(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018515
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法
(51)【国際特許分類】
B65G 69/04 20060101AFI20240201BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240201BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
B65G69/04
A23L5/10 A
A23L5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121905
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩山 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】平田 利雄
(72)【発明者】
【氏名】大賀 直行
【テーマコード(参考)】
3F078
4B035
【Fターム(参考)】
3F078AA08
3F078BA02
4B035LC16
4B035LP03
4B035LP43
4B035LP59
4B035LT14
(57)【要約】
【課題】冷却装置のコンベヤ上へ蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができ、蒸煮原料の冷却を安定的に行うことが可能となり、かつ現場調整が容易な蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法を提供する。
【解決手段】蒸煮原料を冷却装置2のコンベヤ22の幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配装置1であって、上端に蒸煮原料を投入する投入口111と下端に蒸煮原料を排出する排出口112を有し、上部に支点113を設けたシュート11と、シュート11を支点113を中心に揺動させることにより、排出口112をコンベヤ22の幅方向に往復運動させる駆動源12と、駆動源12に指令して排出口112の位置制御をする制御部13とを備えており、位置制御は、1周期の揺動区間において、コンベヤ22上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて排出口112を任意の位置にすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配装置であって、
上端に蒸煮原料を投入する投入口と下端に蒸煮原料を排出する排出口を有し、上部に支点を設けたシュートと、
前記シュートを前記支点を中心に揺動させることにより、前記排出口を前記コンベヤの幅方向に往復運動させる駆動源と、
前記駆動源に指令して前記排出口の位置制御をする制御部とを備えており、
前記位置制御は、1周期の揺動区間において、前記コンベヤ上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて前記排出口を任意の位置にすることを特徴とする蒸煮原料分配装置。
【請求項2】
前記駆動源は、回転駆動機である請求項1に記載の蒸煮原料分配装置。
【請求項3】
前記回転駆動機は、サーボモータである請求項2に記載の蒸煮原料分配装置。
【請求項4】
前記回転駆動機の回転軸を前記支点と直結する請求項2又は3に記載の蒸煮原料分配装置。
【請求項5】
蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配方法であって、
上端に蒸煮原料を投入する投入口と下端に蒸煮原料を排出する排出口を有し、上部に支点を設けたシュートと、
前記シュートを前記支点を中心に揺動させることにより、前記排出口を前記コンベヤの幅方向に往復運動させる駆動源と、
前記駆動源に指令して前記排出口の位置制御をする制御部とを用い、
前記位置制御は、1周期の揺動区間において、前記コンベヤ上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて前記排出口を任意の位置にすることを特徴とする蒸煮原料分配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
食品や調味料を製造する過程で、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や調味料を製造する過程において、大豆、割砕大豆、脱脂大豆、麦、米などの原料に吸水させて無圧蒸煮や加圧蒸煮などの加熱処理を行って蒸煮原料を調製することが広く行われている。
【0003】
加熱処理後の蒸煮原料は、ロータリーバルブやシュートなどを通って冷却装置のコンベヤ上へ堆積され、搬送されながら通風により原料層内へ空気を通過させて目的に応じた温度まで冷却される。コンベヤのベルトには、通気可能なメッシュベルトや多孔を有するスチールベルトなどが用いられる。
【0004】
