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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018528
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20240201BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240201BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04B1/70 A
F24F7/007 B
F24F7/10 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121920
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
【テーマコード(参考)】
2E001
3L056
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA15
2E001FA17
2E001FA71
2E001NB02
2E001NC02
2E001ND21
2E001ND27
3L056BD07
(57)【要約】
【課題】天井裏の結露の発生を好適に抑制することができる換気システムを提供する。
【解決手段】駆動力により回転する排気ファン53を有し、排気ファン53の回転により小屋裏空間15の空気を屋外へ排出する排気装置51と、屋外空間と小屋裏空間15とを連通し、排気装置51による小屋裏空間15の空気の排出に伴って屋外空間の空気を小屋裏空間15に給気する屋外給気部61と、住宅HのリビングLと小屋裏空間15とを連通し、排気装置51による小屋裏空間15の空気の排出に伴ってリビングLの空気を小屋裏空間15に給気する室内給気部71と、を備え、室内給気部71は、室内給気部71からの風量を制限可能な可動ガラリ75を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井裏の換気を行う換気システムであって、
駆動力により回転するファンを有し、前記ファンの回転により前記天井裏の空気を屋外へ排出する排出装置と、
屋外空間と前記天井裏とを連通し、前記排出装置による前記天井裏の空気の排出に伴って屋外空間の空気を前記天井裏に給気する屋外給気部と、
前記建物の室内空間と前記天井裏とを連通し、前記排出装置による前記天井裏の空気の排出に伴って前記室内空間の空気を前記天井裏に給気する室内給気部と、
を備え、
前記室内給気部は、前記室内給気部からの風量を制限可能な開閉手段を有する、
換気システム。
【請求項2】
所定の条件に応じて前記開閉手段を制御可能な制御部をさらに具備する、
請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記所定の条件には、現在の日時が、予め設定された期間に属するか否かが含まれる、
請求項2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記所定の条件には、前記屋外空間の温湿度の少なくとも一方が所定閾値を超えたか否かが含まれる、
請求項2に記載の換気システム。
【請求項5】
前記所定の条件には、前記室内空間の空気及び前記屋外空間の空気の水蒸気量の差が所定閾値を超えたか否かが含まれる、
請求項2に記載の換気システム。
【請求項6】
前記屋外給気部は、前記屋外空間の温度に応じた形状変化により可動し、前記屋外給気部からの風量を制限可能な変形手段を有する、
請求項2に記載の換気システム。
【請求項7】
前記所定の条件には、前記屋外空間の温度が前記変形手段の形状変化が起こる温度であるか否かが含まれる、
請求項6に記載の換気システム。
【請求項8】
前記排出装置と前記屋外給気部及び前記室内給気部とは、前記天井裏において互いに対角となる位置に配置される、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井裏の換気を行う換気システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井裏の換気を行う換気システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、屋外の空気を階間内(天井裏)に取り入れるための給気口と、室内の空気を階間内に取り入れるためのガラリと、プロペラファンが階間の外壁部に設けられた排気口と、を有する階間排気構造(換気システム)が開示されている。このような階間排気構造においては、プロペラファンの回転駆動によって、排気口を介して階間内の空気を強制的に外部へ排出し、給気口及びガラリを介して階間内への給気を行うことにより階間の換気を行うことができる。
