレームレベルとの関係を示すグラフである。
図4図4は、火炎監視装置のハードウェア構成図である。
図5図5は、火炎監視装置の一部構成図である。
図6図6は、火炎監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0017】
(実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る火炎監視装置20は、燃焼システム10に使用される。火炎監視装置20は、燃焼システム10の燃焼装置30が燃料ガスを燃焼したときのメインバーナ42の火炎の後述のフレームレベルFLを監視し、燃焼装置30の設備の劣化などによる断火の予兆を検出及び報知するように構成されている。この実施の形態で検出する断火の予兆は、火炎のリフティング及びフラシュバックを含む。
【0018】
燃焼システム10は、火炎監視装置20の他、燃焼を行う燃焼装置30と、燃焼装置30を制御する燃焼制御装置71と、燃焼制御装置71に各種指示を行う温調計75と、を備えている。以下、燃焼装置30、燃焼制御装置71、及び、温調計75を先に説明してから火炎監視装置20について説明する。
【0019】
燃焼装置30は、燃焼設備40と、燃料供給系統50と、空気供給系統60と、制御モータMと、開度センサMSと、を備えている。
【0020】
燃焼設備40は、燃焼室R内で燃料ガスを燃焼させる。燃焼設備40は、燃焼室Rを形成している燃焼炉41と、燃料ガスを燃焼させて燃焼室R内を加熱するメインバーナ42と、燃料を燃焼させてメインバーナ42を着火するパイロットバーナ43と、パイロットバーナ43を点火する点火装置(イグナイター)44と、を備えている。
【0021】
燃焼設備40は、さらに、メインバーナ42及びパイロットバーナ43の火炎を検出する火炎検出器45と、燃焼室R内の温度を検出する温度センサ46と、を備えている。火炎検出器45は、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波(例えば紫外線)を検出することで火炎を検出する。
【0022】
燃料供給系統50は、外部からの燃料ガスを燃焼設備40に供給する。燃料供給系統50は、燃焼設備40に供給される燃料ガスが流れる燃料流路51を備えている。燃料流路51は、外部から燃料ガスが供給される主流路51Aと、主流路51Aが分岐した第1流路51Bおよび第2流路51Cと、を含む。第1流路51Bはメインバーナ42に接続され、第2流路51Cはパイロットバーナ43に接続されている。
【0023】
燃料供給系統50は、さらに、第1流路51Bに設けられたメインバルブ54A及び54Bと、第2流路51Cに設けられたパイロットバルブ54C及び54Dと、を備える。メインバルブ54A及び54Bは、第1流路51Bを開閉する。パイロットバルブ54C及び54Dは、第2流路51Cを開閉する。燃料供給系統50は、主流路51Aに設けられた燃料流量調整用のダンパ55と、第1流路51Bを流れる、つまり、メインバーナ42に供給される燃料流量を検出する燃料流量計56と、をさらに備える。
【0024】
空気供給系統60は、燃焼設備40に空気を供給する。空気供給系統60は、燃焼設備40のメインバーナ42に空気を供給する空気流路61と、空気流路61に空気を流すブロワ62と、を備えている。空気供給系統60は、空気流路61に設けられた空気流量調整用のダンパ65と、空気流路61を流れる、つまり、メインバーナ42に供給される空気流量を検出する空気流量計66と、をさらに備える。
【0025】
燃料又は空気流量調整用のダンパ55及び65は、制御モータMにより動作して、燃料流路51(第1流路51B)及び空気流路61の開度を制御する。ダンパ55及び65は、リンケージ機構により連動して動作する。これにより、ダンパ55及び65の各開度が連動する。ダンパ55及び65は、他の構成により連動するように構成されてもよい。例えば、ダンパ65を、空気供給系統60の空気流路61の空気の圧力が導入される均圧弁としてもよい。均圧弁であるダンパ65は、空気流路61の空気の圧力と燃料流路51の第1流路51Bの燃料の圧力とが均一になるように動作する。
【0026】
