(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001855
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/00 20060101AFI20231227BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20231227BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20231227BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B65H5/00 D
B65H5/02 B
B41J11/02
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084614
(22)【出願日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022100550
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】堀 栄治
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB29
2C056EB39
2C056EC12
2C056EC38
2C058AB16
2C058AC07
2C058AE08
2C058AF31
2C058DA13
2C058DA38
3F049AA01
3F049BA01
3F049LA01
3F049LA06
3F049LA07
3F049LB03
3F101LA01
3F101LA06
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】シートの搬送不良を低減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】支持ローラ15は、正の電位が与えられるとともに、周面上に誘電体層が設けられている。搬送ベルト11は、支持ローラ15の誘電体層に相対して用紙Pの搬送方向に循環して駆動され、0の電位が与えられるとともに、支持ローラ15からの電気力線が貫通する複数の孔が形成されて搬送面11aに用紙Pが静電吸着される。駆動ローラ12、従動ローラ13、測定用電圧印加部18、電流電圧変換部19、および制御部23は、搬送ベルト11の電気抵抗値を測定する。制御部23は、測定した搬送ベルト11の電気抵抗値に基づき、支持ローラ15に付与する電位を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送装置において、
第1電位が与えられるとともに、シートが搬送される側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、
前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記固定電極の側とは反対側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、
前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
間隔をおいて配置された複数の印刷ヘッドからシートにインクを吐出して該シート上に画像を形成する画像形成装置に設けられ、前記印刷ヘッドに沿ってシートを搬送する搬送装置において、
前記印刷ヘッドの下方に配置され、第1電位が与えられるとともに、前記印刷ヘッド側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、
前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記印刷ヘッド側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、
前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトに接する一対のローラをさらに備え、
前記抵抗測定部は、前記一対のローラを電極として用いて前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記抵抗測定部は、前記搬送ベルトを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定し、
前記電位制御部は、前記区間ごとの電気抵抗値に基づき、前記固定電極の誘電体層に相対する前記区間ごとに前記第1電位を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等のシートを静電吸着により搬送ベルトに吸着させて搬送する搬送装置が知られている。
【0003】
この種の搬送装置として、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の搬送装置は、固定電極と、固定電極に沿って移動する搬送ベルトとを備える。固定電極の搬送ベルトに対面する側の表面には、誘電体層が設けられている。搬送ベルトは、導電体と誘電体層との2層構造とされ、導電体および誘電体層を貫通する複数の孔を有する。
【0004】
この搬送装置では、固定電極に正の電位が付与され、搬送ベルトの導電体に0(アース)または負の電位が付与される。正電位にある固定電極によって固定電極の誘電体層が分極して、その表面が正電位となる。このため、固定電極側からの電気力線は、固定電極の直上にある搬送ベルトの孔を通って搬送ベルトの上方に行き、搬送ベルトの表面に載せられたシートを下方から貫通してこれを分極する。さらに、電気力線は、下方に屈曲して搬送ベルトの孔の周辺においてシートを上方から貫通してこれを逆の電位に分極し、さらに搬送ベルトの誘電体層に到達貫通してこれを分極する。
