(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018538
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】画像記録装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240201BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 207
B41J2/165 303
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121936
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】飯田 翔太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056EA24
2C056EB24
2C056EB25
2C056EB38
2C056EC23
2C056EC24
2C056EC28
2C056EC54
2C056FA10
2C056JB04
2C056JB09
2C056JB15
2C056JB18
2C056JC23
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減する。
【解決手段】プリンタ10のメンテナンス部50は、ワイパ槽51と、フラッシング槽61と、ワイパ槽51に洗浄液を供給する供給ポンプ82と、ワイパ槽51およびフラッシング槽61から洗浄液を排出させる排出ポンプ85とを備えている。フラッシング槽61には、ワイパ槽51を経由して洗浄液が供給される。制御部100は、ワイパ槽51に洗浄液を供給するときに、フラッシング槽61を洗浄した後の最初のフラッシング処理からの経過時間Tが第1閾値Th1未満であることに応じて(S104:No)、ワイパ槽51を洗浄する処理(S110)を行い、経過時間Tが第1閾値Th1以上であることに応じて(S104:Yes)、ワイパ槽51に洗浄液を継ぎ足して、フラッシング槽61を洗浄する処理(S120)を行う。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
上記ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス部と、
制御部とを備え、
上記メンテナンス部は、
上部が開口し、洗浄液を貯留するワイパ槽と、
上記ヘッドのノズル面に当接可能な第1位置と、上記ワイパ槽に貯留された洗浄液に浸漬される第2位置とに移動するワイパと、
上記ノズルから吐出された液体を吸収するためのフラッシングフォームと、
上部が開口し、上記フラッシングフォームを収容するフラッシング槽と、
上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の一方である第1槽に洗浄液を供給する供給ポンプと、
上記ワイパ槽および上記フラッシング槽から洗浄液を排出させる排出ポンプと、を備え、
上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の他方である第2槽には上記第1槽を経由して洗浄液が供給され、
上記制御部は、上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記第2槽を洗浄した後の、上記第2槽に関する最初の所定処理からの経過時間、または上記第2槽を洗浄してからの経過時間が第1閾値未満であることに応じて、上記第1槽を洗浄する第1処理を行い、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記第1槽に洗浄液を継ぎ足して、上記第2槽を洗浄する第2処理を行う画像記録装置。
【請求項2】
上記第1槽はワイパ槽であり、
上記第2槽はフラッシング槽であり、
上記制御部は、上記ワイパ槽に洗浄液を供給するときに、上記フラッシング槽を洗浄した後の最初のフラッシング処理からの経過時間が上記第1閾値未満であることに応じて、上記ワイパ槽を洗浄する上記第1処理を行い、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記ワイパ槽に洗浄液を継ぎ足して、上記フラッシング槽を洗浄する上記第2処理を行う請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記ワイパ槽と上記フラッシング槽とは隣接し、
上記ワイパ槽と上記フラッシング槽とを仕切る仕切りをさらに備え、
上記第2槽には上記第1槽から溢れた洗浄液が上記仕切りを越えて供給される請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記制御部は、
上記第1処理として、上記排出ポンプを制御して上記第1槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽の容量以上の第1量の洗浄液を供給する処理を行い、
上記第2処理として、上記排出ポンプを制御して上記第2槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽から洗浄液が溢れる第2量の洗浄液を供給することで、上記第2槽に洗浄液を供給する処理を行う請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記第2量は、上記第1槽の空き容量と、上記第2槽に供給する洗浄液の量との和以上である請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記制御部は、
上記第1槽に貯留された洗浄液の蒸発率が第2閾値以上であることに応じて、上記経過時間に基づいて上記第1処理および上記第2処理のいずれかを行い、
上記蒸発率が上記第2閾値未満であることに応じて、上記排出ポンプを制御して上記第2槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽から洗浄液が溢れ、かつ上記第2量以下の第3量の洗浄液を供給することで、上記第2槽に洗浄液を供給する第3処理を行う請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記第3量は、上記第1槽の空き容量と、上記第2槽に供給する洗浄液の量との和である請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記蒸発率が上記第2閾値未満であり、かつ上記経過時間が第3閾値以上であることに応じて、上記第3処理を行う請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項9】
上記第3閾値は、上記第1閾値より大きい請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、上記ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス部とを備え、上記メンテナンス部は、上部が開口し、洗浄液を貯留するワイパ槽と、上記ヘッドのノズル面に当接可能な第1位置と、上記ワイパ槽に貯留された洗浄液に浸漬される第2位置とに移動するワイパと、上記ノズルから吐出された液体を吸収するためのフラッシングフォームと、上部が開口し、上記フラッシングフォームを収容するフラッシング槽と、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の一方である第1槽に洗浄液を供給する供給ポンプと、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽から洗浄液を排出させる排出ポンプと、を備え、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の他方である第2槽には上記第1槽を経由して洗浄液が供給される画像記録装置の制御方法であって、
上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記第2槽を洗浄した後の、上記第2槽に関する最初の所定処理からの経過時間、または上記第2槽を洗浄してからの経過時間が第1閾値未満であることに応じて、上記第1槽を洗浄する第1処理ステップと、
