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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018499
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/16 20060101AFI20240201BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B41J15/16
B41J11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121873
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 高司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩義
(72)【発明者】
【氏名】大木 寿馬
【テーマコード(参考)】
2C058
2C060
【Fターム(参考)】
2C058AB16
2C058AC06
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF31
2C058AF63
2C058LA03
2C058LA26
2C058LB09
2C060CB42
(57)【要約】
【課題】印刷実行時に排出口が塞がれた場合に、記録紙を貯留することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】記録紙Pが巻かれたロール紙Rを収容可能なロール紙収容部11と、ロール紙収容部11に収容されたロール紙Rから引き出された記録紙Pを、排出口3に向けて送るプラテンローラー17と、プラテンローラー17から排出口3へ向かう第1方向Yと交差する第2方向Xに延在し、プラテンローラー17と排出口3との間で第1方向Yへ送られる記録紙Pの第1面Paに面して設けられた凹部51と、を備え、凹部51の深さ方向である第3方向Zにおける凹部51の寸法Dは、第1方向Yにおける凹部51の開口幅Wよりも、大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙が巻かれたロール紙を収容可能なロール紙収容部と、
前記ロール紙収容部に収容された前記ロール紙から引き出された前記記録紙を、排出口に向けて送る送りローラーと、
前記送りローラーから前記排出口へ向かう第1方向と交差する第2方向に延在し、前記送りローラーと前記排出口との間で前記第1方向へ送られる前記記録紙の一方の面に面して設けられた凹部と、を備え、
前記凹部の深さ方向である第3方向における前記凹部の寸法は、前記第1方向における前記凹部の開口幅よりも、大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記凹部の前記第3方向に位置する第3内面と、前記第3内面に連なり、前記凹部の前記第1方向に位置する第1内面と、を有し、
前記第1内面は、前記第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側第1内面端部が、前記第3方向の端部である奥側第1内面端部よりも、前記第1方向に位置するように、前記第1方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記第1内面に連なり、前記凹部の開口縁部に位置する縁部内面、を有し、
前記縁部内面は、前記第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側縁部内面端部が、前記第3方向の端部である奥側縁部内面端部よりも、前記第1方向に位置するように、前記第1方向に対して傾斜し、
前記第1方向に対する前記縁部内面の傾斜角度は、前記第1方向に対する前記第1内面の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記凹部の前記第3方向に位置する第3内面と、前記第3内面に連なり、前記凹部の前記第1方向に位置する第1内面と、前記第1内面に連なり、前記凹部の開口縁部に位置する縁部内面と、を有し、
