(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018509
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車載装置、情報処理方法及び車載システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/023 20060101AFI20240201BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240201BHJP
H04L 41/0833 20220101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R16/023 P
B60R16/02 660N
H04L41/0833
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121894
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】谷中 裕太
(72)【発明者】
【氏名】石原 章生
(57)【要約】
【課題】起動が不要な車載ECUと車載ネットワークとの接続を遮断する車載装置等を提供する。
【解決手段】車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、
前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、
前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、
前記制御部は、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
車載装置。
【請求項2】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
前記制御部は、
前記起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、
特定した前記他の車載ECUに接続される通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力する
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記複数の車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される車載ECUと、前記通信遮断部を介さず前記車載ネットワークに接続される車載ECUとを含む
請求項1又は請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU以外の車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される
請求項3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、
いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される
請求項3に記載の車載装置。
【請求項6】
前記複数の車載ECUそれぞれが、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される車載ECUであるか、又は前記通信遮断部を介さず前記車載ネットワークに接続される車載ECUであるかを示す接続形態情報が記憶される記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記接続形態情報を参照して、出力する遮断信号の対象となる車載ECUを特定する
請求項3に記載の車載装置。
【請求項7】
車載ネットワークに通信遮断部を介して接続される複数の車載ECUと、通信可能に接続されるコンピュータに、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項8】
車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと車載装置とを含む車載システムであって、
前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、
前記車載装置は、
起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、
取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、
前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、
前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する
車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置、情報処理方法及び車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のECU(Electronic Control Unit)が通信バスに接続されている車載システムが開示されている。各ECUは、通信バスを介して他のECUと通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車載システムでは、複数のECUの消費電力に関し何ら考慮されていないという問題点がある。
【0005】
本開示は、起動が不要な車載ECUと車載ネットワークとの接続を遮断することができる車載装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、起動が不要な車載ECUと車載ネットワークとの接続を遮断する車載装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】車載装置の内部構成を例示するブロック図である。
【
図3】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図4】車載ECUの接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。