上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記第1槽に洗浄液を継ぎ足して、上記第2槽を洗浄する第2処理ステップと、を備えた画像記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス部とを備えた画像記録装置、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するノズルを有するヘッドを備えた画像記録装置が知られている。画像記録装置は、ノズルの詰まりを防止するために、ヘッドのノズル面をフラッシング槽に収容されたフラッシングフォームに対向させて、ノズルからインクを吐出させるフラッシング処理を行う。フラッシングフォームは、例えば多孔性材料で形成されており、フラッシング処理時にヘッドのノズルから吐出されたインクを吸収する。
【0003】
また、画像記録装置は、ヘッドのノズル面に付着した不要物(インクやゴミなど)を除去するために、ノズル面をワイパで拭くワイプ処理を行う。ワイプ処理として、洗浄液を貯留するワイパ槽にワイパを浸け、洗浄液を含浸したワイパでノズル面に洗浄液を付着させ、ノズル面に付着した洗浄液や不要物を拭き取る方法が知られている。
【0004】
本願発明に関連して、特許文献1に記載のメンテナンス装置が存在する。このメンテナンス装置は、インク受容室と、液体注入部と、廃液貯留部とを有する。インク受容室には、ノズルから噴射されるインクを吸着するための吸着部材が位置している。液体注入部は、ヘッドがインク受容室の上方から離れているときに、インク受容室に液体(洗浄液)を注入する。廃液貯留部は、インク受容室から排出されたインクおよび液体を貯留する。吸着部材はフラッシングフォームに該当し、インク受容室はフラッシング槽に該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フラッシングフォームに吸収されたインクをそのままにしておくと、フラッシングフォームの内部でインクが乾燥し、乾燥したインクがフラッシングフォームに固着する。そこで、ワイパ槽だけでなく、フラッシング槽にも洗浄液を供給する構成が考えられる。しかしながら、この構成を有する画像記録装置において、ワイパ槽に対する洗浄液の供給と、フラッシング槽に対する洗浄液の供給とを互いに独立して行うと、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量が多くなる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の画像記録装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、上記ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス部と、制御部とを備えている。上記メンテナンス部は、上部が開口し、洗浄液を貯留するワイパ槽と、上記ヘッドのノズル面に当接可能な第1位置と、上記ワイパ槽に貯留された洗浄液に浸漬される第2位置とに移動するワイパと、上記ノズルから吐出された液体を吸収するためのフラッシングフォームと、上部が開口し、上記フラッシングフォームを収容するフラッシング槽と、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の一方である第1槽に洗浄液を供給する供給ポンプと、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽から洗浄液を排出させる排出ポンプと、を備えている。上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の他方である第2槽には上記第1槽を経由して洗浄液が供給される。上記制御部は、上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記第2槽を洗浄した後の、上記第2槽に関する最初の所定処理からの経過時間、または上記第2槽を洗浄してからの経過時間が第1閾値未満であることに応じて、上記第1槽を洗浄する第1処理を行い、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記第1槽に洗浄液を継ぎ足して、上記第2槽を洗浄する第2処理を行う。
【0009】
上記画像記録装置によれば、第1槽に洗浄液を供給するときに、第2槽への次の洗浄液の供給までの時間が短い場合には、ワイパ槽に貯留された洗浄液の蒸発率を引き下げる効果に加えて、フラッシングフォームへのインク固着を防止する効果を有する洗浄液の継ぎ足しを行うことにより、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減できる。
【0010】
(2) 好ましくは、上記第1槽はワイパ槽であり、上記第2槽はフラッシング槽であり、上記制御部は、上記ワイパ槽に洗浄液を供給するときに、上記フラッシング槽を洗浄した後の最初のフラッシング処理からの経過時間が上記第1閾値未満であることに応じて、上記ワイパ槽を洗浄する上記第1処理を行い、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記ワイパ槽に洗浄液を継ぎ足して、上記フラッシング槽を洗浄する上記第2処理を行ってもよい。
【0011】
(3) 好ましくは、上記ワイパ槽と上記フラッシング槽とは隣接し、上記画像記録装置は、上記ワイパ槽と上記フラッシング槽とを仕切る仕切りをさらに備え、上記第2槽には上記第1槽から溢れた洗浄液が上記仕切りを越えて供給されてもよい。
【0012】
(4) 好ましくは、上記制御部は、上記第1処理として、上記排出ポンプを制御して上記第1槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽の容量以上の第1量の洗浄液を供給する処理を行い、上記第2処理として、上記排出ポンプを制御して上記第2槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽から洗浄液が溢れる第2量の洗浄液を供給することで、上記第2槽に洗浄液を供給する処理を行ってもよい。
【0013】
(5) 好ましくは、上記第2量は、上記第1槽の空き容量と、上記第2槽に供給する洗浄液の量との和以上であってもよい。
【0014】
(6) 好ましくは、上記制御部は、上記第1槽に貯留された洗浄液の蒸発率が第2閾値以上であることに応じて、上記経過時間に基づいて上記第1処理および上記第2処理のいずれかを行い、上記蒸発率が上記第2閾値未満であることに応じて、上記排出ポンプを制御して上記第2槽から洗浄液を排出させ、上記供給ポンプを制御して上記第1槽に上記第1槽から洗浄液が溢れ、かつ上記第2量以下の第3量の洗浄液を供給することで、上記第2槽に洗浄液を供給する第3処理を行ってもよい。
【0015】
(7) 好ましくは、上記第3量は、上記第1槽の空き容量と、上記第2槽に供給する洗浄液の量との和であってもよい。
【0016】
(8) 好ましくは、上記制御部は、上記蒸発率が上記第2閾値未満であり、かつ上記経過時間が第3閾値以上であることに応じて、上記第3処理を行ってもよい。
【0017】
(9) 好ましくは、上記第3閾値は、上記第1閾値より大きくてもよい。
【0018】
(10) 本発明の画像記録装置の制御方法は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、上記ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス部とを備え、上記メンテナンス部は、上部が開口し、洗浄液を貯留するワイパ槽と、上記ヘッドのノズル面に当接可能な第1位置と、上記ワイパ槽に貯留された洗浄液に浸漬される第2位置とに移動するワイパと、上記ノズルから吐出された液体を吸収するためのフラッシングフォームと、上部が開口し、上記フラッシングフォームを収容するフラッシング槽と、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の一方である第1槽に洗浄液を供給する供給ポンプと、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽から洗浄液を排出させる排出ポンプと、を備え、上記ワイパ槽および上記フラッシング槽の他方である第2槽には上記第1槽を経由して洗浄液が供給される画像記録装置の制御方法である。上記制御方法は、上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記第2槽を洗浄した後の、上記第2槽に関する最初の所定処理からの経過時間、または上記第2槽を洗浄してからの経過時間が第1閾値未満であることに応じて、上記第1槽を洗浄する第1処理ステップと、上記第1槽に洗浄液を供給するときに、上記経過時間が上記第1閾値以上であることに応じて、上記第1槽に洗浄液を継ぎ足して、上記第2槽を洗浄する第2処理ステップと、を備えている。
