(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018637
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122083
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤江 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】森本 康治
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA03
5K033BA06
5K033DA01
5K033DB25
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】マスターノードとスレーブノードとの間の通信容量を出来る限り小さくする。
【解決手段】マスターノードと、各操作デバイスとそれぞれ接続され、マスターノードからの操作命令信号に基づいて、各操作デバイスにオン/オフ信号を出力する複数のスレーブノードと、を備え、各スレーブノードは、各操作デバイスを動作させるためのオン/オフ信号の1サイクル分のパターンである動作パターンを複数記憶しているとともに、マスターノードから各動作パターンのうち出力すべき動作パターンを指定する操作命令信号が入力されたときに、対応するパターンのオン/オフ信号により対応する操作デバイスを動作させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されかつそれぞれがオン/オフ信号により作動する複数の操作デバイスを制御する車両制御システムであって、
マスターノードと、
前記各操作デバイスとそれぞれ接続され、前記マスターノードからの操作命令信号に基づいて、前記各操作デバイスにオン/オフ信号を出力する複数のスレーブノードと、を備え、
前記各スレーブノードは、前記各操作デバイスを動作させるためのオン/オフ信号の1サイクル分のパターンである動作パターンを複数記憶しているとともに、前記マスターノードから前記各動作パターンのうち出力すべき動作パターンを指定する出力信号が入力されたときに、対応するパターンのオン/オフ信号により対応する前記操作デバイスを動作させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記マスターノードは、前記動作パターンを前記各スレーブノードにそれぞれ記憶させるべく、前記各スレーブノードをそれぞれコンフィグレーションすることを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記マスターノードは、前記動作パターンを指定する操作命令信号と共に、該操作命令信号による制御の即時実行を指示する特定情報を前記各スレーブノードにそれぞれ送信可能に構成されており、
前記スレーブノードは、前記操作命令信号に加えて、前記特定情報を受信したときには、現在実行中の操作を停止させて、新たに受信した操作命令信号に対応するパターンのオン/オフ信号により前記操作デバイスを動作させるように構成されていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両制御システムにおいて、
前記操作デバイスは、ドアロック装置のドアロック駆動モータを含み、
前記各スレーブノードうち前記ドアロック駆動モータを作動させるスレーブノードは、ドアロックをオフにする前記操作命令信号に加えて、前記特定情報を受信したときには、現在実行中の制御を停止させて、ドアロックをオフにすべく前記ドアロック駆動モータを動作させるように構成されていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記マスターノードは、前記動作パターンに加えて、前記操作デバイスを当該動作パターンで動作させる回数を指定する情報を、前記各スレーブノードにそれぞれ送信可能に構成されていることを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両制御システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載デバイスの電動化が顕著であり、車載デバイスを電子制御により制御するようになっている。
【0003】
特許文献1には、車載ネットワークを介してECU同士が接続され、それぞれのECUにセンサやアクチュエータ等の機器が接続されている車載ネットワークの構成例が示されている(特許文献1の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、車載デバイスの電子化が著しく、エンジンなどの動力源のみでなく、ドアロック装置やターンランプなどの所謂ボディ系装置も電子制御により動作するようになっている。このような車載デバイスの電子化に伴って、通信のためのワイヤーハーネスの数が膨大になるという課題が生じていた。これに対応するために、例えばCAN(Controller Area Network)などの多重通信規格によりワイヤーハーネスの数を削減することが行われている。
【0006】
しかしながら、CANなどの通信規格では、車載デバイス毎に専用のマイコンを設ける必要があり、車載デバイスのコストが高くなって、延いては車両自体の製造コストが高くなるという問題があった。そこで、専用のマイコンを有する制御装置(マスターノード)と、汎用の制御回路(スレーブノード)とで構成され、これらの間で通信を行うことが可能な通信方式であるCXPI(Clock Extension Peripheral Interface)の導入が検討されている。
【0007】
前述のようなCXPIの通信方式では、複数のイベントが同時に発生した場合には、非破壊型の調停が実施され、調停に勝利したスレーブノードが優先される。このため、スレーブノードが多数ある場合には、マスターノードと各スレーブノードとの間の通信容量が膨大になることに加えて、インターバルが長くなって、応答性が悪化するおそれがある。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マスターノードとスレーブノードとの間の通信容量を出来る限り小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、車両に搭載されかつそれぞれがオン/オフ信号により作動する複数の操作デバイスを制御する車両制御システムを対象として、マスターノードと、前記各操作デバイスとそれぞれ接続され、前記マスターノードからの操作命令信号に基づいて、前記各操作デバイスにオン/オフ信号を出力する複数のスレーブノードと、を備え、前記各スレーブノードは、前記各操作デバイスを動作させるためのオン/オフ信号の1サイクル分のパターンである動作パターンを複数記憶しているとともに、前記マスターノードから前記各動作パターンのうち出力すべき動作パターンを指定する操作命令信号が入力されたときに、対応するパターンのオン/オフ信号により対応する前記操作デバイスを動作させる、という構成とした。