ダンパ55及び65の開度は、メインバーナ42に供給される燃料と空気との比である空燃比が所望の比率を維持するように連動する。ダンパ55及び65の各開度によって、メインバーナ42に供給される燃料量及び空気量が調整され、これにより、各バーナの火炎の活発度、より具体的には、火炎の強さが調整され、その結果、燃焼室Rないし燃焼室R内に配置されるワークを加熱する加熱温度が制御される。
【0027】
制御モータMには、回転軸の回転角度などを検出することでダンパ55及び65の開度を検出する開度センサMSが設けられる。開度センサMSが検出する開度は、ダンパ55及び65の開度を制御するために制御モータMをフィードバック制御する際のフィードバック値として使用される。
【0028】
燃焼制御装置71は、PLC(Programmable Logic Controller)、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成される。燃焼制御装置71は、コンピュータを構成するCPU(Central Processing Unit)などの他、後述の動作を実現可能な各種の回路(アナログ回路など)を備えてもよい。燃焼制御装置71は、バーナコントローラとも呼ばれる。
【0029】
燃焼制御装置71は、燃焼室R内を加熱するため、予め定められた図2の燃焼シーケンスに従って燃焼装置30を制御する。燃焼シーケンス開始時、燃料供給系統50のバルブ54A~54Dは閉じられているものとする。
【0030】
燃焼制御装置71は、プレバージ(ステップS1)において、制御モータMを駆動し、ダンパ65を高開度位置に制御するとともに、空気供給系統60のブロワ62を動作させる。これにより、メインバーナ42を介して燃焼室R内に新鮮な空気が送風される。
【0031】
燃焼制御装置71は、プレバージのあと、パイロット点火(ステップS2)を実行する。パイロット点火において、燃焼制御装置71は、まずダンパ55及び65を低開度位置に制御する。その後、燃焼制御装置71は、燃料供給系統50のパイロットバルブ54C及び54Dを開状態に制御してパイロットバーナ43への燃料供給を開始するとともに、点火装置44を動作させて点火スパークを発生させる。これにより、パイロットバーナ43が点火する。燃焼制御装置71は、火炎検出器45によりパイロットバーナ43の点火を検出すると、パイロットオンリー(ステップS3)を実行する。パイロットオンリーにおいて、燃焼制御装置71は、所定期間待機することでパイロットバーナ43の火炎を安定させる。
【0032】
パイロットオンリーのあと、燃焼制御装置71は、燃料供給系統50のメインバルブ54A及び54Bを開状態に制御してメインバーナ42への燃料供給を開始するメイン着火(ステップS4)を実行する。これにより、パイロットバーナ43の火炎を種火としてメインバーナ42が着火する。燃焼制御装置71は、メインバルブ54A及び54Bを開状態としてから一定期間経過後、メイン着火を終了したとしてメイン安定(ステップS5)を実行する。メイン安定では、燃料供給系統50のパイロットバルブ54C及び54Dが閉じられ、パイロットバーナ43の火炎が消される。さらに、メイン安定では、メインバーナ42の火炎を安定させるための待機も行われる。
【0033】
燃焼制御装置71は、メイン安定のあと、定常燃焼(ステップS6)に移行する。燃焼室R内は、メインバーナ42の定常燃焼により加熱される。燃焼制御装置71は、定常燃焼において、ダンパ55及び65の開度を制御モータMを介して制御することで、メインバーナ42への空気及び燃料の流量を制御し、これにより、メインバーナ42の火力つまり火炎の活発度を制御する。燃焼制御装置71は、定常燃焼終了のタイミングにおいて、燃料供給系統50のメインバルブ54A及び54Bを閉じ、メインバーナ42の火炎を消す。定常燃焼後にポストバージが行われてもよい。
【0034】
図1に戻り、温調計75は、燃焼シーケンスの開始、及び、定常燃焼の終了(燃焼シーケンスの終了タイミング)を燃焼制御装置71に対して指示する。さらに、温調計75は、温度センサ46が検出した温度をフィードバック値として、燃焼室R内の温度が目標温度となるよう燃焼制御装置71に対して指示を行う。温調計75は、定常燃焼での燃料及び空気の各流量などを、フィードバック値と目標温度との関係で指示する。温調計75は、燃料及び空気の各流量を指示する際、当該各流量を目標値として燃焼制御装置71に供給する。燃焼制御装置71は、供給された目標値から目標開度を導出し、各ダンパ55及び65の開度が目標開度となるよう、開度センサMSからの開度をフィードバック値としたフィードバック制御を制御モータMに対して行う。燃焼制御装置71は、流量計56及び66によりそれぞれ検出されるメインバーナ42への燃料量及び空気量をフィードバック値としたフィーバック制御により目標開度を制御してもよい。