【0019】
上記画像記録装置の制御方法によれば、上記画像記録装置と同様に、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ10の内部構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、キャリッジ41の移動範囲を示す図である。
【
図3】
図3は、制御部100の構成、および制御部100に接続される要素を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、メンテナンス部50の外観斜視図である。
【
図5】
図5は、ワイパ槽51およびフラッシング槽61の内部を示す斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、ワイパユニット52が上向き位置に位置するときのメンテナンス部50を示す図であり、
図6(B)は、ワイパユニット52が下向き位置に位置するときのメンテナンス部50を示す図である。
【
図7】
図7は、制御部100による画像記録処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、制御部100による洗浄液供給処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、制御部100によるワイパ槽洗浄処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、制御部100によるワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理のフローチャートである。
【
図11】
図11は、フラッシング槽洗浄処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るプリンタ10(画像記録装置の一例)について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、プリンタ10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口13が設けられている面を前面として前後方向8が定義され、プリンタ10を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、および左右方向9は、互いに直交している。
【0023】
[プリンタ10の全体構成]
図1に示されるプリンタ10は、インクジェット記録方式でシートSに画像を記録する画像記録装置である。シートSは、ロール状に巻かれた長尺の用紙である。シートSをプリンタ10に装着するために、シートSの巻回中心には貫通孔が形成されている。被記録媒体は、シール紙、ファンフォールド紙、裁断紙、または布地などでもよい。
【0024】
プリンタ10は、概ね直方体状の筐体11を備えている。筐体11は、卓上、床上、またはラックなどに載置可能なサイズを有する。筐体11の前壁12には、左右方向9に延伸するスリット状の排出口13が位置する。排出口13からは、プリンタ10により画像が記録されたシートSが排出される。排出されたシートSは、例えば、プリンタ10に取り付けられた巻取装置(図示せず)により巻き取られる。
【0025】
図1に示されるように、プリンタ10は、筐体11内に、ホルダ21、テンショナ22、搬送ローラ対23、排出ローラ対24、プラテン25、4個のタンク26A~26D、キャリッジ41、およびヘッド42を備えている。ヘッド42は、キャリッジ41に搭載されている。
図2に示されるように、プリンタ10は、筐体11内に、2本のガイドレール37、38、およびメンテナンス部50をさらに備えている。
図3に示されるように、プリンタ10は、筐体11内に、制御部100、ホルダ駆動用モータ111、搬送用モータ112、キャリッジ駆動用モータ113、ワイパ駆動用モータ114、およびポンプ駆動用モータ115をさらに備えている。プリンタ10は、上述した要素以外に、各種センサやキャップなどをさらに備えていてもよい。
【0026】
[タンク26A~26D]
タンク26A~26Dは、それぞれ、イエロ、マゼンタ、シアン、およびブラックのインク(液体の一例)を貯留する。インクは、所謂ラテックスインクであり、顔料、樹脂微粒子、および添加剤を含有している。インクは、顔料および樹脂微粒子を均一に分散させるに適した粘度を有している。顔料は、インクの色となるものである。樹脂微粒子は、シートSに顔料を付着させるためのものであり、例えばヒータ(図示せず)の加熱によってガラス転移温度を超える合成樹脂である。
【0027】
なお、プリンタ10は、少なくとも1個のタンクを備えていればよい。また、タンクは、インク以外の液体を貯留してもよい。タンクに貯留される液体には、例えば、前処理液がある。前処理液は、カチオン系高分子、多価金属塩(例えば、マグネシウム塩)などを含有してもよい。前処理液は、インク中の成分を凝集または析出させることにより、インクの滲みや裏抜けを防止する機能を有する。前処理液は、インクの発色性や速乾性を向上させる機能を有する場合もある。
【0028】
[シートSの搬送機構]
筐体11の内部には、上下方向7および前後方向8に拡がる一対のサイドフレーム(図示せず)が位置する。ホルダ21は、シートSを支持する回転軸31を有する。回転軸31は左右方向9に延び、回転軸31の両端はサイドフレームに固定されている。回転軸31には、ホルダ駆動用モータ111(
図3参照)の動力が伝達される。この動力により、ホルダ21は回転軸31の周方向に回転する。
図1において、ホルダ21の回転方向は反時計回りである。ホルダ21の回転により、ホルダ21に支持されたロール体も回転する。シートSは、搬送ローラ対23および排出ローラ対24が回転することにより、ロール体の後端から上方に引き出されテンショナ22へと案内される。
【0029】
テンショナ22、搬送ローラ対23、および排出ローラ対24は、それぞれ、サイドフレームの間で左右方向9に延び、左右方向9に平行な回転軸の周方向に回転可能に取り付けられている。テンショナ22には、バネなどの付勢部材によって後向きの付勢力が加えられている。テンショナ22は、ロール体から引き出されたシートSと当接して、シートSを前方へ向かって湾曲するように案内する。
【0030】
搬送ローラ対23は、駆動ローラ32とピンチローラ33とを有し、テンショナ22の前方に位置する。排出ローラ対24は、駆動ローラ34とピンチローラ35とを有し、搬送ローラ対23のさらに前方に位置する。駆動ローラ32、34の下端位置は、上下方向7においてテンショナ22の上端位置に概ね一致する。ピンチローラ33は、駆動ローラ32に下方から当接する。ピンチローラ35は、駆動ローラ34に下方から当接する。
【0031】
駆動ローラ32、34には、搬送用モータ112(
図3参照)の動力が伝達される。この動力により、駆動ローラ32、34は回転する。これにより、駆動ローラ32、34は、ピンチローラ33、35との間にシートSをニップしながら搬送向き6へ搬送する。本実施形態では、搬送向き6は前向きである。
【0032】
[プラテン25]
プラテン25は、前後方向8において搬送ローラ対23および排出ローラ対24の間の位置で、サイドフレームに取り付けられている。プラテン25は、サイドフレームの間で左右方向9に延び、前後方向8および左右方向9に拡がるシートSの支持面36を有する。支持面36は、プラテン25の上端面である。支持面36の上下位置は、テンショナ22の上端位置と概ね一致する。プラテン25は、シートSを支持面36に吸着する吸着プラテンでもよい。
【0033】
[キャリッジ41とヘッド42]
図2に示されるように、ガイドレール37、38は、互いに平行に左右方向9に延在する。ガイドレール37、38の上下方向7の位置は同じである。ガイドレール38は、前後方向8においてガイドレール37の後方に位置する。ガイドレール37、38の両端は、サイドフレームに固定されている。キャリッジ41は、ガイドレール37、38によって支持されている。キャリッジ駆動機構(図示せず)には、キャリッジ駆動用モータ113(