【0010】
この構成によると、マスターノードは各スレーブノードに対して動作パターンを指定するだけでよくなる。これにより、指令がかなり簡易化されて、マスターノードとスレーブノードとの間の通信容量を小さくすることができる。
【0011】
前記車両制御システムにおいて、前記マスターノードは、前記動作パターンを前記各スレーブノードにそれぞれ記憶させるべく、前記各スレーブノードをそれぞれコンフィグレーションする、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、スレーブノードに記憶されている動作パターンを適宜変更することができる。これにより、操作デバイスの仕様が変更されたとしても、変更後の操作デバイスに対応した動作パターンを改めてスレーブノードに記憶させれば、変更後の操作デバイスを適切に動作させることができる。
【0013】
前記車両制御システムにおいて、前記マスターノードは、前記動作パターンを指定する操作命令信号と共に、該操作命令信号による操作の即時実行を指示する特定情報を前記各スレーブノードにそれぞれ送信可能に構成されており、前記スレーブノードは、前記操作命令信号に加えて、前記特定情報を受信したときには、現在実行中の操作を停止させて、新たに受信した操作命令信号に対応するパターンのオン/オフ信号により前記操作デバイスを動作させるように構成されている、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、ドアロックの解除など緊急性が高い操作であっても適切に実行することができる。特に、マスターノードからスレーブノードに対してパターンを指定するようにして、通信容量を削減しているため、緊急性の高い操作を応答性良く実行することができる。
【0015】
特定信号による即時実行が可能な前記車両制御システムにおいて、前記操作デバイスは、ドアロック装置のドアロック駆動モータを含み、前記各スレーブノードうち前記ドアロック駆動モータを作動させるスレーブノードは、ドアロックをオフにする前記操作命令信号に加えて、前記特定情報を受信したときには、現在実行中の制御を停止させて、ドアロックをオフにすべく前記ドアロック駆動モータを動作させるように構成されている、という構成でもよい。
【0016】
この構成よると、ドアロックの解除という緊急性が高い操作を応答性よく適切に実行することができる。
【0017】
前記車両制御システムにおいて、前記マスターノードは、前記動作パターンに加えて、前記操作デバイスを当該動作パターンで動作させる回数を指定する情報を前記各スレーブノードにそれぞれ送信可能に構成されている、という構成でもよい。
【0018】
この構成よると、ターンランプのように周期性を持って作動する操作デバイスの操作を簡易化することができる。また、マスターノードとスレーブノードとの間の通信の回数を削減できるため、マスターノードとスレーブノードとの間の通信容量をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、マスターノードとスレーブノードとの間の通信容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、マスターノードとスレーブノードの機能分配の一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、マスターノードの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、スレーブノードの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、ドライバ群の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図6】
図6は、車両制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ドアロック駆動モータを操作するスレーブノードに記憶された動作パターンを例示する図である。
【
図8】
図8は、ターンLEDを操作するスレーブノードに記憶された動作パターンを例示する図である。
【
図9】
図9は、動作パターンを複数回実行する命令セットによりターンLEDを動作させる場合の模式図である。
【
図10】
図10は、ドアロック駆動モータを動作させる場合のフローチャートである。
【
図11】
図11は、ターンLEDを動作させる場合のフローチャートである。
【
図12】
図12は、ドアロック駆動モータを即時動作させる場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本開示において、「システム」「ユニット」「モジュール」「ノード」という用語が示す構成に関し、その一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはPLA(Programmable Logic Array)等の専用回路によって実現され得る。また、その一部または全部は、コンピュータで読み取り可能な命令(例えばプログラム)を実行して、所定の処理ステップを実行することにより特定の機能を実行させるプロセッサ回路によって実現され得る。
【0023】
また、以下の説明において、「車載デバイス」とは、車両CAに搭載されたデバイスであって、センサ及び操作対象となるデバイス(モータやLEDなど)の少なくとも一方を有するものを示す。車載デバイスのうち特に操作対象となるデバイスを示すときには、単に操作デバイスということがある。
【0024】
(車両制御システムの構成)
図1は、実施形態の車両制御システムの構成の一例を示す。
【0025】
図1に示すように、車両制御システム1は、車両CAに搭載されており、マスターノード2と複数のスレーブユニットとが車載の通信ネットワークを介して接続された構成となっている。
【0026】
図1の例では、複数のスレーブユニットとして、コンビスイッチユニット4、左右のサイドミラーユニット5、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、オーバーヘッドコンソールユニット32、左右のシートヒーターユニット33、及び、左右のドアロックユニット34を例示している。各スレーブユニットは、それぞれに共通の構成を有するスレーブノード7(
図4参照)が搭載されたユニットである。便宜上、サイドミラーユニット5、ドアロックユニット34、シートヒーターユニット33は、それぞれ左右で共通の符号を付すものとする。
【0027】
