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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018553
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】真空ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20240201BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F04B37/16 B
F04D19/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121962
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】小崎 純一郎
【テーマコード(参考)】
3H076
3H131
【Fターム(参考)】
3H076AA16
3H076BB33
3H076BB34
3H076CC41
3H076CC92
3H131AA02
3H131BA11
3H131CA36
3H131CA38
(57)【要約】
【課題】装置コンピュータ及びバルブの制御装置と、真空ポンプの制御装置とを通信可能とする。
【解決手段】真空ポンプシステム100は、真空ポンプ1と、バルブ2と、装置コンピュータ3と、を備える。真空ポンプ1は、排気対象装置を真空引きし、ポンプ制御装置11を有する。バルブ2は、弁の開度を制御することで排気対象装置CHの内部の圧力を制御し、バルブ制御装置21を有する。装置コンピュータ3は、バルブ2に接続される。バルブ制御装置21は、第1プロトコル又は第2プロトコルのいずれかを用いて、装置コンピュータ3と通信可能である。ポンプ制御装置11は、第2プロトコルと互換性を有する第3プロトコルを用いて通信可能である。バルブ制御装置21は、通信に用いるプロトコルを第2プロトコルとし、第2プロトコルを用いて装置コンピュータ3及びポンプ制御装置11と通信を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気対象装置を真空引きする真空ポンプと、
前記排気対象装置と前記真空ポンプの間に配置され、弁の開度を制御することで前記排気対象装置の内部の圧力を制御するバルブと、
前記バルブに接続された装置コンピュータと、
を備える真空ポンプシステムであって、
前記バルブは、第1プロトコル又は前記第1プロトコルとは異なる第2プロトコルのいずれかを用いて前記装置コンピュータと通信可能なバルブ制御装置を有し、
前記真空ポンプは、前記バルブ制御装置に接続され、前記第2プロトコルと互換性を有する第3プロトコルを用いて他の装置と通信可能なポンプ制御装置を有し、
前記バルブ制御装置と前記ポンプ制御装置との間で通信を行う場合、前記バルブ制御装置は、通信に用いるプロトコルを前記第2プロトコルとし、前記第2プロトコルを用いて前記装置コンピュータ及び前記ポンプ制御装置と通信を行う、
真空ポンプシステム。
【請求項2】
前記ポンプ制御装置は、前記真空ポンプに関するデータを記憶し、
前記バルブ制御装置は、前記第2プロトコルを用いて前記ポンプ制御装置から前記真空ポンプに関するデータを受信する、
請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項3】
前記バルブ制御装置は、
前記ポンプ制御装置から受信した前記真空ポンプに関するデータを、前記第2プロトコルを用いて前記装置コンピュータに送信する、
請求項2に記載の真空ポンプシステム。
【請求項4】
前記真空ポンプに関するデータは、前記真空ポンプのロータの回転速度と、前記ロータを回転するモータに供給された電流値と、を含む、請求項2に記載の真空ポンプシステム。
【請求項5】
前記バルブ制御装置は、バルブに関するデータを記憶し、
前記バルブ制御装置は、
前記ポンプ制御装置から受信した前記真空ポンプに関するデータと、前記バルブに関するデータとを、前記第2プロトコルを用いて前記装置コンピュータに送信する、
請求項2に記載の真空ポンプシステム。
【請求項6】
