(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018611
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240201BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B25J15/08 T
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122042
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】小河路 隆裕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU08
3C707EV11
3C707GU01
3C707KS09
3C707KS30
3C707KS31
3C707KS34
3C707KS35
3C707KT01
3C707KW01
3C707KW03
3C707KX06
3C707KX08
3C707LV10
3C707LW12
(57)【要約】
【課題】簡易且つ小型な構成のロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットハンド(50)は、複数の指(33)と、第1電磁石(512)と、第2電磁石(522)と、第1電磁石(512)と第2電磁石(522)との間を移動可能な可動部(53)と、を備えている。複数の指(33)の各々は、物体(M)を把持する把持部(331)と、可動部(53)の移動に伴って回動軸(333)を中心に回動するカムフォロア(332)と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指と、
第1電磁石と、
前記第1電磁石と対向する第2電磁石と、
前記第1電磁石と前記第2電磁石との間を移動可能な、磁性体からなる可動部と、
を備え、
前記複数の指の各々は、
当該指の先端に位置し、物体を把持する把持部と、
前記可動部の移動に伴って回動軸を中心に回動する回動部と、
を有し、
前記複数の指の各前記把持部は、
前記第1電磁石の吸着力による前記可動部の前記第1電磁石側への移動により前記回動部が第1方向に回動することにより、互いに接近する閉動作を行い、
前記第2電磁石の吸着力による前記可動部の前記第2電磁石側への移動により前記回動部が前記第1方向とは逆の第2方向に回動することにより、互いに離れる開動作を行うことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記第1電磁石が配置された第1固定部と、
前記第2電磁石が配置された第2固定部と、
前記第1固定部に設けられ、前記第1電磁石から離れる方向に前記可動部を押圧する第1弾性部材と、
前記第2固定部に設けられ、前記第2電磁石から離れる方向に前記可動部を押圧する第2弾性部材と、
を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記可動部は、前記回動部を保持する凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロボットハンドと、
前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記可動部を前記第1電磁石側へ移動させることで、前記各把持部に前記閉動作を行わせると共に、前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記可動部を前記第2電磁石側へ移動させることで、前記各把持部に前記開動作を行わせることによって、前記把持部の開度を制御することを特徴とするロボット装置。
【請求項5】
前記各把持部が前記物体を把持する把持力、前記ロボットハンドに作用する力、及び前記ロボットハンドに作用するモーメントのうち少なくとも1つを検出可能なセンサを更に備え、
前記制御部は、
前記センサにより検出された検出結果に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする請求項4に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記センサは、前記各把持部に設けられ、前記把持力を検出する触覚センサであり、
前記制御部は、
前記触覚センサにより検出される前記把持力の大きさに基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする請求項5に記載のロボット装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記触覚センサにより検出される前記把持力の大きさが所定範囲となるように、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする請求項6に記載のロボット装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記センサにより検出された検出結果に基づいて、前記物体の重量を算出することを特徴とする請求項5に記載のロボット装置。
【請求項9】
前記センサにより検出された検出結果と把持状態推定用学習モデルとに基づいて、前記物体の把持状態を推定する把持状態推定部を更に備え、
前記把持状態推定用学習モデルは、前記センサにより検出された検出結果と、前記把持部による前記物体の把持状態との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものであり、