【
図5】実施形態2(コスト考慮型)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図6】車載装置の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【
図7】車載ECUの接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。
【
図8】実施形態3(コスト優先型)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【
図9】実施形態4(通信及び電源複合型)に係る車載装置等を含む車載システムの構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載装置は、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと通信可能に接続される車載装置であって、前記車載ECUとの通信に関する処理を行う制御部を備え、前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、前記制御部は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【0011】
本態様にあたっては、車載ネットワークに接続される車両に搭載される複数の車載ECUは、通信遮断部を介して、車載ネットワークに接続される。通信遮断部それぞれは、個々の車載ECUに対して設けられているものであってもよい。これら通信遮断部それぞれと車載装置とは、例えばシリアルケーブル、ワイヤーハーネス又は、一つの信号のみを送信する導電ケーブル(じか線)等の信号線により通信可能に接続されている。通信遮断部は、例えば、半導体リレー又は機械式リレー等にて構成されており、車載装置から出力される信号に応じて、車載ECUと車載ネットワークとの通信経路を物理的に遮断する遮断状態と、車載ECUと車載ネットワークとを接続する接続状態とを遷移する。すなわち、通信遮断部は、車載装置から遮断信号が出力された場合、車載ECUと車載ネットワークとの通信経路を物理的に遮断する遮断状態に遷移する。通信遮断部は、車載装置から遮断信号が出力されていない場合(通常状態の場合)、車載ECUと車載ネットワークとを接続する接続状態を維持する。又は、通信遮断部は、車載装置から接続信号が出力された場合、車載ECUと車載ネットワークとを接続する接続状態に遷移するものであってもよい。車載装置の制御部は、例えば特定のサービスを実行するため、起動対象となる車載ECUに対し、例えばウェイクアップ信号等の起動信号を出力する際、当該起動対象の車載ECU以外の車載ECUであって、起動信号(ウエイクアップ信号)に影響を受ける車載ECUに接続される通信遮断部に対し、車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力する。これにより、実行を要するサービスに関する処理を行う車載ECUのみを起動し、当該サービスの実行に関与しない他の車載ECUが起動することを不要とし、これら他の車載ECUによって電力が消費されることを抑制することができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、前記制御部は、前記起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、特定した前記他の車載ECUに接続される通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力する。
【0013】
本態様にあたっては、車載ネットワークにおいて、例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDの通信プロコトルに応じた通信が行われる場合、当該車載ネットワークの物理層は、CANバス等による複数の通信線により構成される。この際、単一の通信線(同じ通信線)には、複数の車載ECUが接続されるものとなり、これら複数の車載ECUのうち、いずれかの車載ECUを起動(ウェイクアップ)されるための起動信号(ウェイクアップ信号)は、同じ通信線に接続される全ての車載ECUに対し出力(送信)されるものとなる。このような場合であっても、車載装置の制御部は、起動対象の車載ECUと同じ通信線に接続される他の車載ECUを特定し、特定した他の車載ECUに接続される通信遮断部に対し、車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力する。従って、起動対象でない車載ECU(他の車載ECU)と、CANバス(車載ネットワークを構成する通信線)との間に設けられている通信遮断部は、車載装置からの遮断信号に応じて、遮断状態となるため、起動信号(ウェイクアップ信号)は、起動対象でない車載ECUに到達しない。従って、起動対象でない車載ECUにおけるスリープ状態を維持することができ、これら起動対象でない車載ECUによって電力が消費されることを抑制することができる。又、起動(ウェイクアップ)又は待機(スリープ)の状態遷移に対し個別に対応が可能なパーシャル機能を有する車載ECUを用いる場合と比較し、当該パーシャル機能を有する車載ECUよりも比較的に安価な車載ECUを用いて車載システムを構築することができる。すなわち、同一の通信線に複数の車載ECUが接続される車載ネットワークを含む車載システムにおいて、車載ECUの選択起動を通信遮断方式にて実現することにより、製品コストを低減しつつ、起動不要な車載ECUによる暗電流が増加することを抑制することができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載装置は、前記複数の車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される車載ECUと、前記通信遮断部を介さず前記車載ネットワークに接続される車載ECUとを含む。
【0015】
