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特開2024-18580多孔性シート及びその製造方法並びに積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018580
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】多孔性シート及びその製造方法並びに積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240201BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20240201BHJP
   D21H 17/68 20060101ALI20240201BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240201BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08J9/00 Z CEP
D21H11/18
D21H17/68
D21H27/30 C
B32B5/02 C
C08K7/22
C08L1/02
G01N33/543 525C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121999
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】白川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山岸 卓矢
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J002
4L055
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AC32
4F074AE01
4F074CB91
4F074CC22X
4F074CC28Y
4F074DA24
4F074DA53
4F100AA17A
4F100AA20A
4F100AJ04A
4F100AK42B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE00A
4F100DG00A
4F100DJ00A
4F100GB66
4F100JD14A
4J002AB011
4J002DJ016
4J002FA041
4J002FA096
4J002FB001
4J002FD016
4J002FD206
4J002GB04
4L055AA01
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG05
4L055AG15
4L055AH01
4L055AJ02
4L055CA16
4L055CB15
4L055EA04
4L055EA19
4L055EA32
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】優れた蛋白質吸着量を有し、且つ、生産効率に優れた、イムノクロマトグラフィー等に好適なシートを提供すること。
【解決手段】非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を含む多孔性シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非酸化セルロースナノファイバー、及び、
多孔性粒子
を含む多孔性シート。
【請求項2】
前記非酸化セルロースナノファイバーが機械解繊セルロースナノファイバーである、請求項1記載の多孔性シート。
【請求項3】
前記非酸化セルロースナノファイバーが木材パルプ由来である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項4】
前記非酸化セルロースナノファイバーの配合量がシートの全質量を基準として4~31質量%の範囲である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項5】
前記多孔性粒子のJIS K5101-13-1(2004)により測定した吸油量が60ml/100g以上である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項6】
前記多孔性粒子が無機酸化物を含む、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項7】
前記多孔性粒子がシリカを含む、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項8】
前記多孔性粒子が非晶質シリカを含む、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項9】
前記多孔性粒子の配合量がシートの全質量を基準として40~91質量%の範囲である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項10】
前記多孔性粒子の配合量/前記非酸化セルロースナノファイバーの配合量の質量比が1.0~16.0である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項11】
請求項1又は2記載の多孔性シートを備える積層体。
【請求項12】
イムノクロマトグラフィー用である、請求項1又は2記載の多孔性シート。
【請求項13】
イムノクロマトグラフィー用である、請求項11記載の積層体。