前記制御部は、
前記把持状態推定部により推定された前記物体の把持状態に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする請求項5に記載のロボット装置。
【請求項10】
前記センサにより検出された検出結果と種類推定用学習モデルとに基づいて、前記物体の種類を推定する種類推定部を更に備え、
前記種類推定用学習モデルは、前記センサにより検出された検出結果と、前記物体の種類との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものであり、
前記制御部は、
前記種類推定部により推定された前記物体の種類に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする請求項5に記載のロボット装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記センサにより検出された検出結果を、機械学習を用いて獲得された制御学習モデルに入力して得られる出力に基づいて、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする請求項5に記載のロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、及びロボットハンドを備えたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の指を駆動させることにより、ワークを把持するロボットがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のロボットでは、各指の把持面に触覚センサを設け、触覚センサの検出値に基づいて、ワークを把持したときの把持力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のロボットにおいては、把持力を調整するためのモータを設ける必要があり、構成が複雑になり、装置の小型化が実現し難いという課題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡易且つ小型な構成のロボットハンド、及びロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の一態様に係るロボットハンドは、複数の指と、第1電磁石と、第2電磁石と、可動部と、を備えている。第2電磁石は、第1電磁石と対向する。可動部は、磁性体からなり、第1電磁石と第2電磁石との間を移動可能である。複数の指の各々は、物体を把持する把持部と、前記可動部の移動に伴って回動軸を中心に回動する回動部と、を有している。把持部は、指の先端に位置する。回動部は、指における把持部とは反対側の端部に設けられている。回動軸は、端部から所定距離離れた位置に設けられている。
【0007】
複数の指の各把持部は、前記第1電磁石の吸着力による前記可動部の前記第1電磁石側への移動により前記回動部が第1方向に回動することにより、互いに接近する閉動作を行う。そして、第2電磁石の吸着力による可動部の前記第2電磁石側への移動により回動部が第1方向とは逆の第2方向に回動することにより、互いに離れる開動作を行う。
【0008】
上記ロボットハンドによれば、第1電磁石の吸着力による可動部の第1電磁石側への移動により、回動部を第1方向に回動させることで、把持部に閉動作を行わせることができる。一方、第2電磁石の吸着力による可動部の第2電磁石側への移動により、回動部を第2方向に回動させることで、把持部に開動作を行わせることができる。これにより、簡易且つ小型な構成で、把持部による物体の把持力を調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、簡易且つ小型な構成のロボットハンド及びロボット装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係るロボットシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1のロボット装置が備える触覚センサの平面図である。
【
図4】
図1のロボット装置が備える力覚センサが検出する力の方向、及びモーメントの方向を示す斜視図である。
【
図5】
図1のロボット装置の指の閉動作を示す図である。
【
図6】
図1のロボット装置の指の開動作を示す図である。
【
図7】
図1のロボット装置による物体の把持力の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔本開示の実施形態の概要〕
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0012】
(条項1)複数の指と、第1電磁石と、前記第1電磁石と対向する第2電磁石と、磁性体からなる可動部であって、前記第1電磁石と前記第2電磁石との間を移動可能な可動部と、を備え、前記複数の指の各々は、当該指の先端に位置し、物体を把持する把持部と、前記可動部の移動に伴って回動軸を中心に回動する回動部と、を有し、前記複数の指の各前記把持部は、前記第1電磁石の吸着力による前記可動部の前記第1電磁石側への移動により前記回動部が第1方向に回動することにより、互いに接近する閉動作を行い、前記第2電磁石の吸着力による前記可動部の前記第2電磁石側への移動により前記回動部が前記第1方向とは逆の第2方向に回動することにより、互いに離れる開動作を行うことを特徴とするロボットハンド。