【0004】
ここで、屋外の空気及び室内の空気は、季節に応じて水蒸気量の多少の関係が互いに逆転する。例えば、冬期においては、加湿された室内の空気の方が屋外の空気よりも水蒸気量が多くなり、その一方で、夏期においては、除湿された室内の空気よりも屋外の空気の方が、水蒸気量が多くなる。このため、特許文献1に記載の階間排気構造においては、一年を通して何れかのタイミングで相対的に水蒸気量の多い方の空気を多量に階間内へ取り込むこととなる。
【0005】
このように、水蒸気量の多い空気を多量に階間内へ取り込んだ場合、換気にかかわらず結露が発生し易くなる点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-4448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、天井裏の結露の発生を好適に抑制することができる換気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の天井裏の換気を行う換気システムであって、駆動力により回転するファンを有し、前記ファンの回転により前記天井裏の空気を屋外へ排出する排出装置と、屋外空間と前記天井裏とを連通し、前記排出装置による前記天井裏の空気の排出に伴って屋外空間の空気を前記天井裏に給気する屋外給気部と、前記建物の室内空間と前記天井裏とを連通し、前記排出装置による前記天井裏の空気の排出に伴って前記室内空間の空気を前記天井裏に給気する室内給気部と、を備え、前記室内給気部は、前記室内給気部からの風量を制限可能な開閉手段を有するものである。
【0010】
請求項2においては、所定の条件に応じて前記開閉手段を制御可能な制御部をさらに具備するものである。
【0011】
請求項3においては、前記所定の条件には、現在の日時が、予め設定された期間に属するか否かが含まれるものである。
【0012】
請求項4においては、前記所定の条件には、前記屋外空間の温湿度の少なくとも一方が所定閾値を超えたか否かが含まれるものである。
【0013】
請求項5においては、前記所定の条件には、前記室内空間の空気及び前記屋外空間の空気の水蒸気量の差が所定閾値を超えたか否かが含まれるものである。
【0014】
請求項6においては、前記屋外給気部は、前記屋外空間の温度に応じた形状変化により可動し、前記屋外給気部からの風量を制限可能な変形手段を有するものである。
【0015】
請求項7においては、前記所定の条件には、前記屋外空間の温度が前記変形手段の形状変化が起こる温度であるか否かが含まれるものである。
【0016】
請求項8においては、前記排出装置と前記屋外給気部及び前記室内給気部とは、前記天井裏において互いに対角となる位置に配置されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本願発明においては、天井裏の結露の発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)本発明の第一実施形態に係る換気システム、及び、当該換気システムが設けられた住宅の小屋裏空間の構造を示した側面断面模式図。(b)同じく、小屋裏空間の構造を示した平面断面模式図。
図2】(a)同じく、換気システムの構成を示したブロック図。(b)同じく、所定の条件に応じた給気口ごとの風量の割合を示した図。
図3】(a)同じく、第一実施形態に係る換気システムの第1の別例の構成を示したブロック図。(b)同じく、第一実施形態に係る換気システムの第2の別例の構成を示したブロック図。
図4】(a)本発明の第二実施形態に係る換気システム、及び、当該換気システムが設けられた住宅の小屋裏空間の構造を示した側面断面模式図。(b)同じく、所定の条件に応じた給気口ごとの風量の割合を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の第一実施形態に係る換気システム40について説明する。なお以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向及び東西南北方向をそれぞれ定義する。
【0021】
まず図1を用いて、換気システム40が設けられた住宅Hについて簡単に説明する。本実施形態において住宅Hは、複数階建ての戸建住宅である。住宅Hは、最上階にある室内空間の上方に小屋裏空間15を有する。なお住宅Hでは、最上階に複数の室内空間が設けられるが、本実施形態では説明の簡略化のため、1つの室内空間(リビングL)が設けられるものとする。リビングLでは、エアコン13により空調(冷房及び暖房)が行われる。
