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特開2024-18626防草構造体、防草用構造体キット及びその設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018626
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】防草構造体、防草用構造体キット及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122067
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(71)【出願人】
【識別番号】522305058
【氏名又は名称】有限会社久井田工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】高山 信美
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB27
2B121BB32
2B121EA21
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】地表面から一定の空間距離を保っており、出芽した雑草が防草構造体を突き抜けることがないため亀裂も生じず、光合成が抑制されて雑草の生育、繁茂を防ぐことができる防草構造体を提供する。
【解決手段】網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体であって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれてなる防草構造体である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体であって、
前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれてなることを特徴とする防草構造体。
【請求項2】
前記防草構造体の厚みが0.5cm~5cmである、請求項1に記載の防草構造体。
【請求項3】
前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体の少なくとも一部が光透過性材料に置き換わっていてもよい、請求項1又は2に記載の防草構造体。
【請求項4】
地面に打設されたアンカー上に前記防草構造体が保持されることにより前記空間距離が保たれてなる、請求項1又は2に記載の防草構造体。
【請求項5】
前記防草構造体の少なくとも1つの端部が、地面に打設されたアンカーの垂直方向の軸よりも外側に配置されてなる、請求項1又は2に記載の防草構造体。
【請求項6】
網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体とアンカーとからなる防草用構造体キットであって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれるように地表面に設置して用いられることを特徴とする防草構造体キット。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の防草構造体の設置方法であって、地面にアンカーを打設した後に当該アンカー上に網目状構造体を設置し、当該網目状構造体を遮光性材料で覆って防草構造体を形成することを特徴とする防草構造体の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草の繁茂を防ぐ防草構造体、防草用構造体キット及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地表面を被覆資材で覆う防草手法として、防草シートやモルタル吹付で被覆する技術がこれまで活用されてきた。しかしながら、防草シートは破れやすく、モルタル吹付ではクラック(亀裂)が生じやすい。さらに、建物や電柱など構造物に接する部分では、施工時に隙間ができやすく、当該隙間から雑草が生長、繁茂してしまうことが問題視されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の縦パイプ及び横パイプをジョイントで繋いで環状に連結し、両端の前記縦パイプの間に複数の間パイプを同じ方向に並ぶように間欠的に配置し、さらに下方に長さ調整可能に延ばした複数の支持パイプ等を備えた枠に防草シートを張ったことが記載されており、地面に凹凸がある場合でも、全体的に地面から浮いてしまったり、枠材が傾いたりすることなく、バランス良く防草シートを被せることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、リグニン系組成物及び塩化カルシウムを主成分とする溶液(A)に、セメントと補強繊維と細骨材とからなる材料を添加して混練し、次いで、リグニン系組成物及びケイ酸ナトリウムを主成分として調製された溶液(B)を添加して混練してなるモルタルを、吹付対象体に吹付けて固化させることを特徴とする、防草モルタル吹付け工法が記載されている。これによれば、当該モルタルを吹付対象体に吹付けて固化させるため、優れた防草機能を付与するとともに、ひび割れが発生しにくく、また良好な強度を有する、防草モルタル吹付け工法を提供することが可能となり、広大な面積の地表面に対しても、作業が容易であり、作業期間も比較的短いなどの多くの利点を有しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-145606号公報
