(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018600
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法および揮発性液体を含有する組成物の形成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 9/00 20060101AFI20240201BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20240201BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240201BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01N9/00 Z
G01N33/00 D
E04G21/02 103B
E04B1/94 U
E04B1/94 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122031
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】乙茂内 郁美
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【テーマコード(参考)】
2E001
2E172
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001DF04
2E001GA06
2E001HA01
2E001HA32
2E001HE10
2E001QA01
2E001QA02
2E172AA06
2E172AA07
2E172DC02
2E172DC11
2E172HA03
(57)【要約】
【課題】揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法を提供する。
【解決手段】揮発性液体を含有する組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させ、電磁波照射後の当該組成物の質量と、電磁波照射前または電磁波照射後の当該組成物の体積とに基づいて、密度を求め、前記密度を当該組成物の絶乾嵩密度として推定する。揮発性液体を含有する組成物の質量が恒量となる照射時間を予め設定しておく。前記揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を含有する組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させ、
電磁波照射後の当該組成物の質量と、電磁波照射前または電磁波照射後の当該組成物の体積とに基づいて、密度を求め、
前記密度を当該組成物の絶乾嵩密度として推定する
ことを特徴とする揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法。
【請求項2】
前記揮発性液体を含有する組成物の質量が恒量となる照射時間を予め設定し、
前記設定された照射時間、当該組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させる
ことを特徴とする請求項1記載の揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法。
【請求項3】
前記電磁波はマイクロ波である
ことを特徴とする請求項1記載の揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法。
【請求項4】
前記揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物である
ことを特徴とする請求項1記載の揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法。
【請求項5】
試験施工において、揮発性液体を含有する組成物を形成し、請求項1記載の方法により、当該組成物の絶乾嵩密度を推定し、
前記指定された絶乾嵩密度が所定範囲内であることを確認し、前記推定された絶乾嵩密度が所定範囲内である場合は、
本施工において、前記試験施工における施工条件と同一の施工条件で揮発性液体を含有する組成物を形成する
ことを特徴とする揮発性液体を含有する組成物の形成方法。
【請求項6】