マスターノード2と各スレーブノード7との間は、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)に準拠した通信回線Bで接続されている。
【0028】
具体的に、マスターノード2と、複数のスレーブユニット(この例では、コンビスイッチユニット4、ステアリングスイッチユニット6、クラスタースイッチユニット31、右のサイドミラーユニット5、右のシートヒーターユニット33、右のドアロックユニット34)とが、通信回線B1でバス接続されている。また、マスターノード2と、他の複数のスレーブユニット(この例では、オーバーヘッドコンソールユニット32、左のサイドミラーユニット5、左のシートヒーターユニット33及び左のドアロックユニット34)とが、通信回線B2でバス接続されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、フェールセーフ機能を考慮して、複数(
図1では2つ)の通信回線を備える構成となっている。なお、通信回線B1と通信回線B2とは通信的に接続されていてもよい。また、通信回線数は3つ以上であってもよい。なお、通信方式は、CXPIに限定されず、他の通信方式(有線方式、無線方式を問わない)を用いてもよい。
【0029】
図2は、車両CAの行動に対するマスターノード2とスレーブノード7の機能分配の一例を示す概念図である。
図2では、車両CAの動作工程を、認知工程Iz、判断工程Pz、操作工程Ozに分け、それぞれの工程を細分化している。そして、マスターノード2に分配された機能20を破線で囲み、スレーブノード7に分配された機能30を実線で囲んでいる。
【0030】
以下の説明では、マスターノード2及びスレーブノード7において、認知工程Iz、判断工程Pzおよび操作工程Ozの各工程で実行される処理について、晴天から雨天への天気の変化(以下、単に「天気の変化」という)が起こった場合の例を交えて説明する。
【0031】
〔認知工程〕
認知工程Izでは、車載デバイスに搭載されたセンサの出力信号に基づいて、センサで取得された情報を認知する。本開示において「センサ」との用語は、温度・電圧・電流等の各種の物理量の測定・検知をするセンサに加えて、各種の操作を受け付けるスイッチ、車内外を撮像するカメラ、車外の物標等を認識するレーダ、アクチュエータの機械電気変換信号等を広く含む概念で用いる。センサは、車両の挙動情報、乗員の操作情報、乗員の状態情報及び/または外部環境情報等(以下、総称して「検知情報」という)を取得する。
【0032】
認知工程Izは、スレーブノード7で実行される工程Iz2,Iz3及びマスターノード2で実行される工程Iz4,Iz5を含む。
【0033】
まず、工程Iz1において、車載デバイスに搭載されたセンサで何らかの検知情報が検知される。具体例として、前述の「天気の変化」があった場合、センサとしての雨滴センサ及び受光センサ(図示省略)で検知情報(例えば、雨滴の付着、受光量の変化)が検知される。
【0034】
スレーブノード7では、後述するポートPを介してセンサの出力を受ける(工程Iz2)。ここでの出力には、例えば、センサの検知信号、センサで検出される電流・電圧・温度等の物理量、アクチュエータの機械電気変換信号等が含まれる。
【0035】
次の工程Iz3において、スレーブノード7は、センサ出力のシグナル化処理を行い、検知信号としてマスターノード2に送信する。ここでいうシグナル化処理は、例えば、CXPIに準拠した信号へのプロトコル変換である。
【0036】
すなわち、スレーブノード7では、工程Iz2,Iz3において、入力情報の具体的内容についての認知及び判断は行わずに、センサからの入力を所定の信号形式に変換し、検知信号としてマスターノード2に送信する。
【0037】
マスターノード2では、スレーブノード7から検知信号を受信し(工程Iz4)、その検知信号の経時変化と後述する接続データとに基づいて、センサからスレーブノード7に入力された検知情報の具体的な内容を認知する(工程Iz5)。前述の「天気の変化」の例では、情報化処理により、例えば、フロントガラスを透過する光度が所定値未満になって車外が暗くなっており、かつ、雨が降ってきたという認知情報が得られる。以下の説明では、認知工程で認知された情報を「認知情報」と呼ぶ。
【0038】
〔判断工程〕
判断工程Pzでは、認知工程において認知された認知情報に基づいて車両CAの行動や対応を決定する。判断工程Pzの構成要素である工程Pz1~Pz4は、マスターノード2で実行される。
【0039】
具体的に、工程Pz1において、マスターノード2では、認知工程Izで認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動の目的を決定する。前述の「天気の変化」の例では、例えば「車外環境が暗くなりかつ雨が降ってきた場合に対応したふるまいをする」という目的が決定される。
【0040】
次の工程Pz2において、マスターノード2では、工程Pz1で決定された目的を達成するための行動計画を設定する。このとき、代替手段を含めた行動計画が列挙され、例えば、行動計画をリスト化した行動リストが生成される。例えば、上記の「車外環境が暗くかつ降雨時のふるまい」に対応した行動計画の中には、「ワイパーを作動する」、「車両CAのオートライト機能をオンにする」、「車両CAの上限速度を制限する」といった行動計画が含まれる。
【0041】
次の工程Pz3において、マスターノード2では、行動計画で列挙された行動の中で、実際に実行に移す行動を決定する。例えば、行動リストの中から実際に実行させる行動を選択する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパーを作動する」及び「車両のオートライト機能をオンにする」という行動が、実行対象の行動として選択される。
【0042】
次の工程Pz4において、マスターノード2では、工程Pz3で決定された行動を実現するための手段(以下、「対応手段」ともいう)を選択する。「天気の変化」の例では、例えば、「ワイパーを作動する」及び「車両のオートライト機能をオンにする」という行動に対して、ワイパーユニット(図示省略)、ヘッドライトユニット(図示省略)及びテールライトユニット(図示省略)が選択される。
【0043】
〔操作工程〕
操作工程Ozは、マスターノード2で実行される工程Oz1,Oz2及びスレーブノード7で実行される工程Oz3~Oz5を含む。
【0044】
工程Oz1において、マスターノード2は、判断工程Pzで決定された行動や対応を実現するための操作対象及びその操作量を決定する。ここで、操作対象は、行動や対応を実現するために操作する対象物を広く含むものとし、例えば、照明デバイスとアクチュエータを含む。照明デバイスは、前照灯、インジケータ、ターンランプ等に用いられる各種LEDや電球等を含む。アクチュエータは、ワイパーやミラー駆動用のモータといったボディ系デバイスと、エンジン、ブレーキ等に用いられる動力系デバイスとを含む。
