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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018603
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240201BHJP
   C23F 1/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L21/306 Z
H01L21/306 J
C23F1/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122034
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原▲崎▼ 光
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA03
4K057WA20
4K057WB08
4K057WD05
4K057WE07
4K057WE23
4K057WE30
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD02
5F043DD06
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE36
5F043EE40
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる方法でモリブデン膜を酸化させることができ、モリブデン膜の酸化していない部分を基板に残しながら、モリブデン膜の酸化した部分を基板から除去できる方法および装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、第1強度の光の照射によって第1温度で基板を加熱する第1酸化工程S3と、基板にエッチング液を供給することにより三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層をエッチング液に溶解させる第1エッチング工程S6と、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、第2強度の光の照射によって第2温度で基板を加熱する第2酸化工程S4と、基板にエッチング液を供給することにより三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層をエッチング液に溶解させる第2エッチング工程S6とを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給する第1ガス供給工程と、第1強度の光を前記基板に照射することにより第1温度で前記基板を加熱する第1加熱工程とを含み、前記第1ガス供給工程および第1加熱工程を同時に行うことにより、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第1酸化工程と、
前記基板にエッチング液を供給することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第1酸化工程で前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させる第1エッチング工程と、
前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給する第2ガス供給工程と、前記第1強度よりも強いまたは弱い第2強度の光を前記基板に照射することにより前記第1温度よりも高いまたは低い第2温度で前記基板を加熱する第2加熱工程とを含み、前記第1酸化工程および第1エッチング工程の前または後に前記第2ガス供給工程および第2加熱工程を同時に行うことにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第2酸化工程と、
前記基板に前記エッチング液を供給することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第2酸化工程で前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させる第2エッチング工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1加熱工程および第2加熱工程の少なくとも1つは、LED(light emitting diode)ランプから放出された光を前記基板に照射する工程である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板は、シリコンウエハと、前記シリコンウエハに保持された前記モリブデン膜とを含み、
前記LEDランプから放出される前記光の波長は、300~1000nmの範囲内である、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1加熱工程は、前記第1強度の光を加熱ランプに放出させることにより、前記第1強度の光を前記基板に照射する工程を含み、
前記基板処理方法は、前記第2強度の光を前記加熱ランプに放出させる工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1酸化工程および第1エッチング工程を含む1つの第1サイクルと、前記第2酸化工程および第2エッチング工程を含む1つの第2サイクルと、のうちの少なくとも一方を複数回行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1サイクルを3回以上行う場合、前記第1サイクルと次の前記第1サイクルとの間に行われる前記第2サイクルの回数は、前記第1サイクルの間隔の総数以下の複数の間隔において毎回異なる、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1ガス供給工程および第2ガス供給工程は、前記オゾンガスを前記基板に供給する工程である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記エッチング液は、水を主成分とする水含有液である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1酸化工程、第1エッチング工程、第2酸化工程、および第2エッチング工程を1つの基板処理装置内で行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給する第1ガス供給口と、第1強度の光を前記基板に照射することにより第1温度で前記基板を加熱する第1加熱ランプと、を含み、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給しながら、前記第1強度の光の照射によって前記第1温度で前記基板を加熱することにより、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第1酸化手段と、
前記基板にエッチング液を供給する第1エッチング液ノズルを含み、前記基板への前記エッチング液の供給により、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第1酸化手段が前記三酸化モリブデンに変化させた前記表層を前記エッチング液に溶解させる第1エッチング手段と、
前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給する、前記第1ガス供給口と同一のまたは異なる第2ガス供給口と、前記第1強度よりも強いまたは弱い第2強度の光を前記基板に照射することにより前記第1温度よりも高いまたは低い第2温度で前記基板を加熱する、前記第1加熱ランプと同一のまたは異なる第2加熱ランプと、を含み、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給しながら、前記第2強度の光の照射によって前記第2温度で前記基板を加熱することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる、前記第1酸化手段と同一のまたは異なる第2酸化手段と、
前記基板に前記エッチング液を供給する、前記第1エッチング液ノズルと同一のまたは異なる第2エッチング液ノズルを含み、前記基板への前記エッチング液の供給により、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第2酸化手段が前記三酸化モリブデンに変化させた前記表層を前記エッチング液に溶解させる、前記第1エッチング手段と同一のまたは異なる第2エッチング手段と、
前記第1酸化手段、第1エッチング手段、第2酸化手段、および第2エッチング手段の間で前記基板を搬送する搬送システムと、を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸素イオン注入または酸素プラズマドーピングによりモリブデン層を酸化させることにより酸化モリブデン部分(molybdenum oxide portion)を形成することと、アンモニア溶液などの液体を基板に供給するウェットエッチングによって、酸化されていないモリブデン層(non-oxidized molybdenum layer)を基板に残しながら、酸化モリブデン部分を基板から除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-509816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、酸素イオン注入または酸素プラズマドーピングによりモリブデン層を酸化させることを開示しているものの、これら以外の方法によりモリブデン層を酸化させることは開示していない。これら以外の方法によりモリブデン層を酸化させることが望まれる場合、特許文献1の開示ではこのような要望に応えることができない。
【0005】
本発明の目的の一つは、従来とは異なる方法でモリブデン膜を酸化させることができ、モリブデン膜の酸化していない部分を基板に残しながら、モリブデン膜の酸化した部分を基板から除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給する第1ガス供給工程と、第1強度の光を前記基板に照射することにより第1温度で前記基板を加熱する第1加熱工程とを含み、前記第1ガス供給工程および第1加熱工程を同時に行うことにより、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第1酸化工程と、前記基板にエッチング液を供給することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第1酸化工程で前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させる第1エッチング工程と、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給する第2ガス供給工程と、前記第1強度よりも強いまたは弱い第2強度の光を前記基板に照射することにより前記第1温度よりも高いまたは低い第2温度で前記基板を加熱する第2加熱工程とを含み、前記第1酸化工程および第1エッチング工程の前または後に前記第2ガス供給工程および第2加熱工程を同時に行うことにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第2酸化工程と、前記基板に前記エッチング液を供給することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第2酸化工程で前記三酸化モリブデンに変化した前記表層を前記エッチング液に溶解させる第2エッチング工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、光を基板に照射することにより基板を加熱する。さらに、基板に光を照射しながら酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給する。これにより、酸素ガスまたはオゾンガスに含まれる酸素原子がモリブデンと結合し、モリブデン膜の表層が三酸化モリブデンに変化する。その後、エッチング液を基板に供給する。三酸化モリブデンは、エッチング液に溶解する。したがって、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層がエッチングされ、三酸化モリブデンに変化していないモリブデン膜の表層以外の部分が基板に残る。