蒸煮原料を冷却装置のコンベヤ上へ堆積する際、蒸煮原料の上層面に凹凸があったり、層厚に偏りがあったりすると冷却ムラが生じ、温度がばらついて、水分や硬さなどに差が生じる。さらに、その状態で固体培養すると、微生物の生育に差が出てしまい、高品質で安定した培養物を得ることができない。したがって、冷却装置のコンベヤ上へ蒸煮原料を均等な層厚で堆積させることが重要であり、それにより蒸煮原料の冷却を安定的に行うことができる。
【0005】
従来、蒸煮原料を均等な層厚で堆積させるために、冷却装置にダンパーを設けて蒸煮原料の上層面を均していたが、ダンパーの高さ調整が適宜必要であった。しかし、ダンパーより低い層厚部分は均すことができず、逆に高い層厚部分は圧縮され通風抵抗が増して、好ましくなかった。このことから、これまでに蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、蒸煮原料を分散させて排出する装置が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の原料散布装置は、クランク機構により原料散布筒(シュート)の下端を揺動し、蒸煮原料を搬送ベルト(コンベヤ)へ均等に落として、各所の厚みを均等にするというものである(特許文献1請求項1、段落[0032]、
図1~
図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国実用新案公告210001225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の原料散布装置は、モータ(駆動源)の回転運動がクランク機構を介して伝えられ、原料散布筒の下端が揺動(往復運動)している。この構成について、本願発明者らが解析を行った結果(詳細は後述)、蒸煮原料を均等な層厚で堆積できないことが判明した。
【0009】
また、特許文献1に記載のように原料散布筒の下端が絞られていたとしても、連続蒸煮機の原料排出弁から排出される蒸煮原料が偏ることにより、冷却装置のコンベヤ上で蒸煮原料の上層面の凹凸や層厚の偏りができてしまう。このような場合には、現場で調整ができる蒸煮原料分配装置が求められていた。
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、冷却装置のコンベヤ上へ蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができ、蒸煮原料の冷却を安定的に行うことが可能となり、かつ現場調整が容易な蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明の蒸煮原料分配装置は、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配装置であって、上端に蒸煮原料を投入する投入口と下端に蒸煮原料を排出する排出口を有し、上部に支点を設けたシュートと、前記シュートを前記支点を中心に揺動させることにより、前記排出口を前記コンベヤの幅方向に往復運動させる駆動源と、前記駆動源に指令して前記排出口の位置制御をする制御部とを備えており、前記位置制御は、1周期の揺動区間において、前記コンベヤ上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて前記排出口を任意の位置にすることを特徴とする。
【0012】
本発明の蒸煮原料分配方法は、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配方法であって、上端に蒸煮原料を投入する投入口と下端に蒸煮原料を排出する排出口を有し、上部に支点を設けたシュートと、前記シュートを前記支点を中心に揺動させることにより、前記排出口を前記コンベヤの幅方向に往復運動させる駆動源と、前記駆動源に指令して前記排出口の位置制御をする制御部とを用い、前記位置制御は、1周期の揺動区間において、前記コンベヤ上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて前記排出口を任意の位置にすることを特徴とする。
【0013】
本発明の蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法によれば、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する際、蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができ、蒸煮原料の冷却を安定的に行うことが可能となる。また、排出口の位置制御ができるので現場調整が容易になり、シュートに投入される蒸煮原料の偏りがあったとしても、現場調整により、蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができる。
【0014】
前記本発明の蒸煮原料分配装置においては、前記駆動源は、回転駆動機であることが好ましい。この構成によれば、シュートを揺動するのに必要なトルクを確保しつつ、コンパクトな設計ができ、検出装置や速度制御装置、制御用モータ等の使用により位置制御が容易に行える。
【0015】
前記駆動源が回転駆動機である構成においては、前記回転駆動機は、サーボモータであることが好ましい。この構成によれば、回転駆動の急停止、急加減速が可能なため、揺動時間経過に応じて排出口を任意の位置にするときの調整精度がより高まる。また、制御部の一部としてタッチパネルを採用すれば、画面上でシュートの最大揺動角度や停止時間、加減速度等の設定値を変更できるため現場調整がより容易になる。
