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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018617
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20240201BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240201BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/02 660H
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122051
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤江 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】森本 康治
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033CB06
5K033DA01
5K033EB04
(57)【要約】
【課題】ネットワークの末端側に機能を分散化させた場合においても、消費電力の増加を抑制する。
【解決手段】車両制御システム1は、マスターノード2と複数のスレーブノード7とが通信ネットワークBを介して通信を行うように構成される。マスターノード2は、それぞれのスレーブノード7に対して、スリープ期間中の監視対象ポートPxを指定する。スレーブノード7は、スリープ期間中において、監視対象ポートからの入力が検知された場合に、マスターノード2にウェイクアップ信号及びイベント通知信号を送信する。マスターノード2は、ウェイクアップ信号に基づいてウェイクアップ動作を行い、イベント通知信号及びデバイスポート情報に基づいて、監視対象ポートから取得された情報を認知する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御システムであって、
それぞれが、車載デバイスからの入力を受け付ける1または複数の入力ポートを含む複数のポートを有する、複数のスレーブノードと、
それぞれの前記スレーブノードの前記入力ポートに接続される車載デバイスのデバイスポート情報を有し、通信ネットワークを介してそれぞれの前記スレーブノードと通信を行うマスターノードとを備え、
前記マスターノードは、前記通信ネットワークを介して、それぞれの前記スレーブノードに対して、スリープ期間中における監視対象の前記入力ポートである監視対象ポートを指定し、
前記スレーブノードは、スリープ期間中において、前記監視対象ポートからの入力が検知された場合に、前記マスターノードにウェイクアップ信号を送信し、かつ、前記マスターノードのウェイクアップが確認された後に、前記監視対象ポートからの入力に基づくイベントを通知するイベント通知信号を送信し、
前記マスターノードは、スリープ期間中に前記ウェイクアップ信号を受けた場合に、ウェイクアップ動作を行い、前記スレーブノードから受信した前記イベント通知信号及び前記デバイスポート情報に基づいて、前記監視対象ポートから取得された情報を認知する、車両制御システム。
【請求項2】
前記マスターノードは、それぞれの前記スレーブノードに対して、前記監視対象ポートの指定に加えて、前記監視対象ポートごとの監視インターバルを指令し、
前記スレーブノードは、スリープ期間中において、前記監視対象ポートからの入力を前記監視インターバルで監視する、請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記複数のポートは、汎用入出力ポートであり、
前記マスターノードは、前記各汎用入出力ポートの入出力の設定内容を示す初期コンフィグデータをそれぞれの前記スレーブノードに送信するように構成され、前記監視対象ポートの情報は、前記初期コンフィグデータに含まれる、請求項1または2に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両制御システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載ネットワークを介してECU同士が接続され、それぞれのECUにセンサやアクチュエータ等の機器が接続されいる車載ネットワークの構成例が示されている(特許文献1の図1参照)。
【0003】
特許文献2には、中央演算装置と車載デバイスとの間にハブ装置を設けて、車載ネットワークの末端において車両の機能を分散化させる技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、WAKEポートに与えられる信号に応じてウェイクアップするウェイクアップモードおよび作動を休止するスリープモードを有するLIN通信装置についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-212725号公報
【特許文献2】国際公開第2021-010324号明細書
【特許文献3】特開2005-142662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、アプリケーション技術の進化に伴い、特に、車両の振る舞いについての機能進化及び機能変化が加速している。
【0007】
従来の車両開発では、車両の機能進化及び機能変化に対して、それぞれの機能を実現する車載デバイスごとに個別に作り込みをし、完成後に後付けで車両に搭載する手法がとられてきた。例えば、ドアの開閉動作に関する追加機能を設ける場合、その新機能に関連する車載デバイスユニット(例えば、センサ、アクチュエータ及びそれらを制御するECU)について単体で作り込みをしてから、車両に搭載したり、既存の車載デバイスとの交換をしたりしていた。従来構成のように、機能毎に区分けすることにより、進化した機能だけをアドオン的に車両に採用しやすく、開発を機能毎に委託しやすいメリットがある。車両の機能進化が緩やかな場合、この従来構成は大変効率が良い。
【0008】
