(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018627
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】推論システム、推論方法及び推論プログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 10/70 20220101AFI20240201BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240201BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240201BHJP
【FI】
G06V10/70
G06N20/00
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122068
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391021684
【氏名又は名称】菱洋エレクトロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 元洋
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 瑶
(72)【発明者】
【氏名】原 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 英介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 博明
(72)【発明者】
【氏名】上野 正汰
(72)【発明者】
【氏名】野村 真子
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096BA03
5L096DA01
5L096EA05
5L096EA06
5L096EA39
5L096GA19
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】より簡便に、不良の原因となった問題工程を特定することができる推論システム、推論方法及び推論プログラムを提供する。
【解決手段】推論システムは、品質不良推論モデル、品質不良推論部、問題工程推論モデル、及び問題工程推論部を有する。前記品質不良推論モデルは、被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習される。前記品質不良推論部は、前記撮像画像に基づいて、前記品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、品質不良情報を出力する。前記問題工程推論モデルは、前記品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習される。前記問題工程推論部は、前記品質不良情報に基づいて、前記問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルと、
前記撮像画像に基づいて、前記品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、品質不良情報を出力する品質不良推論部と、
前記品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルと、
前記品質不良情報に基づいて、前記問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する問題工程推論部と、
を有する推論システム。
【請求項2】
前記問題工程推論モデルは、前記品質不良情報を入力データとし、前記問題工程を正解データとする問題工程学習データに基づいて、学習される、請求項1に記載の推論システム。
【請求項3】
前記品質不良推論部は、前記撮像画像を所定推論領域に分割し、前記所定推論領域の各々について、前記品質不良情報を出力する、請求項1に記載の推論システム。
【請求項4】
前記品質不良情報は、前記品質不良の種別を示す不良種別情報と、前記品質不良の深刻度を示す深刻度情報を含む、請求項1に記載の推論システム。
【請求項5】
前記問題工程推論モデルは、前記不良種別情報及び前記深刻度情報の各々に対応付けられた重み量を有し、
前記問題工程推論部は、前記不良種別情報及び前記深刻度情報の各々に、前記不良種別情報及び前記深刻度情報の各々に対応付けられた前記重み量の各々を演算し、前記問題工程情報を算出する、
請求項4に記載の推論システム。
【請求項6】
被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルと、品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルとを用意し、
前記撮像画像に基づいて、前記品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、前記品質不良情報を出力し、
前記品質不良情報に基づいて、前記問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する、
を有する推論方法。
【請求項7】
被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、品質不良情報を出力する品質不良推論部のプログラムと、
前記品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する問題工程推論部のプログラムと、