【0013】
上記構成によれば、第1電磁石の吸着力による可動部の第1電磁石側への移動により、回動部を第1方向に回動させることで、把持部に閉動作を行わせることができる。一方、第2電磁石の吸着力による可動部の第2電磁石側への移動により、回動部を第2方向に回動させることで、把持部に開動作を行わせることができる。これにより、簡易且つ小型な構成のロボットハンドを実現することができる。
【0014】
(条項2)前記第1電磁石が配置された第1固定部と、前記第2電磁石が配置された第2固定部と、前記第1固定部に設けられ、前記第1電磁石から離れる方向に前記可動部を押圧する第1弾性部材と、前記第2固定部に設けられ、前記第2電磁石から離れる方向に前記可動部を押圧する第2弾性部材と、を更に備えていることを特徴とする条項1に記載のロボットハンド。
【0015】
上記構成によれば、第1弾性部材及び第2弾性部材によって可動部を押圧することで、可動部の位置を所定の中立位置に配置できる。これにより、簡易な構成で、中立状態における指の位置を維持させることができる。
【0016】
(条項3)前記可動部は、前記回動部を保持する凹部を有していることを特徴とする条項1または2に記載のロボットハンド。
【0017】
上記構成によれば、回動部が可動部の凹部により保持されるので、可動部が移動した際に、回動部が可動部から外れることを防止できる。
【0018】
(条項4)条項1から3のいずれか1項に記載のロボットハンドと、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記可動部を前記第1電磁石側へ移動させることで、前記各把持部に前記閉動作を行わせると共に、前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記可動部を前記第2電磁石側へ移動させることで、前記各把持部に前記開動作を行わせることによって、前記把持部の開度を制御することを特徴とするロボット装置。
【0019】
上記構成によれば、制御部により、第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御し、各把持部に閉動作または開動作を行わせることで、把持部の開度を正確に制御することができる。
【0020】
(条項5)前記ロボット装置は、前記各把持部が前記物体を把持する把持力、前記ロボットハンドに作用する力、及び前記ロボットハンドに作用するモーメントのうち少なくとも1つを検出可能なセンサを更に備え、前記制御部は、前記センサにより検出された検出結果に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする条項4に記載のロボット装置。
【0021】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出された検出結果に基づいて、第1電磁石または第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することで、把持部の開度をより正確に制御することができる。
【0022】
(条項6)前記センサは、前記各把持部に設けられ、前記把持力を検出する触覚センサであり、前記制御部は、前記触覚センサにより検出される前記把持力の大きさに基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする条項5に記載のロボット装置。
【0023】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出される把持力の大きさに基づいて、第1電磁石または第2電磁石に流れる電流の大きさを制御するので、物体を適切に把持することができる。
【0024】
(条項7)前記制御部は、前記触覚センサにより検出される前記把持力の大きさが所定範囲となるように、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することを特徴とする条項6に記載のロボット装置。
【0025】
上記構成によれば、制御部は、触覚センサにより検出される把持力の大きさが所定範囲となるように、第1電磁石または第2電磁石に流れる電流の大きさを制御するので、物体を安定して把持することができる。
【0026】
(条項8)前記制御部は、前記センサにより検出された検出結果に基づいて、前記物体の重量を算出することを特徴とする条項5から7のいずれか1項に記載のロボット装置。
【0027】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出された検出結果に基づいて、物体の重量を算出できるので、把持部により物体を持ち上げた際に、物体の重量を測定できる。従って、物体の重量を測定するためだけに物体を把持する必要がなく、物体の把持回数の増加に伴って指及び物体が破損する可能性を低減させることができる。
【0028】
(条項9)前記センサにより検出された検出結果と把持状態推定用学習モデルとに基づいて、前記物体の把持状態を推定する把持状態推定部を更に備え、前記把持状態推定用学習モデルは、前記センサにより検出された検出結果と、前記把持部による前記物体の把持状態との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものであり、前記制御部は、前記把持状態推定部により推定された前記物体の把持状態に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする条項5から8のいずれか1項に記載のロボット装置。