【0008】
三酸化モリブデンへの変化により形成されるモリブデン酸化膜の厚さは、酸素ガスまたはオゾンガスを供給しているときの基板の温度に依存する。例えば、基板の温度を上昇させると、モリブデン酸化膜の厚さが増加し、モリブデン膜の厚さが減少する。モリブデン膜の表層を複数回酸化させる場合、基板を毎回高温で加熱すると、モリブデン膜が薄くなる速度が増加するものの、モリブデン膜の厚さを緻密に制御し難い。その一方で、基板を毎回低温で加熱すると、モリブデン膜の厚さを緻密に制御し易いものの、モリブデン膜が薄くなる速度が減少する。
【0009】
本実施形態では、モリブデン膜の表層を酸化させるときに、基板に照射される光の強度を変更することにより、基板の温度を変化させる。したがって、基板を毎回高温で加熱する場合に比べて、モリブデン膜の厚さを緻密に制御することができる。加えて、基板を毎回低温で加熱する場合に比べて、モリブデン膜が薄くなる速度を増加させることができる。これにより、モリブデン膜の寸法精度を維持しながら、モリブデン膜をより短い時間で薄くすることができる。
【0010】
酸素ガスおよびオゾンガスは、酸素原子を含む酸素原子含有ガスである。基板への酸素原子含有ガスの供給は、酸素原子含有ガスを基板が配置された酸化空間に充満させることにより行ってもよいし、酸化空間内で酸素原子含有ガスを吐出することにより行ってもよい。後者の場合、酸素原子含有ガスが酸化空間に充満してもよいし、酸素原子含有ガス以外のガスが酸化空間に存在してもよい。つまり、モリブデンを三酸化モリブデンに変化させる十分な量の酸素原子がモリブデン膜の表面に供給されるのであれば、酸素原子含有ガスをどのように基板に供給してもよい。基板に照射される光(厳密には電磁波)は、可視光線(波長が380~800nmの範囲内の電磁波)または不可視光線(波長が前記の範囲外の電磁波)であってもよいし、可視光線および不可視光線の両方を含んでいてもよい。
【0011】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
【0012】
前記第1加熱工程および第2加熱工程の少なくとも1つは、LED(light emitting diode)ランプから放出された光を前記基板に照射する工程である。
【0013】
この方法によれば、LEDランプから放出された光を基板に照射することにより基板を加熱する。したがって、ホットプレートで基板を加熱する場合に比べて、つまり、熱伝導によりジュール熱を基板に移動させる場合に比べて、基板の温度を急速に上昇させることができる。さらに、ホットプレートやハロゲンランプなどの他の熱源で基板を加熱する場合に比べて消費電力を削減することができる。加えて、LEDランプは寿命が長いので、ハロゲンランプなどの他の加熱ランプで基板を加熱する場合に比べて部品の交換頻度を減らすことができる。
【0014】
前記基板は、シリコンウエハと、前記シリコンウエハに保持された前記モリブデン膜とを含み、前記LEDランプから放出される前記光の波長は、300~1000nmの範囲内である。
【0015】
この方法によれば、300~1000nmの範囲内の波長の光をLEDランプに放出させる。シリコンウエハの温度が500℃以下であり、光の波長が前記の範囲を超える場合、シリコンウエハによる光の吸収率が低く、そのため、高強度の光を基板に照射しないと、基板の温度を急速に上昇させることができない。光の強度を高めると、消費電力が増加したり、より大きな加熱ランプを使う必要が生じたりする。前記の範囲内の波長の光を基板に照射すれば、光の吸収率を高めることができ、基板を効率的に加熱することができる。
【0016】
前記第1加熱工程は、前記第1強度の光を加熱ランプに放出させることにより、前記第1強度の光を前記基板に照射する工程を含み、前記基板処理方法は、前記第2強度の光を前記加熱ランプに放出させる工程をさらに含む。
【0017】
この方法によれば、第1強度の光を放出する第1加熱ランプとは異なる第2加熱ランプに第2強度の光を放出させるのではなく、1つの加熱ランプに第1強度の光を放出させ、その前または後に、第2強度の光を放出させる。つまり、加熱ランプから放出される光の強度を切り替えることにより、第1強度の光と第2強度の光とを加熱ランプに放出させる。したがって、互いに異なる第1加熱ランプおよび第2加熱ランプを設ける場合に比べて加熱ランプの数を減らすことができる。
【0018】
前記加熱ランプから放出された前記第2強度の光は、同じ加熱ランプから放出された前記第1強度の光が照射されたまたは照射すべき前記基板に照射されてもよいし、別の加熱ランプから放出された前記第1強度の光が照射されたまたは照射すべき基板に照射されてもよい。前者の場合、前記第2加熱工程は、前記第2強度の光を前記加熱ランプに放出させることにより、前記第2強度の光を前記基板に照射する工程を含む。
【0019】
前記基板処理方法は、前記第1酸化工程および第1エッチング工程を含む1つの第1サイクルと、前記第2酸化工程および第2エッチング工程を含む1つの第2サイクルと、のうちの少なくとも一方を複数回行う。
【0020】
この方法によれば、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、基板を加熱した後、エッチング液を基板に供給する。その後、再び、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、基板を加熱した後、エッチング液を基板に供給する。つまり、モリブデン膜の酸化とモリブデン酸化膜のエッチングとを交互に複数回繰り返す。これにより、モリブデン膜の厚さを段階的に減少させることができ、モリブデン膜の厚さを段階的に調整できる。
【0021】
第1酸化工程および第1エッチング工程を含む1つの第1サイクルを複数回行う場合、第1エッチング工程でのモリブデン膜の厚みの減少量、つまり、エッチング液に溶解するモリブデン酸化膜の厚さは、毎回同じであってもよいし、複数の第1エッチング工程の間で異なっていてもよい。第2酸化工程および第2エッチング工程を含む1つの第2サイクルを複数回行う場合も同様である。
【0022】
前記第1サイクルを3回以上行う場合、前記第1サイクルと次の前記第1サイクルとの間に行われる前記第2サイクルの回数は、前記第1サイクルの間隔の総数以下の複数の間隔において毎回異なる。
【0023】
この方法によれば、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、第1強度の光の照射によって第1温度で基板を加熱し、その後、エッチング液を基板に供給する第1サイクルを、3回以上行う。さらに、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給しながら、第2強度の光の照射によって第2温度で基板を加熱し、その後、エッチング液を基板に供給する第2サイクルを、1回以上行う。
【0024】
2つの第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数は、第1サイクルの間隔の総数以下の複数の間隔において毎回異なる。例えば、第1サイクルを3回行う場合、1回目と2回目の第1サイクルの間に第2サイクルを1回行い、2回目と3回目の第1サイクルの間に第2サイクルを2回行う。第1サイクルを4回行う場合、1回目と2回目の第1サイクルの間に第2サイクルを1回行い、2回目と3回目の第1サイクルの間に第2サイクルを2回行う。3回目と4回目の第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数は、1または2であってもよいし、零または3以上の値であってもよい。
【0025】
複数枚の基板に対して個別に第1サイクルを行う場合、第1サイクルを行う時期が重なると、処理ガスや処理液などの処理流体の使用量や電力の使用量が局所的に増加することがある。2つの第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数を変化させることにより、このような局所的な増加を小さくすることができ、処理流体や電力の時間当たりの使用量を平準化することができる。
【0026】
前記第1サイクルを3回以上行う場合、前記第1サイクルと次の前記第1サイクルとの間に行われる前記第2サイクルの回数は、複数枚の基板の間で異なっていてもよい。具体的には、ある基板の処理では、前記第1サイクルと次の前記第1サイクルとの間に行われる前記第2サイクルの回数が、前記第1サイクルの間隔の総数以下の複数の間隔において毎回異なり、別の基板の処理では、前記第1サイクルと次の前記第1サイクルとの間に行われる前記第2サイクルの回数が、毎回同じであってもよい。
【0027】
前記第1ガス供給工程および第2ガス供給工程は、前記オゾンガスを前記基板に供給する工程である。
【0028】
この方法によれば、酸素ガスではなく、オゾンガスを基板に供給しながら基板を加熱する。したがって、酸素ガスを基板に供給しながら基板を加熱する場合に比べて、効率的にモリブデン膜の表層を三酸化モリブデンに変化させることができる。これにより、モリブデン膜の表層を三酸化モリブデンに変化させる時間を短縮でき、基板処理装置のスループット(単位時間あたりの基板の処理枚数)を増加させることができる。
【0029】
前記エッチング液は、水を主成分とする水含有液である。
【0030】
この方法によれば、基板をエッチングするために、水を主成分とする水含有液を基板に供給する。三酸化モリブデンが水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。したがって、薬液を使わずに、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層を基板から除去できる。これにより、エッチング液が薬液である場合に比べて、排液の処理を簡素化でき、環境への負荷を軽減できる。
【0031】
エッチング液に相当する水含有液は、純水などの水(水の体積濃度が100%または実質的に100%の液体)であってもよいし、水の体積濃度が90%以上100%未満の液体であってもよい。後者の場合、低濃度であれば薬品が水含有液に溶解していてもよい。この場合、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜の表層をより短時間で基板から除去できる。
【0032】
前記基板処理方法は、前記第1酸化工程、第1エッチング工程、第2酸化工程、および第2エッチング工程を1つの基板処理装置内で行う。
【0033】
この方法によれば、1つの基板処理装置内でモリブデン膜を酸化させエッチングする。言い換えると、基板がロードポートを通じて基板処理装置に搬入された後、モリブデン膜の酸化とモリブデン酸化膜のエッチングとが終了するまで、基板はロードポートを通じて基板処理装置から搬出されない。したがって、モリブデン膜の酸化とモリブデン酸化膜のエッチングとを別々の基板処理装置内で行う場合に比べて、基板の搬送に要する時間を短縮できる。
【0034】