【0035】
燃焼設備40に含まれる火炎検出器45は、火炎から放出される電磁波(例えば、紫外線)を受けたときに放電する放電管(例えば、紫外線チューブ)を有する。放電により発生する放電電流は燃焼制御装置71に入力される。
【0036】
燃焼制御装置71は、火炎検出器45からの放電電流が流れる抵抗の両端の電位差などを積分して火炎の活発度を表すフレーム電圧FV(フレーム電流でもよい。以下同じ)を生成する。この積分は、例えば、積分回路により行われる。フレーム電圧FVは、0V~5Vの間で変化する電圧値を有する。上記燃焼シーケンスなどにおいて、燃焼制御装置71は、フレーム電圧FVを監視する。燃焼制御装置71は、フレーム電圧FVが予め定められた閾値FVth以上となったときに、火炎の存在(着火乃至点火)を検出する。燃焼制御装置71は、フレーム電圧FVが閾値FVth未満となったときに、火炎の消炎を検出する。消炎とは、火炎が消されたことを意味する。消炎には、メインバルブ54A及び54Bを閉じることによる消火、及び、メインバルブ54A及び54Bが開いたまま意図せず火炎が消える断火が含まれる。
【0037】
燃焼制御装置71は、燃焼シーケンスのメイン安定、定常燃焼などのサブシーケンスにおいて、フレーム電圧FVが閾値FVth未満となって消炎(つまり断火)を検出したときに、メインバルブ54A及び54Bにバルブを閉じる閉信号を供給する。これにより、燃料ガスの供給がストップする。火炎の存在の検出と、消炎の検出とで閾値は異なってもよい。
【0038】
さらに、燃焼制御装置71は、前記の電位差などに基づいて放電を示す放電パルス信号(例えば電圧信号)を生成する。燃焼制御装置71は、放電パルス信号から火炎検出器45の放電管の放電の頻度を示す数値であるフレームレベルFLを生成する。具体的に、燃焼制御装置71は、放電パルス信号に基づいて一定時間(例えば、0.1秒)当たりの放電パルスの数つまり放電回数Nをカウントする。燃焼制御装置71は、カウントした放電回数Nに基づきフレームレベルFLを導出する。フレームレベルFLの導出方法は任意であるが、ここでは下記式(1)により導出されるものとする。式中、Nmaxは、前記の一定時間当たりの最大放電回数である。
FL=(N/Nmax)*100・・・(1)
【0039】
フレームレベルFLは、燃焼制御装置71から火炎監視装置20に供給され、火炎監視装置20により監視される。フレームレベルFLは、ここでは100分率で表されるが、N/Nmax、又は、Nのみで表されてもよい。
【0040】
フレーム電圧FV、フレームレベルFLは、いずれも火炎の活発度(ここでは強度)を示す数値である。図3に、メインバーナ42を着火してから火炎が断火するまでのフレーム電圧FV及びフレームレベルFLの時間変化を示す。理解の容易のため、図3では、メインバーナ42がパイロットバーナ43の火炎を種火とせず単独で着火されたときの模式図としている。
【0041】
図3に示すように、フレーム電圧FVは、連続値として導出され、フレームレベルFLは、上記一定期間ごとの離散値として導出される。フレーム電圧FVは、上記積分により得られる値であるため、フレームレベルFLよりも、火炎の変化(紫外線量ないし放電電流の変化)に対する応答性が緩慢である。これによって、火炎検出器45への電磁波の入射が一時的に途絶える火炎のリフティング又はフラッシュバックなどが生じても(例えば、タイミングT3-T4の期間参照)、フレーム電圧FVは、消炎の判断基準となる閾値FVthを下回らない。このように、フレーム電圧FVは、上記リフティングなどを消炎と誤検出しないように生成される。換言すると、フレーム電圧FVでは、上記リフティングなどを検出できない。
【0042】
