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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018601
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240201BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/306 J
C23F1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122032
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 翔太
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 啓之
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA20
4K057WB08
4K057WC01
4K057WC10
4K057WD05
4K057WE08
4K057WE23
4K057WE30
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD02
5F043DD07
5F043DD10
5F043DD30
5F043EE01
5F043EE24
5F043EE25
5F043EE36
5F043EE40
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる方法でモリブデン膜を酸化させることができ、モリブデン膜の酸化していない部分を基板に残しながら、モリブデン膜の酸化した部分を基板から除去できる方法および装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、酸素ガスまたはオゾンガスを複数枚の基板Wに供給しながら、酸化空間SO内の複数枚の基板Wを加熱することにより、モリブデン膜の表層を三酸化モリブデンに変化させる酸化工程と、酸化空間SOとは異なる基板処理装置1内のエッチング空間SEに酸化空間SO内の複数枚の基板Wを搬送する第1搬送工程と、エッチング空間SE内の複数枚の基板Wにエッチング液を供給することにより、モリブデン膜の表層以外の部分を基板Wに残しながら、三酸化モリブデンに変化した表層をエッチング液に溶解させるエッチング工程とを含む。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスまたはオゾンガスを基板処理装置内の酸化空間に配置された複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる酸化工程と、
前記酸化空間とは異なる前記基板処理装置内のエッチング空間に前記酸化空間内の前記複数枚の基板を搬送する第1搬送工程と、
前記エッチング空間内の前記複数枚の基板にエッチング液を供給することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させるエッチング工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記酸化工程は、前記オゾンガスを前記酸化空間内の前記複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング液は、水を主成分とする水含有液である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板処理方法は、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記酸化空間に搬送する第2搬送工程をさらに含み、
前記基板処理方法は、前記酸化工程、第1搬送工程、エッチング工程、および、第2搬送工程を含む1つのサイクルを複数回行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記酸化工程は、前記複数枚の基板を基板ホルダーで保持した状態で、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記酸化空間内の前記複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱し、
前記第1搬送工程は、前記基板ホルダーを前記酸化空間から前記エッチング空間に移動させることにより、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を前記エッチング空間に搬送し、
前記エッチング工程は、前記複数枚の基板を前記基板ホルダーで保持した状態で、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板に前記エッチング液を供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1搬送工程は、前記酸化空間の一部と前記エッチング空間の一部とを形成する第1内側パーティションを移動させた後、前記第1内側パーティションが配置されていた空間を通じて、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を前記エッチング空間に搬送する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記酸化空間に搬送する第2搬送工程と、
前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を乾燥させる乾燥工程と、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記酸化空間およびエッチング空間とは異なる前記基板処理装置内の乾燥空間の一部と前記酸化空間またはエッチング空間の一部とを形成する第2内側パーティションを移動させた後、前記第2内側パーティションが配置されていた空間を通じて、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記乾燥空間に搬送する第3搬送工程と、
前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記乾燥空間内の前記複数枚の基板を乾燥させる乾燥工程と、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記エッチング液と同一の名称の液体であり、前記エッチング液とは異なるリンス液を前記複数枚の基板に供給するリンス工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
酸化空間とエッチング空間とを形成するパーティションと、
酸素ガスまたはオゾンガスを前記酸化空間に配置された複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる酸化手段と、
前記酸化空間とは異なる前記エッチング空間に前記酸化空間内の前記複数枚の基板を搬送する搬送システムと、
前記エッチング空間内の前記複数枚の基板にエッチング液を供給することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させるエッチング手段と、を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸素イオン注入または酸素プラズマドーピングによりモリブデン層を酸化させることにより酸化モリブデン部分(molybdenum oxide portion)を形成することと、アンモニア溶液などの液体を基板に供給するウェットエッチングによって、酸化されていないモリブデン層(non-oxidized molybdenum layer)を基板に残しながら、酸化モリブデン部分を基板から除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-509816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、酸素イオン注入または酸素プラズマドーピングによりモリブデン層を酸化させることを開示しているものの、これら以外の方法によりモリブデン層を酸化させることは開示していない。これら以外の方法によりモリブデン層を酸化させることが望まれる場合、特許文献1の開示ではこのような要望に応えることができない。
【0005】
本発明の目的の一つは、従来とは異なる方法でモリブデン膜を酸化させることができ、モリブデン膜の酸化していない部分を基板に残しながら、モリブデン膜の酸化した部分を基板から除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、酸素ガスまたはオゾンガスを基板処理装置内の酸化空間に配置された複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる酸化工程と、前記酸化空間とは異なる前記基板処理装置内のエッチング空間に前記酸化空間内の前記複数枚の基板を搬送する第1搬送工程と、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板にエッチング液を供給することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させるエッチング工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、複数枚の基板が基板処理装置内の酸化空間に配置された状態で、酸素ガスまたはオゾンガスを複数枚の基板に供給しながら複数枚の基板を加熱する。これにより、酸素ガスまたはオゾンガスに含まれる酸素原子がモリブデンと結合し、モリブデン膜の表層が三酸化モリブデンに変化する。その後、複数枚の基板を基板処理装置内の酸化空間から基板処理装置内のエッチング空間に搬送し、エッチング空間内の複数枚の基板にエッチング液を供給する。三酸化モリブデンは、エッチング液に溶解する。したがって、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層がエッチングされ、三酸化モリブデンに変化していないモリブデン膜の表層以外の部分が基板に残る。
【0008】
このように、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら基板を加熱することにより、基板に形成されたモリブデン膜を酸化させることができる。さらに、1つの基板処理装置内でモリブデン膜を酸化させエッチングするので、モリブデン膜の酸化とモリブデン酸化膜のエッチングとを別々の基板処理装置内で行う場合に比べて、基板の搬送に要する時間を短縮できる。加えて、複数枚の基板を一括して酸化させ、一括してエッチングするので、複数枚の基板を一枚ずつ酸化させ、1枚ずつエッチングする場合に比べて、酸化およびエッチングに要する時間を短縮できる。
【0009】
酸素ガスおよびオゾンガスは、酸素原子を含む酸素原子含有ガスである。基板への酸素原子含有ガスの供給は、酸素原子含有ガスを酸化空間に充満させることにより行ってもよいし、酸化空間内で酸素原子含有ガスを吐出することにより行ってもよい。後者の場合、酸素原子含有ガスが酸化空間に充満してもよいし、酸素原子含有ガス以外のガスが酸化空間に存在してもよい。つまり、モリブデンを三酸化モリブデンに変化させる十分な量の酸素原子がモリブデン膜の表面に供給されるのであれば、酸素原子含有ガスをどのように基板に供給してもよい。
【0010】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
【0011】
前記酸化工程は、前記オゾンガスを前記酸化空間内の前記複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱する。
【0012】