本発明の他の実施形態は、酸素ガスまたはオゾンガスを基板に供給する第1ガス供給口と、第1強度の光を前記基板に照射することにより第1温度で前記基板を加熱する第1加熱ランプと、を含み、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給しながら、前記第1強度の光の照射によって前記第1温度で前記基板を加熱することにより、前記基板に形成されたモリブデン膜の表層以外の部分を三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる第1酸化手段と、前記基板にエッチング液を供給する第1エッチング液ノズルを含み、前記基板への前記エッチング液の供給により、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第1酸化手段が前記三酸化モリブデンに変化させた前記表層を前記エッチング液に溶解させる第1エッチング手段と、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給する、前記第1ガス供給口と同一のまたは異なる第2ガス供給口と、前記第1強度よりも強いまたは弱い第2強度の光を前記基板に照射することにより前記第1温度よりも高いまたは低い第2温度で前記基板を加熱する、前記第1加熱ランプと同一のまたは異なる第2加熱ランプと、を含み、前記酸素ガスまたはオゾンガスを前記基板に供給しながら、前記第2強度の光の照射によって前記第2温度で前記基板を加熱することにより、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記三酸化モリブデンに変化させずに、前記モリブデン膜の前記表層を前記三酸化モリブデンに変化させる、前記第1酸化手段と同一のまたは異なる第2酸化手段と、前記基板に前記エッチング液を供給する、前記第1エッチング液ノズルと同一のまたは異なる第2エッチング液ノズルを含み、前記基板への前記エッチング液の供給により、前記モリブデン膜の前記表層以外の部分を前記基板に残しながら、前記第2酸化手段が前記三酸化モリブデンに変化させた前記表層を前記エッチング液に溶解させる、前記第1エッチング手段と同一のまたは異なる第2エッチング手段と、前記第1酸化手段、第1エッチング手段、第2酸化手段、および第2エッチング手段の間で前記基板を搬送する搬送システムと、を備える、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。前述の基板処理方法に関する特徴の少なくとも1つを前記基板処理装置に加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】本発明の一実施形態に係る基板の処理が行われる前の基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る基板の処理が行われているときの基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図1C】本発明の一実施形態に係る基板の処理が行われた後の基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図3】酸化処理ユニットに設けられた酸化ユニットの鉛直断面の一例を示す概略断面図である。
図4】エッチング処理ユニットの鉛直断面の一例を示す概略断面図である。
図5】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】高温サイクルおよび低温サイクルの回数と高温サイクルおよび低温サイクルの順番の例を示す表である。
図7A-B】高温酸化工程または低温酸化工程が行われた後の基板の断面の一例を示す概略断面図である。
図8】高温酸化工程および低温酸化工程が行われているときの光の強度の経時変化を示すグラフである。
図9】高温酸化工程および低温酸化工程が行われているときの基板の温度の経時変化を示すグラフである。
図10】本発明の一実施形態に係る基板の処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
最初に、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理の概要について説明する。
【0038】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理が行われる前の基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。図1Bは、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理が行われているときの基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。図1Cは、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理が行われた後の基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。
【0039】
モリブデン膜100は、半導体ウエハなどの基板Wの表面に形成されたモリブデン製の薄膜である。モリブデン膜100は、トランジスタなどの基板W上に形成されたデバイスに電気的に接続された金属配線(モリブデン配線)の一部であってもよい。金属配線は、層間絶縁膜上に配置された金属配線層、または、ビアホールなどの少なくとも1つの層間絶縁膜を貫通するホール内に配置された金属プラグであってもよいし、金属配線層または金属プラグの両方であってもよい。
【0040】
図1Aに示すように、モリブデン膜100は、モリブデン膜100の表面103の全域を含む表層102と、モリブデン膜100における表層102以外の部分を表すバルク101とによって構成されている。モリブデン膜100の表層102は、モリブデン膜100の表面103から一定またはほぼ一定の厚さの層を表す。基板Wが処理される前、モリブデン膜100の表面103は、モリブデンの酸化物によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。基板Wが処理される前、モリブデン膜100の表面103またはモリブデンの酸化物の表面は、レジストパターンなどの他の物質によって部分的に覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0041】
図1Aは、酸化モリブデン(MoO)と三酸化モリブデン(MoO)とを含むモリブデンの自然酸化膜104によってモリブデン膜100の表面103が覆われた例を示している。酸化モリブデンおよび三酸化モリブデンは、いずれも、モリブデンの酸化物の一例である。図1Aに示す例では、モリブデン膜100の表面103の一部または全部が、モリブデンの自然酸化膜104によって覆われている。モリブデンの自然酸化膜104は、半導体ウエハなどの基板Wの表面で露出しており、基板Wが配置された空間内の雰囲気に接している。
【0042】
本発明の一実施形態に係る基板Wの処理では、オゾンガスなどの酸素原子含有ガスを基板Wに供給しながら、基板Wを加熱する酸化工程を行う。オゾンガスは、酸素原子を含む酸素原子含有ガスの一例である。酸素原子含有ガスは、酸素ガスであってもよい。自然酸化膜104などのモリブデンの酸化物がモリブデン膜100上に形成されている場合、酸化工程を行う前に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによりモリブデンの酸化物をモリブデン膜100から除去してもよいし、モリブデンの酸化物を除去せずに酸化工程を行ってもよい。
【0043】
酸化工程を行うとき、接触加熱または非接触加熱により基板Wを加熱してもよいし、接触加熱および非接触加熱の両方により基板Wを加熱してもよい。接触加熱により基板Wを加熱する場合、デバイスが形成される基板Wの表面を上に向けた状態で、室温(15~30℃内の一定またはほぼ一定の温度)よりも高温のホットプレートの上に基板Wを水平に配置することにより、基板Wの下面をホットプレートに接触させてもよい。非接触加熱により基板Wを加熱する場合、ランプなどの熱源から放出された光を基板Wに照射してもよい。酸化工程を行うとき、基板Wは、水平または鉛直な姿勢であってもよいし、これら以外の姿勢であってもよい。
【0044】
酸化工程を行うと、基板Wに接する雰囲気中のオゾンまたは酸素分子によってモリブデン膜100中のモリブデンが酸化され、モリブデン膜100の表面103が三酸化モリブデンに変化する。自然酸化膜104などのモリブデンの酸化物でモリブデン膜100の表面103が覆われている場合は、モリブデン膜100の表面103だけでなく、モリブデンの酸化物も三酸化モリブデンに変化する。これにより、図1Bに示すように、三酸化モリブデンを含むモリブデン酸化膜105が、モリブデン膜100の表面103上に形成される。
【0045】
モリブデン膜100は、モリブデン膜100の表面103からモリブデン膜100の内部に向かって徐々に三酸化モリブデンに変化していく。モリブデン膜100とモリブデン酸化膜105との境界は、モリブデン膜100の内部に向かって徐々に移動する。これにより、モリブデン酸化膜105の厚さが連続的に増加する。酸化工程を行う時間が後述する最大成長時間に達すると、後述する最大厚さのモリブデン酸化膜105がモリブデン膜100の表面103上に形成される。
【0046】
モリブデン酸化膜105は、モリブデン膜100に結合された三酸化モリブデンの薄膜である。モリブデン酸化膜105は、酸化モリブデンなどの三酸化モリブデン以外の物質を含んでいてもよい。図1Bは、モリブデン酸化膜105の表面106の全域が平坦であり、モリブデン酸化膜105の厚さが均一である例を示している。モリブデン酸化膜105は、モリブデン膜100よりも薄い。モリブデン酸化膜105の厚さは、モリブデン膜100の厚さ以上であってもよい。
【0047】
酸化工程を行う時間(オゾンガスなどの酸素原子含有ガスを基板Wに接触させながら基板Wを加熱する時間)を酸化時間と、酸化時間を除く酸化工程の条件を酸化条件とそれぞれ定義する。酸化条件には、複数のパラメータが含まれる。例えば、基板Wの温度と、基板Wに供給されるオゾンガスの濃度と、基板Wに供給されるオゾンガスの流量とは、酸化条件に含まれる。酸化時間は、酸化条件に含まれない。
【0048】
酸素原子含有ガスがオゾンガスである場合の酸化条件は以下のとおりである。具体的には、基板Wの温度は、150℃以上、例えば180~300℃の範囲内である。オゾンガスの濃度は、50g/m以上、例えば100~200g/mの範囲内である。オゾンガスの流量は、5SLM(Standard Litter Min)以上、例えば18~20SLMの範囲内である。酸化時間は、30秒以上、例えば30~300秒の範囲内である。後述するエッチング時間は、30秒以上である。酸化工程を行う前のモリブデン膜100の厚さとエッチング工程を行った後のモリブデン膜100の厚さとの差をリセス量と定義する。酸化条件にもよるが、酸化工程およびエッチング工程を一回ずつ行ったときのリセス量は、数十nm未満、例えば10nm未満である。前記の数値は、一例であり、これらに限られるものではない。
【0049】
酸化条件が一定であれば、モリブデン酸化膜105の厚さは、酸化時間が増加するにしたがって増加する。酸化条件が一定であれば、酸化時間が最大成長時間を超えても、モリブデン酸化膜105の厚さは、変化せずまたは殆ど変化せず、最大厚さまたはその付近にとどまる。つまり、酸化条件が一定であれば、酸化時間が最大成長時間に達すると、モリブデン酸化膜105の厚さは、最大厚さに達するものの、それ以上の時間酸化工程を続けても、モリブデン酸化膜105の厚さは、変化しないまたは殆ど変化しない。この現象を、セルフリミテーションということがある。
【0050】
モリブデン酸化膜105の最大厚さは、酸化条件に依存する。最大成長時間も、酸化条件に依存する。酸化条件が変わると、それに応じてモリブデン酸化膜105の最大厚さが増加または減少する。例えば、基板Wの温度が低下すると、モリブデン酸化膜105の最大厚さが減少する。基板Wに供給されるオゾンガスの濃度または流量が減少したときも、モリブデン酸化膜105の最大厚さが減少する。
【0051】
酸化工程を行った後は、図1Cに示すように、エッチング液を基板Wに供給することにより、モリブデン酸化膜105を基板Wから除去するエッチング工程を行う。図1Cは、エッチング液の供給によってモリブデン酸化膜105の全体が除去され、モリブデンで形成されたモリブデン膜100の平坦な表面103が露出した例を示している。エッチング液の供給によってモリブデン酸化膜105の全体が基板Wから除去されることが好ましいが、後工程で問題にならない程度であれば、モリブデン酸化膜105が基板Wに残ってもよい。
【0052】
エッチング液は、三酸化モリブデンを溶解し、モリブデンを溶解しないまたは殆ど溶解しない液体である。三酸化モリブデンは、水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。言い換えると、三酸化モリブデンが水に溶解する速度は、モリブデンが水に溶解する速度よりも大きい。したがって、水を含む液体であれば、エッチング液は、どのような液体であってもよい。例えば、エッチング液は、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))などの水であってもよいし、水酸化アンモニウム、アルカリ溶液、炭酸水、フッ酸、および塩酸などの水溶液であってもよい。水溶液における水の割合(溶質に対する水の割合)は、100以上であってもよいし、100未満であってもよい。
【0053】