【請求項14】
非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を少なくとも含むスラリーを基材上に塗布する工程、及び、
前記スラリーを乾燥させて前記基材上に多孔性シートを形成する工程
を備える、多孔性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非酸化セルロースナノファイバーを含む、イムノクロマトグラフィーに好適なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマトグラフィーとは毛細管現象を利用した免疫測定法であり、妊娠検査、インフルエンザ検査等において汎用されている。
【0003】
イムノクロマトグラフィー用シートは、一般に、サンプル供給部、展開部及び検出部を備えた多孔性シートであって、検出対象物に対する標識抗体が、検体(サンプル)との接触後に展開部を通過して検出部に到達できるよう、展開部の展開開始部位に溶出可能に保持され、さらに検出用の抗体が展開部の一部に固定化され検出部を構成する構造となっている。
【0004】
検体がサンプル供給部に滴下されると、検体中に検出対象物が含まれていた場合、検出対象物が標識抗体と特異的に結合して複合体を形成し、該複合体は、展開部を下流方向に向かって展開して移動し、検出部で検出用の固定化抗体に結合する。したがって、検出部において、標識抗体、検出対象物及び固定化抗体によるサンドイッチ型複合体を検出することで、検出対象物を定性又は定量分析することが可能である。
【0005】
イムノクロマトグラフィー用シートとして使用可能な基材として、特許文献1には、TEMPO酸化されたセルロースナノファイバー及び粒径0.1~300μmの無機酸化物粒子を含み、無機酸化物粒子の含有量がTEMPO酸化されたセルロースナノファイバー100質量部に対して800~6000質量部である多孔質セルロースナノファイバー複合材が記載されており、当該複合材は優れた蛋白質吸着量を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7004978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー及び粒子を含むシートは蛋白質吸着量の点で改善の余地があることが判明した。また、シートを短時間で効率よく製造するため熱風乾燥機等により乾燥すると、シートが脆くなり、一部剥離して、均一なシートが得られないことも判明した。
【0008】
本発明は、優れた蛋白質吸着量を有し、且つ、生産効率に優れた、イムノクロマトグラフィー等に好適なシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子の組み合わせを使用することによって、蛋白質吸着量を高め、且つ、生産効率が向上した多孔性シートを提供する。
【0010】
本発明の第一の態様は、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を含む多孔性シートである。
【0011】
前記非酸化セルロースナノファイバーは機械解繊セルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0012】
前記非酸化セルロースナノファイバーは木材パルプ由来であることが好ましい。
【0013】
前記非酸化セルロースナノファイバーの配合量がシートの全質量を基準として4~31質量%の範囲であることが好ましい。
【0014】
前記多孔性粒子のJIS K5101-13-1(2004)により測定した吸油量が60ml/100g以上であることが好ましい。
【0015】
前記多孔性粒子が無機酸化物を含むことが好ましい。
【0016】
前記多孔性粒子がシリカを含むことが好ましい。
【0017】
前記多孔性粒子が非晶質シリカを含むことが好ましい。
【0018】
前記多孔性粒子の配合量がシートの全質量を基準として40~91質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
前記多孔性粒子の配合量/前記非酸化セルロースナノファイバーの配合量の質量比が1.0~16.0であることが好ましい。
【0020】
本発明の多孔性シートは積層体を構成することが好ましい。
【0021】
本発明の多孔性シート又は積層体はイムノクロマトグラフィー用であることが好ましい。
【0022】
本発明の第二の態様は、
非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を少なくとも含むスラリーを基材上に塗布する工程、及び、
前記スラリーを乾燥させて前記基材上に多孔性シートを形成する工程
を備える、多孔性シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、優れた蛋白質吸着量を有し、且つ、短時間での乾燥が可能で生産効率に優れた多孔性シートを提供することができる。
【0024】
本発明の多孔性シートは、優れた機械的強度をも備えることができ、一部が剥離したりすることもなく、均一である。
【0025】
本発明の多孔性シートは、イムノクロマトグラフィー等に使用される、蛋白質吸着能が必要なシートとして好適に使用することができる。
【0026】