【0016】
前記本発明の蒸煮原料分配装置においては、前記回転駆動機の回転軸を前記支点と直結することが好ましい。この構成によれば、シュートの揺動角度と回転軸の回転角度が同じになるため、制御部で入力する各種設定値を計算し易くなるとともに現場調整も容易になる。また、回転駆動機からシュートまでの距離を短縮して接続することもでき、部品点数が少なく、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果は前記のとおりであり、本発明の蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法によれば、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する際、蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができ、蒸煮原料の冷却を安定的に行うことが可能となる。また、排出口の位置制御ができるので現場調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蒸煮原料分配装置を備えた冷却装置の側面図。
【
図2】
図1に示した冷却装置を矢印A方向から見た正面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る蒸煮原料分配装置を駆動源側から見た要部の斜視図。
【
図4】本発明の一実施形態において、シュートとコンベヤとの位置関係を示した正面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る蒸煮原料分配装置の制御のプロセスを示すフローチャート。
【
図6】比較例に係る蒸煮原料分配装置の要部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、蒸煮原料を冷却装置のコンベヤの幅方向へ分散させて排出する蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法に関するものであり、蒸煮原料分配装置は冷却装置の付設装置として用いられる。蒸煮原料は、大豆や麦、米等の穀物であり、割砕大豆や脱脂大豆等の加工品も含まれる。
【0020】
最初に
図1及び
図2を参照しながら、蒸煮原料分配装置1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸煮原料分配装置1を備えた冷却装置2の側面図を示しており、
図2は
図1に示した冷却装置2を矢印A方向から見た正面図を示している。
【0021】
図1において、蒸煮原料分配装置1が備えるシュート11に、蒸煮装置(図示せず)から投入筒3を通って蒸煮原料である丸大豆が投入される(矢印a方向)。シュート11に投入された蒸煮原料は、シュート11の揺動によって、冷却装置2が備えるコンベヤ22の幅方向へ分散させて排出される。
図2に示したように、ベルト221の両端には一対の側壁26を設けている。側壁26により、コンベヤ22上に排出された蒸煮原料の幅が規制される。
【0022】
図1に示したように、コンベヤ22は、一対のプーリ222、223に無端帯のベルト221が掛け渡されて主要部を形成している。プーリ223は、ベルト駆動機構(図示せず)で駆動され、ベルト221のキャリア側に堆積された蒸煮原料は、プーリ222側からプーリ223側に向けて搬送されながら(矢印b方向)冷却される。
【0023】
図1に示したように、搬送中の蒸煮原料は、コンベヤ22の中間地点に設けたピンクラッシャー27により上下反転して蒸煮原料の塊がほぐされる。このことにより、通気抵抗が均一化されるので、蒸煮原料の均等な冷却を図ることができる。
【0024】
蒸煮原料分配装置1は、フレーム21により、冷却装置2の上部に支持されている。蒸煮原料分配装置1は、シュート11、回転駆動機12及び制御部13を備えている。
図3を参照しながら、蒸煮原料分配装置1について説明する。
図3は蒸煮原料分配装置1を駆動源である回転駆動機12側から見た要部の斜視図である。シュート11は上端に蒸煮原料を投入する投入口111と、下端に蒸煮原料を排出する排出口112を有している。矢印cはシュート11を通過する蒸煮原料の経路を示している。
【0025】
回転駆動機12の回転軸121がシュート11上部の支点113に直結して固定されている。回転軸121を支点113と直結するには、上記のように回転軸121の末端を支点113に固定してもよいし、回転軸121の末端と支点113の間に連結棒を介在させて連結してもよい。つまり、回転軸121の中心線とシュート11上部との交点が支点113になれば直結したことになる。回転駆動機12による回転軸121の回転駆動により、回転軸121が正転と逆転を交互に繰り返して、シュート11は支点113を中心に揺動する。このことにより、排出口112はコンベヤ22(
図2参照)の幅方向に往復運動する。
【0026】