フレームレベルFLが閾値FLth未満となった第1タイミングから、フレーム電圧FVが消炎(主に断火)を検出するための閾値FVth未満となる第2タイミングまでの期間を、フレームレスポンス期間Tfrともいう。第1タイミングは、実際に断火が生じたタイミングともいえる。第2タイミングは、燃焼制御装置71により断火が検出されたタイミングともいえる。このようなことから、フレームレスポンス期間Tfrは、火炎の断火が生じたと仮定したときに当該断火が生じてからメインバーナ42を制御する燃焼システム10で当該断火が検出されるまでのレスポンス期間ともいえる。フレームレスポンス期間Tfrは、フレーム電圧FVを導出する積分回路の時定数などにより調整され、既知の値として設定される。上述のように断火の検出により、メインバルブ54A及び54Bには閉信号を供給され、バルブの閉動作が開始される。従って、断火の検出タイミングは、メインバーナ42への燃料の供給停止の開始タイミングともいえる。
【0043】
フレームレベルFLは、紫外線量(つまり放電電流)の変化に敏感である。このため、フレームレベルFLに対して所定の閾値FLthを設定することで、火炎検出器45への電磁波の入射が一時的に途絶える火炎のリフティング及びフラッシュバックなどが検出可能となる(詳細は後述)。図3では、フレームレスポンス期間Tfr未満の長さのタイミングT3-T4の期間でフレームレベルFLが閾値FLth未満となっており、この期間に、上記リフティングなどが生じた可能性がある。フレームレスポンス期間Tfr未満でフレームレベルFLが閾値FLth未満となる期間では、断火は検出されず、メインバルブ54A及び54Bは閉状態とならない。
【0044】
図1の火炎監視装置20は、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成されている。火炎監視装置20は、図4に示すように、CPU等のプロセッサ21と、プロセッサ21のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)22と、プロセッサ21により実行される火炎監視プログラムを記憶する不揮発性の記憶装置23と、を備える。記憶装置23は、下記の処理で使用される各種データなども記憶する。火炎監視装置20は、さらに、後述の各種画面を表示するディスプレイ24と、ユーザにより操作される操作装置25と、プロセッサ21が燃焼制御装置71及び温調計75と通信を行うための通信モジュール26と、を備える。
【0045】
この実施の形態では、プロセッサ21は、記憶装置23に記憶された火炎監視プログラムを実行することにより、図5に示す、情報取得部21A、及び、フレームレベル監視部21Bとして機能する。
【0046】
情報取得部21Aは、通信モジュール26を介して燃焼制御装置71からのフレームレベルFLを順次取得するように構成されている。フレームレベルFLは、RAM22又は記憶装置23に時系列順に記録されてもよい。
【0047】
フレームレベル監視部21Bは、情報取得部21Aにより取得されたフレームレベルFLを監視することで火炎の断火の予兆を検出及び報知するように構成されている。
【0048】
フレームレベル監視部21Bは、フレームレベルFLが閾値FLth未満の状態が、所定期間Tth(例えば、2秒)以上、かつ、フレームレスポンス期間Tfr未満の長さ継続する特定期間Tが発生したかを監視する。当該監視により特定期間Tの発生がフレームレベル監視部21Bにより検出される。特定期間Tの発生が検出されたときは、火炎を表す電磁波の検出信号(放電電流)が一旦途絶えて復帰しており、断火とはならない火炎のリフティング又はフラッシュバックなどが生じたと考えられる。所定期間Tthの長さは、前記リフティングなどの検出のための期間として設定される。
【0049】
火炎のリフティング及びフラッシュバックなどは、リンケージ機構の不具合、空気又は燃料ガスの流路の破損または詰まりなどによる空燃比のずれなどに起因して生じるので、断火の予兆といえる。従って、フレームレベル監視部21Bは、特定期間Tの発生を検出することで、火炎のリフティング及びフラッシュバックなどつまり断火の予兆を検出したことになる。ここで、これら断火の予兆は、上述のようにフレーム電圧FV(又はフレーム電流)の監視では検出できない。従って、フレームレベル監視部21Bにより、フレーム電圧FV(又はフレーム電流)の監視では検出できない断火の予兆が検出可能となる。
【0050】
フレームレベル監視部21Bは、例えば、図6に示す火炎監視処理を実行する。火炎監視処理は、燃焼シーケンスにおけるメイン安定及び定常燃焼において、フレームレベルFLが情報取得部21Aにより取得されるたびに実行される。メイン安定及び定常燃焼の開始及び終了は、燃焼制御装置71から通知されるものとする。
