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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018549
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】携行型拘束網展開装置
(51)【国際特許分類】
   F41B 15/00 20060101AFI20240201BHJP
   F42B 3/12 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F41B15/00 A
F42B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121954
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】森 弘行
(72)【発明者】
【氏名】稲川 徳人
(57)【要約】
【課題】繰返しの使用が可能であり、誤操作を抑制することができ、且つ、瞬時に作動させることができる携行型拘束網展開装置を提供する。
【解決手段】携行型拘束網展開装置2は、拘束網65と噴出器64とを収納するカートリッジ6を備える。カートリッジ6は、装置本体4に着脱自在に構成されている。装置本体4には、噴出器64を作動させる電子回路31と、電子回路31を通電させるマイクロスイッチ35と、マイクロスイッチ35を操作するスイッチプレート51が備えられる。スイッチプレート51は、装置本体4の内側から外側に向けて引き出すことができ、最奥の位置ではマイクロスイッチ35をオフに保持し、引き出された位置ではマイクロスイッチ35をオンにするように構成されている。さらに、装置本体4には、引き出された操作具51に対して最奥の位置へ戻すようにばね力を加える引っ張りばね52が備えられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束網と前記拘束網を噴出する噴出器とを収納するカートリッジと、
前記カートリッジが着脱自在に装着される装置本体と、
前記装置本体に設けられ、通電されることで前記噴出器を作動させるように構成された回路と、
前記装置本体に設けられ、動作部のオフ位置からオン位置への変位を受けて前記回路を通電させるように構成されたモーメンタリスイッチと、
前記装置本体の内側から外側に向けて引き出されるように構成された操作具であって、引き出し方向における可動範囲を第1位置から前記第1位置よりも外側の第2位置までの範囲に機械的に規制され、前記第1位置では前記動作部を前記オフ位置に保持し、前記第2位置では前記動作部を前記オン位置に位置させるように構成された操作具と、
前記装置本体に設けられ、前記操作具に対して前記第2位置から前記第1位置へ向かう方向にばね力を加えるように構成されたばね装置と、を備える
ことを特徴とする携行型拘束網展開装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携行型拘束網展開装置において、
前記モーメンタリスイッチは、ノーマリオンのスイッチとして構成され、
前記動作部は、前記操作具が前記第1位置にあるときは前記操作具による拘束によって前記オフ位置に位置させられ、前記操作具が前記第2位置にあるときは前記操作具による拘束から解放されることで前記オン位置に復帰するように構成され、
前記操作具は、前記第2位置から前記第1位置に移動する際に前記動作部と接触し、前記動作部を前記オン位置からオフ位置に次第に変位させていく傾斜部を備える
ことを特徴とする携行型拘束網展開装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携行型拘束網展開装置において、
前記操作具は、前記引き出し方向への引っ張りによって前記第1位置から前記第2位置まで引き出された場合、前記引き出し方向への引っ張りを解除されることで、前記ばね装置によるばね力によって前記第2位置から前記第1位置の手前の第3位置まで自動で戻り、前記引き出し方向とは逆方向への押し込みによって前記第3位置から前記第1位置まで戻されるように構成され、
前記動作部は、前記操作具が前記第3位置にあるときは前記オフ位置に位置するように構成されている
ことを特徴とする携行型拘束網展開装置。
【請求項4】
請求項3に記載の携行型拘束網展開装置において、
前記装置本体は、
外側に開口し前記引き出し方向に平行な軸を有する円筒状の収納穴と、