前記装置コンピュータは、前記第2プロトコルを用いて通信を行った後に、前記第1プロトコルを用いて通信可能となる、請求項1に記載の真空ポンプシステム。
【請求項7】
前記バルブに関するデータは、前記排気対象装置の内部の圧力と、前記排気対象装置の内部の目標圧力と、前記弁の開度と、前記真空ポンプにより前記排気対象装置の内部を真空引きするときの推定流量と、を含む、請求項5に記載の真空ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプには、固定翼と回転翼で構成されるタービン翼ポンプ部と、タービン翼ポンプ部よりも排気下流側に設けられたドラッグポンプ部と、を備えるものがある。この真空ポンプを含む真空ポンプシステムは、例えば、ドライエッチング、又は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)などのプロセスを実行するプロセスチャンバなどの排気対象装置を真空引きする手段として用いられる。また、この真空ポンプシステムにおいては、真空ポンプと排気対象装置との間にバルブが設けられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-21789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の真空ポンプシステムは、バルブに接続された装置コンピュータをさらに備える場合がある。この装置コンピュータは、バルブの制御装置と所定のプロトコルを用いて通信可能であり、真空ポンプシステムの状態及び/又は排気対象装置にて行われているプロセス等の監視のために、バルブの制御装置にて得られた各種情報を取得可能となっている。
【0005】
その一方、真空ポンプシステム及び/又はプロセス等のより詳細な情報を取得するために、バルブの情報に加えて、真空ポンプの制御装置にて取得された情報が必要な場合がある。しかしながら、真空ポンプの制御装置は、上記の装置コンピュータとバルブの制御装置との通信に用いられているものとは異なるプロトコルで他の装置(例えば、他の真空ポンプ)と通信をしている。そのため、真空ポンプの制御装置は、装置コンピュータとバルブの制御装置に物理的に接続されていても、装置コンピュータとバルブの制御装置とは通信ができない。また、真空ポンプは、複数台使用を想定してあらかじめプロトコルを規定しており、これを変更することができない場合が多い。
【0006】
本発明の目的は、真空ポンプシステムにおいて、装置コンピュータ及びバルブの制御装置と、プロトコルの変更ができない真空ポンプの制御装置とを通信可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る真空ポンプシステムは、真空ポンプと、バルブと、装置コンピュータと、を備える。真空ポンプは、排気対象装置を真空引きする。バルブは、排気対象装置と真空ポンプの間に配置され、弁の開度を制御することで排気対象装置の内部の圧力を制御する。装置コンピュータは、バルブに接続される。この真空ポンプシステムにおいて、バルブは、バルブ制御装置を有する。バルブ制御装置は、第1プロトコル又は第1プロトコルとは異なる第2プロトコルのいずれかを用いて、装置コンピュータと通信可能となっている。真空ポンプは、ポンプ制御装置を有する。ポンプ制御装置は、バルブ制御装置に接続され、第2プロトコルと互換性を有する第3プロトコルを用いて他の装置と通信可能となっている。上記の真空ポンプシステムにおいて、バルブ制御装置とポンプ制御装置との間で通信を行う場合、バルブ制御装置は、通信に用いるプロトコルを第2プロトコルとし、第2プロトコルを用いて装置コンピュータ及びポンプ制御装置と通信を行う。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明の一態様に係る真空ポンプシステムでは、バルブ制御装置とポンプ制御装置との間で通信を行う場合に、バルブ制御装置が通信で用いるプロトコルを第2プロトコルとしている。これにより、装置コンピュータ、バルブ制御装置、及び、ポンプ制御装置が、共通の第2プロトコルにより互いに通信可能となる。この結果、装置コンピュータ、バルブ制御装置、プロトコルの変更ができないポンプ制御装置との間で、互いにデータの送受信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る真空ポンプシステムの構成を示す図である。