【0051】
フレームレベル監視部21Bは、今回取得されたフレームレベルFLが閾値FLth(例えば、5%)未満であるかを判別する(ステップS11)。フレームレベル監視部21Bは、フレームレベルFLが閾値FLth未満の場合(ステップS11;Yes)、RAM22に設けられた、フレームレベルFLが閾値FLth未満の状態の継続期間Tkを計測する計測タイマのタイマ値を+1して(ステップS12)、火炎監視処理を終了する。
【0052】
フレームレベル監視部21Bは、フレームレベルFLが閾値FLth以上の場合(ステップS11;No)、計測タイマのタイマ値が示す継続期間Tkが、所定期間Tth以上であるかを判別する(ステップS13)。この判別結果が否定の場合(ステップS13;No)、継続期間Tkが所定期間Tth未満で断火の予兆が発生していないことになり、特定期間Tが発生していないことになる。この場合、フレームレベル監視部21Bは、計測タイマのタイマ値を0にリセットし(ステップS14)、火炎監視処理を終了する。
【0053】
継続期間Tkがフレームレスポンス期間Tfrに達した場合、断火が生じていることになる。この場合は、燃焼制御装置71において、メインバルブ54A及び54Bを閉じる処理などが実行され、燃焼シーケンスが強制終了される。燃焼制御装置71は、強制終了の旨をフレームレベル監視部21Bに通知する。この場合、フレームレベル監視部21Bは、計測タイマのタイマ値をリセットする。このように、計測タイマのタイマ値が示す継続期間Tkは、フレームレスポンス期間Tfrを超えないようになっている。このため、計測タイマのタイマ値が示す継続期間Tkが所定期間Tth以上となれば、必然的にフレームレスポンス期間Tfr未満にもなる。
【0054】
フレームレベル監視部21Bは、継続期間Tkが、所定期間Tth以上であるとき(ステップS13;Yes)、上述のように、フレームレスポンス期間Tfr未満も成り立つので、特定期間Tの発生つまり断火の予兆を検出したとして、その旨を記録する(ステップS15)。さらに、フレームレベル監視部21Bは、記録した記録内容に基づいて、断火の予兆を検出した旨を燃焼システム10のユーザに報知する報知処理を実行し(ステップS16)、計測タイマをリセットする(ステップS17)。
【0055】
フレームレベル監視部21Bは、ステップS15において、RAM22に設けられた予兆フラグをオンする。フレームレベル監視部21Bは、ステップS16において、予兆フラグがオンとなっていたときに、断火の予兆を検出した旨の所定のメッセージ(「断火の予兆(リフティング又はフラッシュバック)を検出しました、空燃比などを点検してください。」など)をディスプレイ24に表示する。
【0056】
フレームレベル監視部21Bは、ステップS15において、RAM22に設けられた予兆の発生回数をカウントするためのカウンタを+1としてもよい。フレームレベル監視部21Bは、ステップS16において、前記カウンタの値が所定値以上であるときに、断火の予兆を検出した旨の所定のメッセージをディスプレイ24に表示してもよい。所定値は、1回でも、複数回でもよい。所定値が複数の場合、カウンタの値は、定期的(例えば、1日ごと、又は、1週間ごと)に、リセットされてもよい。これにより、一定期間あたりの特定期間Tの発生回数つまり予兆の発生回数が2回以上の所定値以上となったときに、断火の予兆を検出した旨が表示される。表示される前記旨は、断火の可能性が高い旨のメッセージを含んでもよい。
【0057】
以上のように、この実施の形態では、情報取得部21Aが、メインバーナ42の火炎による火炎検出器45での放電の頻度を示すフレームレベルFLを順次取得する。さらに、フレームレベル監視部21Bは、順次取得されたフレームレベルFLを監視する。特に、フレームレベル監視部21Bは、フレームレベルFLが所定の閾値FLth未満となっている状態が、予め定められた所定期間Tth以上、かつ、フレームレスポンス期間Tfr未満の長さ継続した特定期間Tの発生を検出することで、火炎のリフティング又はフラッシュバックなどといった断火の予兆を検出する。これにより、フレーム電圧FV又はフレーム電流の監視では報知できない断火の予兆が検出される。
【0058】