前記のとおり、回転軸121と支点113とは直結しており、この構成によれば、シュート11の揺動角度と回転軸121の回転角度が同じになるため、制御部13で入力する各種設定値が計算し易くなるとともに現場調整も簡単になる。また、回転駆動機12からシュート11までの距離を短縮して接続することもでき、部品点数が少なく、コストダウンを図ることができる。
【0027】
図3に示したような片持ち構造にすると、部品点数の削減やコストダウンに一層有利になり、メンテナンス性も向上する。さらに、シュート11側面の一部を開放した形状にすると、洗浄性が良くなり、汚れの有無等も確認し易くなる。
【0028】
以下、
図4を参照しながら、シュート11の揺動について具体的に説明する。
図4は、シュート11とコンベヤ22との位置関係を示した正面図である。中心線CLは、シュート11が揺動していない垂直状態において、シュート11を正面から見たときに、支点113を通る垂直線である。シュート11が揺動していない垂直状態において、シュート11の中心線CLとベルト221との交点を基点P0とする。シュート11が右側に最大限揺動したときに、中心線CLとベルト221との交点を右端点P1とし、シュート11が左側に最大限揺動したときに、中心線CLとベルト221との交点を左端点P2とする。
【0029】
本実施形態においては、排出口112の位置を揺動角度で規定する。揺動角度とは、基点P0上のシュート11の中心線CLと揺動したシュート11の中心線CLがなす角度のことである。中心線CLが基点P0上にあるときを揺動角度0°とする。右方向をプラス(+)方向とし、右方向の上限角度を揺動角度αで表し、左方向をマイナス(-)方向とし、左方向の上限角度を揺動角度βで表す。最大揺動角度γとは、揺動角度αと揺動角度βとの和である。揺動角度αと揺動角度βは、通常同一角度(α=β)であるが、異なる角度としてもよい。また、シュート11の中心線CLとベルト幅の中心線が一致していなくてもよい。
【0030】
本実施形態におけるシュート11の1周期の揺動区間とは、例えば、
図4において、基点P0、右端点P1、基点P0、左端点P2を経て基点P0に戻ることである。
【0031】
本実施形態では、
図1に示した制御部13が回転駆動機12に指令してシュート11の排出口112の位置制御をする。制御部13と回転駆動機12との間の破線は、信号の経路を示している。位置制御とは、1周期の揺動区間において、コンベヤ22上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するように、揺動時間経過に応じて排出口112を任意の位置にすることである。
【0032】
均等な層厚とは、層厚のばらつきが数mm程度の狭い許容範囲内にあるという厳格な意味ではなく、蒸煮原料を取り扱う当業者の技術常識に基づいて判断したときに、蒸煮原料の冷却を安定的に行うことが可能と判断できる程度に層厚のばらつきが抑えられているという意味である。
【0033】
位置制御は、速度制御も含む広い意味での位置制御である。具体的には、シュート11を揺動開始から任意のt秒後に、当該時刻に対応する設定揺動角度まで揺動させるという制御でもよいし、シュート11を揺動角度θa°から揺動角度θb°までの間、指定時間t秒で移動させるという速度制御であってもよい。
【0034】
より具体的には、揺動角度θa°~θb°は加速、揺動角度θb°~θc°は定速、揺動角度θc°~θd°で減速して指定時間t秒停止という制御であってもよい。また、急加減速や緩加減速が可能な場合、右端点及び左端点の前後で、減速及び加速する制御を実施し、他の区間では定速とする制御であってもよい。
【0035】
蒸煮原料をコンベヤ22の幅方向へ分散させて排出する際、一対の側壁26間の有効ベルト幅と蒸煮原料の落下幅が一致しなければならない。また、同じ揺動角度でも、両端に向かうほど揺動角度あたりの落下点のベルト幅が広くなるため、ベルト幅あたりの堆積量が均等になるよう調整する必要がある。このことから、特にベルト221の両端付近では、揺動区間を複数の工程に区分して細かく位置制御するのが好ましい。
【0036】
前記のとおり、回転駆動機12は制御部13の指令によりシュート11を揺動させて排出口112の位置制御を行う。この構成によれば、シュート11を揺動するのに必要なトルクを確保しつつ、コンパクトな設計ができ、検出装置や速度制御装置、制御用モータ等の使用により位置制御が容易になる。
【0037】
回転駆動機12はサーボモータが好ましい。サーボモータを用いることにより、回転駆動の急停止、急加減速が可能になるため、揺動時間経過に応じて排出口112を任意の位置にするときの調整精度が高くなる。また、制御部13の一部としてタッチパネルを採用すれば、画面上でシュート11の最大揺動角度や停止時間、加減速度等の設定値を変更できるため現場調整が容易になる。本実施形態では、駆動源である回転駆動機12がサーボモータの例で説明する。
【0038】
以下、
図5を参照しながら、制御の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る蒸煮原料分配装置1の制御のプロセスを示すフローチャートである。蒸煮原料分配装置1による蒸煮原料の分配開始前に、設定値が制御部13に入力され、制御部13に対して運転条件が設定される(
図5のステップ100)。設定値の入力や運転条件の設定は操作者が行ってもよいが、操作者の基本情報の入力値に基づいて、他の設定値や運転条件を制御部13が自動的に算出又は選択して設定するようにしてもよい。設定値は、1周期の揺動区間における揺動角度α、揺動角度β(