エッチング液がモリブデン酸化膜105の表面106に接触すると、モリブデン酸化膜105の表面106を構成する三酸化モリブデンがエッチング液に溶解し、モリブデン酸化膜105が徐々に減少していく。エッチング時間、つまり、エッチング液がモリブデン酸化膜105に接している時間がエッチング終了時間に達すると、全てまたは殆ど全てのモリブデン酸化膜105がエッチング液に溶解する。エッチング液は、三酸化モリブデンを溶解し、モリブデンを溶解しないまたは殆ど溶解しない液体である。したがって、エッチング終了時間以上エッチング液の供給を継続しても、モリブデン膜100は減少しないまたは殆ど減少しない。
【0054】
エッチング工程を行うとき、エッチング終了時間以上連続してエッチング液を基板Wに供給してもよいし、エッチング液がモリブデン酸化膜105に接する時間の合計値を表す累積エッチング時間がエッチング終了時間以上であるように、エッチング液を基板Wに断続的に供給してもよい。また、エッチング工程を行うとき、基板Wの姿勢は、水平または鉛直であってもよいし、水平面に対して傾いていてもよい。図1Bは、基板Wを水平に維持しながら、エッチング工程を行う例を示している。
【0055】
モリブデン膜100の表層102をモリブデン酸化膜105に変化させた後、モリブデン酸化膜105をエッチング液でエッチングするのではなく、モリブデンを腐食させるエッチング液をモリブデン膜100に供給すると、モリブデン膜100の表面103のラフネス(粗さ)が良好でない場合がある。前述のように、モリブデン膜100の表層102をモリブデン酸化膜105に変化させた後に除去すれば、モリブデン膜100をエッチング液で直接エッチングする場合に比べて、エッチング後のモリブデン膜100のラフネスを改善(低減)することができる。
【0056】
全てまたは殆ど全てのモリブデン酸化膜105を基板Wから除去した後は、基板Wを簡易的にまたは完全に乾燥させる乾燥工程を行う。つまり、後述するように2回目以降の酸化工程を行う場合、基板Wに残留する液体が酸化工程等の支障にならなければ、次の酸化工程を行う前に、殆どの液体が基板Wから除去されるように基板Wを簡易的に乾燥させてもよい。もしくは、次の酸化工程を行う前に、全ての液体が基板Wから除去されるように基板Wを完全に乾燥させてもよい。エッチング液に含まれる薬品の濃度が高い場合、基板Wを乾燥させる前に、純水などのリンス液でエッチング液を洗い流してもよい。
【0057】
エッチング工程を行った後は、前述と同様に2回目の酸化工程を行い、その後、2回目のエッチング工程を行う。必要に応じて、3回目の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよいし、4回目以降の酸化工程およびエッチング工程を行ってもよい。つまり、酸化工程およびエッチング工程をこの順番で行う1つのサイクルを2回以上行ってもよい。このようにすれば、モリブデン膜100の厚さを段階的に減少させることができる。最後のエッチング工程を行った後は、基板Wを完全に乾燥させる。
【0058】
前述のように、酸化工程では、モリブデン膜100の表面103側の部分が三酸化モリブデンに変化し、モリブデン膜100の厚さが減少するものの、モリブデン膜100はエッチングされない。各回の酸化工程で形成されるモリブデン酸化膜105の厚さが一定またはほぼ一定であれば、酸化工程ではエッチング量がゼロであり、エッチング工程ではエッチング量がゼロを超える一定またはほぼ一定の値となる。このような段階的なエッチングは、デジタルエッチングともいわれる。
【0059】
次に、基板処理装置1について説明する。
【0060】
図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを処理する装置である。基板処理装置1は、複数枚の基板Wを収容するキャリアCAを支持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システム4と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。
【0061】
複数の処理ユニット2は、1つ以上の処理ユニット2をそれぞれが含む複数のタワーTWを形成している。図2は、4つのタワーTWが形成された例を示している。複数の処理ユニット2が1つのタワーTWに含まれる場合、当該複数の処理ユニット2は、上下に積層される。1つのタワーTWに含まれる処理ユニット2の数は、全てのタワーTWで同じであってもよいし、全てまたは全数未満の複数のタワーTWで異なっていてもよい。
【0062】
複数のタワーTWは、平面視で基板処理装置1の奥行方向(図2の左右方向。平面視で複数のロードポートLPの配列方向に直交する方向)に並んだ2つの列を形成している。2つの列は、平面視で、基板処理装置1の奥行方向に延びる直線状の搬送路5を介して互いに向かい合っている。後述するセンターロボットCRは、搬送路5に配置されている。
【0063】
複数の処理ユニット2は、酸化工程を行う1つ以上の酸化処理ユニット2oと、エッチング工程および乾燥工程を行う1つ以上のエッチング処理ユニット2eとを含む。酸化処理ユニット2oは、複数枚の基板Wを一枚ずつ酸化させる枚葉式のユニットである。エッチング処理ユニット2eは、複数枚の基板Wを一枚ずつエッチングおよび乾燥させる枚葉式のユニットである。
【0064】
図2は、2つの列のそれぞれにおいて、ロードポートLPに最も近い1つのタワーTWが酸化処理ユニット2oによって構成されており、残り1つのタワーTWがエッチング処理ユニット2eで構成された例を示している。この例では、1つのタワーTWに含まれる全ての処理ユニット2は、同じ種類の処理ユニット2(酸化処理ユニット2oまたはエッチング処理ユニット2e)である。酸化処理ユニット2oによって構成されたタワーTWの数および配置は、図2に示す例に限られない。1つのタワーTWは、酸化処理ユニット2oおよびエッチング処理ユニット2eの両方を含んでいてもよい。
【0065】
酸化処理ユニット2oは、酸化空間SO(図3参照)を形成するチャンバー6と、チャンバー6に設けられた出入口を開閉するシャッター7と、チャンバー6内で基板Wを加熱しながら処理ガスを基板Wに供給する酸化ユニット10と、酸化ユニット10によって加熱された基板Wをチャンバー6内で冷却する冷却ユニット9と、チャンバー6内で基板Wを搬送するローカル搬送ロボット8とを含む。
【0066】
ローカル搬送ロボット8は、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンド8hを含む。ハンド8hは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ローカル搬送ロボット8は、チャンバー6内でセンターロボットCRから基板Wを受け取り、チャンバー6内でセンターロボットCRに基板Wを渡す。ローカル搬送ロボット8は、さらに、酸化ユニット10および冷却ユニット9のそれぞれに基板Wを渡し、酸化ユニット10および冷却ユニット9のそれぞれから基板Wを受け取る。
【0067】
エッチング処理ユニット2eは、エッチング空間SE(図4参照)を形成するチャンバー41と、チャンバー41に設けられた出入口を開閉するシャッター42と、エッチング空間SE内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック43aと、スピンチャック43aに保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルとを含む。
【0068】
搬送システム4は、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で搬送される基板Wが一時的に置かれるシャトルロボットSHと、ロードポートLP上のキャリアCAとシャトルロボットSHとの間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、シャトルロボットSHと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するセンターロボットCRとを含む。
【0069】
シャトルロボットSHは、平面視でインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間に配置されている。シャトルロボットSHは、1枚以上の基板Wを水平に支持しながら、インデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で搬送する。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、シャトルロボットSHに基板Wの搬入および搬出を行う。基板Wは、シャトルロボットSHを介してインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で受け渡される。シャトルロボットSHを介さずにインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で基板Wを直接受け渡してもよい。
【0070】
インデクサロボットIRは、平面視でシャトルロボットSHとロードポートLPとの間に配置されている。インデクサロボットIRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHiを含む。ハンドHiは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHiは、鉛直な直線まわりに180度以上回転可能である。ハンドHiは、いずれのロードポートLP上のキャリアCAに対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができ、シャトルロボットSHに対して基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0071】
センターロボットCRは、平面視でシャトルロボットSHから基板Wの奥行方向に延びる搬送路5内に配置されている。センターロボットCRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHcを含む。ハンドHcは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHcは、鉛直な直線まわりに180度以上回転可能である。ハンドHcは、シャトルロボットSHに対して基板Wの搬入および搬出を行うことができ、いずれの処理ユニット2に対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0072】
複数の処理ユニット2の平面的および立体的な配置は、図2に示す例に限られない。つまり、センターロボットCRがいずれの処理ユニット2にも基板Wの搬入および搬出を行えるのであれば、複数の処理ユニット2をどのように配置してもよい。基板処理装置1に設けられたセンターロボットCRの数は、2つ以上であってもよい。この場合、少なくとも1つのセンターロボットCRが各処理ユニット2に基板Wの搬入および搬出を行えるのであれば、1つのセンターロボットCRが全ての処理ユニット2に基板Wの搬入および搬出を行えなくてもよい。
【0073】
図1Aに示すようなモリブデン膜100またはモリブデンの自然酸化膜104が露出した複数枚の基板Wを収容したキャリアCAは、半導体装置やFPD等を製造する製造工場に設置されたキャリア搬送ロボットによってロードポートLP上に置かれる。キャリアCAは、複数枚の基板Wが間隔を空けて平行に向かい合うように当該複数枚の基板Wを水平な姿勢で保持および収容する容器である。キャリアCAは、FOUP(Front-Opening Unified Pod)であってもよいし、FOUP以外の容器であってもよい。
【0074】
未処理の基板Wは、インデクサロボットIRによってロードポートLP上のキャリアCAから搬出され、センターロボットCRによって酸化処理ユニット2oに搬入される。酸化処理ユニット2oの酸化ユニット10は、搬入された基板Wに酸化工程を行う。酸化工程が行われた基板Wは、センターロボットCRによって酸化処理ユニット2oから搬出され、センターロボットCRによってエッチング処理ユニット2eに搬入される。酸化工程が行われた基板Wを酸化処理ユニット2oから搬出する前に、必要に応じて、酸化処理ユニット2oの冷却ユニット9で基板Wを冷却してもよい。
【0075】
エッチング処理ユニット2eは、搬入された基板Wにエッチング工程および乾燥工程を行う。その後、基板Wは、センターロボットCRによってエッチング処理ユニット2eから搬出され、前回と同じまたは異なる酸化処理ユニット2oに搬入される。2回目の酸化工程が行われた基板Wは、センターロボットCRによって酸化処理ユニット2oから搬出され、前回と同じまたは異なるエッチング処理ユニット2eに搬入される。