【0005】
その結果、シートおよび搬送ベルトの誘電体層の各表裏面には互いに逆となる正負の電荷が生じるので、搬送ベルトの固定電極と隣り合う範囲にある孔の部分およびその周辺でシートは搬送ベルトの誘電体層に静電吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の搬送装置では、搬送ベルトの導電体の個体バラツキによる電気抵抗値の違いや、劣化による電気抵抗値の変化により、静電吸着による吸着力が適正でなくなることがある。
【0008】
吸着力が適正でない場合、シートの搬送不良が生じるおそれがある。具体的には、吸着力が大きすぎてシートにシワが発生することがある。また、吸着力が小さすぎてシートが搬送ベルトから浮き上がり、周辺の部材に接触して搬送ジャムが発生することがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、シートの搬送不良を低減できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、シートを搬送する搬送装置において、第1電位が与えられるとともに、シートが搬送される側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記固定電極の側とは反対側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部とを備えることを特徴とする搬送装置が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、間隔をおいて配置された複数の印刷ヘッドからシートにインクを吐出して該シート上に画像を形成する画像形成装置に設けられ、前記印刷ヘッドに沿ってシートを搬送する搬送装置において、前記印刷ヘッドの下方に配置され、第1電位が与えられるとともに、前記印刷ヘッド側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記印刷ヘッド側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部とを備えることを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送装置によれば、シートの搬送不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る搬送装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す画像形成装置の搬送装置の搬送ベルト付近における各部材の帯電状態等を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す画像形成装置の搬送装置の搬送ベルト付近における搬送ベルトの吸着領域を示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る搬送装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る画像形成装置1は、複数の印刷ヘッド2と、一対のレジストローラ3と、搬送装置4とを備える。
【0017】
印刷ヘッド2は、搬送装置4により搬送される用紙(シートに相当)Pに向けてインクを吐出して用紙P上に画像を形成する。複数の印刷ヘッド2は、用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔をおいて下向きに配置されている。本実施形態では、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色のインクをそれぞれ吐出する4つの印刷ヘッド2が設置されている。
【0018】
レジストローラ3は、図示しない給紙機構により搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、搬送装置4へ搬送する。
【0019】
搬送装置4は、レジストローラ3により搬送されてきた用紙Pを、静電吸着により吸着保持しつつ搬送する。搬送装置4は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13と、テンションローラ14と、複数の支持ローラ(固定電極に相当)15と、搬送モータ16と、吸着用電圧印加部17と、測定用電圧印加部18と、電流電圧変換部19と、切替部20~22と、制御部(電位制御部に相当)23とを備える。
【0020】
搬送ベルト11は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12、従動ローラ13、およびテンションローラ14に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11は、印刷ヘッド2の下方に配置されている。搬送ベルト11は、
図1における時計回り方向に循環して駆動されることで、搬送面11a上に静電吸着された用紙Pを、
図1に示す搬送方向に搬送する。搬送面11aは、駆動ローラ12と従動ローラ13との間で水平な搬送ベルト11の上面(支持ローラ15の側とは反対側の表面)である。
【0021】
図2、
図3に示すように、搬送ベルト11は、導電体31と誘電体層32との2層構造とされている。
【0022】
導電体31は、誘電体層32の内側に設けられ、駆動ローラ12、従動ローラ13、およびテンションローラ14に接している。また、導電体31は、各支持ローラ15に接している。すなわち、導電体31は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間で後述する支持ローラ15の誘電体層37に相対している。導電体31は、用紙Pの搬送動作時において、駆動ローラ12および従動ローラ13を介して0(アース)の電位(第2電位に相当)が与えられる可動電極である。