前記縁部内面は、前記第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側縁部内面端部が、前記第3方向の端部である奥側縁部内面端部よりも、前記第1方向に位置するように、前記第1方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記排出口が設けられた装置ケース、を備え、
前記排出口の縁部は、前記装置ケースの外面と面一であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記記録紙を切断するカッター、を備え、
前記凹部は、前記カッターが前記記録紙を切断する切断位置と前記排出口との間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1が開示するように、用紙収納部に収納されたロール状の記録紙から引き出された記録紙を、排出口に向けて送るプラテンローラーを備えた印刷装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-136472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置では、印刷実行時に排出口がユーザーの手などで塞がれた場合に、行き場を失った記録紙がプラテンローラーに巻き付いてしまうなどの不具合が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、記録紙が巻かれたロール紙を収容可能なロール紙収容部と、ロール紙収容部に収容されたロール紙から引き出された記録紙を、排出口に向けて送る送りローラーと、送りローラーから排出口へ向かう第1方向と交差する第2方向に延在し、送りローラーと排出口との間で第1方向へ送られる記録紙の一方の面に面して設けられた凹部と、を備え、凹部の深さ方向である第3方向における凹部の寸法は、第1方向における凹部の開口幅よりも、大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】開閉カバーが閉じた状態における印刷装置の斜視図である。
図2】開閉カバーが開いた状態における印刷装置の斜視図である。
図3】第1実施形態の印刷装置の断面図である。
図4】第1実施形態の印刷装置が備える紙貯留空間形成部材の斜視図である。
図5】第1実施形態の印刷装置が備える紙貯留空間形成部材を+X方向から見た図である。
図6】第1実施形態の印刷装置が備える凹部に記録紙が貯留した状態を示す図である。
図7】第2実施形態の印刷装置の断面図である。
図8】第2実施形態の印刷装置が備える紙貯留空間形成部材の斜視図である。
図9】第2実施形態の印刷装置が備える紙貯留空間形成部材を+X方向から見た図である。
図10】第2実施形態の印刷装置が備える凹部に記録紙が貯留した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照して、印刷装置の第1実施形態である印刷装置1について説明する。印刷装置1は、例えばレシートプリンターとして用いられる。なお、以下では、各図に示したXYZ直交座標系による方向を用いて説明するが、これらの方向は説明の便宜上のものにすぎず、以下の実施形態を何ら限定するものではない。
【0008】
図1および図2に示すように、印刷装置1は、装置ケース5を備えている。装置ケース5は、略直方体の箱状に形成されており、印刷装置1の外殻を構成している。装置ケース5は、ケース本体7と、開閉カバー9とを備えている。ケース本体7は、-Y方向の面が開放された略直方体状に形成されている。ケース本体7内には、ロール紙収容部11が設けられている。ロール紙収容部11は、印刷媒体となる記録紙Pが巻かれたロール紙R(図3参照)を収容可能である。ロール紙収容部11には、ロール紙Rの回転軸方向がX方向と平行になるように、ドロップイン方式でロール紙Rが投入される。
【0009】
開閉カバー9は、ロール紙収容部11を開閉する。開閉カバー9は、カバー回動軸13(図3参照)に回動可能に取り付けられている。カバー回動軸13は、ケース本体7の-Z方向の端部に設けられ、X方向に延在している。
【0010】
装置ケース5の-Y方向の面には、排出口3が設けられている。排出口3からは、印刷された記録紙Pが排出される。排出口3は、開閉カバー9の先端部すなわち+Z方向の端部とケース本体7との間に設けられている。排出口3は、装置ケース5の-Y方向の面において、X方向に長い略長方形状に形成されている。排出口3の縁部は、装置ケース5の外面すなわち-Y方向の面と面一である。すなわち、装置ケース5の-Y方向の面において、排出口3の縁部には、装置ケース5の外側すなわち-Y方向に突出した突出部が設けられてはいない。