前記試験施工は、前記本施工の一部として行われる
ことを特徴とする請求項5記載の揮発性液体を含有する組成物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法に関する。特に、繊維と結合材スラリーからなる繊維組成物や軽量モルタル等の揮発性液体を含有する軽量組成物の絶乾嵩密度を推定する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、揮発性液体を含有する組成物の形成方法に関する。特に、繊維と結合材スラリーからなる繊維組成物や軽量モルタル等の揮発性液体を含有する軽量組成物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
耐火性、防火性、吸音性および/または断熱性などを付与する目的で、構造物や物品等の表面或いは壁、天井又は/及び床の内部に、水又は/及び揮発性有機化合物を含有する結合材と、ロックウール等の繊維や軽量骨材との混合物、即ち、揮発性液体を含有する組成物からなる層を設けることが提案されている。揮発性液体を含有する組成物としては、例えば、セメントと水を混合したセメントスラリーとロックウールとの混合物からなるロックウール組成物、或いはセメント、水、普通骨材及び軽量骨材を含む軽量モルタルが代表的な例である。
【0004】
ロックウール組成物および軽量モルタル等の揮発性液体を含有する軽量組成物は、適正な絶乾嵩密度とすることで、耐火性、防火性、吸音性または断熱性などの性能を発揮する。したがって、当該組成物の絶乾嵩密度(場合によっては絶乾嵩比重)を測定して確認することが重要である(例えば、非特許文献1および特許文献1(段落 [0005]))。
【0005】
従来技術において、採取した試料を乾燥機に入れ、恒量となるまで加熱し、絶乾嵩密度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】一般社団法人公共建築協会編,「建築工事監理指針令和元年版(上巻)」,第1刷,一般社団法人公共建築協会,令和元年10月25日,p.641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、施工現場に乾燥機を持ち込むことは難しく且つ測定結果が出るまで長時間掛かることから、施工前や施工中に軽量組成物の絶乾嵩密度が所定の範囲となることを確認した上で当該軽量組成物を形成することは困難であった。施工後に形成された組成物の絶乾嵩密度が所定の範囲外であることが判明した場合、施工箇所を撤去し、再施工することや追加で施工することになり、著しく不経済である。
【0009】
本発明は、揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法を提供することを目的とする。特に、短時間で、精度よく、施工前や施工中に推定する方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、所定の範囲内の絶乾嵩密度である揮発性液体を含有する組成物が得られる揮発性液体を含有する組成物の形成方法を提供することを目的とする。特に、絶乾嵩密度を2.0g/cm3未満とする軽量組成物の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、電子レンジ等を用いた電磁波照射により、短時間で揮発性液体を揮発させることができるとともに、推定絶乾嵩密度は従来技術による絶乾嵩密度と同精度であることを見出して、本願発明を完成するに至った。
【0012】
上記課題を解決する本発明は、揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定する方法である。揮発性液体を含有する組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させ、電磁波照射後の当該組成物の質量と、電磁波照射前または電磁波照射後の当該組成物の体積とに基づいて、密度を求め、前記密度を当該組成物の絶乾嵩密度として推定する。
【0013】
電磁波照射により、短時間で揮発性液体を揮発させることができ、短時間で絶乾嵩密度を推定することができる。一方、推定絶乾嵩密度の精度は担保されている。その結果、本発明を施工前や施工中に適用できる。
【0014】
上記発明において好ましくは、前記揮発性液体を含有する組成物の質量が恒量となる照射時間を予め設定し、前記設定された照射時間、当該組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させる。