【0023】
誘電体層32は、ユーザが使用時、点検時等に誤って搬送ベルト11の導電体31に触れて感電する事故を防止するためのものである。誘電体層32は、誘電体からなる。誘電体は、導電性よりも誘電性が優位であり、直流電流に対しては絶縁性を持つ物質であり、例えばプラスティック等が挙げられる。
【0024】
搬送ベルト11の導電体31および誘電体層32には、連続して貫通する内径の等しい円形の孔が適当な配置間隔で複数形成されている。後述するように、これらの貫通した孔は、搬送ベルト11上の用紙Pとその付近に電界を形成するために形成されたものであり、ここでは便宜上、導電体31の孔を通孔33、この通孔33に連通する誘電体層32の孔を開口34と称するものとする。
【0025】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を
図1における時計回り方向に回転させる。駆動ローラ12は、少なくともその周面が導電性を有する。
【0026】
従動ローラ13は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13は、水平方向に駆動ローラ12から離間して配置されている。従動ローラ13は、回転する搬送ベルト11に従動回転する。従動ローラ13は、少なくともその周面が導電性を有する。
【0027】
テンションローラ14は、搬送ベルト11に張力を付与する部材である。テンションローラ14により搬送ベルト11に張力が付与されることで、駆動ローラ12と従動ローラ13との間で平面状の搬送面11aが形成される。テンションローラ14は、回転する搬送ベルト11に従動回転する。テンションローラ14は、駆動ローラ12と従動ローラ13との間において駆動ローラ12および従動ローラ13より低い位置に配置されている。テンションローラ14は、ゴム等の絶縁体からなるものでもよいし、導電体からなるものでもよい。
【0028】
支持ローラ15は、搬送ベルト11の搬送面11aを構成する部分を支持する。また、支持ローラ15は、用紙Pの搬送動作時において、正の電位(第1電位に相当)が与えられる電極(固定電極)として機能する。複数の支持ローラ15が、駆動ローラ12と従動ローラ13との間で水平方向(用紙Pの搬送方向)に間隔を空けて、搬送ベルト11の搬送面11aを構成する部分の下側に接するように配置されている。支持ローラ15は、回転する搬送ベルト11に従動回転する。
【0029】
支持ローラ15は、印刷ヘッド2の下方において、印刷ヘッド2とは相対しない位置に配置されている。具体的には、用紙Pの搬送方向における最も上流側の印刷ヘッド2の上流側近傍の位置と、4個の印刷ヘッド2の間に相当する3つの位置と、最も下流側の印刷ヘッド2の下流側近傍の位置とに配置されている。
【0030】
図2、
図3に示すように、支持ローラ15は、ローラ本体36と、誘電体層37とを有する。
【0031】
ローラ本体36は、円柱形状に形成された導電体からなる。ローラ本体36は、搬送動作時において、正の電位が与えられるものである。
【0032】
誘電体層37は、ローラ本体36の周面上(表面)に形成された誘電体からなる層である。誘電体層37は、ローラ本体36の全周に形成されている。誘電体層37は、搬送動作時において支持ローラ15と搬送ベルト11との接触による短絡を防止するためのものである。
【0033】
上述のように、誘電体層37は、ローラ本体36の全周に形成されているため、支持ローラ15の用紙Pが搬送される側の表面に形成されているといえる。換言すれば、誘電体層37は、支持ローラ15の印刷ヘッド2側の表面に形成されているといえる。
【0034】
搬送モータ16は、駆動ローラ12を駆動させる。
【0035】
吸着用電圧印加部17は、搬送動作時において、各支持ローラ15のローラ本体36に静電吸着用の正の電圧を印加(正の電位を付与)する。
【0036】
測定用電圧印加部18は、搬送動作の開始前に行われる、搬送ベルト11の導電体31の電気抵抗値(搬送ベルト11の電気抵抗値)を測定する抵抗測定動作時において、駆動ローラ12に抵抗値測定用の正の電圧を印加(正の電位を付与)する。
【0037】
電流電圧変換部19は、抵抗器と増幅器(いずれも図示せず)とを有し、抵抗測定動作時において、抵抗器に電流が流れることで発生した電圧を増幅器により増幅して制御部23に出力する。
【0038】
切替部20は、各支持ローラ15のローラ本体36を吸着用電圧印加部17に接続するか、吸着用電圧印加部17に接続せずにオープンの状態とするかを切り替える。
【0039】
切替部21は、駆動ローラ12を測定用電圧印加部18に接続するか、接地(アース)するかを切り替える。
【0040】
切替部22は、従動ローラ13を電流電圧変換部19に接続するか、接地(アース)するかを切り替える。
【0041】
制御部23は、搬送装置4の各部の動作を制御する。制御部23は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。なお、画像形成装置1全体を制御する制御部が、制御部23を兼ねていてもよい。
【0042】
制御部23は、抵抗測定動作において、測定用電圧印加部18により駆動ローラ12に抵抗値測定用の正の電圧を印加させ、電流電圧変換部19が出力する電圧に応じた搬送ベルト11の電気抵抗値を取得する。また、制御部23は、搬送動作時において、搬送モータ16を駆動させるとともに、吸着用電圧印加部17により各支持ローラ15のローラ本体36に静電吸着用の正の電位を付与させる。この際、制御部23は、抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11の電気抵抗値に基づき、吸着用電圧印加部17により各支持ローラ15のローラ本体36に付与する電位を制御する。
