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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018635
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B62D55/253 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122080
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
(57)【要約】
【課題】弾性突起部のクラックの発生および進展を防止してガイド突起の高耐久化を図ることができる弾性クローラを供する。
【解決手段】無端帯状に形成される弾性材料からなるクローラ本体11の内周面にクローラ周方向に一定の間隔を空けて突出形成された複数の弾性突起部13と、弾性突起部13の表面を覆う樹脂材料からなる樹脂被覆部材14とを備え、弾性突起部13を樹脂被覆部材14が覆うことでガイド突起15が構成される弾性クローラ10において、ガイド突起15の樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の上に被せられて弾性突起部13の根本部分13rを除く表面を覆い、弾性突起部13の少なくとも根本部分13rに弾性突起部13の側面13bに沿って補強繊維25が埋設されることを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状に形成される弾性材料からなるクローラ本体(11)と、
前記クローラ本体(11)の内周面に、クローラ周方向に一定の間隔を空けて突出形成された複数の弾性突起部(13)と、
前記弾性突起部(13)の表面を覆う樹脂材料からなる樹脂被覆部材(14)と、を備え、
前記弾性突起部(13)を前記樹脂被覆部材(14)が覆うことでガイド突起(15)が構成される弾性クローラ(10)において、
前記ガイド突起(15)の前記樹脂被覆部材(14)は、前記弾性突起部(13)の上に被せられて前記弾性突起部(13)の根本部分(13r)を除く表面を覆い、
前記弾性突起部(13)の少なくとも根本部分(13r)に前記弾性突起部(13)の側面(13b)に沿って補強繊維(25)が埋設されることを特徴とする弾性クローラ。
【請求項2】
前記樹脂被覆部材(14)は、前記弾性突起部(13)の頂面を覆う頂壁部(14a)と前記頂壁部(14a)に連続して前記弾性突起部(13)の側面(13b,13c)を覆う側壁部(14b,14c)とからなり、
前記樹脂被覆部材(14)の前記頂壁部(14a)と前記側壁部(14c)が連続する角部(14ac)が内側に膨出して厚肉部(14T)が形成されることを特徴とする請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記樹脂被覆部材(14)の内面に、凹部(14s)と凸部(14s)の少なくとも一方が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状に形成される弾性材料からなる弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性クローラは、駆動輪により回動させられるべく駆動輪のスプロケット等に係合するガイド突起がクローラ内周面に一定の間隔を空けて複数設けられている。
ガイド突起は、弾性材料からなる無端帯状部材の内周面に突出して形成された弾性突起部が基本構造となっている。
【0003】
ガイド突起が弾性突起部のみからなると、駆動輪のスプロケット等の当接による摩耗や破損等の損傷が予想されるため、弾性突起部の表面を樹脂被覆部材で覆うことで、損傷を抑制する先行例(例えば、特許文献1,2,3等参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-62826号公報
【特許文献2】WO2020/080448 A1
【特許文献3】特開2020-93698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に開示された弾性クローラは、ガイド突起の表面を樹脂化したものであり、弾性突起部の表面に樹脂被覆部材が、全部または一部が食い込んで埋設されている。