【0045】
前述の「天気の変化」の例では、例えば、ワイパーユニットの操作内容として、フロントガラス用のワイパーをオンすること及びそのワイパーの操作スピードや操作間隔が決定される。また、例えば、ヘッドライトユニット及びテールライトユニットの操作内容として、ヘッドライト及びテールライトを点灯させること及びその照度が決定される。
【0046】
次の工程Oz2において、マスターノード2は、(1)操作対象が接続されたポートP(以下、「操作ポートP」という)を接続データに基づいて特定し、(2)操作ポートPの出力内容を命令する命令コードを生成し、(3)操作ポートPが設けられたスレーブノードに送信する処理を実行する。前述の「天気の変化」の例では、例えば、マスターノード2は、ワイパーが接続された操作ポートPの出力内容を命令する操作命令信号をワイパーユニットに送信し、ヘッドライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す操作命令信号をヘッドライトユニットに送信し、テールライトが接続された操作ポートPの出力内容を示す操作命令信号をテールライトユニットに送信する。
【0047】
各スレーブノード7では、マスターノード2から操作命令信号を受信し、操作命令信号に基づく操作ポートPから命令コードに基づく操作信号を出力する。
【0048】
具体的には、各スレーブノード7は、操作命令信号のプロトコル変換及び/または指定されたレジスタの参照等を経て、操作命令信号に基づいて操作ポートPから出力する信号を生成する(工程Oz3)。そして、操作命令信号で指定された操作ポートPから操作デバイスに対して操作信号を出力する(工程Oz4)。これにより、(1)ワイパーユニットではワイパーが駆動され、(2)ヘッドライトユニットではヘッドライトが点灯され、(3)テールライトユニットではテールライトが点灯される。
【0049】
次に、マスターノード2及びスレーブノード7の構成について詳細に説明する。
図3は、マスターノード2の構成の一例を示すブロック図であり、
図4は、スレーブノード7の構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
図3に例示するマスターノード2は、通信モジュール21と、認知モジュール22と、判断モジュール23と、操作モジュール24と、メモリ25とを備える。
【0051】
マスターノード2は、例えば、1つまたは複数の電子制御ユニット(ECU)により構成される。電子制御ユニットは、単一のIC(Integrated Circuit)を用いて構成されてもよいし、複数のICを用いて構成されてもよい。また、IC内には、単一のコアまたはダイが設けられてもよいし、連携する複数のコアまたはダイが設けられてもよい。
【0052】
通信モジュール21は、通信回線Bを介して各スレーブノード7からの受信信号を受信したり、各スレーブノード7に送信信号を送信したりする機能を有する。
【0053】
メモリ25は、それぞれのスレーブノード7に対応するコンフィグデータ等が格納されている。なお、メモリ25は、上記ECUを構成するICに内蔵された内部メモリであってもよく、上記ICに外付けされた外付けメモリであってもよい。また、メモリには、例えば、上記ICに搭載されたCPUを動作させるためのプログラムが記憶されてもよく、CPUでの処理結果などの情報が記憶されてもよい。
【0054】
認知モジュール22は、前述の認知工程Izのうちの工程Iz4,Iz5の認知処理を実行する。具体的には、認知モジュール22は、メモリに格納された接続データと、スレーブノードから受信される検出信号の経時変化に基づいて、検知デバイスで取得された検知情報を認知する認知処理を実行する。
【0055】
認知モジュール22は、スレーブノード7から受信した検知信号のデコード処理をするデコードモジュール221と、前述の工程Iz5の情報化処理をする情報化モジュール222とを含む。
【0056】
判断モジュール23は、前述の判断工程Pz(Pz1~Pz4)の判断処理を実行する。具体的には、判断モジュール23は、認知モジュール22で実行された認知処理において認知された認知情報に基づいて、車両CAの行動を決定する判断処理を実行する。
【0057】
判断モジュール23は、前述の工程Pz1を実行する目的決定モジュール231と、前述の工程Pz2を実行する行動計画モジュール232と、前述の工程Pz3を実行する行動決定モジュール233と、前述の工程Pz4を実行する対応決定モジュール234とを備える。
【0058】
操作モジュール24は、操作工程Ozのうちの工程Oz1,Oz2の処理を実行する。具体的に、判断処理で決定された車両の行動に対応する操作デバイスを特定し、特定された操作デバイスの操作を命令する操作命令信号を生成して、操作デバイスが接続されたスレーブノードに送信する操作処理を実行する。
【0059】
操作モジュール24は、前述の工程Oz1を実行する操作決定モジュール241と、前述の工程Oz2を実行する命令生成モジュール242とを備える。
【0060】
図4では、
図1に例示したスレーブノード7のうち、コンビスイッチユニット4、右のサイドミラーユニット5(以下、右サイドミラーユニット5という)、及び右のドアロックユニット34(以下、右ドアロックユニット34という)の構成例を示す。
【0061】
図4に示すように、コンビスイッチユニット4、右サイドミラーユニット5、及び右ドアロックユニット34には、それぞれ、共通のスレーブノード7が設けられている。各スレーブノード7には、車載デバイスを接続するためのポートPが設けられている。
【0062】
この例において、コンビスイッチユニット4には、ポートP1~P4にワイパーを操作するワイパースイッチ41、ポートP5~P9にライトを操作するライトスイッチ42、ポートP10,P11にターンライトを操作するターンスイッチ43がそれぞれ接続されている。P12はリザーブ用のポートである。ワイパースイッチ41、ライトスイッチ42及びターンスイッチ43は、車載デバイスのうちのセンサのみを含むものの一例である。
【0063】
右サイドミラーユニット5には、ポートP1,P2にターンライト用のLED51(以下、「ターンLED51」という)、ポートP3~P6にインジケータ用のLED52、ポートP7~P12にミラー格納用のモータ53がそれぞれ接続されている。ここで、ターンLED51、LED52及びモータ53は、車載デバイスのうちの操作デバイスの一例である。特に、モータ53はモータの回転位置を検出する位置センサを有しており、センサと操作デバイスとの両方を有する車載デバイスである。
【0064】
右ドアロックユニット34には、ポートP1にドアロックスイッチ341、ポートP2~P6にドアロック用のドアロック駆動モータ342がそれぞれ接続されている。ドアロック駆動モータ342は、モータの回転位置を検出する位置センサを有しており、センサと操作デバイスとの両方を有する車載デバイスである。なお、