【0022】
次に図1及び図2を用いて、小屋裏空間15を構成する住宅Hの小屋裏構造について説明する。小屋裏構造は、建物躯体を構成する部材(例えば図1(a)に示す梁12等)の他、主として天井部20、屋根部30及び換気システム40を具備する。
【0023】
天井部20は、天井材21、天井断熱材22及び防湿シート23を有する。天井材21は、リビングLの天井面を構成する。天井断熱材22は、天井材21を上方から被覆するように設けられる。天井断熱材22は、リビングLと小屋裏空間15との間の熱の移動を抑制する。防湿シート23は、天井材21と天井断熱材22との間に配置される。防湿シート23は、リビングLと小屋裏空間15との間の湿気の移動を抑制する。
【0024】
屋根部30は、傾斜の無い平面状の陸屋根を構成する。屋根部30は、天井部20の上方において当該天井部20から所定の隙間をあけて形成される。屋根部30は、ALC板31、第1防水層32及び第2防水層33を有する。ALC板31は、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)により板状に形成される。第1防水層32及び第2防水層33は、ALC板31を上方から被覆するように設けられる。第1防水層32及び第2防水層33は、例えばウレタンや繊維強化樹脂等により構成され、屋根部30から小屋裏空間15への雨水の侵入を抑制する。
【0025】
こうして、屋根部30及び天井部20により上下が区画された隙間が、小屋裏空間15として形成される。本実施形態においては、図1(b)に示すように、小屋裏空間15は、平面視で略矩形状に形成される。小屋裏空間15は、天井部20と屋根部30との間において水平方向に延びるように形成される。また小屋裏空間15は、住宅Hの最上階の天井部20の概ね全体に亘るように形成される。小屋裏空間15の水平方向における端部は、図1(b)に示すように住宅Hの外壁部11により屋外空間と区画される。
【0026】
換気システム40は、小屋裏空間15の換気を行うためのシステムである。本実施形態において、換気システム40は、第三種換気方式の換気システムを構成する。ここで、小屋裏空間15においては、湿気が滞留し、高湿状態が継続する場合がある。例えば、本実施形態のように、小屋裏構造にALC板31が含まれる場合、ALC板31は性質上、設置から暫くの期間、水蒸気を放出し易いため、小屋裏空間15において高湿状態が継続する場合がある。
【0027】
また、小屋裏空間15の換気を行う場合、小屋裏空間15の外部から内部へ空気を給気する必要がある。そこで一般的な換気システムを用いると、例えば屋外空間の空気(屋外空気)を小屋裏空間15へ給気し、当該小屋裏空間15の換気を行うことができる。しかし、例えば夏期において屋外空気は水蒸気量が多いため、小屋裏空間15に給気した屋外空気が、冷房により低温となった天井部20や構造躯体に触れると、結露が発生し易くなる点で問題がある。
【0028】
そこで上述の如き問題を回避するため、他の一般的な換気システムを用いると、例えばリビングL等の室内空間の空気(室内空気)を小屋裏空間15へ給気し、当該小屋裏空間15の換気を行うことができる。しかし、例えば冬期において室内空気は加湿されて水蒸気量が多いため、小屋裏空間15に給気した室内空気が、冬期のため低温である天井部20や構造躯体に触れると、結露が発生し易くなる点で問題がある。
【0029】
そこで、例えば屋外空気及び室内空気の両方を小屋裏空間15へ給気し、当該小屋裏空間15の換気を行った場合、仮に屋外空気及び室内空気の互いの風量の多少の関係に変更が無いならば、一年を通して何れかのタイミングで相対的に水蒸気量の多い方の空気を多量に階間内へ取り込むこととなる。
【0030】
そこで、本実施形態に係る小屋裏空間15においては、換気システム40を設けることによって、当該小屋裏空間15へ空気を給気する各供給元(屋外空間及び室内空間)からの風量を適宜調整し、一年を通して(季節の変化にかかわらず)結露の発生を抑制している。
【0031】
以下では、本発明の第一実施形態に係る換気システム40について詳細に説明する。換気システム40は、排気装置51、屋外給気部61、室内給気部71及び制御部80を有する。
【0032】
排気装置51は、図1(b)に示すように、小屋裏空間15を屋外空間と区画する外壁部11に設けられる。具体的には、排気装置51は、西側の外壁部11のうち北側の端部近傍(小屋裏空間15の北西方向における角部の近傍)に形成される。排気装置51は、排気口52及び排気ファン53を有する。