【0076】
このようにして、酸化工程、エッチング工程、および乾燥工程を含む1つのサイクルが1枚の基板Wに対して複数回行われる。全ての処理が行われた基板Wは、インデクサロボットIRによって同じまたは別のロードポートLP上のキャリアCAに搬入される。その後、処理済みの複数枚の基板Wを収容したキャリアCAが、キャリア搬送ロボットによってロードポートLPから次の目的地に搬送される。
【0077】
次に、酸化処理ユニット2oについて詳細に説明する。
【0078】
図3は、酸化処理ユニット2oに設けられた酸化ユニット10の鉛直断面の一例を示す概略断面図である。酸化ユニット10は、基板Wを収容するチャンバー21を含む。チャンバー21は、基板Wの下方に配置される固定容器24と、基板Wの上方に配置される可動蓋23とを含む。可動蓋23は、可動蓋23と固定容器24との間の空間に基板Wが出入り可能な開位置と、可動蓋23と固定容器24との間の空間が密閉される閉位置(図3に示す位置)と、の間で上下に移動可能である。
【0079】
開閉アクチュエータ22は、開位置と閉位置との間で可動蓋23を上下に移動させる。開閉アクチュエータ22が可動蓋23を閉位置に移動させると、可動蓋23の環状部23aが酸化空間SOの外側でシールを介して固定容器24の環状部24aに全周にわたって重なり、環状部23aと環状部24aとの間の隙間が密閉される。これにより、密閉された酸化空間SOが可動蓋23と固定容器24との間に形成される。
【0080】
開閉アクチュエータ22は、可動蓋23を移動させるアクチュエータである。アクチュエータは、電気、流体、磁気、熱、または化学的エネルギーを機械的な仕事に変換する装置である。アクチュエータには、電動モータ、エアシリンダ、およびその他の装置が含まれる。開閉アクチュエータ22は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外であってもよい。アクチュエータの定義は、他のアクチュエータについても同様である。
【0081】
酸化ユニット10は、チャンバー21内で基板Wを水平に支持するサセプター25を含む。サセプター25は、基板Wの下面に接触することにより基板Wを水平に支持する複数のサポートピン26と、複数のサポートピン26を支持するパーティション27とを含む。サポートピン26およびパーティション27は、上下方向における可動蓋23と固定容器24との間に配置されている。パーティション27は、一枚の板であってもよいし、1つの平面上に配置され、互いに連結された複数枚の板であってもよい。
【0082】
複数のサポートピン26は、パーティション27の上面から上方に突出している。ローカル搬送ロボット8のハンド8h(図2参照)は、複数のサポートピン26の上に基板Wを置き、複数のサポートピン26上の基板Wを取る。基板Wが複数のサポートピン26の上に置かれると、基板Wの下面がパーティション27の上面から上方に離れた状態で、基板Wの下面とパーティション27の上面とが平行に向かい合う。
【0083】
サポートピン26は、パーティション27と一体またはパーティション27に固定されてもよいし、パーティション27に対して上下に移動可能であってもよい。前者の場合、複数のサポートピン26に支持されている基板Wが配置される支持位置とパーティション27の上面との間にハンド8hを配置できるように、サポートピン26の高さ、つまり、パーティション27の上面からサポートピン26の上端までの上下方向の距離を設定すればよい。後者の場合、ハンド8hが複数のサポートピン26の上に基板Wを置き、複数のサポートピン26上の基板Wを取る上位置と、上位置よりも下方の下位置と、の間で複数のサポートピン26を上下に移動させてもよい。複数のサポートピン26が下位置に配置されているときのサポートピン26の高さは、前者の場合の高さ未満であってもよい。
【0084】
パーティション27は、固定容器24内に配置されている。パーティション27は、チャンバー21の内部空間をパーティション27の上側の上方空間とパーティション27の下側の下方空間とに仕切っている。上方空間は、パーティション27の上面から可動蓋23の天井面までの空間である。下方空間は、固定容器24の底面からパーティション27の下面までの空間である。上方空間は、酸化空間SOに相当する。可動蓋23が閉位置に配置されると、酸化空間SOに相当する上方空間が密閉される。固定容器24の内周面とパーティション27の外周面との間の隙間は密閉されており、上方空間内の流体は下方空間に移動できない。下方空間は、密閉空間であってもよいし、流体が自由に出入りできる開放空間であってもよい。
【0085】
酸化ユニット10は、酸化空間SO内でサセプター25に支持されている基板Wに光を照射することにより、当該基板Wを加熱温度で加熱する少なくとも1つの加熱ランプ28を含む。加熱ランプ28は、酸化空間SO内の基板Wを加熱するヒーターの一例である。加熱ランプ28は、電力の供給により光を発する光源と、光源を収容する透明なケースとを含む。加熱ランプ28は、ハロゲンランプまたはLED(light emitting diode)ランプであってもよいし、これら以外のランプであってもよい。
【0086】
図3は、4つの加熱ランプ28がチャンバー21内に配置されており、それぞれの加熱ランプ28がLEDランプである例を示している。この例では、4つの加熱ランプ28が基板Wの下方に配置されている。1つのチャンバー21内の基板Wに向けて光を照射する加熱ランプ28の数は、4未満または5以上であってもよい。チャンバー21内の基板Wに光を照射できるのであれば、加熱ランプ28をチャンバー21の外に配置してもよい。全てまたは一部の加熱ランプ28を基板Wの上方に配置してもよい。
【0087】
図3に示す例では、4つの加熱ランプ28がパーティション27の下方に配置されている。加熱ランプ28の光は、パーティション27を透過し、複数のサポートピン26上の基板Wに照射される。パーティション27の少なくとも一部は、加熱ランプ28の光が透過する材料で作製されている。例えば、サセプター25の全体を石英で作製してもよい。複数のサポートピン26上の基板Wを全ての加熱ランプ28の光で均一に加熱できるのであれば、パーティション27の全体を加熱ランプ28の光が透過する材料で作製しなくてもよい。
【0088】
LEDランプの光が照射される基板Wは、半導体ウエハの一例である円板状のシリコンウエハ107と、シリコンウエハ107に保持されたモリブデン膜100とを含む。LEDランプは、300~1000nmの範囲内の波長の光を放出する。つまり、この範囲内の波長の光が、LEDランプから放出される光に含まれる。LEDランプから放出される光のうち最も強度が高い光の波長が、この範囲内であってもよいし、この範囲外であってもよい。LEDランプから放出される光の波長の全てが、この範囲内であってもよいし、LEDランプから放出される光の波長の一部だけが、この範囲内であってもよい。LEDランプから放出される光の波長の全てが、この範囲外であってもよい。
【0089】
酸化ユニット10は、加熱ランプ28に供給される電流を制御することにより加熱ランプ28から放出される光の強度を制御する強度制御回路29を含む。強度制御回路29は、加熱ランプ28に供給される電流を増加または減少させることにより、加熱ランプ28から放出される光の強度を増加または減少させ、加熱ランプ28に供給される電流を安定させることにより、加熱ランプ28から放出される光の強度を安定させる電気回路である。
【0090】
強度制御回路29は、最低強度から最高強度までの範囲内の任意の強度の光を加熱ランプ28に放出させる。加熱ランプ28から放出される光の強度が変わると、基板Wに照射される光の放射照度が変わり、基板Wの温度も変わる。したがって、強度制御回路29は、最低強度に対応する最低温度から最高強度に対応する最高温度までの範囲内の任意の温度に基板Wを維持することができる。最低温度は、150℃であり、最高温度は、300℃である。これらの数値は、一例であり、これらに限られるものではない。例えば、最高温度は、500℃であってもよい。
【0091】
酸化ユニット10は、サセプター25に支持されている基板Wの温度を非接触で測定する放射温度計30を備えていてもよい。図3は、3つの放射温度計30が可動蓋23に保持されており、基板Wの上方に配置された例を示している。加熱ランプ28の光を基板Wに照射しているとき、放射温度計30の検出値に基づいて光の強度を強度制御回路29に変化させるフィードバック制御を行ってもよい。このようにすれば、基板Wの実際の温度のオーバーシュートおよびアンダーシュートを小さくすることができる。
【0092】
酸化ユニット10は、酸化空間SO内の基板Wにオゾンガスを供給するガス供給口31aを含む。ガス供給口31aは、オゾンガスが通過する空間と、この空間を形成する端面(典型的には、当該空間の全周を取り囲む環状の端面)とを含む。ガス供給口31aから流れ出たオゾンガスが酸化空間SOに供給されるのであれば、ガス供給口31aは、酸化空間SOを形成する壁面で開口していてもよいし、当該壁面よりも内側に配置されていてもよい。図3は、前者の例を示している。
【0093】
酸化ユニット10は、ガス供給口31aに加えて、ガス供給口31aに供給されるべきオゾンガスを発生するオゾンガス発生器31dと、オゾンガス発生器31dで発生したオゾンガスをガス供給口31aの方に導くオゾンガス配管31bと、オゾンガス配管31bからガス供給口31aにオゾンガスが流れる開状態とオゾンガス配管31bからガス供給口31aにオゾンガスが流れない閉状態との間で開閉するオゾンガスバルブ31cとを含む。
【0094】
図示はしないが、オゾンガスバルブ31cは、流体が流れる内部流路と内部流路の一部を形成する環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3(図2参照)は、アクチュエータを制御することにより、オゾンガスバルブ31cを開閉させる。
【0095】
酸化ユニット10は、さらに、酸化空間SO内の気体を排出する排気口33aと、排気口33aに流入した気体を酸化空間SOから離れる方向に導く排気配管33bと、酸化空間SO内の気体が排気口33aに流入する開状態と酸化空間SO内の気体が排気口33aに流入しない閉状態との間で開閉する排気バルブ33cとを含む。排気口33aは、排出すべき気体が通過する空間と、この空間を形成する端面とを含む。排気口33aが酸化空間SO内の気体を排出できるのであれば、排気口33aは、酸化空間SOを形成する壁面で開口していてもよいし、当該壁面よりも内側に配置されていてもよい。
【0096】
オゾンガスバルブ31cを開くと、オゾンガスがガス供給口31aから流れ出て、酸化空間SOに供給される。排気バルブ33cを開いた状態でオゾンガスの供給を続けると、酸化空間SOがオゾンガスで満たされる。酸化空間SOでのオゾンガスの充満は、酸化空間SO内の気体を排気口33aに排出しながら、オゾンガスを酸化空間SOに供給することにより行ってもよいし、酸化空間SO内の気体を排気口33aに排出した後に、オゾンガスを酸化空間SOに供給することにより行ってもよい。
【0097】
酸化空間SOがオゾンガスで満たされた後、ガス供給口31aからのオゾンガスの供給と排気口33aへの気体の排出とを継続してもよいし、停止してもよい。前者の場合、酸化空間SOをオゾンガスで充満させながら、酸化空間SO内の気圧を酸化空間SOの外の気圧以上または未満の値に維持してもよい。この場合、排気バルブ33cは、酸化空間SOの気圧が設定値以上まで上昇すると、当該気圧が設定値未満に低下するまで酸化空間SO内の気体を排気口33aに流入させるリリーフバルブであってもよい。排気バルブ33cは、開閉バルブとリリーフバルブとの両方を含んでいてもよい。
【0098】
酸化ユニット10は、酸化空間SOに供給されるべき不活性ガスの一例である窒素ガスを導く不活性ガス配管32aと、不活性ガス配管32aから酸化空間SOに窒素ガスが流れる開状態と不活性ガス配管32aから酸化空間SOに窒素ガスが流れない閉状態との間で開閉する不活性ガスバルブ32bとを含む。図3は、不活性ガス配管32a内の窒素ガスが、ガス供給口31aを介して酸化空間SOに供給される例を示している。不活性ガス配管32a内の窒素ガスは、ガス供給口31aとは別のガス供給口を介して酸化空間SOに供給されてもよい。
【0099】