前記収納穴の内周面に形成された環状溝と、を備え、
前記操作具は、
前記収納穴内を摺動する円柱状の頭部と、
前記頭部の周面に嵌められたOリングと、を備え、
前記環状溝に前記Oリングが嵌合しているときの前記操作具の位置が前記第1位置であり、前記収納穴から前記Oリングが飛び出しているときの前記操作具の位置が前記第2位置であり、前記収納穴の入口に前記Oリングが引っ掛かっているときの前記操作具の位置が前記第3位置である
ことを特徴とする携行型拘束網展開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、携行型拘束網展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携行型拘束網展開装置は、拘束網をガス圧力で瞬時に展開させることができる装置である。例えば、ある人物による犯罪が予見される場合、その人物に対して拘束網を使用することで犯罪行為を未然に防ぐことができる。また、ターゲットを拘束・捕獲したい場合には、そのターゲットに向けて拘束網を絡ませることでターゲットの逃亡時間を遅らせることができる。以上は携行型拘束網展開装置の用途の一例であって、その用途は操作者が任意に決めることができる。
【0003】
携行型拘束網展開装置に関する従来技術としては、例えば、特許文献1と特許文献2とを挙げることができる。
【0004】
特許文献1には、グリップエンドからスイッチプレートを引き抜くことで噴出回路が閉じ、噴出回路が発生させたガス圧力によって拘束網が展開されるように構成された装置が開示されている。特許文献1に開示された装置では、拘束網を噴射する拘束網展開器が操作部と一体化されている。このため、拘束網を一度噴出した場合、拘束網展開器を交換することは容易ではない。また、拘束網を噴射するトリガとなるスイッチプレートは、一度グリップエンドから引き抜いた場合、元に戻せるようにはなっていない。つまり、特許文献1に開示された装置は、繰り返し使用することを想定した設計にはなっていない。
【0005】
特許文献2には、拘束網を噴出する拘束網噴出部と、拘束網噴出部を起動する操作部とをアダプタによって着脱自在に連結するように構成された装置が開示されている。特許文献2に開示された装置では、拘束網噴出部は交換可能なカートリッジになっている。また、拘束網噴出部を起動させる起動押しボタンとしては、ロッカスイッチが用いられている。つまり、特許文献2に開示された装置は、繰り返し使用することを想定して設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-133685号公報
【特許文献2】再公表特許2007/046194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献2に開示された装置が備える起動押しボタンは、繰り返し使用できるものの、指が触れた際に意図せずに押されてしまうおそれがある。このため、特許文献2に開示された装置では、起動押しボタンが誤って押されないように、起動押しボタンをガードカバーで被い、さらにガードカバーの上に封印シールを貼り付けることが行われている。
【0008】
上記のように起動押しボタンを厳重に封印する場合、使用時以外で起動押しボタンが押されることは防げるかもしれない。しかし、その反面、緊急時において瞬時に装置を起動させることができないおそれがある。このことは携行型拘束網展開装置の利用価値を低減させることに成りかねない。
【0009】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、繰返しの使用が可能であり、誤操作を抑制することができ、且つ、瞬時に作動させることができる携行型拘束網展開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するための携行型拘束網展開装置を提供する。
【0011】
本発明に係る携行型拘束網展開装置は、カートリッジが着脱自在に装着される装置本体を備える。カートリッジには、拘束網と拘束網を噴出する噴出器とが一体に収納されている。装置本体には、回路とモーメンタリスイッチとが設けられている。回路は、カートリッジが装置本体に装着されている状態において通電されたとき噴出器を作動させるように構成されている。モーメンタリスイッチは、動作部のオフ位置からオン位置への変位を受けて回路を通電させるように構成されている。
【0012】