【0043】
なお、駆動ローラ12、従動ローラ13、測定用電圧印加部18、電流電圧変換部19、および制御部23により、搬送ベルト11の電気抵抗値を測定する抵抗測定部が構成される。
【0044】
次に、上述した抵抗測定動作について説明する。
【0045】
抵抗測定動作は、搬送動作を行う際に、搬送動作に先立って行われる。
【0046】
制御部23は、各支持ローラ15のローラ本体36を吸着用電圧印加部17に接続せずにオープンの状態とするよう切替部20を制御する。また、制御部23は、駆動ローラ12を測定用電圧印加部18に接続し、従動ローラ13を電流電圧変換部19に接続するよう切替部21,22を制御する。
【0047】
次いで、制御部23は、測定用電圧印加部18により駆動ローラ12に抵抗値測定用の正の電圧を印加するよう制御する。
【0048】
これにより、搬送ベルト11および電流電圧変換部19の抵抗器に、それらの合成抵抗に応じた電流が流れる。電流電圧変換部19は、抵抗器に電流が流れることで発生した電圧を増幅器により増幅して制御部23に出力する。制御部23は、電流電圧変換部19から入力された電圧に基づき、搬送ベルト11の電気抵抗値を算出する。ここで、電流電圧変換部19の抵抗器の電気抵抗値は既知であり、電流電圧変換部19が出力した電圧から算出される電流から、搬送ベルト11の電気抵抗値を算出することができる。
【0049】
次に、搬送装置4における搬送動作について説明する。
【0050】
抵抗測定動作の終了後、制御部23は、各支持ローラ15のローラ本体36を吸着用電圧印加部17に接続するよう切替部20を制御する。また、制御部23は、駆動ローラ12および従動ローラ13を接地するよう切替部21,22を制御する。駆動ローラ12および従動ローラ13が接地されることで、これらに金属接触する搬送ベルト11の導電体31に0の電位が付与される。
【0051】
次いで、制御部23は、吸着用電圧印加部17により各支持ローラ15のローラ本体36に静電吸着用の正の電圧を印加するよう制御する。また、制御部23は、搬送モータ16の駆動を開始させる。
【0052】
ここで、制御部23は、今回の搬送動作に対応して事前に行われた抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11の電気抵抗値に基づき、吸着用電圧印加部17により各支持ローラ15のローラ本体36に印加する電圧を制御する。吸着用電圧印加部17が各支持ローラ15のローラ本体36に印加する電圧は、この電圧の印加により発生する電界の電解強度が所定の電界強度となるよう設定される。
【0053】
具体的には、制御部23は、搬送ベルト11の電気抵抗値が所定のデフォルト値よりも大きい場合は、その電気抵抗値に応じた、静電吸着用の電圧の基準電圧よりも大きい電圧を各支持ローラ15のローラ本体36に印加するよう吸着用電圧印加部17を制御する。
【0054】
また、制御部23は、搬送ベルト11の電気抵抗値が所定のデフォルト値よりも小さい場合は、その電気抵抗値に応じた、静電吸着用の電圧の基準電圧よりも小さい電圧を各支持ローラ15のローラ本体36に印加するよう吸着用電圧印加部17を制御する。
【0055】
レジストローラ3により用紙Pが搬送されてくると、搬送装置4は、用紙Pを搬送ベルト11の搬送面11aに静電吸着により吸着保持しつつ搬送する。
【0056】
搬送装置4では、各支持ローラ15のローラ本体36に正の電位が付与され、搬送ベルト11の導電体31に0の電位が付与されることで、
図2に示すように、正電位にあるローラ本体36によって誘電体層37が分極して、その表面が正電位となる。このため、ローラ本体36側からの電気力線は、ローラ本体36の直上にある搬送ベルト11の貫通した孔(通孔33および開口34)を通って搬送ベルト11の上方に行き、搬送ベルト11の搬送面11aに載せられた用紙Pを下方から貫通してこれを分極する。さらに、電気力線は、下方に屈曲して搬送ベルト11の孔の周辺において用紙Pを上方から貫通してこれを逆の電位に分極し、さらに、搬送ベルト11の誘電体層32に到達貫通してこれを分極する。
【0057】
その結果、
図2に示すように、用紙Pおよび誘電体層32の各表裏面には互いに逆となる正負の電荷が生じる。このため、搬送ベルト11のローラ本体36と隣り合う範囲にある通孔33の部分およびその周辺で用紙Pは搬送ベルト11の誘電体層32(搬送面11a)に静電吸着される。
【0058】
ここで、
図3に示すように、搬送ベルト11のうち、用紙Pを吸着することができる吸着領域Hは、支持ローラ15の真上にある支持ローラ15の平面視における形状と略同一形状乃至範囲の部分だけである。吸着領域Hは、支持ローラ15の真上を通過していく搬送ベルト11において支持ローラ15の真上の位置に発生することとなる。
【0059】
搬送ベルト11により搬送される用紙Pに各印刷ヘッド2からインクを吐出することで、用紙P上に画像が形成される。
【0060】
以上説明したように、搬送装置4では、抵抗測定動作において、測定用電圧印加部18、電流電圧変換部19をそれぞれ駆動ローラ12、従動ローラ13に接続し、駆動ローラ12に正の電圧を印加して搬送ベルト11の電気抵抗値を測定する。そして、制御部23は、搬送動作時において、抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11の電気抵抗値に基づき、吸着用電圧印加部17により各支持ローラ15のローラ本体36に付与する電位を制御する。
【0061】