樹脂被覆部材は、突出した弾性突起部の頂面と側面を覆うが、弾性突起部の側面に食い込んだ樹脂被覆部材の側壁部の端部の端面が弾性部材との界面を形作るので、界面での剛性段差により歪が集中してクラックが発生し易い。
【0006】
これに対して、特許文献3は、弾性突起部の上に樹脂被覆部材が被せられて弾性突起部の全表面を覆っている。
樹脂被覆部材は、弾性突起部の上に被せられて、弾性部材に埋設されていないので、弾性部材の樹脂部材との間にクラックを生じるような界面がない。
しかし、弾性突起部の全表面を覆う樹脂被覆部材の側壁部の端部が弾性突起部の付け根に位置するので、樹脂被覆部材に外力が作用したときに、弾性突起部の付け根に応力が集中して、クラックが生じ易い。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、弾性突起部を樹脂被覆部材が覆うガイド突起の弾性突起部に生じる歪を抑制して、クラックの発生および進展を防止してガイド突起の高耐久化を図ることができる弾性クローラを供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
無端帯状に形成される弾性材料からなるクローラ本体と、
前記クローラ本体の内周面に、クローラ周方向に一定の間隔を空けて突出形成された複数の弾性突起部と、
前記弾性突起部の表面を覆う樹脂材料からなる樹脂被覆部材と、を備え、
前記弾性突起部を前記樹脂被覆部材が覆うことでガイド突起が構成される弾性クローラにおいて、
前記ガイド突起の前記樹脂被覆部材は、前記弾性突起部の上に被せられて前記弾性突起部の根本部分を除く表面を覆い、
前記弾性突起部の少なくとも根本部分に前記弾性突起部の側面に沿って補強繊維が埋設されることを特徴とする弾性クローラである。
【0009】
この構成によれば、ガイド突起の樹脂被覆部材は、弾性突起部の上に被せられて弾性突起部の表面を覆うので、樹脂被覆部材が弾性突起部に埋設されず、弾性突起部と樹脂被覆部材との間に界面がなく、界面の剛性段差によるクラックは発生しない。
【0010】
また、樹脂被覆部材は、弾性突起部の根本部分を除く表面を覆うので、樹脂被覆部材に外力が作用したときに、弾性突起部の根本部分が屈曲することで、弾性突起部の付け根に歪が集中せず、弾性突起部の付け根にクラックが発生するのを防止することができる。
【0011】
さらに、弾性突起部の少なくとも根本部分に前記弾性突起部の側面に沿って補強繊維を埋設して、弾性突起部の屈曲する根本部分を補強することにより、弾性突起部の根本部分の屈曲による歪を抑制し、クラックの発生および進展を防止して高耐久化を図ることができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、
前記樹脂被覆部材は、前記弾性突起部の頂面を覆う頂壁部と前記頂壁部に連続して前記弾性突起部の側面を覆う側壁部とからなり、
前記樹脂被覆部材の前記頂壁部と前記側壁部が連続する角部が内側に膨出して厚肉部が形成される。
【0013】
この構成によれば、無端帯状のクローラ本体を環状に張設する駆動輪および従動輪等の当たりが厳しいガイド突起の樹脂被覆部材の頂壁部と側壁部が連続する角部を内側に膨出して厚肉部を形成して、特に角部の樹脂を厚めにすることで、ガイド突起の耐久性を高めることができる。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、樹脂被覆部材の内面に、凹部と凸部の少なくとも一方が形成される。
【0015】
この構成によれば、樹脂被覆部材の内面に凹部と凸部の少なくとも一方が形成されることで、弾性突起部と樹脂被覆部材の接着力を高めることができ、弾性突起部と樹脂被覆部材の互いのすれを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、樹脂被覆部材は弾性突起部の上に被せられて弾性突起部の表面を覆うので、弾性突起部の樹脂被覆部材との間に界面がなく、剛性段差によるクラックは発生しない。
また、樹脂被覆部材は、弾性突起部の根本部分を除く表面を覆うので、弾性突起部の根本部分が屈曲して、弾性突起部の付け根にクラックが発生するのを防止できる。