【0011】
ケース本体7の-Y方向の面には、-X方向且つ+Z方向の隅部に位置して、オープンレバー15が設けられている。ユーザーは、オープンレバー15を操作することで、開閉カバー9を開けることができる。
【0012】
図3に示すように、印刷装置1は、プラテンローラー17と、サーマルヘッド19と、カッター21と、紙貯留空間形成部材23とを備えている。
【0013】
プラテンローラー17は、回転軸方向がX方向と平行になるように、開閉カバー9の内側に設けられている(図2参照)。プラテンローラー17は、開閉カバー9が閉められた状態で、サーマルヘッド19に対して-Z方向に位置し、サーマルヘッド19と対向する。プラテンローラー17は、サーマルヘッド19との間で記録紙Pを挟持し、図示省略した送りモーターを駆動源として回転することで、ロール紙収容部11に収容されたロール紙Rから引き出された記録紙Pを、排出口3に向けて-Y方向に送る。なお、以下では、ロール紙収容部11から排出口3へ至る記録紙Pの送り経路において、プラテンローラー17およびサーマルヘッド19が記録紙Pを挟持する位置を、挟持位置Aという。また、挟持位置Aすなわちプラテンローラー17から排出口3へ向かう方向を、第1方向Yという。
【0014】
サーマルヘッド19は、ケース本体7内に設けられている。サーマルヘッド19は、複数の発熱素子(図示省略)を備えており、ロール紙Rから引き出された記録紙Pに印刷を行う。なお、記録紙Pの表裏両面のうち、サーマルヘッド19により印刷が行われる面を、第1面Paといい、第1面Paとは反対側の面を、第2面Pbという。
【0015】
カッター21は、印刷終了時に、記録紙PをX方向に切断する。これにより、記録紙Pが、印刷済み部分の後方で、記録紙Pの幅方向に切断される。記録紙Pの送り経路において、カッター21が記録紙Pを切断する位置を、切断位置Bという。切断位置Bは、挟持位置Aと排出口3との間に位置する。なお、カッター21は、切断された記録紙Pが排出口3に留まるように、記録紙Pを、記録紙Pの幅方向の一部、例えば略中央部を残して切断する。
【0016】
カッター21は、固定刃25と、可動刃ユニット27とを備えている。固定刃25は、ケース本体7内に設けられたフレーム29に固定されている。可動刃ユニット27は、開閉カバー9の内側に設けられている。可動刃ユニット27は、可動刃31と、カッターモーター(図示省略)とを備えている。可動刃31は、開閉カバー9が閉められた状態で、固定刃25に対して-Z方向に位置し、固定刃25と対向する。可動刃31は、Z方向に移動可能であり、固定刃25に向けて+Z方向に移動することで、記録紙Pを切断する。カッターモーターは、可動刃31の駆動源である。なお、固定刃25を第1刃、可動刃31を第2刃と記載してもよい。
【0017】
紙貯留空間形成部材23は、挟持位置Aと排出口3との間、より具体的には切断位置Bと排出口3との間に位置しており、固定刃25と共にフレーム29に固定されている。紙貯留空間形成部材23は、例えば板金を折曲げ加工したものであり、+X方向から見て、略逆「L」字状の断面形状を有する。
【0018】
図4および図5に示すように、紙貯留空間形成部材23は、A部33と、B部35と、C部37と、D部39と、E部41と、F部43とを備えている。A部33は、紙貯留空間形成部材23の+Y方向の端部に位置しており、XY平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。A部33には、その個数は特に限定されないが、2つの固定穴45と、2つの位置決め穴47とが設けられている。2つの固定穴45は、フレーム29に対して紙貯留空間形成部材23を固定ネジ49(図3参照)で固定するためのものである。2つの位置決め穴47は、フレーム29に対して紙貯留空間形成部材23を位置決めするためのものである。
【0019】