図3参照)の動力が伝達される。キャリッジ41は、ガイドレール37、38によって支持された状態で、キャリッジ駆動機構の作用によって左右方向9に移動する。
【0034】
キャリッジ41は、ヘッド42を搭載して移動する。ヘッド42の下面は、ノズル面43と称される(
図1参照)。ノズル面43には、インクを吐出する複数のノズル44が形成されている。タンク26A~26Dとヘッド42とは、インク流路(図示せず)を介して接続されている。タンク26A~26Dに貯留されたインクは、インク流路を経由してヘッド42へ供給される。キャリッジ41が左右方向9に移動している間に、ヘッド42へ供給されたインクがノズル44から吐出される。これにより、シートSに画像記録が行われる。
【0035】
[制御部100]
図3に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、およびASIC105を有する。ROM102は、制御部100の動作に必要な各種のデータなどを記憶している。RAM103は、CPU101の作業用メモリである。EEPROM104は、CPU101によって実行される制御プログラムなどを記憶している。プリンタ10が画像記録を実行する前に、EEPROM104に記憶された制御プログラムはRAM103に複写される。CPU101は、RAM103に記憶された制御プログラムを実行する。これにより、制御部100は、後述する画像記録処理や洗浄液供給処理などを実行する。
【0036】
制御部100は、ASIC105を介して、ホルダ駆動用モータ111、搬送用モータ112、キャリッジ駆動用モータ113、ワイパ駆動用モータ114、ポンプ駆動用モータ115、メンテナンス部50に含まれる第1バルブ83および第2バルブ84、並びにヘッド42に電気的に接続されている。ホルダ駆動用モータ111、搬送用モータ112、キャリッジ駆動用モータ113、ワイパ駆動用モータ114、およびポンプ駆動用モータ115は、制御部100からの制御に従い回転し、動力を発生させる。第1バルブ83および第2バルブ84は、制御部100からの制御に従い、開状態と閉状態との間で状態変化する。ヘッド42は、制御部100からの制御に従い、プラテン25上を搬送されるシートSに対してインクを吐出する。
【0037】
ホルダ21は、ホルダ駆動用モータ111からの動力によって回転する。駆動ローラ32、34は、搬送用モータ112からの動力によって回転する。シートSは、搬送用モータ112からの動力によって搬送向き6に搬送される。キャリッジ41は、キャリッジ駆動用モータ113からの動力によって、左右方向9に移動する。メンテナンス部50に含まれるワイパユニット52は、ワイパ駆動用モータ114からの動力によって後述する動作を行う。供給ポンプ82および排出ポンプ85は、ポンプ駆動用モータ115からの動力によって後述する動作を行う。なお、ホルダ駆動用モータ111、搬送用モータ112、キャリッジ駆動用モータ113、ワイパ駆動用モータ114、およびポンプ駆動用モータ115の一部が、共通のモータで実現されていてもよい。また、供給ポンプ82を駆動するモータと、排出ポンプ85を駆動するモータとは、別でもよい。
【0038】
[キャリッジ41の移動範囲]
図2に示されるように、プラテン25は、左右方向9に長い形状を有し、上下方向7においてキャリッジ41の下方に位置する(
図1参照)。プラテン25の左端は、左右方向9において、ガイドレール37、38の左端付近に位置する。プラテン25の右端は、左右方向9において、ガイドレール37、38の中央より右に位置する。メンテナンス部50は、左右方向9においてプラテン25の右に位置する。プリンタ10が画像記録を実行している間、キャリッジ41は、プラテン25の範囲内で左右方向9に移動する。プリンタ10が画像記録を実行していない間、キャリッジ41は、メンテナンス部50よりも右の位置(以下、待機位置と称される)に位置する。
【0039】
[メンテナンス部50]
メンテナンス部50は、ヘッド42のメンテナンスを行うためのものである。
図4に示されるように、メンテナンス部50は、ワイパ槽51、ワイパユニット52、フラッシング槽61、およびフラッシングフォーム62を備えている。ワイパユニット52は、2つのワイパ53、54を有する。フラッシング槽61の上部は、板状部材63によって覆われている。
図5には、ワイパユニット52、フラッシングフォーム62、および板状部材63を除いた状態で、ワイパ槽51およびフラッシング槽61の内部が示されている。
【0040】
図6に示されるように、メンテナンス部50は、洗浄液タンク81、供給ポンプ82、第1バルブ83、第2バルブ84、排出ポンプ85、および廃液タンク86をさらに備えている。フラッシング槽61は、ワイパ槽51に隣接し、ワイパ槽51の左に位置する。ワイパ槽51とフラッシング槽61とは、一体に形成されている。なお、ワイパ槽51は、第1槽の一例である。フラッシング槽61は、第2槽の一例である。
【0041】
[ワイパ槽51とワイパユニット52]
図5に示されるように、ワイパ槽51は、上部が開口した箱状の形状を有する。
図6に示されるように、ワイパ槽51は、内部に洗浄液Lを貯留する。洗浄液Lは、ヘッド42のノズル面43に付着した不要物を除去するのに適した液体である。洗浄液Lには、例えば、グリセリンが使用される。
【0042】
ワイパ53、54は、先端部がワイパ槽51の外部に位置するように、ワイパユニット52に取り付けられる。ワイパ53は、洗浄液Lを含浸せず、外力に応じて形状をある程度保ちながら変形する。一方、ワイパ54は、洗浄液Lを含浸し、外力に応じて高い自由度で変形する。ワイパ53は、例えば、ゴム製の材料で形成される。ワイパ54は、例えば、多孔性材料で形成される。
【0043】
図4に示されるように、ワイパユニット52は、回転軸55を有する。
図5に示されるように、ワイパ槽51の前壁51aおよび後壁51bは、それぞれ、支持部56を有する。2つの支持部56は、それぞれ、回転軸55の前端および後端を支持する。ワイパユニット52は、回転軸55を中心として回転可能にワイパ槽51に支持される。
【0044】
ワイパ駆動機構(図示せず)にワイパ駆動用モータ114(
図3参照)の動力が伝達されることにより、回転軸55は半回転し、これに伴い、ワイパユニット52およびワイパ53、54は回転軸55を中心として半回転する。これにより、ワイパユニット52は、ワイパ53、54の先端部が上を向く位置(
図6(A)に示される位置。以下、上向き位置と称される)と、ワイパ53、54の先端部が下を向く位置(
図6(B)に示される位置。以下、下向き位置と称される)との間で移動する。
【0045】
ワイパユニット52が上向き位置に位置するとき、ワイパ53、54は、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lに浸漬されておらず、ヘッド42のノズル面43に当接可能な位置に位置する。ワイパユニット52が下向き位置に位置するとき、ワイパ53の一部、およびワイパ54の一部はワイパ槽51に貯留された洗浄液Lに浸漬されており、ワイパ53、54はノズル面43に当接できない位置に位置する。なお、上向き位置は、第1位置の一例である。下向き位置は、第2位置の一例である。
【0046】
制御部100は、ワイプ処理を行うときに、ワイパユニット52を上向き位置に移動し、キャリッジ41をワイパユニット52の上方で左向きに移動する。このとき、ワイパ53、54は、ヘッド42のノズル面43に接触し、ノズル面43に付着した洗浄液や不要物(インクやごみなど)を拭き取る。
【0047】
図5に示されるように、ワイパ槽51の下壁51cには、供給口57と排出口58とが位置する。供給口57は、ワイパ槽51に洗浄液Lを供給するためのものである。排出口58は、ワイパ槽51から洗浄液Lを排出するためのものである。
【0048】
[フラッシング槽61とフラッシングフォーム62]
図5に示されるように、フラッシング槽61は、上部が開口した箱状の形状を有する。
図6に示されるように、フラッシング槽61は、内部にフラッシングフォーム62を収容する。フラッシングフォーム62は、多孔性材料で形成されている。フラッシングフォーム62は、例えば、スポンジである。
【0049】
図4および