本発明の多孔性シートに含まれる多孔性粒子の平均粒子径が45μm以下の場合、本発明の多孔性シートは、表面の平滑性が特に優れており、標識の視認性が高く、イムノクロマト用途に特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、鋭意検討した結果、セルロースナノファイバーとして非酸化型のものを使用し、且つ、粒子として多孔性のものを使用することにより、優れた蛋白質吸着量を有し、且つ、生産効率に優れた多孔性シートを提供可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明について説明する。
【0029】
[多孔性シート]
本発明の多孔性シートは非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を少なくとも含む。
【0030】
(非酸化セルロースナノファイバー)
【0031】
本発明において、「非酸化セルロースナノファイバー」は、酸化処理を受けていないセルロースナノファイバーを意味する。TEMPO酸化を受けていないセルロースナノファイバーがより好ましい。非酸化セルロースナノファイバーでは、セルロースナノファイバーの表面の水酸基が、酸化処理によって、カルボキシ基に酸化されていない。
【0032】
非酸化セルロースナノファイバーは、その質量に対してカルボキシ基量が0.10mmоl/g未満であることが好ましく、0.09mmоl/g未満がより好ましく、0.08mmоl/g未満が更により好ましく、0.07mmоl/g未満がより好ましく、0.06mmоl/g未満が更により好ましく、0.05mmоl/g未満であることが更により好ましい。
【0033】
セルロースナノファイバーは、セルロースからなる微細繊維である。最大繊維経が1μm未満のものであれば、セルロースナノファイバーは特には限定されない。セルロースナノファイバーとして、例えば、最大繊維径(幅)が5nm以上、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上のものを使用することができる。また、セルロースナノファイバーとして、例えば、最大繊維径(幅)が300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下のものを使用することができる。セルロースナノファイバーの最大繊維径(幅)は、5~300nmであってよく、15~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましい。最大繊維径(幅)は顕微鏡法によって決定することができる。
【0034】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(幅)は例えば2nm以上であり、3nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、5nmが更により好ましい。セルロースナノファイバーの平均繊維径(幅)は例えば100nm以下であり、90nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nmが更により好ましい。セルロースナノファイバーの平均繊維径(幅)は例えば2~100nmとすることができ、3~90nmが好ましく、4~80nmがより好ましく、5~70nmが更により好ましい。ここでの「平均繊維径」とは、セルロースナノファイバーの繊維径の数平均を意味する。平均繊維径は、例えば、シートの表面の複数箇所を電子顕微鏡によって拡大観察し、各電子顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の径を測定し平均して得ることができる。選別される繊維の数は100以上であり、150以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更により好ましい。
【0035】
セルロースナノファイバーの長さ(繊維長)は例えば10nm以上であり、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、150nm以上が更により好ましい。セルロースナノファイバーの長さ(繊維長)は例えば300μm以下であり、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更により好ましい。セルロースナノファイバーの長さ(繊維長)は例えば10nm~300μmとすることができ、50nm~200μmが好ましく、100nm~100μmがより好ましく、150nm~50μmが更により好ましい。なお、ここで繊維長とは繊維を真っ直ぐに伸ばした状態とした場合の当該繊維の長さをいう。前記繊維長は平均繊維長であることが好ましい。ここでの「平均繊維長」とは、前記セルロースナノファイバーの繊維長の数平均を意味する。平均繊維長は、例えば、シートの表面の複数箇所を電子顕微鏡によって拡大観察し、各電子顕微鏡画像中から所定数の繊維を無作為に選別し、選別された当該繊維の長さを測定し平均して得ることができる。選別される繊維の数は100以上であり、150以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更により好ましい。
【0036】
セルロースナノファイバーのアスペクト比は例えば5以上であり、10以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上が更により好ましい。セルロースナノファイバーのアスペクト比は上記の平均繊維径と繊維長により決定することができる。
【0037】
セルロースナノファイバーを構成するセルロースは例えば、セルロースI型、セルロースII型等の任意の型のセルロースの繊維を使用することができるが、コットン、コットンリンター、木材パルプに代表されるような、セルロースI型の天然繊維が好ましい。再生セルロースに代表されるセルロースII型の繊維はセルロースI型の繊維に比べ結晶化度が低く、セルロースナノファイバーの製造工程中に短繊維化しやすい傾向があるので好ましくない。