図2】装置コンピュータの構成を示す図である。
図3】ポンプ制御装置の構成を示す図である。
図4】バルブ制御装置の構成を示す図である。
図5】バルブ制御装置とポンプ制御装置との間で通信をする場合の動作を示す処理シーケンス図である。
図6】通常状態への復帰動作を示す処理シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<真空ポンプシステムの構成>
以下、図面を参照して一実施形態に係る真空ポンプシステムの構成を説明する。図1は、実施形態に係る真空ポンプシステム100の構成を示す図である。真空ポンプシステム100は、排気対象装置CHの内部のガスを排気するシステムである。排気対象装置CHは、例えば、半導体製造装置のプロセスチャンバ、各種成膜装置、エッチング装置などである。
【0011】
真空ポンプシステム100は、真空ポンプ1と、バルブ2と、装置コンピュータ3と、を備える。真空ポンプ1は、バルブ2を介して、排気対象装置CHの内部に接続される。真空ポンプ1は、排気対象装置CHの内部を真空引きする。真空ポンプ1は、ロータとステータとを有し、ロータが回転することで排気対象装置CHを真空引きするポンプ(例えば、ターボ分子ポンプ)である。真空ポンプ1は、ポンプ制御装置11を有する。ポンプ制御装置11は、真空ポンプ1の制御、及び、真空ポンプ1に関する各種データ(ポンプ関連データD1と呼ぶ)を収集し記憶する。
【0012】
バルブ2は、弁の開閉により真空ポンプ1の吸気側と排気対象装置CHの内部とを連通させるか遮断するかを切り替える装置である。また、バルブ2は、弁の開度を制御して真空ポンプ1による排気対象装置CHの内部の吸引流量を制御することで、排気対象装置CHの内部の圧力を制御する。バルブ2は、バルブ制御装置21を有する。バルブ制御装置21は、バルブ2の制御、及び、バルブ2に関する各種データ(バルブ関連データD2と呼ぶ)を収集し記憶する。
【0013】
バルブ制御装置21は、真空計4に接続されている。真空計4は、排気対象装置CHの内部の圧力を測定する。バルブ制御装置21は、真空計4にて測定された排気対象装置CHの圧力を、バルブ関連データD2として収集できる。
【0014】
装置コンピュータ3は、バルブ制御装置21に接続され、真空ポンプシステム100に対する各種設定を行う。具体的には、装置コンピュータ3は、排気対象装置CHの内部の設定圧力を設定し、バルブ制御装置21に送信する。真空ポンプシステム100の運転中に、バルブ制御装置21は、装置コンピュータ3から受信した設定圧力になるよう、バルブ2の弁の開度を制御する。
【0015】
<装置コンピュータの構成>
図2を用いて、装置コンピュータ3の構成を説明する。図2は、装置コンピュータ3の構成を示す図である。装置コンピュータ3は、CPU、ROMなどの記憶装置、各種インタフェース、ディスプレイ等を備えるコンピュータシステムである。装置コンピュータ3は、記憶部31と、制御部32と、を有する。
【0016】
記憶部31は、装置コンピュータ3を構成する記憶装置に設けられた記憶領域の一部又は全部である。記憶部31は、真空ポンプシステム100に関する各種データ、各種プログラム等を記憶する。具体的には、記憶部31は、第1通信用プログラムP1と、第2通信用プログラムP2と、ポンプ関連データD1と、バルブ関連データD2と、を記憶する。
【0017】
第1通信用プログラムP1は、第1プロトコルを用いて外部の装置等と通信を行うためのプログラムである。第2通信用プログラムP2は、第2プロトコルを用いて外部の装置等と通信を行うためのプログラムである。第2プロトコルは、第1プロトコルとは異なる通信用プロトコルであり、第1プロトコルとは互換性がない。ここで、「互換性がない」とは、第1プロトコルと第2プロトコルの基本構成(例えば、通信仕様等)が異なっていることを意味する。すなわち、第1プロトコルを用いる装置は、第2プロトコルを用いる装置とは通信できないことを意味する。
【0018】
制御部32は、装置コンピュータ3を構成するCPUと各種インタフェース等により構成されるハードウェア部分であり、真空ポンプシステム100における各種情報処理を実行する。
【0019】