図4参照)や揺動角速度等であり、運転条件は各工程における速度変化の態様等である。詳細は後に実施例を参照しながら説明する。
【0039】
設定が完了すると、設定値に基づき回転駆動機12が回転軸121を回転させ、シュート11は初期加速で揺動を開始する(
図5のステップ101)。そして、蒸煮装置から投入口111への蒸煮原料の投入が開始すると、蒸煮原料分配装置1による蒸煮原料の分配が開始する(
図5のステップ102)。サーボモータである回転駆動機12は回転角度の検出器(図示せず)を内蔵しており、回転軸121の回転角度を検出可能である。本実施形態では、
図3に示したように回転軸121がシュート11上部の支点113に直結しているため、回転軸121の回転角度とシュート11の揺動角度は一致する。検出器は現在の回転軸121の回転角度を検出し、検出値が制御部13へ入力される(
図5のステップ103)。
【0040】
現在の回転角度の検出値を受け取った制御部13は、回転駆動機12に対し、現在の回転角度に対応する運転条件通りに回転軸121を回転するように指令する(
図5のステップ104)。ステップ104の指令により、回転駆動機12は、指令された運転条件通りに回転軸121を回転し(
図5のステップ105)、同時にシュート11も運転条件通りに揺動する。以後、冷却装置2への蒸煮原料の排出終了の判断(
図5のステップ106)がされるまでステップ103~106が繰り返される。
【0041】
蒸煮装置から投入口111への蒸煮原料の投入が終了し、排出口112からシュート11内の蒸煮原料が排出され、冷却装置2への蒸煮原料の排出が終了したと判断(
図5のステップ106)したら、蒸煮原料分配装置1の運転が終了する。
【0042】
以下、実施例を参照しながら、本実施形態についてより具体的に説明する。実施例の全体構成は
図1に示した全体構成と同様であり、蒸煮原料分配装置1の構成についても、
図1~
図4に示した構成と同様である。実施例は、試運転後に現場調整し、現場調整した運転条件で本運転を行った。本運転の運転条件を下記表1に示す。
【0043】
【0044】
実施例では、シュート11の右方向の上限角度である揺動角度α(
図4参照)の設定値は+25°であり(表1の工程3参照)、シュート11の左方向の上限角度である揺動角度β(
図4参照)の設定値は-25°である(表1の工程7参照)。また、定速時の揺動角速度は10°/秒である。これらの設定値及び表1の運転条件は、予め制御部13に入力又は設定される。
【0045】
蒸煮原料分配装置1によるシュート11の揺動が開始すると、制御部13の回転駆動機12に対する指令により、シュート11は中心線CLが基点P0(
図4参照)にある揺動角度0°から揺動角度+θ1に向けて初期加速で揺動する(表1の工程1)。初期加速は、指定時間t1で揺動角度+θ1において揺動角速度が10°/秒となる加速である(表1の工程1)。この間、回転軸121の回転角度の検出値は制御部13に入力されているので、制御部13は、現在のシュート11の揺動角度を認識している。
【0046】
シュート11が揺動角度+θ1に達したときに、制御部13は回転駆動機12に、揺動角度+θ2に達するまでの間、初期加速で達した揺動角速度10°/秒で定速回転するよう指令する。この運転の揺動時間は必然的に定まるので、揺動時間の指定は不要になる(工程6及び10も同じ)。この指令によりこの揺動時間の間、シュート11は揺動角速度10°/秒の定速で揺動する(表1の工程2)。
【0047】
シュート11が揺動角度+θ2に達したときに、制御部13は回転駆動機12に、指定時間t3で右端の揺動角度+25°において、回転が停止する減速回転を指令し、シュート11は指令通りに減速して揺動した後に停止する(表1の工程3)。
【0048】
シュート11が右端の揺動角度+25°において指定時間t4に達するまで停止しているように、制御部13は回転駆動機12に回転の停止を指令する(表1の工程4)。停止が指定時間t4に達すると、揺動角度+θ3において、制御部13は指定時間t5で揺動角速度が10°/秒になる加速回転を回転駆動機12に指令し、シュート11は指令通りに加速して揺動する(表1の工程5)。
【0049】
以後、表1の運転条件に従って、同様の運転が繰り返される。表1の工程10に至るまでに、シュート11は基点0°、右端+25°、基点0°、左端-25°の位置を揺動しており、表1の工程10の途中で基点0°に達した時点で、シュート11は1周期の揺動区間を揺動したことになる。続いてシュート11は2周期目の揺動に移行する。工程10の終了後は、工程3に戻り工程3~10が繰り返される。
【0050】
表1では、θ1~θ3、指定時間の数値は記載していないが、まずは予め求めた値を標準値として制御部13に入力しておけばよい。この場合、本運転の前に試運転を標準値で実施し、蒸煮原料の層厚に凹凸があったとしても、現場調整により標準値を適宜変更することにより、凹凸のない堆積状態を実現することができる。例えば、部分的に層厚が薄くなる場合は、当該部分に対応する工程の指定時間を長くする、又は揺動速度を遅くする調整を現場で行えばよい。
【0051】