【0038】
セルロースナノファイバーの原料としては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプなどの木材パルプやコウゾ、雁皮、三椏等の靭皮繊維パルプやコットンパルプ、麻、ケナフ、イネ、バガス、竹、などの非木材パルプ等を用いることができる。セルロースナノファイバーは木材パルプ由来であることが好ましい。なお、セルロースナノファイバーナノファイバーの原料として、バクテリアセルロースを使用しないことが好ましい。
【0039】
セルロースナノファイバーは、機械的処理又は物理的処理により製造することが好ましく、機械的な解繊により製造することがより好ましい。すなわち、セルロースナノファイバーは機械解繊セルロースナノファイバーであることが好ましい。機械的な解繊の手法は特には限定されるものではないが、高圧ホモジナイザー法、マイクロフルイダイザー法(対向噴流衝突法)、グラインダー法、ボールミル粉砕法、ビーズミル粉砕法、凍結粉砕法等の公知の手法を使用することができる。なお、グラインダー法ではマスコロイダー(粒度16~120番の砥粒を備える砥粒板を複数枚擦合せ配置した砥粒板擦合装置、増幸産業株式会社製)を使用してもよい。
【0040】
機械的処理又は物理的処理の前にダブルディスクリファイナー、ビーター等の製紙用で使用している叩解機を用いてセルロース繊維を前処理してもよい。
【0041】
本発明においては、粒度16~120番の砥粒を備える砥粒板を複数枚擦合せ配置した砥粒板擦合装置の擦合せ部に予め叩解処理したパルプスラリーを通過させる微細化処理、又は予め叩解処理したパルプスラリーを高圧ホモジナイザー処理する微細化処理によりセルロースナノファイバーを製造することが好ましい。
【0042】
本発明のシートにおける非酸化セルロースナノファイバーの配合量はシートの全質量を基準として4質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更により好ましい。また、本発明のシートにおける非酸化セルロースナノファイバーの配合量はシートの全質量を基準として31質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更により好ましい。本発明のシートにおける非酸化セルロースナノファイバーの配合量はシートの全質量を基準として4質量%~31質量%が好ましく、6質量%~28質量%がより好ましく、8質量%~25質量%が更により好ましい。
【0043】
(多孔性粒子)
【0044】
多孔性粒子(多孔質粒子)は、多数の微細な孔を有するものであれば、特には限定されない。多孔性粒子は中空粒子であってもよい。1種類の多孔性粒子を使用してもよく、2種類以上の多孔性粒子を使用してもよい。
【0045】
多孔性粒子は抗原、抗体等の蛋白質を物理的に吸着することができる。
【0046】
多孔性粒子は60ml/100g以上の吸油量を有することが好ましく、65ml/100g以上の吸油量を有することがより好ましく、70ml/100g以上の吸油量を有することが更により好ましい。吸油量は、JIS K5101-13-1(2004)により測定することができる。多孔性粒子の吸油量の上限は特には限定されないが、700ml/100g以下が好ましく、650ml/100g以下がより好ましく、600ml/100g以下が更により好ましい。多孔性粒子の吸油量は、例えば、60ml/100g~700ml/100gとすることができ、65ml/100g~650ml/100gが好ましく、70ml/100g~600ml/100gがより好ましい。
【0047】
多孔性粒子は20m/g以上の比表面積を有することが好ましく、25m/100g以上の比表面積を有することがより好ましく、30m/g以上の比表面積を有することが更により好ましい。比表面積はJIS J8830(2013)により測定することができる。多孔性粒子の比表面積の上限は特には限定されないが、1000m/g以下が好ましく、950m/g以下がより好ましく、900m/g以下が更により好ましい。多孔性粒子の比表面積は、例えば、20m/g~1000m/gとすることができ、25m/g~950m/gが好ましく、30m/g~900m/gがより好ましい。
【0048】
多孔性粒子は0.1μm以上の平均粒子径を有することが好ましく、0.5μm以上の平均粒子径を有することがより好ましく、1.0μm以上の平均粒子径を有することが更により好ましい。平均粒子径は、特に断りのない限り、体積平均粒子径であり、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HОRIBA社製)を用いる方法で測定された、体積累積分布の中央値D50を意味する。不定形粒子の場合、当該粒子の粒子径は体積球相当径を意味する。多孔性粒子の平均粒子径の上限は特には限定されないが、形成される多孔質シートの表面の平滑性の点で、45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、35μm以下が更により好ましい。多孔性粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm~45μmとすることができ、0.5μm~40μmが好ましく、1.0μm~35μmがより好ましい。
【0049】