この方法によれば、酸素ガスではなく、オゾンガスを基板に供給しながら基板を加熱する。したがって、酸素ガスを基板に供給しながら基板を加熱する場合に比べて、効率的にモリブデン膜の表層を三酸化モリブデンに変化させることができる。これにより、モリブデン膜の表層を三酸化モリブデンに変化させる時間を短縮でき、基板処理装置のスループット(単位時間あたりの基板の処理枚数)を増加させることができる。
【0013】
前記エッチング液は、水を主成分とする水含有液である。
【0014】
この方法によれば、基板をエッチングするために、水を主成分とする水含有液を基板に供給する。三酸化モリブデンが水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。したがって、薬液を使わずに、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層を基板から除去できる。これにより、エッチング液が薬液である場合に比べて、排液の処理を簡素化でき、環境への負荷を軽減できる。
【0015】
エッチング液に相当する水含有液は、純水などの水(水の体積濃度が100%または実質的に100%の液体)であってもよいし、水の体積濃度が90%以上100%未満の液体であってもよい。後者の場合、低濃度であれば薬品が水含有液に溶解していてもよい。この場合、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層をより短時間で基板から除去できる。
【0016】
前記基板処理方法は、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記酸化空間に搬送する第2搬送工程をさらに含み、前記基板処理方法は、前記酸化工程、第1搬送工程、エッチング工程、および、第2搬送工程を含む1つのサイクルを複数回行う。
【0017】
この方法によれば、エッチング空間内の複数枚の基板にエッチング液を供給した後、複数枚の基板を酸化空間に搬送し、複数枚の基板に形成された複数のモリブデン膜を酸化させる。つまり、モリブデン膜の酸化とモリブデン酸化膜のエッチングとを交互に複数回繰り返す。これにより、モリブデン膜の厚さを段階的に減少させることができ、モリブデン膜の厚さを段階的に調整できる。
【0018】
酸化工程、第1搬送工程、エッチング工程、および、第2搬送工程を含む1つのサイクルを複数回行う場合、酸化工程で形成されるモリブデン酸化膜の厚さは、毎回同じであってもよいし、複数の酸化工程の間で異なっていてもよい。同様に、エッチング工程でのモリブデン膜の厚みの減少量、つまり、エッチング液に溶解したモリブデン酸化膜の厚さは、毎回同じであってもよいし、複数のエッチング工程の間で異なっていてもよい。
【0019】
前記酸化工程は、前記複数枚の基板を基板ホルダーで保持した状態で、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記酸化空間内の前記複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱し、前記第1搬送工程は、前記基板ホルダーを前記酸化空間から前記エッチング空間に移動させることにより、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を前記エッチング空間に搬送し、前記エッチング工程は、前記複数枚の基板を前記基板ホルダーで保持した状態で、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板に前記エッチング液を供給する。
【0020】
この方法によれば、複数枚の基板を基板ホルダーで保持した状態で、複数のモリブデン膜を酸化させ、複数枚の基板を酸化空間からエッチング空間に搬送し、複数のモリブデン酸化膜をエッチングする。つまり、モリブデン膜の酸化、酸化空間からエッチング空間への基板の搬送、および、モリブデン酸化膜のエッチングを行うために、基板ホルダーに保持されている複数枚の基板を、別の基板ホルダーに移動させる必要がないし、複数の基板ホルダーを設ける必要もない。これにより、基板処理装置のスループットを増加させることができる。
【0021】
前記第1搬送工程は、前記酸化空間の一部と前記エッチング空間の一部とを形成する第1内側パーティションを移動させた後、前記第1内側パーティションが配置されていた空間を通じて、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を前記エッチング空間に搬送する。
【0022】
この方法によれば、第1内側パーティションが、酸化空間とエッチング空間との間に配置されており、酸化空間の輪郭の一部とエッチング空間の輪郭の一部とを形成している。酸化空間の少なくとも一部は、第1内側パーティションだけでエッチング空間から隔てられている。第1内側パーティションを移動させると、複数枚の基板が酸化空間とエッチング空間との間で移動できるようになる。酸化空間が第1内側パーティションだけを介してエッチング空間の近くに配置されているので、エッチング空間に基板を搬送する時間を短縮でき、基板処理装置のスループットを増加させることができる。
【0023】
前記基板処理方法は、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記酸化空間に搬送する第2搬送工程と、前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を乾燥させる乾燥工程と、をさらに含む。
【0024】
この方法によれば、エッチング液を複数枚の基板に供給した後に、複数枚の基板をエッチング空間から酸化空間に移動させる。その後、酸化空間内の複数枚の基板を乾燥させる。つまり、酸化空間が、基板を乾燥させる乾燥空間を兼ねており、酸化空間内の基板に対してモリブデン膜の酸化と乾燥とが行われる。したがって、酸化空間とは別の乾燥空間を設ける場合に比べて基板処理装置を小型化できる。
【0025】
前記酸化工程、第1搬送工程、エッチング工程、および、第2搬送工程を含む1つのサイクルを複数回行う場合には、最終サイクルのエッチング工程の後に第2搬送工程によって酸化空間に搬送された複数枚の基板に対して乾燥工程が実行される。
【0026】
前記基板処理方法は、前記酸化空間およびエッチング空間とは異なる前記基板処理装置内の乾燥空間の一部と前記酸化空間またはエッチング空間の一部とを形成する第2内側パーティションを移動させた後、前記第2内側パーティションが配置されていた空間を通じて、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板を前記乾燥空間に搬送する第3搬送工程と、前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記乾燥空間内の前記複数枚の基板を乾燥させる乾燥工程と、をさらに含む。
【0027】
この方法によれば、第2内側パーティションが、酸化空間またはエッチング空間と乾燥空間との間に配置されている。乾燥空間の少なくとも一部は、第2内側パーティションだけで酸化空間またはエッチング空間から隔てられている。第2内側パーティションを移動させると、複数枚の基板が乾燥空間に入ることができ、乾燥空間から出ることができるようになる。乾燥空間が第2内側パーティションだけを介して酸化空間またはエッチング空間の近くに配置されているので、乾燥空間に基板を搬送する時間を短縮でき、基板処理装置のスループットを増加させることができる。加えて、酸化空間またはエッチング空間が乾燥空間を兼ねる場合に比べて、基板処理装置の構造を簡素化できる。
【0028】
前記酸化工程、第1搬送工程、エッチング工程、および、第2搬送工程を含む1つのサイクルを複数回行う場合には、最終サイクルのエッチング工程の後に第3搬送工程によって酸化空間に搬送された複数枚の基板に対して乾燥工程が実行される。
【0029】
前記基板処理方法は、前記エッチング液を前記複数枚の基板に供給した後に、前記エッチング液と同一の名称の液体であり、前記エッチング液とは異なるリンス液を前記複数枚の基板に供給するリンス工程をさらに含む。
【0030】
この方法によれば、エッチング液を複数枚の基板に供給した後に、リンス液を複数枚の基板に供給する。これにより、基板に付着しているエッチング液やパーティクルをリンス液で洗い流すことができる。エッチング液およびリンス液が種類の異なる液体である場合、エッチング液用の配管等とリンス液用の配管等と設ける必要がある。両者が同一の名称の液体である場合、別々の配管等を設ける必要がなく、基板処理装置の構造を簡素化できる。
【0031】
本発明の他の実施形態は、酸化空間とエッチング空間とを形成するパーティションと、酸素ガスまたはオゾンガスを前記酸化空間に配置された複数枚の基板に供給しながら、前記酸化空間内の前記複数枚の基板を加熱することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる酸化手段と、前記酸化空間とは異なる前記エッチング空間に前記酸化空間内の前記複数枚の基板を搬送する搬送システムと、前記エッチング空間内の前記複数枚の基板にエッチング液を供給することにより、前記複数枚の基板のそれぞれにおいて、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させるエッチング手段と、を含む、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。前述の基板処理方法に関する特徴の少なくとも1つを前記基板処理装置に加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】本発明の第1実施形態に係る基板の処理が行われる前の基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図1B】本発明の第1実施形態に係る基板の処理が行われているときの基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図1C】本発明の第1実施形態に係る基板の処理が行われた後の基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るバッチ式の基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図3A】副搬送ロボットの概略正面図である。
図3B】副搬送ロボットの概略左側面図である。
図4A】処理ユニットの鉛直断面を示す概略断面図である。
図4B】処理ユニットの鉛直断面を示す概略断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図6A-D】図5に示す基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図6E-G】図5に示す基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る処理ユニットの鉛直断面を示す概略断面図である。
図8A】本発明の第2実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図8B】本発明の第2実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図8C】本発明の第2実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る処理ユニットの鉛直断面を示す概略断面図である。
図10A】本発明の第3実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図10B】本発明の第3実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図10C】本発明の第3実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
図10D】本発明の第3実施形態に係る基板の処理の一例が行われているときの処理ユニットの状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
最初に、本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理の概要について説明する。