【0015】
予備試験において照射時間を予め設定することにより、試験施工において確実に恒量となる。これにより、短時間で試験施工できる。
【0016】
上記発明において好ましくは、前記電磁波はマイクロ波である。
【0017】
マイクロ波照射により、短時間で揮発性液体を揮発させることができる。
【0018】
上記発明において好ましくは、前記揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物である。
【0019】
絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物であると、電磁波照射により短時間で揮発性液体を揮発させることができる。
【0020】
上記課題を解決する本発明は、揮発性液体を含有する組成物の形成方法である。試験施工において、揮発性液体を含有する組成物を形成し、上記方法により、当該組成物の絶乾嵩密度を推定し、前記指定された絶乾嵩密度が所定範囲内であることを確認し、前記推定された絶乾嵩密度が所定範囲内である場合は、本施工において、前記試験施工における施工条件と同一の施工条件で揮発性液体を含有する組成物を形成する。
【0021】
これにより、所定の性能を有する被覆層又は充填層等の層を形成できる。
【0022】
上記発明において好ましくは、前記試験施工は、前記本施工の一部として行われる。
【0023】
これにより、施工前だけでなく施工中にも本発明を適用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、揮発性液体を含有する組成物の絶乾嵩密度を推定することができる。特に、短時間で、精度よく、施工前や施工中に推定することができる。
【0025】
本発明によれば、所定の範囲内の絶乾嵩密度である揮発性液体を含有する組成物を形成することができる。特に、絶乾嵩密度を2.0g/cm3未満とする組成物を形成できる。
【0026】
その結果、所定の耐火性、防火性、吸音性および/または断熱性を備える当該組成物からなる層を形成できる。当該層は構造物や物品等の表面を被覆する、又は内部を充填する、或いは構造物や物品等を形成する。ここでいう物品の例としては、例えば、耐火金庫、サイディングボードや床材等の建築資材、防音ブース、WEB会議用ブース、保冷庫等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
~構成等~
本発明において、揮発性液体を含有する組成物(以下、適宜、揮発性液体含有組成物という)に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させ、密度を求め、当該組成物の絶乾嵩密度として推定することを特徴とする。上記の各構成について詳述する。
【0029】
絶乾嵩密度は、従来技術において規定されている。試料を乾燥機に入れ、恒量となるまで加熱する。乾燥後の当該組成物の質量と、乾燥後の当該組成物の体積とに基づいて、絶乾嵩密度ρを求める。
【0030】
本発明では、電磁波照射後の当該組成物の質量M1と体積V1に基づいて密度ρ1を求める。具体的には式(1)により求める。従来技術に基づく絶乾嵩密度ρと本発明推定嵩密度ρ1とは略等しいと考えられる(下記にて検証済)。したがって、本発明推定嵩密度ρ1を絶乾嵩密度ρと推定する。
ρ1=M1/V1 ・・・ (1)
【0031】
なお、本発明においては、電磁波照射前の揮発性液体含有組成物の体積V0と電磁波照射後の揮発性液体含有組成物の体積V1との変化が少ないことを確認しており、適宜、上記式(1)のV1に替えてV0を用いて、電磁波照射後の揮発性液体含有組成物の嵩密度ρ1を算出してもよい。特に、揮発性液体含有組成物が軽量組成物のときはV0とV1との変化がより少なく、揮発性液体含有組成物の絶乾嵩密度ρが小さいほど当該変化が少なく、揮発性液体含有組成物の絶乾嵩密度ρが1.0g/cm3以下では当該変化が殆どない。
【0032】
本発明における揮発性液体含有組成物に含まれる揮発性液体としては、水が代表的なものであるが、エタノール、ブタノール、酢酸エチル等の常温で液体且つ揮発性の有機化合物も用いることができる。好ましくは、水又は水溶液である。ここでいう水には分散媒としての水が含まれる。
【0033】