本態様にあたっては、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUは、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続される車載ECUと、通信遮断部を介さず車載ネットワークに接続される車載ECUとを含む。従って、例えば、起動される頻度が比較的に高い車載ECUは、通信遮断部を介さず、CANバス等の車載ネットワークに直接接続することにより、通信遮断部の必要数量を低減し、製品コストの削減を行うことができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU以外の車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される。
【0017】
本態様にあたっては、車載ネットワークが複数のCANバスにより構成される場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUの消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU以外の車載ECUのみ、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続するものであってもよい。又は、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最小の車載ECUを、所定の閾値以下の消費電力の車載ECUとして設定するものであってもよい。この場合、当該消費電力が最小の車載ECUは、通信遮断部を介することなく車載ネットワークに接続される。同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最小の車載ECU以外の他の車載ECUは、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続される。このように所定の閾値以下の消費電力の車載ECU、特に消費電力が最小の車載ECUは、通信遮断部を不要とすることにより、通信遮断部の必要数量を低減し製品コストの削減を行うことができ、当該消費電力が最小の車載ECUによる電力消費を許容することにより、コスト考慮型の車載システムを構成することができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載装置は、前記車載ネットワークは、複数の通信線により構成され、いずれかの前記通信線に接続される前記複数の車載ECUのうち、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECUは、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される。
【0019】
本態様にあたっては、車載ネットワークが複数のCANバスにより構成される場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUの消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECUのみ、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続するものであってもよい。又は、同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、消費電力が最大の車載ECUを、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECUとして設定するものであってもよい。この場合、当該消費電力が最大の車載ECUのみが、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続される。同一のCANバスに接続される複数の車載ECUにおいて、当該消費電力が最大の車載ECU以外の他の車載ECUは、通信遮断部を介することなく車載ネットワークに接続される。このように消費電力が最大の車載ECUのみ、通信遮断部を介して車載ネットワークに接続することにより、通信遮断部の必要数量を更に低減し、製品コストの更なる削減を行うことができ、コスト優先型の車載システムを構成することができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、前記複数の車載ECUそれぞれが、前記通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続される車載ECUであるか、又は前記通信遮断部を介さず前記車載ネットワークに接続される車載ECUであるかを示す接続形態情報が記憶される記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記接続形態情報を参照して、出力する遮断信号の対象となる車載ECUを特定する。
【0021】
本態様にあたっては、車載装置の記憶部等、制御部がアクセス可能な記憶領域には、車載ECUそれぞれの接続形態を示す接続形態情報が、例えばテーブル形式(接続形態テーブル)が記憶されている。車載装置の制御部は、記憶部に記憶される接続形態情報を参照して、出力する遮断信号の対象となる車載ECUを特定する。従って、車載ネットワークに接続される車載ECUにおいて、通信遮断部を介して接続される車載ECUと、通信遮断部を介さず車載ネットワークに直接接続される車載ECUとが混在する場合であっても、車載装置の制御部は、遮断信号の対象となる車載ECUを効率的に特定することができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る情報処理方法は、車載ネットワークに通信遮断部を介して接続される複数の車載ECUと、通信可能に接続されるコンピュータに、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【0023】