本発明に係る携行型拘束網展開装置は、モーメンタリスイッチを操作するための操作具と、ばね装置とを備える。操作具は、装置本体の内側から外側に向けて引き出されるように構成され、引き出し方向における可動範囲を第1位置から第1位置よりも外側の第2位置までの範囲に機械的に規制されている。操作具は、第1位置ではモーメンタリスイッチの動作部をオフ位置に保持し、第2位置ではモーメンタリスイッチの動作部をオン位置に位置させるように構成されている。ばね装置は装置本体に設けられている。ばね装置は、操作具に対して第2位置から第1位置へ向かう方向にばね力を加えるように構成されている。
【0013】
本発明に係る携行型拘束網展開装置は上記のように構成されている。本発明に係る携行型拘束網展開装置によれば、操作具を引き出すことで、モーメンタリスイッチの動作部をオフ位置からオン位置に変位させて回路を通電させ、噴出器を作動させて拘束網をカートリッジ内から噴出させることができる。つまり、操作具を引くという一つのアクションで瞬時に携行型拘束網展開装置を作動させることができる。また、操作具を引き出すという行為は、意図的な行為であり、誤操作の起きにくい行為である。ゆえに、上記の構成によれば、誤操作を抑制することができ、且つ、携行型拘束網展開装置を瞬時に作動させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る携行型拘束網展開装置によれば、第2位置まで引き出された操作具はバネ装置から加えられるバネ力によって第1位置へ戻される。このような自動復帰機能が操作具に与えられているため、一度作動させたモーメンタリスイッチを繰り返し使用することができる。また、本発明に係る携行型拘束網展開装置によれば、操作具を引き出してカートリッジから拘束網を噴出させた場合、カートリッジを交換することで再び拘束網を噴出させることができるようになる。つまり、上記の構成によれば、携行型拘束網展開装置の繰返しの使用が可能である。
【0015】
本発明に係る携行型拘束網展開装置において、モーメンタリスイッチはノーマリオンのスイッチとして構成されてもよい。その場合の動作部は、操作具が第1位置にあるときは操作具による拘束によってオフ位置に位置させられ、操作具が第2位置にあるときは操作具による拘束から解放されることでオン位置に復帰するように構成されてもよい。さらに、操作具は、第2位置から第1位置に移動する際に動作部と接触し、動作部をオン位置からオフ位置に次第に変位させていく傾斜部を備えてもよい。このような構成によれば、操作具がバネ装置から加えられるバネ力によって第1位置へ戻される際、動作部を傾斜部によって変位させてオフ位置に確実に戻すことができる。
【0016】
本発明に係る携行型拘束網展開装置において、操作具は、引き出し方向への引っ張りによって第1位置から第2位置まで引き出された場合、引き出し方向への引っ張りを解除されることで、ばね装置によるばね力によって第2位置から第1位置の手前の第3位置まで自動で戻り、引き出し方向とは逆方向への押し込みによって第3位置から第1位置まで戻されるように構成されてもよい。つまり、操作具を引っ張っていた手を放すことで、ばね力によって操作具を第2位置から第3位置まで戻らせ、手で押し込むことで操作具を第3位置から第1位置まで戻すようにしてもよい。このように敢えて2回のアクションを操作者にとらせることで、操作具を元の位置に戻してモーメンタリスイッチをオフの状態にすることを操作者に意識させることができる。なお、動作部は、操作具が第3位置にあるときはオフ位置に位置するように構成されてもよい。そのように構成されることで、操作者が操作具を第3位置から第1位置まで戻すことを忘れたとしても、モーメンタリスイッチをオフの状態にすることができる。
【0017】
本発明に係る携行型拘束網展開装置において、装置本体は、外側に開口し引き出し方向に平行な軸を有する円筒状の収納穴と、収納穴の内周面に形成された環状溝とを備えてもよい。また、操作具は、収納穴内を摺動する円柱状の頭部と、頭部の周面に嵌められたOリングとを備えてもよい。そして、環状溝にOリングが嵌合しているときの操作具の位置を第1位置とし、収納穴からOリングが飛び出しているときの操作具の位置を第2位置とし、収納穴の入口にOリングが引っ掛かっているときの操作具の位置を第3位置としてもよい。このような構成によれば、第1位置から第2位置に操作具を引き出す際、操作者には一定の力が要求されることになるので、操作具の誤操作を確実に抑えることができる。また、第3位置から第1位置に操作具を押し戻す際、操作者には一定の力が要求され、且つ、Oリングが環状溝に嵌合することでカチッという感触が得られる。これにより、操作者に対して操作具が確実に元の位置に戻されたことを知らせることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明に係る携行型拘束網展開装置によれば、繰返しの使用が可能であり、誤操作を抑制することができ、且つ、瞬時に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る携行型拘束網展開装置の外観図である。