さらに、弾性突起部の少なくとも根本部分に前記弾性突起部の側面に沿って補強繊維を埋設して、弾性突起部の屈曲する根本部分を補強することにより、弾性突起部の根本部分の屈曲による歪を抑制し、クラックの発生および進展を防止して高耐久化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る弾性クローラを用いたクローラ走行装置の側面図である。
図2】弾性クローラを一部断面として示した斜視図である。
図3】弾性クローラの内周面を示す平面図である。
図4】ガイド突起を示す斜視図である。
図5】弾性クローラを切断し、かつクローラ本体の弾性突起部から樹脂被覆部材を外し分解して示した斜視図である。
図6図3のVI-VI矢視で示した弾性クローラの断面図である、
図7図3のVII-VII矢視で示した弾性クローラの断面図である、
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性クローラ10を用いたクローラ走行装置1の側面図である。
クローラ走行装置1は、トラクターやコンバイン等の農業用車両またはミニショベルやブルドーザー等の建設用車両に装着されて走行装置として用いられる。
【0019】
本クローラ走行装置1は、駆動輪2と2つの従動輪3,4が三角形の頂点に配置されて車両(図示せず)に取り付けられており、駆動輪2と従動輪3と従動輪4に、無端帯状に構成される弾性クローラ10が巻き掛けられている。
従動輪3と従動輪4が底辺の前後に位置し、従動輪3と従動輪4から等距離にある上方位置に駆動輪2が位置して、弾性クローラ10は、これらに2等辺三角形状を構成して巻き掛けられている。
【0020】
そして、弾性クローラ10における従動輪3と従動輪4との間に掛け渡される地面に接する部分には、3つ転輪5が前後に配列されている。
転輪5も車両に取り付けられている。
かかるクローラ走行装置1は、車両の車幅方向両側に取り付けられ、互いに独立に駆動することができる。
【0021】
弾性クローラ10は、無端帯状に形成される弾性材料であるゴムからなるクローラ本体11を本体としており、クローラ本体11の地面に接する外周面には、クローラ周方向(クローラ本体の回動方向)に一定の間隔を空けて複数のラグ12が突出形成され、クローラ本体11の内周面には、クローラ周方向に一定の間隔を空けて複数の弾性突起部13が突出形成されている。
ラグ12と弾性突起部13はクローラ本体11とともに一体成形することができる。
または、ラグ12と弾性突起部13はクローラ本体11に加硫接着することが可能である。
【0022】
図2は、本弾性クローラを一部断面として示した斜視図であり、同図2を参照して、個々のラグ12は概ね台形状に突出しており、クローラ本体11の外周面のクローラ幅方向で中央から両側に斜めに延びて、クローラ周方向に複数配列される。
また、個々の弾性突起部13はクローラ幅方向に長尺の概ね台形状に突出しており、クローラ本体11の内周面のクローラ幅方向中央に、クローラ周方向に一定の間隔を空けて複数配列されている。
【0023】
本弾性クローラ10は、弾性突起部13の表面を樹脂材料からなる樹脂被覆部材14が覆うことで、ガイド突起15が構成されている。
なお、本弾性クローラ10は、芯金レスゴムクローラであり、クローラ本体11に芯金は使用されていない。
【0024】
本弾性クローラ10を一部断面として示した斜視図である図2を参照して、クローラ本体11には、スチールコード層21および1層または複数層の補強プライ22がクローラ本体11のクローラ周方向全周に亘って埋設されている。
【0025】
スチールコード層21は、クローラ周方向に平行に延びる複数本のスチールコードからなる。
補強プライ22は、スチールコード層21よりもクローラ外周側に配設されており、クローラ周方向に対して傾斜または直交した複数本のコードが配列された補強層である。
【0026】
図3は、弾性クローラ10のクローラ本体11の内周面を示す平面図である。
図3に示すように、平面視で、ガイド突起15は、クローラ幅方向に長尺の長方形をして、クローラ本体11のクローラ幅方向の中央に、クローラ周方向に一定の間隔を空けて、配列されている。
【0027】
図4は、弾性クローラ10の内周面に突出して設けられたガイド突起15を示す斜視図である。