本態様にあたっては、コンピュータを、起動が不要な車載ECUと車載ネットワークとの接続を遮断する車載装置として機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る車載システムは、車載ネットワークに接続される複数の車載ECUと車載装置とを含む車載システムであって、前記車載ECUは、通信遮断部を介して前記車載ネットワークに接続されており、前記車載装置は、起動対象の車載ECUに関する情報を取得し、取得した情報に基づき、前記起動対象の車載ECUを特定し、前記起動対象の車載ECU以外の車載ECUに接続される前記通信遮断部に対し、前記車載ネットワークとの接続を遮断する遮断信号を出力し、前記起動対象の車載ECUに対し、前記車載ネットワークを介して起動信号を出力する。
【0025】
本態様にあたっては、起動が不要な車載ECUと車載ネットワークとの接続を遮断する車載装置を含む車載システムを提供することができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載装置1を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0027】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。
図2は、車載装置1の内部構成を例示するブロック図である。車載システムSは、車両Cに搭載される車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。車載ネットワーク3は、複数の通信線31により構成される。車載ネットワーク3における通信が、例えばCAN(Controller Area Network)又はCAN-FDの通信プロコトルに応じた通信が行われる場合、通信線31はCANバスに相当する。
【0028】
車載ECU2それぞれと、CANバス等による通信線31とは、通信遮断部4を介して接続されている。車載ECU2それぞれに対応して設けられた通信遮断部4それぞれと、車載装置1とは信号線41によって通信可能に接続されている。通信遮断部4は、車載装置1から出力された遮断信号に応じて、車載ECU2と通信線31との接続を遮断する。通信遮断部4が遮断状態となり、車載ECU2と通信線31との接続が遮断されることにより、車載ECU2は、車載ネットワーク3に伝送される通信データの受信が不可となる。
【0029】
車載ECU2は、後述する車載装置1と同様に制御部、記憶部、及び通信部を備える。車載ECU2は、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の機能又はサービスを実行するための処理を行う。これら車載ECU2は、鉛バッテリ、オルタネータ又は二次電池等にて構成される電源装置5と、電源線51にて接続されている。車載ECU2は、当該電源線51を介して、電源装置5から電力が供給される。車載ECU2は、車載装置1から送信されるウェイクアップ信号又はスリープ信号を受信することにより、ウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移する。
【0030】
車載装置1は、例えばCANゲートウェイ等の中継装置である。又は、車載装置1は、車両Cの全体を統合的に制御し、中継機能を有する統合ECU(ヴィークルコンピュータ)であってもよい。又は、車載装置1は、車両Cのボディ系アクチュエータを制御するボディECU等として構成されるものであってもよい。又は、車載装置1は、通信に関する中継に加え、二次電池等の電源装置5から出力された電力を分配及び中継し、アクチュエータ等の車載器に電力を供給する電力分配装置としても機能するPLB(Power Lan Box)であってもよい。車載装置1には、各種スイッチ、センサ又はアクチュエータ等の車載機器が接続されるものであってもよい。
【0031】
車載装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13、及び入出力I/F14を含む。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部12に予め記憶された制御プログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0032】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子、又は、これら記憶デバイスの組み合わせにより構成してあり、制御プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部12に記憶された制御プログラムP(プログラム製品)は、車載装置1が読み取り可能な記録媒体Mから読み出された制御プログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0033】
通信部13は、例えばCAN、CAN-FD又はイーサネット(Ethernet/登録商標)等の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイスであり、制御部11は、通信部13を介して車載ネットワーク3に接続されている車載ECU2と相互に通信する。車載装置1において、通信部13は、複数個、設けられており、通信部13それぞれに対しCANバス等の通信線31が接続される。中継装置と機能する車載装置1は、これら複数の通信部13(CANバス等の通信線31)の間にて送受信される通信データを中継する。
【0034】
入出力I/F14は、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F14は、複数の端子(出力端子)を含み、端子それぞれには、通信遮断部4それぞれに延設される信号線41それぞれが、接続されている。信号線41は、例えば、シリアルケーブル、ワイヤーハーネス又はじか線等により構成される。更に入出力I/F14には、車両Cの起動及び停止を行うIGスイッチ141が接続されるものであってもよい。更に、入出力I/F14には、車両Cの操作者によって操作される各種装置、及び各種センサが接続されるものであってもよい。
【0035】