図2図1に示される携行型拘束網展開装置の装置本体の分解図である。
図3図1に示される携行型拘束網展開装置が備える回路ユニットの拡大図である。
図4図1に示される携行型拘束網展開装置の縦断面図である。
図5図1に示される携行型拘束網展開装置の作動機構のオフ状態を示す縦断面図である。
図6図1に示される携行型拘束網展開装置の作動機構のオン状態を示す縦断面図である。
図7図1に示される携行型拘束網展開装置の作動機構の操作手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.携行型拘束網展開装置の概要
まず、図1を参照して本発明の実施形態に係る携行型拘束網展開装置2の概要から説明する。図1は携行型拘束網展開装置2の外観図である。
【0021】
携行型拘束網展開装置2は、装置本体4と、装置本体4に対して着脱自在なカートリッジ6とから構成されている。装置本体4は、カートリッジ6が装着されるアダプタ20と、アダプタ20と一体化されたグリップ40とから構成される。グリップ40は円柱形状を有する。グリップ40は、携行型拘束網展開装置2の使用時に操作者が握る部位であって、片手で握れる太さを有する。携行型拘束網展開装置2は操作者が携行可能な大きさと重さを有し、操作者はグリップ40を片手で持って使用することができる。
【0022】
カートリッジ6は円筒と円錐とが組み合わされた形状を有する収納容器60を有する。収納容器60には拘束網が収納されている。収納容器60からは外観図では見えないプラグが延び、そのプラグがアダプタ20に差し込まれている。プラグ内には拘束網をガス圧力で噴出させる噴出器が設けられている。カートリッジ6は、その軸線がグリップ40の軸線上に位置するようにアダプタ20に取り付けられている。
【0023】
カートリッジ6の使用は一度切りである。しかし、拘束網が噴出された古いカートリッジ6をアダプタ20から取り外し、新しいカートリッジ6をアダプタ20に装着することで、携行型拘束網展開装置2は何度でも使用することができる。また、装置本体4には、カートリッジ6を電気的に作動させる回路ユニットが設けられている。特に、グリップ40には、回路ユニットを作動させる作動機構が設けられている。グリップエンド44に取り付けられたエンドキャップ45を取り外すことで、作動機構を操作することが可能となる。回路ユニット及び作動機構の構成については後述するが、いずれも繰り返し使用可能に設計されている。
【0024】
2.携行型拘束網展開装置の詳細
次に、図2乃至図4を参照して携行型拘束網展開装置2の詳細について説明する。図2は携行型拘束網展開装置2の装置本体4の分解図である。分解図には、装置本体4を構成するアダプタ20とグリップ40のそれぞれを部品レベルまで分解した状態が描かれている。
【0025】
まず、アダプタ20を構成する部品及びアダプタ20に設けられる部品について説明する。アダプタ20は、左ブロック21Lと右ブロック21Rとに分割されている。左右のブロック21L、21Rを合わせることで、カートリッジ6のプラグ62が差し込まれる装着穴が形成される。アダプタ20の内部、つまり、左ブロック21Lと右ブロック21Rとの間には、後述するグリップコア41の先端部、接点プレート24、及び圧縮ばね25が収容される。左右のブロック21L、21Rは、その合わせ面に防水のためのパッキン22A、22B、22Cを挟んだ状態で、複数本のネジによって互いに固定される。また、取付穴の入口部分には、アダプタ20とカートリッジ6との隙間を埋めて防水するための環状のパッキン23が取り付けられる。
【0026】
左右のブロック21L、21Rはグリップコア41の先端部を挟み込んで固定する。グリップコア41の左右のブロック21L、21Rで挟まれる部位には防水のためのOリング26が嵌め込まれる。接点プレート24は、プラグ62と回路ユニット30とを電気的に接続する金属プレートである。接点プレート24は、プラグ62が差し込まれる装着穴の奥に、軸方向に可動可能に取り付けられる。圧縮ばね25は、ブロック21Rの壁面21aと接点プレート24との間に挟まれ、その伸縮方向が軸方向に一致するように設けられる。圧縮ばね25は、接点プレート24をプラグ62に押し当てて両者の電気的接続を確実にする。