図6に示されるように、板状部材63は、フラッシング槽61の上部を覆う。板状部材63は、中央部分に、フラッシング槽61に係止された状態で、フラッシングフォーム62の上面の一部を露出させる開口64を有する。板状部材63は、開口64の位置を除いて、フラッシング槽61の上部の全体を覆う。板状部材63は、フラッシング槽61に係止された状態において、フラッシング槽61に収容されたフラッシングフォーム62に下向きの力を作用させる。
【0050】
制御部100は、フラッシング処理を行うときに、キャリッジ41をフラッシング槽61の上方へ移動する。開口64は、このときにヘッド42のすべてのノズル44がフラッシングフォーム62に対向するように形成されている。開口64のサイズは、ヘッド42におけるノズル44の配置領域のサイズと同じであるか、あるいはそれより少し大きいことが好ましい。フラッシング槽61に収容されたフラッシングフォーム62は、フラッシング処理によってヘッド42のノズル44から吐出されたインクを吸収する。
【0051】
図5に示されるように、フラッシング槽61は、下壁61a、前壁61b、左壁61c、後壁61d、および仕切り61eを有する。前壁61bおよび後壁61dは、それぞれ、フラッシング槽61の内部空間に向かって突出する2個のリブ65を有する。下壁61aの内側面の中央部分には、フラッシング槽61の内部空間に向かって突出する、環状のリブ66が位置する。リブ66の平面形状は、概ね長方形である。板状部材63がフラッシング槽61の上部を覆わない状態で、フラッシングフォーム62をフラッシング槽61に入れると、フラッシングフォーム62の底面は、変形することなく、リブ66の上面に当接する。その後、板状部材63がフラッシング槽61の上部を覆う状態になると、フラッシング槽61に収容されたフラッシングフォーム62の底面のうちリブ66の上面に当接する部分が変形し、リブ66の一部がフラッシングフォーム62に食い込む。この状態で、リブ66は、フラッシングフォーム62の底面を支持する。
【0052】
下壁61aの内側面においてリブ66で囲まれた部分には、凹部67が位置する。凹部67は、中央に近いほどフラッシング槽61の内部空間から外向きに離れる部分であり、4つの三角形の傾斜壁68によって形成される。凹部67の中央には、排出口69が位置する。排出口69は、フラッシング槽61から洗浄液を排出するためのものである。
【0053】
板状部材63は、金属板に開口64を形成し、金属板の各端に加工を施したものである。
図6に示されるように、板状部材63の左端および右端は、上下方向7に折り曲げられている。板状部材63の後端は、板バネ(図示せず)を介してフラッシング槽61の後壁61dの外側に固定されている。
図4に示されるように、板状部材63の前端には、操作部71およびフック72が位置する。
図5に示されるように、フラッシング槽61の前壁61bの外側には、フック受け部73が位置する。板状部材63がフラッシング槽61の上部を覆うとき、フック72はフック受け部73に係合し、板状部材63はフラッシング槽61に係止される。
【0054】
フラッシング処理が繰り返し行われると、フラッシングフォーム62を交換する必要が生じる。プリンタ10のユーザは、フラッシングフォーム62を交換するときに、フック72がフック受け部73から外れるまで操作部71を上向きに持ち上げる。フック72がフック受け部73から外れると、板バネの付勢力によって、板状部材63は後端側を中心として回動し、フラッシング槽61の上面から離れる。
【0055】
[洗浄液の供給と排出]
図6に示されるように、ワイパ槽51の供給口57は、チューブ92を介して供給ポンプ82の一端に接続されている。供給ポンプ82の他端は、チューブ91を介して洗浄液タンク81に接続されている。洗浄液タンク81は、未使用の洗浄液を貯留している。供給ポンプ82は、ポンプ駆動用モータ115(
図3参照)によって駆動されると、洗浄液タンク81に貯留された未使用の洗浄液をワイパ槽51に供給する。ワイパ槽51は、洗浄液タンク81から供給ポンプ82を用いて供給された洗浄液を貯留する。
【0056】
図5および
図6に示されるように、仕切り61eは、ワイパ槽51とフラッシング槽61とを仕切る。仕切り61eは、前壁61b、左壁61c、および後壁61dより低い。供給ポンプ82が動作し、洗浄液タンク81からワイパ槽51に一定以上の洗浄液が供給されると、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの一部は、仕切り61eを越えてフラッシング槽61内に流入する。このようにフラッシング槽61には、ワイパ槽51を経由して洗浄液が供給される。フラッシング槽61には、ワイパ槽51から溢れた洗浄液が仕切り61eを越えて供給される。フラッシング槽61に供給された洗浄液は、リブ66の外側の空間を流れ、リブ66の外側を取り囲む。リブ66の外側に位置する洗浄液は、フラッシングフォーム62によって吸収され、フラッシングフォーム62内に拡散する。フラッシング槽61にワイパ槽51を経由して洗浄液を供給する構成には、インクを吸収したフラッシングフォーム62が浸漬されたために汚れた洗浄液で、ヘッド42のノズル面43を拭くことがないというメリットがある。
【0057】
図6に示されるように、ワイパ槽51の排出口58は、チューブ93、および第1バルブ83、チューブ94を介して、ジョイント87の第1端子に接続されている。フラッシング槽61の排出口69は、チューブ95、第2バルブ84、およびチューブ96を介して、ジョイント87の第2端子に接続されている。ジョイント87の第3端子は、チューブ97を介して排出ポンプ85の一端に接続されている。排出ポンプ85の他端は、チューブ98を介して廃液タンク86に接続されている。上述されたように、第1バルブ83および第2バルブ84は、制御部100からの制御に従い、開状態と閉状態との間で状態変化する。排出ポンプ85は、ポンプ駆動用モータ115(
図3参照)によって駆動されると、第1バルブ83および第2バルブ84の開閉状態に応じて、排出口58に至る流路、または排出口69に至る流路に負圧を与える。
【0058】
第1バルブ83が開状態、第2バルブ84が閉状態のときに排出ポンプ85が駆動されると、排出口58に至る経路に負圧が与えられる。このとき、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lが吸引され、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lは、排出口58、チューブ93、第1バルブ83、チューブ94、ジョイント87、チューブ97、排出ポンプ85、およびチューブ98を経由して廃液タンク86に排出される。
【0059】
第1バルブ83が閉状態、第2バルブ84が開状態のときに排出ポンプ85が駆動されると、排出口69に至る経路に負圧が与えられ、フラッシングフォーム62の下方の空間74に負圧が与えられる。このとき、フラッシングフォーム62内のインクおよび洗浄液は、吸引されて下向きに速やかに移動する。空間74に到達したインクおよび洗浄液は、排出口69、チューブ95、第2バルブ84、チューブ96、ジョイント87、チューブ97、排出ポンプ85、およびチューブ98を経由して廃液タンク86に排出される。このように排出ポンプ85は、ワイパ槽51およびフラッシング槽61から洗浄液を排出させる。
【0060】
[画像記録処理]
図7が参照されて、制御部100による画像記録処理が説明される。制御部100がS11に到達した時点において、キャリッジ41は待機位置に位置し、ワイパユニット52は下向き位置に位置する。このとき、ワイパ53の一部、およびワイパ54の一部は、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lに浸漬されている。
【0061】
制御部100は、操作部(図示せず)から画像記録指示を受け取る(S11)。具体的には、制御部100は、画像記録指示を受け取るまで、S11で待機する。制御部100は、S11で画像記録指示を受け取ると、ワイパ駆動用モータ114を制御することで、ワイパユニット52が上向き位置へ移動する(S12)。
【0062】
