(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018566
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240201BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240201BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20240201BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240201BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240201BHJP
D04C 1/02 20060101ALI20240201BHJP
D04C 1/06 20060101ALI20240201BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20240201BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240201BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240201BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240201BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08J5/04
B32B15/08 105
B32B15/08 J
B32B15/20
D03D1/00 A
D03D15/283
D04C1/02
D04C1/06 Z
D06M10/02 C
C08L101/00
C08K7/02
H05K1/03 610T
D02G3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121983
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512118370
【氏名又は名称】株式会社電子技研
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】宮木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】楯 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】谷本 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 直人
(72)【発明者】
【氏名】古川 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】小泉 剛
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4L031
4L036
4L046
4L048
【Fターム(参考)】
4F072AA04
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4L031AA18
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4L046AA24
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4L048AA24
4L048CA00
4L048DA43
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れた構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】構造体100は、繊維基材35と、繊維基材35に含浸した樹脂マトリクス30と、を備える。繊維基材35の繊維は、有機材料のコアと、コアの表面の少なくとも一部を覆う、有機材料の改質層と、を有し、以下の(a)又は(b)のいずれかを満たす。
(a)前記改質層の官能基と、前記樹脂マトリクスの官能基との間に分子間引力が働いている。
(b)前記改質層と、前記樹脂マトリクスとが、分子鎖により結合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材と、前記繊維基材に含浸した樹脂マトリクスと、を備える構造体であって、
前記繊維基材の繊維は、有機材料のコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を覆う、前記有機材料の改質層と、を有し、以下の(a)及び/又は(b)を満たす、構造体。
(a)前記改質層の官能基と、前記樹脂マトリクスの官能基との間に分子間引力が働いている。
(b)前記改質層と、前記樹脂マトリクスとが、分子鎖により結合されている。
【請求項2】
(a)を満たし、かつ、
(a1)前記改質層は、前記コアが有する官能基とは異なる官能基を有し、及び/又は、
(a2)前記改質層及び前記コアは、それぞれ互いに同一の複数種の官能基の組み合わせを有し、前記改質層における前記複数種の官能基の比率と、前記コアにおける複数種の官能基の比率とが互いに異なる、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
(a1)を満たし、
前記改質層における前記コアが有する官能基とは異なる官能基が、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OH(ただし、R2は独立に水素原子または炭化水素基)、-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基、xは1~3の整数)、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群Aから選択される少なくとも一つを有する請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
(a1)を満たし、
前記改質層における前記コアが有する官能基とは異なる官能基が、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群から選択される少なくとも一つを有する請求項2に記載の構造体。
【請求項5】
(a2)を満たし、
XPSのC1S測定において、前記改質層における、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRM1とし、前記コアにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRC1とした時に、RM1>RC1を満たす、及び/又は、
XPSのO1S測定において、前記改質層における、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積と、C-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRM2とし、前記コアにおける、C-OH結合またはC=O結合とC-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRC2とした時に、RM2>RC2とを満たす、請求項2に記載の構造体。