これにより、搬送ベルト11の導電体31の個体バラツキによる電気抵抗値の違いや、劣化による電気抵抗値の変化があっても、搬送ベルト11への用紙Pの静電吸着において適正な吸着力を実現できる。この結果、用紙Pの搬送不良を低減できる。具体的には、搬送ベルト11への用紙Pの吸着力が大きすぎて用紙Pにシワが発生したり、吸着力が小さすぎて用紙Pが搬送ベルト11から浮き上がって印刷ヘッド2に接触して搬送ジャムが発生したりすることを低減できる。
【0062】
また、搬送装置4では、抵抗測定動作において、駆動ローラ12および従動ローラ13を電極として用いて搬送ベルト11の電気抵抗値を測定する。このように、既存の駆動ローラ12および従動ローラ13を利用することで、装置構成の複雑化、大型化を抑えつつ、搬送ベルト11の電気抵抗値の測定を実現することが可能である。
【0063】
また、搬送装置4では、正の電位が与えられる電極(固定電極)として機能する支持ローラ15が、印刷ヘッド2とは相対しない位置に配置されている。このため、各印刷ヘッド2から下方に吐出されるインクが支持ローラ15(固定電極)の電界によって飛行曲がりを生じる不都合が生じにくい。この結果、印刷画質の低下を抑制できる。
【0064】
また、搬送装置4では、正の電位が与えられる電極(固定電極)が、回転する搬送ベルト11に従動回転する支持ローラ15により構成されているため、搬送負荷が抑えられる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の搬送装置の一部を変更した第2実施形態について説明する。
【0066】
図4に示すように、第2実施形態に係る画像形成装置1Aは、第1実施形態の搬送装置4を、搬送装置4Aに置き換えた構成である。
【0067】
搬送装置4Aは、第1実施形態の搬送装置4に対し、搬送ベルト11を搬送ベルト11Aに置き換え、吸着用電圧印加部17および切替部20を吸着用電圧印加部41A~41Dおよび切替部42A~42Dに置き換え、測定用電圧印加部18および切替部21を省略し、電圧印加部43、HP(ホームポジション)センサ44、およびエンコーダ45を追加した構成である。
【0068】
なお、搬送装置4Aでは、複数の支持ローラ15を、搬送方向における下流側から支持ローラ15A~15Eとするが、支持ローラ15A~15Eの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0069】
搬送ベルト11Aは、第1実施形態の搬送装置4の搬送ベルト11にHP孔11bを追加したものである。HP孔11bは、搬送ベルト11Aのホームポジションを示すものである。
【0070】
電圧印加部43は、抵抗測定動作時において、支持ローラ15A~15Eのうちの最上流の支持ローラ15Eに抵抗値測定用の正の電圧を印加(正の電位を付与)する。ここで、後述するように搬送装置4Aにおける抵抗測定動作は、搬送ベルト11Aを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定するものである。
【0071】
また、電圧印加部43は、搬送動作時において、支持ローラ15Eに静電吸着用の正の電圧を印加(正の電位を付与)する。
【0072】
吸着用電圧印加部41A~41Dは、搬送動作時において、それぞれ支持ローラ15A~15Dのローラ本体36に静電吸着用の正の電圧を印加(正の電位を付与)する。
【0073】
切替部42A~42Dは、それぞれ支持ローラ15A~15Dのローラ本体36をそれぞれ吸着用電圧印加部41A~41Dに接続するか、オープンの状態とするかを切り替える。
【0074】
HPセンサ44は、HP孔11bを検出する。
【0075】
エンコーダ45は、従動ローラ13の回転角度に応じてパルス信号を出力する。
【0076】
制御部23は、抵抗測定動作において、電圧印加部43により支持ローラ15Eに抵抗値測定用の正の電圧を印加させ、電流電圧変換部19が出力する電圧に応じた、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の長さ分の区間の電気抵抗値を取得する。次いで、制御部23は、搬送ベルト11Aを上記の区間の長さ分だけ移動させ、次の区間の電気抵抗値を取得する。制御部23は、このような電気抵抗値の取得(測定)と搬送ベルト11Aの移動とを繰り返すことで、搬送ベルト11Aを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定する。
【0077】
また、制御部23は、搬送動作時において、搬送モータ16を駆動させるとともに、吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43により支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に静電吸着用の正の電位を付与させる。この際、制御部23は、抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11Aの区間ごとの電気抵抗値に基づき、吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43により支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に付与する電位を、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に相対(接触)している搬送ベルト11Aの区間ごとに制御する。
【0078】
なお、従動ローラ13、支持ローラ15A、電圧印加部43、電流電圧変換部19、および制御部23により、搬送ベルト11Aを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定する抵抗測定部が構成される。