【0035】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理が行われる前の基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。図1Bは、本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理が行われているときの基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。図1Cは、本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理が行われた後の基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。
【0036】
モリブデン膜100は、半導体ウエハなどの基板Wの表面に形成されたモリブデン製の薄膜である。モリブデン膜100は、トランジスタなどの基板W上に形成されたデバイスに電気的に接続された金属配線(モリブデン配線)の一部であってもよい。金属配線は、層間絶縁膜上に配置された金属配線層、または、ビアホールなどの少なくとも1つの層間絶縁膜を貫通するホール内に配置された金属プラグであってもよいし、金属配線層または金属プラグの両方であってもよい。
【0037】
図1Aに示すように、モリブデン膜100は、モリブデン膜100の表面103の全域を含む表層102と、モリブデン膜100における表層102以外の部分を表すバルク101とによって構成されている。モリブデン膜100の表層102は、モリブデン膜100の表面103から一定またはほぼ一定の厚さの層を表す。基板Wが処理される前、モリブデン膜100の表面103は、モリブデンの酸化物によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。基板Wが処理される前、モリブデン膜100の表面103またはモリブデンの酸化物の表面は、レジストパターンなどの他の物質によって部分的に覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0038】
図1Aは、酸化モリブデン(MoO)と三酸化モリブデン(MoO)とを含むモリブデンの自然酸化膜104によってモリブデン膜100の表面103が覆われた例を示している。酸化モリブデンおよび三酸化モリブデンは、いずれも、モリブデンの酸化物の一例である。図1Aに示す例では、モリブデン膜100の表面103の一部または全部が、モリブデンの自然酸化膜104によって覆われている。モリブデンの自然酸化膜104は、半導体ウエハなどの基板Wの表面で露出しており、基板Wが配置された空間内の雰囲気に接している。
【0039】
本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理では、オゾンガスなどの酸素原子含有ガスを基板Wに供給しながら、基板Wを加熱する酸化工程を行う。オゾンガスは、酸素原子を含む酸素原子含有ガスの一例である。酸素原子含有ガスは、酸素ガスであってもよい。自然酸化膜104などのモリブデンの酸化物がモリブデン膜100上に形成されている場合、酸化工程を行う前に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによりモリブデンの酸化物をモリブデン膜100から除去してもよいし、モリブデンの酸化物を除去せずに酸化工程を行ってもよい。
【0040】
酸化工程を行うとき、接触加熱または非接触加熱により基板Wを加熱してもよいし、接触加熱および非接触加熱の両方により基板Wを加熱してもよい。接触加熱により基板Wを加熱する場合、デバイスが形成される基板Wの表面を上に向けた状態で、室温(15~30℃内の一定またはほぼ一定の温度)よりも高温のホットプレートの上に基板Wを水平に配置することにより、基板Wの下面をホットプレートに接触させてもよい。非接触加熱により基板Wを加熱する場合、ランプなどの熱源から放出された電磁波を基板Wに照射してもよい。酸化工程を行うとき、基板Wは、水平または鉛直な姿勢であってもよいし、これら以外の姿勢であってもよい。
【0041】
酸化工程を行うと、基板Wに接する雰囲気中のオゾンまたは酸素分子によってモリブデン膜100中のモリブデンが酸化され、モリブデン膜100の表面103が三酸化モリブデンに変化する。自然酸化膜104などのモリブデンの酸化物でモリブデン膜100の表面103が覆われている場合は、モリブデン膜100の表面103だけでなく、モリブデンの酸化物も三酸化モリブデンに変化する。これにより、図1Bに示すように、三酸化モリブデンを含むモリブデン酸化膜105が、モリブデン膜100の表面103上に形成される。
【0042】
モリブデン膜100は、モリブデン膜100の表面103からモリブデン膜100の内部に向かって徐々に三酸化モリブデンに変化していく。モリブデン膜100とモリブデン酸化膜105との境界は、モリブデン膜100の内部に向かって徐々に移動する。これにより、モリブデン酸化膜105の厚さが連続的に増加する。酸化工程を行う時間が後述する最大成長時間に達すると、後述する最大厚さのモリブデン酸化膜105がモリブデン膜100の表面103上に形成される。
【0043】
モリブデン酸化膜105は、モリブデン膜100に結合された三酸化モリブデンの薄膜である。モリブデン酸化膜105は、酸化モリブデンなどの三酸化モリブデン以外の物質を含んでいてもよい。図1Bは、モリブデン酸化膜105の表面106の全域が平坦であり、モリブデン酸化膜105の厚さが均一である例を示している。モリブデン酸化膜105は、モリブデン膜100よりも薄い。モリブデン酸化膜105の厚さは、モリブデン膜100の厚さ以上であってもよい。
【0044】
酸化工程を行う時間(オゾンガスなどの酸素原子含有ガスを基板Wに接触させながら基板Wを加熱する時間)を酸化時間と、酸化時間を除く酸化工程の条件を酸化条件とそれぞれ定義する。酸化条件には、複数のパラメータが含まれる。例えば、基板Wの温度と、基板Wに供給されるオゾンガスの濃度と、基板Wに供給されるオゾンガスの流量とは、酸化条件に含まれる。酸化時間は、酸化条件に含まれない。
【0045】
酸素原子含有ガスがオゾンガスである場合の酸化条件は以下のとおりである。具体的には、基板Wの温度は、150℃以上、例えば180~300℃の範囲内である。オゾンガスの濃度は、50g/m以上、例えば100~200g/mの範囲内である。オゾンガスの流量は、5SLM(Standard Litter Min)以上、例えば18~20SLMの範囲内である。酸化時間は、30秒以上、例えば30~300秒の範囲内である。後述するエッチング時間は、30秒以上である。酸化工程を行う前のモリブデン膜100の厚さとエッチング工程を行った後のモリブデン膜100の厚さとの差をリセス量と定義する。酸化条件にもよるが、酸化工程およびエッチング工程を一回ずつ行ったときのリセス量は、数十nm未満、例えば10nm未満である。前記の数値は、一例であり、これらに限られるものではない。
【0046】
酸化条件が一定であれば、モリブデン酸化膜105の厚さは、酸化時間が増加するにしたがって増加する。酸化条件が一定であれば、酸化時間が最大成長時間を超えても、モリブデン酸化膜105の厚さは、変化せずまたは殆ど変化せず、最大厚さまたはその付近にとどまる。つまり、酸化条件が一定であれば、酸化時間が最大成長時間に達すると、モリブデン酸化膜105の厚さは、最大厚さに達するものの、それ以上の時間酸化工程を続けても、モリブデン酸化膜105の厚さは、変化しないまたは殆ど変化しない。この現象を、セルフリミテーションということがある。
【0047】
モリブデン酸化膜105の最大厚さは、酸化条件に依存する。最大成長時間も、酸化条件に依存する。酸化条件が変わると、それに応じてモリブデン酸化膜105の最大厚さが増加または減少する。例えば、基板Wの温度が低下すると、モリブデン酸化膜105の最大厚さが減少する。基板Wに供給されるオゾンガスの濃度または流量が減少したときも、モリブデン酸化膜105の最大厚さが減少する。
【0048】
酸化工程を行った後は、図1Cに示すように、エッチング液を基板Wに供給することにより、モリブデン酸化膜105を基板Wから除去するエッチング工程を行う。図1Cは、エッチング液の供給によってモリブデン酸化膜105の全体が除去され、モリブデンで形成されたモリブデン膜100の平坦な表面103が露出した例を示している。エッチング液の供給によってモリブデン酸化膜105の全体が基板Wから除去されることが好ましいが、後工程で問題にならない程度であれば、モリブデン酸化膜105が基板Wに残ってもよい。
【0049】
エッチング液は、三酸化モリブデンを溶解し、モリブデンを溶解しないまたは殆ど溶解しない液体である。三酸化モリブデンは、水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。言い換えると、三酸化モリブデンが水に溶解する速度は、モリブデンが水に溶解する速度よりも大きい。したがって、水を含む液体であれば、エッチング液は、どのような液体であってもよい。例えば、エッチング液は、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))などの水であってもよいし、水酸化アンモニウム、アルカリ溶液、炭酸水、フッ酸、および塩酸などの水溶液であってもよい。水溶液における水の割合(溶質に対する水の割合)は、100以上であってもよいし、100未満であってもよい。
【0050】
エッチング液がモリブデン酸化膜105の表面106に接触すると、モリブデン酸化膜105の表面106を構成する三酸化モリブデンがエッチング液に溶解し、モリブデン酸化膜105が徐々に減少していく。エッチング時間、つまり、エッチング液がモリブデン酸化膜105に接している時間がエッチング終了時間に達すると、全てまたは殆ど全てのモリブデン酸化膜105がエッチング液に溶解する。エッチング液は、三酸化モリブデンを溶解し、モリブデンを溶解しないまたは殆ど溶解しない液体である。したがって、エッチング終了時間以上エッチング液の供給を継続しても、モリブデン膜100は減少しないまたは殆ど減少しない。
【0051】
エッチング工程を行うとき、エッチング終了時間以上連続してエッチング液を基板Wに供給してもよいし、エッチング液がモリブデン酸化膜105に接する時間の合計値を表す累積エッチング時間がエッチング終了時間以上であるように、エッチング液を基板Wに断続的に供給してもよい。また、エッチング工程を行うとき、基板Wの姿勢は、水平または鉛直であってもよいし、水平面に対して傾いていてもよい。図1Bは、基板Wを水平に維持しながら、エッチング工程を行う例を示している。
【0052】
モリブデン膜100の表層102をモリブデン酸化膜105に変化させた後、モリブデン酸化膜105をエッチング液でエッチングするのではなく、モリブデンを腐食させるエッチング液をモリブデン膜100に供給すると、モリブデン膜100の表面103のラフネス(粗さ)が良好でない場合がある。前述のように、モリブデン膜100の表層102をモリブデン酸化膜105に変化させた後に除去すれば、モリブデン膜100をエッチング液で直接エッチングする場合に比べて、エッチング後のモリブデン膜100のラフネスを改善(低減)することができる。
【0053】
全てまたは殆ど全てのモリブデン酸化膜105を基板Wから除去した後は、基板Wを簡易的にまたは完全に乾燥させる乾燥工程を行う。つまり、後述するように2回目以降の酸化工程を行う場合、基板Wに残留する液体が酸化工程等の支障にならなければ、次の酸化工程を行う前に、殆どの液体が基板Wから除去されるように基板Wを簡易的に乾燥させてもよい。もしくは、次の酸化工程を行う前に、全ての液体が基板Wから除去されるように基板Wを完全に乾燥させてもよい。エッチング液に含まれる薬品の濃度が高い場合、基板Wを乾燥させる前に、純水などのリンス液でエッチング液を洗い流してもよい。
【0054】