【請求項6】
(b)を満たし、かつ、
前記改質層と、前記樹脂マトリクスとが、以下のいずれかの分子鎖により結合されている、で共有結合されている、請求項1に記載の構造体。
(1)-NHzR4
1-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖
(2)-C(=O)O-の構造を有する分子鎖
(3)-CH(OH)-CH2-O-の構造を有する分子鎖
(4)>C=N-の構造を有する分子鎖
【請求項7】
前記繊維の有機材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル(LCP)、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項8】
前記樹脂マトリクスの樹脂は、熱可塑性樹脂、又は、熱硬化性樹脂である、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水マレイン酸基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基、及び、3重結合を含む官能基からなる群から選択される少なくとも1つである熱硬化材料を含む、請求項8に記載の構造体。
【請求項10】
前記樹脂マトリクスを構成する樹脂の10GHzでの比誘電率Dkが4以下であり、10GHzでの誘電正接Dfが0.01未満である、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項11】
前記繊維基材は、クロス、不織布、又は、網である、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の構造体を含む配線基板。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の構造体と、前記構造体の少なくとも一方の面に設けられた銅箔と、を備える銅張積層板。
【請求項14】
有機材料の繊維を減圧プラズマに曝して、前記有機材料のコアと、前記コアの周囲に設けられた前記有機材料の表面改質層とを有する繊維基材を得る工程と、
前記繊維基材に樹脂を含浸させる工程と、を備える、構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材と、繊維基材に含浸した樹脂マトリクス、とを備える構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント配線板に使用される銅貼積層板として、ガラスクロスを基材とするプリプレグを用いて製造されるガラスクロスエポキシ樹脂積層板が多く用いられている。近年、基板の軽量化や高速化、高周波信号向けに対応する低誘電化、レーザー加工性の改良の点から有機繊維を基材とするプリプレグ及び銅貼積層板が開発されている。有機繊維として、全芳香族ポリアミドがよく知られているが、プリント配線板に用いる場合、吸水性により耐熱性の低下や誘電特性悪化が生じるために信頼性の点で不十分であった。そこで、高い吸水率から生じる課題を解決するために、全芳香族ポリエステル繊維からなるプリプレグや銅貼積層板が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
全芳香族ポリエステル繊維からなる基材として不織布がある。通常の製法により得られる不織布の場合、バインダーの使用や水中での製造のため水分による特に半田耐熱性等信頼性の低下の恐れが生じる。この点から、特許文献2では、メルトブロー法により形成された全芳香族液晶ポリエステルからなる不織布を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-316218号公報
【特許文献2】特開2007-169422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構造体では、必ずしも耐熱性が十分でなかった。例えば、構造体が高温・高湿環境に曝されると、繊維基材と樹脂マトリクスとが剥離するなどの不具合が生じる場合があった。特に、有機繊維基材を用いたプリプレグ等の耐熱信頼性の確保には水分の抑制に加えて、基材に含侵する樹脂と基材(繊維表面)の親和性や密着性の担保も必要となっている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れた構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]繊維基材と、前記繊維基材に含浸した樹脂マトリクスと、を備える構造体であって、
前記繊維基材の繊維は、有機材料のコアと、前記コアの表面の少なくとも一部を覆う、前記有機材料の改質層と、を有し、以下の(a)及び/又は(b)を満たす、構造体。
(a)前記改質層の官能基と、前記樹脂マトリクスの官能基との間に分子間引力が働いている。
(b)前記改質層と、前記樹脂マトリクスとが、分子鎖により結合されている。
【0008】
[2] (a)を満たし、かつ、
(a1)前記改質層は、前記コアが有する官能基とは異なる官能基を有し、及び/又は、
(a2)前記改質層及び前記コアは、それぞれ互いに同一の複数種の官能基の組み合わせを有し、前記改質層における前記複数種の官能基の比率と、前記コアにおける複数種の官能基の比率とが互いに異なる、[1]に記載の構造体。
【0009】
[3] (a1)を満たし、
前記改質層における前記コアが有する官能基とは異なる官能基が、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OH(ただし、R2は独立に水素原子または炭化水素基)、-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基、xは1~3の整数)、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群Aから選択される少なくとも一つを有する、[2]に記載の構造体。
【0010】
[4] (a1)を満たし、
前記改質層における前記コアが有する官能基とは異なる表面官能基が、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群から選択される少なくとも一つを有する[2]に記載の構造体。
【0011】
[6] (a2)を満たし、
XPSのC1S測定において、前記改質層における、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRM1とし、前記コアにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRC1とした時に、RM1>RC1を満たす、及び/又は、XPSのO1S測定において、前記改質層における、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積と、C-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRM2とし、前記コアにおける、C-OH結合またはC=O結合とC-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRC2とした時に、RM2>RC2を満たす、[4]に記載の構造体。