【0027】
回路ユニット30を構成する電子回路31はアダプタ20に設けられる。電子回路31はコネクタ33によって接点プレート24に接続される。回路ユニット30の電源は電池38である。好ましくは、電池38はリチウム電池である。電池38は電子回路31に直接取り付けられた電池ボックス32に収められる。電池ボックス32は、電池38を取り付け/取り外しし易いようにアダプタ20の上部に配置され、電池38とともに電池カバー27によって覆われる。電池38と電池カバー27との間は、電池38が外れることを防止するためのクッション29が挟み込まれる。電池カバー27は、防水のためのパッキン28を挟んで左右のブロック21L、21Rに複数本のネジによって固定される。
【0028】
次に、グリップ40を構成する部品及びグリップ40に設けられる部品について説明する。前述のグリップコア41はグリップ40の芯材である。グリップコア41は中空の円柱であり、その側壁の一部は取り外し可能な蓋42となっている。グリップコア41には防水のためのグリップカバー43が被せられる。グリップカバー43は筒状であり、操作者がグリップ40を握ったときに滑りづらい材質で形成されている。
【0029】
グリップコア41の末端には環状のグリップエンド44が固定される。グリップエンド44はグリップコア41よりも大径であり、操作者の手からグリップ40が抜けることを防止する。また、グリップエンド44は、グリップコア41の周面との間でグリップカバー43を挟み込み、グリップカバー43がずれるのを防止する。
【0030】
グリップエンド44には、エンドキャップ45が取り付けられる。エンドキャップ45は、グリップコア41内に設けられる作動機構50を誤操作から守るための安全装置である。エンドキャップ45は携行型拘束網展開装置2の使用時にグリップエンド44から取り外され、使用後はグリップエンド44に再び取り付けられる。なお、エンドキャップ45にはカッター47を両面テープ46で接着することもできる。カッター47は、拘束網で捕獲されたターゲットを解放する際、拘束網を切るために使用することができる。
【0031】
グリップコア41内には、回路ユニット30を構成するマイクロスイッチ35と、作動機構50が設けられる。作動機構50はマイクロスイッチ35を作動させる機構である。作動機構50の構成と仕組みの詳細については後述するものとし、ここでは、グリップコア41に収納されている作動機構50の部品について説明する。
【0032】
作動機構50は、マイクロスイッチ35をオン/オフ操作する操作具としてのスイッチプレート51を含む。スイッチプレート51の頭部51aには、スイッチプレート51をグリップコア41内から外に向けて引っ張るためのボールチェーン55が取り付けられる。スイッチプレート51の頭部51aは円柱形であって、その円柱形の頭部51aの周面にはOリング54が嵌められる。また、作動機構50は、ピン53と、固定具56と、引っ張りばね52とを含む。ピン53は、スイッチプレート51に取り付けられてストッパとして機能する。固定具56は、グリップコア41内の定位置に固定される。引っ張りばね52は、スイッチプレート51の先端と固定具56との間に掛け渡される。
【0033】
図3は回路ユニット30の拡大図である。回路ユニット30は、電池ボックス32が直接取り付けられた電子回路31と、コネクタ33と、マイクロスイッチ35とを含む。電子回路31とコネクタ33とは二本のリード線34によって電気的に接続されている。電子回路31とマイクロスイッチ35とは二本のリード線37によって電気的に接続されている。
【0034】
電子回路31は、マイクロスイッチ35がオンになったことを受けて、電池ボックス32に収められている電池の電圧をコネクタ33に印加するように構成されている。また、電子回路31は、EMP対策として軽微な電磁波を吸収するためのコンデンサ31aを備える。マイクロスイッチ35は、ノーマリオンのモーメンタリスイッチである。動作部としてのピン36は、外部から力を受けていない状態では飛び出し、外部から力を受けてマイクロスイッチ35内に押し込まれる。外部からの力が無くなった場合、マイクロスイッチ35内部のばねによってピン36は元の位置に戻される。ピン36が飛び出している間は、マイクロスイッチ35はオン状態であり、ピン36が押されている間は、マイクロスイッチ35はオフ状態になる。