しかしながら、車両の振る舞いの進化や、車両末端の機能進化が生じるスピードが速くなると、それに対応するための開発量が、どうしても増えてしまう。すなわち、従来の開発スタイルでは、急速な車両の機能進化及び機能変化にフレキシブルかつ迅速な対応ができないという課題がある。
【0009】
そこで、特許文献2に示されるように、中央演算装置を設けて、ハブを介して車載デバイスを接続することにより、車載ネットワークの末端側において機能を分散化させることが考えられる。この場合に、特許文献3に示されるように、末端側において、めいめいの判断でウェイクアップができるようにすると、消費電力が十分に削減できない場合が生じ得る。
【0010】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、車両の制御システムにおいて、ネットワークの末端側に機能を分散化させた場合においても、消費電力の増加を抑制することができる車両制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、車両制御システムを対象として、それぞれが、車載デバイスからの入力を受け付ける1または複数の入力ポートを含む複数のポートを有する、複数のスレーブノードと、それぞれの前記スレーブノードの前記入力ポートに接続される車載デバイスのデバイスポート情報を有し、通信ネットワークを介してそれぞれの前記スレーブノードと通信を行うマスタノードとを備え、前記マスターノードは、前記ネットワークを介して、それぞれの前記スレーブノードに対して、スリープ期間中における監視対象の前記入力ポートである監視対象ポート指定し、前記スレーブノードは、スリープ期間中において、前記監視対象ポートからの入力が検知された場合に、前記マスターノードにウェイクアップ信号を送信し、かつ、前記マスターノードのウェイクアップが確認された後に、前記監視対象ポートからの入力に基づくイベントを通知するイベント通知信号を送信し、前記マスターノードは、スリープ期間中に前記ウェイクアップ信号を受けた場合に、ウェイクアップ動作を行い、前記スレーブノードから受信した前記イベント通知信号及び前記デバイスポート情報に基づいて、前記監視対象ポートから取得された情報を認知する、構成とした。
【0012】
上記態様の車両制御システムでは、車両制御システムをマスター・スレーブ構成にして、それぞれのスレーブノードに対して車載デバイスを接続する構成を採用している。このような構成を採用し、スレーブノードの構成を細分化していくことで、末端に機能を分散させていくことが可能になる。そして、本態様では、マスターノードが、それぞれのスレーブノードに対してスリープ期間中における監視対象ポートを指定している。これにより、スレーブノードの構成を細分化していく場合においても、消費電力の増加を防いで、適切な消費電力の管理が可能となる。
【0013】
上記態様において、前記指定信号は、前記監視ポートごとの監視インターバルの命令を含み、前記スレーブノードは、スリープ期間中において、前記監視ポートからの入力の変化を前記監視インターバルで監視する、としてもよい。
【0014】
これにより、上記態様に加えて、さらに消費電力の低減が可能となる。
【0015】
上記態様において、前記複数のポートは、汎用入出力ポートであり、前記マスターノードは、前記各汎用入出力ポートの入出力の設定内容を示す初期コンフィグデータをそれぞれの前記スレーブノードに送信するように構成され、前記監視対象ポートの情報は、前記初期コンフィグデータに含まれる、としてもよい。
【0016】
このように、初期コンフィグデータをスレーブノードに設定した上で、監視対象ポートを指定する構成とすることで、車両のアプリケーションの機能進化や機能変化に対してフレキシブルかつ迅速に対応できるようにスレーブノードの構成を細分化していきつつ、消費電力の増加の抑制を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両の制御システムにおいて、ネットワークの末端側に機能を分散化させた場合においても、消費電力の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両制御システムの構成例を示すブロック図
図2】マスターノードの構成例を示すブロック図
図3】スレーブノードの構成例を示すブロック図
図4】ドライバユニットの構成例を示す回路ブロック図
図5】マスターコンフィグ領域の一例を示す図
図6】マスターコンフィグ領域の他の例を示す図
図7】スレーブコンフィグ領域の一例を示す図
図8】スレーブコンフィグ領域の他の例を示す図
図9】スレーブコンフィグ領域の他の例を示す図
図10】車両制御システムの動作の一例を示すフローチャート
図11】車両制御システムの動作の一例を示すフローチャート
図12図11の動作で送受信されるコンフィグデータの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中同一または相当部分には同一の符号を付すものとし、繰り返しの説明を省略する場合がある。また、以下の実施形態では、本開示の内容に関連性の高い構成を中心に説明する。
【0020】
なお、以下の実施形態は、例示的なものであり、記載の有無や例示した数値等によって本開示の内容を限定する意図はまったくない。
【0021】
また、本開示において、「システム」、「ユニット」、「モジュール」、「ノード」という用語が示す構成に関し、その一部または全部は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application specific integrated circuit)またはプログラマブルロジックアレイ(PLA : Programmable logic array)などの専用回路で実現され得る。同様に、「システム」、「ユニット」、「モジュール」、「ノード」は、コンピュータで読み取り可能な命令(例えば、プログラム)を実行して、所定の処理ステップを実行することにより特定の機能を実行させるプロセッサ回路で実現され得る。
【0022】
<車両制御システム>
図1は、実施形態の車両制御システムの構成の一例を示す。