【0012】
[7](b)を満たし、かつ、
前記改質層と、前記樹脂マトリクスとが、-NHzR4
3-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖で共有結合されている、[1]に記載の構造体。
【0013】
[7] 前記繊維の有機材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル(LCP)、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)樹脂、超高分子量ポリエチレン、テトラフルオロエチレン及び、ポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の構造体。
【0014】
[8] 前記樹脂マトリクスの樹脂は、熱可塑性樹脂、又は、熱硬化性樹脂である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の構造体。
【0015】
[9] 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水マレイン酸基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基、及び、3重結合を含む官能基からなる群から選択される少なくとも1つである熱硬化材料を含む、[8]に記載の構造体。
【0016】
[10]前記樹脂マトリクスを構成する樹脂の10GHzでの比誘電率Dkが4以下であり、10GHzでの誘電正接Dfが0.01未満である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の構造体。
【0017】
[11]前記繊維基材は、クロス、不織布、又は、網である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の構造体。
【0018】
[12][1]~[11]のいずれか一項に記載の構造体を含む配線基板。
【0019】
[13][1]~[11]のいずれか一項に記載の構造体と、前記構造体の少なくとも一方の面に設けられた銅箔と、を備える銅張積層板。
【0020】
[12] 有機材料の繊維を減圧プラズマに曝して、前記有機材料のコアと、前記コアの周囲に設けられた前記有機材料の表面改質層とを有する繊維基材を得る工程と、
前記繊維基材に樹脂を含浸させる工程と、を備える、構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐熱性に優れた構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1の(a)は発明の一実施形態にかかる繊維基材35(35C)及び樹脂マトリクス30を備える構造体100の断面模式図、
図1の(b)は
図1の(a)の繊維基材35のヤーン35Yの断面模式図、
図1の(c)は
図1の(b)の単繊維40の断面模式図である。
【
図2】
図2は他の実施形態に係る繊維基材35(35W)の断面模式図である。
【
図3】
図3は、発明の一実施形態にかかる銅張積層板200の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例で半田耐熱性評価用に形成した銅張積層板の模式図である。
【
図5】
図5の上段左は低誘電組成物1の硬化物のワイドXPS解析結果を、
図5の上段右は低誘電組成物1の硬化物のC1sXPS解析結果を、
図5の中段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のワイドXPS解析結果を、
図5の中段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のC1sXPSの結果を、
図5の下段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのワイドXPSの結果を、
図5の下段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのC1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【
図6】
図6の上段左は低誘電組成物1の硬化物のO1sXPS解析結果を、
図6の上段右は低誘電組成物1の硬化物のN1sXPS解析結果を、
図6の中段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のO1sXPS解析結果を、
図6の中段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のN1sのXPSの結果を、
図6の下段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのO1sXPSの結果を、
図6の下段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのN1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【
図7】
図7の上段左は低誘電組成物1の硬化物のワイドXPS解析結果を、
図7の上段右は低誘電組成物1の硬化物のC1sXPS解析結果を、
図7の中段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のワイドXPS解析結果を、
図7の中段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のC1sXPSの結果を、
図7の下段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのワイドXPSの結果を、
図7の下段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのC1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【
図8】
図8の上段左は低誘電組成物1の硬化物のO1sXPS解析結果を、
図8の上段右は低誘電組成物1の硬化物のN1sXPS解析結果を、
図8の中段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のO1sXPS解析結果を、
図8の中段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のN1sのXPSの結果を、
図8の下段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのO1sXPSの結果を、
図8の下段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのN1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
(構造体:態様A:相互作用)
本発明の第1実施形態にかかる構造体100は、繊維基材35と、繊維基材35に含浸した樹脂マトリクス30と、を備える。