【特許文献2】特開2011-26165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、防草シートは、踏圧や堆積物により外圧が高まると防草シートが亀裂する可能性が高く、亀裂すると速やかに雑草が繁茂してしまう。特に、地表面に防草シートが接している箇所では、時間が経過とともにさらにその可能性は高まる。なお、厚みがそれ程大きくない防草シートが地表面に接していると、ササ、チガヤ、ヨシなどの出芽力の強勢な草種が防草シートを突き抜けてしまうことがある(図21参照)。また、防草シート自体も経年的に劣化するため、劣化に応じて防草シートを交換しなければならない。また、特許文献2の防草モルタル吹付け工法では、時間の経過とともに、モルタル表面に砂や有機物などが堆積し始め、地表面にモルタルが接地しているためモルタルが乾燥しにくく、風によって飛来した雑草種子が堆積物から水分を得て発芽して生長、繁茂してしまうおそれがある。また、吹付けられたモルタル自体はひび割れが発生しにくいとしても、モルタルの下面に接する地表面においては、雨水によって土壌が流亡するおそれがあることや、それに伴ってモルタルに亀裂が入るおそれがあるとともに、冬季に発生する霜によりモルタルが持ち上げられてモルタルに亀裂が生じるおそれもあった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、地表面から一定の空間距離を保って設置される防草構造体であって、出芽した雑草が防草構造体を突き抜けることがないため亀裂も生じず、雑草は遮光された状態に保たれることから、光合成が抑制されて雑草の生長、繁茂を防ぐことができる防草構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体であって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれてなることを特徴とする防草構造体を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記防草構造体の厚みが0.5cm~5cmの範囲であることが好適であり、前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体の少なくとも一部が光透過性材料に置き換わっていてもよいことが好適な実施態様である。また、このとき、地面に打設されたアンカー上に前記防草構造体が保持されることにより前記空間距離が形成されてなることが好適な実施態様であり、前記防草構造体の少なくとも1つの端部が、地面に打設されたアンカーの垂直方向の軸よりも外側に配置されてなることが好適な実施態様である。
【0010】
網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体とアンカーとからなる防草用構造体キットであって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれるように地表面に設置して用いられることを特徴とする防草構造体キットが好適な実施態様である。
【0011】
また、上記課題は、前記防草構造体の設置方法であって、地面にアンカーを打設した後に当該アンカー上に網目状構造体を設置し、当該網目状構造体を遮光性材料で覆って防草構造体を形成することを特徴とする防草構造体の設置方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防草構造体は、地表面から一定の空間距離を保っており、出芽した雑草が防草構造体を突き抜けることがないため亀裂を生じず、雑草は遮光された状態に保たれることから、光合成が抑制されて雑草の生長、繁茂を防ぐことができる。降雨後であっても地表面から一定の空間距離を保っているため、防草構造体が速やかに乾燥し、防草構造体の表面に飛来した雑草種子が吸水して発芽することを防ぐこともできる。また、電柱、建物等の構造物が存在する場合であっても網目状構造体を適宜加工して当該構造物の周囲に接着・施工できるため、実質的に隙間が生じることなく雑草が突き抜けることを防ぐことができる。したがって、本発明の防草構造体により雑草の生長、繁茂を少なくとも2年以上防ぐことが可能である。さらに、本発明の防草構造体は、軽量な網目状構造体が遮光性材料で覆われてなるものであり、アンカーで地表面から一定の空間距離を保っているため、必要に応じて解体して撤去することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コの字型アンカー及びT字型アンカーを平坦な地面に打設した状態を示す模式図である。