B部35は、A部33の-Y方向の端部から+Z方向に延びており、XZ平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。C部37は、B部35の+Z方向の端部から-Y方向に延びており、XY平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。D部39は、C部37の-Y方向の端部から-Z方向に延びており、XZ平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。E部41は、D部39の-Z方向の端部から-Y方向と-Z方向との間の斜め方向に延びており、XY平面に対して斜めに交差したX方向に長い略長方形の板状に形成されている。F部43は、E部41の-Y方向且つ-Z方向の端部から-Y方向に延びており、XY平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。
【0020】
このように構成された紙貯留空間形成部材23は、D部39が固定刃25に対して-Y方向に位置するようにして、フレーム29に固定される(図3参照)。そして、固定刃25および紙貯留空間形成部材23により、凹部51が形成される。すなわち、固定刃25により、凹部51の+Y方向の壁部が構成され、紙貯留空間形成部材23のC部37により、凹部51の+Z方向の壁部が構成され、D部39およびE部41により、凹部51の-Y方向の壁部が構成されている。なお、凹部51の+X方向、-X方向および-Z方向は、開放されている。
【0021】
凹部51は、挟持位置Aと排出口3との間で排出口3に向けて第1方向Yへ送られる記録紙Pの第1面Paに面している(図3参照)。すなわち、凹部51は、ケース本体7および開閉カバー9のうち、ケース本体7に設けられており、挟持位置Aと排出口3との間で第1方向Yへ送られる記録紙Pに対して、+Z方向に位置している。
【0022】
凹部51は、第1方向Yと交差する方向すなわちX方向に延在している。なお、凹部51が延在する方向を、第2方向Xという。第2方向Xにおける凹部51の寸法は、記録紙Pの幅すなわち第2方向Xにおける記録紙Pの寸法よりも大きい。記録紙Pは、挟持位置Aと排出口3との間で、凹部51に対して第2方向Xにはみ出さないようにして送られる。また、凹部51の深さ方向すなわち+Z方向における凹部51の寸法Dは、第1方向Yにおける凹部51の開口幅Wよりも大きい。なお、凹部51の深さ方向を、第3方向Zという。
【0023】
凹部51は、第1内面53と、第3内面55と、縁部内面57とを備えている。
第1内面53は、D部39の内面であり、凹部51の第1方向Yに位置する。第1内面53は、XZ平面と平行である。すなわち、第1内面53は、第1方向Yに対して垂直である。第3内面55は、C部37の内面であり、凹部51の第3方向Zに位置する。第3内面55は、第1内面53と連なっている。第3内面55は、XY平面と平行である。
【0024】
縁部内面57は、E部41の内面であり、凹部51の開口縁部すなわち凹部51の-Z方向の端部に位置する。縁部内面57は、第1内面53と連なっている。縁部内面57のうち、第3方向Zとは反対の第4方向Zすなわち-Z方向の端部を、手前側縁部内面端部59といい、第3方向Zすなわち+Z方向の端部を、奥側縁部内面端部61という。縁部内面57は、手前側縁部内面端部59が奥側縁部内面端部61よりも第1方向Yに位置するように、第1方向Yに対して傾斜している。すなわち、縁部内面57は、第1内面53の-Z方向の端部から-Y方向と-Z方向との間の斜め方向に延びている。縁部内面57の第1方向Yに対する傾斜角度αは、特に限定されないが、例えば40度以上50度以下である。
【0025】
本実施形態とは異なり、挟持位置Aと排出口3との間に凹部51が設けられていない構成では、印刷実行時に排出口3がユーザーの手などで塞がれた場合に、行き場を失った記録紙Pが、記録紙Pの途中からプラテンローラー17とプラテンローラー17の周囲の部材との隙間に入り込み、プラテンローラー17に巻き付いてしまうなどの不具合が生じるおそれがある。記録紙Pがプラテンローラー17に巻き付くと、プラテンローラー17を駆動する送りモーターの負荷が過大となるため、送りモーターが停止し、印刷装置1がエラー状態となってしまう。
【0026】