【0025】
(繊維基材35)
繊維基材35の例は、
図1(a)に示すようなクロス35Cである。クロス35Cは、多数のヤーン35Yの集合体であり、例えばヤーン35Yの織物であってもよく、ヤーン35Yの編物であってもよい。
図1の(b)に示すように、ヤーン35Yは、多数の単繊維(モノフィラメント)40の集合体である。単繊維40の径は0.5~100μmであってよい。また、1つのヤーン35Yを構成する単繊維40の数は、10~200本であってよい。
【0026】
また、繊維基材35の他の例は、
図2に示すように、不織布35Wである。不織布35Wでは、単繊維40同士が、絡み合ったり、接着されたり、熱融着されたりすることにより、多数の単繊維40が編み目構造を形成している。不織布35Wの単繊維の径は、クロスで例示したものと同様にすることができる。
また、繊維基材35のさらに他の例は網である。網とは、モノフィラメント(単繊維)を編み込んだ構造体である。単繊維の径は、10~100μmであってよい。
【0027】
図1の(b)に示すように、繊維基材35の単繊維40は、有機材料のコア40FBと、コア40FBの表面の少なくとも一部を覆うように設けられた、当該有機材料の改質層40FAと、を有する。
【0028】
(コア)
コア40FBの有機材料に特に限定はなく、高分子材料であってもよく、炭素材料であってもよい。
【0029】
繊維の有機材料の例は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリエチレンナフタレートなど)、液晶ポリエステル(LCP)、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、超高分子量ポリエチレン及び、ポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される少なくとも1つの高分子材料である。他の高分子材料の例は、アラミド(芳香族ポリアミド)、フッ素樹脂である。
【0030】
液晶ポリマーの例は、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体であり、以下の式で表されることができる。
【化1】
【0031】
液晶ポリマー他の例は、フェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体であり、以下の式で表されることができる。
【化2】
【0032】
液晶ポリマーのさらに他の例は、2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体であり、以下の式で表されることができる。
【化3】
【0033】
液晶ポリマーは、ベンゼン環構造、カルボニル基>C=O、エーテル結合-C=O-C-、及び、炭化水素基を有することができる。
【0034】
コア40FBの径に特に限定はないが、0.5~100μmであってよく、好ましくは、5~50μmであってよい。
【0035】
(改質層)
改質層40FAは、コア40FBの有機材料をプラズマ処理により改質したものである。
【0036】
要件(a)
本実施形態では、改質層40FAの官能基と、樹脂マトリクス30の官能基との間に分子間引力が働いている。
【0037】
改質層40FAの官能基と、樹脂マトリクス30の官能基との間に働く分子間引力の例は、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用である。官能基間このような分子間引力が働いていることは、官能基の種類・組み合わせにより推測することができる。また、水素結合であればIR、NMR等で確認できる。
【0038】
要件(a1)
改質層40FAは、コア40FBが有する官能基とは異なる官能基を有することが好適である。
【0039】
この場合の改質層40FAの官能基は、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OH(ただし、R2は独立に水素原子または炭化水素基)、-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基、xは1~3の整数)、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群Aから選択される少なくとも一つであることが好適である。
R2,R3、R4の炭化水素基の炭素数は、1~30であってよく、20以下でもよく、15以下でもよく、12以下でもよい。
R2,R3、R4の炭化水素基の例は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、アルキル置換アリール基である。
アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などである。
アリール基の例は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などである。
アルケニル基の例は、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などである。
アルキニル基の例は、エチニル基、プロパルギル基などである。
環状飽和炭化水素基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などである。
環状不飽和炭化水素基の例は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの環状不飽和炭化水素基である。
アルキル置換アリール基の例は、トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基である。
また、R2,R3、R4の炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよい。
そのような例は、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などである。
さらに、炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0040】
このような官能基は、特に、樹脂マトリクスの極性基(例えば、エステル結合(-C(=O)-O-)、カルボキシ基(-COOH)、複素環基、-OH(芳香族構造に結合するものを含む)、-NH2(芳香族に結合するものを含む)、アミド基(-C(=O)-N<)、エーテル結合、ケトン基(ケトン構造におけるカルボニル基)、イミド結合(-CO-NR5-CO-)、ウレア結合(-NR3-C(=O)-NR6-)、ウレタン結合(-NH-C(=O)-O-)、ニトリル結合(-CN)、イミン結合(-C(=NR7)-)といった官能基と相互作用しやすく、好適である。R5,R6,R7は、水素原子、或いは、炭化水素である。R5,R6,R7の炭化水素基の炭素数は、1~30であってよく、20以下でもよく、15以下でもよく、12以下でもよい。
【0041】
要件(a2)