さらに、フレームレベル監視部21Bは、特定期間Tの発生を検出したときに、火炎の断火の予兆を検出した旨を報知する処理を行う。これにより、ユーザが断火の予兆を把握できる。これにより、ユーザは、燃焼装置30を点検及び補修することができ、その結果、断火の発生が防止される。
【0059】
フレームレベル監視部21Bは、上述のように、一定期間当たりの特定期間Tの発生回数が、2回以上の所定回数を超えたときに断火の予兆を検出した旨を報知する処理を行うとよい。これにより、リフティング、フラッシュバックなどの頻度が多くなってきたとき、つまり、断火の可能性が高くなってきたときに、断火の予兆を検出した旨を報知できる。
【0060】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0061】
(変形例1)
情報取得部21Aは、データコレクタなどとして機能し、さらに、メインバーナ42に供給された燃料流量及び空気流量を順次取得してもよい。情報取得部21Aは、燃焼制御装置71と通信し、流量計56及び66によりそれぞれ検出されたメインバーナ42への燃料流量及び空気流量を定期的に取得し、記憶装置23に時系列順に格納する。燃料流量及び空気流量は、開度センサMSが検出した弁開度、又は、制御モータMに入力する操作量などにより表されてもよい。
【0062】
フレームレベル監視部21Bは、上記予兆を検出した旨を表示する際、情報取得部21Aにより取得され記憶装置23に格納された燃料流量及び空気流量のうち、特定期間Tと当該特定期間Tから遡った一定期間との少なくとも一方での燃料流量と空気流量とを取得してもよい。フレームレベル監視部21Bは、取得した燃料流量と空気流量との関係を表す流量情報を上記の予兆を検出した旨とともにディスプレイ24に表示してもよい。流量情報は、例えば、燃料流量の変動と空気流量の変動とを表すグラフ、あるタイミングでの燃料流量と空気流量との比、燃料流量と空気流量との比の変動、及び、燃料流量及び空気流量そのもの、のいずれかを含む。このような構成により、断火の予兆が発生したときに、燃料流量と空気流量とのどちらに問題があるか、又は、空燃比などがどの程度ズレているかなどをユーザに把握させることができる。
【0063】
(変形例2)
情報取得部21Aは、上記データコレクタのように機能して、燃焼システム30における、フレームレベルFLを少なくとも含む燃焼情報を順次取得するようにしてもよい。燃焼情報は、フレームレベルFLの他、バーナの火炎の状態に応じて変動し得る一又は複数の物理量を含んでもよい。物理量としては、空気流量、燃料流量、燃焼量設定値、空気燃料混合ガスの空気比などがあげられる。燃焼情報は、フレームレベルFLのみからなってもよい。前記の空気燃料混合ガスの空気比は、空気流量及び燃料流量に基づいて算出される。燃焼量設定値は、例えば、温調計75が燃焼制御装置71に対して行う前記指示に含まれる、定常燃焼での燃料及び空気の各流量などからなる。
【0064】
フレームレベル監視部21Bは、情報取得部21Aにより順次取得された燃焼情報(特に、フレームレベルFL)のうち、実際に生じた断火から所定の時間(例えば、10分)だけ遡った期間内の燃焼情報の変動と、断火が生じていないときの前記所定の時間分の燃焼情報の変動とを教師データとして、断火の発生の有無と燃焼情報の変動との関係を学習してもよい。
【0065】
例えば、情報取得部21Aは、取得した燃焼情報を時系列順に、取得時刻とともに記憶装置23に記録していく。フレームレベル監視部21Bは、断火が生じたときの時刻を燃焼制御装置71から取得し、取得した時刻に基づいて、断火から所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報を、正解を断火とする教師データとして取得する。さらに、フレームレベル監視部21Bは、断火が生じていないとき(さらには断火の予兆も生じていないとき)の任意の期間(ユーザによって指定されてもよい)の燃焼情報を、正解を非断火とする教師データとして取得する。フレームレベル監視部21Bは、これら教師データに基づいて、任意の学習法での機械学習を行い、断火の発生の有無とフレームレベルの変動との関係を学習する。学習法は、例えば、サポートベクタマシン、ランダムフォレストなどの学習法が用いられる。前記の関係は、フレームレベルFLが低レベルのときが何秒継続すると断火が発生する可能性が高いか、当該低レベルの頻度がどの程度になると断火が発生する高いかなどの情報を含んでもよい。前記の関係は、サポートベクタマシン、ランダムフォレストなどの、入力された燃焼情報の変動を断火と非断火とのうちのいずれかにラベリングするモデルであればよい。