【0023】
図1に示すように、車両制御システム1は、車両CAに搭載されており、マスターノード2と複数のスレーブユニットとが車載の通信ネットワークを介して接続された構成となっている。
【0024】
図1の例では、複数のスレーブユニットとして、コンビスイッチユニット4、左右のサイドミラーユニット5、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、オーバーヘッドコンソールユニット32、左右のシートヒーターユニット33、及び、左右のドアラッチユニット34を例示している。各スレーブユニットには、それぞれに共通の構成を有するスレーブノード7(図4参照)が搭載されている。なお、説明の便宜上、サイドミラーユニット5、ドアラッチユニット34、シートヒーターユニット33は、それぞれ左右で共通の符号を付して説明する。
【0025】
具体的に、マスターノード2と、複数のスレーブユニット(この例では、コンビスイッチユニット4、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、右のサイドミラーユニット5、右のシートヒーターユニット33、右のドアラッチユニット34)とが、通信ネットワークB1によりバス接続されている。また、マスターノード2と、他の複数のスレーブユニット(この例では、オーバーヘッドコンソールユニット32、左のサイドミラーユニット5、左のシートヒーターユニット33及び左のドアラッチユニット34)とが、通信ネットワークB2によりバス接続されている。
【0026】
通信ネットワークB1,B2は、例えば、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に準拠した通信回線である。なお、通信方式は、CXPIに限定されず、他の通信方式(有線方式、無線方式を問わない)を用いてもよい。また、通信ネットワークに使用される通信回線の本数は、特に限定されない。また、通信ネットワークBの途中に通信中継用のHUB(図示省略)やECU(図示省略)などを設けてもよい。
【0027】
図2は、マスタノード2の構成の一例を示すブロック図であり、図3は、スレーブノード7の構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
-マスターノード-
図2に例示するマスターノード2は、通信モジュール21と、認知モジュール22と、判断モジュール23と、操作モジュール24と、メモリ25とを備える。
【0029】
マスターノード2は、例えば、1つまたは複数の電子制御ユニット(ECU)により構成される。電子制御ユニットは、単一のIC(Integrated Circuit)を用いて構成されてもよいし、複数のICを用いて構成されてもよい。また、IC内には、単一のコアまたはダイが設けられてもよいし、連携する複数のコアまたはダイが設けられてもよい。
【0030】
〔通信モジュール〕
通信モジュール21は、通信ネットワークBを介して各スレーブノード7からの受信信号を受信したり、各スレーブノード7に送信信号を送信したりする機能を有する。
【0031】
〔メモリ〕
メモリ25は、それぞれのスレーブノード7に対応するコンフィグデータ(以下、「マスターコンフィグデータ」という)が格納されたマスターコンフィグ領域27(図5参照)を備える。
【0032】
マスターコンフィグデータは、それぞれのスレーブノード7に設定される初期コンフィグデータと、デバイスポート情報とを含む。言い換えると、マスターノード2は、それぞれのスレーブノード7に設定されている初期コンフィグデータを保有している。
【0033】
デバイスポート情報は、スレーブノード7の各ポートPと車載デバイスのデバイスポートとの接続関係を示すデータである。言い換えると、デバイスポート情報は、スレーブノード7の各ポートPに、車載デバイスのどういった機能のデバイスポートが接続されているかを示すデータである。
【0034】
図5には、マスターコンフィグデータのうち、コンビスイッチユニット4のマスターコンフィグデータMC(図5上段:「第1のマスターコンフィグデータMC1」ともいう)、及び、サイドミラーユニット5のマスターコンフィグデータMC(図5下段:「第2のマスターコンフィグデータMC2」ともいう)の一例を示す。また、図6には、ステアリングスイッチユニット6のマスターコンフィグデータMC(「第3のマスターコンフィグデータMC3」ともいう)の一例を示す。
【0035】
第1のマスターコンフィグデータMC1は、(1)コンビスイッチユニット4の各ポートP1~P12と、ワイパスイッチ41、ライトスイッチ42及びターンスイッチ43の各デバイスポートとの間の接続関係を示すデバイスポート情報と、(2)コンビスイッチユニット4の初期コンフィグデータSC1とを含む。
【0036】
より具体的に、コンビスイッチユニット4のポートP1には、ワイパスイッチ41のON/OFF操作信号が出力されるデバイスポートが接続されているので、その接続関係が第1のマスターコンフィグデータMC1のデバイスポート情報として保存される。
【0037】
同様に、コンビスイッチユニット4のポートP2~P4には、ワイパスイッチ41の速度設定信号が出力されるデバイスポートが接続され、ポートP5には、ライトスイッチ42のライトOFF設定信号が出力されるデバイスポートが接続されているので、それぞれの接続関係が第1のマスターコンフィグデータMC1のデバイスポート情報として保存される。他のポートP6~P12、及び、右サイドミラーユニット5の各ポートP1~12についても同様である。
【0038】
第3のマスターコンフィグデータMC3は、(1)ステアリングスイッチユニット6の各ポートP1~P12と、オートクルーズ用及びオーディオ用の操作スイッチ61、イルミネーションLED62の各デバイスポートとの間の接続関係を示すデバイスポート情報と、(2)ステアリングスイッチユニット6の初期コンフィグデータSC3とを含む。
【0039】
なお、メモリ25は、上記ECUを構成するICに内蔵された内部メモリであってもよく、上記ICに外付けされた外付けメモリであってもよい。また、メモリには、例えば、上記ICに搭載されたCPUを動作させるためのプログラムが記憶されてもよく、CPUでの処理結果などの情報が記憶されてもよい。