を有する推論プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推論システム、推論方法及び推論プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物の良否を判定する外観検査装置がある。例えば、特開2010-249547号公報には、予め設定された判定基準に従って検査対象物の良否を判定し、その良否判定結果に基づいて、所定期間内に検査された検査対象物の総数あるいは所定数量の検査対象物に対して不良品と判定された比率を示す不良品率が、判定基準の作成時において想定される不良品率よりも高い場合、外観検査装置自体または外観検査装置による検査工程の前工程の何れかに変化が発生したと判定する、外観検査装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2010-249547号公報に記載の外観検査装置では、外観検査装置自体または外観検査装置による検査工程の前工程の何れかに変化が発生したことを判定できるものの、不良品率に変化が生じていないときや、製造条件の変更がないにも関わらず不良品が発生しているとき、製造条件の変更が広範囲にわたるとき等、不良の原因となっている具体的な前工程の特定が困難である。
【0005】
そこで、本発明は、より簡便に、不良の原因となった問題工程を特定することができる推論システム、推論方法及び推論プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の推論システムは、品質不良推論モデル、品質不良推論部、問題工程推論モデル、及び問題工程推論部を有する。前記品質不良推論モデルは、被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習される。前記品質不良推論部は、前記撮像画像に基づいて、前記品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、品質不良情報を出力する。前記問題工程推論モデルは、前記品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習される。前記問題工程推論部は、前記品質不良情報に基づいて、前記問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する。
【0007】
本発明の一態様の推論方法は、被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルと、品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルとを用意し、前記撮像画像に基づいて、前記品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、前記品質不良情報を出力し、前記品質不良情報に基づいて、前記問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する。
【0008】
本発明の一態様の推論プログラムは、品質不良推論部のプログラム及び問題工程推論部のプログラムを有する。前記品質不良推論部のプログラムは、被検査対象物の撮像画像に基づいて、前記被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルを用いて前記品質不良を推論し、品質不良情報を出力する。前記問題工程推論部のプログラムは、前記品質不良情報に基づいて、前記品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルを用いて前記問題工程を推論し、問題工程情報を出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より簡便に、不良の原因となった問題工程を特定することができる推論システム、推論方法及び推論プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る推論システムの一例を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、エッジとサーバを説明するための説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、画像送信部、前処理部及び品質不良学習部の各々の処理を説明するための説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、品質不良推論部の処理を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、問題工程送信部及び問題工程学習部の各々の処理を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、問題工程推論部の処理を説明するための説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、推論処理を説明するための説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る推論システムにおける、推論処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0012】
図1は、推論システム1の一例を示す全体構成図である。推論システム1は、被検査対象物の生産工程において、被検査対象物の品質不良や、被検査対象物の品質不良の原因となる問題工程を推論する。実施形態では、一例として、生産工程は、回路チップの生産工程であり、被検査対象物は、回路チップである。
【0013】
図1に示すように、推論システム1は、エッジ10とサーバ20を有する。エッジ10は、複数設けることができ、サーバ20に無線通信、有線通信及び/又は移動体通信等のネットワークを介して接続可能である。
【0014】
図2は、推論システム1におけるエッジ10とサーバ20を説明するための説明図である。
図2に示すように、エッジ10は、制御部11、記憶部12、カメラ13、及び表示部14を有する。