【0033】
排気口52は、西側の外壁部11において小屋裏空間15と屋外空間とを連通する。排気口52は、小屋裏空間15及び屋外空間それぞれに開口する筒状に形成される。排気口52の内部には、屋外空間から小屋裏空間15への粉塵や花粉等の異物の侵入を抑制するフィルター(不図示)が設けられる。
【0034】
排気ファン53は、排気口52の内部に設けられる。排気ファン53は、所定の駆動源からの駆動力により回転可能に構成される。排気ファン53は、回転駆動により小屋裏空間15から屋外空間へ向かう風力を発生させる。
【0035】
こうして、排気装置51は、排気ファン53により小屋裏空間15の空気を、排気口52を介して屋外空間へ排気することができる。また排気装置51は、小屋裏空間15の空気を屋外空間へ排気することにより、後述する屋外給気部61及び室内給気部71を介して小屋裏空間15へ強制的に給気を行うことができる。
【0036】
屋外給気部61は、小屋裏空間15を屋外空間と区画する外壁部11に設けられる。具体的には、屋外給気部61は、東側の外壁部11のうち南側の端部近傍(小屋裏空間15の南東方向における角部の近傍)に形成される。屋外給気部61は、屋外給気口62及び屋外フード63を有する。
【0037】
屋外給気口62は、東側の外壁部11において小屋裏空間15と屋外空間とを連通する。屋外給気口62は、小屋裏空間15及び屋外空間それぞれに開口する筒状に形成される。屋外給気口62の内部には、屋外空間から小屋裏空間15への粉塵や花粉等の異物の侵入を抑制するフィルター(不図示)が設けられる。
【0038】
屋外フード63は、外壁部11の屋外空間側の面に取り付けられる。屋外フード63は、屋外給気口62の屋外空間側の開口の周囲を取り囲むように配置される。屋外フード63は、屋外空間から小屋裏空間15への屋外給気口62を介した雨水の浸入を抑制する。
【0039】
室内給気部71は、小屋裏空間15をリビングL(室内空間)と区画する天井部20に設けられる。具体的には、室内給気部71は、天井部20のうち南東方向における角部の近傍に形成される。こうして、室内給気部71は、屋外給気部61の近傍に形成される。また室内給気部71(及び屋外給気部61)は、小屋裏空間15において排気装置51と概ね対角に位置するように形成される。これにより、室内給気部71及び屋外給気部61と排気装置51とは、小屋裏空間15において互いの距離が比較的離れた位置に形成される。すなわち、室内給気部71及び屋外給気部61と排気装置51との配置によれば、小屋裏空間15内の全体に亘るように空気を流すことができるため、小屋裏空間15の換気を効果的に行うことができる。室内給気部71は、室内給気口72及び開閉機構73を有する。
【0040】
室内給気口72は、天井部20において小屋裏空間15とリビングLとを連通する。室内給気口72は、小屋裏空間15及びリビングLそれぞれに開口する筒状に形成される。本実施形態において、室内給気口72の開口面積(空気の流通面積)は、後述する可動ガラリ75が完全に開いた最大時において、屋外給気口62の開口面積に対して約3倍の大きさを有する。
【0041】
開閉機構73は、室内給気口72から小屋裏空間15への風量を制限可能な機構である。開閉機構73は、モータ等の駆動部74と、当該駆動部74からの駆動力により可動する可動ガラリ75と、を有する。可動ガラリ75は、駆動部74からの駆動力により可動し、室内給気口72の開閉状態を変更可能に構成される。このように、開閉機構73は、可動ガラリ75の開閉状態を変更することによって、室内給気口72の開口面積(ひいては、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量)を調整可能に構成される。
【0042】
制御部80は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部80は、開閉機構73の駆動部74と電気的に接続される。制御部80は、駆動部74を制御し、可動ガラリ75を任意の開閉状態へと可動させることができる。こうして制御部80は、室内給気口72の開口面積を、可動ガラリ75を完全に開状態とした最大時の面積から完全に閉状態とした最小時の面積までの間において、任意の面積とすることができる。これにより制御部80は、室内給気口72及び屋外給気口62の互いの開口面積の比率を変更し、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量(給気量)の比率を任意の値に変更することができる。
【0043】