エッチング工程を行った後は、前述と同様に2回目の酸化工程を行い、その後、2回目のエッチング工程を行う。必要に応じて、3回目の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよいし、4回目以降の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよい。つまり、酸化工程およびエッチング工程をこの順番で行う1つのサイクルを2回以上行ってもよい。このようにすれば、モリブデン膜100の厚さを段階的に減少させることができる。最後のエッチング工程を行った後は、基板Wを完全に乾燥させる。
【0055】
前述のように、酸化工程では、モリブデン膜100の表面103側の部分が三酸化モリブデンに変化し、モリブデン膜100の厚さが減少するものの、モリブデン膜100はエッチングされない。各回の酸化工程で形成されるモリブデン酸化膜105の厚さが一定またはほぼ一定であれば、酸化工程ではエッチング量がゼロであり、エッチング工程ではエッチング量がゼロを超える一定またはほぼ一定の値となる。このような段階的なエッチングは、デジタルエッチングともいわれる。
【0056】
次に、基板処理装置1について説明する。
【0057】
図2は、本発明の第1実施形態に係るバッチ式の基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。
【0058】
基板処理装置1は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLPから搬送された基板Wを薬液やリンス液などの処理液で処理する処理ユニット2と、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システム8と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。
【0059】
制御装置3は、プログラム等の情報を記憶するメモリー3mと、メモリー3mに記憶されたプログラムにしたがって基板処理装置1を制御するCPU3c(central processing unit)と、を含むコンピューターである。制御装置3は、基板処理装置1を制御することにより、以下で説明する基板Wの搬送および処理等を行う。言い換えると、制御装置3は、以下で説明する基板Wの搬送および処理等を行うようにプログラミングされている。
【0060】
搬送システム8は、ロードポートLPと処理ユニット2との間でキャリアCAを搬送し、複数のキャリアCAを収容するキャリア搬送装置9と、キャリア搬送装置9に保持されているキャリアCAに対して複数枚の基板Wの搬入および搬出を行い、水平な姿勢と鉛直な姿勢との間で基板Wの姿勢を変更する姿勢変換ロボット10とを含む。姿勢変換ロボット10は、複数のキャリアCAから取り出した複数枚の基板Wで1つのバッチを形成するバッチ組み動作と、1つのバッチに含まれる複数枚の基板Wを複数のキャリアCAに収容するバッチ解除動作とを行う。
【0061】
搬送システム8は、さらに、姿勢変換ロボット10と処理ユニット2との間で複数枚の基板Wを搬送する主搬送ロボット11と、主搬送ロボット11と処理ユニット2との間で複数枚の基板Wを搬送する複数の副搬送ロボット12とを含む。図2は、2つの副搬送ロボット12と4つの処理ユニット2とが設けられた例を示している。この例では、4つの処理ユニット2が、平面視で基板処理装置1の奥行方向(主搬送ロボット11が基板Wを搬送する方向)に直線状に並んでいる。一方の副搬送ロボット12は、隣接する2つの処理ユニット2に対応しており、他方の副搬送ロボット12は、隣接する残り2つの処理ユニット2に対応している。副搬送ロボット12は、対応する2つの処理ユニット2のそれぞれに対して複数枚の基板Wの搬入および搬出を行う。
【0062】
主搬送ロボット11は、複数枚(例えば50枚)の基板Wで構成された1バッチの基板Wを姿勢変換ロボット10から受け取り、受け取った1バッチの基板Wを複数の副搬送ロボット12のいずれかに渡す。副搬送ロボット12は、主搬送ロボット11から受け取った1バッチの基板Wをいずれかの処理ユニット2に搬入し、処理ユニット2で処理された1バッチの基板Wを処理ユニット2から搬出する。その後、主搬送ロボット11は、1バッチの基板Wを副搬送ロボット12から受け取り、受け取った1バッチの基板Wを姿勢変換ロボット10に搬送する。
【0063】
図1Aに示すようなモリブデン膜100またはモリブデンの自然酸化膜104が露出した複数枚の基板Wは、キャリアCAに収容された状態でロードポートLPに搬送される。処理ユニット2は、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された複数枚の基板Wに対して前述の酸化工程およびエッチング工程を含む1つのサイクルを複数回行う。処理ユニット2で処理された複数枚の基板Wは、ロードポートLP上のキャリアCAに搬入され、キャリアCAに収容された状態でロードポートLPから搬送される。したがって、ロードポートLPを通じて基板処理装置1に搬入された基板Wは、処理ユニット2で処理された後、ロードポートLPを通じて基板処理装置1から搬出される。
【0064】
次に、副搬送ロボット12について説明する。
【0065】
図3Aは、副搬送ロボット12の概略正面図である。図3Bは、副搬送ロボット12の概略左側面図である。図3Bは、基板処理装置1(図2参照)の奥行方向(主搬送ロボット11が基板Wを搬送する方向)に副搬送ロボット12を水平に見た図である。図3Aは、基板処理装置1の幅方向(基板処理装置1の奥行方向に対して直交する水平方向)に副搬送ロボット12を水平に見た図である。
【0066】
図3Aおよび図3Bに示すように、副搬送ロボット12は、主搬送ロボット11(図2参照)によって搬送された複数枚の基板Wを鉛直な姿勢で保持するサポートフレーム13を含む。サポートフレーム13は、基板Wを保持する基板ホルダーの一例である。サポートフレーム13は、保持すべき複数枚の基板Wの下方に配置される複数のサポートバー14を含む。図3Aは、3つのサポートバー14が設けられた例を示している。サポートバー14の数は、2つであってもよい。
【0067】
複数のサポートバー14は、複数枚の基板Wに接触することにより、複数枚の基板Wが間隔を空けて平行に向かい合うように当該複数枚の基板Wを鉛直な姿勢で保持する。各サポートバー14は、複数枚の基板Wを一枚ずつ受け入れる複数の溝を形成している。複数枚の基板Wは、複数のサポートバー14の上に置かれる。このとき、各基板Wの外周部が、各サポートバー14の溝に嵌り、複数のサポートバー14に対する傾きが規制される。これにより、各基板Wが鉛直な姿勢に維持される。
【0068】
サポートフレーム13は、複数のサポートバー14に加えて、複数のサポートバー14に固定されたベースプレート15と、ベースプレート15を介して複数のサポートバー14に固定されたアッパープレート16とを含む。複数のサポートバー14は、ベースプレート15から水平に延びている。アッパープレート16は、ベースプレート15に対して複数のサポートバー14とは反対側に配置されている。アッパープレート16は、複数のサポートバー14よりも上方に配置されている。アッパープレート16を移動させると、複数のサポートバー14およびベースプレート15は、アッパープレート16と同じ方向に同じ速度で移動する。
【0069】
副搬送ロボット12は、複数枚の基板Wを保持しながら、当該複数枚の基板Wを昇降させるリフターに相当する。副搬送ロボット12は、サポートフレーム13を鉛直に平行移動させる昇降アクチュエータ17を含む。副搬送ロボット12は、さらに、サポートフレーム13を水平に平行移動させるスライドアクチュエータ18を含む。昇降アクチュエータ17の動力は、アッパープレート16およびベースプレート15を介して複数のサポートバー14に伝達される。スライドアクチュエータ18の動力は、昇降アクチュエータ17、アッパープレート16、およびベースプレート15を介して複数のサポートバー14に伝達される。
【0070】
昇降アクチュエータ17がサポートフレーム13を鉛直に平行移動させると、サポートフレーム13に支持されている複数枚の基板Wも鉛直に平行移動する。これにより、サポートフレーム13に支持されている複数枚の基板Wが鉛直に搬送される。同様に、スライドアクチュエータ18がサポートフレーム13を水平に平行移動させると、サポートフレーム13に支持されている複数枚の基板Wも水平に平行移動する。これにより、サポートフレーム13に支持されている複数枚の基板Wが水平に搬送される。
【0071】
昇降アクチュエータ17は、サポートフレーム13を鉛直に平行移動させるアクチュエータである。アクチュエータは、電気、流体、磁気、熱、または化学的エネルギーを機械的な仕事に変換する装置である。アクチュエータには、電動モータ、エアシリンダ、およびその他の装置が含まれる。昇降アクチュエータ17は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外であってもよい。アクチュエータの定義は、スライドアクチュエータ18などの他のアクチュエータについても同様である。
【0072】
次に、処理ユニット2について説明する。
【0073】
図4Aおよび図4Bは、処理ユニット2の鉛直断面を示す概略断面図である。図4Aは、副搬送ロボット12に保持されている複数枚の基板Wと平行な鉛直断面を示している。図4Bは、副搬送ロボット12に保持されている複数枚の基板Wに対して垂直な鉛直断面を示している。
【0074】
図4Aに示すように、処理ユニット2は、酸化空間SOおよびエッチング空間SEを含む処理ユニット2の内部空間を形成した複数のパーティション52を備えている。処理ユニット2は、さらに、酸化空間SO内の複数枚の基板Wに光を照射する少なくとも1つの加熱ランプ21と、酸化空間SO内の複数枚の基板Wにオゾンガスを供給するオゾンガス供給口22と、複数枚の基板Wが浸漬されるエッチング液をエッチング空間SEで溜める第1処理槽41とを備えている。以下では、これらの構成について説明する。
【0075】
最初に、基板Wの加熱とオゾンガスの供給について説明する。
【0076】
処理ユニット2は、酸化空間SO内の複数枚の基板Wに光を照射することにより、当該複数枚の基板Wを加熱温度で加熱する少なくとも1つの加熱ランプ21を備えている。加熱ランプ21は、酸化空間SO内の複数枚の基板Wを加熱するヒーターの一例である。加熱ランプ21は、ハロゲンランプまたはLED(light emitting diode)ランプであってもよいし、これら以外のランプであってもよい。加熱ランプ21は、電力の供給により光を発する光源と、光源を収容する透明なケースとを含む。
【0077】
図4Aおよび図4Bは、4つの加熱ランプ21が1つの酸化空間SOに配置された例を示している。1つの酸化空間SO内の基板Wに向けて光を照射する加熱ランプ21の数は、4未満または5以上であってもよい。酸化空間SO内の基板Wに光を照射できるのであれば、加熱ランプ21は、酸化空間SOの外に配置されていてもよい。複数枚の基板Wが酸化空間SOに配置されている場合、少なくとも1つの加熱ランプ21の光は、酸化空間SO内の全ての基板Wに照射される。これにより、酸化空間SO内の全ての基板Wが非接触で加熱される。
【0078】
図4Aに示すように、処理ユニット2は、酸化空間SOにオゾンガスを供給するオゾンガス供給口22を含む。オゾンガス供給口22は、オゾンガスが通過する空間と、この空間を形成する端面(典型的には、当該空間の全周を取り囲む環状の端面)とを含む。オゾンガス供給口22から流れ出たオゾンガスが酸化空間SOに供給されるのであれば、オゾンガス供給口22は、酸化空間SOを形成する壁面で開口していてもよいし、当該壁面よりも内側に配置されていてもよい。図4Aは、前者の例を示している。
【0079】
処理ユニット2は、オゾンガス供給口22に加えて、オゾンガス供給口22に供給されるべきオゾンガスを発生するオゾンガス発生器25と、オゾンガス発生器25で発生したオゾンガスをオゾンガス供給口22の方に導くオゾンガス配管23と、オゾンガス配管23からオゾンガス供給口22にオゾンガスが流れる開状態とオゾンガス配管23からオゾンガス供給口22にオゾンガスが流れない閉状態との間で開閉するオゾンガスバルブ24とを含む。