【0029】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出された検出結果を、把持状態推定用学習モデルに入力することで、物体の把持状態を推定し、推定した物体の把持状態に基づいて、把持部の開度及び把持部による物体の把持位置を調整するので、物体の把持状態に応じて、的確に指を制御できる。
【0030】
(条項10)前記センサにより検出された検出結果と種類推定用学習モデルとに基づいて、前記物体の種類を推定する種類推定部を更に備え、前記種類推定用学習モデルは、前記センサにより検出される検出結果と、前記物体の種類との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものであり、前記制御部は、前記種類推定部により推定された前記物体の種類に基づいて、前記第1電磁石または前記第2電磁石に流れる電流の大きさを制御することにより、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする条項5から8のいずれか1項に記載のロボット装置。
【0031】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出された検出結果を種類推定用学習モデルに入力することで物体の種類を推定し、推定した物体の種類に基づいて、把持部の開度及び把持部による物体の把持位置を調整するので、物体の種類に応じて適切に物体を把持できる。
【0032】
(条項11)前記制御部は、前記センサにより検出された検出結果を、機械学習を用いて獲得された制御学習モデルに入力して得られる出力に基づいて、前記把持部の開度及び前記把持部による前記物体の把持位置を調整することを特徴とする条項5から10のいずれか1項に記載のロボット装置。
【0033】
上記構成によれば、制御部は、センサにより検出された検出結果を、制御学習モデルに入力して得られる出力に基づいて、把持部の開度及び把持部による物体の把持位置を調整するので、把持部により物体を適切に把持することができる。
【0034】
〔本開示の実施形態の例示〕
以下、本開示の一実施形態に係るロボットシステム1について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0035】
〔ロボットシステムの構成〕
ロボットシステム1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、ロボットシステム1の構成を示す模式図である。
図2は、ロボットシステム1の構成を示すブロック図である。
【0036】
図1及び
図2に示すように、ロボットシステム1は、制御装置10と、ロボット装置30とを備えている。ロボットシステム1は、ロボット装置30が把持した物体Mの種類、及び物体Mの把持状態等を推定するシステムである。
【0037】
[ロボット装置の構成]
ロボット装置30は、台座31と、ロボットアーム32と、ロボットハンド50と、ロボットコントローラ20と、力覚センサ34と、触覚センサ35と、を有している。台座31は、床等の配置面に配置される。なお、台座31の代わりに、AGV(Automatic Guides Vehicle)等の自動搬送装置を用いてもよい。この場合、ロボット装置30を所定のルートに沿って走行させることが可能である。
【0038】
ロボットアーム32は、多関節型のロボットアームであり、4本のアームを有している。各アームの基端部は、台座31または他のアームの先端部に対して、回転可能に連結されている。ロボットコントローラ20の制御に基づいて、各アームが連結部分で回転制御されることにより、ロボットアーム32の軌道が制御される。なお、ロボットアーム32にカメラを設け、カメラによる画像情報をロボットアーム32の姿勢の制御に用いてもよい。
【0039】
ロボットハンド50は、指33と、第1固定部511と、第1電磁石512と、第1弾性部材513と、第2固定部521と、第2電磁石522と、第2弾性部材523と、可動部53と、電流供給部54とを有している。
【0040】
図1に示すように、指33は、複数、例えば2つ設けられている。以下、指33が2つ設けられた例を用いて本実施形態を説明する。なお、本開示は、指33が2つである構成に限られるものではない。
【0041】
各指33は、3つの屈曲部を有し、各指33には、それぞれ把持部331が形成されている。各指33は、可動部53、第1弾性部材513、第1固定部511、及び力覚センサ34を介してロボットアーム32に取り付けられている。
【0042】
把持部331は、各指33の先端に位置している。指33は、ロボットコントローラ20の制御により、開閉動作を行う。把持部331の開閉動作は、把持部331が互いに接近するように動く閉動作(
図5参照)と、把持部331が互いに離れるように動く開動作(
図6参照)とを含む。各指33の閉動作に伴って、各把持部331が互いに接近することにより、物体Mを把持することが可能となっている。
【0043】
各指33における各把持部331とは反対側の端部には、カムフォロア332が設けられている。カムフォロア332は、可動部53の第1電磁石512側への移動、または可動部53の第2電磁石522側への移動に伴って、回動軸333を中心に回動する。カムフォロア332は、回動部の一例である。なお、回動部は、カムフォロア332が備える後述の構成に限定されるものではない。回動部は、可動部53の上下方向の移動に伴って、回動軸333を中心に回動する構成を備えるものであればよい。