【0079】
次に、搬送装置4Aにおける抵抗測定動作について説明する。
【0080】
制御部23は、搬送モータ16の駆動を開始することにより搬送ベルト11Aの駆動を開始させる。搬送ベルト11Aの駆動開始後、HPセンサ44がHP孔11bを検出すると、制御部23は、搬送ベルト11Aを停止させる。
【0081】
次いで、制御部23は、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の電気抵抗値を取得(測定)する。
【0082】
具体的には、制御部23は、支持ローラ15A~15Dのローラ本体36をそれぞれ吸着用電圧印加部41A~41Dに接続せずにオープンの状態とするよう切替部42A~42Dを制御する。また、制御部23は、従動ローラ13を電流電圧変換部19に接続するよう切替部22を制御する。
【0083】
そして、制御部23は、電圧印加部43により支持ローラ15Eに抵抗値測定用の正の電圧を印加するよう制御する。
【0084】
これにより、搬送ベルト11Aおよび電流電圧変換部19の抵抗器に、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の抵抗と残りの部分の抵抗との並列回路と、電流電圧変換部19の抵抗器との合成抵抗に応じた電流が流れる。電流電圧変換部19は、抵抗器に電流が流れることで発生した電圧を増幅器により増幅して制御部23に出力する。制御部23は、電流電圧変換部19から入力された電圧に基づき、上記の並列回路の合成抵抗値を算出する。ここで、電流電圧変換部19の抵抗器の電気抵抗値は既知であり、電流電圧変換部19が出力した電圧から算出される電流から、上記の並列回路の合成抵抗値を算出することができる。
【0085】
ここで、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Aとの間の区間が、搬送ベルト11Aの残りの部分に対して十分に短い場合には、上記の並列回路の合成抵抗値は、従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の電気抵抗値とほぼ同程度になる。搬送装置4Aでは、従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間隔は、上記の並列回路の合成抵抗値が、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の電気抵抗値と等しいとみなせる程度の十分に短い間隔に設定されている。
【0086】
このことから、制御部23は、上述のように電流電圧変換部19が出力した電圧から算出される電流から算出した上記の並列回路の合成抵抗値を、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の電気抵抗値として取得する。
【0087】
次いで、制御部23は、搬送モータ16を駆動させて搬送ベルト11Aを上記の区間の長さ分だけ移動させる。具体的には、制御部23は、搬送モータ16の駆動開始からのエンコーダ45の出力パルス数が、上記の区間の長さ分のパルス数に到達すると、搬送ベルト11Aを停止させる。
【0088】
次いで、制御部23は、上述した動作により、搬送ベルト11Aの従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の区間の電気抵抗値を測定する。
【0089】
制御部23は、上述のような電気抵抗値の測定と搬送ベルト11Aの移動とを繰り返すことで、搬送ベルト11Aを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定する。
【0090】
制御部23は、測定した搬送ベルト11Aの全周分の各区間の電気抵抗値を記憶する。ここで、各区間は、それぞれの開始地点と終了地点とが、HPセンサ44がHP孔11bを検出してからのエンコーダ45の出力パルス数により規定される。
【0091】
次に、搬送装置4Aにおける搬送動作について説明する。
【0092】
抵抗測定動作の終了後、制御部23は、支持ローラ15A~15Dのローラ本体36をそれぞれ吸着用電圧印加部41A~41Dに接続するよう切替部42A~42Dを制御する。また、制御部23は、従動ローラ13を接地するよう切替部22を制御する。従動ローラ13が接地されることで、これに金属接触する搬送ベルト11の導電体31に0の電位が付与される。
【0093】
次いで、制御部23は、搬送モータ16の駆動を開始させる。また、制御部23は、吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43により支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に静電吸着用の正の電圧を印加するよう制御する。
【0094】
ここで、制御部23は、今回の搬送動作に対応して事前に行われた抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11Aの区間ごとの電気抵抗値に基づき、支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に付与する電位を、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に相対している搬送ベルト11Aの区間ごとに制御する。
【0095】