本発明における揮発性液体を含有する組成物、即ち、揮発性液体含有組成物としては、揮発性液体以外に、セメント、珪酸アルカリ、高炉スラグ粉末等の潜在水硬性物質、シリカフュームやフライアッシュ等のポゾラン、酢酸ビニル系樹脂,アクリル系樹脂,合成ゴム等のポリマーからなる有機質結合材、ロックウールやセラミックウール等の無機質繊維、ナイロン繊維やビニロン繊維等の有機質繊維、パーライトや有機系軽量骨材等の軽量骨材、珪砂や砕砂等の普通骨材、前記以外の混和材料から選ばれる1種又は2種以上が含まれるものが好ましい。
【0034】
特に、セメント、珪酸アルカリ、潜在水硬性物質、ポゾラン及び有機質結合材から選ばれる1種又は2種以上と、無機質繊維、有機質繊維、軽量骨材、起泡剤及び発泡剤から選ばれる1種又は2種以上と、水等の揮発性液体とを含有する絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物が好ましい。絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満であると、内部の揮発性液体が当該軽量組成物の外部に排出され易い。つまり、揮発性液体が揮発し易く、短時間で揮発する。
【0035】
本発明に用いる揮発性液体含有組成物としては、電磁波により揮発性液体が揮発し易いことから、絶乾嵩密度が2.0g/cm3未満の軽量組成物が好ましく、絶乾嵩密度が1.5g/cm3以下の軽量組成物がより好ましく、絶乾嵩密度が1.0g/cm3以下の軽量組成物が更に好ましい。
【0036】
~動作~
本発明における電磁波を照射する方法としては、揮発性液体含有組成物に電磁波を照射することで揮発性液体含有組成物に含まれる揮発性液体を揮発させることができる装置により行う方法であれば何れでもよいが、電子レンジを用いる方法が、装置を安価に入手し易く、且つ施工現場でも容易に行うことができるので好ましい。電子レンジの庫内に揮発性液体含有組成物の試料を設置し、電子レンジのスイッチを入れ、当該庫内に電磁波を照射する。
【0037】
本発明において照射する電磁波は、揮発性液体を揮発できる周波数及び強さのものであればよい。本発明において照射する電磁波が、赤外線乃至マイクロ波であると揮発性液体が揮発され易いことから好ましく、特に、マイクロ波であると、揮発性液体が水又は水溶液のときに短時間で揮発性液体を揮発させることができることからより好ましい。電子レンジは、2.45GHzのマイクロ波を発生させ、庫内のものに照射することから、本発明における電磁波を照射する方法として電子レンジを用いる方法がより好ましい。
【0038】
本発明において電磁波を照射する時間は、電磁波を照射する揮発性液体含有組成物の質量が恒量となる時間であり、予備試験により設定しておくことが好ましい。試験施工において、設定された照射時間、当該組成物に電磁波を照射し揮発性液体を揮発させる。これにより、確実に恒量となり、精度を担保できる(検証下記)。
【0039】
また、本発明において電磁波を照射する時間は、揮発性液体含有組成物に含まれる化合物が電磁波の長時間の照射で分解される場合は、分解されない範囲内の照射時間とする。そのためにも、予備試験により電磁波で揮発性液体含有組成物に含まれる化合物が分解されない範囲内であることを確認して電磁波を照射する時間を設定することが好ましい。
【0040】
予備試験により照射時間を設定しておくことにより、試験施工をより短時間で手間取ることなく行うことができる。
【0041】
予備試験を行わない場合は、試験施工において、照射する時間を増しながら照射後における揮発性液体含有組成物の質量を測定し恒量となった時点で電磁波の照射を終了することで、電磁波を照射する時間を定める。
【0042】
試験施工において、電磁波を照射する揮発性液体含有組成物の試料を採取する方法としては、板やブロック等の下地に揮発性液体含有組成物を形成した後に切り取ることで採取する方法、所定の容積の容器内に充填することで採取する方法等が好適な方法として挙げられるが、特に限定されない。
【0043】
本発明では、試験施工において推定された絶乾嵩密度が所定範囲内であることを確認し、推定された絶乾嵩密度が所定範囲内である場合は、本施工において、試験施工における施工条件と同一の施工条件で揮発性液体を含有する組成物を形成する。推定された絶乾嵩密度が所定範囲外である場合は、本施工を中断し、不具合の原因を検討し、所定範囲内の絶乾嵩密度となるよう調整する。
【0044】
ここで所定範囲とは、管理基準を満たす範囲を言いい、本施工で形成される揮発性液体含有組成物からなる層が必要とされる耐火性、防火性、吸音性、断熱性等の性能を満たすために設定されている絶乾嵩密度の範囲をいう。
