(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018540
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】窒素含有排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240201BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20240201BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240201BHJP
【FI】
C02F1/461 101A
C02F1/70 Z
C02F1/72 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121941
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050AB35
4D050AB37
4D050BA06
4D050BA07
4D050BB06
4D050BB09
4D050BC10
4D050CA13
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC14
4D061DC15
4D061EA03
4D061EA04
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB31
4D061ED01
4D061ED02
4D061ED20
4D061FA11
(57)【要約】
【課題】アンモニア単独ではなく硝酸又は/及び亜硝酸又は/及びアンモニアを含む窒素含有排水の処理方法を提供しようとするもの。
【解決手段】硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程と、無隔膜電極で電気分解する工程を有する。無隔膜電極で電気分解する工程において、硝酸(態窒素)が陰極還元で亜硝酸(態窒素)、アンモニア(態窒素)に変化し、アンモニア(態窒素)が陽極酸化で窒素化することとなるが、還元性助剤と酸化剤はその反応を補助・促進する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程と、無隔膜電極で電気分解する工程を有することを特徴とする窒素含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記無隔膜電極で電気分解する工程を中性領域でするようにした請求項1記載の窒素含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記電気分解の電極としてセラミックス電極を使用するようにした請求項1又は2記載の窒素含有排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硝酸、亜硝酸、アンモニアとを合わせて含む窒素含有排水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニア性窒素を含有する廃水を浄化する廃水処理方法、及び廃水処理システムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、近年、アンモニア性窒素が含まれる廃水の処理方法として、アナモックス反応を利用した方法について、研究開発が進められている。
アナモックス反応は、嫌気性アンモニア酸化細菌の働きによりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とから、廃水中の窒素を除去する脱窒反応であり、予め廃水中の一部のアンモニア性窒素を亜硝酸化処理によって亜硝酸性窒素に変換した後に、アンモニアが電子供与体、亜硝酸が電子受容体として、1NH4
++1.32NO2
-+0.066HCO3
-+0.13H+→1.02N2+0.26NO3
-+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2Oの反応式により脱窒する。
アナモックス反応を利用した脱窒方法は、従来のアンモニアから亜硝酸、硝酸へと変換して脱窒する方法に対し、大量の酸素供給や電子供与体である有機物の添加を必要としないため、新たな汚泥の発生も抑えられ、経済的かつ効率的な窒素除去方法である、というものである。
【0003】
また、アンモニア態窒素の次亜塩素酸ソーダによる分解反応として次の反応式が知られている。
2NH4-N(アンモニア態窒素)+3NaClO → N2+3NaCl+3H2O+2H+
ClO-による分解反応の具体例として次の反応式が知られている。
2H2NCH2CH2OH+13ClO-→N2+4CO2+7H2O+13Cl-
2C6H5NH2+31ClO-→N2+12CO2+7H2O+31Cl-
CO(NH2)2+3ClO-→N2+CO2+2H2O+3Cl-
2NH3+3ClO-→N2+3H2O+3Cl-
次亜塩素酸によるアンモニアの分解として次の反応式が知られている。
NH3+HClO→NH2Cl+H2O、NH2Cl+HClO→NHCl2+H2O、NH2Cl+NHCl2→N2↑+3HCl:2NH3(aq)+3(O)→N2↑+3H2O
これに対し、アンモニア単独ではなく、硝酸、亜硝酸、アンモニアを含む窒素含有排水の処理方法についての要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、アンモニア単独ではなく硝酸又は/及び亜硝酸又は/及びアンモニアを含む窒素含有排水の処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の窒素含有排水の処理方法は、硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程と、無隔膜電極で電気分解する工程を有することを特徴とする。
【0007】
この窒素含有排水の処理方法は、無隔膜電極で電気分解する工程において、硝酸(態窒素)が陰極還元で亜硝酸(態窒素)、アンモニア(態窒素)に変化し、アンモニア(態窒素)が陽極酸化で窒素化することとなるが、還元性助剤と酸化剤はその反応を補助・促進する。