次に、制御部100は、ワイプ処理を実行する(S13)。S13において、制御部100が、キャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41が、待機位置からワイパユニット52の上方へと、左向きに移動する。このとき、ワイパ53、54がヘッド42のノズル面43に接触しながら、キャリッジ41が左向きに移動する。制御部100が、キャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41は、ワイパ53、54がヘッド42のノズル面43に接触しない位置まで移動する。この時点で、制御部100は、ワイプ処理を終了する。次に、制御部100がワイパ駆動用モータ114を制御することで、ワイパユニット52が下向き位置へ移動する(S14)。
【0063】
次に、制御部100が、キャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41が、記録開始位置へと、左向きに移動する(S15)。記録開始位置は、キャリッジ41がプラテン25に対向する所定の位置である。次に、制御部100が、ホルダ駆動用モータ111および搬送用モータ112を制御することで、シートSが記録開始位置まで搬送される(S16)。なお、制御部100は、S12からS15の全部または一部と並行してS16を実行してもよい。
【0064】
次に、制御部100は、シートSに対して画像記録を実行する(S17)。S17において、制御部100が、キャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41が左右方向9に(左向きまたは右向きに)移動する。制御部100は、キャリッジ41が左右方向9に移動している間に、ヘッド42を制御することで、画像データに応じた量のインクをヘッド42のノズル44から吐出させる。
【0065】
次に、制御部100は、画像データが残っているか否かを判断する(S18)。制御部100は、S18において画像データが残っていると判断したことに応じて(S18:Yes)、S19へ進む。この場合、制御部100が、搬送用モータ112を制御することで、シートSが所定量だけ搬送される(S19)。その後、制御部100はS17へ進む。
【0066】
制御部100は、S18において画像データが残っていないと判断したことに応じて(S18:No)、S20へ進む。この場合、制御部100が、搬送用モータ112を制御することで、シートSが所定位置まで排出される(S20)。次に、制御部100がキャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41が、待機位置へと、右向きに移動する(S21)。その後、制御部100は、次の画像記録を実行するためにS11へ進む。
【0067】
[フラッシング処理]
制御部100は、例えば、前回のフラッシング処理を行ってからの経過時間が閾値を超えたときや、プリンタ10のユーザから指示を受けたときに、フラッシング処理を行う必要があると判断する。制御部100は、フラッシング処理を行う必要があると判断したことに応じて、フラッシング処理を行う。
【0068】
上述されたように、制御部100が、フラッシング処理を行うときに、キャリッジ駆動用モータ113を制御することで、キャリッジ41が、フラッシング槽61の上方へ移動する。開口64は、このときにヘッド42のすべてのノズル44がフラッシングフォーム62に対向するように形成されている。制御部100は、ヘッド42に対して、フラッシング処理に適した量のインクをノズル44から吐出させる制御を行う。フラッシング槽61に収容されたフラッシングフォーム62は、フラッシング処理によってヘッド42のノズル44から吐出されたインクを吸収する。
【0069】
フラッシングフォーム62は洗浄液を含浸しているので、フラッシングフォーム62に吸収されたインクは、フラッシングフォーム62内を洗浄液と共に下向きに移動し、フラッシングフォーム62の下方の空間74に到達する。
【0070】
制御部100が、フラッシング処理を行いながら、またはフラッシング処理を行った後に、第1バルブ83を閉状態、第2バルブ84を開状態に制御し、ポンプ駆動用モータ115(
図3参照)を駆動することで、排出ポンプ85は空間74に負圧を与える。このとき、フラッシングフォーム62内のインクおよび洗浄液は、吸引されて下向きに速やかに移動し、空間74に到達したインクおよび洗浄液は、吸引されて廃液タンク86に排出される。
【0071】
[洗浄液の残量と蒸発率の算出]
プリンタ10では、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの水分が蒸発して、洗浄液Lの濃度が高くなると、洗浄液Lの粘度が高くなる。このため、制御部100がワイプ処理を行ったときに、ヘッド42のノズル面43をきれいに払拭できなかったり、粘度が高くなった洗浄液Lがノズル44に詰まってヘッド42の吐出不良が発生したりする。このように洗浄液Lの濃度が高くなると、ワイプ処理の効果が低下するので、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの濃度を所定以下に保つ必要がある。
【0072】
そこで、制御部100は、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの残量(以下、残量Pと称される)を算出する処理と、ワイパ槽51の空き容量(以下、空き容量Qと称される)を算出する処理と、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの蒸発率(以下、蒸発率Rと称される)を算出する処理とを行う。
【0073】
制御部100は、
図8に示されるS110、S120またはS130(詳細は後述)を実行したときに、残量Pをリセットしてワイパ槽51の容量とする。ワイパ槽51の容量は、ワイパ槽51に貯留可能な洗浄液の最大量、すなわち、洗浄液の液面の高さが仕切り61eの高さに等しいときの洗浄液の量である。
【0074】
制御部100は、画像記録を開始したとき、画像記録を終了したとき、および画像記録を実行してから所定の時間(例えば、1時間)が経過したときに、残量Pを新たに算出して更新する。制御部100は、プリンタ10に設けられた温度センサおよび湿度センサ(いずれも図示せず)から温度および湿度を取得し、前回の残量P、前回の残量Pを算出したときからの経過時間(画像記録中の経過時間、および画像記録を行っていない間の経過時間)、温度センサから取得した温度、湿度センサから取得した温度などに基づき、残量Pを新たに算出する。制御部100は、残量Pをリセットまたは新たに算出したときに、ワイパ槽51の容量から残量Pを引くことにより、空き容量Qを算出する。
【0075】
制御部100は、
図8に示されるS110を実行したときに、蒸発率Rをリセットして0とする。制御部100は、
図8に示されるS120またはS130を実行したとき、画像記録を開始したとき、画像記録を終了したとき、および画像記録を実行してから所定の時間が経過したときに、蒸発率Rを新たに算出して更新する。制御部100は、S120またはS130を実行したときには、前回の残量P、前回の蒸発率R、ワイパ槽51に供給される洗浄液の量などに基づき、蒸発率Rを新たに算出する。制御部100は、画像記録を開始したとき、画像記録を終了したとき、および画像記録を実行してから所定の時間が経過したときには、前回の残量P、前回の蒸発率R、前回の蒸発率Rを算出したときからの経過時間、温度センサから取得した温度、湿度センサから取得した温度などに基づき、蒸発率Rを新たに算出する。
【0076】
なお、制御部100によって算出される残量P、空き容量Q、および蒸発率Rは、いずれも推定値である。制御部100は、残量Pを算出する代わりに、空き容量Qを直接算出してもよい。
【0077】
[洗浄液供給処理]
図8~
図11が参照されて、制御部100による洗浄液供給処理について説明される。制御部100は、所定の条件が満たされたときに、
図8に示される洗浄液供給処理を実行する。制御部100は、例えば、プリンタ10の電源が投入されたときに、洗浄液供給処理を実行してもよい。あるいは、制御部100は、1日に1回の頻度で洗浄液供給処理を実行してもよい。制御部100が洗浄液供給処理を開始する時点で、第1バルブ83および第2バルブ84は閉状態であるとする。
【0078】
洗浄液供給処理(
図8)の先頭において、制御部100は、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの蒸発率Rを取得する(S101)。次に、制御部100は、フラッシング槽61を洗浄した後の最初のフラッシング処理からの経過時間(以下、経過時間Tと称される)を取得する(S102)。