【0040】
また、説明の便宜上、第1のマスターコンフィグデータMC1の初期コンフィグデータSCに「SC1」の符号を付し、第2のマスターコンフィグデータMC2の初期コンフィグデータSCに「SC2」の符号を付し、第3のマスターコンフィグデータMC3の初期コンフィグデータSCに「SC3」の符号を付して区別して説明する場合がある。
【0041】
〔認知モジュール〕
認知モジュール22は、メモリ25に格納されたマスターコンフィグデータMCと、スレーブノード7から受信される検知信号の経時変化に基づいて、車載デバイスに搭載されたセンサで取得された情報を認知する認知処理を実行する。ここでは、認知処理において認知された情報を「認知情報」という。認知モジュール22は、スレーブノード7から受信した検知信号のデコード処理を行うデコードモジュール221と、デコードした検知信号の情報化処理を行い、検知情報の具体的な内容を認知する情報化モジュール222とを含む。検知信号については、後ほど具体的に説明する。
【0042】
なお、本開示において「センサ」との用語は、温度・電圧・電流等の各種の物理量の測定・検知をするセンサに加えて、各種の操作を受け付けるスイッチ、車内外を撮像するカメラ、車外の物標等を認識するレーダを含み、機械電気変換信号等を出力するものを広く含む概念で用いる。センサは、車両の挙動情報、乗員の操作情報、アクチュエータを流れる電流や印加される電圧の情報、車両の故障状態情報、乗員の状態情報及び/または外部環境情報等(以下、総称して「検知情報」という)を取得する。
【0043】
〔判断モジュール〕
判断モジュール23は、認知モジュール22で認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動を決定する判断処理を実行する。判断モジュール23は、車両CAの行動の目的を決定する目的決定モジュール231と、決定された目的を達成するための行動計画を設定する行動計画モジュール232と、行動計画で列挙された行動の中で、実際に実行に移す行動を決定する行動決定モジュール233と、決定された行動を実現するための手段を選択する対応決定モジュール234とを備える。
【0044】
〔操作モジュール〕
操作モジュール24は、判断処理で決定された車両の行動に対応する操作デバイスを特定し、特定された操作デバイスの操作を命令する操作命令信号を生成して、操作デバイスが接続されたスレーブノードに送信する操作処理を実行する。操作モジュール24は、決定された行動を実現するための操作対象及びその操作量を決定する操作決定モジュール241と、操作命令信号を生成し、スレーブノードに送信する命令生成モジュール242とを備える。
【0045】
-スレーブユニット-
図3では、図1に例示したスレーブユニットのうち、コンビスイッチユニット4、右のサイドミラーユニット5(以下、「右サイドミラーユニット5」という)及びステアリングスイッチユニット6の構成例を示す。
【0046】
図3に示すように、コンビスイッチユニット4、右サイドミラーユニット5及びステアリングスイッチユニット6には、それぞれ、共通のスレーブノード7が設けられている。各スレーブノード7には、車載デバイスを接続するための汎用入出力ポートP(以下、単に「ポートP」という)が12個ずつ設けられている。スレーブノード7は、例えば、IC(Integrated Circuit) で実現される。
【0047】
この例において、コンビスイッチユニット4では、ポートP1~P4にワイパ操作を受け付けるワイパスイッチ41が接続され、ポートP5~P9にライト操作を受け付けるライトスイッチ42が接続され、ポートP10,P11にターンランプの操作を受け付けるターンスイッチ43が接続される。P12はリザーブ用のポートPである。ワイパスイッチ41、ライトスイッチ42及びターンスイッチ43は、センサを含む車載デバイスの一例である。
【0048】
右サイドミラーユニット5では、ポートP1,P2にターンランプ用のLED51(以下、「ターンLED51」という)が接続され、ポートP3~P6にインジケータ用のLED52が接続され、ポートP7~P12にミラー格納用のモータ53が接続される。ここで、ターンLED51、LED52及びモータ53は、センサ及び操作対象を含む車載デバイスの一例である。言い換えると、ターンLED51、LED52及びモータ53は、センサ及び操作対象を有するスレーブノードの一例である。
【0049】
ステアリングスイッチユニット6では、ポートP1~P10にオートクルーズ用及びオーディオ用の操作スイッチ61が接続され、ポートP11,P12にイルミネーションLED62が接続される。操作スイッチ61は、センサを含む車載デバイスの一例である。イルミネーションLED62は操作対象含む車載デバイスの一例である。
【0050】
〔スレーブノード〕
スレーブノード7は、それぞれ、通信モジュール71と、レジスタ72と、セレクタ73と、ドライバ群74とを備える。
【0051】
〔通信モジュール〕
通信モジュール71は、通信ネットワークBを介してマスターノード2の通信モジュール21と接続され、通信モジュール21との間でCXPIに準拠した双方向通信ができるように構成されている。通信モジュール71は、例えば、通信ネットワークBに接続される入出力回路、入出力回路に接続されたエンコーダ及びデコーダ等を備える。なお、通信モジュール71の具体的な回路構成については、従前から知られている構成を適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0052】
〔ドライバ群〕
ドライバ群74は、それぞれのポートPに1対1接続された複数のドライバユニット740を備える。例えば、スレーブノード7に12個のポートPが設けられている場合、ドライバ群74には、12個のドライバユニット740が設けられる。
【0053】
ドライバユニット740は、外部設定により、ポートPを入力ポートとして使用したり、ポートPを出力ポートとして使用したりできるIO回路である。ドライバユニット740として、例えば、従来から知られている汎用入出力回路(GPIO : General Purpose Input/Output)を適用することができる。図4には、ドライバユニット740の構成例を示す。