ガイド突起15の樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の上に被せられて弾性突起部13の根本部分13rを除く表面を覆っている。
図5は、図4の斜視図で示す弾性クローラ10において、弾性クローラ10を切断し、かつクローラ本体11の弾性突起部13から樹脂被覆部材14を外して、両者を分解して示した斜視図である。
【0028】
図5を参照して、前記したように、弾性突起部13は、クローラ本体11の内周面に台形状に突出形成されており、クローラ幅方向に長尺の長方形状をなす頂面13aと、同頂面の4つの辺から連続する4つの等脚台形状をなす側面13b,13b,13c,13cを有する。
【0029】
弾性突起部13の4つの側面13b,13b,13c,13cは、クローラ周方向で互いに対応するクローラ周方向側面13b,13bと、クローラ幅方向で互いに対応するクローラ幅方向側面13c,13cとからなる。
クローラ周方向側面13b,13bは、互いに突出方向に間隔を狭めて傾斜している。
クローラ幅方向側面13c,13cも。互いに突出方向に間隔を狭めて傾斜している。
【0030】
この弾性突起部13の上に被せられる樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の頂面13aと4つの側面13b,13b,13c,13cを覆う。
すなわち、樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の頂面13aを覆う頂壁部14aと、同頂壁部14aの4つの辺から連続して弾性突起部13の4つの側面13b,13b,13c,13cを覆う4つの側壁部14b,14b,14c,14cとからなる。
【0031】
樹脂被覆部材14の4つの側壁部14b,14b,14c,14cは、弾性突起部13のクローラ周方向側面13b,13bを覆うクローラ周方向側壁部14b,14bと、弾性突起部13のクローラ幅方向側面13c,13cを覆うクローラ幅方向側壁部14c,14cとからなる。
クローラ周方向側壁部14bとクローラ幅方向側壁部14cは互いに連続している。
【0032】
そして、樹脂被覆部材14の4つの側壁部14b,14b,14c,14cは、弾性突起部13の4つの側面13b,13b,13c,13cを、弾性突起部13の根本部分13rを除いて覆う。
したがって、樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の根本部分13rの表面を除いた表面を全て覆うことになる。
【0033】
ここに、クローラ本体11の弾性突起部13を除く平坦な面を平坦内周面11pとすると、図6および図7を参照して、弾性突起部13の根本部分13rとは、平坦内周面11pから任意の高さ(クローラ厚み方向の高さ)hまでの領域の部分をいう。
したがって、樹脂被覆部材14の側壁部14b,14b,14c,14cの下端縁は、平坦内周面11pから高さhの高さにある(図7参照)。
【0034】
また、図5に示されるように、樹脂被覆部材14の内面は、シボ加工が施されて細かい凹凸14sが全面に形成されている。
樹脂被覆部材14が弾性突起部13の上に被せられ、樹脂被覆部材14の凹凸14sが形成された内面が弾性突起部13の表面に接着材を介して圧着されると、樹脂被覆部材14の凹凸14sが弾性突起部13の表面に食い込んで、互いの接着力を高め、弾性突起部13に対する樹脂被覆部材14のずれを防止することができる。
【0035】
なお、樹脂被覆部材14の内面は、シボ加工のほかに、エンボス加工により凹凸を形成してもよく、さらには、凹部または凸部の少なくとも一方を有するように加工してもよい。
【0036】
図6は、図3のVI-VI矢視で示した弾性クローラ10の断面図であり、図7は、図3のVII-VII矢視で示した弾性クローラ10の断面図である。
図7に示されるように、樹脂被覆部材14は、頂壁部14aからクローラ幅方向側壁部14c,14cに連続する角部14acが内側に膨出して厚肉部14Tが形成されている。
【0037】
本実施形態の弾性クローラ10においては、クローラ本体11に、弾性突起部13ごとに補強繊維である有機繊維25が埋設される。