信号線41それぞれは、車載ECU2それぞれに対応して設けられた通信遮断部4それぞれに接続されている。通信遮断部4は、車載ECU2と、通信線31との間に介在して配置されている。通信遮断部4は、例えば、半導体リレー、機械式リレー、スイッチ、可変抵抗又は可変インダクタンスを含み回路体等にて構成される。通信遮断部4は、例えば常時オンとなるように構成されており、信号線41を介して車載装置1から出力された遮断信号に応じて、遮断状態に遷移する。通信遮断部4が遮断状態となることにより、車載ECU2と通信線31(車載ネットワーク3)との通信経路が物理的に遮断され、車載ECU2は車載ネットワーク3から切り離された状態となる。
【0036】
車載装置1の制御部11は、プログラムを実行することにより、電源遷移マネージャとして機能し、通信遮断制御機能(通信遮断制御部)、及び通信WU/SLP制御機能(通信WU/SLP制御部)を有する(含む)。WUはウェイクアップ(Wake UP)を示し、SLPはスリープ(Sleep)を示す。電源遷移マネージャは、車載ECU2に対しウェイクアップ信号又はスリープ信号を出力することにより、当該車載ECU2をウェイクアップ状態(起動状態)、又はスリープ状態(停止又は待機状態)に遷移させる。このように状態遷移されることにより、車載ECU2は、ウェイクアップ状態(起動状態)においては電源装置5からの給電が行われ、スリープ状態(停止又は待機状態)においては、電源装置5からの給電が行わない又は消費電力が低減する。電源遷移マネージャは、いずれかの車載ECU2に対しウェイクアップ信号を出力する際、当該ウェイクアップ信号に影響を受ける車載ECU2(他の車載ECU2)に接続される通信遮断部4に対し、車載ネットワーク3との接続を遮断する遮断信号を出力する。電源遷移マネージャとして機能する車載装置1の制御部11に関する詳細は、後述するフローチャートにて説明する。
【0037】
図3は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、車両Cの起動時(IGスイッチがオン)又は停止時(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0038】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に関する情報を取得する(S101)。車載装置1の制御部11は、例えば、入出力I/F14に接続されているスイッチからの信号を取得、又は通信部13を介してCANメッセージ等の通信データを取得することにより、これら信号又は通信データに含まれる起動対象の車載ECU2に関する情報する。
【0039】
車載装置1は、例えば、車両Cにおけるボディ系アクチュエータを駆動制御するBCU(ボディECU)として構成されており、電源装置5から常時給電を受けている。車載装置1の制御部11は、入出力I/F14を介して、当該入出力I/F14に接続されているスイッチ又はセンサから出力される各種の信号(入力信号)を取得(受信)する。又は、車載装置1の制御部11は、CANトランシーバ等の通信部13及び車載ネットワーク3を介して、車載ECU2から送信されるCANメッセージ等の通信データを取得(受信)する。これら信号又は通信データには、例えば、車両Cとして実行する各種機能又はサービスに関する情報が含まれている。これら機能又はサービスは、予め定められた車載ECU2の処理によって行われるもとして予め定義されており、当該サービス等を実行する際に起動対象となる車載ECU2に関する情報に相当する。又は、これら信号又は通信データには、起動対象の車載ECU2に関する情報そのものが含まれているものであってもよい。車載装置1の制御部11は、これら取得した信号又は通信データをトリガーとし、以下のように電源給電や起動が必要な車載ECU2(機器)を判断し、判断結果に基づき、電源制御、通信制御、及び通信遮断制御等を含む制御処理を実施する。
【0040】
車載装置1の制御部11は、取得した情報に基づき、起動対象の車載ECU2を特定する(S102)。取得した情報、すなわち受信した信号又は通信データに、実行要求された機能又はサービスに関する情報が含まれている場合、車載装置1の制御部11は、これらサービス等に関する情報に基づき、当該サービスに関する処理を行う車載ECU2を、起動対象の車載ECU2を特定する。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0041】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される他の車載ECU2を特定する(S103)。車載ネットワーク3が、例えば複数の通信線31(CANバス)により構成される場合、各CANバスそれぞれには、複数の車載ECU2が接続されることが想定される。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される車載ECU2であって、当該起動対象の車載ECU2以外となる他の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0042】
図4は、車載ECU2の接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。車載装置1の記憶部12等、車載装置1の制御部11がアクセス可能な記憶領域には、車載ECU2それぞれの接続形態を示す接続形態情報が、例えばテーブル形式(接続形態テーブル)にて記憶されている。車載装置1がCANゲートウェイ等の中継装置として機能する場合、当該接続形態テーブルは、車載装置1が中継処理(ルーティング処理)を行う際に参照する経路情報(ルーティングテーブル)の一部位として構成されるものであってもよい。接続形態テーブルは、管理項目(フィールド)として、ECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名を含む。
【0043】
ECUIDの管理項目には、車載ネットワーク3に接続される全ての車載ECU2を一意に特定する識別番号(ID)が格納される。当該識別番号(ID)は、車載ECU2の製造番号(SN)を用いるものであってもよい。車載ネットワーク3における通信プロトコルがTCP/IPの場合、識別番号(ID)は、車載ECU2のIPアドレス又はMACアドレスであってもよい。車載装置1の制御部11は、ECUIDを用いることにより、車載ECU2それぞれを一意に特定することができる。