多孔性粒子は0.05g/ml以上のかさ密度を有することが好ましく、0.06g/cm以上のかさ密度を有することがより好ましく、0.07g/cm以上のかさ密度を有することが更により好ましい。かさ密度は、JIS R1628(1997)により測定することができる。多孔性粒子のかさ密度の上限は特には限定されないが、0.50g/cm以下が好ましく、0.45g/cm以下がより好ましく、0.40g/cm以下が更により好ましい。多孔性粒子のかさ密度は、例えば、0.05g/cm~0.5g/cmとすることができ、0.06g/cm~0.45g/cmが好ましく、0.07g/cm~0.40g/cmがより好ましい。
【0050】
多孔性粒子は無機物、有機物又はこれらの混合物を含むことができる。多孔性粒子は無機粒子、有機粒子又は無機有機複合粒子のいずれでもよい。
【0051】
無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等のケイ素含有化合物;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化セリウム、酸化クロム等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、塩化銀、臭化銀等の金属塩;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;チタン、鉄、クロム、ニッケル、金、銀、白金、銅、鉛、亜鉛等の金属及びこれらの金属合金;ダイアモンド;窒化ホウ素、炭化ホウ素等のホウ素含有化合物;炭化チタン、炭化タンタル、炭化ジルコニウム等の金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化チタン等の金属窒化物;アルミノケイ酸塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ケイ酸アルミン酸マグネシウム)等の混合物などから選ばれる1種以上の無機物を含む粒子が挙げられる。これらの無機粒子は1種を単独で又は2種以上を用いることができる。無機粒子は、表面処理が施されていないものであってもよく、表面処理が施されたものであってもよい。
【0052】
多孔性粒子が無機酸化物を含むことが好ましい。多孔性粒子が無機酸化物のみからなることがより好ましい。
【0053】
多孔性粒子がシリカを含むことが好ましい。多孔性粒子がシリカのみからなることがより好ましい。これらの材質からなる多孔性粒子は、微細な孔の存在に加えて、表面の静電気力等のために、抗原、抗体等の蛋白質の吸着能が優れている。
【0054】
多孔性粒子は非晶質シリカを含むことが好ましい。多孔性粒子が非晶質シリカのみからなることがより好ましい。
【0055】
非晶質シリカとしては、例えば、乾式シリカ及び湿式シリカ等の合成非晶質シリカが挙げられる。乾式シリカは、例えば、四塩化ケイ素を酸素・水素炎中で燃焼させる燃焼法によって得ることができる。湿式シリカは、例えば、ケイ酸ナトリウムを無機酸で中和する沈殿法若しくはゲル法、又はアルコキシシランを加水分解するゾルゲル法によって得ることができる。非晶質シリカは、湿式シリカであることが好ましい。多孔性粒子は乾式シリカのみ又は湿式シリカのみからなることができる。なお、多孔性粒子が乾式シリカのみ又は湿式シリカのみからなる場合、多孔性粒子の粒径は、乾式シリカ又は湿式シリカの微細な一次粒子が凝集した二次粒子の粒径を意味する。
【0056】
有機粒子としては、例えば、各種の合成樹脂を含む粒子が挙げられる。具体的には、セルロース、デンプン、キトサン等の多糖及びこれらの誘導体;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の付加重合系ポリマー;ポリアミド、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリウレタン等の縮合系ポリマー;シリコーンパウダーなどのポリマー粒子が挙げられる。前記ポリマー粒子は、架橋構造を有するポリマー粒子でもよく、架橋構造を有しないポリマー粒子でもよい。
【0057】
無機有機複合粒子は無機物及び有機物を含む粒子であり、無機物及び有機物としては上記のものを使用することができる。
【0058】
本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量はシートの全質量を基準として40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更により好ましい。また、本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量はシートの全質量を基準として91質量%以下が好ましく、88質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更により好ましい。本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量はシートの全質量を基準として40質量%~91質量%が好ましく、45質量%~88質量%がより好ましく、50質量%~85質量%が更により好ましい。
【0059】
本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量/非酸化セルロースナノファイバーの配合量の質量比は1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更により好ましい。本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量/非酸化セルロースナノファイバーの配合量の質量比はシートの全質量を基準として20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が更により好ましい。本発明のシートにおける多孔性粒子の配合量/非酸化セルロースナノファイバーの配合量の質量比はシートの全質量を基準として1.0~20が好ましく、1.5~18がより好ましく、2.0~16が更により好ましい。