図4では、一部のポートPを省略しているが、右ドアロックユニット34にも12個のポートPがある。
【0065】
各スレーブノード7は、それぞれ、通信モジュール71と、レジスタ72と、セレクタ73と、ドライバ群74と、タイマー75とを備える。
【0066】
通信モジュール71は、通信回線Bを介して後述するマスターノード2の通信モジュール21と接続され、CXPIに準拠した双方向通信ができるように構成されている。通信モジュール71は、例えば、通信回線Bに接続される入出力回路、入出力回路から出力する信号を生成するエンコーダ、入出力回路から出力する信号を変換するデコーダ等を備える。なお、通信モジュール71の具体的な回路構成については、従前から知られている構成を適用できるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0067】
ドライバ群74は、それぞれのポートPに1対1接続された複数のドライバ群740を備える。例えば、スレーブノード7に12個のポートPが設けられている場合、ドライバ群74には、12個のドライバ群740が設けられる。
【0068】
ドライバ群740は、外部設定により入力ポートとして使用したり、出力ポートとして使用したりできるIO回路である。ドライバ群740として、例えば、従来から知られている汎用入出力回路(GPIO : General Purpose Input/Output)を適用することができる。
図5には、ドライバ群740の構成例を示す。
【0069】
図5に例示するドライバ群740は、ポートPに接続された出力回路743と、出力レジスタ742の設定値に基づいて出力回路743を駆動するドライバ回路741とを備える。出力レジスタ742の設定値は、OUT端子から入力された設定信号により書き換えが可能になっている。
【0070】
ドライバ群740は、ポートPへの入力を受ける入力回路745と、入力回路745に受けた入力を検出信号に変換するレシーバ回路746とを備える。レシーバ回路746は、ADコンバータ747と比較器748とを備える。ADコンバータ747は、ポートPの属性がアナログ入力の場合に、ポートPの入力をアナログ-デジタル変換してAI端子から出力する。比較器748は、ポートPの属性がデジタル入力の場合に、ポートPの入力をデジタル信号としてDI端子から出力する。
【0071】
ドライバ群740は、コンフィグ信号に基づいて、各構成要素の設定が変更できるようになっている。例えば、コンフィグ信号に基づいてレシーバ回路746のデジタルフィルタのフィルタ乗数が変更できるようになっている。
【0072】
セレクタ73は、レジスタ72に記録された各ポートPの属性情報に基づいて、それぞれのドライバ群740の端子(OUT端子、AI端子、DI端子)のうち、どの端子を有効にするのかを選択する機能を有する。
【0073】
AI端子が有効にされた場合、ポートPからアナログ入力信号が入力される。この場合、アナログ入力信号は、入力回路745及びADコンバータ747でデジタル信号に変換されてAI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0074】
DI端子が有効にされた場合、ポートPからデジタル入力信号が入力される。この場合、デジタル入力信号は、入力回路745及び比較器748を介してDI端子から出力され、セレクタ73を介してレジスタ72に書き込まれる。
【0075】
OUT端子が有効にされた場合、出力設定情報が、セレクタ73を介してドライバ回路741の出力レジスタ742に反映される。そして、ドライバ回路741は、出力レジスタ742の設定情報に基づいて、出力回路743を介してポートPからデジタル信号、アナログ信号、または、PWM信号のいずれかを出力させる。
【0076】
なお、セレクタの具体的な回路構成については、従来から知られている構成を用いることができるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0077】
レジスタ72には、スレーブノード7毎に設定されたコンフィグデータが格納される。コンフィグデータは、各ポートPの属性データを含む。
【0078】
タイマー75は、水晶発振器などの一定の周波数で動作する発信器と、発信器からクロックをカウントするカウンタとを有する。タイマー75は、例えば、マスターノードから情報が送られてきてからの経過時間などの計測する際に利用される。また、タイマー75は、決まった時間だけ操作デバイスをオンさせる必要があるときに、該操作デバイスをオンさせてからの経過時間を計測する際に利用される。
【0079】
次に、車両制御システムの動作の一例を
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、ステップS1の初期コンフィグレーション処理後において、運転者により、コンビスイッチユニット4に設けられたターンスイッチ43が右ターン側に操作された場合の処理について説明する。
【0080】
車両制御システム1において、電源が投入されると、ステップS1の初期コンフィグレーション処理が実行される。
【0081】
初期コンフィグレーション処理では、マスターノード2から各スレーブノード7に、初期コンフィグデータが送信される。各スレーブノード7では、マスターノード2から受信した初期コンフィグデータをレジスタ72に格納する。そして、各スレーブノード7は、レジスタ72に初期コンフィグデータを格納した後、設定完了の返信をする。なお、初期コンフィグデータがあらかじめ各スレーブノード7に格納されている場合には、ステップS1では何もせずに次のステップに進む。
【0082】
次に、ステップS2において、ターンスイッチ43が右ターン側に操作されると、ターンスイッチ43のデジタルアウトプットポートDORからドライバ群74のポートP10にON設定信号が入力される。
【0083】
次いで、ステップS3において、スレーブノード7は、マスターノード2にイベント通知を送信する。イベント通知では、検知信号領域の変化内容が通知される。
【0084】
次のステップS4において、マスターノード2では、イベント通知の内容に応じた処理(「イベント処理」ともいう)を実行する。イベント処理では、前述の認知工程、判断工程及び操作工程の処理が実行される。
【0085】
この例では、マスターノード2は、認知工程として、ステップS1で受信した検出データと、今回受信した検出データD4との差分データに基づく、情報化処理を実行する。具体的に、マスターノード2は、コンビスイッチユニット4のポートP10の変化と、接続データとに基づいて、ターンスイッチ43が右ターン側に操作されたことを認知する。
【0086】
次に、マスターノード2は、判断工程の工程Pz1~Pz4を経て、「車両CAの右ターンランプ(右サイドミラーユニット5の右ターンランプを含む)をオンにする」という行動が、車両CAの実行対象の行動として決定される。