【0054】
図4に例示するドライバユニット740は、ポートPに接続された出力回路743と、出力レジスタ742の出力設定データに基づいて出力回路743を駆動するドライバ回路741とを備える。出力レジスタ742の出力設定データは、OUT端子から入力された設定信号により書き換えが可能になっている。
【0055】
ドライバユニット740は、ポートPへの入力を受ける入力回路745と、入力回路745に受けた入力を検知信号に変換するレシーバ回路746とを備える。レシーバ回路746は、ADコンバータ747と比較器748とを備える。ADコンバータ747は、ポートPの属性がアナログ入力の場合に、ポートPの入力をアナログ-デジタル変換してAI端子から出力する。比較器748は、ポートPの属性がデジタル入力の場合に、ポートPの入力をデジタル信号としてDI端子から出力する。
【0056】
ドライバユニット740は、操作命令信号に基づくコンフィグ信号に基づいて、各構成要素の設定が変更できるようになっている。例えば、コンフィグ信号に基づいてレシーバ回路746のデジタルフィルタのフィルタ定数が変更できるようになっている。
【0057】
〔セレクタ〕
セレクタ73は、後述するスレーブコンフィグ領域77に設定された各ポートPの属性データに基づいて、それぞれのドライバユニット740の端子(OUT端子、AI端子、DI端子)のうち、どの端子を有効にするのかを選択する機能を有する。
【0058】
AI端子が有効にされた場合、ポートPからアナログ入力信号が入力される。この場合、アナログ入力信号は、入力回路745及びADコンバータ747でデジタル信号に変換されてAI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72の検知信号領域に書き込まれる。後述する図7図9では、検知信号と記載した列が検知信号領域に相当する。検知信号領域は、スレーブコンフィグ領域77に含まれてもよいし、含まれてなくてもよい。
【0059】
DI端子が有効にされた場合、ポートPからデジタル入力信号が入力される。この場合、デジタル入力信号は、入力回路745及び比較器748を介してDI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72の検知信号領域に書き込まれる。
【0060】
OUT端子が有効にされた場合、操作命令信号に基づく出力設定データが、ドライバ回路741の出力レジスタ742に反映される。ドライバ回路741は、出力回路743をドライブして、出力レジスタ742の出力設定データに基づく操作信号(デジタル信号、アナログ信号、または、PWM信号のいずれか)をポートPから出力させる。
【0061】
ここで、出力設定データは、例えば、マスターノード2から受信された操作命令信号に基づいて、セレクタ73内の論理回路(図示省略)を用いたり、レジスタ72の値を用いたりして生成される。言い換えると、操作命令信号に基づくポートPに接続されたドライバ回路741の出力レジスタ742に、操作命令信号に基づく出力設定がされる。そして、出力回路743は、その出力設定データに基づいて、ポートPを介して操作命令信号に基づく操作信号を出力する。操作命令信号は、例えば、操作対象が接続されたポートPの識別データと、その識別データに紐づけられた各ポートPの出力設定とを含む信号である。
【0062】
なお、セレクタの具体的な回路構成については、従来から知られている構成を用いることができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0063】
〔レジスタ〕
レジスタ72には、スレーブノード7毎に設定されたコンフィグデータ(以下、「スレーブコンフィグデータ」という)が格納されたスレーブコンフィグ領域77が設けられる。
【0064】
スレーブコンフィグデータは、例えば、(1)各ポートPの属性データ、(2)属性が入力であるポートP(以下、単に「入力ポートP」という)のフィルタ定数、(3)監視対象ポートの設定データ、(4)属性が出力であるポートP(以下、単に「出力ポートP」という)の出力設定データ、を含む。本開示では、スレーブコンフィグデータの初期設定情報のことを「初期コンフィグデータ」と称する。
【0065】
ここで、監視対象ポートPxとは、スリープ期間中における監視対象の入力ポートPである。スレーブノード7は、スリープ期間中において、監視対象ポートPxからの入力が検知された場合に、マスターノードにウェイクアップ信号を送信するように構成されている。
【0066】
初期コンフィグデータの設定フロー及びスリープ動作及びその復帰動作については、後ほど説明する。
【0067】
スレーブコンフィグ領域77には、上記スレーブコンフィグデータに加えて、前述の検知信号が格納される。なお、検知信号は、スレーブコンフィグ領域77以外の記憶領域に格納されてもよい。
【0068】
図7図9は、スレーブノード7のスレーブコンフィグ領域77の一例を示す。図7にはコンビスイッチユニット4の一例を示し、図8には右サイドミラーユニット5の一例を示し、図9にはステアリングスイッチユニット6の一例を示す。
【0069】
以下の説明では、便宜上、図7のスレーブコンフィグ領域77をコンビコンフィグ領域771と称し、図8のスレーブコンフィグ領域77をサイドコンフィグ領域772と称し、図9のスレーブコンフィグ領域77をステアコンフィグ領域773と称して説明する場合がある。
【0070】
図7図9において、各ポートPの属性データは、I/O属性の欄に記載されている。DIはポートPがデジタルインプットであることを示す。また、DOはポートPがデジタルアウトプット、AIはポートPがアナログインプット、AOはポートPがアナログアウトプット(図示省略)、PWMはポートPがPWM出力であることを示す。言い換えると、DI及びAIは、ポートPが入力ポートに設定されることを示し、DO,AO及びPWMは、ポートPが出力ポートに設定されることを示している。
【0071】