また制御部80は、予め記憶部に記憶された種々の情報やプログラム等を用いて、換気システム40に関する種々の処理を実行する。ここで、前記種々の処理には、上述の如く一年を通して結露の発生を抑制するため処理(以下では「結露抑制処理」と称する)が含まれる。
【0044】
また制御部80は、現在の日時に関する情報を取得可能に構成される。また制御部80は、室内空気よりも屋外空気の水蒸気量の方が比較的大きくなる期間(以下では「第1期間」と称する)に関する情報と、屋外空気よりも室内空気の水蒸気量の方が比較的大きくなる期間(以下では「第2期間」と称する)に関する情報と、を取得可能に構成される。制御部80は、後述するように結露抑制処理の実行中においては、現在の日時が第1及び第2期間に属するか否かの判断結果に応じて、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、所定の割合に変更することができる。
【0045】
なお本実施形態において、第1及び第2期間に関する情報は、住宅Hの居住者や管理者等により手動で入力される。例えば第1期間として夏期(例えば6-8月)が入力され、第2期間として冬期(例えば12-2月)が入力される。制御部80は、これらの情報を所定の記憶部に記憶している。
【0046】
以下では、制御部80より実行される第一実施形態に係る結露抑制処理について詳細に説明する。
【0047】
制御部80は、結露抑制処理の実行中においては、所定の条件に応じて、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、所定の割合に変更する。本実施形態においては、前記所定の条件として、現在の日時が第1及び第2期間に属するか否かの判断が行われる。
【0048】
具体的には、図2(b)に示すように、制御部80は、現在の日時が第1期間に属すると判断した場合(すなわち、現在の日時が夏期に属する場合)、可動ガラリ75を可動させて開状態とし、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を75%及び25%とする。こうして、小屋裏空間15へと給気される風量全体において室内空気の割合を高くすることにより、冷房により除湿された水蒸気量の少ない室内空気を比較的多量に小屋裏空間15へ給気することができる。これによれば、夏期において小屋裏空間15に給気された空気(室内空気及び屋外空気)が、冷房により低温となった天井部20や構造躯体に触れた場合でも、結露を発生し難くすることができる。
【0049】
また、図2(b)に示すように、制御部80は、現在の日時が第2期間に属すると判断した場合(すなわち、現在の日時が冬期に属する場合)、可動ガラリ75を可動させて閉状態とし、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を0%及び100%とする。こうして、小屋裏空間15へと給気される風量全体を屋外空気とすることにより、暖房等により加湿された室内空気が小屋裏空間15に給気されるのを抑制し、冬期の水蒸気量の少ない屋外空気のみを多量に小屋裏空間15へ給気することができる。これによれば、冬期において小屋裏空間15に給気された屋外空気が、冬期のため低温である天井部20や構造躯体に触れた場合でも、結露を発生し難くすることができる。
【0050】
なお制御部80は、現在の日時が第1及び第2期間の何れにも属さないと判断した場合(すなわち、現在の日時が春期及び秋期に属する場合)には、結露が発生し難い期間であるため、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、任意の割合とすることができる。
【0051】
なお本実施形態において、第1及び第2期間に関する情報は、住宅Hの居住者や管理者等により手動で入力されるものとしたが、これに限定されない。例えば、第1及び第2期間に関する情報は、制御部80が自動で取得又は設定するものでもよい。例えば、制御部80は、外部の機器(例えば、気象情報に関するサーバ等)と情報を通信し、第1及び第2期間を取得することができる。また、例えば制御部80は、室内空間の空気と屋外空間の空気との水蒸気量の差が所定閾値を超えるような期間を、室内空間及び屋外空間の水蒸気量の互いの多少の関係に基づいて、第1及び第2期間として自動で設定することができる。
【0052】
また本実施形態において、開閉機構73の可動ガラリ75は、駆動部74からの駆動力により可動するものとしたが、これに限定されない。例えば、可動ガラリ75は、住宅Hの居住者や管理者等により手動で可動するものでもよい。
【0053】
また本実施形態においては、所定の条件として現在の日時が第1及び第2期間に属するか否かの判断が行われたが、これに限定されない。以下では「所定の条件」に関して本実施形態に係る換気システムの別例について説明する。