これに対し、本実施形態では、挟持位置Aと排出口3との間に凹部51が設けられているため、印刷実行時に排出口3が塞がれた場合にも、記録紙Pの先端が排出口3を塞いでいる物に当たった後、記録紙Pの途中の部分が凹部51に-Z方向から入り込み、記録紙Pがループ状に変形する。印刷実行中、記録紙Pはプラテンローラー17により送られ続けるため、凹部51に記録紙PのループLが次々と形成され、蛇腹状に折りたたまれた記録紙Pが凹部51に貯留される(図6参照)。ここで、上述したように、第3方向Zにおける凹部51の寸法Dは、第1方向Yにおける凹部51の開口幅Wよりも大きいため、凹部51に記録紙PのループLが良好に形成される。このように、凹部51は、印刷実行時に排出口3が塞がれた場合に、蛇腹状に折りたたまれた記録紙Pを貯留する空間として機能する。したがって、印刷実行時に排出口3が塞がれた場合にも、記録紙Pがプラテンローラー17に巻き付くことを抑制することができる。
【0027】
凹部51に貯留された記録紙Pは、印刷終了時にカッター21により切断される。上述したように、凹部51は、カッター21が記録紙Pを切断する切断位置Bと排出口3との間に設けられている。このため、ユーザーは、カッター21により記録紙Pが切断された後、排出口3から覗いた記録紙Pの先端を摘まんで、凹部51に貯留された記録紙Pを排出口3から容易に取り出すことができる。なお、凹部51の体積は、特に限定されないが、例えば、1回の印刷実行で想定される最大長さの記録紙Pを貯留可能な体積である。
【0028】
また、印刷開始前には、記録紙Pの先端が切断位置Bに位置しており、印刷が開始されると、記録紙Pの先端が切断位置Bから凹部51を通って排出口3へ送られる。このとき、記録紙Pの先端が+Z方向に反っていると、記録紙Pの先端が凹部51の内部に入り込むおそれがある。
【0029】
これに対し、本実施形態では、凹部51が、第1方向Yに対して傾斜した縁部内面57を備えている。縁部内面57は、切断位置Bから送られてきた記録紙Pの先端が縁部内面57に当たった場合に、記録紙Pの先端を、凹部51の外へ、すなわち縁部内面57に沿って-Y方向と-Z方向との間の斜め方向へ、ガイドする。これにより、記録紙Pの先端が排出口3へ送られ、記録紙Pの先端が凹部51の内部に入り込むことを抑制することができる。
【0030】
なお、装置ケース5の-Y方向の面において、排出口3の縁部に装置ケース5の外側に突出した突出部を設け、その突出部で囲まれた空間に記録紙Pを貯留させることも可能である。もっとも、本実施形態では、装置ケース5内に記録紙Pを貯留可能な凹部51を備えたことで、そのような突出部を排出口3の縁部に設ける必要がなく、排出口3の縁部を装置ケース5の外面と面一としたデザインを実現することができる。
【0031】
[第2実施形態]
図7ないし図10に基づいて、印刷装置の第2実施形態である印刷装置1について説明する。第2実施形態の印刷装置1は、第1実施形態の印刷装置1と略同様に構成されているが、紙貯留空間形成部材23の形状が異なる点で、相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
上述したように、第1実施形態の紙貯留空間形成部材23では、D部39が、C部37の-Y方向の端部から-Z方向に延びており、XZ平面に平行でX方向に長い略長方形の板状に形成されている。すなわち、凹部51の第1内面53は、第1方向Yに対して垂直である。これに対し、第2実施形態の紙貯留空間形成部材23では、D部39が、C部37の-Y方向の端部から-Y方向と-Z方向との間の斜め方向に延びており、XY平面に対して斜めに交差したX方向に長い略長方形の板状に形成されている。すなわち、凹部51の第1内面53は、手前側第1内面端部63が奥側第1内面端部65よりも第1方向Yに位置するように、第1方向Yに対して傾斜している。なお、手前側第1内面端部63とは、第1内面53の第4方向Zの端部を意味し、奥側第1内面端部65とは、第1内面53の第3方向Zの端部を意味する。
【0033】
上述したように、印刷実行時に、排出口3が塞がれていると、凹部51に記録紙PのループLが形成されるが、形成されるループLの姿勢は、第1内面53に倣った姿勢となる。すなわち、第1実施形態では、第1内面53が第1方向Yに対して垂直であるため、凹部51に形成されるループLが、第1方向Yに対して略垂直な姿勢となる(図6参照)。これに対し、第2実施形態では、第1内面53が第1方向に対して傾斜しているため、凹部51に形成されるループLが、第1方向Yに対して傾斜した姿勢となる(図10参照)。ここで、ループLが第1方向Yに対して傾斜した姿勢となるときには、ループLが第1方向Yに対して略垂直な姿勢となるときに比べて、記録紙Pの先端が、排出口3から装置ケース5内に引き込まれにくくなる。すなわち、第2実施形態では、第1内面53が第1方向Yに対して傾斜していることで、凹部51に形成されるループLが第1方向Yに対して傾斜した姿勢となり、記録紙Pの先端が排出口3から装置ケース5内に引き込まれにくくなる。したがって、カッター21により記録紙Pが切断された後、凹部51に貯留された記録紙Pを排出口3から取り出しにくくなることを抑制することができる。