【0035】
次に、組み立てられた状態での携行型拘束網展開装置2の構成について図4を用いて説明する。図4は携行型拘束網展開装置2の縦断面図である。図4には、装置本体4の縦断面とカートリッジ6の縦断面がそれぞれ描かれている。
【0036】
カートリッジ6の外殻は、収納容器60と収納容器60から延びるプラグ62とで構成される。収納容器60には拘束網65が収納されている。拘束網65には複数個の錘66と、複数本の引き紐67とが取り付け、拘束網65とともに収納容器60に収納されている。プラグ62の内部には、拘束網65をガス圧力で噴出させる噴出器64が設けられている。噴出器64は火工式点火器を有する。プラグ62の先端に設けられている接点63に通電されることで、火工式点火器が発火してガスを発生させる。噴出器64を作動させた場合、収納容器60内で急激に増大したガス圧力によって蓋61が外れ、錘66及び引き紐67とともに拘束網65が前方に向けて展開される。
【0037】
カートリッジ6が装着されるアダプタ20は、グリップ40の先端部に取り付けられる。カートリッジ6のプラグ62が差し込まれる装着穴20aの最奥には、接点プレート24が設けられている。接点プレート24とブロック21Rの壁面21aとの間には圧縮ばね25が挟まれている。プラグ62が装着穴20aに差し込まれた際には、接点プレート24は圧縮ばね25によってプラグ62の先端の接点63に押し付けられる。
【0038】
接点プレート24は、コネクタ33とリード線34とを介して電子回路31に電気的に接続されている。電子回路31は、別のリード線37を介してグリップコア41内に設置されたマイクロスイッチ35に電気的に接続されている。マイクロスイッチ35がオフ状態の場合、電子回路31は電池38と接点プレート24との間の通電を遮断する。マイクロスイッチ35がオン状態になった場合、電子回路31は電池38と接点プレート24とを通電させる。
【0039】
マイクロスイッチ35を操作する作動機構50は、グリップコア41内に設けられている。作動機構50を構成するスイッチプレート51は、グリップコア41内を軸方向のみに変位可能に配置されている。スイッチプレート51の上下左右方向の動きは、グリップコア41と蓋42によって規制されている。スイッチプレート51の軸方向の可動範囲はマイクロスイッチ35のピン36(図4には表れていない)と重なっている。このため、詳細について後述するが、スイッチプレート51を軸方向に変位させることによって、ピン36をマイクロスイッチ35の中に押し込んだり、ピン36をマイクロスイッチ35から飛び出させたりすることができる。
【0040】
スイッチプレート51の頭部51aには、ボールチェーン55が取り付けられている。グリップコア41の末端部には、ボールチェーン55を収納するチェーン収納部26gが形成されている。携行型拘束網展開装置2の未使用時には、ボールチェーン55はチェーン収納部26gに収納され、その状態で安全装置としてのエンドキャップ45が取り付けられている。携行型拘束網展開装置2の使用時には、エンドキャップ45が取り外されてチェーン収納部26gからボールチェーン55が取り出される。取り出されたボールチェーン55を手で引っ張ることで、作動機構50によってマイクロスイッチ35がオン状態にされる。
【0041】
引っ張りばね52は、その引っ張り方向がスイッチプレート51の変位方向に一致するように配置されている。ボールチェーン55が引っ張られたとき、引っ張りばね52は、固定具56とスイッチプレート51との間で、スイッチプレート51を固定具56の方へ引っ張り戻すようにばね力を発生させる。つまり、引っ張りばね52は、固定具56とともに、スイッチプレート51に対してグリップコア41の内側へ向かう方向にばね力を加えるばね装置として機能する。
【0042】
3.作動機構の詳細
次に、図5及び図6を参照して作動機構50の詳細について説明する。図5は作動機構50のオフ状態を示す縦断面図である。図6は作動機構50のオン状態を示す縦断面図である。
【0043】
図5に示されるオフ状態は作動機構50の通常の状態である。グリップコア41の後端には、外側に開口しスイッチプレート51の引き出し方向に平行な軸を有する円筒状の収納穴41aが設けられている。スイッチプレート51は、収納穴41aの奥の壁を貫通して、その先端をグリップコア41の内部に突き出している。スイッチプレート51は円柱状の頭部51aを有している。スイッチプレート51の頭部51aの径は収納穴41aの径よりもやや小さく、スイッチプレート51の頭部51aは収納穴41aに摺動可能に収められている。