【0054】
まず図3(a)を用いて、第一実施形態に係る換気システムの第1の別例について説明する。図3(a)に示すように、第一実施形態に係る換気システムの第1の別例においては、屋外センサ81をさらに具備する。屋外センサ81は、住宅Hの外部に設けられ、屋外空間の温度を取得可能に構成される。また屋外センサ81は、制御部80と電気的に接続され、取得した情報を制御部80へ送信可能に構成される。
【0055】
このような構成において、制御部80は、所定の条件として、屋外空間の温度が所定の閾値を超えたか否かに応じて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、所定の割合に変更する。すなわち、屋外空間の温度が高い場合には、屋外空気の水蒸気量が多いこと(夏期であること)が推定でき、屋外空間の温度が低い場合には、室内空気の水蒸気量が多いこと(冬期であること)が推定できる。そこで、制御部80は、屋外空間の温度が所定の閾値を超えたか否かに応じて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することができる。
【0056】
なお上述の如き第1の別例において、屋外センサ81は、屋外空間の温度を取得可能に構成されるものとしたが、屋外空間の湿度を取得可能に構成されてもよい。すなわち、屋外空間の湿度が高い場合には、屋外空気の水蒸気量が多いこと(夏期であること)が推定でき、屋外空間の湿度が低い場合には、室内空気の水蒸気量が多いこと(冬期であること)が推定できる。そこで、制御部80は、屋外空間の湿度が所定の閾値を超えたか否かに応じて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することができる。
【0057】
また制御部80は、屋外空間の温度及び湿度の何れか一方に基づくのではなく、温度及び湿度の両方に基づいて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することもできる。
【0058】
なお上述の如き第1の別例においては、屋外センサ81を具備したが、屋外センサ81ではなく、室内空間の温度及び/又は湿度を取得可能な室内センサ(図3(b)参照)を具備してもよい。制御部80は、室内空間の温度及び/又は湿度が所定の閾値を超えたか否かに応じて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することができる。また制御部80は、屋外センサ81及び室内センサの両方の取得結果に基づいて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することもできる。
【0059】
次に図3(b)を用いて、第一実施形態に係る換気システムの第2の別例について説明する。図3(b)に示すように、第一実施形態に係る換気システムの第2の別例においては、屋外センサ81と共に、室内センサ82をさらに具備する。室内センサ82は、室内空間(リビングL)に設けられ、リビングLの湿度を取得可能に構成される。また室内センサ82は、制御部80と電気的に接続され、取得した情報を制御部80へ送信可能に構成される。
【0060】
このような構成において、制御部80は、屋外センサ81及び室内センサ82の取得結果に基づいて室内空気及び屋外空気の水蒸気量を算出し、所定の条件として、室内空気及び屋外空気の水蒸気量の差が比較的大きいか否かに応じて、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、所定の割合に変更する。すなわち、制御部80は、室内空気及び屋外空気のうち水蒸気量が多い方の空気の風量が小さくなるように、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を変更することにより、結露を発生し難くすることができる。
【0061】
以下では、図4を用いて、本発明の第二実施形態に係る換気システム40について説明する。第二実施形態に係る換気システム40においては、屋外給気部61が、図4(a)に示すダンパー64、及び、屋外センサ81(図3(a)参照)を有する点で、第一実施形態に係る換気システム40の構成と異なる。なお以下では、第二実施形態に係る換気システム40において、第一実施形態に係る換気システム40と共通する構成については同一の符号を付すと共に、説明を適宜省略する。
【0062】