オゾンガスを酸化空間SOに供給した後は、酸化空間SO内のオゾンガスを排気口33aを通じて排出する。具体的には、オゾンガスを酸化空間SOに供給した後、オゾンガスバルブ31cを閉じ、排気バルブ33cを開いた状態で、不活性ガスバルブ32bを開く。これにより、窒素ガスが酸化空間SOに供給されると共に、オゾンガスなどの酸化空間SO内の気体が排気口33aに排出される。その結果、酸化空間SO内のオゾンガスが窒素ガスで置換され、酸化空間SOが窒素ガスで満たされる。
【0100】
酸化ユニット10で行われる基板Wの処理の一例は以下のとおりである。
【0101】
具体的には、酸化ユニット10で基板Wを処理するときは、可動蓋23が開位置に配置された状態で、ローカル搬送ロボット8が、ハンド8hで基板Wを水平に支持しながら、ハンド8hを固定容器24の上方に移動させる。その後、ローカル搬送ロボット8が、ハンド8h上の基板Wをサセプター25の上に置き、ハンド8hをチャンバー21の外に移動させる。その後、開閉アクチュエータ22が、可動蓋23を閉位置に移動させ、可動蓋23と固定容器24との間を密閉する。
【0102】
可動蓋23が閉位置に配置された後、前述のように、オゾンガスを酸化空間SOに充満させ、酸化空間SO内の基板Wに供給する。オゾンガスが酸化空間SOに充満する前または充満した後に、加熱ランプ28に発光を開始させる。これにより、設定温度に対応する強度の光が加熱ランプ28から放出され、光の照射によって基板Wが設定温度で加熱される。その後、基板Wの温度と基板Wに接する雰囲気中のオゾンガスの濃度などの条件を一定に維持しながら、前述の最大成長時間以上連続して酸化工程を行う。
【0103】
酸化工程を行うと、基板Wに接する雰囲気中の酸素原子がモリブデン膜100(図1B参照)中のモリブデンと結合し、モリブデンが三酸化モリブデンに変化する。酸素原子は、モリブデン膜100内を拡散する。これにより、三酸化モリブデンを含むモリブデン酸化膜105(図1B参照)が、モリブデン膜100の表面103上に形成される。さらに、酸化条件を一定に維持しながら、最大成長時間以上連続して酸化工程を行うと、前述のセルフリミテーションにより、モリブデン酸化膜105の厚さが最大厚さまで増加し、最大厚さにとどまる。
【0104】
酸化工程を行った後は、加熱ランプ28に発光を停止させる。加熱ランプ28が発光を停止する前または後に、オゾンガスなどの酸化空間SO内の気体を排気口33aを通じて排出し、不活性ガスなどのオゾンガス以外の気体を酸化空間SOに充満させる。加熱ランプ28が発光を停止し、酸化空間SO内のオゾンガスが排出された後は、可動蓋23が開位置に配置された状態で、ローカル搬送ロボット8が、ハンド8hを固定容器24の上方に移動させる。その後、ローカル搬送ロボット8は、サセプター25上の基板Wをハンド8hで取り、ハンド8hをチャンバー21の外に移動させる。
【0105】
このように、オゾンガスは、密閉された酸化空間SOに供給される。加熱ランプ28は、パーティション27によって酸化空間SOから隔てられている。酸化空間SO内の気体は、加熱ランプ28が配置された下方空間に移動することができない。したがって、加熱ランプ28がオゾンガスに晒されることを防止できる。さらに、基板Wとサポートピン26との点接触または線接触により基板Wを支持するので、基板Wとサセプター25との接触面積を小さくすることができ、基板Wからサセプター25に拡散する熱量を減らすことができる。これにより、基板Wを加熱ランプ28の光で効率的に加熱することができる。
【0106】
加熱ランプ28の一例であるLEDランプの光で基板Wを加熱する場合、ホットプレートで基板Wを加熱する場合に比べて熱エネルギーを基板Wに集中させることができ、基板Wおよびその近傍の酸素原子の活性を効率的に高めることができる。さらに、LEDランプに発光を開始させると、基板Wの温度が急激に上昇し、LEDランプに発光を停止させると、基板Wの温度が急激に低下する。LEDランプが発光を停止すると、基板Wの温度が急激に低下するので、基板Wの冷却を省略できる、もしくは、基板Wを冷却する時間を短縮できる。
【0107】
これに対して、ホットプレートで基板Wを加熱する場合は、ホットプレートの予熱が必要である上に、ホットプレートの温度を安定させるため、最大成長時間が経過した後もホットプレートの温度を下げることができない。したがって、ホットプレートで基板Wを加熱する場合よりも消費電力を大幅に減らすことができる。さらに、ホットプレートで基板Wを加熱する場合に比べて、基板W以外の部材に伝達される熱量を減らすことができ、加熱による当該部材の腐食を防止するまたは遅らせることができる。
【0108】
次に、エッチング処理ユニット2eについて説明する。
【0109】
図4は、エッチング処理ユニット2eの鉛直断面の一例を示す概略断面図である。エッチング処理ユニット2eは、エッチング空間SEを形成するチャンバー41と、チャンバー41に設けられた出入口を開閉するシャッター42と、エッチング空間SE内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック43aを含む。
【0110】
スピンチャック43aは、複数のチャックピン43bを基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックであってもよいし、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース43cの上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。図4は、前者の例を示している。スピンチャック43aは、水平な姿勢でスピンチャック43aに保持されている基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる電動モータ43dを含む。
【0111】
エッチング処理ユニット2eは、スピンチャック43aに保持されている基板Wの上面にエッチング液を供給するエッチング液ノズル44aと、スピンチャック43aに保持されている基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液ノズル45aとを含む。図4は、エッチング液およびリンス液がいずれも純水(図4では、DIWと表記)である例を示している。リンス液は、純水に限らず、IPA(イソプロピルアルコール)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の水酸化アンモニウムのいずれかであってもよい。リンス液は、エッチング液とは種類が異なる液体であってもよい。
【0112】
図4に示すように、エッチング処理ユニット2eは、エッチング液をエッチング液ノズル44aの方に導くエッチング液配管44bと、エッチング液配管44bからエッチング液ノズル44aにエッチング液が流れる開状態とエッチング液配管44bからエッチング液ノズル44aにエッチング液が流れない閉状態との間で開閉するエッチング液バルブ44cとを含む。エッチング液バルブ44cが開かれると、エッチング液が、エッチング液ノズル44aの吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0113】
エッチング処理ユニット2eは、リンス液をリンス液ノズル45aの方に導くリンス液配管45bと、リンス液配管45bからリンス液ノズル45aにリンス液が流れる開状態とリンス液配管45bからリンス液ノズル45aにリンス液が流れない閉状態との間で開閉するリンス液バルブ45cとを含む。リンス液バルブ45cが開かれると、リンス液が、リンス液ノズル45aの吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0114】
エッチング液ノズル44aは、基板Wに対する処理液の衝突位置を基板Wの上面または下面内で移動させることができるスキャンノズルであってもよいし、基板Wに対する処理液の衝突位置を移動させることができない固定ノズルであってもよい。リンス液ノズル45aについても同様である。図4は、エッチング液ノズル44aがスキャンノズルであり、リンス液ノズル45aが固定ノズルである例を示している。
【0115】
エッチング液ノズル44aは、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にエッチング液ノズル44aを移動させるノズルアクチュエータ44eに接続されている。エッチング液ノズル44aは、水平に延びるノズルアーム44dの先端から下方に延びている。ノズルアクチュエータ44eは、ノズルアーム44dを介してエッチング液ノズル44aに接続されている。ノズルアクチュエータ44eは、ノズルアーム44dを移動させることにより、エッチング液ノズル44aから吐出されたエッチング液が基板Wの上面に供給される処理位置(図4に示す位置)と、エッチング液ノズル44aが平面視でスピンチャック43aのまわりに位置する待機位置と、の間でエッチング液ノズル44aを水平に移動させる。
【0116】
エッチング処理ユニット2eは、スピンチャック43aに保持されている基板Wまたはスピンチャック43aから飛散した液体を受け止める筒状の処理カップ46を含む。処理カップ46は、基板Wまたはスピンチャック43aから外方に飛散した液体を受け止める複数のガード47と、複数のガード47によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ48とを含む。図2は、2つのガード47と2つのカップ48とが設けられており、1つのカップ48が1つのガード47と一体である例を示している。
【0117】
エッチング処理ユニット2eは、複数のガード47を個別に昇降させるガード昇降ユニット49を含む。ガード昇降ユニット49は、上位置から下位置までの任意の位置にガード47を位置させる。上位置は、スピンチャック43aに保持されている基板Wが配置される保持位置よりもガード47の上端が上方に配置される位置である。下位置は、ガード47の上端が保持位置よりも下方に配置される位置である。ガード47の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース43cを取り囲んでいる。
【0118】
スピンチャック43aが基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wから振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、少なくとも1つのガード47の上端が、基板Wよりも上方に配置される。したがって、基板Wから排出された薬液やリンス液などの処理液は、いずれかのガード47に受け止められ、このガード47に対応するカップ48に案内される。
【0119】
エッチング処理ユニット2eで行われる基板Wの処理の一例は以下のとおりである。
【0120】
具体的には、センターロボットCR(図2参照)は、エッチング処理ユニット2eの出入口が開かれた状態で、ハンドHcで基板Wを水平に支持しながら、ハンドHcをスピンチャック43aの上方に移動させる。センターロボットCRは、スピンチャック43aの上に基板Wを置いた後、出入口を通じてハンドHcをエッチング処理ユニット2eの外に移動させる。その後、出入口がシャッター42によって閉じられる。基板Wがスピンチャック43aに置かれると、スピンチャック43aは、複数のチャックピン43bによって基板Wを保持し、電動モータ43dによって基板Wを回転させる。ガード昇降ユニット49は、少なくとも1つのガード47を下位置から上位置に上昇させる。
【0121】
基板Wがスピンチャック43aに保持された後は、エッチング液を基板Wに供給するエッチング工程を行う。具体的には、スピンチャック43aが基板Wを回転させている状態で、エッチング液バルブ44cを開き、エッチング液ノズル44aにエッチング液の吐出を開始させる。これにより、エッチング液が基板Wの上面の全域に供給される。基板Wの上面の全域がエッチング液の液膜で覆われた後は、基板Wへの新たなエッチング液の供給を停止し、基板Wを静止または低速(例えば30rpm以下)で回転させながら、基板Wの上面の全域がエッチング液の液膜で覆われている状態を維持するパドル工程を行ってもよい。
【0122】
エッチング液が前述のエッチング終了時間以上基板Wに供給されると、エッチング液バルブ44cを閉じる。その後、リンス液を基板Wに供給するリンス工程を行う。具体的には、スピンチャック43aが基板Wを回転させており、基板Wの上面の全域がエッチング液の液膜で覆われている状態で、リンス液バルブ45cを開き、リンス液ノズル45aにリンス液の吐出を開始させる。これにより、リンス液が基板Wの上面の全域に供給され、基板W上のエッチング液が洗い流れる。