また、要件(a1)に加えて、又は、要件(a1)に代えて、改質層40FAの官能基と、コア40FBの官能基との間で、官能基の比率が互いに異なることも好適である。これにより、改質層の官能基と、樹脂マトリクスの官能基との間に分子間引力を働かせやすい。すなわち、改質層40FAと、コア40FBとが、互いに同一の複数種の官能基を有しており、かつ、改質層40FAにける複数種の官能基の比率と、コア40FBにおける複数種の官能基の比率とが互いに異なることも好適である。
【0042】
具体的には、XPSのC1S測定において、改質層40FAにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRM1とし、コア40FBにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比をRC1とした時に、RM1>RC1となることが好適である。この態様は、コア部に比べて改質層の方が、C-C結合とC-H結合との合計に対するC-H結合の数が多いことを意味する。
【0043】
また、XPSのO1S測定において、改質層40FAにおける、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積と、C-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRM2とし、コア40FBにおける、C-OH結合またはC=O結合とC-N結合またはC-O-C結合のピーク面積との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRC2とした時に、RM2>RC2となることが好適である。この態様は、コア部に比べて改質層の方が、C-OH結合またはC=O結合の数と、C-N結合またはC-O-C結合の数との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合の数が多いことを意味する。
RM1>RC1かつRM2>RC2となることも好適である。
【0044】
また、この場合、改質層とコアとが、それぞれ、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OH、及び、-CR3
3-xHxをからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していることが好適である。
【0045】
改質層40FAの厚みは、0.1~50nmであってよい。
【0046】
(樹脂マトリクス)
樹脂マトリクス30の樹脂の種類に特に限定はなく、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂の硬化物であってもよく、熱硬化性樹脂の半硬化物又は未硬化物であってもよい。樹脂マトリクスが熱硬化性樹脂の半硬化物又は未硬化物である場合、構造体100は、プリプレグと呼ばれる。
【0047】
マトリックスとなる熱可塑性樹脂は、加熱によって硬化しない樹脂であればどのようなものでもよく、本発明において特に限定されない。熱可塑性樹脂の例は、例えば、ポリエチレ樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフイン系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のメタクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリ1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)樹脂等のポリエステル系樹脂;6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂等のポリアミド(PA)樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素(F)樹脂、;液晶ポリエステル樹脂等の液晶ポリマー樹脂、ポリスチレン系、ポリオレフイン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー等である。
【0048】
熱硬化性樹脂の例は、エポキシ基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、スチリル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、無水マレイン酸基、アミノ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基などの反応性基からなる群から選択される少なくとも1つのモノマー/オリゴマーを含む樹脂であってよい。
【0049】
無水マレイン酸基とは、無水マレイン酸から一つの水素を除いた基である。
【0050】
マレイミド基とは、マレイミドのNに結合した水素を除いた基である。
【0051】
熱硬化性樹脂は、エチニル/プロパルギル基などの3重結合を含む反応性基を有する樹脂の硬化物であってもよい。
【0052】
熱硬化性樹脂の例は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、であってもよく、活性エステルを用いたエポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテルなどのポリフェニレンエーテル、末端変性ポリイミド樹脂、脂肪族ビスマレイミド樹脂、芳香族マレイミド樹脂、硬化型スチレン系樹脂、などの、いわゆる低誘電組成物であることが好適である。
【0053】
樹脂マトリクスを構成する樹脂の10GHzでの比誘電率Dkが4以下であり、10GHzでの誘電正接Dfが0.01未満であることが好適である。
【0054】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の種類を問わず、樹脂マトリクスは、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OH(ただし、R2は独立に水素原子または炭化水素基)、-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基、xは1~3の整数)、-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)、及び、-NH3
+からなる群Aから選択される少なくとも一つを、好ましくは繊維基材と接触する表面に有することが好適である。炭化水素基については、改質層の項で説明しているので重複する説明は省略する。
【0055】
(作用効果)
本実施形態によれば、改質層40FAの官能基と、樹脂マトリクス30の官能基との間に分子間引力が働いている。従って、繊維基材35と樹脂マトリクス30との密着性が向上し、耐熱性に優れたものとなる。
【0056】
特に、改質層40FA及び樹脂マトリクスが、それぞれ、群Aからなる群から選択される官能基を有すると、分子間相互作用が生じやすい。
【0057】
例えば、改質部が、-NH
yR
4
2-y(ただし、R
4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)を有する場合、以下の式に示すように、樹脂マトリクスのイソシアヌル構造由来の>C=O,樹脂マトリクスのマレイミド基の>C=O、ポリフェニレンエーテルのC-O-Cと分子間引力が生じる。なお、以下では、-NH
yR
4
2-yを-NH
yと表記することがある。
【化4】