【0044】
回動軸333は、指33の上記端部から所定距離離れた位置に設けられている。本実施形態では、所定距離は、
図1に示す指33において、カムフォロア332が設けられた位置から、指332が下方に屈曲する1つ目の屈曲部までの距離に相当する。所定距離の長さを調節することによって、可動部53の移動に伴って把持部331に生じる把持力を調整することが可能であり、所定距離の長さは物体Mの重量及び大きさ等を考慮して設定されるものとする。
【0045】
第1固定部511は、薄い円筒状の部材であり、力覚センサ34を介して、ロボットアーム32に固定されている。第1固定部511の下面には、
図5及び
図6に示すように、円環状の第1電磁石512が配置されている。
【0046】
第1電磁石512は、図示しないコイル及び磁芯等を有している。第1電磁石512のコイルに電流が流れると、磁力が発生する。第1電磁石512は、ロボットコントローラ20により、コイルへの通電状態及び非通電状態が切り替えられることで、磁化または非磁化の各状態が切り替えられる。
【0047】
第1電磁石512は、電流供給部54により、図示しない電源から電流が供給されることに伴って磁化される。第1電磁石512が磁化されると、可動部53は、第1電磁石512に吸着されて第1電磁石512側へ移動する。
【0048】
第1固定部511の下方には、第2固定部521が配置されている。第2固定部521は、薄い円筒状の部材である。第2固定部521の下面には、円環状の第2電磁石522が配置されている。
【0049】
第2電磁石522は、図示しないコイル及び芯等を有している。第2電磁石522のコイルに電流が流れると、磁力が発生する。第2電磁石522は、ロボットコントローラ20により、コイルへの通電状態及び非通電状態が切り替えられることで、磁化または非磁化の各状態が切り替えられる。
【0050】
第2電磁石522は、電流供給部54により電流が供給されることで磁化される。第2電磁石522が磁化されると、可動部53は、第2電磁石522の吸着力により第2電磁石522側へ移動する。
【0051】
可動部53は、第1電磁石512と第2電磁石522との間を移動可能に構成されている。可動部53は、2つの円錐台部材の上面同士を合わせた形状の部材である。可動部53は、磁性体、例えば鉄等の金属からなる。可動部53は凹部531を有する。凹部531は、
図1に示すように、可動部53のくびれ部分に対応し、当接するカムフォロア332を保持する。なお、可動部53の上下方向の長さは、ロボット装置30の使用用途や物体Mの大きさの最大値等に応じて、適宜設定可能である。
【0052】
より詳細には、カムフォロア332は、図示しないが、外輪、針状ころ、内輪、及び軸等を有して構成されている。外輪が凹部531に当接する。軸は指33に接続されている。カムフォロア332は、可動部53が上下方向に移動すると、外輪が凹部531に当接しながら回転しつつ、凹部531に保持される。これにより、カムフォロア332の軸に接続された指33が、回動軸333を中心として回動する。
【0053】
具体的には、
図5の下図に示すように、可動部53が第1電磁石512側へ移動すると、カムフォロア332が第1方向(
図5の下図の矢印A参照)に回動する。カムフォロア332が第1方向に回動することに伴って、把持部331の閉動作が行われる。
【0054】
一方、
図6の下図に示すように、可動部53が第2電磁石522側へ移動すると、カムフォロア332が第2方向(
図6の下図の矢印B参照)に回動する。カムフォロア332が第2方向に回動することに伴って、把持部331の開動作が行われる。このような構成により、簡易且つ小型な構成で、把持部331による物体Mの把持力を調整することが可能となる。
【0055】
更に、ロボットハンド50を小型にできれば、ロボットハンド50を軽量化することができ、その分、ロボット装置30の把持部331により把持する物体Mの重量を大きくすることが可能となる。
【0056】
第1固定部511の下面における第1電磁石512の内側には、第1弾性部材513が配置されている。第1弾性部材513は、例えばコイルばねである。
【0057】
第1弾性部材513の一端部は、第1固定部511に接続されている。第1弾性部材513の他端部は、可動部53の上面に接続されている。第1弾性部材513は、第1電磁石512と可動部53とが離れる方向、すなわち、
図1の下方に可動部53を押圧している。
【0058】
また、第2固定部521の上面には、第2弾性部材523が配置されている。第2弾性部材523は、例えばコイルばねである。
【0059】
第2弾性部材523の一端部は、第2固定部521に接続されている。第2弾性部材523の他端部は、可動部53の下面に接続されている。第2弾性部材523は、第2電磁石522と可動部53とが離れる方向、すなわち、
図1の上方に可動部53を押圧している。
【0060】
このように、第1弾性部材513及び第2弾性部材523により押圧されることで、可動部53は、第1電磁石512及び第2電磁石522のいずれにも電流が流れない状態においては、
図5の上図に示すように、第1弾性部材513の弾性力と第2弾性部材523の弾性力とがつり合う中立位置に維持されるようになっている。これにより、簡易な構成で、中立状態における指33の位置を維持させることができる。
【0061】
また、指33を閉状態にした後、第1電磁石512への通電を止めると、第1弾性部材513の弾性力によって、指33が自然に中立状態に戻るので、余分な通電を行わなくてもよく、消費電力を抑えることができる。