すなわち、硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程を有するので、還元性助剤によりアンモニア(態窒素)が酸化されて硝酸(態窒素)にもどる反応を抑制するとともに、酸化剤と前記の無隔膜電極反応によりアンモニア(態窒素)の窒素化を促進することができる。
ここで、還元性助剤として、重亜硫酸ソーダ、苛性ソーダ、チオ硫酸ナトリウムなどを例示することができる。前記酸化剤として、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素などを例示することができる。
ここで、この明細書で排水とは被検水という広義の意味のものとする。
【0008】
(2)前記無隔膜電極で電気分解する工程を中性領域でするようにしてもよい。
このように、無隔膜電極で電気分解する工程を中性領域(pH6-8)するようにすると処理の安定性を増すことができる。
【0009】
(3)前記電気分解の電極としてセラミックス電極を使用するようにしてもよい。このように、電気分解の電極としてセラミックス電極を使用すると、白金電極を用いた場合より電極のライフが長くなる。すなわち、セラミックス電極は白金電極より重量当たりの溶出量は多いものの、セラミックス電極は無垢であるのに対し白金電極はメッキであるため、全体としての電極ライフはセラミックス電極の方が長いものとなる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
還元性助剤によりアンモニア(態窒素)が酸化されて硝酸(態窒素)にもどる反応を抑制するとともに、酸化剤と前記の無隔膜電極反応によりアンモニア(態窒素)の窒素化を促進することができるので、アンモニア単独ではなく硝酸又は/及び亜硝酸又は/及びアンモニアを含む窒素含有排水の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この実施形態の窒素含有排水の処理方法は、硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程と、無隔膜電極で電気分解する工程を有するようにした。
【0012】
前記還元性助剤として、重亜硫酸ソーダ、苛性ソーダ、チオ硫酸ナトリウムを用いた。酸化剤として、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素を用いた。
また、前記無隔膜電極で電気分解する工程を中性領域(pH6に調整した)でするようにしたので、T-Nの低減処理の安定性を増すことができた。
【0013】
次に、この実施形態の窒素含有排水の処理方法の使用状態を説明する。
この窒素含有排水の処理方法は、無隔膜電極で電気分解する工程において、硝酸が陰極還元で亜硝酸、アンモニアに変化し、アンモニアが陽極酸化で窒素化することとなるが、還元性助剤と酸化剤はその反応を補助・促進した。
すなわち、硝酸を含む排水に還元性助剤を添加する工程と、酸化剤を添加する工程を有するので、還元性助剤によりアンモニアが酸化されて硝酸にもどる反応を抑制するとともに、酸化剤と前記の無隔膜電極反応によりアンモニアの窒素化を促進することができ、アンモニア単独ではなく硝酸、亜硝酸、アンモニアを総合的に低減処理することができた。
【0014】
(実施例)
この実施例では、原水がpH 8.98、電導度 130,000μs/cm、塩濃度 オーバーレンジ、 NO3-N 7,400ppm、NO2-N 1.6ppm、NH4-N 4,128ppm、T-N 11,530ppmの窒素含有排水を処理した。
この排水原水に対し6%の還元性助剤(チオ硫酸ナトリウム)を添加した。すると、pH 9.04、電導度 134,800μs/cm、塩濃度 8.57%、 NO3-N 125ppm、NO2-N 1.62ppm、NH4-N 3,212ppm、T-N 3,339ppmとなった。
【0015】
次いで、NH4-N 2,645ppmの分解相当モル量の酸化剤(次亜塩素酸ソーダ)を添加し、塩酸で pH6にpH調整した。すると、pH 6.02、電導度 110,400μs/cm、塩濃度 8.78%となった。
そして、6.0A/dm2 で1way で電気分解した。すると、pH 8.09、電導度 107,400μs/cm、塩濃度 8.45%、NO3-N 185ppm、NO2-N 0ppm、NH4-N 542ppm、T-N 727ppmであった。
すなわち、NO3-N が125ppmから185ppmとあまり増加していなかったのに対し、NO2-N は同等、NH4-Nが 3,212ppm から542ppmと低減しており、全体としてT-N が3,339ppmから727ppmと大きく減少していた。
【0016】
(比較例)
この比較例では、原水がpH 8.98、電導度 130,000μs/cm、塩濃度 オーバーレンジ、 NO3-N 7,400ppm、NO2-N 1.6ppm、NH4-N 4,128ppm、T-N 11,530ppmの窒素含有排水を処理した。
この排水原水に対し6%の還元性助剤(チオ硫酸ナトリウム)を添加した。すると、pH 9.04、電導度 134,800μs/cm、塩濃度 オーバーレンジ、 NO3-N 125ppm、NO2-N 1.6ppm、NH4-N 3,212ppm、T-N 3,339ppmとなった。
【0017】
次いで、(酸化剤を添加することなしに)塩酸で pH6にpH調整した。すると、pH 6.10、電導度 138,300μs/cm、塩濃度 オーバーレンジとなった。
そして、6.0A/dm2 で1way で電気分解した。すると、pH 5.31、電導度 138,000μs/cm、塩濃度 オーバーレンジ、NO3-N 1,250ppm、NO2-N 0.33ppm、NH4-N 2,451ppm、T-N 3,701ppmであった。
すなわち、NO3-N が125ppmから1,250ppmと激増し、NO2-N は僅かに減少、NH4-Nが 3,212ppm から2,451ppmと低減しており、全体としてT-N が3,339ppmから3,701ppmに増加していた。
【0018】
すなわち、比較例に対し実施例では、アンモニア単独ではなく、硝酸、亜硝酸、アンモニアを含む窒素含有排水のT-N総合の低減処理を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
アンモニア単独ではなく硝酸、亜硝酸、アンモニアを総合的に低減処理できることによって、種々の窒素含有排水の処理方法の用途に適用することができる。