【0080】
図示はしないが、オゾンガスバルブ24は、流体が流れる内部流路と内部流路の一部を形成する環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3(図2参照)は、アクチュエータを制御することにより、オゾンガスバルブ24を開閉させる。
【0081】
処理ユニット2は、さらに、酸化空間SO内の気体を排出する第1排気口28と、第1排気口28に流入した気体を酸化空間SOから離れる方向に導く第1排気配管29と、酸化空間SO内の気体が第1排気口28に流入する開状態と酸化空間SO内の気体が第1排気口28に流入しない閉状態との間で開閉する第1排気バルブ30とを含む。第1排気口28は、排出すべき気体が通過する空間と、この空間を形成する端面とを含む。第1排気口28が酸化空間SO内の気体を排出できるのであれば、第1排気口28は、酸化空間SOを形成する壁面で開口していてもよいし、当該壁面よりも内側に配置されていてもよい。
【0082】
オゾンガスバルブ24を開くと、オゾンガスがオゾンガス供給口22から流れ出て、酸化空間SOに供給される。第1排気バルブ30を開いた状態でオゾンガスの供給を続けると、酸化空間SOがオゾンガスで満たされる。酸化空間SOでのオゾンガスの充満は、酸化空間SO内の気体を第1排気口28に排出しながら、オゾンガスを酸化空間SOに供給することにより行ってもよいし、酸化空間SO内の気体を第1排気口28に排出した後に、オゾンガスを酸化空間SOに供給することにより行ってもよい。
【0083】
酸化空間SOがオゾンガスで満たされた後、オゾンガス供給口22からのオゾンガスの供給と第1排気口28への気体の排出とを継続してもよいし、停止してもよい。前者の場合、酸化空間SOをオゾンガスで充満させながら、酸化空間SO内の気圧を酸化空間SOの外の気圧以上または未満の値に維持してもよい。この場合、第1排気バルブ30は、酸化空間SOの気圧が設定値以上まで上昇すると、当該気圧が設定値未満に低下するまで酸化空間SO内の気体を第1排気口28に流入させるリリーフバルブであってもよい。第1排気バルブ30は、開閉バルブとリリーフバルブとの両方を含んでいてもよい。
【0084】
処理ユニット2は、酸化空間SOに供給されるべき不活性ガスの一例である窒素ガスを導く第1不活性ガス配管26と、第1不活性ガス配管26から酸化空間SOに窒素ガスが流れる開状態と第1不活性ガス配管26から酸化空間SOに窒素ガスが流れない閉状態との間で開閉する第1不活性ガスバルブ27とを含む。図4Aは、第1不活性ガス配管26内の窒素ガスが、オゾンガス供給口22を介して酸化空間SOに供給される例を示している。第1不活性ガス配管26内の窒素ガスは、オゾンガス供給口22とは別の供給口を介して酸化空間SOに供給されてもよい。
【0085】
オゾンガスを酸化空間SOに供給した後は、酸化空間SO内のオゾンガスを第1排気口28を通じて排出する。具体的には、オゾンガスを酸化空間SOに供給した後、オゾンガスバルブ24を閉じ、第1排気バルブ30を開いた状態で、第1不活性ガスバルブ27を開く。これにより、窒素ガスが酸化空間SOに供給されると共に、オゾンガスなどの酸化空間SO内の気体が第1排気口28に排出される。その結果、酸化空間SO内のオゾンガスが窒素ガスで置換され、酸化空間SOが窒素ガスで満たされる。
【0086】
処理ユニット2は、水よりも揮発性が高く、水に溶解する有機溶剤の蒸気を酸化空間SOに供給する蒸気供給口31を含む。蒸気供給口31は、有機溶剤の蒸気が通過する空間と、この空間を形成する端面とを含む。蒸気供給口31から流れ出た有機溶剤の蒸気が酸化空間SOに供給されるのであれば、蒸気供給口31は、酸化空間SOを形成する壁面で開口していてもよいし、当該壁面よりも内側に配置されていてもよい。
【0087】
処理ユニット2は、蒸気供給口31に加えて、蒸気供給口31に供給されるべき有機溶剤の蒸気を発生する蒸気発生器34と、蒸気発生器34で発生した有機溶剤の蒸気を蒸気供給口31の方に導く蒸気配管32と、蒸気配管32から蒸気供給口31に有機溶剤の蒸気が流れる開状態と蒸気配管32から蒸気供給口31に有機溶剤の蒸気が流れない閉状態との間で開閉する蒸気バルブ33とを含む。図4Aは、有機溶剤の蒸気がIPA(イソプロピルアルコール)の蒸気である例を示している。IPAは、化学式中に親水基および疎水基を含むアルコールの一例である。
【0088】
蒸気バルブ33を開くと、IPAの蒸気が蒸気供給口31から流れ出て、酸化空間SOに供給される。第1排気バルブ30を開いた状態でIPAの蒸気の供給を続けると、酸化空間SOがIPAの蒸気で満たされる。酸化空間SOでのIPAの蒸気の充満は、酸化空間SO内の気体を第1排気口28に排出しながら、IPAの蒸気を酸化空間SOに供給することにより行ってもよいし、酸化空間SO内の気体を第1排気口28に排出した後に、IPAの蒸気を酸化空間SOに供給することにより行ってもよい。
【0089】
酸化空間SOがIPAの蒸気で満たされた後、蒸気供給口31からのIPAの蒸気の供給と第1排気口28への気体の排出を継続してもよいし、停止してもよい。前者の場合、酸化空間SOをIPAの蒸気で充満させながら、酸化空間SO内の気圧を酸化空間SOの外の気圧以上または未満の値に維持してもよい。この場合、第1排気バルブ30は、酸化空間SOの気圧が設定値以上まで上昇すると、当該気圧が設定値未満に低下するまで酸化空間SO内の気体を第1排気口28に流入させるリリーフバルブであってもよい。第1排気バルブ30は、開閉バルブとリリーフバルブとの両方を含んでいてもよい。
【0090】
IPAの蒸気が酸化空間SOに充満しており、純水などの液体が酸化空間SO内の基板Wに付着していると、IPAの蒸気が基板Wに接触し、基板Wに付着している液体がIPAの液体に置換される。基板Wに付着しているIPAの液体は、蒸発し基板Wからなくなる。これにより、基板Wに付着している液体が除去されると共に、乾燥空間を兼ねる酸化空間SO内で基板Wが乾燥する。
【0091】
処理ユニット2は、酸化空間SOに供給されるべき不活性ガスの一例である窒素ガスを導く第2不活性ガス配管35と、第2不活性ガス配管35から酸化空間SOに窒素ガスが流れる開状態と第2不活性ガス配管35から酸化空間SOに窒素ガスが流れない閉状態との間で開閉する第2不活性ガスバルブ36とを含む。図4Aは、第2不活性ガス配管35内の窒素ガスが、蒸気供給口31を介して酸化空間SOに供給される例を示している。第2不活性ガス配管35内の窒素ガスは、オゾンガス供給口22および蒸気供給口31とは別の供給口を介して酸化空間SOに供給されてもよい。
【0092】
IPAの蒸気を酸化空間SOに供給した後は、酸化空間SO内のIPAの蒸気を第1排気口28を通じて排出する。具体的には、IPAの蒸気を酸化空間SOに供給した後、蒸気バルブ33を閉じ、第1排気バルブ30を開いた状態で、第2不活性ガスバルブ36を開く。これにより、窒素ガスが酸化空間SOに供給されると共に、IPAの蒸気などの酸化空間SO内の気体が第1排気口28に排出される。その結果、酸化空間SO内のIPAの蒸気が窒素ガスで置換され、酸化空間SOが窒素ガスで満たされる。
【0093】
次に、エッチング液の供給について説明する。
【0094】
処理ユニット2は、複数枚の基板Wが浸漬されるエッチング液をエッチング空間SEで溜める第1処理槽41を含む。第1処理槽41は、エッチング液を溜めるエッチング処理槽に相当する。図4Aは、エッチング液が純水(図4AではDIWと表記)である例を示している。第1処理槽41は、エッチング液を貯留する内槽42と、内槽42からあふれたエッチング液を貯留する外槽43とを含む。内槽42は、筒状の外周壁と、外周壁の底を塞ぐ底壁とを含む。複数枚の基板Wは、内槽42の上側から内槽42の中に入れられ、内槽42内のエッチング液に浸される。これにより、複数枚の基板Wがエッチング液に接触し、エッチング液がそれぞれの基板Wに供給される。
【0095】
処理ユニット2は、第1処理槽41内のエッチング液を循環させる循環システムを備えている。循環システムは、外槽43内のエッチング液を内槽42の方に導く循環配管44と、循環配管44から供給されたエッチング液を内槽42内に配置された吐出口47pから吐出することにより、エッチング液を内槽42内に供給するリターンノズル47とを含む。図4Aは、2つのリターンノズル47が設けられた例を示している。この例では、循環配管44は、外槽43から下流に延びる上流配管44uと、上流配管44uから分岐した2つの下流配管44dとを含む。
【0096】
循環システムは、さらに、循環配管44内のエッチング液を内槽42の方に送る循環ポンプ46と、循環配管44内を流れるエッチング液から異物を除去するフィルター45とを含む。循環ポンプ46は、常時、循環配管44の上流端から循環配管44の下流端にエッチング液を送る。エッチング液は、内槽42から外槽43にあふれ続け、内槽42、外槽43、循環配管44、およびリターンノズル47によって形成された循環路を循環する。第1処理槽41内のエッチング液を室温よりも高いまたは低い温度に維持する場合、循環配管44内を流れるエッチング液をヒーターまたはクーラーにより加熱または冷却してもよい。
【0097】
次に、酸化空間SOおよびエッチング空間SEについて説明する。
【0098】
処理ユニット2は、酸化空間SOおよびエッチング空間SEを含む処理ユニット2の内部空間を形成した複数のパーティション52を備えている。パーティション52は、一枚の板であってもよいし、1つの平面上に配置され、互いに連結された複数枚の板であってもよい。パーティション52は、四角形または長方形であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。パーティション52が複数枚の板を含む場合、全ての板が同一の形状であってもよいし、形状が異なる複数枚の板がパーティション52に含まれていてもよい。パーティション52が複数枚の板を含む場合、各板の大きさおよび材質についても同様である。
【0099】
複数のパーティション52は、酸化空間SOの全周を取り囲んでいると共に、酸化空間SOの上方および下方に位置している。同様に、複数のパーティション52は、エッチング空間SEの全周を取り囲んでいると共に、エッチング空間SEの上方および下方に位置している。酸化空間SOおよびエッチング空間SEは、後述する第1内側パーティション57によって仕切られている。酸化空間SOは、平面視でエッチング空間SEに重なるようにエッチング空間SEの上方に配置されている。
【0100】
図4Bに示すように、複数のパーティション52は、基板処理装置1の外表面を形成する基板処理装置1の外壁51の内側に配置されている。複数のパーティション52は、基板処理装置1の外壁51に対して固定された少なくとも1つの固定パーティション53と、基板処理装置1の外壁51に対して移動可能な複数の可動パーティションとを含む。複数の可動パーティションは、処理ユニット2の内部空間の輪郭を形成する外側パーティション55と、処理ユニット2の内部空間を分割する第1内側パーティション57とを含む。
【0101】
複数のパーティション52は、処理ユニット2の内部空間に出入りする複数枚の基板Wが通過する出入口54を形成している。図4Aおよび図4Bは、酸化空間SOの上方に位置する固定パーティション53が出入口54を形成した例を示している。出入口54は、酸化空間SOの周囲に位置する固定パーティション53によって形成されていてもよい。出入口54は、酸化空間SOを形成する固定パーティション53以外の固定パーティション53によって形成されていてもよい。
【0102】
出入口54は、シャッターに相当する外側パーティション55によって開閉される。開閉アクチュエータ56は、複数枚の基板Wが出入口54を通過可能な開位置と、出入口54が外側パーティション55によって閉じられる閉位置と、の間で外側パーティション55を移動させる。外側パーティション55は、開位置と閉位置との間で平行移動するスライド式、または、開位置と閉位置との間で回転する回転式であってもよいし、これら以外の形式であってもよい。開閉アクチュエータ56が外側パーティション55を閉位置に移動させると、出入口54は、外側パーティション55によって密閉される。