【0062】
なお、第1弾性部材513及び第2弾性部材523として、コイルばねの代わりに、ダイヤフラムまたはベローズを用いてもよい。この場合、ダイヤフラムまたはベローズ内に液体または圧縮空気を入れて、ダイヤフラムまたはベローズ内において液体または圧縮空気の吐出または吸込みを行う。これにより、可動部53を中立位置に移動させることが可能である。
【0063】
また、第1固定部511または第2固定部521に、中立位置の上下方向の位置を調整するための調整ネジを設けてもよい。調整ネジは、例えば六角穴付止めネジを用いることができる。六角穴付止めネジを用いることにより、接着剤等を使用することなく、いつでも容易に第1弾性部材513及び第2弾性部材523の緩め止めを行うことが可能である。
【0064】
ロボットコントローラ20は、電流供給部54により、第1電磁石512または第2電磁石522に流れる電流の大きさを制御することによって、把持部331の開度を調整する。把持部331の開度とは、各指33の把持部331同士がどの程度離れているかを示す開閉度合い、及び/または、把持部331による物体Mの把持力を指す。
【0065】
具体的には、ロボットコントローラ20は、電流供給部54により第1電磁石512に電流を供給することで、可動部53の位置を
図5の上図に示す中立位置から、
図5の下図に示すように、第1電磁石512側へ移動させることによって、指33を閉状態にする。
【0066】
また、ロボットコントローラ20は、電流供給部54により第2電磁石522に電流を供給することで、可動部53の位置を
図6の上図に示す中立位置から、
図6の下図に示すように、第2電磁石522側へ移動させることによって、指33を開状態にする。
【0067】
触覚センサ35は、
図3に示すように、例えば分布型の圧覚センサからなり、柔軟部材350と、複数の検出素子351とを有している。複数の検出素子351は、柔軟部材350の内側に、縦横に規則的に配置されている。
【0068】
指33の把持部331により物体Mが把持されると、柔軟部材350が変形し、この変形に伴って検出素子351が変位する。触覚センサ35は、当該変位による磁場の変化を読取素子(図示省略)により検出することで、3次元的な触覚検知を行う磁気式の3軸触覚センサである。なお、触覚センサ35は、上述した磁気式のセンサに限らず、他にも、光学式、MEMSを用いた方式等のセンサであってもよい。
【0069】
触覚センサ35は、接線方向(
図3のx軸方向及びy軸方向)と法線方向(
図3のz軸方向)への柔軟部材350の変形量を検出する。これにより、接線方向と法線方向の力及びトルク等をそれぞれ検出できるので、把持部331に対する物体Mの滑り、物体Mの硬さや材質、物体Mから把持部331に加わる荷重の中心位置、総荷重、及び接触面積等を検出することができる。
【0070】
力覚センサ34は、
図4に示すように、第1面341を有する第1部材34Aと、第2面342を有する第2部材34Bと、第1部材34A及び第2部材34Bの間に配置された起歪体(図示しない)とを有する。
図1に示すように、力覚センサ34の第1面341が、ロボットアーム32の先端部に取り付けられ、力覚センサ34の第2面342が、第1固定部511に取り付けられる。
【0071】
力覚センサ34は、自身に作用する力及びモーメントの方向及び大きさを検出する6軸力覚センサである。具体的には、力覚センサ34は、3軸(x軸、y軸、z軸)の各方向に作用する力の大きさ(Fx、Fy、Fz)と、各軸回りのモーメントの大きさ(Mx、My、Mz)とを検出する。力覚センサ34及び触覚センサ35は、センサの一例である。
【0072】
[ロボットコントローラの構成]
ロボットコントローラ20は、制御部の一例であり、ロボット装置30全体の動作を制御する装置である。
図2に示すように、ロボットコントローラ20は、プロセッサ21と、メモリ22と、通信インタフェース(IF)23と、入出力インタフェース(IF)24とを有している。プロセッサ21、メモリ22、通信IF23、及び入出力IF24は、バスを介して互いに接続されている。
【0073】
プロセッサ21としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、または、これらの組み合わせを用いることができる。
【0074】
メモリ22には、ロボットアーム32、電流供給部54を制御するためのプログラム等が記憶されている。プロセッサ21は、メモリ22に記憶されたプログラムに含まれる命令に従って、ロボットアーム32、及び電流供給部54を制御する。
【0075】
通信IF23は、制御装置10との通信を行うためのインタフェースである。通信IF23としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等のインタフェースを用いることができる。なお、制御装置10は、入出力IF24に接続されていてもよい。
【0076】
入出力IF24には、ロボットアーム32、及び電流供給部54が電気的に接続されている。ロボットコントローラ20は、入出力IF24を介して、ロボットアーム32、第1電磁石512、及び第2電磁石522を制御する。
【0077】
入出力IF24として、例えばUSB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、シリアル通信等を用いることができる。なお、ロボットアーム32、第1電磁石512、及び第2電磁石522のうちの少なくとも1つが、駆動部を介して通信IF23に接続されていてもよい。