有機繊維25は、帯状に構成されており、図5および図6に示されるように、弾性突起部13の頂面13aと同頂面13aから連なるクローラ周方向側面13b,13b、さらにクローラ周方向側面13b,13bから連なるクローラ本体11の平坦内周面11p,11pに沿って、面が変化する角部で屈曲しながらクローラ周方向に連続してクローラ本体11に埋設される。
【0038】
図7に示されるように、有機繊維25は、弾性突起部13の頂面13aに沿って、クローラ本体11のクローラ幅方向の中央に埋設され、本ガイド突起15の場合、樹脂被覆部材14の両側の厚肉部14T,14Tの間に配設されている。
【0039】
以上のように、弾性クローラ10は構成されており、クローラ本体11の内周面のクローラ幅方向の中央に、クローラ周方向に一定の間隔を空けて配列されたガイド突起15を利用して、駆動輪2が、弾性クローラ10を回動してクローラ走行装置1を走行させる。
駆動輪2は、図1に示されるように、かご型スプロケットであり、回転軸2cを中心に等距離に周方向に同一ピッチで複数のピン2pが回転軸2cに平行に配置されている。
なお、駆動輪のスプロケットの構成は、適宜変更することができる。
【0040】
駆動輪2が回転軸2cを中心に回転すると、図1および図6に示すように、各ピン2pは、それぞれ、当該ピン2pに対応する弾性クローラ10のガイド突起15のクローラ周方向側面(樹脂被覆部材14のクローラ周方向側壁14bの側面)に対して順次接触して押圧することで、弾性クローラ10を回動する。
【0041】
ガイド突起15の樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の上に被せられて弾性突起部13の表面を覆うので、弾性突起部と樹脂被覆部材との間に界面がなく、樹脂被覆部材14のクローラ周方向側壁14bが駆動輪2のピン2pにより押圧されても、界面の剛性段差によるクラックは発生しない。
【0042】
また、樹脂被覆部材14は、弾性突起部13の根本部分13rを除く表面を覆うので、樹脂被覆部材14のクローラ周方向側壁14bに駆動輪2のピン2pが押圧したときに、弾性突起部13の根本部分13rが屈曲することで、弾性突起部13の付け根(弾性突起部13のクローラ本体11の平坦内周面11pとの境目部分)に応力が集中せず、弾性突起部13の付け根にクラックが発生するのを防止することができる。
【0043】
有機繊維25が、クローラ本体11のクローラ幅方向の中央であって、弾性突起部13の頂面13aからクローラ周方向側面13b、さらにクローラ本体11の平坦内周面11pに沿ってクローラ周方向に連続して、クローラ本体11に埋設されている。
有機繊維25は、特に弾性突起部13の根本部分13rに弾性突起部13のクローラ周方向側面13bに沿って埋設されて、弾性突起部13の屈曲する根本部分13rを補強しているので、弾性突起部13の根本部分13rの屈曲による歪を抑制し、クラックの発生および進展を防止して高耐久化を図ることができる。
【0044】
本クローラ走行装置1では、弾性クローラ10における従動輪3と従動輪4との間に掛け渡される地面に接する部分に、3つ配列される転輪5は、図7(および図1)を参照して、クローラ幅方向に離れて配置された一対の転輪本体5a,5aと、一対の転輪本体5a,5aを連結する連結回転軸5cとを備えている。
なお、転輪本体5aの外周面は、弾性材料からなる弾性被覆部5bによって被覆されている。
【0045】
図7に示されるように、転輪5は、一対の転輪本体5a,5aが、弾性クローラ10の内周面に突出したガイド突起15を間に位置させて配置される。
一対の転輪本体5a,5aの外周面に被覆された弾性被覆部5b,5bが、クローラ本体11の弾性突起部13のクローラ幅方向の両側の平坦内周面11pに接し、一対の転輪本体5a,5aを連結する連結回転軸5cは、ガイド突起15の樹脂被覆部材14の頂碧14aより上方に位置する。
【0046】
したがって、転輪5は、一対の転輪本体5a,5aの外周面の弾性被覆部5b,5bが回動する弾性クローラ10の弾性突起部13のクローラ幅方向の両側の平坦内周面11pに接して、弾性クローラ10の同平坦内周面11p上を転動する。
【0047】
また、一対の転輪本体5a,5aにおけるガイド突起15の樹脂被覆部材14の傾斜したクローラ幅方向側壁部14c,14cに対向する面は、クローラ幅方向側壁部14c,14cの傾斜した壁面と平行になるようにテーパ面5at,5atを形成している(図7参照)。
【0048】