図2】コの字型アンカー及びT字型アンカーを平坦な地面に打設した状態を示す写真である。
図3】コの字型アンカー及びT字型アンカーを平坦な地面に打設した状態の断面を示す模式図である。
図4】アンカー上にリブラスを設置した状態を示す模式図である。
図5】アンカー上にリブラスを設置した状態を示す写真である。
図6】アンカー上にリブラスを設置した状態の断面を示す模式図である。
図7】リブラス上にモルタルが塗布されて得られた防草構造体を示す模式図である。
図8】リブラス上にモルタルを塗布した状態を示す写真である。
図9】リブラス上にモルタルが塗布されて得られた防草構造体であり、設置から2日目、7日目及び14日目の状態を示す写真である。
図10】リブラス上にモルタルが塗布されて得られた防草構造体の断面を示す模式図である。
図11】防草構造体の端部付近において草刈りする場合の実施態様の断面を示す模式図である。
図12】コンクリートブロック塀に接するようにリブラスを設置した状態を示す写真である。
図13】金網フェンスの両側に接するようにリブラスを設置した状態を示す写真である。
図14】金網フェンスの両側に接するようにリブラスを設置し、当該リブラス上にモルタルが塗布されて得られた防草構造体を示す写真である。
図15】山林の法面に設置された防草構造体を示す写真である。
図16】山林の法面に設置から1ヶ月経過後の防草構造体を示す写真である。
図17】山林の法面に設置から1ヶ月経過後の防草構造体において、モルタルの一部がアクリル板に置き換わった箇所と当該防草構造体を真横から観察した状態を示す写真である。
図18】リブラス上にモルタルが塗布されて得られた防草構造体であり、地表面からの空間距離が0cmの例の、設置から14日目の状態を示す写真である。
図19】市販の防草シートを地表面に設置して約4カ月経過した状態を示す写真である。
図20】市販の防草シートを地表面にシートピンで打設して約2カ月経過後の当該シートピン周辺の状態を示す写真である。
図21】市販の防草シートを地表面に設置して約2年経過後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の防草構造体は、網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体であって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで一定の範囲に保たれてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明において、防草構造体と地表面との間の空間距離とは、5cm超~30cmの範囲の範囲のことを示しており、地表面に凹凸がある場合には最も高い凸部から防草構造体の下表面までの距離が5cm超~30cmの範囲に保たれていることをいう。すなわち、最も高い凸部から防草構造体の下表面までの距離が5cm超~30cmの範囲に保たれていればよく、地表面の形状に依存して、局所的に30cmを超える部分があっても構わない。後述する実施例と比較例との対比から明らかなように、前記空間距離が0cmと5cmの場合には、出芽した雑草が生長して防草構造体を突き抜けてしまい、当該防草構造体に亀裂が生じてしまう。亀裂が生じるとそこから雑草がさらに生長するため防草効果が得られない。これに対し、前記空間距離が10cm、15cm及び20cmの場合には、防草構造体と地表面との空間内は完全には遮光されないので、雑草はある程度光合成ができるので幾分生長するが、雑草が防草構造体を突き抜けることがなく、当該防草構造体に亀裂が生じることがない。これは、植物の生長の力は出芽した初期段階が非常に強いことを勘案し、敢えて地表面から防草構造体までの空間距離を一定程度確保することにより当該防草構造体を突き抜けるほどの生長の力を生じさせないようにすることにより、茎葉部における光合成が抑制されて雑草の生長、繁茂を防ぐことを狙ったものである。このように、前記空間距離を5cm超~30cmの範囲に保つ構成を採用する本発明の意義が大きいことが分かる。
【0016】