【0123】
リンス液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ45cを閉じる。その後、基板Wの高速回転により基板Wを乾燥させる乾燥工程を行う。具体的には、リンス液ノズル45aからのリンス液の吐出が停止された状態で、電動モータ43dが基板Wを回転方向に加速させ、エッチング工程からリンス工程までの基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(たとえば数千rpm)で基板Wを回転させる。これにより、液体が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、電動モータ43dが回転を停止する。
【0124】
基板Wの回転が停止された後は、全てのガード47が下位置に配置される。この状態で、出入口が開かれ、センターロボットCRがハンドHcをエッチング処理ユニット2e内に進入させる。センターロボットCRは、ハンドHcを移動させることにより、スピンチャック43a上の基板WをハンドHcで支持する。その後、センターロボットCRは、出入口を通じてハンドHcをエッチング処理ユニット2eの外に移動させる。これにより、基板Wがエッチング処理ユニット2eから搬出される。
【0125】
図4に示す例では、エッチング液およびリンス液は、いずれも純水である。この場合、リンス工程を行わずに、乾燥工程を行ってもよいし、エッチング液としての純水をリンス液としての純水で洗い流した後に乾燥工程を行ってもよい。前者の場合、基板Wの上にエッチング液がある状態で、電動モータ43dが基板Wを高回転速度で回転させればよい。以下では、エッチング工程を行った後、リンス工程を行わずに、乾燥工程を行う例について説明する。
【0126】
次に、基板処理装置1の電気的構成について説明する。
【0127】
図5は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶するメモリー3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶するストレージ3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取るリーダー3fと、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0128】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0129】
CPU3bは、ストレージ3eに記憶されたプログラムPを実行する。ストレージ3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、リーダー3fを通じてリムーバブルメディアRMからストレージ3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置3gを通じてストレージ3eに送られたものであってもよい。
【0130】
ストレージ3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。ストレージ3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体(non-transitory tangible media)である。
【0131】
ストレージ3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。制御装置3は、後述する各工程を実行するようにプログラムされている。
【0132】
次に、基板処理装置1で行われる基板Wの処理の一例について説明する。
【0133】
図6は、高温サイクルおよび低温サイクルの回数と高温サイクルおよび低温サイクルの順番の例を示す表である。図6では、高温サイクルを「H」で表しており、低温サイクルを「L」で表している。以下で説明する基板Wの処理の一例では、1枚の基板Wに対して、高温サイクルをN回行い、低温サイクルをM回行う(NおよびMはいずれも2以上の整数)。Nは、Mと等しくてもよいし、Mよりも大きいまたは小さくてもよい。
【0134】
高温サイクルは、高温酸化工程およびエッチング工程を含む。高温酸化工程は、オゾンガスを基板Wに供給しながら、光の照射によって高温度で基板Wを加熱する酸化工程である。低温サイクルは、低温酸化工程およびエッチング工程を含む。低温酸化工程は、オゾンガスを基板Wに供給しながら、光の照射によって高温酸化工程での基板Wの温度(高温度)よりも低い低温度で基板Wを加熱する酸化工程である。
【0135】
高温酸化工程および低温酸化工程は、第1酸化工程および第2酸化工程の一例である。高温酸化工程および低温酸化工程のいずれが第1酸化工程であってもよい。第1酸化工程の後に行われるエッチング工程は第1エッチング工程であり、第2酸化工程の後に行われるエッチング工程は第2エッチング工程である。高温サイクルおよび低温サイクルの一方は、第1サイクルであり、高温サイクルおよび低温サイクルの他方は、第2サイクルである。
【0136】
高温サイクルの回数を表すNと、低温サイクルの回数を表すMと、高温サイクルおよび低温サイクルの順番とは、レシピに指定されている。NおよびMは、最初のサイクルが行われる前のモリブデン膜100(図1A参照)の厚みと、全てのサイクルが行われた後のモリブデン膜100の厚みと、の差を表す総除去量に応じて設定される。1回の高温サイクルを行ったときのモリブデン膜100の厚みの減少量をTnと、1回の低温サイクルを行ったときのモリブデン膜100の厚みの減少量をTmと、それぞれ定義すると、総除去量は、総除去量=Tn×N+Tm×Mで表される。
【0137】
総除去量が同じであれば、高温サイクルおよび低温サイクルの回数と高温サイクルおよび低温サイクルの順番とをどのように設定してもよい。図6中のケース1~5は、高温サイクルおよび低温サイクルの回数と高温サイクルおよび低温サイクルの順番との具体例を示している。
【0138】
図6中のケース1~3は、高温サイクルおよび低温サイクルの回数が同じで、高温サイクルおよび低温サイクルの順番が異なる例を示している。ケース1に示すように、先に高温サイクルをN回行い、その後に低温サイクルをM回行ってもよい。これとは反対に、ケース2に示すように、先に低温サイクルをM回行い、その後に高温サイクルをN回行ってもよい。ケース3に示すように、高温サイクルおよび低温サイクルを交互に1回ずつ行ってもよい。ケース3でNがMよりも大きい場合、高温サイクルおよび低温サイクルを交互に行う前および後の少なくとも一方で高温サイクルを行えばよい。ケース3でMがNよりも大きい場合も同様である。
【0139】
図6のケース4に示すように、高温サイクルを3回以上行う場合、2つの高温サイクルの間に行われる低温サイクルの回数は、毎回異なっていてもよい。ケース4は、1回目と2回目の高温サイクルの間に低温サイクルを1回行い、2回目と3回目の高温サイクルの間に低温サイクルを2回行い、3回目と4回目の高温サイクルの間に低温サイクルを3回行う例を示している。ケース4において、高温サイクルと低温サイクルとを入れ替えてもよい。
【0140】
図6のケース5に示すように、高温サイクルを4回以上行う場合、2つの高温サイクルの間に行われる低温サイクルの回数は、高温サイクルの間隔の総数未満の複数の間隔において毎回異なっていてもよい。ケース5では、高温サイクルの間隔の総数が3である。ケース5は、1回目と2回目の高温サイクルの間に低温サイクルを1回行い、2回目と3回目の高温サイクルの間に低温サイクルを2回行い、3回目と4回目の高温サイクルの間に低温サイクルを1回行う例を示している。最初と2つの目の間隔、または2つ目と3つ目の間隔において、低温サイクルの回数が毎回異なっている。ケース5において、高温サイクルと低温サイクルとを入れ替えてもよい。
【0141】
高温サイクルと次の高温サイクルとの間に行われる低温サイクルの回数は、図6のケース3に示すように、毎回同じあってもよいし、図6のケース4およびケース5に示すように、規則的にまたは不規則に変化してもよい。高温サイクルと低温サイクルとを入れ替えた場合も同様である。複数枚の基板Wを処理する場合、高温サイクルおよび低温サイクルの回数が同じであれば、ある基板Wの処理では、2つの高温サイクルの間に行われる低温サイクルの回数が毎回同じであり、別の基板Wの処理では、2つの高温サイクルの間に行われる低温サイクルの回数が規則的にまたは不規則に変化してもよい。
【0142】
図7Aおよび図7Bは、高温酸化工程または低温酸化工程が行われた後の基板Wの断面の一例を示す概略断面図である。図7Aは、高温酸化工程が行われた後の基板Wの断面の一例を示しており、図7Bは、低温酸化工程が行われた後の基板Wの断面の一例を示している。図8は、高温酸化工程および低温酸化工程が行われているときの光の強度の経時変化を示すグラフである。図9は、高温酸化工程および低温酸化工程が行われているときの基板Wの温度の経時変化を示すグラフである。
【0143】
前述のように、高温酸化工程は、オゾンガスを基板Wに供給しながら、光の照射によって高温度で基板Wを加熱する酸化工程である。低温酸化工程は、オゾンガスを基板Wに供給しながら、光の照射によって低温度で基板Wを加熱する酸化工程である。図9に示すように、低温度は、高温度よりも低い。低温度および高温度は、前述の最低温度から最高温度までの範囲内の温度である。
【0144】
高温酸化工程を行うとき、強度制御回路29(図3参照)は、高温度に対応する高強度の光を加熱ランプ28の一例であるLEDランプに放出させる。図9に示すように、高強度の光は、基板Wに照射され、基板Wの温度を高温度まで上昇させる。これにより、オゾンガスを基板Wに供給しながら、基板Wの温度を高温度に維持できる。
【0145】
その一方で、低温酸化工程を行うとき、強度制御回路29は、低温度に対応する低強度の光を加熱ランプ28の一例であるLEDランプに放出させる。図9に示すように、低強度の光は、基板Wに照射され、基板Wの温度を低温度まで上昇させる。これにより、オゾンガスを基板Wに供給しながら、基板Wの温度を低温度に維持できる。
【0146】
基板Wの温度は、基板Wに照射される光の強度に依存する。図8に示すように、前述の高強度の光は、前述の低強度の光よりも放射照度が高い光である。前述の高強度の光は、例えば、波長が300~1000nmの範囲内であり、放射照度が10W/cm以上であり、50℃/秒以上の速度で基板Wを加熱する光である。図7Aおよび図7Bを比較すると分かるように、高温酸化工程では、低温酸化工程よりも厚いモリブデン酸化膜105が形成される。そのため、1回の高温サイクルを行ったときのモリブデン膜100の厚みの減少量は、1回の低温サイクルを行ったときのモリブデン膜100の厚みの減少量よりも大きい。
【0147】
図10は、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明するためのフローチャートである。以下では、図2および図10を参照する。
【0148】
基板処理装置1で基板Wを処理するときは、酸化処理ユニット2oに基板Wを搬入する(図10のステップS1)。レシピで高温サイクルを行うように指定されている場合(図10のステップS2でYes)、酸化処理ユニット2oで高温酸化工程を行う(図10のステップS3)。レシピで低温サイクルを行うように指定されている場合(図10のステップS2でNo)、酸化処理ユニット2oで低温酸化工程を行う(図10のステップS4)。
【0149】
高温酸化工程または低温酸化工程を行った後は、酸化処理ユニット2oから基板Wを搬出し、搬出した基板Wをエッチング処理ユニット2eに搬入する(図10のステップS5)。その後、エッチング処理ユニット2eでエッチング工程および乾燥工程を行う(図10のステップS6)。これにより、高温酸化工程または低温酸化工程で形成されたモリブデン酸化膜105(図1B参照)が除去される。
【0150】
エッチング工程および乾燥工程を行った後は、高温サイクルおよび低温サイクルを行った回数が、レシピで指定されている回数に一致するか否かを確認する(図10のステップS7)。一致しない場合(図10のステップS7でNo)、エッチング処理ユニット2eから基板Wを搬出し、搬出した基板Wを前回と同じまたは異なる酸化処理ユニット2oに搬入する(図10のステップS1)。
【0151】