【0087】
次に、マスターノード2は、操作工程として、右ターンランプが接続されたスレーブノード7を操作対象とし、操作内容として右ターンランプを点滅させることを決定する。そして、マスターノード2は、右ターンランプを点滅させることを命令する操作命令信号を生成し、該操作命令信号を右ターンランプが接続されたスレーブノード7(右サイドミラーユニット5を含む)に送信する。
【0088】
次に、ステップS6において、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号を受信する。
【0089】
次いで、ステップS7において、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号に基づくポートから操作命令信号に基づく操作信号を出力する。具体的には、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7は、操作命令信号に基づいて、ポートP2からオン制御を指示するデジタル形式の操作信号を出力する。
【0090】
次に、ステップS8において、マスターノード2は、操作命令信号を送信したスレーブノード7に対して、操作命令信号に基づく出力設定がされているかどうかを確認するアクノリッジを要求する。そして、次のステップS9において、アクノリッジの要求を受けたスレーブノード7は、操作命令信号に基づく出力設定の状況を示すアクノリッジをマスターノード2に返信する。
【0091】
(タイマー自律制御)
ここで、CXPIのようなイベント型の通信方式では、複数のイベントが同時に発生した場合には、非破壊型の調停が実施され、調停に勝利したスレーブノード7が優先される。このため、前述の様にスレーブノード7が多数設けられている場合には、複数のイベントが同時に発生したときに、スレーブノード7からマスターノード2に通知を送った後、スレーブノード7がマスターノード2からの操作命令信号を受信するまでの時間である通信インターバルが長くなって、応答性が悪化するおそれがある。また、スレーブノード7が多数設けられていると、マスターノード2と各スレーブノード7との間の通信容量が膨大になる。これによっても、通信インターバルが長くなって、応答性が悪化するおそれがある。このため、出来る限り通信インターバルを短くするためにも、マスターノード2と各スレーブノード7との間の通信容量を出来る限り小さくすることが求められている。
【0092】
そこで、本実施形態では、各スレーブノード7に各操作デバイスを動作させるためのオン/オフ信号の1サイクル分のパターンである動作パターンを複数記憶させて、マスターノード2は、各動作パターンのうち出力すべき動作パターンを指定する操作命令信号をスレーブノード7に送信するようにした。そして、マスターノード2から操作命令信号を受信したスレーブノード7は、対応するパターンのオン/オフ信号により操作デバイスを動作させる。
【0093】
図7及び
図8は、スレーブノード7が記憶している動作パターンの一例である。
図7は、ドアロックユニット34においてドアロック駆動モータ342を操作するスレーブノード7(以下、第1スレーブノードという)が記憶している動作パターンである。
図8は、右サイドミラーユニット5のスレーブノード7(以下、第2スレーブノードという)が記憶している動作パターンである。これらの動作パターンは、コンフィグ情報として第1及び第2スレーブノードにそれぞれ記憶されている。なお、スレーブノード7がメモリを有する場合には、メモリにこれらの動作パターンが記憶されていてもよい。
【0094】
ドアロック駆動モータ342は、基本的に、ドアロックをオンにする機能と、ドアロックをオフにする機能の2つの機能のみを有する。このため、
図7に示すように、第1スレーブノードは、ドアロックをオンにするためのパターン1のオン/オフ信号と、ドアロックをオフにするためのパターン2のオン/オフ信号のみを記憶している。
図7に示すように、それぞれの信号はオン時間t
onとオフ時間t
offとがそれぞれ定義されている。パターン1のオン/オフ信号とパターン2のオン/オフ信号とは、オン時間t
on及びオフ時間t
offは同じである。一方で、パターン2のオン/オフ信号では、モータを逆回転させる必要があるため、電圧としてはマイナスになっている。パターン1のオン時間t
onは、ドアをロックできるだけドアロック駆動モータ342を回転させるのに十分な時間に設定されており、パターン2のオン時間t
onについても、ドアロックをオフできるだけドアロック駆動モータ342を逆回転させるのに十分な時間に設定されている。
【0095】
ターンLED51は、方向指示器としてのみならず、ハザードランプとしての機能も有している。このため、
図8に示すように、第2スレーブノードは、複数の動作パターンのオン/オフ信号を記憶していてもよい。
図8に示すパターン1~5は、オンするタイミング(すなわち、最初のオフ時間t
off)及びオン時間t
onの長さがそれぞれ異なり、オンした後にオフするタイミング及びオフ時間t
offは同じである。具体的には、パターン1は、オンするタイミングが最も早くかつオン時間t
onも最も長いオン/オフ信号である。オン/オフ信号は、パターン1に対して、パターン2,3,4,及び5となるに連れてオンするタイミングが遅くなりかつオン時間t
onも短くなる。そして、パターン5が、5つのパターンの中では、オンするタイミングが最も遅くかつオン時間t
onも最も短いオン/オフ信号である。第2スレーブノードが、ここで示すパターン1~5以外の動作パターンを記憶していてもよい。
【0096】
図7及び
図8に示すように、各動作パターンのオン/オフ信号は、オン/オフの時間t
on,t
offが定義されたものである。前述したように、各スレーブノード7はそれぞれタイマー75を有しているため、各スレーブノード7は、動作パターンを指定されれば、指定された動作パターンのオン/オフ信号に定義されたオン/オフのタイミング及びオン/オフの時間に従って、自身のタイマー75により時間を計測しながら自律的に操作デバイスを動作させることができる。つまり、各スレーブノード7は、マスターノード2からオン/オフを逐次指示されずとも、自律的に操作デバイスをオン/オフさせることができるようになる。これにより、マスターノード2と各スレーブノード7との間の通信容量を小さくすることができる。
【0097】
図7及び
図8に示すような動作パターンは、前述したように、マスターノード2が各スレーブノード7をコンフィグレーションすることで、各スレーブノード7にそれぞれ記憶される。操作デバイスが交換されて、動作パターンを変更する必要が生じたときには、マスターノード2が対応するスレーブノード7を再度コンフィグレーションすることで、適切な動作パターンをスレーブノード7に記憶させる。