【0045】
本発明において、試験施工の施工条件と本施工の施工条件が同一とは、揮発性液体含有組成物の形成にポンプ、ブロワ、解綿機等の機械を用いる場合は、その機械の各設定値を同じとにして揮発性液体含有組成物を形成することであり、鏝塗り等の人力で行う場合は、極力同程度となるように作業を行うことで揮発性液体含有組成物を形成することである。また、揮発性液体含有組成物を構成する材料の種類・配合割合が同一ということも、施工条件が同一ということに含まれる。
【0046】
本発明において、試験施工は、本施工の前日(または前日以前)に行ってもよいし、本施工当日の本施工直前に行ってもよい。試験施工は本施工の現場で行ってもよいし、別現場でおこなってもよい。
【0047】
本発明において絶乾嵩密度の推定は短時間で行えるため、本施工直前におこなっても、本施工の工程に影響を与えることはない。本施工直前におこなう試験施工は、別途装置や人員を準備する必要がなく、コストも最小限に抑えられる。
【0048】
さらに、試験施工は、本施工の一部として行ってもよい。具体的には、本施工で組成物を形成するとともに、当該形成組成物の一部を試料として採取し、絶乾嵩密度を推定し、所定範囲内であることを確認する。
【0049】
本施工の一部としての試験施工は、本施工の前半に、好ましくは本施工の初期、より好ましくは本施工の開始直後におこなう。また、所定の出来高毎や所定の時間毎におこなってもよい。
【0050】
本施工中に本施工が適切におこなわれていることを確認できるため、施工者の心理的負担を大きく軽減できる。
【0051】
~施工装置例~
図1は、本施工に用いる吹付システムの装置例である。ロックウールの半乾式吹付工法を例に装置構成及び装置動作を説明する。なお、ロックウールの半乾式吹付工法におけるセメントスラリーの代わりに、水、珪酸ナトリウム水溶液及び高炉スラグ粉末を混合したスラリーを用いた半乾式吹付工法の場合も類似である。
【0052】
吹付装置10は、解綿機20と、ブロワ14と、繊維圧送用ホース9と、液状添加材用圧送ポンプ7と、液状添加材圧送用ホース6と、粒状繊維吹付ノズル1とを備える。
【0053】
解綿機20は、第一解綿部21と、第二解綿部22と、ホッパ23と、スクリューフィーダ24と、ロータリフィーダ(定量供給装置)25と、繊維圧送管26とを有する。
【0054】
パック状の繊維(ロックウール粒状綿)が開封され、ホッパ23に投入される。繊維は、第一解綿部21により解綿されながら内部に供給され、スクリューフィーダ24により搬送され、第二解綿部22により細粒化され、外部の供給量指令に基づいてロータリフィーダ25により、所定量の繊維が繊維圧送管26に供給される。繊維圧送管26は、ブロワ14と繊維圧送用ホース9との間に介挿されている。
【0055】
繊維圧送管26に供給された繊維は、ブロワ(送風機)14によりホース内を圧送され、粒状繊維吹付ノズル1まで搬送され、吐出口より吐出される。ブロワ14は外部の風速指令に基づいて所定の風速とすることができる。
【0056】
粒状繊維吹付ノズル1は、吐出口の中央付近(吹付ノズルの中心軸付近)に液状添加材用の噴射口3を有する。
【0057】
液状添加材用貯留槽8において液状添加材が貯留されている。液状添加材がセメントスラリー等のようなスラリー状の場合は、分散媒(例えば、水)と分散質(例えば、セメント)が混合されており、液状添加材用貯留槽8に攪拌装置を設定し攪拌してもよい。液状添加材(例えば、セメントスラリー)は、液状添加材用圧送ポンプ7により液状添加材圧送用ホース6を通り、噴射口3から噴射される。
【0058】
粒状繊維吹付ノズル1から吐出した粒状繊維と、液状添加材用の噴射口3より噴射されたセメントスラリーが、粒状繊維吹付ノズル1の先で合流混合した上で、被覆対象物の表面を被覆し、合流混合物からなる繊維層が形成される。
【0059】
施工者の経験から施工条件を設定して施工を行っても形成した繊維層の絶乾嵩密度が所定範囲から外れていれば同じ個所を再度施工しなければならず、絶乾嵩密度が所定より小さい場合は、同じ個所に追加の繊維層を吹付けた後に鏝などで押し込んで絶乾嵩密度を所定内に仕上げ、絶乾嵩密度が所定より大きい場合は、形成した繊維層を除去して再度同じ個所を施工し直さねばならず、工期が伸び且つコストが余計に掛かってしまい、施工者の心理的負担は重い。
【0060】
~検証~
以下の実施例および参考例を介して、本発明の検証をおこなった。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