【0066】
フレームレベル監視部21Bは、情報取得部21Aにより順次取得された燃焼情報のうち所定の時間分の燃焼情報の変動と、学習した前記の関係とに基づいて、将来に断火が発生する可能性を導出してもよい。さらに、フレームレベル監視部21Bは、導出した前記可能性に基づく処理を実行してもよい。
【0067】
フレームレベル監視部21Bは、所定の時間分の燃焼情報の変動を、前記関係により、断火と非断火とのうちのいずれかにラベリングする。このとき、フレームレベル監視部21Bは、このラベリングにより、断火が発生する可能性(例えば、断火が発生する45パーセントなど)を導出する。
【0068】
以上のような構成により、フレーム電圧FV又はフレーム電流では把握できない現象(リフティングなど)を予兆とする断火の発生の可能性を得ることができる。
【0069】
フレームレベル監視部21Bは、前記の処理として、前記可能性をディスプレイ24に表示する処理を行ってもよい。当該処理に代えて又は加えて、フレームレベル監視部21Bは、前記の処理として、前記可能性が所定値よりも大きい場合にディスプレイ24に表示することで、断火の可能性が高いことを報知する処理を行ってもよい。これら処理に代えて又は加えて、フレームレベル監視部21Bは、前記の処理として、前記可能性が前記所定値よりも大きい場合にメインバーナ42への燃料の供給を停止する処理を行ってもよい。メインバーナ42への燃料の供給を停止する処理は、燃焼制御装置71に対して、メインバーナ42への燃料の供給の指示を行う処理を含む。これらにより、近い将来の断火の可能性を燃焼システム10のユーザに報知したり、断火の可能性が高いときに燃焼シーケンスの停止により実際の断火を防止したりできる。
【0070】
断火は滅多に生じないので、正解を断火とする教師データは、通常少ない。そこで、フレームレベル監視部21Bは、情報取得部21Aにより順次取得された燃焼情報のうち実際に生じた特定期間Tから所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動を、前記正解を断火とする教師データとして、前記学習を行ってもよい。これにより、教師データの不足を解消することができる。また、より多くの教師データを得るため、情報取得部21Aは、他の燃焼システム(特に、上記燃焼装置30と同じ型の燃焼装置を有する燃焼システム)などからも、燃焼情報を断火及び特定期間Tの各発生情報などともに収集してもよく、フレームレベル監視部21Bは、他の燃焼システムから取得された燃焼情報も教師データとして使用してもよい。
【0071】
なお、この変形例において、火炎の断火の予兆が検出されなくてもよい。つまり、火炎監視装置20は、バーナの火炎による火炎検出器での放電の頻度を示すフレームレベルを少なくとも含む燃焼情報を順次取得する情報取得部と、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報を監視する監視部と、を備え、前記監視部は、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち実際に起こった断火から所定の時間だけ遡った期間内の燃焼情報の変動と断火が生じていないときの前記所定の時間分の燃焼情報の変動とを教師データとして、断火の発生の有無と燃焼情報の変動との関係を学習し、前記情報取得部により順次取得された前記燃焼情報のうち前記所定の時間分の燃焼情報の変動と、学習した前記関係とに基づいて、断火が発生する可能性を導出し、導出した前記可能性に基づく処理を実行する、火炎監視装置20であってもよい。
【0072】
(変形例3)
特定期間Tの上限は、上記では、フレームレスポンス期間Tfrとしているが、これを、フレームレスポンス期間Tfrよりも短い期間としてもよい。この場合、図6のステップS13において、フレームレベル監視部21Aは、継続期間Tkが、所定期間Tth以上、前記短い期間未満の範囲内であるかを判別してもよい。
【0073】
(変形例4)