【0034】
また、記録紙Pの先端が排出口3から装置ケース5内に引き込まれてしまい、凹部51に貯留された記録紙Pを排出口3から取り出すことが難しい場合には、開閉カバー9を開けて記録紙Pを凹部51から取り除く必要がある。開閉カバー9が開くとき、開閉カバー9は、凹部51に貯留された記録紙Pを、開閉カバー9に設けられたプラテンローラー17などの部材と、ケース本体7に設けられた紙貯留空間形成部材23と、の間で押し潰しながら、カバー回動軸13を中心として回動する。
【0035】
第1実施形態では、第1内面53が第1方向Yに対して垂直であるため、凹部51に比較的多量の記録紙Pが貯留される(図6参照)。開閉カバー9を開くときには、比較的多量の記録紙Pを押し潰すことになるため、開閉カバー9を開けるときの荷重が増加する。このため、力の弱いユーザーの場合、開閉カバー9を開けることができないおそれがある。
【0036】
これに対し、第2実施形態では、第1内面53が第1方向Yに対して傾斜しているため、凹部51に比較的少量の記録紙Pが貯留される(図10参照)。開閉カバー9を開くときには、比較的少量の記録紙Pを押し潰すことになるため、第1実施形態に比べ、開閉カバー9を開けるときの荷重が減少する。このため、力の弱いユーザーであっても、開閉カバー9を容易に開けることができる。
【0037】
このように、第2実施形態の印刷装置1では、第1内面53が第1方向Yに対して傾斜していることで、記録紙Pの先端が排出口3から装置ケース5内に引き込まれることを抑制することができ、また、凹部51に貯留される記録紙Pの量を少なくすることができる。
【0038】
さらに、第2実施形態の印刷装置1では、凹部51が、第1内面53よりも第1方向Yに対する傾斜角度が小さい縁部内面57を備えていることで、切断位置Bから送られてきた記録紙Pの先端が縁部内面57に当たった場合に、記録紙Pの先端が凹部51の外へガイドされる。このため、記録紙Pの先端が凹部51の内部に入り込むことを抑制することができる。
【0039】
第1方向Yに対する第1内面53の傾斜角度βは、特に限定されず、例えば、55度以上65度以下である。第1内面53の傾斜角度βが小さいほど、記録紙Pの先端が排出口3から装置ケース5内に引き込まれにくくなり、また、凹部51に貯留される記録紙Pの量が少なくなる。第1内面53の傾斜角度βが大きいほど、第1方向Yにおける凹部51の寸法を小さくすることができる。また、第1方向Yに対する縁部内面57の傾斜角度αは、第1方向Yに対する第1内面53の傾斜角度βよりも小さい。
【0040】
[その他の変形例]
上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。また、実施形態や変形例を、それぞれ組み合わせた構成でもよい。
【0041】
凹部51は、記録紙Pの第1面Paに面して設けられた構成に限定されず、記録紙Pの第2面Pbに面して設けられた構成でもよい。また、凹部51は、ケース本体7および開閉カバー9のうち、ケース本体7に設けられた構成に限定されず、開閉カバー9に設けられた構成でもよい。
【0042】
凹部51は、固定刃25と紙貯留空間形成部材23により形成される構成に限定されず、例えば、紙貯留空間形成部材23のみにより形成される構成でもよく、固定刃25以外の部材と紙貯留空間形成部材23とにより形成される構成でもよい。
【0043】
カッター21は、モーター駆動である構成に限定されず、例えばレバー操作により作動する構成でもよい。すなわち、カッター21は、オートカッターである構成に限定されず、マニュアルカッターでもよい。また、カッター21は、記録紙Pを、記録紙Pの幅方向の一部を残して切断する構成に限定されず、記録紙Pを記録紙Pの幅方向に完全に切断する構成でもよい。
【0044】
ロール紙収容部11は、ドロップイン方式でロール紙Rが投入される構成に限定されず、例えば、ロール紙Rを回転可能に支持する支軸を備えた構成でもよい。
【0045】
印刷装置1の印刷方式は、サーマル方式に限定されず、例えば、インクジェット方式でもよく、電子写真方式でもよい。
【0046】