従って、改質層と樹脂マトリクスとの密着性が向上する。
【0058】
また、改質層が-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基、xは1~3の整数)を有する場合、改質層の油分/有機成分との親和性(親油性)が増加し、繊維基材と樹脂マトリクスとが接近し、疎水性相互作用に加え、官能基由来の水素結合、極性基同士の相互作用、反応等により、繊維基材と樹脂マトリクスの界面の接着強度が向上していると考えられる。
【0059】
(構造体:態様B:分子鎖による結合)
本発明の第2実施形態にかかる構造体100は、繊維基材35と、繊維基材35に含浸した樹脂マトリクス30と、を備える。
【0060】
本実施形態では、態様Aと相違している点のみ説明する。
【0061】
要件(b)
本実施形態では、改質層40FAと、樹脂マトリクス30とが、分子鎖により結合されている。分子鎖とは、C、O、N、S、P、Hなどの構成原子が共有結合により結合されたものである。
分子鎖は、共有結合以外にイオン結合を有するものでもよい。
態様Aにおいて、改質層40FAの官能基と、樹脂マトリクス30の官能基とを化学反応させることで、改質層40FAと、樹脂マトリクス30とが、分子鎖により結合された構造体が得られる。
【0062】
分子鎖による結合に好適な、官能基の組み合わせは、例えば、一方の官能基がアミノ基のような-NHyR4
2-y基(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)であり、他方の官能基がマレイミド基;ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのビニル構造を有する官能基場合である。
【0063】
この場合、改質層40FAと、樹脂マトリクス30とが、(1)-NHzR4
1-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖で共有結合されている。
【0064】
例えば、マレイミド基及びメタクリロイル基と、NHX基との関係を、下式に示す。なお、以下では、-NH
yR
4
2-yを-NH
yと表記することがある。
【化5】
【0065】
なお、別の組み合わせによっても、(1)の分子鎖が得られる。一方の官能基がエステル結合やカルボン酸基(カルボキシ基)を有し、他方の官能基がアミノ基(-NHyR4
2-y基:ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数))を有する場合、(1’)アミド化反応によるアミドの構造(アミド結合(-C(=O)-NHZR4
1-Z-)を有する分子鎖により改質層と樹脂マトリクスとが結合される。なお、(1’)の分子鎖は、(1)の分子鎖に包含される。
【0066】
他の分子鎖による結合に好適な、官能基の組み合わせの例は、マレイミド基、メタクリロイル基、アクリロイル基などの電子吸引基を有するオレフィン類やシアネート基、イソシアネート基、エステル基、カルボキシ基、酸無水物基、アルコキシシリル基(シランカップリング剤)などの任意の組み合わせである。
【0067】
例えば、一方の官能基がカルボキシル基を有し、他方の官能基が-OH基を有する場合、エステル化反応により、(2)-C(=O)O-を有する分子鎖により改質層と樹脂マトリクスとが結合されることがある。
【0068】
一方の官能基がエステル結合を有し、他方の官能基が、エステル結合、-OH基、またはカルボキシル基を有する場合に、エステル交換反応により、(2)-C(=O)O-を有する分子鎖がより改質層と樹脂マトリクスとが結合されることがある。
【0069】
一方の官能基がエポキシ基を有し、他方の官能基が-OH基を有する場合、(3)-CH(OH)-CH2-O-の構造を有する分子鎖構造を有する分子鎖により改質層と樹脂マトリクスとが結合される。
【0070】
一方の官能基がカルボニル基を有し、他方の官能基がアミノ基を有する場合、(4)>C=N-の構造を有する分子鎖により改質層と樹脂マトリクスとが結合される。
【0071】
ただし、改質層の官能基、例えば、アミノ基などの全てが樹脂マトリクスと化学反応して分子鎖を形成している必要はなく、少なくとも一部反応していればよい。
例えば、改質層が-NHzR4
1-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖で樹脂マトリクスと共有結合され、かつ、改質層に残存する-NHyR4
2-y(ただし、R4は独立に水素原子または炭化水素基、yは1又は2の整数)が樹脂マトリクスの官能基と分子間引力による相互作用をしていてもよい。
【0072】
また、本実施形態において、樹脂マトリクス30が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂は硬化後であっても、半硬化後であっても、効果前であってもよいが、熱硬化樹脂内での硬化反応と、改質層と樹脂マトリクスとの架橋反応とを同時に促進できることから、樹脂マトリクスは硬化済みであってよい。
【0073】
(作用効果)
本実施形態では、改質層40FAと、樹脂マトリクス30とが、分子鎖により結合されているので、密着性が向上する。
【0074】
(構造体の製造方法)
(繊維基材における改質層の付与方法)
コア40FB及び改質層40FAを有する繊維基材35は、有機材料の繊維に対してプラズマ処理をすることにより得られる。プラズマは高周波プラズマであることが好適である。周波数の例は、1~20MHzであり、特に10~15MHzが好適である。
【0075】
プラズマの出力は、1W以上であってよい。処理時間に特に限定はなく、1秒以上とすることすることができる。
【0076】
プラズマの雰囲気は、改質層40FAに与える官能基に応じて適宜選択できる。
【0077】
例えば、改質層40FAにアミノ基などの-NHyR4
2-yを付与したい場合には、アンモニア雰囲気とすることが好適である。
【0078】
また、改質層40FAの-CR3
3-xHx(ただし、R3は独立に炭化水素基)を増やしたい場合には、水素雰囲気とすることができ、これにより、C-C結合を分解して、C-H基を付与することができる。
【0079】
圧力は大気圧以下、すなわち、低圧プラズマであることが好ましく、例えば、1Pa~10000Paとすることができる。
【0080】
なお、分圧や全圧の調整のために、Ar,N2などの不活性ガスを導入してもよい。
【0081】
(構造体の製造方法)
次に、繊維基材の含浸用の液体組成物を用意する。
例えば、樹脂が熱硬化性樹脂の場合、液体組成物は、未硬化のワニスであることができる。ワニスは、モノマー、架橋剤、開始剤、溶媒、フィラーなどを含むことができる。
【0082】
樹脂が熱可塑性樹脂の場合、溶媒に溶解/分散させることにより液状化したワニスでもよく、加熱により液状化した液体組成物でもよい。
【0083】
次に、繊維基材に液体組成物を含浸させる。熱硬化性樹脂の場合、溶媒の乾燥、あるいは、低温加熱により、未硬化のプリプレグとしての構造体を形成できる。
【0084】