【0078】
[制御装置の構成]
制御装置10は、物体Mの把持状態、及び物体Mの種類を推定するための各処理を実行する装置である。制御装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、通信IF13と、入出力IF14とを有している。プロセッサ11、メモリ12、通信IF13、及び入出力IF14は、バスを介して互いに接続されている。プロセッサ11は、プロセッサ21と同様に構成されている。
【0079】
メモリ12には、プロセッサ11に実行させるプログラム、種々の学習モデル等が記憶されている。学習モデルには、後述する把持状態推定用学習モデル、種類推定用学習モデル、及び制御学習モデルがある。各学習モデルは、機械学習により生成されるものであり、入力されたデータに基づいて評価及び判定を行い、その結果を出力値として出力するものである。
【0080】
通信IF13は、ロボットコントローラ20との通信を行うためのインタフェースである。入出力IF14は、ユーザが各種の設定を行うための操作パネルを有して構成される。ユーザは、なお、入出力IF14は、ロボットコントローラ20に配置されていてもよい。
【0081】
[ロボット装置の制御の流れ]
次に、ロボット装置30の制御の流れについて、
図7を参照して説明する。
図7は、物体Mを把持する時のロボット装置30の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0082】
図7に示すように、まず、ロボットコントローラ20は、ロボットアーム32の位置を移動させて、指33を開閉させることにより、把持部331により物体Mを把持する(S1)。
【0083】
S1において、ロボットコントローラ20のプロセッサ21は、ロボットアーム32の各連結部分を駆動する駆動部に制御情報を送信することにより、ロボットアーム32の位置を移動させることで、物体Mの把持位置まで指33を移動させる。
【0084】
そして、プロセッサ21は、ロボットアーム32の先端部を昇降させながら、第1電磁石512または第2電磁石522に流れる電流の大きさを制御することで、指33を開閉させることで、把持部331により物体Mを把持する。
【0085】
具体的には、プロセッサ21は、電流供給部54により第1電磁石512に電流を供給することで、指33の状態を
図5の上図に示される中立状態から、
図5の下図に示される閉状態にすることで、物体Mを把持する。
【0086】
第1電磁石512に電流が流れると、第1電磁石512の吸着力により、可動部53が第1電磁石512側へ移動することに伴って、カムフォロア332が第1方向(
図5の下図の矢印A参照)に回動する。これにより、複数の指33の各把持部331が互いに接近する閉動作が行われ、指33が閉状態になる。
【0087】
S1の後、ロボットコントローラ20は、制御装置10の入出力IF14に入力された触覚センサ35及び力覚センサ34の検出結果を取得する(S2)。S2において、ロボットコントローラ20は、力覚センサ34により、例えば物体Mの重量を検出する。また、ロボットコントローラ20は、触覚センサ35により、例えば、物体Mの滑り及び材質、物体Mから把持部331に加わる荷重の中心位置、総荷重、及び接触面積等を検出する。
【0088】
このように、ロボットコントローラ20は、力覚センサ34により検出された検出結果に基づいて、物体Mの重量を算出することができるので、把持部331により物体Mを持ち上げた際に、物体Mの重量を測定できる。従って、物体Mの重量を測定するためだけに物体Mを把持する必要がなく、物体Mの把持回数の増加に伴って指33及び物体Mが破損する可能性を低減させることができる。
【0089】
次に、ロボットコントローラ20は、触覚センサ35及び力覚センサ34により検出された検出結果と、メモリ12に記憶された種類推定用学習モデルとに基づいて、物体Mの種類を推定する(S3)。
【0090】
種類推定用学習モデルは、力覚センサ34及び触覚センサ35により検出された検出結果と、指33による物体Mの種類との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものである。ロボットコントローラ20は、物体Mの種類を推定する種類推定部として機能する。
【0091】
S3の後、ロボットコントローラ20は、力覚センサ34及び触覚センサ35により検出された検出結果と、メモリ12に記憶された把持状態推定用学習モデルとに基づいて、物体Mの把持状態を推定する(S4)。
【0092】
把持状態推定用学習モデルは、力覚センサ34及び触覚センサ35により検出された検出結果と、把持部331による物体Mの把持状態との関係を教師データとして機械学習を行うことにより獲得されたものである。ロボットコントローラ20は、物体Mの把持状態を推定する把持状態推定部として機能する。
【0093】
把持状態推定用学習モデルでは、例えば、上記検出結果が物体Mの把持開始時から所定時間経過しても変化しない場合、複数の指33の各把持部331の開度及び把持位置が適切であり、物体Mの把持状態が良好であると推定する。これに対して、上記検出結果が物体Mの把持開始時から大きく変化した場合、把持部331による物体Mの把持に滑りが発生しており、物体Mの把持状態が不良であると推定する。
【0094】