上述のように、前記空間が5cm以下の場合、所望の防草効果が得られず、通常、5cm超とし、6cm以上であることが好ましく、8cm以上であることがより好ましく、10cm以上であることがさらに好ましい。一方、前記空間が30cmを超える場合、前記空間内に入射する太陽光が増えてしまい、防草効果が不十分となるおそれがあり、25cm以下であることが好ましく、22cm以下であることがより好ましく、20cm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いられる網目状構造体としては、網目状の隙間に遮光性材料を保持することができ、地表面から一定距離を保つことが可能であり、かつ、たわみが生じない程度の強度を有する網目状構造体であれば特に限定されない。材質としては金属であってもプラスチックであってもよく、好適には、平ラス、こぶラス、波形ラス、リブラス等のメタルラスを用いることができる。メタルラスの材質としては、溶融亜鉛めっき鋼板製、ステンレス鋼板製のものが好適に採用される。ここで、平ラスとは成形など二次加工されていない平らなものであり、こぶラスとは平ラスを同一面方向にこぶ付け加工されたものであり、波形ラスとは平ラスを一定方向に波形加工されたものであり、リブラスとは平ラス製造時に素板部分を一定間隔で残し、残した素板部分に同一面方向に山形加工されたリブが付いたもの(「リブラスA」と呼ぶことがある)、あるいは鋼板に切れ目を付け、二次加工でリブ付け及び展開引き伸ばしによって製造するリブが付いたもの(「リブラスC」と呼ぶことがある)であり、これらメタルラスはJIS A5505:2020で規定されている。中でも、骨部としてリブを有するリブラスは、アンカー上に設置した際の安定性が良好となるため網目状構造体としてより好適に用いることができる。
【0018】
本発明で用いられるアンカーとしては、地面に打設されて前記網目状構造体を保持できるものであれば特に限定されない。材質としては金属であってもプラスチックであってもよい。耐久性を考慮すると金属であることが好適であり、安価で耐久性が良好である観点から鉄筋や異形鉄筋がアンカーとしてより好適に採用される。アンカーの形状としては特に限定されないが、アンカー上に前記網目状構造体を保持しやすい観点から、コの字型、T字型、及びL字型からなる群から選択される少なくとも1種のアンカーが好適に用いられ、アンカー同士を溶接することなくより安価である観点から、コの字型及びL字型からなる群から選択される少なくとも1種のアンカーがより好適に用いられる。アンカーの直径としては、通常、5mm以上とし、6mm~20mmであることが好ましく、8mm~16mmであることがより好ましい。
【0019】
本発明で用いられる遮光性材料としては、前記網目状構造体を覆うことができるものであれば特に限定されない。施工が容易で耐久性が良好である観点から、セメント、モルタル、及びコンクリートからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。通常、モルタルは、セメント、細骨材及び水を含むものであり、コンクリートは、セメント、粗骨材、細骨材及び水を含むものである。本発明の防草構造体は、前記網目状構造体が前記遮光性材料で覆われたものである。前記網目状構造体を前記遮光性材料で覆う方法としては特に限定されず、塗布、吹付など公知の方法が採用される。前記網目状構造体を前記遮光性材料で覆ってからアンカーで保持してもよいし、前記網目状構造体をアンカーで保持してから前記遮光性材料で覆ってもよい。地面に打設されたアンカー上に前記防草構造体が保持されることにより前記空間距離が形成されてなることが好適な実施態様である。
【0020】
本発明の防草構造体は、アンカーで前記空間距離が保持されてなるものであるが、アンカーの打設位置としては特に限定されない。しかしながら、地表面から一定の空間距離を保っているため、前記防草構造体の端部から太陽光が入射し、当該端部では雑草が伸長することになる。そのため、前記防草構造体の少なくとも1つの端部が、地面に打設されたアンカーの垂直方向の軸よりも外側に配置されてなることが好適な実施態様として採用される。すなわち、図11に示されるとおり、アンカーの垂直方向の軸が前記防草構造体の内側に配置されることになり、当該端部付近で伸長した雑草を草刈りする際にアンカーの垂直方向の軸に草刈りの刃が当たることを防ぐことができるため好ましい。なお、防草構造体の端部とは、防草構造体の側面のいずれかの箇所のことをいう(図11の符号31参照)。例えば、防草構造体が直方体形状であれば、直方体形状の側面のいずれかの箇所が端部となり、防草構造体が円柱形状であれば、円柱形状の側面のいずれかの箇所が端部となる。防草構造体の端部付近の地面がコンクリートなどで構成され、雑草が存在しない状況であれば、防草構造体の端部を地表面に接するように折り曲げても構わない。
【0021】