【0060】
(任意成分)
【0061】
本発明の多孔性シートは、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子の他に、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0062】
例えば、例えば、本発明の多孔性シートには、非酸化セルロースナノファイバー以外の繊維を配合してもよい。そのような繊維は、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルイミド繊維、ビニロン繊維、ポリカーボネート繊維、エチレン-ビニルアセテート繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維等の化学繊維のほか、ガラス繊維、アルミナ繊維、セラミックス繊維等の無機繊維、酸化セルロースナノファイバー等のセルロース繊維である。特に、酸化セルロースナノファイバーを比較的少量配合するとシートの地合が向上するため好ましい。酸化セルロースナノファイバーの配合量は、非酸化セルロースナノファイバーと酸化セルロースナノファイバーの合計量に対して0.1質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~25質量%がより好ましく、1.0質量%~20質量%が更により好ましい。
【0063】
(特性)
【0064】
本発明の多孔性シートの厚みは30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上が更により好ましい。本発明の多孔性シートの厚みの上限は特には限定されないが、使用性の点で、220μm以下が好ましく、210μm以下がより好ましく、200μm以下が更により好ましい。多孔性シートの厚みは、例えば、30μm~220μmとすることができ、40μm~210μmが好ましく、50μm~200μmがより好ましい。
【0065】
本発明の多孔性シートの目付は5g/m以上が好ましく、10g/m以上がより好ましく、15g/m以上が更により好ましい。本発明の多孔性シートの目付の上限は特には限定されないが、使用性の点で、80g/m以下が好ましく、70g/m以下がより好ましく、60g/m以下が更により好ましい。多孔性シートの目付は、例えば、5g/m~80g/mとすることができ、10g/m~70g/mが好ましく、15g/m~60g/mがより好ましい。
【0066】
本発明の多孔性シートは、微多孔質であり、30%~80%の空孔率を有することが好ましい。本発明における空孔率は、セルロース繊維を膨潤させない溶媒を多孔性シートに含浸させて、その吸液した溶媒の質量から計算することが可能である。具体的には、50mm×50mmのサイズにカットしたサンプルを23℃50%相対湿度の雰囲気下で1日調湿した後、サンプルの厚みを測定し、更にサンプルの質量を4桁若しくは5桁秤を用いて秤量する。秤量後、溶媒に1分間含浸させた後、表面について余分な溶媒を吸い取り紙で吸収した後、再度秤量を行う。含浸後の質量から含浸前の質量を引いた値を含浸した溶媒の密度で割ることにより溶媒の体積を求める。この体積を厚みから計算した全体の体積の百分率を空孔率とする。したがって、この場合の空孔率は以下の式により求めることができる。
空孔率(%)=100×(吸液後のシート質量-吸液前のシート質量)/吸液させた溶媒の密度×5×5×厚み(cm)
【0067】
本発明において空孔率を測定することが可能な溶媒は、セルロース繊維を膨潤させない溶媒なので、極性の低い有機溶媒を用いるのが好ましい。また吸液させた溶媒が短い測定時間の間で揮発してしまわないものを選定する必要がある。特に好ましいものとしては、通常電解液で使用されるプロピレングリコールやケロシン等石油系の高沸点溶媒等が挙げられる。
【0068】
本発明の多孔性シートは単層体であっても積層体を構成してもよい、本発明の多孔性シートが積層体を構成する場合は、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を含む多孔性層を少なくとも備えており、少なくとも1つの他の付加層を備えることができる。
【0069】
前記他の付加層は、特には限定されるものではく、非多孔性又は多孔性のいずれでもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の各種の熱可塑性若しくは熱硬化性の樹脂製の非多孔性膜、或いは、セルロースナノファイバー以外のセルロース繊維製の不織布又は多孔質膜を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明の多孔性シートが積層体を構成する場合は、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を含む多孔性層が上記の厚み、目付又は空孔率を有することができる。
【0071】
[多孔性シートの製造方法]
【0072】
本発明の多孔性シートは、
非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を少なくとも含むスラリーを基材上に塗布する工程、及び、