【0015】
制御部11は、CPU及びGPU等の処理装置11aを有する。処理装置11aは、記憶部12に記憶された各種プログラムを読み込み実行可能である。制御部11の機能は、制御部11が記憶部12から各種プログラム及びデータを読み込み、実行することによって実現する。
【0016】
記憶部12には、エッジ10を制御するための各種データやプログラムの他、画像送信部E1、問題工程送信部E2及び品質不良推論部E3の各々のプログラムや品質不良推論モデルM1も記憶される。
【0017】
カメラ13は、被検査対象物を撮像し、撮像画像Iを出力する(
図3)。
【0018】
表示部14は、LCD、OLED等の表示パネルを有し、制御部11の制御の下、各種情報を表示する。例えば、表示部14は、品質不良推論部E3によって出力された品質不良情報Prや、サーバ20から送信された問題工程情報Ppを表示する(
図7)。
【0019】
サーバ20は、制御部21と記憶部22を有する。
【0020】
制御部21は、CPU及びGPU等の処理装置21aを有する。処理装置21aは、記憶部22に記憶された各種プログラムを読み込み実行する。制御部21の機能は、制御部21が記憶部22から各種プログラム及びデータを読み込み、実行することによって実現する。
【0021】
記憶部22には、サーバ20を制御するための各種データやプログラムの他、前処理部V1、品質不良学習部V2、問題工程学習部V3及び問題工程推論部V4の各々のプログラムや問題工程推論モデルM2も記憶される。
【0022】
図3は、推論システム1における画像送信部E1、前処理部V1及び品質不良学習部V2の処理を説明するための説明図である。
図3に示すように、エッジ10における画像送信部E1は、被検査対象物を撮像した撮像画像Iがカメラ13から入力され、撮像画像Iをサーバ20に送信する。
【0023】
サーバ20において、前処理部V1は、画像送信部E1から受信した撮像画像Iを所定推論領域に分割し、トリミング、解像度の調整、コントラスト補正、明るさ補正、色補正、ノイズ除去、平滑化、及び輪郭強調等の各種の前処理を行い、また、水平反転、垂直反転、回転、拡大、縮小、及び明度変更等の水増しを行って品質不良学習データL1を生成する。品質不良学習データL1には、品質不良学習部V2における学習の際に使用されるラベルとして、所定推論領域の位置や、「傷」、「長い傷」、「短い傷」、「深い傷」、「浅い傷」、「汚れ」、「打痕」、「擦り傷」、「摩耗」及び「陥没」等の品質不良の種別も含まれる。品質不良の種別及び後述する品質不良の深刻度は、ユーザによって入力される他、データが一定量蓄積された後には、蓄積されたデータに基づいて生成された図示しない学習済みモデルや分類器を用いて決定されてもよい。品質不良学習データL1は、記憶部22に設けられたデータベースに格納される。
【0024】
品質不良学習部V2は、データベースから読み込んだ品質不良学習データL1に基づいて、被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習し、品質不良推論モデルM1を生成する。品質不良推論モデルM1の学習には、ディープラーニングや、ニューラルネットワーク、多項ロジスティック回帰分析等の技術が用いられる。
【0025】
品質不良推論モデルM1は、記憶部22に記憶されるとともに、エッジ10に送信され、記憶部12にもデプロイされる。
【0026】
図4は、品質不良推論部E3の処理を説明するための説明図である。
図4に示すように、品質不良推論部E3は、記憶部12から品質不良推論モデルM1を読み込み、撮像画像Iを品質不良推論モデルM1に入力して品質不良を推論し、品質不良情報Prを出力する。
【0027】
品質不良推論モデルM1は、所定推論領域の位置や品質不良の種別の各々に対応付けられたp個の学習済みモデルm1~mpを有する。以下、学習済みモデルm1~mpの一部又はすべてをいうとき、学習済みモデルmという。品質不良の種別の各々に対応付けられた学習済みモデルmの各々は、品質不良の各々が現れた品質不良学習データL1に基づいて、品質不良の各々に相関した推論値を出力するように学習される。
【0028】
一例として、品質不良の種別「傷」に対応付けられた学習済みモデルmは、被検査対象物に傷が現れた品質不良学習データL1により、被検査対象物の傷に相関した推論値を出力するように学習される。
【0029】
学習済みモデルmは、品質不良のない被検査対象物が現れた品質不良学習データL1によって品質不良のない被検査対象物に相関した推論値を出力するように学習されてもよい。
【0030】
また、学習済みモデルmは、品質不良の被検査対象物が現れた品質不良学習データL1と品質不良のない被検査対象が現れた品質不良学習データL1の両方によって学習されてもよい。
【0031】
また、品質不良推論モデルM1は、品質不良の深刻度に相関した推論値を出力する学習済みモデルmrも有する。品質不良の深刻度を推論する学習済みモデルmrは、品質不良の深刻度の度合いに応じた正解データにより、品質不良の深刻度に相関した推論値を出力するように学習される。一例として、品質不良の深刻度を推論する学習済みモデルmrは、高い深刻度の品質不良が現れた入力データと高い深刻度を示す正解データや、小さい深刻度の品質不良が現れた入力データと低い深刻度を示す正解データにより、深刻度に相関した推論値を出力するように学習される。
【0032】
品質不良推論部E3は、選択部E3aと種別判定部E3bを有し、被検査対象物を所定推論領域に分割し、所定推論領域の各々について、品質不良情報Prを出力する。品質不良情報Prは、品質不良の種別を示す不良種別情報c1~cnと、品質不良の深刻度を示す深刻度情報r1~rnを含む。以下、不良種別情報c1~cnの一部又はすべてをいうとき、不良種別情報cといい、深刻度情報r1~rnの一部又はすべてをいうとき、深刻度情報rという。
【0033】