具体的には、制御部23は、搬送動作中において、HPセンサ44がHP孔11bを検出してからのエンコーダ45の出力パルス数に基づき、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に搬送ベルト11Aのどの区間が相対(接触)しているかを判断する。そして、制御部23は、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に相対している区間の電気抵抗値に応じた電圧を、支持ローラ15A~15Eのそれぞれのローラ本体36に印加するよう吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43を制御する。これにより、搬送動作中において、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に相対している区間が切り替わるごとに、支持ローラ15A~15Eのそれぞれのローラ本体36に印加される電圧が変化する。
【0096】
吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43がそれぞれ支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に印加する電圧は、この電圧の印加により発生する電界の電解強度が所定の電界強度となるよう設定される。
【0097】
具体的には、制御部23は、電気抵抗値が所定のデフォルト値よりも大きい区間については、その電気抵抗値に応じた、搬送装置4Aにおける静電吸着用の電圧の基準電圧よりも大きい電圧を、当該区間に誘電体層37が相対している支持ローラ15のローラ本体36に印加させる。
【0098】
また、制御部23は、電気抵抗値が所定のデフォルト値よりも小さい区間については、その電気抵抗値に応じた、上記の基準電圧よりも小さい電圧を、当該区間に誘電体層37が相対している支持ローラ15のローラ本体36に印加させる。
【0099】
レジストローラ3により用紙Pが搬送されてくると、搬送装置4Aは、第1実施形態の搬送装置4と同様に、用紙Pを搬送ベルト11Aの搬送面11aに静電吸着により吸着保持しつつ搬送する。
【0100】
搬送ベルト11Aにより搬送される用紙Pに各印刷ヘッド2からインクを吐出することで、用紙P上に画像が形成される。
【0101】
以上説明したように、搬送装置4Aでは、抵抗測定動作において、搬送ベルト11Aを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定する。そして、制御部23は、搬送動作時において、抵抗測定動作で測定された搬送ベルト11Aの区間ごとの電気抵抗値に基づき、吸着用電圧印加部41A~41Dおよび電圧印加部43により支持ローラ15A~15Eのローラ本体36に付与する電位を、支持ローラ15A~15Eのそれぞれの誘電体層37に相対している搬送ベルト11Aの区間ごとに制御する。
【0102】
これにより、搬送ベルト11Aへの異物の付着や搬送ベルト11Aの劣化等により搬送ベルト11A内の領域によって電気抵抗値にバラツキがあっても、搬送ベルト11Aへの用紙Pの静電吸着において適正な吸着力を実現できる。この結果、用紙Pの搬送不良をより低減できる。
【0103】
また、搬送装置4Aでは、抵抗測定動作において、従動ローラ13および支持ローラ15Eを電極として用いて搬送ベルト11Aの(区間ごとの)電気抵抗値を測定する。このように、既存の従動ローラ13および支持ローラ15Eを利用することで、装置構成の複雑化、大型化を抑えつつ、搬送ベルト11Aの電気抵抗値の測定を実現することが可能である。
【0104】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1および第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0105】
搬送ベルト11,11Aの誘電体層32を省略してもよい。この場合でも、搬送ベルト11,11Aの貫通した孔の部分においては、用紙Pとこれに対面する支持ローラ15の誘電体層37とは互いに逆電位に分極しているので、静電吸着力は確保される。このため、搬送ベルト11,11Aに用紙Pを吸着できる。
【0106】
また、上述した第1および第2実施形態では、搬送ベルト11,11Aに孔(通孔33および開口34)を貫通しているが、孔の部分をポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセン、ポリパラフェニレンビニレン等の導電性高分子としてもよい。
【0107】
また、上述した第1実施形態では、搬送動作時において、支持ローラ15のローラ本体36に正の電位を付与し、駆動ローラ12および従動ローラ13を接地することで搬送ベルト11の導電体31に0の電位を付与した。また、上述した第2実施形態では、搬送動作時において、支持ローラ15のローラ本体36に正の電位を付与し、従動ローラ13を接地することで搬送ベルト11Aの導電体31に0の電位を付与した。しかし、導電体31に付与する電位は、負の電位でもよい。また、支持ローラ15のローラ本体36に0または負の電位を付与し、搬送ベルト11,11Aの導電体31に正の電位を付与してもよい。
【0108】
また、搬送動作時において支持ローラ15のローラ本体36に付与する電位(第1電位)と、搬送ベルト11,11Aの導電体31に付与する電位(第2電位)とは、正の電位と、負または0の電位との組合せに限らない。第1電位と第2電位とは、両者の間に電位差が認められる異なる2つの電位であればよい。例えば、第1電位が+3Vであり、第2電位が+1Vであってもよい。また、第1電位が-3Vであり、第2電位が-5Vであってもよい。
【0109】
また、上述した第1実施形態では、抵抗測定動作の際、駆動ローラ12に測定用電圧印加部18を接続して抵抗値測定用の電圧を印加し、従動ローラ13に電流電圧変換部19を接続する構成を示した。しかし、従動ローラ13に測定用電圧印加部18を接続して抵抗値測定用の電圧を印加し、駆動ローラ12に電流電圧変換部19を接続する構成でもよい。