【0044】
バス番号の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2が接続される通信線31(CANバス)の番号が格納される。当該バス番号は、車載装置1が備える通信部13それぞれのデバイス番号に相当する。車載装置1の制御部11は、バス番号を用いることにより、同じ通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2を特定することができる。
【0045】
端子番号の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2の通信遮断部4に接続される入出力I/F14の端子番号が、格納される。車載ECU2の通信遮断部4それぞれに対し、車載装置1の入出力I/F14から延設される信号線41それぞれが、接続される。入出力I/F14は、複数の端子を含み、通信遮断部4それぞれに延設される信号線41それぞれは、個々の端子に接続される。車載装置1の制御部11は、端子番号を用いることにより、遮断対象となる通信遮断部4が接続される車載ECU2を特定することができる。
【0046】
サービス名の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2が担うサービス名が、格納される。車載装置1の制御部11は、当該サービス名を用いることにより、実行すべきサービス又は機能に対応する(担う)車載ECU2を特定することができる。
【0047】
車載装置1の制御部11は、特定した他の車載ECU2に接続される通信遮断部4に対し、遮断信号を出力する(S104)。車載装置1の制御部11は、例えば接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される他の車載ECU2を特定し、当該他の車載ECU2に接続される通信遮断部4に対応する入出力I/F14の端子番号を特定する。
【0048】
車載装置1の制御部11は、特定した端子番号の端子(入出力I/F14の端子)から、通信遮断部4に対し、遮断信号を出力する。通信遮断部4が例えば半導体リレー又は機械式リレーで構成されている場合、車載装置1の制御部11は、特定した端子番号の端子から、リレーをオフにするオフ信号を出力する。通信遮断部4は、例えば、常時オン(接続)の状態を維持するものであってもよい。その上で、車載装置1からの遮断信号を受信した通信遮断部4は、車載ECU2とCANバス等の通信線31との接続を遮断する。これにより、当該車載ECU2は、通信線31(車載ネットワーク3)から切り離された状態となる。従って、当該通信線31にて、車載装置1から出力されたウェイクアップ信号等の起動信号が伝送された場合であっても、ウェイクアップ信号は車載ECU2に到達しないものとなる。
【0049】
通信遮断部4は、常時オン(接続)の状態を維持するとして説明したが、これに限定されない。通信遮断部4は、常時オフ(遮断)の状態を維持するものであってもよい。この場合、車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に接続される通信遮断部4に対し、接続信号(オン信号)を出力し、起動対象の車載ECU2と通信線31とを接続し、当該起動対象の車載ECU2が起動信号(ウエイクアップ信号)を受信できる状態にするものであってもよい。
【0050】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する(S105)。車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31(CANバス)に接続される他の車載ECU2に対し、当該車載ECU2に接続される通信遮断部4に対し遮断信号を出力することにより、これら他の車載ECU2を通信線31(車載ネットワーク3)から切り離した状態にしている。車載装置1の制御部11は、当該切り離した状態を維持しつつ、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する。これにより、起動対象の車載ECU2は、スリープ状態(停止又は待機状態)からウェイクアップ状態(起動状態)に遷移し、実行すべきサービス又は機能を発揮するための処理を開始する。
【0051】
車載ネットワーク3が、例えばCANのプロトコルを用いている場合、車載ネットワーク3は、複数の通信線31(CANバス)により構成されるものとなる。この場合、いずれかのCANバスにおいて、ウェイクアップ信号が伝送された場合、当該CANバスに接続されている全ての車載ECU2が、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する。例えば、車両Cの駐車時(停止時)等にて特定の機能又はサービスのみを利用する場合、当該サービスに関する処理を担う車載ECU2を起動、すなわちウェイクアップ状態に遷移させることを要する。この際、当該起動対象の車載ECU2が接続されるCANバスにウェイクアップ信号が伝送されると、当該CANバスに接続される全て車載ECU2がウェイクアップ信号を受信し、起動(ウェイクアップ状態に遷移)するものとなる。この場合、利用するサービスに対応する車載ECU2のみならず、当該車載ECU2と同じCANバスに接続される全ての車載ECU2に対しても給電が行われるものなり、本来利用したいサービス等以上に電力を消費(電流が増加)するものとなる。これに対し、本実施形態における車載装置1を用いることにより、利用するサービスに対応する車載ECU2以外となる他の車載ECU2については、当該他の車載ECU2の接続される通信遮断部4をオフ、すなわち車載ECU2と通信線31(CANバス)との接続(通信経路)を切断する。これにより、これら他の車載ECU2は、起動信号(ウエイクアップ信号)を受信することなく、スリープ状態を維持することができ、これら起動対象でない車載ECU2によって電力が消費されることを抑制することができる。
【0052】
(実施形態2)