[試料作製]
水を含有する2種類のスラリー(スラリー1、スラリー2)を作製した。なお、適用例を複数示す意図であり、スラリーの種類の相違による比較は行っていない。
・スラリー1
水、珪酸ナトリウム水溶液及び高炉スラグ粉末を混合したスラリー(固形分15.5質量%)。
・スラリー2
水とセメントを混合したスラリー(水セメント比200%)。
作製した各スラリ-とロックウールを混合して揮発性液体を含有する組成物(揮発性液体含有組成物)に当たるロックウール組成物を作製した。各スラリーとロックウールの混合比率は、質量比で以下の通りとした。
スラリー1:ロックウール=3:2
スラリー2:ロックウール=3:1.5
【0062】
[試料採取]
2種類の方法でロックウール組成物を作製し、かさ比重測定用切り取り器により直径8cmの円柱状に、切り取り、試料とした。
・充填による試料(表示:充填)
作製したロックウール組成物を20×20×5cmの型枠に充填した。
・吹付けによる試料(表示:吹付け)
所定の配合割合となる量の各スラリーとロックウールを吹付ノズルから噴射し、当該ノズル先で合流混合してロックウール組成物としてベニヤ板に吹付けた。
【0063】
[絶乾嵩密度]
従来技術におけるロックウール組成物の絶乾嵩密度ρは、庫内温度105℃の乾燥機による加熱により質量が恒量となったときの嵩密度である。
これに対し、採取したロックウール組成物の試料の厚さを測定した後に、電磁波照射加熱と乾燥機加熱(従来技術類似)により密度ρ1(推定絶乾嵩密度)を求めた。なお、このとき、当該ロックウール組成物からなる試料の乾燥後の体積V1は、乾燥前の試料の厚さから求まる乾燥前の当該試料の体積V0と等しいため、乾燥後の質量M1と乾燥前の体積V0を用いた。
・電子レンジ内でのマイクロ波の照射による加熱(表示:マイクロ波)
定格高周波600Wの電子レンジ内に採取したロックウール組成物の試料を入れ、蓋を閉めて、表1に示す時間マイクロ波を照射することで当該試料を加熱した。
・乾燥機による加熱(表示:乾燥機)
庫内温度105℃の乾燥機内に採取したロックウール組成物の試料を入れ、蓋を閉めて、表1に示す時間加熱した。
【0064】
[加熱時間]
予備試験をおこない、電子レンジ内でのマイクロ波照射による加熱により恒量となる加熱時間(照射時間)を求めた。ここで恒量とは、約2分間追加で加熱しても最小表示0.1gのデジタル秤で試料の質量を計量して変化がなかったとき、つまり、試料の質量減量が0.1g未満のことをいい、そのときの質量変化率は0.23質量%未満である。試料の厚みが4.0~5.0cmでロックウール組成物の絶乾嵩密度ρが0.19(g/cm3)以下であれば5分、ロックウール組成物の絶乾嵩密度ρが0.20~0.31(g/cm3)であれば7分の加熱時間で恒量となる。また、これらの加熱時間(照射時間)では、ロックウール組成物に含まれる化合物は分解されない。
【0065】
【0066】
[考察]
試料No.1~4(充填)においても、試料No5~7(吹付け)においても、推定絶乾嵩密度ρ1と絶乾嵩密度ρ(従来技術)は略等しく、充分な推定精度が得られることを検証した。
また、試料作成方法の相違(充填/吹付け)により、推定精度は影響されないことを検証した。なお、試料作成方法の相違(充填/吹付け)により、試料厚さは相違する。
【0067】
試料No.8および試料No.9は参考例である。条件の類似する実施例試料No.4と比較する。
【0068】
試料No.4の加熱時間は7分であるのに対し、試料No.9の加熱時間は180分である。本発明の推定方法は、短時間で従来技術と同等の精度を担保している。
【0069】
試料No.8の加熱時間を試料No.4と同じく7分とする。試料No.8では、推定絶乾嵩密度ρ1と絶乾嵩密度ρ(従来技術)は大きく異なり、本発明のような短時間では充分な精度は得られない。
【符号の説明】
【0070】
1 粒状繊維吹付ノズル 2 圧力計
3 液状添加材用の噴射口 4 液状添加材
5 粒状繊維(ロックウール粒状綿) 6 液状添加材圧送用ホース
7 液状添加材用圧送ポンプ 8 液状添加材用貯留槽
9 繊維圧送用ホース 10 吹付けシステム
11 繊維(ロックウール粒状綿) 12 合流混合物からなる繊維層
13 被覆対象物 14 ブロワ(送風機)
20 解綿機 21 第一解綿部
22 第二解綿部 23 ホッパ
24 スクリューフィーダ 25 ロータリフィーダ(定量供給装置)
26 繊維圧送管