例えば、図7に示すコンビコンフィグ領域771の初期コンフィグデータ(t=T11)において、ポートP1~P11は、デジタルインプットすなわち入力ポートである。 ポートP1~P11のフィルタ定数は、それぞれ、Qs1~Qs11である。入力ポートP11は、スリープ期間中の監視対象ポートPxに設定され、その監視インターバルがTi1に設定されている。監視インターバルは、スリープ期間中における監視対象ポートPxの監視のインターバルを示す。言い換えると、コンビスイッチユニット4のスレーブノード7は、監視インターバルTi1ごとに、監視対象ポートPxである入力ポートP11の入力を監視する。そうすると、コンビスイッチユニット4では、コンフィグ信号により、ポートP1に接続されるドライバユニット740のデジタルフィルタの値がQs1に設定される。ポートP2~P11についても同様である。
【0072】
なお、コンビスイッチユニット4において、入力ポートP11は、左ターンスイッチに接続されており、マスターノード2はデバイスポート情報によりその接続関係を把握している。一方で、この例において、コンビスイッチユニット4のスレーブノード7は、入力ポートP11の接続先についての情報は有していない。
【0073】
また、コンビスイッチユニット4のセレクタ73は、それぞれのポートP1~P11に接続されるドライバユニット740のDI端子を有効にする。これにより、前述のとおり、ポートP1~P11からデジタル入力信号が、セレクタ73を介してレジスタ72の検知信号領域に書き込まれる。
【0074】
例えば、図9に示すステアコンフィグ領域773の初期コンフィグデータ(t=T11)において、ポートP1~P3,P6はデジタルインプットであり、ポートP4,P5,P7~P10はアナログインプットである。すなわち、P1~P10は、入力ポートである。ポートP1~P3,P6のフィルタ定数は、それぞれ、Qu1~Qu3,Qu6である。ポートP11,P12は、PWMポートであり、出力ポートである。また、入力ポートP6は、監視対象ポートPxに設定され、その監視インターバルがTi2に設定されている。言い換えると、ステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7は、監視インターバルTi2ごとに、監視対象ポートPxである入力ポートP6の入力を監視する。
【0075】
なお、ステアリングスイッチユニット6において、入力ポートP6は、オーディオのON/OFFスイッチに接続されており、マスターノード2はデバイスポート情報によりその接続関係を把握している。一方で、この例において、ステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7は、入力ポートP6の接続先についての情報は有していない。
【0076】
-車両制御システムの動作-
図10図11は、車両制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0077】
〔ステップS1〕
車両制御システム1において、マスターノード2及びスレーブノード7に電源が投入されると、ステップS1の初期コンフィグレーション処理が実行される。
【0078】
まず、マスターノード2は、スレーブノード7に対して、そのスレーブノードに応じた初期コンフィグデータを送信する。通信ネットワークBを介してマスターノード2から初期コンフィグデータSCを受信したスレーブノード7は、受信した初期コンフィグデータSCに基づいてポートPの入出力設定を実行する。
【0079】
図10の例では、まず、マスターノード2は、第1のマスターコンフィグデータMC1を参照し、コンビスイッチユニット4のスレーブノード7に対して、初期コンフィグデータSC1を送信する。コンビスイッチユニット4のスレーブノード7は、初期コンフィグデータSC1を受信し、受信した初期コンフィグデータSC1をコンビコンフィグ領域771に格納する(図7のt=T11参照)。そうすると、セレクタ73の作用により、コンビスイッチユニット4のドライバユニット740の各ポートの入出力設定が実行される。入出力設定には、例えば、ポートPの入出力属性の設定、入力ポートPのフィルタ定数の設定、設定データに基づく監視対象ポートの設定等が含まれる。
【0080】
コンビスイッチユニット4のスレーブノード7は、ドライバユニット740の各ポートの入出力設定が完了すると、マスターノード2にアクノリッジを返信する。この際に、アクノリッジの返信とともに、マスターノード2からのリクエストを受けて、検知信号領域に格納された初期状態における検知データを返信するようにしてもよい。マスターノード2では、コンビスイッチユニット4から受信した検知データをメモリ25に格納する(図12上段表の「S1(受信)」列参照)。
【0081】
次に、マスターノード2は、スレーブノード7から返信されたアクノリッジに基づいて、初期コンフィグレーション処理が完了したかどうかを判定する。図10のように、コンビスイッチユニット4からのアクノリッジがOKの場合、次のスレーブノード7の初期コンフィグレーション処理が順次実行される。
【0082】
例えば、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7では、マスターノード2から受信した初期コンフィグデータSC2をサイドコンフィグ領域772に格納する(図8のt=T11参照)。コンビスイッチユニット4の場合と同様に、セレクタ73の作用により、右サイドミラーユニット5のドライバユニット740の各ポートの入出力設定が実行される。また、右サイドミラーユニット5は、マスターノード2にアクノリッジRCを返信し、例えば、マスターノード2からのリクエストを受けて、初期状態における検知データを返信する。マスターノード2では、コンビスイッチユニット4から受信した検知データをメモリ25に格納する(図12下段表の「S1(受信)」列参照)。
【0083】
例えば、ステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7では、マスターノード2から受信した初期コンフィグデータSC3をステアコンフィグ領域773に格納する(図9のt=T11参照)。コンビスイッチユニット4の場合と同様に、セレクタ73の作用により、ステアリングスイッチユニット6のドライバユニット740の各ポートPの入出力設定が実行される。