【0103】
処理ユニット2の内部空間は、第1内側パーティション57によって酸化空間SOとエッチング空間SEとに分割されている。第1内側パーティション57は、酸化空間SOとエッチング空間SEとの間に配置されており、両者を仕切っている。酸化空間SOの輪郭は、外側パーティション55、第1内側パーティション57、および、固定パーティション53によって形成されている。エッチング空間SEの輪郭は、第1内側パーティション57、および、固定パーティション53によって形成されている。
【0104】
通行切替アクチュエータ58は、複数枚の基板Wが酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動できる開位置と、酸化空間SOとエッチング空間SEとの間での基板Wの移動が第1内側パーティション57によって遮られる閉位置と、の間で第1内側パーティション57を移動させる。第1内側パーティション57は、開位置と閉位置との間で平行移動するスライド式、または、開位置と閉位置との間で回転する回転式であってもよいし、これら以外の形式であってもよい。通行切替アクチュエータ58が第1内側パーティション57を閉位置に移動させると、液体および気体などの流体が酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動できないように、酸化空間SOおよびエッチング空間SEが第1内側パーティション57によって分断される。
【0105】
図4B中の2つの白い矢印は、外側パーティション55が開位置と閉位置との間で基板処理装置1の幅方向(図4Bの左右方向)に移動し、第1内側パーティション57が開位置と閉位置との間で基板処理装置1の幅方向に移動することを表している。外側パーティション55は、基板処理装置1の幅方向とは異なる方向に移動可能であってもよい。第1内側パーティション57についても同様である。
【0106】
複数のパーティション52は、加熱ランプ21および第1処理槽41を収容している。加熱ランプ21は、酸化空間SOに配置されている。第1処理槽41は、エッチング空間SEに配置されている。図4Aおよび図4Bに示す例では、第1内側パーティション57は、第1処理槽41よりも上方に配置されており、外側パーティション55は、第1内側パーティション57よりも上方に配置されている。外側パーティション55および第1内側パーティション57がそれぞれの閉位置に配置されると、外側パーティション55は、平面視で第1内側パーティション57に重なる。内槽42内のエッチング液の表面から第1内側パーティション57の下面までの鉛直方向の距離は、基板Wの直径よりも小さい。当該距離は、基板Wの直径以上であってもよい。
【0107】
酸化空間SOおよびエッチング空間SEは、基板処理装置1の内部に形成された空間である。外側パーティション55および第1内側パーティション57がそれぞれの閉位置に配置されると、酸化空間SOは密閉される。つまり、オゾンガス供給口22、蒸気供給口31、および第1排気口28などの特定の場所を経由する場合を除き、流体は酸化空間SOに出入りできない。第1内側パーティション57が閉位置に配置されているとき、エッチング空間SEは、酸化空間SOと同様の密閉空間であってもよいし、流体が自由に出入りできる開放空間であってもよい。
【0108】
副搬送ロボット12は、処理ユニット2の内部空間に対して複数枚の基板Wの搬入および搬出を行う。副搬送ロボット12は、さらに、複数枚の基板Wを処理ユニット2の内部空間で移動させ、処理ユニット2の内部空間内の任意の位置で静止させる。図4Aおよび図4Bに示す例では、副搬送ロボット12は、複数枚の基板Wを酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動させると共に、酸化空間SOおよびエッチング空間SEのそれぞれで複数枚の基板Wを静止させる。
【0109】
前述のように、副搬送ロボット12は、複数のサポートバー14、ベースプレート15、およびアッパープレート16を含む。複数のサポートバー14は、複数枚の基板Wを支持した状態で、酸化空間SOおよびエッチング空間SEを含む処理ユニット2の内部空間に配置される。このとき、ベースプレート15も処理ユニット2の内部空間に配置される。アッパープレート16は、少なくとも1つのパーティション52を貫通するガイド溝59に差し込まれる。したがって、アッパープレート16の一部は、処理ユニット2の内部空間に配置され、アッパープレート16の残りの部分は、処理ユニット2の内部空間の外に配置される。
【0110】
ガイド溝59は、少なくとも1つのパーティション52の内表面および外表面で開口している。ガイド溝59は、複数のパーティション52の外側の空間と処理ユニット2の内部空間とを接続している。アッパープレート16は、ガイド溝59に挿入された状態で、複数のサポートバー14およびベースプレート15と共に移動する。アッパープレート16の一部がガイド溝59内で静止しているとき、およびガイド溝59内で移動しているとき、アッパープレート16の表面とガイド溝59の内面との間の隙間は、シールによって密閉される。これにより、アッパープレート16とガイド溝59との間が密閉された状態が維持される。
【0111】
次に、基板Wの処理の一例について説明する。
【0112】
図5は、本発明の第1実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。図6A図6B図6C図6D図6E図6F、および図6Gは、図5に示す基板Wの処理の一例が行われているときの処理ユニット2の状態を示す概略断面図である。以下では、図4A図4B、および図5を参照する。図6A図6Gについては適宜参照する。
【0113】
処理ユニット2で基板Wを処理するときは、1つのバッチを構成する複数枚の基板Wを主搬送ロボット11(図2参照)が副搬送ロボット12に渡す。その後、開閉アクチュエータ56が、処理ユニット2のシャッターに相当する外側パーティション55を閉位置から開位置に移動させ、処理ユニット2の出入口54を開く。その後、図6Aに示すように、副搬送ロボット12が、1バッチの基板Wを複数のサポートバー14で支持しながら、出入口54を通じて複数のサポートバー14を処理ユニット2の中に移動させる。これにより、複数枚の基板Wが処理ユニット2に搬入される(図5のステップS1)。
【0114】
複数枚の基板Wが搬入された後は、第1内側パーティション57が閉位置に配置された状態で、開閉アクチュエータ56が、外側パーティション55を開位置から閉位置に移動させる。これにより、酸化空間SOが密閉される。その後、オゾンガスを酸化空間SOに充満させる。オゾンガスが酸化空間SOに充満する前または充満した後に、加熱ランプ21に発光を開始させる。その後、図6Bに示すように、基板Wの温度と基板Wに接する雰囲気中のオゾンガスの濃度などの条件を一定に維持しながら、前述の最大成長時間以上連続して酸化工程を行う(図5のステップS2)。
【0115】
酸化工程を行うと、基板Wに接する雰囲気中の酸素原子がモリブデン膜100(図1B参照)中のモリブデンと結合し、モリブデンが三酸化モリブデンに変化する。これにより、三酸化モリブデンを含むモリブデン酸化膜105(図1B参照)が、モリブデン膜100の表面103上に形成される。さらに、酸化条件を一定に維持しながら、最大成長時間以上連続して酸化工程を行うと、前述のセルフリミテーションにより、モリブデン酸化膜105の厚さが最大厚さまで増加し、最大厚さにとどまる。
【0116】
最大成長時間以上連続して酸化工程を行った後は、加熱ランプ21に発光を停止させる。加熱ランプ21が発光を停止する前または後に、オゾンガスなどの酸化空間SO内の気体を第1排気口28を通じて排出し、不活性ガスなどのオゾンガス以外の気体を酸化空間SOに充満させる。加熱ランプ21が発光を停止し、酸化空間SO内のオゾンガスが排出された後、通行切替アクチュエータ58が第1内側パーティション57を閉位置から開位置に移動させる。これにより、複数枚の基板Wが酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動できない移動禁止状態から、複数枚の基板Wが酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動できる移動許可状態に、処理ユニット2が切り替わる。
【0117】
第1内側パーティション57が開位置に移動した後は、図6Cに示すように、副搬送ロボット12が、複数のサポートバー14を移動させることにより、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wの全体が第1処理槽41内のエッチング液に浸かるまで、複数枚の基板Wをエッチング空間SEの方に移動させる(図5のステップS3)。これにより、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wがエッチング空間SEに移動し、各基板Wの外表面の全域にエッチング液が供給される。複数枚の基板Wがエッチング空間SEに移動した後、通行切替アクチュエータ58は、第1内側パーティション57を閉位置に移動させてもよいし、開位置で静止させてもよい。図6Dは、前者の例を示している。
【0118】
図6Dに示すように、副搬送ロボット12は、前述のエッチング終了時間以上、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wの全体が第1処理槽41内のエッチング液に浸かった状態を維持する。これにより、全てまたは殆ど全てのモリブデン酸化膜105が基板Wから除去され、三酸化モリブデンに変化しなかったモリブデン膜100の残りの部分が基板Wに残る(図5のステップS4)。つまり、モリブデン膜100の一部が三酸化モリブデンに変化することによって酸化工程を行う前よりもモリブデン膜100の厚さが減少し、モリブデン膜100の酸化によって形成されたモリブデン酸化膜105がエッチング液の供給によってモリブデン膜100から除去される。
【0119】
エッチング液をエッチング終了時間以上複数枚の基板Wに供給した後は、図6Eに示すように、副搬送ロボット12が、複数のサポートバー14を移動させることにより、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wをエッチング空間SEから酸化空間SOに移動させる(図5のステップS5)。第1内側パーティション57が閉位置に配置されている場合は、複数枚の基板Wをエッチング空間SEから移動させる前に、第1内側パーティション57を開位置に移動させ、複数枚の基板Wが酸化空間SOに移動した後に、第1内側パーティション57を閉位置に移動させる。
【0120】
複数枚の基板Wが酸化空間SOに移動した後は、前述と同様に、酸化空間SO内の複数枚の基板Wにオゾンガスを供給しながら、酸化空間SO内の複数枚の基板Wを加熱する酸化工程を行う(図5のステップS6)。2回目の酸化工程を行った後は、前述と同様に、エッチング空間SE内のエッチング液に複数枚の基板Wを浸漬させるエッチング工程を行う(図5のステップS6)。必要に応じて、3回目の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよいし、4回目以降の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよい。図5中の「N」は、正の整数である。
【0121】
エッチング工程を行った後、酸化工程を行う前に、基板Wを簡易的にまたは完全に乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。つまり、蒸気供給口31から供給されたIPAの蒸気を酸化空間SOに充満させてもよいし、不活性ガスなどの気体を複数枚の基板Wに吹き付けてもよい。副搬送ロボット12が複数枚の基板Wを第1処理槽41の外に移動させると、大半のエッチング液は、基板Wから流れ落ちる。したがって、基板Wに残留する微量のエッチング液が実質的に酸化工程に影響を与えないのであれば、基板Wを乾燥させずに酸化工程を行ってもよい。
【0122】