制御部32は、バルブ制御装置21と接続されている。制御部32は、第1通信用プログラムP1を実行することで、第1プロトコルを用いてバルブ制御装置21と通信可能である。また、制御部32は、第2通信用プログラムP2を実行することで、第2プロトコルを用いてバルブ制御装置21と通信可能である。すなわち、制御部32は、第1プロトコル又は第2プロトコルのいずれかを用いて、バルブ制御装置21と通信可能である。
【0020】
なお、ポンプ制御装置11とバルブ制御装置21とが通信しない場合などの通常時において、制御部32は、第1プロトコルを用いてバルブ制御装置21と通信可能となっている。これにより、制御部32は、通常時においては、装置コンピュータ3と接続された他の装置(例えば、他のコンピュータなど)と通信可能となる。
【0021】
バルブ制御装置21と通信可能であることにより、制御部32は、バルブ制御装置21からバルブ関連データD2を収集して、記憶部31に記憶できる。また、バルブ制御装置21に記憶されているポンプ関連データD1を収集して記憶できる。このようにして、装置コンピュータ3は、真空ポンプシステム100にて取得される各種データをロギングできる。
【0022】
<ポンプ制御装置の構成>
図3を用いて、ポンプ制御装置11の構成を説明する。図3は、ポンプ制御装置11の構成を示す図である。ポンプ制御装置11は、CPU、ROMなどの記憶装置、各種インタフェース等を備えるコンピュータシステムである。ポンプ制御装置11は、記憶部111と、制御部112と、を有する。
【0023】
記憶部111は、ポンプ制御装置11を構成する記憶装置に設けられた記憶領域の一部又は全部である。記憶部111は、真空ポンプ1に関する各種データ、真空ポンプ1の制御に関する各種プログラム等を記憶する。具体的には、記憶部31は、第3通信用プログラムP3と、ポンプ関連データD1と、を記憶する。
【0024】
第3通信用プログラムP3は、第3プロトコルを用いて外部の装置等と通信を行うためのプログラムである。第3プロトコルは、上記の第1プロトコルとは互換性を有さないが、第2プロトコルとは互換性を有する。ここで、「互換性がある」とは、第2プロトコルと第3プロトコルの基本構成(例えば、通信仕様、パケットの基本構造、通信を実現するための必要最低限のパラメータ等)は共通しているが、通信で用いられるパラメータ等が一部異なることを意味する。これにより、第2プロトコルを用いる装置は、第3プロトコルを用いる装置と通信可能となる。
【0025】
装置コンピュータ3とは異なり、ポンプ制御装置11は、第3通信用プログラムP3のみを有する。これは、ポンプ制御装置11が他のポンプ制御装置などとの通信を前提に設計されており、ポンプ制御装置11の通信プロトコルが、第3プロトコルに固定されていることを意味している。つまり、ポンプ制御装置11の通信プロトコルは、変更できない。
【0026】
ポンプ関連データD1は、真空ポンプ1の状態等を表すデータである。ポンプ関連データD1は、例えば、真空ポンプ1のロータの回転速度、ロータを回転するモータに供給される電流値、真空ポンプ1の温度、ロータの位置変動値、などを含む。その他、ポンプ関連データD1は、真空ポンプ1で発生したアラームに関する情報を含んでいてもよい。このようなポンプ関連データD1により、例えば、真空ポンプ1の内部における生成物付着状況等を監視できる。
【0027】
制御部112は、ポンプ制御装置11を構成するCPUと各種インタフェース等により構成されるハードウェア部分であり、真空ポンプ1に関する各種情報処理を実行する。具体的には、制御部112は、真空ポンプ1の制御を実行する。また、制御部112は、真空ポンプ1に設けられた各種センサの測定値を、上記のポンプ関連データD1として取得し、記憶部111に記憶する。
【0028】
制御部112は、第3通信用プログラムP3を実行することで、第3プロトコルを用いて他の装置と通信可能となっている。例えば、制御部112は、他の真空ポンプのポンプ制御装置、複数の真空ポンプを管理するサーバ等と通信可能となっている。
【0029】
上記のように、第2プロトコルを用いる装置は、第3プロトコルを用いる装置と通信可能となる。従って、制御部112は、第3通信用プログラムP3を実行することで、第2プロトコルを用いるバルブ制御装置21と通信可能である。これにより、制御部112は、記憶部111に記憶されたポンプ関連データD1を、バルブ制御装置21に送信できる。