燃焼システム10の構成は任意である。例えば、フレームレベル監視部21Bは、予兆を検出した旨、断火が発生する可能性などを、ディスプレイ24に代えて又は加えて、火炎監視装置20外部の表示装置、例えば、燃焼システム10のユーザの端末などに表示してもよい。このようにして、予兆を検出した旨、断火が発生する可能性などは、ユーザに報知されればよい。ユーザの報知は、音声出力などであってもよい。フレームレベル監視部21Bは、予兆を検出した旨、断火が発生する可能性などを外部装置に出力するのみであってもよい。
【0074】
火炎監視装置20のハードウェア構成も任意である。火炎監視装置20は、燃焼制御装置71及び温調計75と他の外部機器とを接続するゲートウェイとして構成されてもよい。情報取得部21A及びフレームレベル監視部21Bの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種の論理回路から構成されてもよい。各部21A及び21Bのうちの少なくとも一部は、燃焼制御装置71又は温調計75が備えてもよい。情報取得部21Aは、火炎検出器45からの放電電流を取得し、取得した放電電流に基づいてフレーム電圧FV及びフレームレベルFLを導出することで、これらを取得してもよい。火炎監視装置20は、サーバコンピュータ、クラウドコンピュータ等であってもよい。サーバコンピュータ、クラウドコンピュータとしての火炎監視装置20は、情報取得部が、同じ型の燃焼装置を有する複数の燃焼システムのそれぞれにおける上記の燃焼情報(変形例2参照)を断火などの発生情報とともに収集し、監視部が、収集された燃焼情報に基づく上記教師データに基づいて上記機械学習(変形例2参照)を行うとよい。これにより、多数の教師データで機械学習が行われ、学習精度が良くなる。
【0075】
火炎監視装置20などの各装置は、装置の構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、装置の構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムを含む。火炎監視プログラムは、上記記憶装置23など、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記録されればよい。上記状態値、燃焼情報などは、揮発性の記憶装置であるRAMなどの他の記憶部に一定期間のみ記録されてもよい。
【0076】
燃焼装置30は、パイロットバーナ43がないメインバーナ42のみを有するタイプであってもよい。また、燃焼装置30は、パイロットバーナ43を常時点火させた状態としてもよい。この場合、メインバーナ42用の火炎検出器と、パイロットバーナ43用の火炎検出器と、を用意してもよい。
【0077】
(変形例5)
フレームレベルFLのもととなる放電回数Nをカウントする期間は、0.1秒と1秒など複数種の期間が用意されてもよい。この場合、複数種の期間それぞれについて、フレームレベルFLが導出され、個別にフレームレベル監視部21Bにより監視されてもよい。例えば、放電回数Nをカウントする期間を0.1秒とする第1フレームレベルと、当該期間を1秒とする第2フレームレベルと、が導出及び監視されてもよい。この場合、フレームレベルの種類ごとに、異なる所定期間Tthが設定されてもよい。これにより、フレームレベルの細やかな監視が可能となる。
【0078】
(変形例6)
燃料ガスに替えて、液体燃料、気液混合燃料などの他の燃料が使用されてもよい。
【0079】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…燃焼システム、20…火炎監視装置、21…プロセッサ、21A…情報取得部、21B…フレームレベル監視部、23…記憶装置、24…ディスプレイ、25…操作装置、26…通信モジュール、30…燃焼装置、40…燃焼機器、41…燃焼炉、42…メインバーナ、43…パイロットバーナ、44…点火装置(イグナイター)、44…点火装置、45…火炎検出器、46…温度センサ、50…燃料供給系統、54A,54B…メインバルブ、54C,54D…パイロットバルブ、55…ダンパ、56…燃料流量計、60…空気供給系統、65…ダンパ、66…空気流量計、71…燃焼制御装置、75…温調計、M…制御モータ、MS…開度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6