本発明の防草構造体の厚みとしては特に限定されないが、通常、0.5mm以上であることが好ましく、0.5cm~5cmであることがより好ましい。当該厚みが0.5cm未満の場合、防草構造体の強度が不足し、雑草が防草構造体を突き抜けるおそれがある。当該厚みは0.8cm以上であることがより好ましく、1cm以上であることがさらに好ましい。一方、当該厚みが5cmを超える場合、防草構造体の重量が増えてコスト高になるとともに、解体して撤去する際に労力を要するおそれがある。当該厚みは4cm以下であることがより好ましく、3cm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明の防草構造体は、前記網目状構造体が前記遮光性材料で覆われたものであるが、前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体の少なくとも一部が光透過性材料に置き換わっていてもよい。これにより、光透過性材料に置き換わった箇所と地表面との間の空間では、植物の根が残存して当該空間における植物の繁茂が維持されることになるため、土砂の流出等を防ぐことが可能となる。後述する実施例からも明らかなように、本発明者らは、防草構造体を法面に設置して1ヶ月経過後に観察したところ、光透過性材料であるアクリル板が配置された箇所付近の空間には雑草が生育しており、それ以外の空間では雑草は生育していなかったことを確認している。すなわち、土砂崩れを防止する観点から、当該防草構造体を斜面や法面に設置することが好適な実施態様である。
【0023】
前記光透過性材料としては特に限定されず、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂などのプラスチック材料やガラスなどを好適に使用することができる。
【0024】
本発明の防草構造体の設置方法としては特に限定されない。地面にアンカーを打設した後に当該アンカー上に網目状構造体を設置し、当該網目状構造体を遮光性材料で覆って防草構造体を形成する方法であってもよいし、予め網目状構造体を前記遮光性材料で覆って防草構造体を形成し、地面にアンカーを打設した後に当該アンカー上に前記防草構造体を設置する方法であってもよい。電柱、建物等の構造物が存在する場合には、当該構造物の周囲に所望の形状に加工した網目状構造体を設置してから遮光性材料で覆うことで隙間が生じない利点を有するため、かかる観点から、地面にアンカーを打設した後に当該アンカー上に網目状構造体を設置し、当該網目状構造体を遮光性材料で覆って防草構造体を形成する方法がより好適に採用される。
【0025】
上述のとおり、本発明の防草構造体を設置する際、現場で前記網目状構造体を遮光性材料で覆う方法が好適に採用されるが、前記網目状構造体が遮光性材料で覆われた防草構造体を現場に持ち込み、防草構造体の下面をアンカーで固定して設置する方法であっても構わない。かかる観点から、網目状構造体が遮光性材料で覆われてなる防草構造体とアンカーとからなる防草用構造体キットであって、前記防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれるように地表面に設置して用いられることを特徴とする防草構造体キットであることが本発明の好適な実施態様の一つである。このとき、前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体の少なくとも一部が光透過性材料に置き換わった防草構造体であることも好適な実施態様の一つである。また、現場で前記網目状構造体を遮光性材料で覆う場合には、網目状構造体と遮光性材料とアンカーとからなる防草用構造体キットであって、前記網目状構造体が前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体と地表面との間の空間距離がアンカーで5cm超~30cmの範囲に保たれるように地表面に設置して用いられることを特徴とする防草構造体キットが本発明の好適な実施態様の一つである。当該キットに光透過性材料がさらに含まれることも好適な実施態様の一つである。
【0026】
本発明の防草構造体の設置場所としては、雑草の生育、繁茂を防ぎたい場所であれば特に限定されない。平地、斜面、法面、路傍、用水路、休耕田、空き地、家屋・建築物・工場施設周辺など適宜所望の場所に設置することができる。上記説明したとおり、前記遮光性材料で覆われてなる防草構造体の少なくとも一部が光透過性材料に置き換わった防草構造体では、光透過性材料に置き換わった箇所と地表面との間の空間において、植物の根が生育して当該空間における植物の生育、繁茂が弱いながらも維持されることになるため、土砂の流出等を効果的に防ぐことが可能となる。したがって、当該防草構造体を斜面や法面に設置することが好適な実施態様である。また、設置された防草構造体は、軽量な網目状構造体が遮光性材料で覆われてなるものであり、アンカーで地表面から一定の空間距離を保っているため、必要に応じて解体して撤去することが容易である。
【実施例0027】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、下記の実施形態は、単なる例示であって、本発明はそれら実施形態により何ら限定されない。
【0028】
実施例1