最後のエッチング工程を行った後は、副搬送ロボット12が複数のサポートバー14を移動させることにより複数枚の基板Wをエッチング空間SEから酸化空間SOに移動させ、通行切替アクチュエータ58が第1内側パーティション57を閉位置に移動させる。その後、図6Fに示すように、IPAの蒸気を酸化空間SOに充満させる乾燥工程を行う(図5のステップS7)。これにより、基板Wに付着している液体が除去され、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wが乾燥空間を兼ねる酸化空間SO内で乾燥する。その後、IPAの蒸気を第1排気口28を通じて酸化空間SOから排出し、不活性ガスなどの気体を酸化空間SOに充満させる。
【0123】
酸化空間SO内の複数枚の基板Wが乾燥した後は、開閉アクチュエータ56が外側パーティション55を閉位置から開位置に移動させ、図6Gに示すように、副搬送ロボット12が複数のサポートバー14を移動させることにより出入口54を通じて複数枚の基板Wを処理ユニット2の外に移動させる(図5のステップS8)。その後、副搬送ロボット12は、複数枚の基板Wを主搬送ロボット11(図2参照)に渡す。主搬送ロボット11に渡された複数枚の基板Wは、ロードポートLP上のキャリアCA(図2参照)に収容される。このようにして、未処理の複数枚の基板Wが処理ユニット2に搬入され、処理済みの複数枚の基板Wが処理ユニット2から搬出される。
【0124】
以上のように本実施形態では、複数枚の基板Wが基板処理装置1内の酸化空間SOに配置された状態で、酸素ガスまたはオゾンガスを複数枚の基板Wに供給しながら複数枚の基板Wを加熱する。これにより、酸素ガスまたはオゾンガスに含まれる酸素原子がモリブデンと結合し、モリブデン膜100の表層102が三酸化モリブデンに変化する。その後、複数枚の基板Wを基板処理装置1内の酸化空間SOから基板処理装置1内のエッチング空間SEに搬送し、エッチング空間SE内の複数枚の基板Wにエッチング液を供給する。三酸化モリブデンは、エッチング液に溶解する。したがって、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜100の表層102がエッチングされ、三酸化モリブデンに変化していないモリブデン膜100の表層102以外の部分が基板Wに残る。
【0125】
このように、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら基板Wを加熱することにより、基板Wに形成されたモリブデン膜100を酸化させることができる。さらに、1つの基板処理装置1内でモリブデン膜100を酸化させエッチングするので、モリブデン膜100の酸化とモリブデン酸化膜105のエッチングとを別々の基板処理装置内で行う場合に比べて、基板Wの搬送に要する時間を短縮できる。加えて、複数枚の基板Wを一括して酸化させ、一括してエッチングするので、複数枚の基板Wを一枚ずつ酸化させ、1枚ずつエッチングする場合に比べて、酸化およびエッチングに要する時間を短縮できる。
【0126】
本実施形態では、酸素ガスではなく、オゾンガスを基板Wに供給しながら基板Wを加熱する。したがって、酸素ガスを基板Wに供給しながら基板Wを加熱する場合に比べて、効率的にモリブデン膜100の表層102を三酸化モリブデンに変化させることができる。これにより、モリブデン膜100の表層102を三酸化モリブデンに変化させる時間を短縮でき、基板処理装置1のスループット(単位時間あたりの基板Wの処理枚数)を増加させることができる。
【0127】
本実施形態では、基板Wをエッチングするために、水を主成分とする水含有液を基板Wに供給する。三酸化モリブデンが水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。したがって、薬液を使わずに、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜100の表層102を基板Wから除去できる。これにより、エッチング液が薬液である場合に比べて、排液の処理を簡素化でき、環境への負荷を軽減できる。
【0128】
本実施形態では、エッチング空間SE内の複数枚の基板Wにエッチング液を供給した後、複数枚の基板Wを酸化空間SOに搬送し、複数枚の基板Wに形成された複数のモリブデン膜100を酸化させる。つまり、モリブデン膜100の酸化とモリブデン酸化膜105のエッチングとを交互に複数回繰り返す。これにより、モリブデン膜100の厚さを段階的に減少させることができ、モリブデン膜100の厚さを段階的に調整できる。
【0129】
本実施形態では、基板ホルダーの一例であるサポートフレーム13で複数枚の基板Wを保持した状態で、複数のモリブデン膜100を酸化させ、複数枚の基板Wを酸化空間SOからエッチング空間SEに搬送し、複数のモリブデン酸化膜105をエッチングする。つまり、モリブデン膜100の酸化、酸化空間SOからエッチング空間SEへの基板Wの搬送、および、モリブデン酸化膜105のエッチングを行うために、基板ホルダーに保持されている複数枚の基板Wを、別の基板ホルダーに移動させる必要がないし、複数の基板ホルダーを設ける必要もない。これにより、基板処理装置1のスループットを増加させることができる。
【0130】
本実施形態では、第1内側パーティション57が、酸化空間SOとエッチング空間SEとの間に配置されており、酸化空間SOの輪郭の一部とエッチング空間SEの輪郭の一部とを形成している。酸化空間SOの少なくとも一部は、第1内側パーティション57だけでエッチング空間SEから隔てられている。第1内側パーティション57を移動させると、複数枚の基板Wが酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で移動できるようになる。酸化空間SOが第1内側パーティション57だけを介してエッチング空間SEの近くに配置されているので、エッチング空間SEに基板Wを搬送する時間を短縮でき、基板処理装置1のスループットを増加させることができる。
【0131】
本実施形態では、エッチング液を複数枚の基板Wに供給した後に、複数枚の基板Wをエッチング空間SEから酸化空間SOに移動させる。その後、酸化空間SO内の複数枚の基板Wを乾燥させる。つまり、酸化空間SOが、基板Wを乾燥させる乾燥空間を兼ねており、酸化空間SO内の基板Wに対してモリブデン膜100の酸化と乾燥とが行われる。したがって、酸化空間SOとは別の乾燥空間を設ける場合に比べて基板処理装置1を小型化できる。
【0132】
次に、第2実施形態について説明する。
【0133】
以下の図7図8Cにおいて、前述の図1A図6Gに示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0134】
第2実施形態の第1実施形態に対する主要な相違点は、第1実施形態では酸化空間SOが乾燥空間を兼ねるのに対し、第2実施形態では、乾燥空間SDが酸化空間SOとは別の空間であることである。
【0135】
図7は、本発明の第2実施形態に係る処理ユニット2の鉛直断面を示す概略断面図である。図7に示すように、複数の可動パーティションは、外側パーティション55および第1内側パーティション57に加えて、酸化空間SOと乾燥空間SDとの間に位置する第2内側パーティション61を含む。乾燥空間SDの輪郭は、第2内側パーティション61と少なくとも1つの固定パーティション53とによって形成されている。
【0136】
図7は、乾燥空間SDが酸化空間SOの側方に配置された例を示している。乾燥空間SDが平面視で酸化空間SOに重なるように乾燥空間SDを酸化空間SOの上方に配置してもよい。この場合、乾燥空間SDを形成する固定パーティション53に出入口54を形成すればよい。酸化空間SOとエッチング空間SEとの間に乾燥空間SDを配置してもよい。この場合、第1内側パーティション57で乾燥空間SDとエッチング空間SEとを仕切ればよい。
【0137】
図7は、酸化空間SOを区画するパーティション52に形成された出入口54を外側パーティション55で開閉する例を示している。乾燥空間SDを区画するパーティション52に出入口54を形成し、この出入口54を外側パーティション55で開閉してもよい。この場合、乾燥空間SDを区画するパーティション52だけに出入口54を形成してもよいし、乾燥空間SDを区画するパーティション52と酸化空間SOを区画するパーティション52とに出入口54を1つずつ形成してもよい。つまり、2つの出入口54を1つの処理ユニット2に設けてもよい。この場合、一方の出入口54が入口専用であり、他方の出入口54が出口専用であってもよい。
【0138】
通行切替アクチュエータ62は、複数枚の基板Wが酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できる開位置と、酸化空間SOと乾燥空間SDとの間での基板Wの移動が第2内側パーティション61によって遮られる閉位置と、の間で第2内側パーティション61を移動させる。第2内側パーティション61は、開位置と閉位置との間で平行移動するスライド式、または、開位置と閉位置との間で回転する回転式であってもよいし、これら以外の形式であってもよい。
【0139】
通行切替アクチュエータ62が第2内側パーティション61を閉位置に移動させると、液体および気体などの流体が酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できないように、酸化空間SOおよび乾燥空間SDが第2内側パーティション61によって分断される。蒸気供給口31から流れ出たIPAの蒸気は、酸化空間SOではなく、乾燥空間SDに供給される。第2内側パーティション61が閉位置に配置されると、乾燥空間SDが密閉され、蒸気供給口31などの特定の場所を経由する場合を除き、流体は乾燥空間SDに出入りできない。
【0140】
処理ユニット2は、酸化空間SO内の気体を排出する第1排気口28に加えて、乾燥空間SD内の気体を排出する第2排気口63を含む。処理ユニット2は、さらに、第2排気口63に流入した気体を乾燥空間SDから離れる方向に導く第2排気配管64と、乾燥空間SD内の気体が第2排気口63に流入する開状態と乾燥空間SD内の気体が第2排気口63に流入しない閉状態との間で開閉する第2排気バルブ65とを含む。IPAの蒸気を蒸気供給口31から乾燥空間SDに供給すると共に、乾燥空間SD内の気体を第2排気口63に排出することにより、IPAの蒸気を乾燥空間SDに充満させることができる。
【0141】
図8A図8B、および図8Cは、本発明の第2実施形態に係る基板Wの処理の一例が行われているときの処理ユニット2の状態を示す概略断面図である。以下では、図7を参照する。図8A図8Cについては適宜参照する。
【0142】
第2実施形態に係る処理ユニット2で複数枚の基板Wを処理するときは、第1実施形態に係る処理ユニット2と同様に、酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で複数枚の基板Wを移動させることにより、酸化工程およびエッチング工程を含む1つのサイクルを複数回行う。
【0143】
最後のエッチング工程を行った後は、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を閉位置から開位置に移動させることにより、複数枚の基板Wが酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できない移動禁止状態から、複数枚の基板Wが酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できる移動許可状態に、処理ユニット2を切り替える。この状態で、図8Aに示すように、副搬送ロボット12が複数のサポートバー14を移動させることにより複数枚の基板Wをエッチング空間SEから酸化空間SOを経由して乾燥空間SDに移動させる。
【0144】