【0110】
また、上述した第1実施形態では、駆動ローラ12および従動ローラ13を一対の電極として用いて搬送ベルト11の電気抵抗値を測定した。しかし、テンションローラ14を少なくともその周面が導電性を有するように構成し、このテンションローラ14と、駆動ローラ12または従動ローラ13との一対のローラを、搬送ベルト11の電気抵抗値を測定するための一対の電極として用いてもよい。また、駆動ローラ12等を電極として用いるのではなく、専用の電極を設けて、その電極を用いて搬送ベルト11の電気抵抗値を測定するようにしてもよい。
【0111】
また、上述した第2実施形態では、従動ローラ13および支持ローラ15Eを一対の電極として用い、搬送ベルト11Aの、従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間の長さ分の区間ごとの電気抵抗値を測定した。しかし、一対の電極として用いる一対のローラ、および区間の長さはこれに限らない。例えば、支持ローラ15A~15Eのうちの2本を一対の電極として用い、搬送ベルト11Aの、当該2本の支持ローラ15間の長さ分の区間ごとの電気抵抗値を測定してもよい。また、支持ローラ15等を電極として用いるのではなく、専用の電極を設けて、その電極を用いて、搬送ベルト11Aの所定の長さ分の区間ごとの電気抵抗値を測定するようにしてもよい。電気抵抗値を測定する区間を、従動ローラ13と支持ローラ15Eとの間隔より小さい微小な区間としてもよい。
【0112】
また、上述した第1および第2実施形態では、搬送動作時において正の電位が与えられる電極(固定電極)として、用紙Pの搬送方向に間隔を空けて配置された複数の支持ローラ15を用いたが、これに限らない。例えば、一枚の板状の固定電極を用いてもよいし、用紙Pの搬送方向に間隔を空けて配置された複数の板状の固定電極を用いてもよい。これらの場合、板状の固定電極の用紙Pが搬送される側の表面(印刷ヘッド2側の表面)に誘電体層が設けられる。
【0113】
また、上述した第1および第2実施形態では、インクを吐出して用紙P上に画像を形成する印刷ヘッド2を備えた画像形成装置1において用紙Pを搬送する搬送装置4,4Aを示したが、本発明は必ずしもこのようなインクジェット方式の画像形成装置1にのみ適用されるものではない。例えば、孔版印刷装置において用紙を搬送する搬送装置としても適用可能であるし、その他の画像形成原理を用いた画像形成装置乃至印刷装置においても適用可能である。
【0114】
また、画像形成装置において用紙を搬送する搬送装置に限らず、シートを搬送するものであれば本発明は適用可能である。
【0115】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0116】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0117】
(付記1)
シートを搬送する搬送装置において、
第1電位が与えられるとともに、シートが搬送される側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、
前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記固定電極の側とは反対側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、
前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【0118】
(付記2)
間隔をおいて配置された複数の印刷ヘッドからシートにインクを吐出して該シート上に画像を形成する画像形成装置に設けられ、前記印刷ヘッドに沿ってシートを搬送する搬送装置において、
前記印刷ヘッドの下方に配置され、第1電位が与えられるとともに、前記印刷ヘッド側の表面には誘電体層が設けられた固定電極と、
前記固定電極の誘電体層に相対してシートの搬送方向に循環して駆動され、第2電位が与えられるとともに、前記固定電極からの電気力線が貫通する複数の通孔が形成されて前記印刷ヘッド側の表面にシートが静電吸着される導電体からなる搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、
前記抵抗測定部が測定した電気抵抗値に基づき、前記第1電位を制御する電位制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【0119】
(付記3)
前記搬送ベルトに接する一対のローラをさらに備え、
前記抵抗測定部は、前記一対のローラを電極として用いて前記搬送ベルトの電気抵抗値を測定することを特徴とする付記1または2に記載の搬送装置。
【0120】
(付記4)
前記抵抗測定部は、前記搬送ベルトを循環方向において複数の区間に分割した区間ごとの電気抵抗値を測定し、
前記電位制御部は、前記区間ごとの電気抵抗値に基づき、前記固定電極の誘電体層に相対する前記区間ごとに前記第1電位を制御することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0121】
1 画像形成装置
2 印刷ヘッド
3 レジストローラ
4,4A 搬送装置
11,11A 搬送ベルト
11a 搬送面
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
14 テンションローラ
15,15A~15E 支持ローラ
16 搬送モータ
17,41A~41D 吸着用電圧印加部
18 測定用電圧印加部
19 電流電圧変換部
20~22,42A~42D 切替部
23 制御部
31 導電体
32 誘電体層
33 通孔
34 開口
36 ローラ本体
37 誘電体層
43 電圧印加部
44 HPセンサ
45 エンコーダ