【0098】
マスターノード2は、各スレーブノード7に対して、動作パターンを指定する操作命令信号のみでなく、操作命令信号による操作の即時実行を指示する特定情報を各スレーブノード7にそれぞれ送信可能に構成されている。この特定情報は、命令セットの一部として、操作命令信号と同時にマスターノード2からスレーブノード7に送信される。特定情報を含む命令セットを受信したスレーブノード7は、現在実行中の操作を停止させて、新たに受信した命令セットの操作命令信号に対応するパターンのオン/オフ信号により操作デバイスを操作する。マスターノード2は、例えば、車両衝突時などには、第1スレーブノードに対して、パターン2を指定する操作命令信号と前記特定情報とを命令セットにして出力して、ドアロックをオフする操作を即時実行させる。
【0099】
また、マスターノード2は、操作命令信号において、動作パターンに加えて、操作デバイスを当該動作パターンで動作させる回数を示す情報を、命令セットの一部として各スレーブノード7にそれぞれ送信可能に構成されている。動作パターンを実行する回数を指定する情報を含む命令セットを受信したスレーブノード7は、指定された動作パターンのオン/オフ信号を連続して指定された回数分実行する。つまり、動作パターンを実行する回数を指定する情報を受信したスレーブノード7は、各サイクルの間にインターバルを設けることなく、指定された動作パターンが1サイクル分終了した直後に次のサイクルを実行する。
【0100】
例えば、
図9に示すように、マスターノード2が、第2スレーブノードに対して、パターン3を3回実行するように指定する命令セットを送信したとする。当該命令セットを受信した第2スレーブノードは、パターン3のオン/オフ信号を連続して3回実行する。具体的には、第2スレーブノードは、1回目のパターン3のオン/オフ信号における後半のオフ時間と2回目のパターン3のオン/オフ信号における前半のオフ時間とが連続し、2回目のパターン3のオン/オフ信号における後半のオフ時間と3回目のパターン3のオン/オフ信号における前半のオフ時間とが連続するように、出力信号を生成して、ターンLED51を作動させる。
【0101】
次に、操作デバイスを操作する際のフローについて
図10~
図12を参照しながら説明する。
【0102】
図10は、ドアロックをオンする際のフローを示す。初期状態として、ドアロックはオフの状態であるとする。
【0103】
まず、ドアロックスイッチ341が押されたときに、ドアロックユニット34の第1スレーブノードは、ドアロックスイッチ341が押されたことをマスターノード2に通知する(ステップS101)。
【0104】
次に、マスターノード2は、ドアロックスイッチ341がオンされたことを認知する(ステップS102)。
【0105】
次いで、マスターノード2は、パターン1を指定する操作命令信号及び実行する回数を1回とする情報を含む命令セット1を生成して、該命令セット1を第1スレーブノードに送信する(ステップS103)。
【0106】
次に、第1スレーブノードは、マスターノード2から命令セット1を受信する(ステップS104)。
【0107】
そして、第1スレーブノードは、マスターノードから受信した命令セット1に従って、パターン1のオン/オフ信号によりドアロック駆動モータ342を作動させる(ステップS105)。
【0108】
命令セット1に指定されたパターン1のオン/オフ信号によるドアロック駆動モータ342の操作が終了した時には、第1スレーブノードは、マスターノード2に命令セット1に基づく操作が完了したことを通知する。
【0109】
以上により、ドアロックをオンにする動作が完了する。
【0110】
図11は、ターンLED51を点滅させる際のフローを示す。
図11は、コンビスイッチユニット4のターンスイッチ43が右ターン側にオンされた後のフローを示している。
【0111】
まず、コンビスイッチユニット4のターンスイッチ43が右ターン側にオンされたときには、マスターノード2は、ターンスイッチ43が右ターン側にオンされたことを認知する(ステップS201)。
【0112】
次に、マスターノード2は、パターン3を指定する操作命令信号及び実行する回数を5回とする情報を含む命令セット1を生成して、該命令セット1を右サイドミラーユニット5の第2スレーブノードに送信する(ステップS202)。
【0113】
次いで、第2スレーブノードは、マスターノード2から命令セット1を受信する(ステップS203)。
【0114】
マスターノード2からの命令セット1を受信した第2スレーブノードは、該命令セット1に従って、パターン3のオン/オフ信号により右サイドミラーユニット5のターンLED51を作動させる(ステップS204)。
【0115】
第2スレーブノードは、パターン3のオン/オフ信号による操作が5回終了した時には、マスターノード2に操作が完了したことを通知する(ステップS205)。
【0116】
第2スレーブノードから完了の通知を受けたマスターノード2は、コンビスイッチユニット4からターンスイッチ43がオフされたことを通知されていない限り、同じ動作パターンを同じ回数だけ実行することを指定する命令セットを第2スレーブノードに送信する。ここでは、パターン3を指定する操作命令信号及び実行する回数を5回とする情報を含む命令セット2を生成して第2スレーブノードに送信する(ステップS206)。
【0117】
次に、第2スレーブノードは、マスターノード2から命令セット2を受信する(ステップS207)。
【0118】
マスターノード2からの命令セット2を受信した第2スレーブノードは、該命令セット2に従って、パターン3のオン/オフ信号により右サイドミラーユニット5のターンLED51を作動させる(ステップS208)。
【0119】
次に、コンビスイッチユニット4のターンスイッチ43がオフされたとする(図示省略)。コンビスイッチユニット4からターンスイッチ43がオフされたことがマスターノードに通知されたときには、マスターノード2は、ターンスイッチ43がオフされたことを認知する(ステップS209)。
【0120】
次に、マスターノード2は、ターンLED51の操作を停止させる操作命令信号を第2スレーブノードに送信する(ステップS210)。
【0121】
次いで、第2スレーブノードは、マスターノード2から操作を停止させる操作命令信号を受信する(ステップS211)。
【0122】
その後、第2スレーブノードは、ターンLED51の作動を停止させる(ステップS212)。このとき、第2スレーブノードは、実行中の1サイクル分の処理が完了した後で、残りのサイクルを実行しないようにして停止させてもよいし、実行中の操作を強制的にオフするようにして停止させてもよい。
【0123】
図示は省略しているが、第2スレーブノードは、ターンLED51の動作の停止が完了したときには、マスターノード2に通知する。
【0124】
以上によって、ターンLED51の動作が完了する。