【0030】
<バルブ制御装置の構成>
図4を用いて、バルブ制御装置21の構成を説明する。図4は、バルブ制御装置21の構成を示す図である。バルブ制御装置21は、CPU、ROMなどの記憶装置、各種インタフェース等を備えるコンピュータシステムである。バルブ制御装置21は、記憶部211と、制御部212と、を有する。
【0031】
記憶部211は、バルブ制御装置21を構成する記憶装置に設けられた記憶領域の一部又は全部である。記憶部211は、バルブ2に関する各種データ、バルブ2の制御に関する各種プログラム等を記憶する。具体的には、記憶部211は、第1通信用プログラムP1と、第2通信用プログラムP2と、ポンプ関連データD1と、バルブ関連データD2と、を記憶する。
【0032】
なお、記憶部211に記憶される第1通信用プログラムP1、第2通信用プログラムP2と、装置コンピュータ3の記憶部31に記憶される第1通信用プログラムP1、第2通信用プログラムP2と、は同じ参照符号を用いているが、これは、これらプログラムが同機能を有していることを意味しているにすぎない。記憶部211に記憶される第1通信用プログラムP1、第2通信用プログラムP2と、装置コンピュータ3の記憶部31に記憶される第1通信用プログラムP1、第2通信用プログラムP2と、は、ハードウェア構成、オペレーティングシステム等が装置コンピュータ3とバルブ制御装置21とで異なっている場合には、異なるプログラムとなる。
【0033】
バルブ関連データD2は、例えば、排気対象装置CHの内部の圧力、排気対象装置CHの内部の目標圧力、バルブ2の弁の開度、真空ポンプ1により排気対象装置の内部を真空引きするときの推定流量、などを含む。これら情報は、排気対象装置CHの内部で実行されるプロセスに関連した情報である。よって、このようなバルブ関連データD2により、例えば、排気対象装置CHの内部で実行されるプロセスの状況等を監視できる。
【0034】
制御部212は、バルブ制御装置21を構成するCPUと各種インタフェース等により構成されるハードウェア部分であり、バルブ2に関する各種情報処理を実行する。具体的には、制御部212は、バルブ2の制御を実行する。例えば、制御部212は、排気対象装置CHの内部の圧力を設定圧力にするよう、バルブ2の弁の開度を制御する。また、制御部212は、バルブ2に設けられた各種センサの測定値、真空計4にて測定された圧力などを、バルブ関連データD2として取得し、記憶部111に記憶する。
【0035】
制御部212は、装置コンピュータ3と接続され、第1通信用プログラムP1を実行することで、第1プロトコルを用いて装置コンピュータ3と通信可能となっている。また、制御部212は、ポンプ制御装置11と接続され、第2通信用プログラムP2を実行することで、ポンプ制御装置11と通信可能となっている。また、第2通信用プログラムP2を実行している場合、制御部212は、装置コンピュータ3と通信可能である。
【0036】
すなわち、制御部212は、第1プロトコルを用いて通信する場合には装置コンピュータ3とのみ通信可能となっており、第2プロトコルを用いて通信する場合には装置コンピュータ3とポンプ制御装置11の両方と通信可能となる。
【0037】
これにより、制御部212は、第2プロトコルを用いて、ポンプ制御装置11の記憶部111に記憶されているポンプ関連データD1を受信し、バルブ制御装置21の記憶部211に記憶できる。また、制御部212は、ポンプ制御装置11から受信したポンプ関連データD1と、記憶部211に記憶されたバルブ関連データD2と、をロギングデータとして装置コンピュータ3に送信できる。
【0038】
<真空ポンプシステムの動作>
<バルブ制御装置とポンプ制御装置とが通信する場合の動作>
以下、上記の構成を有する真空ポンプシステム100の動作を説明する。まず、図5を用いて、バルブ制御装置21とポンプ制御装置11との間で通信をする場合の動作を説明する。図5は、バルブ制御装置21とポンプ制御装置11との間で通信をする場合の動作を示す処理シーケンス図である。図5の処理シーケンス図に示す動作は、例えば、バルブ制御装置21が、バルブ関連データD2を取得したときに、当該バルブ関連データD2を取得したタイミングにおけるポンプ関連データD1をポンプ制御装置11から取得する場合に実行される。すなわち、バルブ関連データD2の取得タイミングと、ポンプ関連データD1の取得タイミングが実質的に同じである。これにより、ポンプ関連データD1とバルブ関連データD2とが互いに対応したデータとなるので、より正確なデータをロギングできる。