転輪5は、一対の転輪本体5a,5aがそのテーパ面5at,5atをガイド突起15のクローラ幅方向側壁部14c,14cに対向させて、ガイド突起15をクローラ幅方向両側から挟むようにしているので、ガイド突起15は、クローラ幅方向側壁部14c,14cの傾斜面に転輪本体5a,5aのテーパ面5at,5atが接することによって、転輪5をクローラ幅方向にガイドする。
【0049】
これにより、弾性クローラ10が転輪5の転輪本体5a,5aから外れる所謂弾性クローラ10の脱輪が抑制される。
なお、本クローラ走行装置1では、従動輪3.4も転輪5と同様に構成されている。
そのため、弾性クローラ10が従動輪4から脱輪することも抑制される。
【0050】
なお、本クローラ走行装置1においては、図7を参照して、クローラ本体11の平坦内周面11pから高さhにある樹脂被覆部材14の側壁部14b,14b,14c,14cの下端縁は、転輪5の転輪本体5aの外周面の弾性被覆部5bのクローラ厚み方向の厚さより下の高さに設定されている。
ただし、樹脂被覆部材14の側壁部14c,14cは下部が内側に屈曲する変曲点を有しているため、樹脂被覆部材14が転輪5の弾性被覆部5bに直接接触することが回避されている。
これにより弾性被覆部5bが噛み込まれることを抑制可能となる。
【0051】
図7を参照して、弾性クローラ10に大きな外力が加わり、転輪5に対して弾性クローラ10がクローラ幅方向に対して傾くことがあると、転輪5の転輪本体5aのテーパ面5atに、ガイド突起15の樹脂被覆部材14のクローラ幅方向側壁部14cが平行でなくなり、樹脂被覆部材14の頂壁部14aからクローラ幅方向側壁部14cに連続する角部14acが当接することがある。
【0052】
また、従動輪3.4の場合も同様である。
転輪5、従動輪3.4による樹脂被覆部材14の頂壁部14aとクローラ幅方向側壁部14cの角部14acへの当接は、面接触ではないので、厳しいものとなる。
【0053】
したがって、ガイド突起15の樹脂被覆部材14の頂壁部14aからクローラ幅方向側壁部14cに連続する角部14acは、特に強度が要求される部位であり、本弾性クローラ10では、頂壁部14aとクローラ幅方向側壁部14cの角部14acを内側に膨出して厚肉部14Tを形成することで、ガイド突起15の耐久性を高めている。
なお、この場合の厚肉部14Tは、弾性突起部13のクローラ周方向全てにわたって形成されているが、リブ状に形成してもよい。
これにより厚肉部14Tは、幅方向断面で視たときに、樹脂と弾性部が交互に形成されるので、接着面積が広くなり、より剥がれにくくなる。
【0054】
以上、本発明に係る一実施形態に係る弾性クローラについて説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。
【0055】
例えば、本実施形態の弾性クローラ10は、有機繊維25が弾性突起部13の頂面13aからクローラ周方向側面13b、さらにクローラ本体11の平坦内周面11pに沿ってクローラ周方向に連続してクローラ本体11に埋設されているが、補強繊維は弾性突起部13の少なくとも根本部分13rに弾性突起部13のクローラ周方向側面13bに沿って埋設されればよい。
【0056】
また、本実施形態におけるクローラ走行装置1は、駆動輪2と2つの従動輪3,4が三角形の頂点に配置されて、弾性クローラ10が巻き掛けられているが、クローラ走行装置の構成に応じて変化し、従動輪や転輪も少なくとも1つとすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…クローラ走行装置、2…駆動輪、2c…回転軸、2p…ピン、3,4…従動輪、5…転輪、5a…転輪本体、5at…テーパ面、5b…弾性被覆部、5c…連結回転軸、
10…弾性クローラ、11…クローラ本体、11p…平坦内周面、12…ラグ、
13…弾性突起部、13r…根本部分、13b…クローラ周方向側面、13c…クローラ幅方向側面、
14…樹脂被覆部材、14a…頂壁部、14b…クローラ周方向側壁部、14c…クローラ幅方向側壁部、14ac…角部、14T…厚肉部、14s…凹凸、
15…ガイド突起、
21…スチールコード層、22…補強プライ、25…有機繊維。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7