屋外給気部61のダンパー64は、周囲の空気の温度に応じて可動する形状記憶ダンパーである。ダンパー64は、屋外フード63の内部に設けられる。こうして、ダンパー64は、屋外空気の温度を検知して、可動するように設けられる。またダンパー64は、屋外給気口62から小屋裏空間15への風量を制限可能に構成される。具体的には、ダンパー64は、屋外空気の温度が所定の閾値よりも小さい場合、屋外給気口62を完全に開けた形状(開状態)となると共に、屋外空気の温度が所定の閾値以上である場合、変形して屋外給気口62を完全に閉じた形状(閉状態)となるように構成される。なお以下ではダンパー64が可動する前記閾値となる温度を「可動温度」と称する。
【0063】
この第二実施形態において、可動温度は、室内空気よりも屋外空気の水蒸気量の方が比較的多くなる期間の屋外空間の温度に基づいて設定される。すなわち、夏期の屋外空間の温度が可動温度として設定される。
【0064】
以下では、制御部80より実行される第二実施形態に係る結露抑制処理について詳細に説明する。
【0065】
制御部80は、第一実施形態と同様に、結露抑制処理の実行中においては、所定の条件に応じて、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、所定の割合に変更する。本実施形態においては、制御部80は、可動ガラリ75の開閉状態をダンパー64の開閉状態と同期させるため、前記所定の条件として、屋外空間の温度が可動温度以上であるか否かに基づいて、現在が第1及び第2期間に属するか否かの判断を行う。すなわち、制御部80は、屋外空気の温度が可動温度以上である場合、現在が第1期間(すなわち、夏期)に属すると判断する。
【0066】
こうして、図4(b)に示すように、制御部80は、屋外空気の温度が可動温度以上であると判断した場合(すなわち、現在の日時が夏期に属する場合)、可動ガラリ75を可動させて開状態とし、室内給気口72の空気の流通面積を最大とする。またこの場合、ダンパー64は、屋外空気の温度が所定の閾値(可動温度)以上であるため、変形により閉状態となり屋外給気口62を完全に閉じる。これにより、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、100%及び0%とすることができる。これによれば、夏期において小屋裏空間15へと給気される空気全てを室内空気とすることができるため、結露を発生し難くすることができる。
【0067】
また、図4(b)に示すように、制御部80は、屋外空気の温度が可動温度未満であると判断した場合(すなわち、現在の日時が冬期に属する場合)、可動ガラリ75を可動させて閉状態とし、室内給気口72を完全に閉じる。またこの場合、ダンパー64は、屋外空気の温度が所定の閾値(可動温度)未満であるため、変形により開状態となり屋外給気口62を完全に開ける。これにより、室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、0%及び100%に変更することができる。これによれば、冬期において小屋裏空間15へと給気される空気全てを屋外空気とすることができるため、結露を発生し難くすることができる。
【0068】
以上のように、本発明の実施形態に係る換気システム40においては、
住宅H(建物)の小屋裏空間15(天井裏)の換気を行う換気システムであって、
駆動力により回転する排気ファン53を有し、前記排気ファン53の回転により前記小屋裏空間15(天井裏)の空気を屋外へ排出する排気装置51と、
屋外空間と前記小屋裏空間15(天井裏)とを連通し、前記排気装置51による前記小屋裏空間15(天井裏)の空気の排出に伴って屋外空間の空気を前記小屋裏空間15(天井裏)に給気する屋外給気部61と、
前記住宅H(建物)のリビングL(室内空間)と前記小屋裏空間15(天井裏)とを連通し、前記排気装置51による前記小屋裏空間15(天井裏)の空気の排出に伴って前記リビングL(室内空間)の空気を前記小屋裏空間15(天井裏)に給気する室内給気部71と、
を備え、
前記室内給気部71は、前記室内給気部71からの風量を制限可能な可動ガラリ75(開閉手段)を有するものである。
【0069】
このような構成により、室内給気口72及び屋外給気口62の互いの開口面積の比率を変更し、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量(給気量)の比率を任意の値に変更することができるため、小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0070】
また、換気システム40においては、
所定の条件に応じて前記可動ガラリ75(開閉手段)を制御可能な制御部80をさらに具備するものである。
【0071】