図5は、実施形態2(コスト考慮型)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。実施形態2の車載システムSは、実施形態1と同様に、車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。本実施形態における車載システムSにおいては、通信遮断部4を介して接続される車載ECU2と、通信遮断部4を介さず車載ネットワーク3に直接接続される車載ECU2とが混在する。
【0053】
車載ネットワーク3を構成する複数の通信線31(CANバス)それぞれにおいて、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2以外の車載ECU2のみが、通信遮断部4を介して車載ネットワーク3に接続される。従って、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2には、通信遮断部4が設けられておらず、当該車載ECU2は、通信遮断部4を介さず通信線31(CANバス)に直接接続される。
【0054】
このような接続形態とする場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最小の車載ECU2を、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU2として設定するものであってもよい。例えば、同一のCANバスに3つの車載ECU2(A,B,C)が接続される場合、ECU(A)、ECU(B)、ECU(C)の順に消費電力(W)が小さくなるもとする(ECU(A)>ECU(B)>ECU(C))。この場合、最も消費電力が小さいECU(C)のみ、通信遮断部4を介さず通信線31(CANバス)に直接接続することにより、通信遮断部4を不要とすることができる。すなわち、消費電力が最小の車載ECU2による電力消費を許容することで、当該車載ECU2(消費電力が最小の車載ECU2)に対する通信遮断部4を不要とすることにより、通信遮断部4の必要数量を低減し製品コストの削減を行うことができ、コスト考慮型の車載システムSを構成することができる。
【0055】
図6は、車載装置1の制御部11の処理を例示するフローチャートである。車載装置1の制御部11は、車両Cの起動時(IGスイッチがオン)又は停止時(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0056】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に関する情報を取得する(S201)。車載装置1の制御部11は、取得した情報に基づき、起動対象の車載ECU2を特定する(S202)。車載装置1の制御部11は、実施形態1の処理S101からS102と同様にS201からS202の処理を行う。
【0057】
車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、通信遮断部4を介して接続されている他の車載ECU2を特定する(S203)。本実施形態においては、車載ネットワーク3に接続される全ての車載ECU2に対し、通信遮断部4が接続されるものでなく、通信遮断部4を介して接続される車載ECU2と、通信遮断部4を介さず車載ネットワーク3に直接、接続される車載ECU2とが混在している。同一の通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、これら車載ECU2の消費電力が異なることが想定される。この場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、所定の閾値以下の消費電力の車載ECU2以外の車載ECU2のみ、通信遮断部4を介して車載ネットワーク3に接続するものであってもよい。更には、同一の通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最小の車載ECU2は、通信遮断部4を介することなく、車載ネットワーク3に直接、接続するものであってもよい。
【0058】
このような接続形態において、車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、通信遮断部4を介して、通信線31(CANバス)に接続されている他の車載ECU2を特定する。車載装置1の制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている接続形態テーブルを参照することにより、当該他の車載ECU2を特定するものであってもよい。
【0059】
図7は、車載ECU2の接続形態を示す接続形態テーブルに関する説明図である。接続形態テーブルは、管理項目(フィールド)として、実施形態1と同様にECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名を含み、更に接続形態を含む。ECUID、バス番号、端子番号、及びサービス名の管理項目については、実施形態1と同様の事項が格納される。
【0060】
接続形態の管理項目には、同じレコードにおけるECUIDにて特定される車載ECU2に対し、通信遮断部4が接続されているか否か、すなわち通信遮断部4の有無が格納される。接続形態が無である車載ECU2には、通信遮断部4が接続されていない。当該接続形態が無である車載ECU2は、この車載ECU2が接続される通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、最も消費電力が少ない車載ECU2に相当する。
【0061】
車載装置1の制御部11は、接続形態テーブルを参照することにより、起動対象の車載ECU2と同じ通信線31に接続される車載ECU2であって、通信遮断部4を介して接続されている他の車載ECU2(接続形態:有)を効率的に特定することができる。本実施形態において、各通信線31(CANバス)に接続される複数の車載ECU2において、最も消費電力が少ない車載ECU2に対しては、通信遮断部4を設けることを不要とすることにより、製品コストの削減を図ることができる。
【0062】