前記スラリーを乾燥させて前記基材上に多孔性シートを形成する工程
を少なくとも備える方法により製造することができる。前記非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子としては、既述したものを使用することができる。
【0073】
上記スラリーは水等の各種の液体を使用して調製することができる。具体的には、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を水等の各種の液体中に分散させることでスラリーを調製することができる。本発明で用いるスラリーを構成する液体は基本的に水を使用することが好ましいが、乾燥効率を向上させることを目的としてメタノールやエタノール、t-ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル等のエーテル類等の水よりも蒸気圧の高い溶媒を溶媒全体量の50質量%まで添加することが可能である。
【0074】
基材は、特に限定されるものではないが、高分子フィルム、ガラス板、金属板、剥離紙等が使用可能である。基材は非多孔性のものが好ましい。更に、乾燥したシートは、基材の表面性を転写する特性があるため、基材の表面はできるだけ平滑な方が好ましい。これらのことを考慮すると、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムはフレキシブル性があり、溶融温度も比較的高いため、乾燥時の伸びや収縮の影響が少ない。また、ポリプロピレンフィルムと比較して極性も高いため、水系のスラリー処方においても塗工しやすく、好適に使用することが可能である。
【0075】
本発明の製造方法において、非酸化セルロースナノファイバー及び多孔性粒子を含むスラリーを基材上に塗布する手法は、塗布層の膜厚が一定の範囲内となるように均一塗布できる塗工方法であればいかなる手段でも使うことができる。例えば、スロットダイコーター、カーテンコーター等の前計量タイプのコーターや、MBコーター、MBリバースコーター、コンマコーター等の後計量タイプでも塗工が可能である。
【0076】
本発明の製造方法では、基材上に塗布された前記スラリーを乾燥してシートを得ることができる。乾燥方法は特に限定されるものではないが、具体的には、熱風乾燥及び遠赤外線乾燥の単独又は組み合わせ等の一般的に使用されている乾燥手法を使用して実施することが可能であり、例えば熱風温度は、30~150℃、好ましくは60~120℃とすることができるが、できるだけシートの厚み方向の構造が均一に乾燥されるように熱風温度、熱風量、遠赤外線の照射条件等を調整する必要がある。また乾燥効率の向上のために、マイクロ波加熱を使用することもできる。
【0077】
上記のスラリーを乾燥させて基材上に多孔性シートを形成する工程の後に、当該多孔性シートを基材から剥離する工程を更に備えてもよい。この場合に、基材から多孔性シートを剥離する方法は特に限定されるものではない。
【0078】
本発明の多孔性シートは単層体でもよいが、積層体としても使用することができる。単層体の場合は、基材から多孔性シートを剥離して使用することができる。一方、積層体の場合は、基材から多孔性シートを剥離せず、そのまま使用してもよく、或いは、基材から多孔性シートを剥離して、基材とは異なる少なくとも1つの他の付加層を多孔性シートからなる多孔性層上に積層することで、多孔性層を備えた積層体として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の多孔性シート乃至積層体は、優れた蛋白質吸着能を有することから、血液成分の特定物質補足用フィルター、ウィルス等の微生物の除去用フィルター、細胞若しくは微生物の培養用基材、抗原若しくは抗体を吸着したイムノクロマトグラフィー用シート等の医療、生物又は診断分野に利用することができる。
【0080】
特に、本発明の多孔性シート乃至積層体は、イムノクロマトグラフィー用シートとして好適に使用することができる。具体的には、本発明の多孔性シートは、イムノクロマトグラフィー用シートとして妊娠検査、ウィルス又は細菌の感染の診断、アレルギー物質を含む食品の検査、尿中薬物検査等に使用することができる。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0082】
(1)平均繊維径の測定
電子顕微鏡(日立製作所製)で倍率5000倍の画像を5箇所撮影し、それぞれの視野から任意で20本の繊維を選択して繊維径を測定することで、(数)平均繊維径を測定した。
(2)蛋白質吸着量の測定
蛋白質はアルブミン(ウシ血清由来(BSA)、プロテアーゼ不含、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。リン酸緩衝水溶液(pH7.4、0.1mоl/L、富士フイルム和光純薬社製)に、1500μg/mlの濃度になるようにBSAを溶解する。調製溶液5mlに、所定量A(g)に切り取ったシートを30℃の恒温槽中で24時間浸漬させる。その後シートを取り出し、残液サンプルを紫外可視分光光度計により280nmの吸光度Bを測定した。検量線より求めた吸光係数をCとし、蛋白質吸着量Dを下記式にて求めた。

D(μg/g)=5(1500―B/C)/A

1サンプルにつき、3回同様の操作を行い、それらの平均値を蛋白質吸着量とした。
【0083】
(3)カルボキシ基量の測定
セルロースナノファイバーの0.5質量%スラリーに純水を加えて60mlに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式を用いて算出する。