構造体は、その高い耐熱性を利用して、下記に示す銅張積層板以外に、種々用途、例えば、配線基板、スピーカー振動板、断熱材、補強材料として、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性が求められる用途の全てに用いることができる。例えば、機械要素部品でプレート、軸受、ギヤー、カム、パイプ、棒材など、ブッシュ、座金、ガイド、プーリー、フェーシング、インシュレーター、ロッド、ベアリング保持器等、電気・電子部品でコネクタ、プラグ、アーム、ソケット、キャップ、ロータ、モータ部品等、AV・OA機器部品でスピーカコーン、筐体、軸受、ロッド、ガイド、ギヤー等、建築用の部品・部材、建具や建材用のストッパー、ガイド、戸車、アングル等、その他にヘルメット、タイヤ用の中子材料、釣具用リール部品、シール類、パッキン類、グランドパッキン等に利用できる。
【0085】
(銅張積層板)
次に、
図3を参照して銅張積層板200について示す。
【0086】
銅張積層板200は、上記の構造体100と、構造体100の少なくとも一方の表面に設けられた銅箔20,20を備える。構造体の厚みは、20~200μmであってよい。
【0087】
銅箔20の厚みに特に限定はなく、1~50μmとすることができる。
【0088】
このような、銅張積層板は、上記の構造体100と、銅箔20とを重ねた上で加圧加熱プレスをすることにより得ることができる。
【実施例0089】
[実施例A]
[樹脂マトリクス用の低誘電樹脂ワニス調製]
低誘電組成物1:変性ポリフェニレンエーテルSA9000(sabic製)45部、脂肪族ビスマレイミドBMI3000J(DMI社製)45部、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBS)タフプレン912(旭化成製)10部、及びジクミルパーオキサイド1部をトルエン130部に溶解させて、低誘電組成物1を調整した。
【0090】
変性ポリフェニレンエーテルSA9000(sabic製)の構造を以下に示す。この分子は、両末端がメタアクリル酸でエステル化された官能性オリゴマーである。
【化6】
【0091】
脂肪族ビスマレイミドBMI3000J(DMI社製)の構造を以下に示す。この分子は、両末端にマレイミド基を有する2官能性オリゴマーである。
【化7】
【0092】
[繊維基材の調製]
繊維基材として、液晶ポリマークロス(厚さ200μm以下)を用意した。以下の手順により繊維基材F1~3を得た。
【0093】
繊維基材F1:プラズマ表面処理を一切行わなかった。
【0094】
繊維基材F2:表1に示す条件で、液晶ポリマークロスに減圧プラズマ処理を行った。
【0095】
繊維基材F3:表2に示す条件で、液晶ポリマークロスに減圧プラズマ処理を行った。
【0096】
【0097】
【0098】
[低誘電組成物1を用いた銅張積層板A1~A3の製造]
繊維基材F1~F3に、それぞれ低誘電組成物1を含侵させ、その後、溶媒を乾燥させてプリプレグを得た。得られたプリプレグを、低粗化銅箔(Rz<1.0μm)に重ねて熱プレスし、プリプレグが硬化した銅張積層板A1~A3を得た。積層は、加熱加圧プレスにて行い、<0.1MPa/cm2の圧力、温度200℃、90分で積層し、銅張積層板A1~A3を得た。
【0099】
[評価方法]
得られた各銅張積層板から、
図3のような形状の試験サンプルを切り出し、乾燥(80℃で30分)した。
【0100】
評価方法1では、試験サンプルを煮沸浸漬することなく、288℃の半田浴に20秒ディップし、その後試験サンプルを半田浴から取り出し、銅箔や繊維基材に膨れや剥離等生じていないかを評価した。
【0101】
評価方法2では、試験サンプルを煮沸浸漬(沸騰水で2時間)してから、260℃の半田浴に20秒ディップし、その後試験サンプルを半田浴から取り出し、銅箔や繊維基材に膨れや剥離等生じていないかを評価した。
【0102】
評価方法3では、試験サンプルを煮沸浸漬(沸騰水で2時間)してから、288℃の半田浴に20秒ディップし、その後試験サンプルを半田浴から取り出し、銅箔や繊維基材に膨れや剥離等生じていないかを評価した。結果を表3に示す。
【0103】
【0104】
表面にプラズマ処理をした繊維基材F2、F3を用いた銅張積層板A2,A3では、プラズマ未処理の繊維基材F1を用いた銅張積層板A3に比べて、耐熱性が著しく向上されていることが確認された。
【0105】
具体的には、銅張積層板A2では、NH3雰囲気下でのプラズマ処理により、改質層に-NH2基が形成されており、この-NH2基と、硬化した樹脂マトリクスのC-O-C基、>C=O基、イミド基、エステル基との間に分子間引力が働いていると考えられる。
【0106】
さらに、銅張積層板A2では、改質層における-NH2基と、樹脂マトリクスにおけるマレイミド、メタクリル部との反応により、(1)の-NHzR4
1-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖での共有結合がなされていると考えられる。
【0107】
また、銅張積層板A3では、H
2環境下でのプラズマ処理により、改質層に-CH
3などのC-Hを有する基が追加形成されており、このC-Hを有する基と、樹脂マトリクスのC-O-C基、>C=O基、オレフィン部分(-C=C-)、フェニル基との間に分子間引力が働いていると考えられる。具体的には、以下のようなメカニズムを想起しうる。
Ar+H
2の減圧プラズマ中では、励起した分子・原子(活性水素:H
2ラジカル、Hイオン)及び電子が、高活性状態で繊維の表面と反応することにより以下のような官能基が生じることが考えられる。
【化8】
【0108】
【0109】
ここで、
図5の上段左は低誘電組成物1の硬化物のワイドXPS解析結果を、
図5の上段右は低誘電組成物1の硬化物のC1sXPS解析結果を、
図5の中段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のワイドXPS解析結果を、
図5の中段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のC1sXPSの結果を、
図5の下段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのワイドXPSの結果を、
図5の下段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのC1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【0110】
図6の上段左は低誘電組成物1の硬化物のO1sXPS解析結果を、
図6の上段右は低誘電組成物1の硬化物のN1sXPS解析結果を、
図6の中段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のO1sXPS解析結果を、
図6の中段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2の改質層のN1sのXPSの結果を、
図6の下段左は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのO1sXPSの結果を、
図6の下段右は、銅張積層板A2で使用した繊維基材F2のコアのN1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
【0111】
XPSとしてAXIS ULTRA(島津製作所製)を使用した。