【0079】
次に、制御部100は、蒸発率Rが第2閾値Th2以上か否かを判断する(S103)。制御部100は、S103で蒸発率Rが第2閾値Th2以上であると判断したことに応じて(S103:Yes)、S104へ進む。この場合、制御部100は、経過時間Tが第1閾値Th1以上であるか否かを判断する(S104)。制御部100は、S104で経過時間Tが第1閾値Th1未満であると判断したことに応じて(S104:No)、S110へ進む。この場合、制御部100は、
図9に示されるワイパ槽洗浄処理を実行する(S110)。
【0080】
制御部100は、S104で経過時間Tが第1閾値Th1以上であると判断したことに応じて(S104:Yes)、S120へ進む。この場合、制御部100は、
図10に示されるワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理を実行する(S120)。
【0081】
制御部100は、S103で蒸発率Rが第2閾値Th2未満であると判断したことに応じて(S103:No)、S105へ進む。この場合、制御部100は、経過時間Tが第3閾値Th3以上であるか否かを判断する(S105)。第3閾値Th3は、第1閾値Th1より大きい。例えば、第1閾値Th1は48時間、第3閾値Th3は72時間である。制御部100は、経過時間Tが第3閾値Th3以上であると判断したことに応じて(S105:Yes)、S130へ進む。この場合、制御部100は、
図11に示されるフラッシング槽洗浄処理を実行する(S130)。
【0082】
制御部100は、S110、S120、およびS130のいずれかを実行した後、洗浄液供給処理を終了する。制御部100は、S105で経過時間Tが第3閾値Th3未満であると判断したことに応じて(S105:No)、S110、S120、およびS130のいずれも実行することなく、洗浄液供給処理を終了する。なお、S110は、第1処理の一例である。S120は、第2処理の一例である。S130は、第3処理の一例である。最初のフラッシング処理は、第2槽に関する最初の所定処理の一例である。
【0083】
図9に示されるワイパ槽洗浄処理(S110)の先頭において、制御部100は、第1バルブ83を開状態に制御する(S111)。次に、制御部100は、排出ポンプ85を駆動し、ワイパ槽51から洗浄液を排出させる(S112)。S112では、ワイパ槽51に貯留された洗浄液のすべてが、排出口58を経由して排出される。
【0084】
次に、制御部100は、第1バルブ83を閉状態に制御する(S113)。次に、制御部100は、供給ポンプ82を駆動し、ワイパ槽51に第1量V1の洗浄液を供給する(S114)。第1量V1は、ワイパ槽51の容量以上の量である。より詳細には、第1量V1は、ワイパ槽51の容量以上、かつフラッシング槽洗浄処理(S130)の実行に必要な量未満の量である。第1量V1は、ワイパ槽51の容量より少し大きいことが好ましい。制御部100は、S114を実行した後、ワイパ槽洗浄処理を終了する。
【0085】
図10に示されるワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理(S120)の先頭において、制御部100は、第2バルブ84を開状態に制御する(S121)。次に、制御部100は、排出ポンプ85を駆動し、フラッシング槽61から洗浄液を排出させる(S122)。S122では、フラッシングフォーム62に吸収されたインクおよび洗浄液を含め、フラッシング槽61からインクおよび洗浄液が排出口69を経由して排出される。
【0086】
制御部100は、排出ポンプ85を駆動し、フラッシング槽61から洗浄液を排出させながら(S123)、供給ポンプ82を駆動し、ワイパ槽51に第4量V4の洗浄液を供給する(S124)。制御部100は、S123およびS124を並列に実行する。制御部100は、S124において第4量V4の洗浄液を供給する間、排出ポンプ85を空吸引させる。排出ポンプ85を空吸引させることにより、ワイパ槽51から溢れてフラッシング槽61に流入した洗浄液がフラッシング槽61から溢れることを防止できる。
【0087】
次に、制御部100は、第2バルブ84を閉状態に制御する(S125)。次に、制御部100は、供給ポンプ82を駆動し、ワイパ槽51に、ワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理の全体で第2量V2の洗浄液を供給する(S126)。
【0088】
第4量V4は、予め定めた固定量と空き容量Qとのうち、小さくないほうの値である。第2量V2は、第4量V4と、フラッシング槽61に供給する洗浄液の量との和である。第2量V2は、空き容量Qと、フラッシング槽61に供給する洗浄液の量との和以上である。
【0089】
制御部100がS125に到達した時点で、ワイパ槽51はフル状態である。このため、S126でワイパ槽51に供給された洗浄液は、ワイパ槽51から溢れ、仕切り61eを越えてフラッシング槽61に供給される。したがって、フラッシング槽61には、所望量の洗浄液がワイパ槽51を経由して供給される。制御部100は、S126を実行した後、フラッシング槽洗浄処理を終了する。
【0090】
図11に示されるフラッシング槽洗浄処理(S130)の先頭において、制御部100は、第2バルブ84を開状態に制御する(S131)。次に、制御部100は、排出ポンプ85を駆動し、フラッシング槽61から洗浄液を排出させる(S132)。S132では、フラッシングフォーム62に吸収されたインクおよび洗浄液を含め、フラッシング槽61からインクおよび洗浄液が排出口69を経由して排出される。
【0091】
制御部100は、排出ポンプ85を駆動し、フラッシング槽61から洗浄液を排出させながら(S133)、供給ポンプ82を駆動し、ワイパ槽51に、ワイパ槽51から洗浄液が少し溢れるまで洗浄液を供給する(S134)。制御部100は、S133およびS134を並列に実行する。制御部100は、S134において、ワイパ槽51に、空き容量Qに等しい量の洗浄液を供給する。
【0092】
次に、制御部100は、第2バルブ84を閉状態に制御する(S135)。次に、制御部100は、供給ポンプ82を駆動し、ワイパ槽51に、フラッシング槽洗浄処理の全体で第3量V3の洗浄液を供給する(S136)。第3量V3は、空き容量Qと、フラッシング槽61に供給する洗浄液の量の和である。第3量V3は、第2量V2以下である。
【0093】
制御部100がS135に到達した時点で、ワイパ槽51はフル状態である。このため、S136でワイパ槽51に供給された洗浄液は、ワイパ槽51から溢れ、仕切り61eを越えてフラッシング槽61に供給される。したがって、フラッシング槽61には、所望量の洗浄液がワイパ槽51を経由して供給される。制御部100は、S136を実行した後、フラッシング槽洗浄処理を終了する。
【0094】
プリンタ10では、経過時間Tが第3閾値Th3以上のときに、フラッシングフォーム62上のインクが固着する可能性がある。したがって、制御部100は、経過時間Tが第3閾値Th3以上であると判断したことに応じて(S105:Yes)、フラッシング槽洗浄処理(S130)を行う。
【0095】
経過時間Tが第1閾値Th1以上かつ第3閾値Th3未満のときには、フラッシングフォーム62上のインクはまだ固着していない。このため、フラッシングフォーム62についてだけ考えると、このときにフラッシング槽61を洗浄する必要はない。ただし、ワイパ槽51の洗浄とフラッシング槽61の洗浄とを別々に行うよりも、ワイパ槽51に洗浄液を継ぎ足して、フラッシング槽61を洗浄するほうが、洗浄液の消費量を削減できる。したがって、制御部100は、経過時間Tが第1閾値Th1以上であると判断したことに応じて(S104:Yes)、ワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理(S120)を行う。
【0096】
経過時間Tが第1閾値Th1未満のときには、次にフラッシング槽61を洗浄するまでの時間が長いので、ワイパ槽51に洗浄液を供給するときにフラッシング槽61の洗浄を一緒に行っても、次にフラッシング槽61を洗浄するまでの時間を有効に延ばすことができない。一方、ワイパ槽51への洗浄液の継ぎ足しは、ワイパ槽51の洗浄より、ワイパ槽51の蒸発率Rを下げる効果が小さい。このため、ワイパ槽51に洗浄液を継ぎ足すと、次にワイパ槽51を洗浄するまでの時間が短くなり、結果として洗浄液の消費量は増加する。したがって、制御部100は、経過時間Tが第1閾値Th1未満であると判断したことに応じて(S104:No)、ワイパ槽洗浄処理(S110)を行う。