【0084】
そして、すべてのスレーブノード7に対する初期コンフィグレーション処理が完了すると、フローは次のステップS3に進む。
【0085】
一方で、例えば、前述の例で、コンビスイッチユニット4から受信されたアクノリッジがNGの場合には、マスターノード2は、NGが発生したスレーブノード7に対する初期コンフィグレーション処理を再実行する。なお、初期コンフィグレーション処理の再実行回数については、特に限定されず、任意に設定することができる。
【0086】
〔ステップS3〕
ステップS3では、通常動作が行われる。例えば、それぞれのスレーブノード7では、入力ポートPへの入力または入力の変化を検知信号としてマスターノードに送信する。マスターノード2では、検知信号を受信すると、前述の認知処理、判断処理、及び、操作処理を実行する。そして、マスターノード2は、操作処理において、入出力設定で出力設定された出力ポートPの出力内容を命令する操作命令信号を生成し、通信ネットワークBを介して操作対象となる1または複数のスレーブノードに送信する。操作命令信号を受信した1または複数のスレーブノードは、操作命令信号に基づく出力ポートPから操作命令信号に基づく操作信号を出力する。
【0087】
この例では、図11に示すように、通常動作において、ターンスイッチ43がドライバーにより右ターン側に操作された場合の処理について説明する。
【0088】
〔ステップS31〕
ターンスイッチ43が右ターン側に操作されると、ターンスイッチ43のデジタルアウトプットポートDORからドライバ群74の入力ポートP10にON設定信号が入力される。例えば、入力ポートP10には、「0」から「1」に変化するデジタル信号が入力される。このデジタル信号の変化は、ドライバ群74及びセレクタ73を介して、コンビコンフィグ領域771の検知信号領域に書き込まれる(図7のt=T12参照)。
【0089】
〔ステップS32〕
スレーブノード7では、検知信号領域の変化が検出されると、マスターノード2にイベント通知を送信する。イベント通知では、検知信号領域の変化内容が通知される。
【0090】
この例では、前述のターンスイッチ43の操作により検知信号領域の入力ポートP10の値が「0」から「1」に変化するので(図7参照)、コンビスイッチユニット4は、検知信号領域の値の変化をマスターノード2に通知する。具体的に、例えば、コンビスイッチユニット4は、検知信号として入力ポートP10の変化が反映された検知信号領域全体の検知データをマスターノード2に送信する。このように、検知信号領域全体の検知データをマスターノード2に送信してもよいし、値の変化があった入力ポートPの検知データのみをマスターノード2に送信してもよい。
【0091】
〔ステップS33,S34〕
次のステップS33において、マスターノード2では、イベント通知の内容に応じた処理(「イベント処理」ともいう)を実行する。イベント処理では、前述の認知処理、判断処理及び操作処理が実行される。
【0092】
この例では、マスターノード2は、認知処理として、ステップS1で受信した検知データと、今回受信した検知データとの差分データに基づく、情報化処理を実行する。具体的に、マスターノード2は、コンビスイッチユニット4のポートP10の変化と、デバイスポート情報とに基づいて、ターンスイッチ43が右ターン側に操作されたことを認知する。
【0093】
次に、マスターノード2は、判断処理では、目的決定モジュール231、行動計画モジュール232、行動決定モジュール233及び対応決定モジュール234による判断処理を実行する。この例では、「車両CAの右ターンランプ(右サイドミラーユニット5の右ターンランプを含む)をオンにする」という行動が、車両CAの実行対象の行動ととして決定される。
【0094】
次に、マスターノード2は、操作処理として、右ターンランプが接続されたスレーブノード7を操作対象とし、操作内容として右ターンランプを点滅させることを決定する。そして、マスターノード2は、右ターンランプを点滅させることを命令する操作命令信号C5を生成して、右ターンランプが接続された1または複数のスレーブノード7(右サイドミラーユニット5を含む)に送信する(ステップS34)。具体的に、右サイドミラーユニット5に送信される操作命令信号は、例えば、出力ポートP2からオン操作信号(例えば、点滅操作信号)を出力させることを命令する信号である。
【0095】
〔ステップS35,S36〕
右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号を受信し(ステップS35)、操作命令信号C5に基づくポートから操作命令信号に基づく操作信号を出力する。具体的には、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号C5に基づいて、ポートP2からオン制御を指示するデジタル形式の操作信号を出力する(ステップS36)。
【0096】
〔ステップS37,S38〕
ステップS37において、マスターノード2は、操作命令信号を送信したスレーブノード7に対して、操作命令信号C5に基づく出力設定がされているかどうかを確認するアクノリッジを要求する。そして、次のステップS38において、アクノリッジの要求を受けたスレーブノード7は、操作命令信号に基づく出力設定の状況を示すアクノリッジをマスターノード2に返信する。
【0097】
この例では、マスターノード2と右サイドミラーユニット5のスレーブノード7との間で、アクノリッジの送受信が行われる。
【0098】
上記のようにして、検知信号が変化するたびに、スレーブノード7からマスターノード2へのイベント通知があり、そのイベント通知に基づくイベント処理が実行され、イベント処理に基づく操作対象が操作される。
【0099】
〔ステップS4〕
図10に戻り、ステップS4において、マスターノード2は、スリープ処理を実行する。スリープ処理は、例えば、車両CAが駐車場に入庫されて、イグニッション電源がOFFにされた場合のように、車両CAがしばらく利用される見込みが少ない場合に実行される。スリープ処理の実行トリガについては、特に限定されず、例えば、マスターノード2のアプリケーションにおいて任意に設定することができる。