【0044】
オフ状態では、スイッチプレート51は引っ張りばね52のばね力によってグリップコア41の内部に引き込まれている。ただし、スイッチプレート51の頭部51aがグリップコア41に形成された壁面41dに当たることで、スイッチプレート51のグリップコア41の内部への進入は制限される。図5に示されるスイッチプレート51の位置は、スイッチプレート51がグリップコア41の内部へ最も進入したときの位置である。以下、このときのスイッチプレート51の位置を第1位置と言う。
【0045】
スイッチプレート51が第1位置にある場合、マイクロスイッチ35のピン36はスイッチプレート51によってマイクロスイッチ35の内部に押し込まれている。ピン36の位置は、押し込まれたときの位置がオフ位置であり、マイクロスイッチ35から飛び出しているときの位置がオン位置である。よって、スイッチプレート51の第1位置では、マイクロスイッチ35はオフ状態に保持される。
【0046】
スイッチプレート51の頭部51aが収納される収納穴41aの内周面には、環状溝41bが形成されている。環状溝41bには、頭部51aに嵌められているOリング54が嵌合する。環状溝41bとOリング54は、スイッチプレート51が第1位置にある場合に環状溝41bにOリング54が嵌合するように両者の位置関係を設定されている。Oリング54の外径は収納穴41aの内径よりも大きい。ただし、Oリング54は弾性変形可能な材質、例えば、ゴムで形成されている。
【0047】
Oリング54は収納穴41aからグリップコア41の内部への水の浸入を防止する。また、Oリング54が環状溝41bに嵌合することで、スイッチプレート51をグリップコア41から引き出す際に抵抗が生じる。スイッチプレート51を引き出すためには、操作者はわざわざその抵抗を上回る力でボールチェーン55を引っ張る必要がある。そのことが抑止力となって、スイッチプレート51が誤って引き出されてしまうことは抑えられる。
【0048】
図6に示される作動機構50のオン状態は、スイッチプレート51がグリップコア41から引き出された状態である。スイッチプレート51にはストッパとしてのピン53が固定されている。このピン53がグリップコア41に形成された壁面41eに当たることで、スイッチプレート51がグリップコア41から抜けることは防止される。図6に示されるスイッチプレート51の位置は、スイッチプレート51がグリップコア41から最も引き出されたときの位置である。以下、このときのスイッチプレート51の位置を第2位置と言う。スイッチプレート51が第2位置にある場合、頭部51aに嵌められたOリング54は収納穴41aの入口41cから外に飛び出ている。
【0049】
スイッチプレート51の第2位置では、引っ張りばね52は最も伸びた状態になる。このため、スイッチプレート51を引っ張るボールチェーン55には強い引っ張り力が作用する。引っ張りばね52のバネ定数は、操作者として想定される人の中で最も力の弱い人がボールチェーン55を引っ張ったときに、確実にスイッチプレート51を第2位置まで変位させることができる程度の大きさに設定されている。
【0050】
スイッチプレート51の先端部、つまり、引っ張りばね52が取り付けられている側の端部には傾斜部51bが形成されている。傾斜部51bは、スイッチプレート51の先端に向けて次第にマイクロスイッチ35との隙間が拡大するように形成されている。そのため、ボールチェーン55を引っ張ってスイッチプレート51を引き出していくと、スイッチプレート51に押さえ付けられていたピン36は次第に頭を出してくる。最終的に、スイッチプレート51が第2位置に到達した時、或いは、その直前において、ピン36はマイクロスイッチ35から飛び出してオン位置に位置するようになる。よって、スイッチプレート51の第2位置では、マイクロスイッチ35はオン状態になる。
【0051】
4.作動機構の操作手順
次に、図7を参照して携行型拘束網展開装置2を作動させるための作動機構50の操作手順について説明する。作動機構50の初期状態では、スイッチプレート51は第1位置にある。この状態では、ピン36はスイッチプレート51によってマイクロスイッチ35の中に押し込まれ、マイクロスイッチ35はオフ状態に維持されている。携行型拘束網展開装置2を作動させる場合、操作者は手100でボールチェーン55を引っ張る。
【0052】