選択部E3aは、被検査対象物を撮像して取得された撮像画像Iを所定推論領域毎に分割することによって撮像画像I1~Inを取得し、所定推論領域に対応付けられた学習済みモデルm、mrに入力する。以下、撮像画像I1~Inの一部又はすべてをいうとき、撮像画像Iという。
【0034】
種別判定部E3bは、学習済みモデルmの各々の推論値が閾値を超えたとき、当該閾値を超えた学習済みモデルmに対応付けられた不良種別情報cを出力する。例えば、被検査対象物の特定の所定推論領域に傷が現れた撮像画像Iを学習済みモデルmの各々に入力すると、品質不良の種別「傷」に対応付けられた学習済みモデルmの推論値が閾値を超え、「汚れ」、「打痕」、「擦り傷」、「摩耗」及び「陥没」等、それ以外の品質不良の種別に対応付けられた学習済みモデルmの推論値が閾値以下になり、種別判定部E3bは、閾値を超えた学習済みモデルmに対応付けられた「傷」を示す不良種別情報cを出力する。
【0035】
また、品質不良推論部E3は、学習済みモデルmrによって推論された推論値を深刻度情報rとして出力する。
【0036】
また、品質不良推論部E3は、品質不良情報Prをサーバ20に送信し、記憶部22内の品質不良情報データベースDsに記憶させる。
【0037】
図5は、問題工程送信部E2及び問題工程学習部V3の処理を説明するための説明図である。
図5に示すように、ユーザは、エッジ10における入力装置(不図示)から問題工程学習データL2を入力する。
【0038】
問題工程送信部E2は、入力された問題工程学習データL2をサーバ20に送信する。
【0039】
問題工程学習部V3は、問題工程学習データL2を用い、品質不良情報Prに基づいて、品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習し、問題工程推論モデルM2を生成する。問題工程推論モデルM2は、品質不良情報Prに相関した問題工程を示す推論値を出力する。
【0040】
図6は、問題工程推論部V4の処理を説明するための説明図である。
図6に示すように、問題工程推論モデルM2は、重み量w
1~w
2nを有する。以下、重み量w
1~w
2nの一部又はすべてをいうとき、重み量wという。
【0041】
問題工程学習データL2は、所定推論領域A1~Anの各々に対応した不良種別情報c1~cnの各々及び深刻度情報r1~rnの各々からなる品質不良情報Prが入力データであり、品質不良の原因となる問題工程に対応付けられた正解データPcが正解データである。
【0042】
不良種別情報cは、数値によって表される。一例として、
図6では、「-1」が「打痕」を表し、「1」が「擦り傷」を表す。
【0043】
正解データPcは、一例として、
図6では、問題工程A(問題工程情報Ppの値「A」)が「0.1250」であり、問題工程B(問題工程情報Ppの値「B」)が「0.2500」であり、問題工程Cが「0.3750」であり(不図示)、問題工程D(問題工程情報Ppの値「D」)の正解データが「0.5000」であるように定められる。正解データPcは、経験的又は実験的に定められてもよいし、過去の品質不良の原因を調査した結果に基づいて定められてもよい。
【0044】
問題工程学習部V3は、次の数式(1)及び(2)に示す演算を行うことによって推論値を出力する。
【0045】
次の数式(3)に示す演算を行うことによって推論値と正解データの残差の平方値を算出する。
(残差の平方値)=(推論値-正解データ)2 ・・・ (3)
【0046】
数式(1)~(3)の演算を繰り返すことによって取得された複数の残差の平方値の和である残差平方和を目的関数とし、目的関数が最小になるように、重み量wを調整する。重み量wの調整には、勾配降下法等の技術を用いてもよい。
【0047】
なお、上記の数式(1)~(3)の数式及び目的関数を使用した重み量wの調整は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、目的関数は、残差平方和だけでなく、平均絶対誤差や、平均二乗誤差、平均平方二乗誤差、二乗平均平方根対数誤差等を用いてもよい。
【0048】
また、問題工程推論モデルM2の学習には、ディープラーニングやニューラルネットワーク、多項ロジスティック回帰分析等の技術を用いてもよい。
【0049】
なお、数式(1)では、不良種別情報cと深刻度情報rを用いているが、例えば、次の数式(4)に示すように、傷の色p
1~p
n等、他のパラメータを追加して用いることもできる。
【0050】
問題工程学習部V3は、学習終了後、問題工程推論モデルM2を記憶部22に記憶させる。
【0051】
図7は、推論処理を説明するための説明図である。
図8は、推論処理を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図7に示すように、エッジ10において、カメラ13が被検査対象物を撮像し、撮像画像Iを品質不良推論部E3に出力する(
図8のS1)。
【0053】
品質不良推論部E3は、撮像画像Iを所定推論領域に分割し、トリミング、解像度の調整、コントラスト補正、明るさ補正、色補正、ノイズ除去、平滑化、及び輪郭強調等の各種前処理を行い、品質不良推論モデルM1に撮像画像Iを入力し、品質不良情報Prを取得し、表示部14に表示させる(S2)。
【0054】
品質不良推論部E3は、品質不良情報Prをサーバ20に送信する(S3)。
【0055】
サーバ20は、受信した品質不良情報Prを品質不良情報データベースDsに記憶する(S4)。
【0056】
ユーザがエッジ10に問題工程推論処理の指示入力をすると(S5:YES)、品質不良推論部E3は、サーバ20に、問題工程情報Ppの送信指示を行う(S6)。指示入力がなければ(S5:NO)、処理は、S1に戻る。
【0057】