このような構成により、住宅Hの居住者や管理者等により手動で可動ガラリ75を可動させる必要がないため、小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0072】
また、換気システム40においては、
前記所定の条件には、現在の日時が、予め設定された期間に属するか否かが含まれるものである。
【0073】
このような構成により、現在の日時に応じて小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0074】
また、換気システム40においては、
前記所定の条件には、前記屋外空間の温湿度の少なくとも一方が所定閾値を超えたか否かが含まれるものである。
【0075】
このような構成により、屋外空間の温湿度の少なくとも一方に応じて小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0076】
また、換気システム40においては、
前記所定の条件には、前記リビングL(室内空間)の空気及び前記屋外空間の空気の水蒸気量の差が所定閾値を超えたか否かが含まれるものである。
【0077】
このような構成により、リビングL(室内空間)の空気及び屋外空間の空気の水蒸気量の差に応じて、小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0078】
また、換気システム40においては、
前記屋外給気部61は、前記屋外空間の温度に応じた形状変化により可動し、前記屋外給気部61からの風量を制限可能なダンパー64(変形手段)を有するものである。
【0079】
このような構成により、人力や制御部80の制御によらず、屋外給気部61からの風量を調整できるため、小屋裏空間15の結露の発生を簡易に抑制することができる。
【0080】
また、換気システム40においては、
前記所定の条件には、前記屋外空間の温度が前記ダンパー64(変形手段)の形状変化が起こる温度であるか否かが含まれるものである。
【0081】
このような構成により、ダンパー64(変形手段)の形状変化が起こる温度に応じて、小屋裏空間15の結露の発生を好適に抑制することができる。
【0082】
また、換気システム40においては、
前記排気装置51と前記屋外給気部61及び前記室内給気部71とは、前記小屋裏空間15(天井裏)において互いに対角となる位置に配置されるものである。
【0083】
このような構成により、小屋裏空間15内の全体に亘るように空気を流すことができるため、小屋裏空間15の換気を効果的に行うことができる。
【0084】
なお、本実施形態に係る住宅Hは、本発明に係る建物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る小屋裏空間15は、本発明に係る屋根裏の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るリビングLは、本発明に係る室内空間の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る可動ガラリ75は、本発明に係る開閉手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るダンパー64は、本発明に係る変形手段の実施の一形態である。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、建物は住宅に限定するものではなく、マンション、オフィスビル、商業施設、学校等であってもよい。また、建物を住宅とする場合、本実施形態のように2階建てに限定するものではなく、3階建て等でもよい。また建物の屋根部は、陸屋根を構成するものとしたが、これに限定するものではない。
【0087】
また、天井裏として、小屋裏空間15(すなわち、屋根部及び天井部により区画された空間)を説明したが、これに限定するものではない。すなわち、天井裏としては、天井部及び上階の床部により区画された階間であってもよい。
【0088】
また、天井部20及び屋根部30の構成は任意の構成を採用することができる。また屋根部30は必ずしもALC板31を有する必要はない。また、排気口52、屋外給気口62及び室内給気口72の数量も各々1つではなく、複数設けられてもよい。
【0089】
また、小屋裏空間15へと給気される風量全体における室内給気口72及び屋外給気口62からの風量の割合を、75%及び25%等としたが、これらは一例であり、これに限定するものではない。
【符号の説明】
【0090】
15 小屋裏空間
40 換気システム
51 排出装置
53 排気ファン
61 屋外給気部
71 室内給気部
75 可動ガラリ
図1
図2
図3
図4