【0039】
また、以下に説明する動作前において、装置コンピュータ3とバルブ制御装置21とが第1プロトコルを用いて通信可能となっているとする。なお、以下に説明する動作前において、装置コンピュータ3とバルブ制御装置21とが第2プロトコルを用いて通信可能となっている場合には、図5に示す動作のうち、後述するステップS11~S14は不要となる。
【0040】
バルブ制御装置21においてバルブ関連データD2を取得するとともに、同じタイミングのポンプ関連データD1をポンプ制御装置11から取得する場合に、バルブ制御装置21の制御部212は、装置コンピュータ3の制御部32に対してクライアント動作要求を送信する(ステップS11)。クライアント動作要求は、この要求を受信した装置に対して、サーバ-クライアントシステムにおけるクライアントとして動作するよう指令するものである。例えば、この要求を受信した装置は、サーバとして動作する装置からデータ等を能動的に取得しなくなる。
【0041】
クライアント動作要求を受信した制御部32は、バルブ制御装置21の制御部212に対してサーバ動作要求を送信する(ステップS12)。サーバ動作要求は、この要求を受信した装置に対して、サーバ-クライアントシステムにおけるサーバとして動作するよう指令するものである。例えば、この要求を受信した装置は、他の装置からデータ等を能動的に取得する。
【0042】
クライアント動作要求を受信後にサーバ動作要求を送信した装置コンピュータ3の制御部32は、通信に用いるプロトコルを、第1プロトコルから第2プロトコルに変更する(ステップS13)。具体的には、装置コンピュータ3の記憶部31に記憶された第2通信用プログラムP2を実行することで、制御部32は、第2プロトコルを用いて他の装置(バルブ制御装置21)と通信可能となる。
【0043】
クライアント動作要求を送信後にサーバ動作要求を受信したバルブ制御装置21の制御部212は、通信に用いるプロトコルを、第1プロトコルから第2プロトコルに変更する(ステップS14)。具体的には、バルブ制御装置21の記憶部211に記憶された第2通信用プログラムP2を実行することで、制御部32は、第2プロトコルを用いて他の装置と通信可能となる。
【0044】
上記のステップS11~S14を実行することで、バルブ制御装置21をサーバとし、装置コンピュータ3及びポンプ制御装置11をクライアントとしたクライアント-サーバシステムが形成され、このクライアント-サーバシステムにおいて、第2プロトコルを用いて通信が可能となる。
【0045】
上記のステップS11~S14を実行後、バルブ制御装置21の制御部212は、バルブ関連データD2を取得し、記憶部211に記憶する。バルブ関連データD2の取得時に、制御部212は、ポンプ制御装置11に対して、ポンプ関連データD1の送信要求を送信する(ステップS15)。
【0046】
上記の送信要求を受信したポンプ制御装置11の制御部112は、送信要求を受信したときに取得したポンプ関連データD1を、バルブ制御装置21の制御部212に送信する(ステップS16)。制御部212は、受信したポンプ関連データD1を、当該ポンプ関連データD1と同じタイミングで取得されたバルブ関連データD2に関連付けて、記憶部211に記憶する。
【0047】
その後、装置コンピュータ3の制御部32は、第2プロトコルを用いて、バルブ制御装置21に対して、ポンプ関連データD1とバルブ関連データD2のデータ送信要求を送信する(ステップS17)。
【0048】
上記のデータ送信要求を受信したバルブ制御装置21の制御部212は、第2プロトコルを用いて、記憶部211に記憶されたポンプ関連データD1と、当該ポンプ関連データD1に関連付けられたバルブ関連データD2と、を装置コンピュータ3に送信する(ステップS18)。ポンプ関連データD1とバルブ関連データD2とを受信した制御部32は、これらデータを、記憶部31に記憶する。