直径10mmの異形鉄筋からなるコの字型アンカー及びT字型アンカーを準備し、平坦な地面に対してT字型アンカーを両端に打設し、これらT字型アンカーの間にコの字型アンカーを打設した(図1~3参照)。地表面から水平方向に配置されたアンカー上部までの空間距離は10cmであった。前記打設したアンカー上に網目状構造体としてリブラス(株式会社小河商店製、縦180cm×横60cm×厚み(リブ高さ含む)6mm)を必要枚数設置して針金等で固定した(図4~6参照)。前記リブラス上に遮光性材料としてモルタルを塗布することで防草構造体を設置した(図7~10参照)。このとき、防草構造体の厚みは1cmであった。
【0029】
実施例2~3及び比較例1~2
実施例1において、地表面から水平方向に配置されたアンカー上部までの空間距離をそれぞれ0cm、5cm、15cm及び20cmに変更した以外は実施例1と同様にして、それぞれの防草構造体を設置した(図9参照)。0cmと5cmの場合が比較例1と2であり、15cmと20cmの場合が実施例2と3である。当該空間距離が0cmと5cmの防草構造体では、雑草が防草構造体を貫通し、亀裂が発生する箇所が確認された(図18参照)。
【0030】
実施例4
直径10mmの異形鉄筋からなるL字型アンカーを準備し、コンクリートブロック塀に接するようにL字型アンカーを一定間隔で打設した。地表面から水平方向に配置されたアンカー上部までの空間距離は10cmであった。前記打設したアンカー上に網目状構造体としてリブラス(株式会社小河商店製、縦180cm×横60cm×厚み(リブ高さ含む)6mm)を適宜切断して必要枚数設置し、針金等で固定した(図12参照)。前記リブラス上に遮光性材料としてモルタルを塗布することで防草構造体を設置した。このとき、防草構造体の厚みは1cmであった。
【0031】
実施例5
金網フェンスの両側においてT字型アンカーとコの字型アンカーを打設し、前記打設したアンカー上に網目状構造体としてリブラス(株式会社小河商店製、縦180cm×横60cm×厚み(リブ高さ含む)6mm)を必要枚数設置して針金等で固定した(図13参照)。前記リブラス上に遮光性材料としてモルタルを塗布することで防草構造体を設置した(図14参照)。このとき、防草構造体の厚みは1cmであり、防草構造体と地表面との間の空間距離は10cmであった。
【0032】
実施例6
直径10mmの異形鉄筋からなるコの字型アンカー及びT字型アンカーを準備し、山林の法面に対してT字型アンカーを両端に打設し、これらT字型アンカーの間にコの字型アンカーを打設した。地表面から法面と平行に配置されたアンカー上部までの空間距離は10cmであった。前記打設したアンカー上に網目状構造体としてリブラス(株式会社小河商店製、縦180cm×横60cm×厚み(リブ高さ含む)6mm)を必要枚数設置して針金等で固定した。このとき、リブラス上に光透過性材料としてアクリル板(縦10cm×横10cm、厚さ4mm)を一定間隔で配置した。前記アクリル板が配置された以外のリブラス上に遮光性材料としてモルタルを塗布することで防草構造体を設置した(図15参照)。このとき、防草構造体の厚みは1cmであった。設置から1ヶ月経過後に防草構造体を観察したところ、アクリル板が配置された箇所付近の空間には雑草が生育しており、それ以外の空間では雑草の生育は確認できなかった(図16及び17参照)。
【0033】
参考例1
市販の防草シートを地表面に設置したところ、設置から約4ヶ月経過後に、当該防草シートの張り合わせ箇所から雑草が出芽して生長、繁茂していることが確認された(図19参照)。このように雑草が生長すると、防草シートに凹凸が生じて土が溜まりやすく、飛来した雑草種子が発芽して生長、繁茂してしまう。また、雑草が生長、繁茂した防草シートの周囲を草刈りすると、草刈りの刃が当該防草シートを巻き込んで破れてしまうおそれがある。
【0034】
参考例2
市販の防草シートを地表面にシートピンにより打設して設置したところ、設置から約2ヶ月経過後に、当該シートピン周辺や当該防草シートの張り合わせ箇所から雑草が出芽して生長していることが確認された(図20参照)。このように雑草が生長すると、防草シートに凹凸が生じて土が溜まりやすく、飛来した雑草種子が発芽して生長、繁茂するおそれがある。また、雑草が生長した防草シートの周囲を草刈りすると、草刈りの刃が当該防草シートを巻き込んで破れてしまうおそれがある。
【0035】
参考例3
市販の防草シートを地表面に設置したところ、設置から約6カ月経過後に、当該防草シートをチガヤが突き抜けていたことが確認された。図21は、設置から約2年経過後の状態を示す写真である。厚みがそれ程大きくない防草シートを地表面に設置すると、ササ、チガヤ、ヨシなどの出芽力の強勢な草種が防草シートを突き抜けてしまう。防草シート自体も経年的に劣化するため、劣化に応じて防草シートを交換しなければならない。
【符号の説明】
【0036】
1 アンカー
11 コの字型アンカー
12 T字型アンカー
13 アンカーの垂直方向の軸
2 網目状構造体(リブラス)
3 防草構造体
31 防草構造体の端部
4 空間距離
5 草刈りの刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21