サーバ20における問題工程推論部V4は、品質不良情報データベースDsから品質不良情報Prを読み込んで問題工程推論モデルM2に入力して推論値を出力し、問題工程情報Ppを生成し、エッジ10に送信する(S7、S8)。問題工程情報Ppは、例えば、推論値との誤差が最小になる正解データに対応付けられた問題工程を示すように生成される。例えば、
図6に示すように、問題工程Aの正解データPcが「0.1250」であり、問題工程Bの正解データPcが「0.2500」であり、問題工程Cの正解データPcが「0.3750」であり(不図示)、問題工程Dの正解データPcが「0.5000」であるとき、ID1の推論値「0.2312」が算出されると、問題工程情報Ppは、推論値「0.2312」との誤差が最小となる正解データPc「0.2500」に対応付けられた問題工程Bを示すように生成される。
【0058】
エッジ10は、受信した問題工程情報Ppを表示部14に表示させる(S9)。S9の後、処理は、S1に戻る。
【0059】
すなわち、推論システム1は、被検査対象物の撮像画像Iに基づいて、被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルM1と、撮像画像Iに基づいて、品質不良推論モデルM1を用いて品質不良を推論し、品質不良情報Prを出力する品質不良推論部E3と、品質不良情報Prに基づいて、品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルM2と、品質不良情報Prに基づいて、問題工程推論モデルM2を用いて問題工程を推論し、問題工程情報Ppを出力する問題工程推論部V4と、を有する。
【0060】
問題工程推論モデルM2は、品質不良情報Prを入力データとし、問題工程を正解データとする問題工程学習データL2に基づいて、学習される。
【0061】
品質不良推論部E3は、撮像画像Iを所定推論領域に分割し、所定推論領域の各々について、品質不良情報Prを出力する。
【0062】
品質不良情報Prは、品質不良の種別を示す不良種別情報cと、品質不良の深刻度を示す深刻度情報rを含む。
【0063】
問題工程推論モデルM2は、不良種別情報c及び深刻度情報rの各々に対応付けられた重み量wを有し、問題工程推論部V4は、不良種別情報c及び深刻度情報rの各々に、不良種別情報c及び深刻度情報rの各々に対応付けられた重み量wの各々を演算し、問題工程情報Ppを算出する。
【0064】
推論方法は、被検査対象物の撮像画像Iに基づいて、被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルM1と、品質不良情報Prに基づいて、品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルM2とを用意し、撮像画像Iに基づいて、品質不良推論モデルM1を用いて品質不良を推論し、品質不良情報Prを出力し、品質不良情報Prに基づいて、問題工程推論モデルM2を用いて問題工程を推論し、問題工程情報Ppを出力する。
【0065】
推論プログラムは、被検査対象物の撮像画像Iに基づいて、被検査対象物の品質不良の推論を行うように学習された品質不良推論モデルM1を用いて品質不良を推論し、品質不良情報Prを出力する品質不良推論部E3のプログラムと、品質不良情報Prに基づいて、品質不良の原因となった問題工程の推論を行うように学習された問題工程推論モデルM2を用いて問題工程を推論し、問題工程情報Ppを出力する問題工程推論部V4のプログラムと、を有する。
【0066】
なお、実施形態では、推論システム1は、回路チップの生産工程において、被検査対象物を回路チップとするものであるが、これに限定されない。例えば、推論システム1は、他の電気部品の生産工程において、他の電気部品を被検査対象物とするものであってもよいし、自動車部品等の機械部品の生産工程において、機械部品を被検査対象物とするものであってもよいし、食品の生産工程において、食品の包装を被検査対象物とするものであってもよい。
【0067】
なお、実施形態では、エッジ10に、画像送信部E1、問題工程送信部E2及び品質不良推論部E3が設けられ、サーバ20に前処理部V1、品質不良学習部V2、問題工程学習部V3及び問題工程推論部V4が設けられる例を説明したが、これに限定されない。例えば、品質不良推論部E3がサーバ20に設けられ、前処理部V1、品質不良学習部V2、問題工程学習部V3及び問題工程推論部V4の一部又はすべてがエッジ10に設けられてもよい。
【0068】
なお、実施形態では、前処理部V1が撮像画像Iを所定分割領域に分割する例を説明した。所定分割領域は、ユーザが所定分割領域の分割数及び分割された画像の解像度を指示入力できるようにしてもよいし、撮像画像Iに応じて最適な所定分割領域の分割数及び分割された画像の解像度を所定演算や機械学習、その他の技術によって判定できるように構成してもよい。
【0069】
本実施形態における各手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。さらに、本実施形態における各手順の各ステップの全てあるいは一部をハードウェアにより実現してもよい。
【0070】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 ・・・推論システム
10・・・エッジ
11・・・制御部
11a・・処理装置
12・・・記憶部
13・・・カメラ
14・・・表示部
20・・・サーバ
21・・・制御部
21a・・処理装置
22・・・記憶部
Ds・・・品質不良情報データベース
E1・・・画像送信部
E2・・・問題工程送信部
E3・・・品質不良推論部
E3a・・選択部
E3b・・種別判定部
I ・・・撮像画像
L1・・・品質不良学習データ
L2・・・問題工程学習データ
M1・・・品質不良推論モデル
M2・・・問題工程推論モデル
Pc・・・正解データ
Pp・・・問題工程情報
Pr・・・品質不良情報
V1・・・前処理部
V2・・・品質不良学習部
V3・・・問題工程学習部
V4・・・問題工程推論部