【0097】
このように経過時間Tが第1閾値Th1以上のときは、フラッシング槽61からも洗浄機が蒸発し、フラッシングフォーム62上のインクが固着する可能性が生じるので、制御部100は、ワイパ槽継ぎ足し+フラッシング槽洗浄処理(S120)を行う。一方、経過時間Tが第1閾値Th1未満のときは、フラッシングフォーム62上のインクはまだ固着していないので、制御部100は、ワイパ槽洗浄処理(S110)を行う。これにより、ワイパ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液を削減できる。同様に、経過時間Tが第3閾値Th3以上のときにも、フラッシングフォーム62上のインクは固着しておらず、かつワイパ槽51から洗浄液がまだあまり蒸発してない。したがって、制御部100がフラッシング槽洗浄処理(S130)を行うことにより、ワイパ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液を削減できる。
【0098】
[実施形態の作用効果]
以上に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、ヘッド42と、メンテナンス部50と、制御部100とを備えている。メンテナンス部50は、ワイパ槽51と、ワイパ53、54と、フラッシングフォーム62と、フラッシング槽61と、ワイパ槽51に洗浄液を供給する供給ポンプ82と、ワイパ槽51およびフラッシング槽61から洗浄液を排出させる排出ポンプ85と、を備えている。フラッシング槽61には、ワイパ槽51を経由して洗浄液が供給される。制御部100は、洗浄液供給処理を実行するとき(ワイパ槽51に洗浄液を供給するとき)に、フラッシング槽61を洗浄した後の最初のフラッシング処理からの経過時間Tが第1閾値Th1未満であることに応じて(S104:No)、ワイパ槽51を洗浄する処理(S110)を行い、経過時間Tが第1閾値Th1以上であることに応じて(S104:Yes)、ワイパ槽51に洗浄液を継ぎ足して、フラッシング槽61を洗浄する処理(S120)を行う。
【0099】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、ワイパ槽51に洗浄液を供給するときに、フラッシング槽61への次の洗浄液の供給までの時間が短い場合には、ワイパ槽51に貯留された洗浄液の蒸発率を引き下げる効果に加えて、フラッシングフォーム62へのインク固着を防止する効果を有する洗浄液の継ぎ足しを行うことにより、ワイプ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液の量を削減できる。
【0100】
また、ワイパ槽51とフラッシング槽61とは隣接し、プリンタ10はワイパ槽51とフラッシング槽61とを仕切る仕切り61eをさらに備え、フラッシング槽61にはワイパ槽51から溢れた洗浄液が仕切り61eを越えて供給される。したがって、フラッシング槽61にワイパ槽51を経由して洗浄液を供給できる。
【0101】
また、制御部100は、S110として、排出ポンプ85を制御してワイパ槽51から洗浄液を排出させ(S112)、供給ポンプ82を制御してワイパ槽51にワイパ槽51の容量以上の第1量V1の洗浄液を供給する(S114)処理を行い、S120として、排出ポンプ85を制御してフラッシング槽61から洗浄液を排出させ(S122)、供給ポンプ82を制御してワイパ槽51にワイパ槽51から洗浄液が溢れる第2量V2の洗浄液を供給することで、フラッシング槽61に洗浄液を供給する(S124、S126)処理を行う。したがって、S110において、ワイパ槽51から洗浄液を排出させて、ワイパ槽51に洗浄液を供給することにより、ワイパ槽51に貯留された洗浄液を入れ替えて、ワイパ槽51を洗浄できる。また、S120において、フラッシング槽61から洗浄液を排出させて、ワイパ槽51から洗浄液を溢れさせることにより、ワイパ槽51に洗浄液を継ぎ足して、フラッシング槽61を洗浄できる。
【0102】
また、第2量V2は、ワイパ槽51の空き容量Qと、フラッシング槽61に供給する洗浄液の量との和以上である。したがって、S120において、ワイパ槽51を経由してフラッシング槽61に所望量の洗浄液を供給できる。
【0103】
また、制御部100は、ワイパ槽51に貯留された洗浄液Lの蒸発率Rが第2閾値Th2以上であることに応じて(S103:Yes)、経過時間Tに基づいてS110およびS120のいずれかを行う。制御部100は、蒸発率Rが第2閾値Th2未満であることに応じて(S103:No)、S130において、排出ポンプ85を制御してフラッシング槽61から洗浄液を排出させ(S132)、供給ポンプ82を制御してワイパ槽51にワイパ槽51から洗浄液が溢れ、かつ第2量V2以下の第3量V3の洗浄液を供給することで、フラッシング槽61に洗浄液を供給する(S134、S136)処理を行う。第3量V3は、ワイパ槽51の空き容量Qと、フラッシング槽61に供給する洗浄液の量の和である。したがって、洗浄液Lの蒸発率Rが所定未満の場合には、より少ない量の洗浄液でフラッシング槽61を洗浄できる。
【0104】
制御部100は、蒸発率Rが第2閾値Th2未満であり、かつ経過時間Tが第3閾値Th3以上であることに応じて(S103:No、S105:Yes)、S130を行う。第3閾値Th3は、第1閾値Th1より大きい。洗浄液Lの蒸発率Rが小さく、フラッシング槽61の洗浄を行ってからの経過時間が長い場合には、フラッシング槽61からも洗浄液が蒸発していると考えられる。したがって、この場合に、ワイパ槽51の蒸発率Rを下げるために洗浄液を供給する処理ではなく、フラッシング槽61を洗浄する処理を行うことにより、ワイパ槽51の蒸発率Rを下げるために洗浄液を供給する処理を行う場合より、ワイパ処理およびフラッシング処理で消費される洗浄液を削減できる。
【0105】
[変形例]
本実施形態に係るプリンタ10については、各種の変形例を構成できる。プリンタ10では、ワイパ槽51とフラッシング槽61とは一体に形成されることとした。変形例に係る画像記録装置では、ワイパ槽51とフラッシング槽61とは別個に形成されてもよい。プリンタ10では、ワイパユニット52は、2個のワイパ53、54を有することとした。変形例に係る画像記録装置では、ワイパユニットは、ワイパを1個だけ有していてもよい。プリンタ10では、ワイパ槽51とフラッシング槽61とは隣接し、フラッシング槽61にはワイパ槽51から溢れた洗浄液が仕切り61eを越えて供給されることとした。変形例に係る画像記録装置では、ワイパ槽とフラッシング槽とは離れた位置にあり、ワイパ槽とフラッシング槽とはチューブを介して接続されており、フラッシング槽にはワイパ槽からチューブを経由して洗浄液が供給されてもよい。
【0106】
プリンタ10では、S105における第3閾値Th3は、S104における第1閾値Th1より大きいこととした。変形例に係る画像記録装置では、第3閾値Th3は第1閾値Th1以下でもよい。プリンタ10では、供給ポンプ82はワイパ槽51に洗浄液を供給し、フラッシング槽61にはワイパ槽51を経由して洗浄液がされることとした。変形例に係る画像記録装置では、供給ポンプはフラッシング槽に洗浄液を供給し、ワイパ槽にはフラッシング槽を経由して洗浄液がされることとしてもよい。供給ポンプから洗浄液が供給される第1槽は、ワイパ槽およびフラッシング槽の一方であればよく、第1槽を経由して洗浄液が供給される第2槽は、ワイパ槽およびフラッシング槽の他方であればよい。プリンタ10は、ヘッド42を搭載して移動するキャリッジ41を備えたキャリッジ方式のプリンタであることとした。変形例に係る画像記録装置は、キャリッジを備えず、ヘッドの位置が固定されているラインヘッド方式のプリンタであってもよい。この画像記録装置では、ヘッドのメンテナンスを行うときには、例えば、メンテナンス部がヘッドのノズル面に対向する位置に移動する。
【符号の説明】
【0107】
10・・・プリンタ(画像記録装置)
42・・・ヘッド
44・・・ノズル
50・・・メンテナンス部
51・・・ワイパ槽(第1槽)
53、54・・・ワイパ
61・・・フラッシング槽(第2槽)
62・・・フラッシングフォーム
82・・・供給ポンプ
85・・・排出ポンプ
100・・・制御部