【0100】
スリープ処理では、マスターノード2は、スリープの対象となるスレーブノード7に対して、スリープ状態に移行することを指示するスリープ信号を送信する。スリープ信号を受信したスレーブノード7は、スリープ状態への移行処理を実行する。
【0101】
スレーブノード7において、監視対象ポートPxがONに設定されている入力ポートPがある場合、スリープ期間中における監視対象ポートPxの監視を実行する。また、監視対象ポートPxの設定に加えて監視インターバルが設定されている場合には、指定された監視インターバルで監視対象ポートPxを監視する。この例では、コンビスイッチユニット4のスレーブノード7は、監視インターバルTi1ごとに、監視対象ポートPxである入力ポートP11の入力を監視する。また、ステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7は、監視インターバルTi2ごとに、監視対象ポートPxである入力ポートP6の入力を監視する。
【0102】
マスターノード2は、すべてのスリープの対象となるスレーブノード7にスリープ信号を送り終わると、スリープ状態に移行する。
【0103】
〔ステップS5〕
スリープ期間中において、監視対象ポートPxからの入力が検知された場合に、マスターノードにウェイクアップ信号を送信する。例えば、スリープ期間中に、ステアリングスイッチユニット6のオーディオのON/OFFスイッチが操作されると、監視対象ポートPxである入力ポートPの入力が変化する。そうすると、ステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7は、マスターノード2にウェイクアップ信号を送信する。
【0104】
また、例えば、チャタフィルタは、スレーブ側で実施される。例えば、スレーブノード7おいて、チャタフィルタ後に変化が検知された場合、そのスレーブノード7は、マスターノード2にウェイクアップ信号を送信する。チャタフィルタのコンフィグにより、ノイズ等による誤ったウェイクアップを防止し、結果として電力を低減することができる。
【0105】
より具体的には、例えば、スレーブノード7は、監視を行う監視回路、間欠監視を行う場合の電源回路、マスターノード2と通信を行う通信モジュール71を含む通信回路を備える。そして、スリープ状態でのウェイクアップ監視中には、監視回路にのみ常時給電がされ、電源回路は、間欠動作(例えば10msecに1回、 10μsecだけ通電)をする。そして、監視対象ポートPxからウェイクアップ信号を受けると、通信回路に通電がされて、スレーブノード7の全体が起動された状態になる。そして、スレーブノード7は、マスターノード2にウェイクアップ信号を送信する。
【0106】
〔ステップS6〕
マスターノード2は、スリープ期間中に、監視対象ポートPxが設定されたスレーブノード7からウェイクアップ信号を受けた場合、ウェイクアップ処理を実行する。具体的には、スリープ状態となっている各回路に対して電源の供給が開始されるようにする。また、スリープ状態に移行しているスレーブノード7に対して、ウェイクアップ信号を送信する。ウェイクアップ信号を受信したスレーブノード7では、ウェイクアップ処理が実行される。なお、前述のとおり、ウェイクアップ信号を受けたスレーブノード7(この例ではステアリングスイッチユニット6のスレーブノード7)は、ステップS5の時点で全体が起動された状態になっている。
【0107】
〔ステップS7〕
次に、ステアリングスイッチユニット6は、マスターノード2のウェイクアップが確認されると、ウェイクアップのきっかけとなったイベントを発生させるイベント通知を実行する。この例では、ステアリングスイッチユニット6は、検知信号領域の値の変化をマスターノード2に通知する。具体的に、例えば、ステアリングスイッチユニット6は、入力ポートP6の変化が反映された検知信号領域全体の検知データをマスターノード2に送信する。
【0108】
〔ステップS8〕
マスターノード2では、ステアリングスイッチユニット6から受信したイベント通知に基づくイベント処理を実行する。
【0109】
具体的に、まず、マスターノード2は、スレーブノード7から受信したイベント通知信号及びデバイスポート情報に基づいて、監視対象ポートPxから取得された情報を認知する。この例では、オーディオのON/OFFスイッチが操作されたことを認知する。
【0110】
その後、必要に応じて、オーディオのON/OFFスイッチが操作されたという認知情報に基づいた判断処理及び操作処理が実行される。
【0111】
以上のように、本実施形態の車両制御システムは、スリープ動作およびその復帰動作として、(1)マスターノード2において、それぞれのスレーブノード7に対して、スリープ期間中の監視対象ポート指定する、(2)スレーブノード7は、スリープ期間中において、監視対象ポートPxからの入力が検知された場合に、マスターノード2にウェイクアップ信号及びイベント通知信号を送信する、(3)マスターノード2は、ウェイクアップ信号に基づいてウェイクアップ動作を行い、イベント通知信号及びデバイスポート情報に基づいて、監視対象ポートから取得された情報を認知する、という処理を実行するようにしている。
【0112】
これにより、スレーブノード7の構成を細分化していく場合においても、消費電力の増加を防いで、適切な消費電力の管理が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
ここに開示された車両制御システムは、車両の機能進化及び機能変化に対してフレキシブルかつ迅速に対応できるので有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 車両制御システム
2 マスターノード
7 スレーブノード
B 通信ネットワーク
SC1 初期コンフィグデータ
P ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12