実施例は、1周期の揺動区間を複数の工程に区分し、工程が変わる毎に、加速、定速、減速、停止といった速度変化の態様を切り換えるようにしている。より具体的には、実施例は、加速後に定速とし、定速後に減速とし、減速後に停止とする基準に従い、各速度変化のうち加減速及び停止を指定時間で実施して、揺動時間経過に応じて、シュート11の排出口112を任意の位置にするように制御している。すなわち、実施例は、右端及び左端で動きが反転するシュート11の運動特性を踏まえて、1周期の揺動区間において、コンベヤ22上へ蒸煮原料が均等な層厚で堆積するようにしたものである。
【0052】
以下、比較例について説明する。
図6は、比較例に係る蒸煮原料分配装置4の要部を示す正面図である。比較例はシュート41をクランク機構で揺動させる構成である。クランク機構は、長いリンク42、短いリンク43及び回転ジョイント44、50で構成されている。短いリンク43は、一端がモータ49の回転軸に固定されており、他端が長いリンク42の一端と回転ジョイント44により接続されている。この接続部が連結点45である。長いリンク42の他端は、シュート41と回転ジョイント50により接続されている。この接続部が作用点46である。
【0053】
モータ49の回転軸の回転と一体に短いリンク43が回転し、長いリンク44を介してシュート41が揺動する。シュート41は支点47を中心とし、支点47から作用点46までの距離を回転半径として二点鎖線48で示した軌道上を作用点46が移動するように揺動する。
【0054】
図6では、モータ49を定速で左回りに回転させた。基点にある揺動角度0°から揺動を開始し、右方向に25°揺動し、左方向に25°揺動し、最大揺動角度は50°、1周期は100秒であった。運転の結果、
図6に示したように蒸煮原料(丸大豆)の層厚は凹凸が目立っていた。
【0055】
この原因を解析するために、
図6のように揺動範囲上に揺動角度5°単位で目盛りを付し、各目盛りに対応する短いリンク43の連結点45の位置を円周上に示した。その結果、
図6に示したように、揺動角度5°単位の各揺動区間に対応する短いリンク43の回転角度は均等ではないことが分かった。このため、各揺動区間に対応する揺動時間にも大きな偏りが生じ、これが凹凸の原因であることが判明した。さらに、実施例と異なり、比較例では、層厚に凹凸が生じても回転角度を均等に補正することはできなかった。
【0056】
すなわち、クランク機構を採用することにより、モータ49を定速で回転させるだけで、シュート41を揺動させることができるが、クランク機構のみに依存する揺動では、蒸煮原料を均等な層厚で堆積できないことが判明した。
【0057】
これに対して、本発明に係る蒸煮原料分配装置及び蒸煮原料分配方法は、シュート11を機構のみに依存して揺動させるのではなく、前記のとおり、制御部13が回転駆動機12に指令してシュート11の排出口112の位置制御を実施するものであるので、蒸煮原料を均等な層厚で堆積することができ、さらに現場調整により蒸煮原料をより均等な層厚で堆積することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記実施形態は一例であり、下記のとおり適宜変更したものであってもよい。前記実施形態では駆動源である回転駆動機12の例としてサーボモータを挙げたが、汎用モータやパルスモータなどを用いてもよい。
【0059】
前記実施形態では、駆動源である回転駆動機12の回転軸121が、シュート11上部の支点113に直結した構成であったが(
図3参照)、クランク機構(
図6参照)を介在させて位置制御を実施してもよい。クランク機構を回転駆動機12の回転軸で駆動させる場合は、運動様式として回転運動と往復運動のいずれでもよい。この場合、回転駆動機12は、サーボモータや汎用モータ、パルスモータなどを用いてもよい。汎用モータで往復運動する場合には、正転と逆転の切換えは可逆性電磁接触器などを用いればよい。
【0060】
駆動源は、回転駆動機に代えて電動シリンダやエアシリンダなどを用いてもよい。この場合は、ロッドの伸縮によりシュート11を揺動させることになる。電動シリンダは、ロッドの駆動としてサーボモータやパルスモータなどを使用してもよい。
【0061】
サーボモータやパルスモータに代えて、回転角度の検出器を内蔵していない他の駆動源(汎用モータ、電動シリンダ、エアシリンダ等)を用いた場合は、エンコーダ、近接センサ、リミットスイッチ等の検出器を組み合わせて使用すればよい。この場合、インバータを組み合わせて回転角速度を調整してもよい。検出器は、シュート11の揺動角度や駆動源の回転角度を検出できるものであればよい。
【0062】
サーボモータやパルスモータに代えて、他の駆動源(汎用モータ、電動シリンダ等)を用いる場合、制御部13にあらかじめ演算式を入力して、揺動角度の設定値から駆動源に指令する回転角度(汎用モータの場合)や回転数(電動シリンダの場合)、を算出すればよい。また、検出器を用いて揺動角度を実測しながら制御してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 蒸煮原料分配装置
11 シュート
111 投入口
112 排出口
113 支点
12 回転駆動機(駆動源)
121 回転軸
13 制御部
2 冷却装置
22 コンベヤ
221 ベルト
3 投入筒