複数枚の基板Wが酸化空間SOから乾燥空間SDに移動した後は、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を開位置から閉位置に移動させる。その後、図8Bに示すように、蒸気供給口31から供給されたIPAの蒸気を乾燥空間SDに充満させる乾燥工程を行う。これにより、基板Wに付着している液体が除去されると共に、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wが乾燥空間SD内で乾燥する。その後、IPAの蒸気を第2排気口63を通じて乾燥空間SDから排出し、不活性ガスなどの気体を乾燥空間SDに充満させる。
【0145】
乾燥空間SD内の複数枚の基板Wが乾燥した後は、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を閉位置から開位置に移動させ、図8Cに示すように、副搬送ロボット12が複数枚の基板Wを乾燥空間SDから酸化空間SOに移動させる。その後、開閉アクチュエータ56が外側パーティション55を閉位置から開位置に移動させ、図8Cに示すように、副搬送ロボット12が出入口54を通じて複数枚の基板Wを処理ユニット2の外に移動させる。
【0146】
第2実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、第2内側パーティション61が、酸化空間SOまたはエッチング空間SEと乾燥空間SDとの間に配置されている。乾燥空間SDの少なくとも一部は、第2内側パーティション61だけで酸化空間SOまたはエッチング空間SEから隔てられている。第2内側パーティション61を移動させると、複数枚の基板Wが乾燥空間SDに入ることができ、乾燥空間SDから出ることができるようになる。乾燥空間SDが第2内側パーティション61だけを介して酸化空間SOまたはエッチング空間SEの近くに配置されているので、乾燥空間SDに基板Wを搬送する時間を短縮でき、基板処理装置1のスループットを増加させることができる。加えて、酸化空間SOまたはエッチング空間SEが乾燥空間SDを兼ねる場合に比べて、基板処理装置1の構造を簡素化できる。
【0147】
次に、第3実施形態について説明する。
【0148】
以下の図9図10Dにおいて、前述の図1A図8Cに示された構成と同等の構成については、図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0149】
第3実施形態の第2実施形態に対する主要な相違点は、複数枚の基板Wが浸漬されるリンス液を溜める第2処理槽66(図9参照)が乾燥空間SDに配置されており、複数枚の基板Wにリンス液を供給するリンス空間を乾燥空間SDが兼ねていることである。
【0150】
図9は、本発明の第3実施形態に係る処理ユニット2の鉛直断面を示す概略断面図である。図9に示すように、第2処理槽66は、リンス液を貯留する内槽42と、内槽42からあふれたリンス液を貯留する外槽43とを含む。第2処理槽66は、リンス液を溜めるリンス処理槽に相当する。内槽42内のリンス液の表面から乾燥空間SDの上端までの鉛直方向の距離は、基板Wの直径よりも大きい。外槽43内のリンス液は、循環ポンプ46によって循環配管44に送られ、フィルター45を介してリターンノズル47に供給される。リターンノズル47は、内槽42内に配置された吐出口47pからリンス液を吐出することにより、循環配管44から供給されたリンス液を内槽42内に供給する。
【0151】
図9は、第1処理槽41内のエッチング液と第2処理槽66内のリンス液とがいずれも純水(図9ではDIWと表記)である例を示している。リンス液は、純水に限らず、IPA(イソプロピルアルコール)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の水酸化アンモニウムのいずれかであってもよい。リンス液は、エッチング液とは種類が異なる液体であってもよい。
【0152】
乾燥空間SDは、酸化空間SOよりも上下に長い。乾燥空間SDは、エッチング空間SEよりも上下に長い。乾燥空間SDは、リンス空間を兼ねるリンス乾燥空間である。複数の可動パーティションは、リンス乾燥空間をリンス空間と乾燥空間SDとに仕切る第3内側パーティション67を備えていてもよい。リンス空間は、第3内側パーティション67の下側の空間であり、乾燥空間SDは、第3内側パーティション67の上側の空間である。第2処理槽66内のリンス液は、リンス空間内の複数枚の基板Wに供給される。蒸気供給口31から流れ出たIPAの蒸気は、乾燥空間SD内の複数枚の基板Wに供給される。
【0153】
図10A図10B図10C、および図10Dは、本発明の第3実施形態に係る基板Wの処理の一例が行われているときの処理ユニット2の状態を示す概略断面図である。以下では、図9を参照する。図10A図10Dについては適宜参照する。
【0154】
第3実施形態に係る処理ユニット2で複数枚の基板Wを処理するときは、第1実施形態に係る処理ユニット2と同様に、酸化空間SOとエッチング空間SEとの間で複数枚の基板Wを移動させることにより、酸化工程およびエッチング工程を含む1つのサイクルを複数回行う。
【0155】
最後のエッチング工程を行った後は、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を閉位置から開位置に移動させることにより、複数枚の基板Wが酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できない移動禁止状態から、複数枚の基板Wが酸化空間SOと乾燥空間SDとの間で移動できる移動許可状態に、処理ユニット2を切り替える。この状態で、図10Aに示すように、副搬送ロボット12が複数のサポートバー14を移動させることにより複数枚の基板Wを酸化空間SOから乾燥空間SDに移動させる。その後、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を開位置から閉位置に移動させる。
【0156】
複数枚の基板Wがリンス空間を兼ねる乾燥空間SDに移動した後、図10Aに示すように、副搬送ロボット12は、複数のサポートバー14を移動させることにより、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wの全体が第2処理槽66内のリンス液に浸かるまで、複数枚の基板Wを乾燥空間SD内で移動させる。これにより、基板Wを乾燥させる直前に、基板Wに付着しているエッチング液やパーティクルなどをリンス液によって洗い流す最終リンス工程が行われる。
【0157】
複数枚の基板Wにリンス液が供給された後は、図10Bに示すように、副搬送ロボット12が、複数のサポートバー14を移動させることにより、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wの全体が第2処理槽66の外に出るまで、複数枚の基板Wを乾燥空間SD内で移動させる。その後、図10Cに示すように、蒸気供給口31から供給されたIPAの蒸気を乾燥空間SDに充満させる乾燥工程を行う。これにより、基板Wに付着している液体が除去されると共に、複数のサポートバー14に支持されている複数枚の基板Wが乾燥空間SD内で乾燥する。その後、IPAの蒸気を第2排気口63を通じて乾燥空間SDから排出し、不活性ガスなどの気体を乾燥空間SDに充満させる。
【0158】
乾燥空間SD内の複数枚の基板Wが乾燥した後は、通行切替アクチュエータ62が、第2内側パーティション61を閉位置から開位置に移動させ、図10Dに示すように、副搬送ロボット12が複数枚の基板Wを乾燥空間SDから酸化空間SOに移動させる。その後、開閉アクチュエータ56が外側パーティション55を閉位置から開位置に移動させ、図10Dに示すように、副搬送ロボット12が出入口54を通じて複数枚の基板Wを処理ユニット2の外に移動させる。
【0159】
第3実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第3実施形態では、エッチング液を複数枚の基板Wに供給した後に、リンス液を複数枚の基板Wに供給する。これにより、基板Wに付着しているエッチング液やパーティクルをリンス液で洗い流すことができる。エッチング液およびリンス液が種類の異なる液体である場合、エッチング液用の配管等とリンス液用の配管等と設ける必要がある。両者が同一の名称の液体である場合、別々の配管等を設ける必要がなく、基板処理装置1の構造を簡素化できる。
【0160】
他の実施形態
第1処理槽41内のエッチング液に基板Wを浸漬させる前に基板Wを冷却してもよい。例えば、基板Wの温度が室温またはその付近に低下するまで、不活性ガスや空気などの冷却ガスを酸化空間SO内の基板Wに供給してもよい。この場合、冷却ガスの温度は、室温であってもよいし、室温未満であってもよい。
【0161】
エッチング液が供給された基板Wを乾燥させる前にリンス液を基板Wに供給する場合、複数枚の基板Wを第2処理槽66内のリンス液に浸漬させるのではなく、複数枚の基板Wが第1処理槽41内に配置された状態で、第1処理槽41内のエッチング液をリンス液に置換することにより、第1処理槽41内の複数枚の基板Wにリンス液を供給してもよい。
【0162】
基板Wを乾燥させるときに、IPAなどの有機溶剤の蒸気を基板Wに供給することに加えてまたは代えて、乾燥空間SD(第1実施形態の場合は、乾燥空間を兼ねる酸化空間SO)内の気圧を減少させることにより、基板Wに付着している液体の蒸発を促進してもよい。
【0163】
副搬送ロボット12のサポートフレーム13に複数枚の基板Wを保持させた状態で、3つの工程、つまり、モリブデン膜100の酸化、処理ユニット2内での基板Wの搬送、およびモリブデン酸化膜105のエッチングを行うのではなく、サポートフレーム13以外の基板ホルダーに複数枚の基板Wを保持させた状態で、3つの工程の少なくとも1つを行ってもよい。
【0164】
モリブデン膜100の厚みを減少させる量が小さいのであれば、1枚の基板Wに対して行われる酸化工程およびエッチング工程の回数は、1回であってもよい。
【0165】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0166】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0167】
サポートフレーム13は、基板ホルダーの一例である。加熱ランプ21、オゾンガス供給口22、オゾンガス配管23、オゾンガスバルブ24、およびオゾンガス発生器25は、酸化手段の一例である。第1処理槽41、内槽42、外槽43、循環配管44、下流配管44d、上流配管44u、フィルター45、循環ポンプ46、リターンノズル47、および吐出口47pは、エッチング手段の一例である。
【0168】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0169】
1 :基板処理装置
8 :搬送システム
12 :副搬送ロボット
13 :サポートフレーム(基板ホルダー)
14 :サポートバー
21 :加熱ランプ(酸化手段)
22 :オゾンガス供給口(酸化手段)
23 :オゾンガス配管(酸化手段)
24 :オゾンガスバルブ(酸化手段)
25 :オゾンガス発生器(酸化手段)
41 :第1処理槽(エッチング手段)
42 :内槽(エッチング手段)
43 :外槽(エッチング手段)
44 :循環配管(エッチング手段)
44d :下流配管(エッチング手段)
44u :上流配管(エッチング手段)
45 :フィルター(エッチング手段)
46 :循環ポンプ(エッチング手段)
47 :リターンノズル(エッチング手段)
47p :吐出口(エッチング手段)
52 :パーティション
53 :固定パーティション
55 :外側パーティション
57 :第1内側パーティション
61 :第2内側パーティション
66 :第2処理槽
67 :第3内側パーティション
100 :モリブデン膜
101 :モリブデン膜のバルク
102 :モリブデン膜の表層
103 :モリブデン膜の表面
104 :自然酸化膜
105 :モリブデン酸化膜
106 :モリブデン酸化膜の表面
SD :乾燥空間
SE :エッチング空間
SO :酸化空間
W :基板
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A-D】
図6E-G】
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図10D