【0049】
<通常状態への復帰動作>
上記のとおり、ポンプ制御装置11とバルブ制御装置21とが通信しないなどの通常時においては、装置コンピュータ3とバルブ制御装置21は、第1プロトコルを用いて互いに通信する。以下、図6を用いて、バルブ制御装置21と装置コンピュータ3との間で第1プロトコルを用いて互いに通信をする通常状態への復帰動作を説明する。図6は、通常状態への復帰動作を示す処理シーケンス図である。図6の処理シーケンス図に示す動作は、例えば、バルブ制御装置21がポンプ制御装置11からポンプ関連データD1を取得し、装置コンピュータ3が、バルブ制御装置21に記憶された、ポンプ関連データD1とバルブ関連データD2とを取得した後に実行される。すなわち、装置コンピュータ3とバルブ制御装置21とが第2プロトコルを用いて互いに通信していた後に実行される。
【0050】
復帰動作が開始されると、バルブ制御装置21の制御部212は、装置コンピュータ3の制御部32に対してサーバ動作要求を送信する(ステップS21)。
【0051】
サーバ動作要求を受信した制御部32は、バルブ制御装置21の制御部212に対してクライアント動作要求を送信する(ステップS22)。
【0052】
サーバ動作要求を受信後にクライアント動作要求を送信した装置コンピュータ3の制御部32は、通信に用いるプロトコルを、第2プロトコルから第1プロトコルに変更する(ステップS23)。具体的には、装置コンピュータ3の記憶部31に記憶された第1通信用プログラムP1を実行することで、制御部32は、第1プロトコルを用いて他の装置(バルブ制御装置21)と通信可能となる。
【0053】
サーバ動作要求を送信後にクライアント動作要求を受信したバルブ制御装置21の制御部212は、通信に用いるプロトコルを、第2プロトコルから第1プロトコルに変更する(ステップS24)。具体的には、バルブ制御装置21の記憶部211に記憶された第1通信用プログラムP1を実行することで、制御部32は、第1プロトコルを用いて他の装置と通信可能となる。
【0054】
上記のステップS21~S24を実行することで、装置コンピュータ3をサーバとし、バルブ制御装置21をクライアントとしたクライアント-サーバシステムが形成され、このクライアント-サーバシステムにおいて、第1プロトコルを用いて通信が可能となる。また、第1プロトコルを用いて通信可能となることで、装置コンピュータ3は、装置コンピュータ3と接続された他の装置(例えば、他のコンピュータなど)と通信可能となる。例えば、装置コンピュータ3は、ポンプ制御装置11及びバルブ制御装置21から取得され、記憶部31に記憶されたポンプ関連データD1とバルブ関連データD2とを、第1プロトコルを用いて、他の装置に送信できる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
真空ポンプシステム100は、他の真空ポンプシステムと接続されていてもよい。この場合、真空ポンプシステム100のバルブ2は、他の真空ポンプシステムのバルブと接続されて、1つのネットワークを構成する。また、真空ポンプシステム100の真空ポンプ1は、他の真空ポンプシステムの真空ポンプと接続されて、複数のバルブにて構成されるネットワークとは独立した他のネットワークを構成する。
【0057】
真空ポンプ1は、他の真空ポンプ以外の、第3プロトコルを用いて通信可能な他の装置と接続されていてもよい。
【0058】
上記の装置コンピュータ3と、ポンプ制御装置11と、バルブ制御装置21の動作は、一般的なクライアント-サーバシステムにも適用できる。例えば、装置コンピュータ3を、1つのクライアント-サーバシステムのサーバとし、バルブ制御装置21を、当該クライアント-サーバシステムのクライアントとし、ポンプ制御装置11を、別のクライアント-サーバシステムのクライアントとすることもできる。
【0059】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0060】