カルボキシ基量(mmоl/gセルロースナノファイバー)=a(ml)×0.05/セルロースナノファイバー質量(g)
【0084】
[実施例1]
NBKPをイオン交換水中に3質量%濃度になるよう分散させ、ダブルディスクリファイナーを用いて数平均繊維長1.0mm以下となるような条件までサイクリングにて叩解した。数平均繊維長が1.0mm以下となったセルロース繊維分散液を高圧ホモジナイザー(LAB―1000)で800barの条件で10回処理することにより非酸化セルロースナノファイバーを得た。なお、非酸化セルロースナノファイバーを等量のトリエチレングリコールブチルメチルエーテルと混合し、120℃のオーブンで乾燥して溶媒を除去したうえで電子顕微鏡を用いて平均繊維径を測定したところ280nmであった。このとき得られた非酸化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量は0.06mmоl/gであった。
【0085】
上記で得られた非酸化セルロースナノファイバー100質量部に対して、多孔性粒子として、吸油量260ml/100g、比表面積210m/g、平均粒子径8.7μm、かさ密度0.18のシリカ(NIPGEL AZ360、東ソー・シリカ社製)を500質量部添加し、最終的に固形分濃度が5質量%となるように水を加え、スターラーにて均一に混ざるまで撹拌することで塗料を調合した。
【0086】
調合した塗料を厚さ100μmのPETフィルム上にアプリケーターを用いて塗布し、120℃の熱風乾燥機を用いて10分間乾燥し、坪量28.1g/mの多孔性シートを得た。
【0087】
[実施例2]
多孔性粒子として吸油量180ml/100g、比表面積185m/g、平均粒子径14.0μm、かさ密度0.21のシリカ(トクシールU、トクヤマ社製)とする以外は実施例1と同様にし、坪量28.4g/mの多孔性シートを得た。
【0088】
[実施例3]
多孔性粒子として吸油量190ml/100g、比表面積205m/g、平均粒子径39.9μm、かさ密度0.15のシリカ(NIPSIL VN3、東ソー・シリカ社製)とする以外は実施例1と同様にし、坪量29.3g/mの多孔性シートを得た。
【0089】
[比較例1]
添加する粒子を吸油量21ml/100g、比表面積11.7m/g、平均粒子径0.4μm、かさ密度0.538の二酸化チタン(タイペークA-220、石原産業社製)とする以外は実施例1と同様にし、坪量31.2g/mのシートを得た。
【0090】
[比較例2]
添加する粒子を吸油量38ml/100g、比表面積1.5m/g、平均粒子径3.7μm、かさ密度0.38の炭酸カルシウム(エスカロン1500、林化成社製)とする以外は実施例1と同様にし、坪量29.2g/mのシートを得た。
【0091】
[比較例3]
大塚雅規、斉藤継之、江前敏晴、磯貝明:TEMPО触媒酸化パルプシートの特性回折,機能紙研究会誌,Nо.48,p24(2009)に従って、TEMPO酸化セルロースを調製した。
【0092】
細断したパルプ(針葉樹パルプ)1g及び蒸留水100mLをミキサーにて撹拌して試料を調製した。内容積200mLのビーカーに、前記試料を移し、TEMPО試薬(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)(ナカライテスク株式会社の製品)0.0125g及び臭化ナトリウム0.125gを加え溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら0.1М次亜塩素酸ナトリウム水溶液10mLを添加し、反応中は0.5М塩酸及び0.5М水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH10に維持した。添加した次亜塩素酸ナトリウムが全て消費され、pHの変動が無くなったと時点を反応終了とした。反応液中に残存する可能性のある次亜塩素酸ナトリウムをエタノール5mLを加えることにより失活させた。得られたTEMPО酸化セルロースをガラスろ過器を用いて吸引濾過後、濾液のpHが7付近となるまで蒸留水で洗浄と吸引濾過を繰り返し行った。得られた濾過残渣をTEMPО酸化セルロース試料とした。前記TEMPО酸化セルロース試料を蒸留水に分散させ、1質量%とした当該試料をミキサーにて10分間撹拌することにより解繊処理を行い、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを得た。このとき得られたTEMPО酸化セルロースナノファイバーのカルボキシ基量は1.41mmоl/gであった。
【0093】
使用する非酸化セルロースナノファイバーを上記のTEMPO酸化セルロースナノファイバーとする以外は実施例1と同様にし、塗工したが、乾燥後、シートが脆くなり、一部が剥がれ落ち、均一なシートが得られなかった。
【0094】
実施例1~3並びに、比較例1~3のシートの調製に使用された原料の種類・特性、並びに、当該シートの坪量、蛋白質吸着量及び平滑性(目視で測定)を下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から明らかなように、吸油量が高いシリカを多孔性粒子として用いた場合(実施例1~3)に蛋白質吸着量が高かった。また、シートの平滑性も優れていた。一方、多孔性ではない粒子を用いた比較例1及び2では、十分な蛋白質吸着量が得られなかった。さらに、TEMPO酸化セルロースナノファイバーを使用した比較例3の場合には、シートが脆くなり、一部剥離してしまい、そのために、均一なシートが得られず、物性データが得られなかった。