車載装置1の制御部11は、特定した他の車載ECU2に接続される通信遮断部4に対し、遮断信号を出力する(S204)。車載装置1の制御部11は、起動対象の車載ECU2に対し、車載ネットワーク3を介して起動信号(ウエイクアップ信号)を出力する(S205)。車載装置1の制御部11は、実施形態1の処理S104からS105と同様にS204からS205の処理を行う。
【0063】
(実施形態3)
図8は、実施形態3(コスト優先型)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。実施形態3の車載システムSは、実施形態1と同様に、車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。本実施形態における車載システムSにおいては、通信遮断部4を介して接続される車載ECU2と、通信遮断部4を介さず車載ネットワーク3に直接接続される車載ECU2とが混在する。
【0064】
車載ネットワーク3を構成する複数の通信線31(CANバス)それぞれにおいて、消費電力が所定の閾値よりも大きい車載ECU2のみが、通信遮断部4を介して車載ネットワーク3に接続される。従って、消費電力が所定の閾値以下の車載ECU2には、通信遮断部4が設けられておらず、当該車載ECU2は、通信遮断部4を介さず通信線31(CANバス)に直接接続される。
【0065】
このような接続形態とする場合、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、消費電力が最大の車載ECU2を、所定の閾値よりも大きい消費電力の車載ECU2として設定するものであってもよい。例えば、同一のCANバスに3つの車載ECU2(A,B,C)が接続される場合、ECU(A)、ECU(B)、ECU(C)の順に消費電力(W)が小さくなるもとする(ECU(A)>ECU(B)>ECU(C))。この場合、最も消費電力が大きいECU(A)のみ、通信遮断部4を介して車載ネットワーク3に接続することにより、ECU(B)及びECU(C)に対する通信遮断部4を不要とすることができる。すなわち、同一のCANバスに接続される複数の車載ECU2において、当該消費電力が最大の車載ECU2(ECU(A))以外の他の車載ECU2(ECU(B)、ECU(C))は、通信遮断部4を介することなく車載ネットワーク3に接続される。
【0066】
このように消費電力が最大の車載ECU2のみ、通信遮断部4を介して車載ネットワーク3に接続することにより、通信遮断部4の必要数量を最低限とすることができ、製品コストの更なる削減を図るコスト優先型の車載システムSを構成することができる。本実施形態における車載システムSにおいて、車載装置1の制御部11は、実施形態2と同様のフローチャートにて、通信遮断部4に対する制御を行うものであってもよい。
【0067】
(実施形態4)
図9は、実施形態4(通信及び電源複合型)に係る車載装置1等を含む車載システムSの構成を例示する模式図である。実施形態4の車載システムSは、実施形態1と同様に、車載装置1、車載ECU2、及びこれらを通信可能に接続する車載ネットワーク3により構成される。本実施形態における車載システムSにおいては、通信遮断部4を介して通信線31に接続される車載ECU2と、給電遮断部52を介して電源線51に接続される車載ECU2とが混在する。
【0068】
車載ECU2それぞれは、電源装置5から延設される電源線51と接続されており、当該電源線51を介して電源装置5から電力が供給(給電)される。車載ネットワーク3を構成する複数の通信線31(CANバス)において、いずれかの通信線31に接続される車載ECU2には、給電遮断部52が設けられておらず、その代わりに給電遮断部52が設けられている。給電遮断部52は、車載ECU2と電源線51との間に介在して配置されている。給電遮断部52それぞれには、車載装置1の入出力I/F14の端子それぞれか延設される信号線41が、接続されている。すなわち、給電遮断部52と車載装置1とは、通信可能に接続されている。
【0069】
給電遮断部52は、例えば、半導体リレー、機械式リレー、スイッチ、可変抵抗又は可変インダクタンスを含み回路体等にて構成される。給電遮断部52は、常時オンとなるように構成されており、信号線41を介して車載装置1から出力された遮断信号に応じて、遮断状態に遷移する。給電遮断部52が遮断状態となることにより、車載ECU2と電源線51とは切断された状態となり、従って、電源装置5からの電力の供給も遮断(停止)される。これにより、車載ECU2が接続される通信線31に起動信号(ウエイクアップ信号)が伝送された場合であっても、当該車載ECU2の停止状態は維持される。これにより、実行要求されたサービスに関与しない車載ECU2が起動することを防止し、当該車載ECU2によって電力が不要に消費されることを抑制することができる。
【0070】
本実施形態における車載システムSにおいて、車載装置1の制御部11は、実施形態1と同様のフローチャートにて、通信遮断部4及び給電遮断部52に対する制御を行うものであってもよい。すなわち、接続形態テーブルには、通信遮断部4又は給電遮断部52それぞれに接続される入出力I/F14の端子番号が格納されており、車載装置1の制御部11は、接続形態テーブルを参照することにより、遮断対象となる給電遮断部52を特定することができる。このように通信遮断部4及び給電遮断部52が混在させて用いることにより、車載ECU2の製品特定又は仕様に応じて、通信遮断部4又は給電遮断部52のいずれかを選択することができ、車載システムSの構築における柔軟性を確保することできる。
【0071】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0072】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項が記載されていない場合であっても、これは、多項従属請求項に従属する多項従属請求項の記載を制限するものではない。
【符号の説明】
【0073】
C 車両
S 車載システム
1 車載装置
11 制御部
12 記憶部
M 記録媒体
P 制御プログラム(プログラム製品)
13 通信部
14 入出力I/F
141 IGスイッチ
2 車載ECU
3 車載ネットワーク
31 通信線
4 通信遮断部
41 信号線
5 電源装置
51 電源線
52 給電遮断部