(第1態様)第1態様に係る真空ポンプシステムは、真空ポンプと、バルブと、装置コンピュータと、を備える。真空ポンプは、排気対象装置を真空引きする。バルブは、排気対象装置と真空ポンプの間に配置され、弁の開度を制御することで排気対象装置の内部の圧力を制御する。装置コンピュータは、バルブに接続される。この真空ポンプシステムにおいて、バルブは、バルブ制御装置を有する。バルブ制御装置は、第1プロトコル又は第1プロトコルとは異なる第2プロトコルのいずれかを用いて、装置コンピュータと通信可能となっている。真空ポンプは、ポンプ制御装置を有する。ポンプ制御装置は、バルブ制御装置に接続され、第2プロトコルと互換性を有する第3プロトコルを用いて他の装置と通信可能となっている。この真空ポンプシステムにおいて、バルブ制御装置とポンプ制御装置との間で通信を行う場合、バルブ制御装置は、通信に用いるプロトコルを第2プロトコルとし、第2プロトコルを用いて装置コンピュータ及びポンプ制御装置と通信を行う。
【0061】
第1態様に係る真空ポンプシステムでは、バルブ制御装置とポンプ制御装置との間で通信を行う場合に、バルブ制御装置が通信で用いるプロトコルを第2プロトコルとしている。これにより、装置コンピュータ、バルブ制御装置、及び、ポンプ制御装置が、共通の第2プロトコルにより互いに通信可能となる。この結果、装置コンピュータ、バルブ制御装置、プロトコルの変更ができないポンプ制御装置との間で、互いにデータの送受信が可能となる。
【0062】
(第2態様)第1態様の真空ポンプシステムにおいて、ポンプ制御装置は、真空ポンプに関するデータを記憶してもよい。この場合、バルブ制御装置は、第2プロトコルを用いてポンプ制御装置から真空ポンプに関するデータを受信してもよい。第2態様に係る真空ポンプシステムでは、プロトコルの変更ができないポンプ制御装置に記憶された真空ポンプに関するデータを、バルブ制御装置にて取得できる。
【0063】
(第3態様)第2態様の真空ポンプシステムにおいて、バルブ制御装置は、ポンプ制御装置から受信した真空ポンプに関するデータを、第2プロトコルを用いて装置コンピュータに送信してもよい。第3態様に係る真空ポンプシステムでは、バルブ制御装置とは直接通信できない装置コンピュータに、バルブ制御装置に記憶されたバルブに関するデータを送信できる。
【0064】
(第4態様)第2態様又は第3態様の真空ポンプにおいて、真空ポンプに関するデータは、真空ポンプのロータの回転速度と、ロータを回転するモータに供給された電流値と、を含んでもよい。第4態様に係る真空ポンプシステムでは、真空ポンプの運転状態に関する情報を、真空ポンプに関するデータとして取得できる。
【0065】
(第5態様)第2態様~第4態様の真空ポンプシステムにおいて、バルブ制御装置は、バルブに関するデータを記憶してもよい。この場合、バルブ制御装置は、ポンプ制御装置から受信した真空ポンプに関するデータと、バルブに関するデータとを、第2プロトコルを用いて装置コンピュータに送信してもよい。第5態様に係る真空ポンプシステムでは、真空ポンプに関するデータと、これに対応するバルブに関するデータと、をともに装置コンピュータにロギングできる。
【0066】
(第6態様)第1態様~第5態様の真空ポンプシステムにおいて、装置コンピュータは、第2プロトコルを用いて通信を行った後に、第1プロトコルを用いて通信可能となってもよい。第6態様に係る真空ポンプシステムでは、装置コンピュータが、第2プロトコルを用いてバルブ制御装置及びポンプ制御装置のデータを取得後に、第1プロトコルを用いて装置コンピュータに接続された他の装置と通信可能となる。
【0067】
(第7態様)第5態様の真空ポンプシステムにおいて、バルブに関するデータは、排気対象装置の内部の圧力と、排気対象装置の内部の目標圧力と、弁の開度と、真空ポンプにより排気対象装置の内部を真空引きするときの推定流量と、を含んでもよい。第7態様に係る真空ポンプシステムでは、排気対象装置の内部で実行されるプロセスに関連した情報を、バルブに関するデータとして取得できる。
【符号の説明】
【0068】
100 :真空ポンプシステム
CH :排気対象装置
1 :真空ポンプ
2 :バルブ
3 :装置コンピュータ
31 :記憶部
32 :制御部
4 :真空計
11 :ポンプ制御装置
111 :記憶部
112 :制御部
21 :バルブ制御装置
211 :記憶部
212 :制御部
D1 :ポンプ関連データ
D2 :バルブ関連データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6