サンプルをセットして高真空化して約半日真空引きした。C1sピークでシフト補正し、全ナローデータへ展開した。各ナローデータでベースラインを引き、各ナローデータで面積データを算出した。各ナローデータの算出結果をまとめ、Atomic%データを換算して算出した、データ解析には、CasaXPSを用いた。
【0112】
図6では、中段の改質層には、下段のコアには実質観察されないN1sシグナルが表れており、改質層に-NH
2などの官能基が付与されたことが理解される。一方、
図5及び
図6では、O1s及びC1sに関してもシグナル形状がコアと改質層とで変化していることがわかる。具体的には、C1sシグナルからは、C-H結合の割合が、C-H結合とC-C結合との合計に対して増加し、O1sシグナルからは、C-O-C結合またはC-N結合の割合が減少する一方、C-OH結合またはC=O結合の割合が増加していることが確認された。
【0113】
また、
図7,8の上段に、
図7の上段左は低誘電組成物1の硬化物のワイドXPS解析結果を、
図7の上段右は低誘電組成物1の硬化物のC1sXPS解析結果を、
図7の中段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のワイドXPS解析結果を、
図7の中段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のC1sXPSの結果を、
図7の下段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのワイドXPSの結果を、
図7の下段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのC1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
図8の上段左は低誘電組成物1の硬化物のO1sXPS解析結果を、
図8の上段右は低誘電組成物1の硬化物のN1sXPS解析結果を、
図8の中段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のO1sXPS解析結果を、
図8の中段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3の改質層のN1sのXPSの結果を、
図8の下段左は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのO1sXPSの結果を、
図8の下段右は、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のコアのN1sXPSの結果を示す。横軸は結合エネルギーで単位はeVである。
図8では、N1sに関して実質的なピークの変化はなかったが、
図7及び
図8において、O1s及びC1sに関してシグナル形状がコアと改質層とで変化していることがわかる。
【0114】
また、以下の表4に、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のC1sスペクトルのピークについて分析結果を示す。
【0115】
改質層におけるC-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比RM1は0.74であり、コアにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比RC1は0.58であり、とした時に、RM1>RC1となり、RM1/RC1は、1.28であった。
【0116】
また、>C=O、-COOH、-C-O-C-、-CR2
2-OHについては実質的に増減していないことが理解される。従って、繊維基材F3においては、C-C結合が切断され、C-H結合が形成されたことが理解される。
【0117】
【0118】
また、以下の表5に、銅張積層板A3で使用した繊維基材F3のO1sスペクトルのピークについて分析結果を示す。
【表5】
【0119】
改質層におけるC-OH結合またはC=O結合のピーク面積(1)と、C-N結合またはC-O-C結合のピーク面積(2)との合計に対する、C-OH結合またはC=O結合のピーク面積の比をRM2は0.52であり、コアにおける、C-C結合とC-H結合とのピーク面積の合計に対する、C-H結合のピーク面積の比RC2は0.33であり、とした時に、RM2>RC2となり、RM2/RC2は、1.57であった。
銅張積層板A3で使用した繊維基材F3はもともとNを含まないことから、C-O-C結合が減少する一方、C-OH結合及び/又はC=O結合が増えたことが考えられる。
【0120】
[実施例B]
[樹脂マトリクス用の低誘電樹脂ワニス調製]
低誘電組成物2:変性ポリフェニレンエーテルSA9000(sabic製)50部、トリアリルイソシアヌレートTAIC(三菱化学製)50部及びジクミルパーオキサイド1部をトルエン70部に溶解させて、低誘電組成物2を調整した。
トリアリルイソシアヌレートの構造式を以下に示す。
【0121】
【0122】
[繊維基材の調製]
繊維基材として、液晶ポリマークロス(厚さ200μm以下)を用意した。以下の手順により繊維基材F1、F4を得た。
【0123】
繊維基材F1:表面処理を一切行わなかった。
【0124】
繊維基材F4:表6に示す条件で、液晶ポリマークロスに減圧プラズマ処理を行った。
【0125】
【0126】
[低誘電組成物2を用いた銅張積層板B1~B2の製造]
繊維基材F1、F4に、それぞれ低誘電組成物2を含侵させ、その後、乾燥させてプリプレグを得た。得られたプリプレグを、低粗化銅箔(Rz<1.0μm)に重ねて熱プレスし、プリプレグが硬化した銅張積層板B1,B2を得た。積層は、加熱加圧プレスにて行い、<0.1MPa/cm2の圧力、温度200℃、90分で積層した。
【0127】
[評価方法]
得られた銅張積層板から、
図4のような形状の試験サンプルを作製し、乾燥(80℃で30分)した。
【0128】
評価方法1では、試験サンプルを煮沸浸漬することなく、288℃の半田浴に20秒ディップし、その後試験サンプルを半田浴から取り出し、銅箔や繊維基材に膨れや剥離等生じていないかを評価した。
【0129】
評価方法2では、試験サンプルを煮沸浸漬(沸騰水で2時間)してから、260℃の半田浴に20秒ディップし、その後試験サンプルを半田浴から取り出し、銅箔や繊維基材に膨れや剥離等生じていないかを評価した。結果を表7に示す。
【0130】
【0131】
表面にプラズマ処理をした繊維基材F4を用いた銅張積層板B2では、プラズマ未処理の繊維基材F1を用いた銅張積層板B1に比べて、耐熱性が著しく向上されていることが確認された。
【0132】
具体的には、銅張積層板B2では、NH3雰囲気でのプラズマ処理により、改質層に-NH2基が形成されており、この-NH2基と、硬化した樹脂マトリクスのC-O-C基、>C=O基、-COOR基、-NR-CO-NR-基、-NR-基との間に分子間引力が働いていると考えられる。
【0133】
さらに、銅張積層板B2では、改質層における-NH2基と、樹脂マトリクスにおけるメタクリル部との反応により、(1)の-NHzR4
1-z-(ただし、R4は水素原子または炭化水素基、zは0又は1の整数)の構造を有する分子鎖での共有結合がなされていると考えられる。