ボールチェーン55を引っ張ることで、スイッチプレート51はグリップコア41の中から引き出される。そして、ピン53が壁面41eに当たる位置、すなわち、第2位置でスイッチプレート51は止まる。スイッチプレート51が第1位置から第2位置へ移動する過程において、ピン36が当たる位置はスイッチプレート51の底面から傾斜部51bに移り、ピン36はマイクロスイッチ35から飛び出してくる。そして、ピン36がオン位置まで飛び出したところでマイクロスイッチ35はオン状態になり、携行型拘束網展開装置2は作動する。
【0053】
操作者は、ボールチェーン55を引っ張ってスイッチプレート51を引き出すという一つのアクションで瞬時に携行型拘束網展開装置2を作動させることができる。また、スイッチプレート51を引き出すという行為は、意図的な行為であり、誤操作の起きにくい行為である。つまり、本実施形態に係る作動機構50の構成によれば、誤操作を抑制することができ、且つ、携行型拘束網展開装置2を瞬時に作動させることができる、
【0054】
携行型拘束網展開装置2を作動させて拘束網を展開させた後、操作者はボールチェーン55を引っ張っていた手100を離す。スイッチプレート51にかかっていた引き出し方向の力が消えることで、スイッチプレート51は引っ張りばね52のばね力によってグリップコア41の内部に引き込まれる。ただし、Oリング54の外径は収納穴41aの内径よりも大きいので、Oリング54は収納穴41aの入口41cに引っ掛かる。Oリング54が収納穴41aの入口41cに引っ掛かったときのスイッチプレート51の位置を第3位置という。
【0055】
スイッチプレート51が引っ張りばね52から加えられるバネ力によって第2位置から第3位置へ移る過程において、スイッチプレート51の傾斜部51bはピン36と接触し、ピン36をオン位置からオフ位置に次第に変位させる。これにより、ピン36をオフ位置に確実に戻すことができる。スイッチプレート51が第3位置に位置したとき、ピン36はオフ位置に位置し、マイクロスイッチ35はオフ状態になる。
【0056】
次に、操作者は、第3位置にあるスイッチプレート51の頭部51aを手100で押し込む。押し込まれたスイッチプレート51は第1位置に戻る。つまり、操作者は、スイッチプレート51を引っ張っていた手100を放すことで、引っ張りばね52のばね力によってスイッチプレート51を第2位置から第3位置まで戻らせ、さらに手100で押し込むことでスイッチプレート51を第1位置まで戻す。このように敢えて2回のアクションを操作者にとらせることで、スイッチプレート51を元の位置に戻してマイクロスイッチ35をオフ状態にすることを操作者に意識させることができる。
【0057】
操作者がスイッチプレート51を第3位置から第1位置まで押し込む過程で、Oリング54は収納穴41aに押し込まれて環状溝41bに嵌合する。その際、操作者には一定の力が要求され、且つ、Oリング54が環状溝41bに嵌合することでカチッという感触が得られる。これにより、操作者に対してスイッチプレート51が確実に元の位置に戻されたことを知らせることができる。
【0058】
なお、操作者がスイッチプレート51を第1位置まで押し込むことを忘れたとしても、スイッチプレート51が第3位置にあれば、マイクロスイッチ35はオフ状態になる。さらに、グリップエンド44にエンドキャップ45が取り付けられる際に、スイッチプレート51はエンドキャップ45によって第1位置まで押し込まれる。これにより、スイッチプレート51は元の位置に戻され、マイクロスイッチ35は安定してオフ状態に保持されるようになる。
【0059】
4.その他
上記実施の形態では、スイッチプレート51を第2位置から第1位置へ戻す際、Oリング54が収納穴41aの入口41cに引っ掛かることで、スイッチプレート51は第3位置で停止するようになっている。しかし、操作者が手で押し込まずとも、引っ張りばね52のばね力のみによってスイッチプレート51が第2位置から第1位置まで自動的に戻るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
2 携行型拘束網展開装置
4 装置本体
6 カートリッジ
20 アダプタ
31 電子回路
30 回路ユニット
35 マイクロスイッチ(モーメンタリスイッチ)
36 ピン(動作部)
40 グリップ
41 グリップコア
41a 収納穴
41b 環状溝
50 作動機構
51 スイッチプレート(操作具)
51a 頭部
52 引っ張りばね(ばね装置)
53 ピン
54 Oリング
56 固定具(ばね装置)
64 噴出器
65 拘束網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7