基板Wを酸化処理ユニット2oに搬入した後は、レシピの指定にしたがって高温酸化工程または低温酸化工程を行い(図10のステップS3またはステップS4)、酸化処理ユニット2oから搬出した基板Wを前回と同じまたは異なるエッチング処理ユニット2eに搬入する(図10のステップS5)。その後、エッチング処理ユニット2eでエッチング工程および乾燥工程を行う(図10のステップS6)。
【0152】
このように、ステップS1からステップS6までの工程を繰り返し、高温サイクルおよび低温サイクルをレシピに指定されている順番でかつレシピで指定されている回数行う。高温サイクルおよび低温サイクルを行った回数が、レシピで指定されている回数に一致すると(図10のステップS7でYes)、エッチング処理ユニット2eから基板Wを搬出し、搬出した基板WをロードポートLP上のキャリアCAに搬入する(図10のステップS8)。
【0153】
以上のように本実施形態では、光を基板Wに照射することにより基板Wを加熱する。さらに、基板Wに光を照射しながら酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給する。これにより、酸素ガスまたはオゾンガスに含まれる酸素原子がモリブデンと結合し、モリブデン膜100の表層102が三酸化モリブデンに変化する。その後、エッチング液を基板Wに供給する。三酸化モリブデンは、エッチング液に溶解する。したがって、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜100の表層102がエッチングされ、三酸化モリブデンに変化していないモリブデン膜100の表層102以外の部分が基板Wに残る。
【0154】
三酸化モリブデンへの変化により形成されるモリブデン酸化膜105の厚さは、酸素ガスまたはオゾンガスを供給しているときの基板Wの温度に依存する。例えば、基板Wの温度を上昇させると、モリブデン酸化膜105の厚さが増加し、モリブデン膜100の厚さが減少する。モリブデン膜100の表層102を複数回酸化させる場合、基板Wを毎回高温で加熱すると、モリブデン膜100が薄くなる速度が増加するものの、モリブデン膜100の厚さを緻密に制御し難い。その一方で、基板Wを毎回低温で加熱すると、モリブデン膜100の厚さを緻密に制御し易いものの、モリブデン膜100が薄くなる速度が減少する。
【0155】
本実施形態では、モリブデン膜100の表層102を酸化させるときに、基板Wに照射される光の強度を変更することにより、基板Wの温度を変化させる。したがって、基板Wを毎回高温で加熱する場合に比べて、モリブデン膜100の厚さを緻密に制御することができる。加えて、基板Wを毎回低温で加熱する場合に比べて、モリブデン膜100が薄くなる速度を増加させることができる。これにより、モリブデン膜100の寸法精度を維持しながら、モリブデン膜100をより短い時間で薄くすることができる。
【0156】
本実施形態では、加熱ランプ28の一例であるLEDランプから放出された光を基板Wに照射することにより基板Wを加熱する。したがって、ホットプレートで基板Wを加熱する場合に比べて、つまり、熱伝導によりジュール熱を基板Wに移動させる場合に比べて、基板Wの温度を急速に上昇させることができる。さらに、ホットプレートやハロゲンランプなどの他の熱源で基板Wを加熱する場合に比べて消費電力を削減することができる。加えて、LEDランプは寿命が長いので、ハロゲンランプなどの他の加熱ランプで基板Wを加熱する場合に比べて部品の交換頻度を減らすことができる。
【0157】
本実施形態では、300~1000nmの範囲内の波長の光をLEDランプに放出させる。シリコンウエハの温度が500℃以下であり、光の波長が前記の範囲を超える場合、シリコンウエハによる光の吸収率が低く、そのため、高強度の光を基板Wに照射しないと、基板Wの温度を急速に上昇させることができない。光の強度を高めると、消費電力が増加したり、より大きな加熱ランプを使う必要が生じたりする。前記の範囲内の波長の光を基板Wに照射すれば、光の吸収率を高めることができ、基板Wを効率的に加熱することができる。
【0158】
本実施形態では、第1強度の光を放出する第1加熱ランプとは異なる第2加熱ランプに第2強度の光を放出させるのではなく、1つの加熱ランプ28に第1強度の光を放出させ、その前または後に、第2強度の光を放出させる。つまり、加熱ランプ28から放出される光の強度を切り替えることにより、第1強度の光と第2強度の光とを加熱ランプ28に放出させる。したがって、互いに異なる第1加熱ランプおよび第2加熱ランプを設ける場合に比べて加熱ランプ28の数を減らすことができる。
【0159】
本実施形態では、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら、基板Wを加熱した後、エッチング液を基板Wに供給する。その後、再び、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら、基板Wを加熱した後、エッチング液を基板Wに供給する。つまり、モリブデン膜100の酸化とモリブデン酸化膜105のエッチングとを交互に複数回繰り返す。これにより、モリブデン膜100の厚さを段階的に減少させることができ、モリブデン膜100の厚さを段階的に調整できる。
【0160】
本実施形態では、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら、第1強度の光の照射によって第1温度で基板Wを加熱し、その後、エッチング液を基板Wに供給する第1サイクルを、3回以上行う。さらに、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら、第2強度の光の照射によって第2温度で基板Wを加熱し、その後、エッチング液を基板Wに供給する第2サイクルを、1回以上行う。高温サイクルおよび低温サイクルの一方は、第1サイクルであり、高温サイクルおよび低温サイクルの他方は、第2サイクルである。
【0161】
2つの第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数は、第1サイクルの間隔の総数以下の複数の間隔において毎回異なる。例えば、第1サイクルを3回行う場合、1回目と2回目の第1サイクルの間に第2サイクルを1回行い、2回目と3回目の第1サイクルの間に第2サイクルを2回行う。第1サイクルを4回行う場合、1回目と2回目の第1サイクルの間に第2サイクルを1回行い、2回目と3回目の第1サイクルの間に第2サイクルを2回行う。3回目と4回目の第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数は、1または2であってもよいし、零または3以上の値であってもよい。
【0162】
複数枚の基板Wに対して個別に第1サイクルを行う場合、第1サイクルを行う時期が重なると、処理ガスや処理液などの処理流体の使用量や電力の使用量が局所的に増加することがある。2つの第1サイクルの間に行われる第2サイクルの回数を変化させることにより、このような局所的な増加を小さくすることができ、処理流体や電力の時間当たりの使用量を平準化することができる。
【0163】
本実施形態では、酸素ガスではなく、オゾンガスを基板Wに供給しながら基板Wを加熱する。したがって、酸素ガスを基板Wに供給しながら基板Wを加熱する場合に比べて、効率的にモリブデン膜100の表層102を三酸化モリブデンに変化させることができる。これにより、モリブデン膜100の表層102を三酸化モリブデンに変化させる時間を短縮でき、基板処理装置1のスループット(単位時間あたりの基板Wの処理枚数)を増加させることができる。
【0164】
本実施形態では、基板Wをエッチングするために、水を主成分とする水含有液を基板Wに供給する。三酸化モリブデンが水に溶解する一方で、モリブデンは、水に溶解しないまたは殆ど溶解しない。したがって、薬液を使わずに、三酸化モリブデンに変化したモリブデン膜100の表層102を基板Wから除去できる。これにより、エッチング液が薬液である場合に比べて、排液の処理を簡素化でき、環境への負荷を軽減できる。
【0165】
本実施形態では、1つの基板処理装置1内でモリブデン膜100を酸化させエッチングする。言い換えると、基板WがロードポートLPを通じて基板処理装置1に搬入された後、モリブデン膜100の酸化とモリブデン酸化膜105のエッチングとが終了するまで、基板WはロードポートLPを通じて基板処理装置1から搬出されない。したがって、モリブデン膜100の酸化とモリブデン酸化膜105のエッチングとを別々の基板処理装置内で行う場合に比べて、基板Wの搬送に要する時間を短縮できる。
【0166】
他の実施形態
酸化工程は、基板Wの設定温度が異なる3つ以上の酸化工程を含んでいてもよい。例えば、酸化工程は、高温酸化工程と低温酸化工程とに加え、酸素ガスまたはオゾンガスを基板Wに供給しながら、高強度よりも弱くかつ低強度よりも強い中間強度の光の照射によって、高温度よりも低くかつ低温度よりも高い中間温度で基板Wを加熱する中間温度酸化工程を含んでいてもよい。
【0167】
加熱ランプ28から放出される光の強度を高強度と低強度との間で変更することにより、高温酸化工程と低温酸化工程とを行うのではなく、高強度の光を基板Wに照射する高強度用加熱ランプと低強度の光を基板Wに照射する低強度用加熱ランプとを設けてもよい。この場合、高強度用加熱ランプおよび低強度用加熱ランプを同じ酸化処理ユニット2o内に配置してもよいし、別々の酸化処理ユニット2o内に配置してもよい。
【0168】
基板Wの高速回転により基板Wを乾燥させるスピンドライを行う代わりに、IPAなどの水よりも揮発性が高い有機溶剤の蒸気を基板Wに供給することにより基板Wに付着している液体を有機溶剤の液体に置換してもよい。これに加えてまたは代えて、乾燥すべき基板Wが配置された空間内の気圧を減少させることにより、基板Wに付着している液体の蒸発を促進してもよい。
【0169】
モリブデン膜100の厚みを減少させる量が小さいのであれば、1枚の基板Wに対して行われる高温サイクルおよび低温サイクルの回数は、1回ずつであってもよい。
【0170】
複数枚の基板Wを一枚ずつ酸化させるのではなく、複数枚の基板Wを一括して酸化させてもよい。つまり、酸素ガスまたはオゾンガスを複数枚の基板Wに同時に供給しながら、光の照射によって当該複数枚の基板Wを同時に加熱してもよい。複数枚の基板Wを一括して酸化させる場合、複数枚の基板Wを一枚ずつエッチングしてもよいし、複数枚の基板Wを一括してエッチングしてもよい。複数枚の基板Wを一括してエッチングする場合、複数枚の基板Wを一枚ずつ酸化させてもよい。
【0171】
高温サイクルおよび低温サイクルの全てを基板処理装置1で行うのではなく、高温サイクルおよび低温サイクルに含まれる一部の工程を別の基板処理装置で行ってもよい。例えば、高温酸化工程および低温酸化工程を基板処理装置1で行い、エッチング工程を別の基板処理装置で行ってもよい。もしくは、高温酸化工程およびエッチング工程を含む高温サイクルを基板処理装置1で行い、低温酸化工程およびエッチング工程を含む低温サイクルを別の基板処理装置で行ってもよい。
【0172】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0173】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0174】
酸化処理ユニット2oは、第1および第2酸化手段の一例である。ガス供給口31aは、第1および第2ガス供給口の一例である。加熱ランプ28は、第1および第2加熱ランプの一例である。エッチング処理ユニット2eは、第1および第2エッチング手段の一例である。エッチング液ノズル44aは、第1および第2エッチング液ノズルの一例である。
【0175】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 :基板処理装置
2e :エッチング処理ユニット(第1および第2エッチング手段)
2o :酸化処理ユニット(第1および第2酸化手段)
4 :搬送システム
28 :加熱ランプ(第1および第2加熱ランプ)
31a :ガス供給口(第1および第2ガス供給口)
44a :エッチング液ノズル(第1および第2エッチング液ノズル)
100 :モリブデン膜
102 :モリブデン膜の表層
105 :モリブデン酸化膜
107 :シリコンウエハ
W :基板
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-B】
図8
図9
図10