【0125】
図12は、ドアロックを即時にオフさせる際のフローを示す。初期状態として、ドアロックはオフの状態であるとする。
【0126】
まず、ドアロックスイッチ341が押されたときに、ドアロックユニット34の第1スレーブノードは、ドアロックスイッチ341が押されたことをマスターノード2に通知する(ステップS301)。
【0127】
次に、マスターノード2は、ドアロックスイッチ341がオンされたことを認知する(ステップS302)。
【0128】
次いで、マスターノード2は、パターン1を指定する操作命令信号及び実行する回数を1回とする情報を含む命令セット1を生成して、該命令セット1を第1スレーブノードに送信する(ステップS303)。
【0129】
次に、第1スレーブノードは、マスターノード2から命令セット1を受信する(ステップS304)。
【0130】
次いで、第1スレーブノードは、マスターノードから受信した命令セット1に従って、パターン1のオン/オフ信号によりドアロック駆動モータ342を作動させる(ステップS305)。
【0131】
そして、車両が衝突するなどして、ドアロックを即時にオフする必要が生じたときには、まず、マスターノード2は、ドアロックを即時にオフする必要ありと判断する(ステップS306)。マスターノード2は、不図示のGセンサ等からの検出信号に基づいて、衝突したか否かを判断して、ドアロックを即時にオフする必要があるか否かを判断する。
【0132】
次に、マスターノード2は、第1スレーブノードからの操作が完了した旨の通知を待つことなく、パターン2を指定する操作命令信号及び実行する回数を1回とする情報に加えて、即時実行を命令する特定情報を含む命令セット2を第1スレーブノードに送信する(ステップS307)。
【0133】
次いで、第1スレーブノードは、マスターノード2から命令セット2を受信する(ステップS308)。
【0134】
マスターノード2から命令セット2を受信した第1スレーブノードは、命令セット1に基づく操作を停止させる(ステップS309)。これにより、ドアロック駆動モータ342が停止される。
【0135】
そして、第1スレーブノードは、命令セット2に従って、ドアロックをオフするようにパターン2のオン/オフ信号でドアロック駆動モータ342を作動させる(ステップS310)。
【0136】
命令セット2に指定されたパターン2のオン/オフ信号による操作が終了した時には、第1スレーブノードは、マスターノード2に命令セット2に基づく操作が完了したことを通知する。
【0137】
(まとめ)
したがって、本実施形態では、マスターノード2と、各操作デバイスとそれぞれ接続され、マスターノード2からの操作命令信号に基づいて、各操作デバイスにオン/オフ信号を出力する複数のスレーブノード7と、を備え、各スレーブノード7は、各操作デバイスを動作させるためのオン/オフ信号の1サイクル分のパターンである動作パターンを複数記憶しているとともに、マスターノード2から各動作パターンのうち出力すべき動作パターンを指定する出力信号が入力されたときに、対応するパターンのオン/オフ信号により対応する操作デバイスを動作させる。これにより、マスターノード2は各スレーブノード7に対して動作パターンを指定するだけでよくなるため、指令がかなり簡易化される。この結果、マスターノード2とスレーブノード7との間の通信容量を小さくすることができる。
【0138】
また、本実施形態では、マスターノード2は、動作パターンを各スレーブノード7にそれぞれ記憶させるべく、各スレーブノード7をそれぞれコンフィグレーションする。これにより、スレーブノード7に記憶されている動作パターンを適宜変更することができる。このため、操作デバイスの仕様が変更されたとしても、変更後の操作デバイスに対応した動作パターンを改めてスレーブノード7に記憶させれば、変更後の操作デバイスを適切に動作させることができる。この結果、スレーブノード7が作動させる操作デバイスの機能変化や機能進化に対してフレキシブルに対応することができる。
【0139】
また、本実施形態では、マスターノード2は、動作パターンを指定する操作命令信号と共に、該操作命令信号による操作の即時実行を指示する特定情報を各スレーブノード7にそれぞれ送信可能に構成されており、スレーブノード7は、操作命令信号に加えて、特定情報を受信したときには、現在実行中の操作を停止させて、新たに受信した操作命令信号に対応するパターンのオン/オフ信号により操作デバイスを動作させるように構成されている。これにより、ドアロックの解除など緊急性が高い操作であっても適切に実行することができる。特に、マスターノード2からスレーブノード7に対してパターンを指定するようにして、通信容量を削減しているため、緊急性の高い操作を応答性良く実行することができる。
【0140】
また、本実施形態では、マスターノード2は、出力信号において、動作パターンに加えて、操作デバイスを当該動作パターンで動作させる回数を指定する情報を、各スレーブノード7にそれぞれ送信可能に構成されている。これにより、ターンLED51のように周期性を持って作動する操作デバイスの操作を簡易化することができる。また、マスターノード2とスレーブノード7との間の通信の回数を削減できるため、マスターノード2とスレーブノード7との間の通信容量をより小さくすることができる。
【0141】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0142】
例えば、前述の実施形態では、ドアロック駆動モータ341及びターンLED51を作動させる場合を例示したが、オン/オフ信号により作動する操作デバイスであれば、本開示の車両制御システムの制御対象となり得る。
【0143】
また、前述の実施形態では、スレーブノード7が、指定された動作パターンで操作デバイスを動作させる回数が1回であるときであっても、操作デバイスを動作させる回数を指定する情報がマスターノード2から送信されていた。これに限らず、スレーブノード7が、指定された動作パターンで操作デバイスを動作させる回数が1回でよいときには、マスターノード2は、操作デバイスを動作させる回数を指定しなくてもよい。このときには、スレーブノード7は、指定された動作パターンのオン/オフ信号により操作デバイスを1回だけ(1サイクル分だけ)動作させて、その後は、操作デバイスにオン/オフ信号を出力しないように構成される。
【0144】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0145】
ここに開示された技術は、車両に搭載され、それぞれがオン/オフ信号により作動する複数の操作デバイスを制御する車両制御システムとして有用である。
【符号の説明】
【0146】
1 車両制御システム
2 マスターノード
7 スレーブノード
51 ターンLED(操作デバイス)
342 ドアロック駆動モータ(操作デバイス)
CA 車両