[付記]
以下、印刷装置について付記する。
印刷装置は、記録紙が巻かれたロール紙を収容可能なロール紙収容部と、ロール紙収容部に収容されたロール紙から引き出された記録紙を、排出口に向けて送る送りローラーと、送りローラーから排出口へ向かう第1方向と交差する第2方向に延在し、送りローラーと排出口との間で第1方向へ送られる記録紙の一方の面に面して設けられた凹部と、を備え、凹部の深さ方向である第3方向における凹部の寸法は、第1方向における凹部の開口幅よりも、大きい。
【0047】
この構成によれば、印刷実行時に排出口が塞がれた場合に、凹部に蛇腹状に折りたたまれた記録紙を貯留することができる。
なお、プラテンローラー17は、「送りローラー」の一例である。
【0048】
この場合、凹部は、凹部の第3方向に位置する第3内面と、第3内面に連なり、凹部の第1方向に位置する第1内面と、を有し、第1内面は、第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側第1内面端部が、第3方向の端部である奥側第1内面端部よりも、第1方向に位置するように、第1方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0049】
この構成によれば、記録紙が蛇腹状に折りたたまれて凹部に貯留された場合に、記録紙の先端が排出口から印刷装置内に引き込まれることを抑制することができる。したがって、凹部に貯留された記録紙を排出口から取り出しにくくなることを抑制することができる。また、凹部に貯留される記録紙の量を少なくすることができる。
【0050】
この場合、凹部は、第1内面に連なり、凹部の開口縁部に位置する縁部内面、を有し、縁部内面は、第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側縁部内面端部が、第3方向の端部である奥側縁部内面端部よりも、第1方向に位置するように、第1方向に対して傾斜し、第1方向に対する縁部内面の傾斜角度は、第1方向に対する第1内面の傾斜角度よりも小さいことが好ましい。
【0051】
この構成によれば、記録紙の先端が縁部内面に当たった場合に、記録紙の先端が凹部の外へガイドされる。したがって、記録紙の先端が凹部の内部に入り込むことを抑制することができる。
【0052】
この場合、凹部は、凹部の第3方向に位置する第3内面と、第3内面に連なり、凹部の第1方向に位置する第1内面と、第1内面に連なり、凹部の開口縁部に位置する縁部内面と、を有し、縁部内面は、第3方向とは反対の第4方向の端部である手前側縁部内面端部が、第3方向の端部である奥側縁部内面端部よりも、第1方向に位置するように、第1方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0053】
この構成によれば、記録紙の先端が縁部内面に当たった場合に、記録紙の先端が凹部の外へガイドされる。したがって、記録紙の先端が凹部の内部に入り込むことを抑制することができる。
【0054】
この場合、排出口が設けられた装置ケース、を備え、排出口の縁部は、装置ケースの外面と面一であることが好ましい。
【0055】
この構成によれば、記録紙を貯留可能な凹部を備えたことで、記録紙を貯留するための突出部を排出口の縁部に設ける必要がなく、排出口の縁部を装置ケースの外面と面一としたデザインを実現することができる。
【0056】
この場合、記録紙を切断するカッター、を備え、凹部は、カッターが記録紙を切断する切断位置と排出口との間に設けられていることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、ユーザーは、カッターにより記録紙が切断された後、排出口から覗いた記録紙の先端を摘まんで、凹部に貯留された記録紙を排出口から容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1…印刷装置、3…排出口、5…装置ケース、11…ロール紙収容部、17…プラテンローラー、21…カッター、51…凹部、53…第1内面、55…第3内面、57…縁部内面、59…手前側縁部内面端部、61…奥側縁部内面端部、63…手前側第1内面端部、65…奥側第1内面端部、B…切断位置、P…記録紙、R…ロール紙。
図1
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図10