次に、ロボットコントローラ20は、S2にて触覚センサ35及び力覚センサ34により検出された検出結果を、制御学習モデルに入力して得られる出力に基づいて、把持部331の開度、及び把持部331による物体Mの把持位置を調整する(S5)。
【0095】
具体的には、ロボットコントローラ20は、電流供給部54から第1電磁石512または第2電磁石522へ供給される電流の大きさを制御することにより、把持部331の開度を調整する。ここでは、物体Mの大きさ、形状、及び物体Mの把持状態等に応じて、適切な開度に調整するものとする。
【0096】
例えば、把持部331の開度を大きくする場合には、ロボットコントローラ20のプロセッサ21は、電流供給部54により第2電磁石522に電流を供給する。第2電磁石522に電流が流れると、
図6の下図に示すように、第2電磁石522の吸着力により、可動部53が第2電磁石522側へ移動することに伴って、カムフォロア332が第2方向(
図6の下図の矢印B参照)に回動する。これにより、複数の指33の各把持部331が互いに離れる開動作が行われ、指33が開状態になる。把持部331の開度が大きくなるほど、把持部331による物体Mの把持力が小さくなる。
【0097】
また、ロボットコントローラ20は、ロボットアーム32の駆動部を制御することにより、ロボットアーム32の先端部の位置を制御し、指33の把持部331による物体Mの把持位置を調整する。このようにして、物体Mの種類、及び物体Mの把持状態に応じて、指33及びロボットアーム32を的確に制御することで、把持部331により物体Mを適切に把持することができる。
【0098】
S5の後、ロボットコントローラ20は、S3にて推定した物体Mの種類を考慮して、第2電磁石522に流れる電流の大きさを、電流供給部54により制御する。これにより、把持部331による物体Mの把持力を調整する(S6)。ここで、物体Mの把持力の大きさは、第1電磁石512に流れる電流の大きさが大きくなるほど大きくなるものとする。
【0099】
また、物体Mには、形状、材料、大きさ、重量、硬さ、表面性状等が異なる様々な種類がある。メモリ12には、物体Mの種類に応じた把持力の大きさを示す情報が格納されている。例えば、物体Mが重量の大きい物である場合、把持力を大きくして物体Mを把持する必要がある。また、物体Mが食品等の柔らかい物である場合、把持力を小さくして物体Mを把持する必要がある。このように、物体Mの種類に応じて、適切な把持力の大きさが定められている。
【0100】
このように、ロボットコントローラ20により、電流供給部54を介して第1電磁石512または第2電磁石522に流れる電流の大きさを制御することで、各把持部331が物体Mを把持する把持力の大きさを正確に制御できる。これにより、把持部331による物体Mの把持力が小さ過ぎることで、物体Mが落下して物体Mが破損したり、把持部331による物体Mの把持力が大き過ぎることで、指33が破損したりすることを防ぐことができる。
【0101】
S6の後、ロボットコントローラ20は、物体Mの把持力が所定範囲内か否かを判定する(S7)。ロボットコントローラ20は、物体Mの把持力が所定範囲内でない場合(S7:NO)、S6に戻る。なお、S7において、所定範囲とは、直近に物体Mを把持した際に適用した把持力の大きさ、または、過去に把持した複数の物体Mの各々に適用した把持力の大きさに基づいて算出される値であるとする。
【0102】
このように、ロボットコントローラ20は、S7にて、触覚センサ35により検出される把持力の大きさが所定範囲となるように、第1電磁石512または第2電磁石522に流れる電流の大きさを制御するので、物体Mを安定して把持することができる。
【0103】
ロボットコントローラ20は、物体Mの把持力が所定範囲内である場合(S7:YES)、物体Mの把持力を一定にした状態で、ロボットアーム32の位置を制御することにより、物体Mを所望の位置に搬送する(S8)。
【0104】
具体的には、制御装置10のプロセッサ11は、物体Mの目標位置をロボットコントローラ20に送信する。ロボットコントローラ20のプロセッサ21は、第1電磁石512に流れる電流の大きさを一定にした状態で、ロボットアーム32を移動させることにより、物体Mを所望の位置に搬送する。
【0105】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態では、ロボットハンド50は、2つの指33を有しているものとしたが、これに限らず、例えば3つ以上の指33を有していてもよい。また、指33の形状は、適宜変更可能である。
【0106】
また、上記した実施形態では、ロボットアーム32と第1固定部511との間に、力覚センサ34を取り付けるものとしたが、これに限らず、例えばロボットアーム32または指33に、力覚センサ34を内蔵してもよい。また、ロボット装置30は、触覚センサ35を有していればよく、力覚センサ34を有していなくてもよい。また、センサとして、触覚センサ35に加えてロードセルを用いてもよい。この場合、触覚センサ35の検出値の誤差を検知するために、ロードセルを使用することが可能である。
【0107】
〔付記事項〕
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1 ロボットシステム
10 制御装置
20 ロボットコントローラ
30 ロボット装置
32 ロボットアーム
33 指
34 力覚センサ
35 触覚センサ
50 ロボットハンド
53 可動部
331 把持部
332 カムフォロア
511 第1固定部
512 第1電磁石
513 第1弾性部材
521 第2固定部
522 第2電磁石
523 第2弾性部材
M 物体